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特許異議申立

2021-701242

タイヤ

審判番号
2021-701242
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-111891外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6897341
請求日
2021年12月27日
審決日
2022年08月29日
公報発行日
2022年11月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(B60C) / P1651.121-YAA(B60C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6897341号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6897341号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、8及び9〕について訂正することを認める。 特許第6897341号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6897341号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成29年6月6日を出願日とする出願であって、令和3年6月14日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月24日付け(受付日:同年同月27日)で特許異議申立人 村川 明美(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)がされ、令和4年3月25日付けで取消理由が通知され、同年5月18日に特許権者 住友ゴム工業株式会社から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月27日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年6月28日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和4年5月18日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、前記第1横溝は、曲がった部分を含む」と記載されているのを、「前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、かつ、70~80°であり、前記第1横溝は、曲がった部分を含む」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項8及び9も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜している」と記載されているのを、「前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜しており、前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい」に訂正する。 併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3、8及び9も同様に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「第3部分のタイヤ軸方向に対する角度」を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項2による請求項2についての訂正は、「第3部分のタイヤ軸方向に対する角度」と「中央部のタイヤ軸方向に対する角度」の大小関係を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、特許異議申立人は、令和4年6月28日提出の意見書において、訂正事項2で限定された「前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい」という事項は、本件特許の発明の詳細な説明の【0037】に記載されたθ5の望ましい角度帯(50~65°)及び【0049】に記載されたθ3の望ましい角度帯(70~80°)から外れる構造、例えばθ3=60°かつθ5=40°や、θ3=40°かつθ5=20°といった構造も包含しており、明らかに出願当初の開示から逸脱しているから、訂正事項2による請求項2についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできない旨主張する(上記意見書第2ページ第17行ないし第3ページ第6行参照。)。 そこで、検討するに、本件特許の発明の詳細な説明の【0037】及び【0049】に記載された角度は例示に過ぎず、θ3やθ5がその角度に限定されるわけではないし、本件特許の願書に添付した図面の図2及び4から、「第3部分のタイヤ軸方向に対する角度」が「中央部のタイヤ軸方向に対する角度」より大きいことは明らかであるから、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (3)請求項3についての訂正について 訂正事項2による請求項3についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項8及び9についての訂正について 訂正事項1による請求項8及び9についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2による請求項8及び9についての訂正は、請求項2及び3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1及び2による請求項8及び9についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1及び2による請求項1ないし3、8及び9についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1及び2による請求項1ないし3、8及び9についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし3、8及び9は一群の請求項に該当するものである。 そして、訂正事項1及び2による請求項1ないし3、8及び9についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし9に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、8及び9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、かつ、70~80°であり、 前記第1横溝は、曲がった部分を含むタイヤ。 【請求項2】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、 前記第1横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜した一対の外側部と、前記一対の外側部の間に配された中央部とを含み、 前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜しており、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きいタイヤ。 【請求項3】 前記第1タイバーは、前記中央部を含むように配されている請求項2記載のタイヤ。 【請求項4】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、 前記第1ブロックには、前記第1縦エッジ又は前記第2縦エッジからのび、第1サイプに接続することなく前記第1ブロック内で途切れる少なくとも1本のラグサイプが設けられており、 前記ラグサイプは、タイヤ軸方向に対して前記第1サイプと同じ向きに傾斜しているタイヤ。 