審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-700396

タイヤ

審判番号
2023-700396
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-193639
登録番号
7155847
請求日
2023年04月19日
審決日
2023年06月15日
公報発行日
2023年07月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】住友ゴム工業株式会社
  • 【権利者代理人】住友 慎太郎
  • 【権利者代理人】浦 重剛
  • 【権利者代理人】苗村 潤
  • 【権利者代理人】石原 幸信
  • 【異議申立人】村川 明美
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 中村 和正
分類
P1651.55 -Y (B60C) / P1651.121-Y (B60C) / P1651.537-Y (B60C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7155847号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7155847号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7155847号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、 平成30年10月12日に出願され、 令和 4年10月11日にその特許権の設定登録(請求項の数 12)がされ、 令和 4年10月19日に特許掲載公報が発行され、 その後、当該特許に対し、 令和 5年 4月19日に村川 明美(以下、「特許異議申立人」という。)が全ての請求項に係る特許に対して特許異議申立てを行ったものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 車両への装着の向きが指定されたタイヤであって、 車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、 前記トレッド部は、 前記外側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝と、 前記内側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第2主溝と、 前記第1主溝及び前記第2主溝で区分された3つの陸部とで構成されており、 前記陸部は、 前記外側トレッド端と前記第1主溝との間に区分された外側陸部と、 前記第2主溝と前記内側トレッド端との間に区分された内側陸部とを有し、 前記外側陸部には、前記第1主溝から延びかつ前記外側陸部内で途切れる複数の外側横溝が設けられ、 前記内側陸部には、前記内側トレッド端から延びかつ前記内側陸部内で途切れる複数の内側横溝が設けられ、 前記外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい、 タイヤ。 【請求項2】 前記外側陸部のタイヤ軸方向の幅、及び、前記内側陸部のタイヤ軸方向の幅は、それぞれ、トレッド幅の0.25~0.35倍である、請求項1記載のタイヤ。 【請求項3】 前記外側陸部のタイヤ軸方向の幅は、前記内側陸部のタイヤ軸方向の幅と同一である、請求項1又は2記載のタイヤ。 【請求項4】 前記外側陸部のランド比は、前記内側陸部のランド比よりも大きい、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項5】 前記外側陸部のランド比は、前記内側陸部のランド比の1.03~1.08倍である、請求項4記載のタイヤ。 【請求項6】 前記外側横溝の溝幅は、前記内側横溝の溝幅よりも小さい、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項7】 前記外側横溝の溝幅は、前記内側横溝の溝幅の0.40~0.60倍である、請求項6記載のタイヤ。 【請求項8】 前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する角度は、0~10°であり、 前記外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する角度は、15~25°である、請求項1記載のタイヤ。 【請求項9】 前記外側横溝は、前記外側陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第1主溝側で途切れている、請求項1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項10】 前記外側横溝のタイヤ軸方向の長さは、前記外側陸部のタイヤ軸方向の幅の0.30~0.40倍である、請求項9記載のタイヤ。 【請求項11】 前記内側横溝は、前記内側陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第2主溝側で途切れている、請求項1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項12】 前記内側横溝のタイヤ軸方向の長さは、前記内側陸部のタイヤ軸方向の幅の0.60~0.70倍である、請求項11記載のタイヤ。 第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について 令和 5年 4月19日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(新規事項) 本件特許の請求項1ないし7及び9ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1号に該当し取り消すべきものである。 ・請求項1には「前記外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい、」という新規事項を追加する補正がなされている。