特許異議申立
2021-701111
タイヤ
- 審判番号
- 2021-701111
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-090218
- 登録番号
- 6880999
- 請求日
- 2021年11月30日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】住友ゴム工業株式会社
- 【権利者代理人】住友 慎太郎
- 【権利者代理人】浦 重剛
- 【権利者代理人】苗村 潤
- 【権利者代理人】石原 幸信
- 【権利者代理人】市田 哲
- 【異議申立人】村川 明美
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 審判官 出口 昌哉
- 分類
- P1651.113-YAA(B60C) / P1651.121-YAA(B60C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6880999号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6880999号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7〕、3、〔4~6〕、8について訂正することを認める。
特許第6880999号の請求項9、10に係る特許を取り消す。
特許第6880999号の請求項1~8、11に係る特許を維持する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許6880999号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成29年4月28日を出願日とする特許出願であって、令和3年5月10日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月2日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議申立人村川明美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、その手続の主な経緯は、次のとおりである。
令和3年11月29日 特許異議の申立て
令和4年 2月28日 取消理由通知書
令和4年 4月26日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 6月 6日 申立人による意見書の提出
令和4年 9月29日 取消理由通知書(決定の予告)
なお、上記取消理由通知書(決定の予告)に対し、その指定期間内に特許権者からの意見書の提出はされなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年4月26日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6880999号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。(「/」は、改行の位置を示すため、当審が付与したものである。以下同じ。また、下線は、訂正箇所を示すため、当審が付与したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、/ 前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、/ 前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、/ 前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、/ 前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、/ 前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有する」と記載されているのを、「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、/ 前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、/ 前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、/ 前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、/ 前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、/ 前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、/ 前記第1突出部は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した突出端を有し、/ 前記凸部は、前記突出端から前記第1部分に向かってのびる」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含む請求項1又は2に記載のタイヤ。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、/ 前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、/ 前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、/ 前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、/ 前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、/ 前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、/ 前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含むタイヤ。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有する請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式にあらため、「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、/ 前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、/ 前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、/ 前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、/ 前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、/ 前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、/ 前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。」に訂正する
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「前記第2部分のタイヤ軸方向の最大幅は、前記第1部分のタイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍である請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。」とあるうち、請求項1又は2を引用するものについて、「前記第2部分のタイヤ軸方向の最大幅は、前記第1部分のタイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍である請求項1又は2に記載のタイヤ。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「前記ブロックは、タイヤ赤道上に配されるクラウンブロックである請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、/ 前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、/ 前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、/ 前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、/ 前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、/ 前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、/ 前記ブロックは、タイヤ赤道上に配されるクラウンブロックであるタイヤ。」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正事項1~5は、訂正前に引用関係を有する請求項1~8に対して請求されたものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