【請求項5】 前記第1ブロックは、前記第1サイプに区分された一対のブロック片を含み、 前記ラグサイプは、少なくとも一方の前記ブロック片に配された第1ラグサイプ及び第2ラグサイプを含む請求項4記載のタイヤ。 【請求項6】 前記第2ラグサイプは、前記第1サイプと前記第1ラグサイプとの間に設けられ、 前記第2ラグサイプは、前記第1ラグサイプよりも小さいタイヤ軸方向の長さを有する請求項5記載のタイヤ。 【請求項7】 前記各ブロック片には、前記第1ラグサイプ及び前記第2ラグサイプが1本ずつ設けられている請求項5又は6記載のタイヤ。 【請求項8】 前記第3部分は、前記第1タイバーをタイヤ周方向に仮想延長した領域からはみ出すことなくその内部に設けられている請求項1乃至7のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項9】 前記第1タイバーには、前記第1横溝の長手方向にのびる溝底サイプが設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載のタイヤ。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和3年12月24日付け(受付日:同年同月27日)で特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 (甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特開2011-230643号公報 甲第2号証:米国特許出願公開第2008/0066841号明細書 甲第3号証:特開2014-94601号公報 甲第4号証:特開2016-203703号公報 甲第5号証:特開2016-124504号公報 甲第6号証:特開2015-223967号公報 甲第7号証:特開2010-95196号公報 なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和4年3月25日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲2に基づく新規性) 本件特許発明1ないし3及び8は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2(甲2に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3、8及び9は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし3、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 取消理由についての当審の判断 1 甲2に記載された事項及び甲2発明 (1)甲2に記載された事項 甲2には、「PNEUMTAIC TIRE WITH TIE BARS」(訳:タイバーを有する空気入りタイヤ)に関して、おおむね次のとおり記載されている。なお、甲2は外国語文献であるから、原文の摘記は省略し、訳文のみを摘記する。また、下線は当審で付したものである。 ・「[0013]図1のタイヤトレッド1は、タイヤの回転軸が水平方向に延びる図で示されている。従って、タイヤの全周に沿って延びる周方向溝2,3,および4が垂直方向に示されている。 [0014] これらの周方向に延びる第一の溝2,3および4は、トレッドリブ5,6,7,および8を互いに分離する。トレッドリブ5~8は、傾斜して横方向に延びる第二の溝9,10,11,および12によってトレッドブロックに分割され、それぞれが2つの隣接する第一の溝を互いに接続する。更に、様々なサイプ17,18,19,20が設けられ、その一部のサイプ17および18は実質的に長手方向に延在して両端が閉じており、他のサイプ19および20は横方向に延在して第一の溝を互いに接続するために開口している。2つの外側トレッドリブ5および8は、それらの軸方向外縁にいわゆるペネット21および22を含み、それらの軸方向内縁に軸方向くぼみ23および24を備える。トレッドブロックの前縁と後縁の斜角レリーフ面取りによって、トレッドパターンのこの部分は完成される。 [0015]第二の溝9~12はタイバー13,14,15,および16を備える。これらのタイバー13~16の形状は、図1のローマ数字IIによって示される斜め線における断面図である図2で見ることができる。 [0016]この2つのタイバー13と14は、その断面において、例えば隣接する主溝4に向かって徐々に先細っていく円形の線分のような丸みを帯びた輪郭を有する共通点を有する。」(第1ページ右欄第4ないし31行) ・「[0020] 本発明は図2に示すタイバー13および14のような対称形でありドーム状の形状に限られるものではない。平坦化された、凹凸を有する中央部や、両側に異なる勾配を持つ形状とすることも可能である。このような形状はタイヤトレッドに望まれる物理的特性に応じて選択される。」(第2ページ左欄第1ないし6行) ・「1.タイバー(13)を備えた少なくとも1つの溝(12)を備えたタイヤトレッド(1)であって、前記タイバー(13)が、丸みを帯びた輪郭と、溝(12)の底部に向かって先細になる2つの側面とを有し、前記輪郭が連続曲線を構成することを特徴とするタイヤトレッド(1)。」(第2ページ左欄第8ないし12行) ・「 [図:0001390578000001.jpg] 」 ・「 [図:0001390578000002.jpg] 」 (2)甲2発明 甲2のFig.1から、甲2に記載されるサイプ19、20はタイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有していることが看取される。 また、甲2のFig.1から、甲2に記載される第二の溝11はタイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有していることも看取される。 以上のことをふまえて、甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「タイヤトレッド1を有するタイヤであって、 該タイヤトレッド1は、タイヤの全周に沿って延びる周方向溝2~4を有し、 該周方向溝2~4によって分離されるトレッドリブ5~8を有し、 該トレッドリブ5~8は傾斜して横方向に延びる第二の溝9~12によってトレッドブロックに分割され、それぞれが2つの隣接する第一の溝を互いに接続し、 さらに横方向に延在して第一の溝を互いに接続するために開口するサイプ19、20を有し、 該第二の溝11は、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有し、 該第二の溝11は、隣接する主溝に向かって徐々に先細っていく円形の線分のような丸みを帯びた輪郭の断面形状を有するタイバー14を有し、 該サイプ19、20は、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有している、タイヤ。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「タイヤトレッド1」は本件特許発明1における「トレッド部」に相当する。 甲2発明における「タイヤ全周に沿って延びる周方向溝2~4」は、本件特許発明1における「タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝」に相当する。 甲2発明における「周方向溝2~4によって分離されるトレッドリブ5~8」のうち、「トレッドリブ7」は、本件特許発明1における「第1陸部」に相当する。 甲2発明における「傾斜して横方向に延びる第二の溝9~12」は、2つの隣接する第一の溝を互いに接続するものであるから、本件特許発明1における「第1陸部を完全に横切る複数の第一の溝」に相当する。 