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし12の記載は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件請求項1ないし12に係る特許は、特許法第第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・請求項1に追加された「前記外側横溝の溝中心のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」とする事項は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された内容を超えるものである。よって、本件特許発明1ないし7、9ないし12は本件特許の発明の詳細な説明に記載された内容を超える部分を含んでいる。 ・請求項1における「前記外側横溝の溝中心のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」との要件は、互いの最大の角度同士の差異、互いの単純な角度同士の差異が特定されていないため、互いの角度同士の差異が僅かな場合も含む。しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明には、互いの角度同士の差異が僅かな場合の効果は記載されていない。したがって、本件特許発明1ないし7、9ないし12は発明の課題を解決できるように記載された範囲を超えるものである。 ・本件特許発明1ないし12は、外側横溝と内側横溝とが互いに反対向きに傾斜する形態も含む。しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明には、外側横溝と内側横溝とが互いに反対向きに傾斜した形態は記載されておらず、この形態における効果も記載されていない。よって、本件特許発明1ないし12は本件特許の発明の詳細な説明に記載された内容を超える部分を含んでいる。 5 証拠方法 甲第1号証:特開2009-6833号公報 甲第2号証:意匠登録第1516122号公報 甲第3号証:特開2012-171433号公報 甲第4号証:特開2016-155395号公報 甲第5号証:特開平4-108006号公報 甲第6号証:特開2011-255685号公報 甲第7号証:特開2020-59459号公報 証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。 以下、順に「甲1」等という。 第4 当審の判断 当審は以下に述べるように、申立理由1ないし4にはいずれも理由がないと判断する。 事案に鑑み、申立理由3を最初に判断する。 1 申立理由3(新規事項)について (1)新規事項の判断基準 補正が、当業者にとって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かにより、その補正が新規事項を追加する補正であるか否かを判断する。 補正が当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである場合は、その補正は、新規事項を追加する補正でない。 他方、補正が新たな技術的事項を導入するものである場合は、その補正は新規事項を追加する補正である。 (2)新規事項の判断 本件特許に係る出願において、令和 4年 7月 5日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、請求項1が補正され、「前記外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」との事項が特定された(以下、「補正事項」という。)。 当該補正事項に関して、当初明細書等の記載をみるに、本件特許の発明の詳細な説明には、「内側横溝20は、例えば、タイヤ軸方向に対して0~10°の角度θ3で配されている。望ましい態様では、内側横溝20は、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ軸方向内側に向かって漸増している」(【0041】)こと、「外側横溝23のタイヤ軸方向に対する角度θ7は、内側横溝20のタイヤ軸方向に対する角度θ3よりも大きいのが望ましい。具体的には、外側横溝23のタイヤ軸方向に対する角度θ7は、例えば、15~25°である」(【0054】)ことが記載され、これらを示した図面もある。 そして、特許請求の範囲には、「前記外側横溝のタイヤ軸方向に対する角度は、前記内側横溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい」こと(【請求項8】)、「前記内側横溝のタイヤ軸方向に対する角度は、0~10°であり、前記外側横溝のタイヤ軸方向に対する角度は、15~25°である」(【請求項9】)ことが記載されている。 これらの記載も含め、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、当該補正事項は、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。 よって、当該補正事項は、新規事項を追加する補正ではない。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、甲7を示しつつ、要するに「最大の角度」については当初明細書等に記載がないことをあげ、「最大の角度」に関する特定事項を導入するものである補正は、新規事項の追加にあたる旨主張する。 しかしながら、上記(2)のとおり、θ3、θ7の望ましい範囲、相対的な角度の大きさの関係からみても、θ3<θ7であることは、本件特許の明細書の記載及び図面から明らかである。 してみると、上記(2)のように判断されるものであって、特許異議申立人の当該主張は、その判断に何ら影響するものではない。 (4)申立理由3についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由3は、その理由がない。 2 申立理由1について (1)主な証拠に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には「空気入りタイヤ」に関し、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 トレッド面における赤道線の両側にタイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝が設けられた空気入りタイヤにおいて、 一端部がタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する前記主溝に連通して他端部がタイヤ接地端に連通しない第1ラグ溝がタイヤ周方向に所定間隔で複数設けられると共に、 一端部がタイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する前記主溝に連通せずに他端部がタイヤ接地端に連通する第2ラグ溝がタイヤ周方向に所定間隔で複数設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。」 「【0006】 本発明は、このような問題を解決するためのものであって、高い排水性を維持することで走行安定性を向上すると共に騒音の発生を抑制することで静粛性を向上する空気入りタイヤを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1の発明の空気入りタイヤは、トレッド面における赤道線の両側にタイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝が設けられた空気入りタイヤにおいて、一端部がタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する前記主溝に連通して他端部がタイヤ接地端に連通しない第1ラグ溝がタイヤ周方向に所定間隔で複数設けられると共に、一端部がタイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する前記主溝に連通せずに他端部がタイヤ接地端に連通する第2ラグ溝がタイヤ周方向に所定間隔で複数設けられることを特徴とするものである。」 「【0015】 請求項1の発明の空気入りタイヤによれば、トレッド面における赤道線の両側に複数の主溝を設け、一端部がタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する主溝に連通して他端部がタイヤ接地端に連通しない第1ラグ溝をタイヤ周方向に所定間隔で複数設けると共に、一端部がタイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する主溝に連通せずに他端部がタイヤ接地端に連通する第2ラグ溝をタイヤ周方向に所定間隔で複数設けている。 【0016】 従って、主溝と第1、第2ラグ溝を設けることで、高い排水性を維持して走行安定性を向上することができると共に、タイヤ幅方向における一方側で、主溝の外側にある第1ラグ溝がタイヤ接地端に連通していないことから、気中共鳴の周波数が変動してレベルが下がると共に、主溝で発生した気柱共鳴騒音が高周波ロードノイズとして複数のラグ溝から外側に伝達されるのが抑制され、騒音の発生を抑制することで静粛性を向上することができる。」 「【0026】 なお、以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向であり、タイヤ幅方向内方とは、タイヤ幅方向において赤道面(赤道線)に向かう方向であり、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において赤道面(赤道線)に向かう方向の反対方向である。また、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向であり、タイヤ周方向とは、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。更に、車両内側とは、空気入りタイヤを正規リムにリム組みして車体に装着したとき、この車体の内側に位置する方向であり、車両外側とは、このとき、車体の外側に位置する方向である。 【0027】 本発明において、図1及び図2に示すように、この空気入りタイヤ11は、トレッド部とその両側に連続するショルダー部とサイドウォール部とビード部から構成されている。そして、このトレッド部は、タイヤ径方向の最も外側に形成されており、このトレッド部の表面、即ち、この空気入りタイヤ11を装着する車両(図示省略)が走行した場合に、路面と接触する面がトレッド面12として形成されている。そして、このトレッド面12には、赤道線O1に対して、タイヤ幅方向外側の所定位置に左右一対の接地端13,14が設定されており、接地端13の間隔が接地幅TWとして設定されている。本発明の説明では、図1及び図2にて、左側が車両外側であり、右側が車両内側となっている。 【0028】 ここで、接地幅TWとは、空気入りタイヤ11を正規リムにリム組みし、且つ、正規内圧を充填するとともに正規荷重をかけたときに、この空気入りタイヤ11が路面と接地するときのタイヤ幅方向の幅である。ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。」 「【0031】 この場合、第3主溝23が、空気入りタイヤ11のタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する主溝となっており、第4主溝24が、空気入りタイヤ11のタイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する主溝となっている。そして、赤道線O1からタイヤ幅方向における両方の接地端13までの長さが等しく、その長さをTW/2とするとき、この第3主溝23及び第4主溝24の位置、つまり、赤道面O1から第3主溝23及び第4主溝24の外側側壁23a,24aまでの長さL01,L02(L0)は、下記に表す条件を満たす位置となっている。 0.3(TW/2)<L01<0.6(TW/2) 0.3(TW/2)<L02<0.6(TW/2) なお、好ましくは、下記に表す条件を満たす位置とするとよい。 0.33(TW/2)<L01<0.55(TW/2) 0.33(TW/2)<L02<0.55(TW/2)」 「【0034】 なお、本発明では、トレッド面12における赤道線O1の両側にタイヤ周方向に沿って延びるそれぞれ2つの主溝21,22,23,24を設けており、第3主溝23及び第4主溝24が、空気入りタイヤ11のタイヤ幅方向の最も外側に位置する主溝となっている。この場合、主溝の数は、片側2つに限らず、1つまたは3つ以上設けてもよいものである。 【0035】 赤道線O1に対してタイヤ幅方向における一方側(図1にて、左方側)にて、第3主溝23とタイヤ接地端13との間に、タイヤ幅方向に沿って延びる第1ラグ溝31,32がタイヤ周方向に所定の間隔で複数設けられている。この場合、第1ラグ溝31と32は、タイヤ幅方向の長さが異なっており、タイヤ周方向に交互に設けられている。