甲2発明における「トレッドブロック」は、「トレッドリブ5~8」が「第二の溝9~12」によって分割されたものであるから、本件特許発明1における「複数の第1ブロック」に相当する。 甲2発明における「横方向に延在して第一の溝を互いに接続するために開口するサイプ19、20」は、本件特許発明1における「タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプ」に相当する。 甲2発明における「サイプ20は、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有していること」は、内側部分に隣接する外側部分を有し、該内側部分は外側部分の傾斜より大きく傾斜するものであるから、本件特許発明1における「第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく」するという発明特定事項を満たすといえる。 甲2発明における「隣接する主溝に向かって徐々に先細っていく円形の線分のような丸みを帯びた輪郭の断面形状を有するタイバー14」は、本件特許発明1における「タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバー」に相当する。 甲2発明における「第二の溝11は、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有」するという事項は、本件特許発明1における「第1横溝は、曲がった部分を含む」という発明特定事項を満たすといえる。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、 前記第1横溝は、曲がった部分を含むタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明1においては、「前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度」は「70~80°」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 (2)判断 そこで、検討する。 相違点2-1が実質的な相違点であることは明らかである。 また、甲2及び他の証拠のいずれにも、甲2発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 したがって、甲2発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得る」(本件特許の発明の詳細な説明の【0005】)という甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人は、令和4年6月28日提出の意見書において、相違点2-1は、甲4に基づいて容易に想到し得るものである旨主張する(上記意見書第1ページ第12行ないし第2ページ第16行参照。)。 そこで、検討する。 甲4に記載された「接続センターサイプ47」は、「第1センターラグ溝43」と「第2センターラグ溝44」との間を連通するもの、すなわち「溝」と「溝」をつなぐものである。他方、甲2発明における「サイプ19、20」の「内側部分」は、「タイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分」同士の間にあるもの、すなわち「サイプ」と「サイプ」をつなぐものである。 また、甲4に記載された「第1センターラグ溝43」及び「第2センターラグ溝44」は、「センター陸部8の偏摩耗を抑制しつつ、氷雪路での走行性能を高める」(甲4の【0069】参照。)ためのものである。他方、甲2発明における「サイプ19、20」の機能は不明である。 したがって、甲2発明における「サイプ19、20」に、前提となる構造が異なり、機能の共通性もない甲4に記載された技術的事項を適用する動機付けはない。 よって、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲4に基づいて容易に想到し得るものであるとはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2と甲2発明を対比する。 本件特許発明2の本件特許発明1と共通する発明特定事項については、甲2発明との間に、上記2(1)と同様の相当関係が成り立つ。 甲2発明における「第二の溝11は、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びる外側部分と、該外側部分より大きく傾斜する内側部分とを有」するという発明特定事項は、内側部分に隣接する外側部分を有し、該内側部分は外側部分の傾斜より大きく傾斜するものであるから、本件特許発明2における「第1横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜した一対の外側部と、前記一対の外側部の間に配された中央部とを含み、前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜している」という発明特定事項を満たすといえる。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、 前記第1横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜した一対の外側部と、前記一対の外側部の間に配された中央部とを含み、 前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜しているタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点2-2> 本件特許発明2においては、「前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 (2)判断 そこで、検討する。 相違点2-2が実質的な相違点であることは明らかである。 また、甲2及び他の証拠のいずれにも、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 したがって、甲2発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は、「ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得る」という甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、本件特許発明2は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明3について 本件特許発明3は請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件特許発明2と同様に、本件特許発明3は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 4 本件特許発明8について 本件特許発明8は、請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件特許発明1又は2と同様に、本件特許発明8は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 5 本件特許発明9について 本件特許発明9は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件特許発明1又は2と同様に、本件特許発明9は甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 6 取消理由についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし3、8及び9は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由1及び2によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由(以下、「申立理由」という。)