一方、赤道線O1に対してタイヤ幅方向における他方側(図1にて、右方側)にて、第4主溝24とタイヤ接地端14との間に、タイヤ幅方向に沿って延びる第2ラグ溝33,34がタイヤ周方向に所定の間隔で複数設けられている。この場合、第2ラグ溝33と34は、タイヤ幅方向の長さが異なっており、タイヤ周方向に交互に設けられている。 【0036】 そして、第1ラグ溝31,32は、一端部31a,32aがタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する第3主溝23に連通し、他端部31b,32bがタイヤ接地端13に連通せず、タイヤ幅方向に沿って延びると共にタイヤ周方向に湾曲した形状となっている。一方、第2ラグ溝33,34は、一端部33a,34aがタイヤ幅方向における他方の最も外側に位置する第4主溝24に連通せず、他端部33b,34bがタイヤ接地端14に連通し、タイヤ幅方向に沿って延びると共にタイヤ周方向に湾曲した形状となっている。この場合、車両外側(図1にて左側)と車両内側(図1にて右側)とで、第1ラグ溝31,32と第2ラグ溝33,34の湾曲方向が逆方向となっている。 【0037】 従って、各主溝23、24とそのタイヤ幅方向の外側にそれぞれラグ溝31,32,33,34を設けることで、高い排水性を維持して走行安定性を向上することができると共に、タイヤ幅方向における一方側で、第3主溝23の外側にある第1ラグ溝31,32がタイヤ接地端13に連通していないことから、第3主溝23で発生した気柱共鳴騒音が高周波ロードノイズ(800Hz~1kHz)として複数のラグ溝31,32から外側に伝達されるのが抑制され、騒音の発生を抑制することで静粛性を向上することができる。 【0038】 具体的には、第1ラグ溝31,32の他端部31b,32bからタイヤ接地端13までの長さをL1とすると共に、第3主溝23の外側側壁23aからタイヤ接地端13までの長さをLW1とし、第4主溝24の外側側壁24aから第2ラグ溝33,34の一端部33a,34aまでの長さをL2とすると共に、第4主溝24の外側側壁24aからタイヤ接地端14までの長さをLW2とするとき、第1ラグ溝31,32と第2ラグ溝33,34の位置は、下記に表す条件を満たす位置となっている。 0.1<L1/LW1<0.6 0.1<L2/LW2<0.6 なお、好ましくは、下記に表す条件を満たす位置となっている。 0.3<L1/LW1<0.5 0.2<L2/LW2<0.5」 「【図1】 [図:0001399435000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001399435000002.jpg] 」 (イ) 甲1に記載された発明 上記(ア)の【請求項1】、【0034】、【0036】、【図1】、【図2】を中心にまとめると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「トレッド面における赤道線の両側にタイヤ周方向に沿って延びる第3主溝23、第4主溝24を設け、一端部31a、32aがタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する第3主溝23に連通して他端部31b、32bがタイヤ接地端13に連通しない第1ラグ溝31、32を車両外側のタイヤ周方向に所定間隔で複数設けると共に、一端部33a、34aがタイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する第4主溝24に連通せずに他端部33b、34bがタイヤ接地端14に連通する第2ラグ溝33、34を車両内側のタイヤ周方向に所定間隔で複数設けた空気タイヤ。」 イ 甲2に記載された事項等 (ア)甲2に記載された事項 甲2には「自動車用タイヤ」に係る意匠として次のタイヤが図示されている。 「【正面図】 [図:0001399435000003.jpg] 」 「【右側面図】 [図:0001399435000004.jpg] 」 「【正面図の部分拡大図】 [図:0001399435000005.jpg] 」 「【A-A線端面図】 [図:0001399435000006.jpg] 」 (イ)甲2に記載された発明 上記アの【正面図】・【右側面図】・【正面図の部分拡大図】・【A-A線端面図】から、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「空気入りタイヤであって、トレッド部を有し、トレッド部には、タイヤ周方向に連続して延びる主溝が2本(それぞれ、左主溝、右主溝とする。)形成され、2本の主溝により区分された3つの陸部(それぞれ、左側陸部、中央陸部、右側陸部とする)を有し、2本の主溝にはそれぞれ、主溝から延びかつ陸部内で途切れる複数の横溝(それぞれ、左主溝の横溝、右主溝の横溝とする)が設けられ、右側陸部には、右トレッド端付近から延びて右主溝に連通していない横溝(右側陸部横溝とする)が設けられているタイヤ。」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には、「空気入りタイヤ」に関し、次の事項が記載されている。 「【0022】 タイヤ100は、車両装着の内側および外側が指定されており、図1その他の図面において、車両装着の内側および外側を示している。ここで、本明細書において「車両装着の内側」とは、図5に車両Vの上方からの概略図を示したように、車両Vへの装着姿勢において、車両幅方向内側、すなわち、タイヤの赤道面を挟んで車両Vの中心線Vcに近い側Tinを意味するものとする。同様に、「車両装着の外側」とは、車両Vへの装着姿勢において、車両幅方向外側、すなわち、タイヤの赤道面を挟んで車両Vの中心線Vcから遠い側Toutを意味するものとする。 【0023】 また、本明細書において「所定空気圧」とは、下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことを意味する。また「所定負荷条件」とは、同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)の荷重をかけることを意味する。「適用リム」とは、同規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または“Approved Rim”、“Recommended Rim”)のことである。かかる産業規格については、タイヤが生産又は使用される地域に有効な規格が定められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc.のYear Book”であり、欧州では、”The European Tire and Rim Technical OrganizationのSTANDARDS MANUAL”であり、日本では日本自動車タイヤ協会の”JATMA Year Book”である。」 「【0029】 (トレッド部の踏面) 次に、タイヤ100のトレッド部1の踏面1cの構成(トレッドパターン)について、図3および図4を用いて詳細に説明する。図3および図4に示すように、タイヤ100のトレッド部踏面1cには、タイヤ周方向に沿って延びる2本の主溝10,11と、タイヤ周方向に沿って延在する複数の陸部列12,13,14とが形成されている。主溝10は、タイヤ赤道CLを含むトレッド部踏面の中央域に形成される。主溝11は、タイヤ赤道CLよりも車両装着内側に形成される。主溝10および主溝11は、タイヤ幅方向に互いに間隔をあけて形成されている。したがって、トレッド部踏面1cは、2本の主溝10,11によって、センター陸部列12と、内側ショルダー陸部列13と、外側ショルダー陸部列14とに区画されている。なお、本明細書において、「トレッド部踏面の中央域」とは、トレッド部踏面においてタイヤ赤道CLを中心として、トレッド幅の50%の領域を意味する。そして、「側方域」とは、トレッド部の中央域3以外の領域を意味する。 【0030】 外側ショルダー陸部列14のタイヤ幅方向に沿った幅は、内側ショルダー陸部列13のタイヤ幅方向に沿った幅に対して、1.3~1.8倍程度になるように設定されている。外側ショルダー陸部列14は、タイヤ周方向に沿って延びるV字状溝15により、第1外側ショルダー陸部列14aと、第2外側ショルダー陸部列14bとに区画されている。 【0031】 内側ショルダー陸部列13には、タイヤ幅方向に延びる内側幅方向溝16が、タイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。具体的には、タイヤ周方向に隣接する内側幅方向溝16のピッチは、トレッド部1の周長の2.5~5%の範囲に設定されている。内側幅方向溝16は、一端16aが内側ショルダー陸部列13内で終端しており、他端が車両装着内側のトレッド端1bに開口している。 【0032】 第1外側ショルダー陸部列14aには、タイヤ幅方向に延びる第1外側幅方向溝17および第2外側幅方向溝18がタイヤ周方向に交互に形成されている。 第1外側幅方向溝17は、一端がV字状溝14に連通し、他端が車両装着外側のトレッド端1aに開口している。そのため、第1外側ショルダー陸部列14aは、第1外側幅方向溝17により複数の外側ショルダー陸部19に区画されている。第2外側幅方向溝18は、そのタイヤ幅方向の両端が各外側ショルダー陸部列19内で終端している。このように、トレッド部1の車両装着外側のトレッド端1aを含む第1外側ショルダー陸部列14aの一部が、タイヤ周方向に連続するブロック19aを形成している。 【0033】 タイヤ周方向に隣接する第1外側幅方向溝17のピッチは、トレッド部1の周長の5~10%の範囲に設定されている。つまり、第1外側幅方向溝17のピッチは、内側幅方向溝16のピッチに対して、約2倍の間隔に設定されている。 【0034】 次に、外側幅方向溝の詳細構成について、図4を用いて説明する。第2外側ショルダー陸部列14bには、タイヤ幅方向に延びる第3外側幅方向溝20および第4外側幅方向溝21が、タイヤ周方向に交互に形成されている。 【0035】 第3外側幅方向溝20は、第2外側ショルダー陸部列14bの車両装着内側の端部に、タイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。第3外側幅方向溝20は、一端20aが主溝10に開口しており、他端20bが第2外側ショルダー陸部列14b内で終端している。第3外側幅方向溝20は、一端20aの間口が広く形成され、他端20bに向かうにしたがって次第に閉じる。これにより、第3外側幅方向溝20はV字形に形成されている。 【0036】 第4外側幅方向溝21は、第2外側ショルダー陸部列14bの車両装着外側の端部に、タイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。第4外側幅方向溝21は、V字状溝15とも連通している。第4外側幅方向溝21は、V字状溝15に面する一端の間口が広く形成され、第2外側ショルダー陸部列13bのタイヤ幅方向の中間部に位置する他端21bに向かうにしたがって次第に閉じる。これにより、第4外側幅方向溝21はV字形に形成されている。」 「【図1】 [図:0001399435000007.jpg] 」 「【図3】 [図:0001399435000008.jpg] 」 「【図4】 [図:0001399435000009.jpg] 」 (2)検討 ア 本件特許発明1についての対比・検討 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「空気タイヤ」は、車両と第1ラグ溝、第2ラグ溝との位置関係が定められているタイヤであるから、本件特許発明1における「車両への装着の向きが指定されたタイヤ」に相当する。 甲1発明における「タイヤ接地端13」と「タイヤ接地端14」は、本件特許発明1における「車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端」と「車両装着時に車両値側に位置する内側トレッド端」に相当する。 甲1発明における「タイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する第3主溝23」と「タイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する第4主溝24」は、本件特許発明1における「外側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝」と「内側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第2主溝」に相当する。 また、甲1発明においては、第3主溝と第4主溝の2本の主溝があるから、本件特許発明1の「前記第1主溝及び前記第2主溝で区分された3つの陸部とで構成されており、前記陸部は、前記外側トレッド端と前記第1主溝との間に区分された外側陸部と、前記第2主溝と前記内側トレッド端との間に区分された内側陸部とを有し」との特定事項を満たす。 