は、甲1に基づく進歩性である。 以下、検討する。 1 甲1に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項 甲1には、「重荷重用タイヤ」に関して、おおむね次のとおり記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 ・「【請求項1】 トレッド部に、タイヤ赤道上をのびる中央周方向溝、この中央周方向溝の両側をのびる一対のクラウン周方向溝、及び前記中央周方向溝からクラウン周方向溝までのびることにより該中央周方向溝とクラウン周方向溝との間を多数のクラウンブロックに区分するクラウン横溝を具えた重荷重用タイヤであって、 前記クラウンブロックに、前記中央周方向溝からクラウン周方向溝までのびることにより該クラウンブロックを周方向の2つのブロック部に区分するクラウン細溝が設けられ、 しかも前記クラウン横溝は、タイヤ軸方向に対して10~30°の角度αで傾斜し、かつクラウン横溝の溝底に、該溝底から隆起し周方向で隣り合うクラウンブロック同士を連結するタイバーを有するとともに、 前記中央周方向溝の溝深さ、及び前記クラウン横溝のうちの前記タイバーよりもタイヤ軸方向内側の横溝部分の溝深さは、それぞれ前記クラウン周方向溝の溝深さよりも浅いことを特徴とする重荷重用タイヤ。」 ・「【0020】 以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。 図1に示すように、本実施形態の重荷重用タイヤ1は、トレッド部2に、タイヤ赤道C上をのびる中央周方向溝3、この中央周方向溝3の両側をのびる一対のクラウン周方向溝4、及び前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該中央周方向溝3とクラウン周方向溝4との間のトレッドクラウン領域Ycを多数のクラウンブロック5に区分するクラウン横溝6を少なくとも具える。」 ・「【0024】 そして本発明では、前記トレッドクラウン領域Ycにおける石噛みを抑制するために、前記図1の如く、まず前記クラウン横溝6を、タイヤ軸方向に対して10~30°の角度αで傾斜する傾斜溝として形成している。これにより、タイヤ転動時、溝内に挟まれた石は、前記傾斜に沿ってタイヤ軸方向に動き易くなる。 【0025】 又各前記クラウンブロック5には、図2に拡大して示すように、前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該クラウンブロック5を周方向の2つのブロック部5A、5Bに区分するクラウン細溝12が設けられる。このクラウン細溝12は、踏み面2Sにおける溝幅W12が0.5~1.0mmの範囲である。このクラウン細溝12の形成により、タイヤ転動時、前記ブロック部5A、5Bがクラウン横溝6側に動き易くなって、クラウン横溝6の溝幅が接地毎に変動を繰り返す。そして前記クラウン横溝6の傾斜との相乗作用によって、クラウン横溝6に挟まれた石が排出しやすくなる。なお前記角度αが10°未満では、前記相乗作用が発揮されず、逆に30°を越えるとトラクション性能が不充分となる。 【0026】 しかし、前記ブロック部5A、5Bが周方向に動き過ぎると、ヒール&トゥ摩耗が発生しやすくなるという不利を招く。そのため前記クラウン横溝6の溝底にタイバー15を形成している。 【0027】 このタイバー15は、前記溝底から隆起してタイヤ周方向にのび、周方向で隣り合うクラウンブロック5、5同士を連結する。これにより各ブロック部5A、5Bのクラウン横溝6側への動きを規制し、前記クラウン細溝12に起因するヒール&トゥ摩耗の発生を抑制している。」 ・「【0034】 又本例では、前記ヒール&トゥ摩耗をさらに抑制するために、前記図2の如く、前記クラウン細溝12を略Z字状に形成している。具体的には、クラウン細溝12は、前記中央周方向溝3からのびる第1の細溝主部12aと、クラウン周方向溝4から前記第1の細溝主部12aと略平行にのびる第2の細溝主部12bと、その内端間を継ぐ継ぎ部12cとを具える。なお細溝主部12a、12bと継ぎ部12cとがなす内角γは45~90°、より好ましくは45~80°の範囲である。これによって、ブロック部5A、5B同士が互いに噛み合い、周方向の過度の動きを抑制しうるため、前記ヒール&トゥ摩耗をより抑制しうる。」 ・「 [図:0001390578000003.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「トレッド部2に、タイヤ赤道上をのびる中央周方向溝3、この中央周方向溝3の両側をのびる一対のクラウン周方向溝4、及び前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該中央周方向溝3とクラウン周方向溝4との間を多数のクラウンブロック5に区分するクラウン横溝6を具えた重荷重用タイヤ1であって、 前記クラウンブロック5に、前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該クラウンブロック5を周方向の2つのブロック部5A、5Bに区分するクラウン細溝12が設けられ、 しかも前記クラウン横溝6は、タイヤ軸方向に対して10~30°の角度αで傾斜し、かつクラウン横溝6の溝底に、該溝底から隆起し周方向で隣り合うクラウンブロック5同士を連結するタイバー15を有するとともに、 前記中央周方向溝3の溝深さ、及び前記クラウン横溝6のうちの前記タイバー15よりもタイヤ軸方向内側の横溝部分の溝深さは、それぞれ前記クラウン周方向溝4の溝深さよりも浅く、 前記クラウン細溝12は、前記中央周方向溝3からのびる第1の細溝主部12aと、クラウン周方向溝4から前記第1の細溝主部12aと略平行にのびる第2の細溝主部12bと、その内端間を継ぐ継ぎ部12cを備える略Z字状に形成されている、重荷重用タイヤ1。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジを有するタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1-1> 本件特許発明1においては、「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、かつ、70~80°であり」と特定されているのに対し、甲1発明においては、「前記クラウンブロック5に、前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該クラウンブロック5を周方向の2つのブロック部5A、5Bに区分するクラウン細溝12が設けられ」、「前記クラウン細溝12は、前記中央周方向溝3からのびる第1の細溝主部12aと、クラウン周方向溝4から前記第1の細溝主部12aと略平行にのびる第2の細溝主部12bと、その内端間を継ぐ継ぎ部12cを備える略Z字状に形成されている」と特定されている点。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1と甲1発明の対比に際し、本件特許発明1における「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく」という発明特定事項を甲1発明との相違点としていないが、甲1発明における「クラウン細溝12」は「前記中央周方向溝3からのびる第1の細溝主部12aと、クラウン周方向溝4から前記第1の細溝主部12aと略平行にのびる第2の細溝主部12bと、その内端間を継ぐ継ぎ部12cを備える略Z字状に形成されている」ものであるから、「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる」ものであるとはいえないので、本件特許発明1における上記発明特定事項は甲1発明との相違点である。 <相違点1-1-2> 本件特許発明1においては、「前記第1横溝は、曲がった部分を含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (2)判断 まず、相違点1-1-1について検討する。 