甲1発明の「一端部31a、32aがタイヤ幅方向における一方側の最も外側に位置する第3主溝23に連通して他端部31b、32bがタイヤ接地端13に連通しない第1ラグ溝31、32」と「一端部33a、34aがタイヤ幅方向における他方側の最も外側に位置する第4主溝24に連通せずに他端部33b、34bがタイヤ接地端14に連通する第2ラグ溝33、34」は、本件特許発明1における「第1主溝から延びかつ前記外側陸部内で途切れる複数の外側横溝」と「内側トレッド端から延びかつ前記内側陸部内で途切れる複数の内側横溝」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「車両への装着の向きが指定されたタイヤであって、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、前記トレッド部は、前記外側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝と、前記内側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第2主溝と、前記第1主溝及び前記第2主溝で区分された3つの陸部とで構成されており、前記陸部は、前記外側トレッド端と前記第1主溝との間に区分された外側陸部と、前記第2主溝と前記内側トレッド端との間に区分された内側陸部とを有し、前記外側陸部には、前記第1主溝から延びかつ前記外側陸部内で途切れる複数の外側横溝が設けられ、前記内側陸部には、前記内側トレッド端から延びかつ前記内側陸部内で途切れる複数の内側横溝が設けられた、タイヤ。」 <相違点1> 本件特許発明1は「外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」との特定を有するのに対して、甲1発明はそのような特定を有さない点。 上記相違点1について検討する。 甲1には、外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度と内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度との関係性については何ら示唆されていない。 甲2において、甲2の各図面は設計図ではないことから、外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度と内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度との関係性を、図面から確認することはできない。そもそも、甲2において、外側横溝及び内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度についての技術的な思想は開示されていない。 甲3において、車両装着外側から、トレッド部踏面のタイヤ幅方向に、V字状溝15、主溝10、主溝11が形成され、これらV字状溝15、主溝10、主溝11によってトレッド部踏面1cは、第1外側ショルダー陸部列14a、第2外側ショルダー陸部列14b、センター陸部列12、内側ショルダー陸部列13と区画され、主溝10はタイヤ赤道CLを含むトレッド部踏面の中央域に形成されており、外側ショルダー陸部列14には主溝10に開口した第3外側幅方向溝20が形成され、内側ショルダー陸部列13には一端16aが内側ショルダー陸部列13内で終端し、他端が車両装着内側のトレッド端1bに開口している内側幅方向溝16を有するタイヤが記載されており、甲3【図4】から、第3外側幅方向溝20とタイヤ軸方向とがなす角度は、内側幅方向溝16とタイヤ軸方向とがなす角度よりも大きいトレッドパターンを把握することができる。 しかしながら、甲3における主溝10は、タイヤ赤道CLを含むトレッド部踏面の中央域に形成される主溝であって、本件特許発明1における「外側トレッド端とタイヤ赤道との間で」タイヤ周方向に連続して延びる「第1主溝」に対応する主溝ではない。 また、甲3で開示されているトレッドパターンは、トレッド部踏面1cのタイヤ幅方向に、車両装着外側から、V字状溝15、主溝10、主溝11の3つの主溝が形成され、これらV字状溝15、主溝10、主溝11によってトレッド部踏面1cは、第1外側ショルダー陸部列14a、第2外側ショルダー陸部列14b、センター陸部列12、内側ショルダー陸部列13の4つの陸部に区画されるものであるから、本件特許発明1における「前記第1主溝及び前記第2主溝で区分された3つの陸部とで構成されている」ものとは前提となるタイヤのトレッドパターンが異なるものである。 その他の証拠においても、甲1発明において、「外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」という技術的事項を導入する動機はない。 してみると、甲1発明において、相違点1にかかる本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明2ないし12についての対比・検討 本件特許発明2ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明2ないし12は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由1についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由1には、その理由がない。 3 申立理由2(甲2に基づく進歩性)について (1)検討 ア 本件特許発明1についての対比・検討 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「タイヤ周方向に連続して延びる主溝(左主溝、右主溝)」は、本件特許発明1の「トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる」「主溝」に相当する。 甲2発明の「2本の主溝により区分された3つの陸部(それぞれ、左側陸部、中央陸部、右側陸部とする)」は、本件特許発明1における「主溝及び」「主溝で区分された3つの陸部」に相当する。 甲2発明の「主溝から延びかつ陸部内で途切れる複数の横溝」「(左主溝の横溝)」は、本件特許発明1の「陸部」に設けられた「主溝から延びかつ」「陸部内で途切れる複数の」「横溝」に相当する。 甲2発明の「右トレッド端付近から延びて右主溝に連通していない横溝(右側陸部横溝)」は、本件特許発明1の「陸部」に設けられた「トレッド端」付近から「延びかつ陸部内で途切れる複数の」「横溝」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「タイヤであって、トレッド部を有し、トレッド部は、トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる主溝2本と、前記2本の主溝で区分された3つの陸部とで構成されており、陸部には、主溝から延びかつ陸部内で途切れる複数の横溝と、トレッド端付近から延びて陸部内で途切れる複数の横溝とが設けられたタイヤ。」 <相違点2-1> 本件特許発明1は「車両への装着の向きが指定され」「車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とが定められ」ているのに対して、甲2発明は、車両への装着の向きが特定されていない点。 <相違点2-2> 本件特許発明1は、主溝から延び陸部内で途切れる横溝は、「外側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝」から延びているのに対して、甲2発明は、そのような特定を有さない点。 <相違点2-3> 本件特許発明1は、トレッド端付近から延びかつ陸部内で途切れる横溝は、「内側」トレッド端から延びているとの特定を有するのに対し、甲2発明は、そのような特定を有さない点。 <相違点2-4> 本件特許発明1は、内側「トレッド端から」延びかつ内側陸部内で途切れる複数の横溝の特定がなされるのに対して、甲2発明は、トレッド端付近から延びているが、トレッド端にかかるかどうか特定されていない点。 <相違点2-5> 本件特許発明1は、「前記外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」との特定を有するのに対して、甲2発明は、そのような特定を有さない点。 事案に鑑み、相違点2-5について検討する。 相違点2-5は、相違点1と同旨であり、上記2(2)アでした判断と同様に判断される。 したがって、甲2発明において、相違点2-5にかかる本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明2ないし12についての対比・検討 本件特許発明2ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明2ないし12は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)申立理由2についてのまとめ 上記(1)のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。 4 申立理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 (3)本件特許の発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明の【0005】には、発明が解決しようとする課題が記載されている。 本件特許の発明の詳細な説明の【0006】ないし【0020】には、本件特許発明1ないし12の各発明特定事項について記載されている。 本件特許の発明の詳細な説明の【0026】ないし【0027】及び【図1】には車両への装着の向きについて記載され、【0028】ないし【0031】にはタイヤのトレッド部及びタイヤの正規状態について、【0032】ないし【0034】には第1主溝及び第2主溝について、【0035】には外側陸部、中央陸部、内側陸部について、【0036】ないし【0037】には外側横溝及び内側横溝について記載されている。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0038】ないし【0050】及び【図2】ないし【図3】には、内側陸部に設けられる内側横溝及び内側サイプについて、【0051】ないし【0077】及び【図4】ないし【図5】には、外側陸部に設けられる外側横溝及び外側サイプについて、【0078】ないし【0082】及び【図6】ないし【図7】には中央陸部に設けられる中央サイプについて、それぞれ記載されている。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0085】ないし【0090】には【図1】の基本トレッドパターンを有するサイズ155/65R14の空気入りタイヤが具体的に製造され、それぞれのタイヤに対し、操縦安定性、ノイズ性能、ウェット性能がテストされている。 (4)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0005】によると、本件特許発明1ないし12が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「操縦安定性、ノイズ性能及びウェット性能をバランス良く向上させ得るタイヤを提供すること」である。 当該発明の課題を解決するために、本件特許の発明の詳細な説明の【0006】ないし【0019】には、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両内側に位置する内側トレッド端とが定められたとレット部を有し、トレッド部は、外側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に延びる第1主溝と、内側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に延びる第2主溝と、外側トレッド端と第1主溝との間に区分された外側陸部と、第2主溝と内側トレッド端との間に区分された内側陸部とを有し、外側陸部には、第1主溝から延びかつ外側陸部内で途切れる複数の外側横溝が設けられ、内側陸部には、内側トレッド端から延びかつ内側陸部内で途切れる複数の内側横溝が設けられる構成を採用することが記載され、【0021】ないし【0022】及び【0036】ないし【0037】には、外側横溝は第1主溝と共に優れた排水性を発揮すること、また、外側横溝は外側陸部の第1種溝付近の剛性を適度に緩和するため、外側陸部の第1主溝側の端縁が接地するときの打音を小さくするのに役立つこと、外側横溝が外側陸部内で途切れることにより、外側陸部の外側トレッド端付近の剛性が維持でき、旋回時の外側陸部の過度な変形が抑制され、ひいては操縦安定性が維持されること、内側陸部に設けられた内側横溝は、内側陸部において直進時にかかる高い接地圧が作用する傾向があるため、直進時に高い排水性を発揮できること、内側横溝は内側陸部の内側トレッド端付近の剛性を適度に緩和するため、内側トレッド端が接地するときの打音を小さくすることができること、内側横溝が内側陸部内で途切れているため、内側陸部の第2主溝の剛性を高く維持し、これにより旋回時にタイヤの接地面の中心が外側陸部側に移動するときにおいて内側陸部の急激な変形が抑制されて、旋回時の操舵の手応えがリニアになり、優れた操縦安定性が得られること、が記載され、具体的な実施例、比較例も【0085】ないし【0090】に記載されている。 