甲1及び他の証拠のいずれにも、甲1発明において、「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプ」を採用する動機付けとなる記載もないし、当然、このような「第1サイプ」を「前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、かつ、70~80°であり」と特定することの動機付けとなる記載もない。 したがって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得る」という甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2と甲1発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジを有するタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-2-1> 本件特許発明2においては、「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく」と特定されているのに対し、甲1発明においては、「前記クラウンブロック5に、前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該クラウンブロック5を周方向の2つのブロック部5A、5Bに区分するクラウン細溝12が設けられ」、「前記クラウン細溝12は、前記中央周方向溝3からのびる第1の細溝主部12aと、クラウン周方向溝4から前記第1の細溝主部12aと略平行にのびる第2の細溝主部12bと、その内端間を継ぐ継ぎ部12cを備える略Z字状に形成されている」と特定されている点。 <相違点1-2-2> 本件特許発明2においては、「前記第1横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜した一対の外側部と、前記一対の外側部の間に配された中央部とを含み、 前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜しており」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-2-3> 本件特許発明2においては、「前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (2)判断 まず、相違点1-2-1について検討する。 甲1及び他の証拠のいずれにも、甲1発明において、「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプ」を採用する動機付けとなる記載もないし、当然、このような「第1サイプ」を「前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく」と特定することの動機付けとなる記載もない。 したがって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-2-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は、「ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得る」という甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本件特許発明3について 本件特許発明3は請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件特許発明2と同様に、本件特許発明3は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 本件特許発明4について (1)対比 本件特許発明4と甲1発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、 前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、 前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、 前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジを有するタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-4-1> 本件特許発明4においては、「前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、 前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、 前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく」と特定されているのに対し、甲1発明においては、「前記クラウンブロック5に、前記中央周方向溝3からクラウン周方向溝4までのびることにより該クラウンブロック5を周方向の2つのブロック部5A、5Bに区分するクラウン細溝12が設けられ」、「前記クラウン細溝12は、前記中央周方向溝3からのびる第1の細溝主部12aと、クラウン周方向溝4から前記第1の細溝主部12aと略平行にのびる第2の細溝主部12bと、その内端間を継ぐ継ぎ部12cを備える略Z字状に形成されている」と特定されている点。 <相違点1-4-2> 本件特許発明4においては、「前記第1ブロックには、前記第1縦エッジ又は前記第2縦エッジからのび、第1サイプに接続することなく前記第1ブロック内で途切れる少なくとも1本のラグサイプが設けられており、 前記ラグサイプは、タイヤ軸方向に対して前記第1サイプと同じ向きに傾斜している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (2)判断 まず、相違点1-4-1について検討する。 相違点1-4-1は相違点1-2-1と同じであるから、その判断も同じである。 すなわち、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-4-1に係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明4は、「ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得る」という甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 6 本件特許発明5ないし7について 本件特許発明5ないし7は請求項4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件特許発明4と同様に、本件特許発明5ないし7は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 7 本件特許発明8及び9について 本件特許発明8及び9は請求項1、2又は4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1、2又は4の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件特許発明1、2又は4と同様に、本件特許発明8及び9は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 8 申立理由についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由によっては取り消すことはできない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701242

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