以上の記載に接した当業者は、「車両への装着の向きが指定されたタイヤであって、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、前記トレッド部は、前記外側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝と、前記内側トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第2主溝と、前記第1主溝及び前記第2主溝で区分された3つの陸部とで構成されており、前記陸部は、前記外側トレッド端と前記第1主溝との間に区分された外側陸部と、前記第2主溝と前記内側トレッド端との間に区分された内側陸部とを有し、前記外側陸部には、前記第1主溝から延びかつ前記外側陸部内で途切れる複数の外側横溝が設けられ、前記内側陸部には、前記内側トレッド端から延びかつ前記内側陸部内で途切れる複数の内側横溝が設けられたタイヤ」との発明特定事項を満たすことにより、操縦安定性、ノイズ性能、ウェット性能が改善される、すなわち、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし12は、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て含み、さらに、外側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度が内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きいという限定を付すものであるから、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であり、本件特許の特許の発明の詳細な説明により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件特許発明1ないし12に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の主張について以下に検討する。 請求項1に追加された「前記外側横溝の溝中心のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、前記内側横溝の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい」とする事項については上記(4)にて検討したとおりである。 外側横溝と内側横溝とが互いに反対向きに傾斜する形態についても、上記(4)に検討したとおり、タイヤの外側横溝と内側横溝の傾斜は、サポート要件の判断に影響しない。 よって、特許異議申立人の主張はいずれも採用し得ない。 (6)申立理由4についてのまとめ 上記(4)及び(5)のとおりであるから、申立理由4は、その理由がない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700396

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決251件(住友ゴム工業株式会社、村川 明美)
  • 2023-701292異議申立 / 2024-08-23 / 訂正認容空気入りタイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社、村川 明美
  • 2023-700704異議申立 / 2024-08-15 / 訂正認容タイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社、村川 明美
  • 2021-701172異議申立 / 2023-04-20 / 訂正認容タイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社、村川 明美
  • 2021-700966異議申立 / 2023-03-31 / 訂正認容コード・ゴム複合体及び空気入りタイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社、村川 明美
  • 2021-701111異議申立 / 2023-03-28 / 請求成立(取消)タイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社、村川 明美
同じ論点・分野の審決(審決分類)222件(121・B60C、537・B60C、55・B60C)
  • 2017-700200異議申立 / 2017-12-04 / 訂正認容乗用車用空気入りラジアルタイヤ及びその使用方法
    共通の審決分類: 121・B60C、537・B60C、55・B60C
  • 2020-003865拒絶査定不服審判 / 2021-09-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)空気入りタイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C、537・B60C、55・B60C
  • 2016-014783拒絶査定不服審判 / 2018-03-12 / 請求不成立二輪車用空気入りタイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C、537・B60C、55・B60C
  • 2016-015922拒絶査定不服審判 / 2017-12-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)スタッドレスタイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C、537・B60C、55・B60C
  • 2016-014454拒絶査定不服審判 / 2017-10-31 / 請求不成立タイヤおよびタイヤ成形用金型
    共通の審決分類: 121・B60C、537・B60C、55・B60C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存