また、訂正後の請求項3、4~6、8に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「第1突出部」について「前記第1突出部は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した突出端を有し」との限定を付与するとともに、「凸部」について「前記凸部は、前記突出端から前記第1部分に向かってのびる」との限定を付与するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項3に記載されていた発明特定事項のうち、請求項1の記載を引用するものを独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。そして、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項4に記載されていた発明特定事項のうち、請求項1の記載を引用するものを独立形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。そして、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項7に記載されていた発明特定事項について、請求項1又は2の記載を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項8に記載されていた発明特定事項のうち、請求項1の記載を引用するものを独立形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。そして、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 小括
したがって、本件訂正の訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7〕、3、〔4~6〕、8について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
以上のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」ともいう。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、
前記第1突出部は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した突出端を有し、
前記凸部は、前記突出端から前記第1部分に向かってのびるタイヤ。
【請求項2】
前記第1突出部は、突出端に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含む記載のタイヤ。
【請求項4】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部には、横溝を介して、前記第2部分が互いに向き合うように配された前記第1ブロックと前記第2ブロックとのペアを含み、
前記横溝は、タイヤ軸方向に対して傾斜するように、前記第1ブロック及び前記第2ブロックの各々のタイヤ周方向の端部エッジは、タイヤ軸方向に対して傾斜している請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記横溝が、ジグザグ状で延びるように、前記第1ブロック及び前記第2ブロックの前記端部エッジがジグザグ状に延びている請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2部分のタイヤ軸方向の最大幅は、前記第1部分のタイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項8】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、
前記ブロックは、タイヤ赤道上に配されるクラウンブロックであるタイヤ。
【請求項9】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、突出端に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状であり、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。
【請求項10】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含み、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。
【請求項11】
トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向
の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含み、
前記第2部分のタイヤ軸方向の最大幅は、前記第1部分のタイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍であるタイヤ。」
第4 令和4年9月29日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
1 当審が当該取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(新規性)請求項9、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(進歩性)請求項9、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 証拠一覧
申立人は、以下の甲第1~5号証を提出した。
甲第1号証:特開平6-143939号公報
甲第2号証:特開平11-245630号公報
甲第3号証:特開2017-1463号公報
甲第4号証:国際公開第2016/113014号
甲第5号証:特開2003-211916号公報
以下、甲第1~5号証を「甲1」~「甲5」という。
第5 各甲号証の記載事項
1 甲1
(1)本件特許の出願前に公開された甲1には、図面とともに、以下の記載がある。(下線は当審が付与したものである。以下同じ。)
ア 記載事項
(ア)明細書
「【0001】
【産業上の利用分野】砂利、泥土、泥濘などの舗装されていない走路、いわゆるダートロードの走行に適した空気入りタイヤで、特に泥濘の走行における駆動性とコーナリング性に優れるラリー仕様の乗用車用空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車が、その品質の向上とともに高性能化してきた現在、空気入りタイヤも用途に応じ、なお一層の性能向上が要求されるようになってきている。例えば、ラリー用空気入りタイヤにおいては、ダートロードでの高速走行性が駆動系の高出力化にともなって重要視されるようになってきている。
【0003】このラリー用タイヤが走行する路面は、通常、舗装されてなく、砂利、泥土、泥濘などの場合もあり、これらの路面状態の全てに対して、安定した走行性能を具備することが必要である。ダートロード走行において必要とされる性能は、走行安定性、とりわけ駆動性能および耐横滑り性である。
【0004】従来のラリー用タイヤは、例えば図4に示すように、トレッド中央域に赤道に沿う間隔をおいた点を基準として、該赤道の両側に点対称パターンとなる多数のブロック陸部を配設し、特に泥濘で使用する場合を想定してネガティブ率を大きくするのが普通である。」
「【0028】
【発明の効果】本発明によれば、・・・(略)・・・
【図面の簡単な説明】・・・(略)・・・
【図4】従来タイヤであり、そのトレッドを展開した主要部断面図である。」
(イ)図面
図4として、以下の記載がある。
「
[図:0001399322000001.jpg]
」
イ 認定事項
【0004】及び【0028】の記載を踏まえると、図4は、従来のラリー用タイヤのトレッドを展開した主要部断面図であることから、その上下方向がタイヤ周方向であり、左右方向がタイヤ軸方向であることは明らかである。
そうすると、図4から、従来のラリー用タイヤは、トレッド部に、複数のブロックがタイヤ周方向に並べられたものであり、これらブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する構成が看取できる。
また、図4に記載された複数のブロックのうちの一つを拡大すると、以下の図(以下「拡大図1」という。)のとおりとなる。
[図:0001399322000002.jpg]
拡大図1に記載されたブロックのうち、上側の楕円で示される部分を部分Aとし、それ以外の下側の楕円で示される部分を部分Bとする。そして、部分Bのうち点線aよりも右側の部分を部分C、部分Bのうち点線bよりも左側の部分を部分Dとする。さらに、部分Cのうち、右側に最も突出した端部を端部Eとする。
そうすると、拡大図1から、ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の部分Aと、タイヤ周方向の他方側の部分Bとを有するブロックであり、部分Aは、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びている点、部分Bは、タイヤの軸方向の幅が部分Aよりも大きいことにより、前記部分Aからタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っている点、前記部分Bは、前記部分Aからタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した部分Cを含む点、前記部分Bは、前記部分Aからタイヤ軸方向の他方側に前記部分Cよりも小さく突出した部分Dを含む点、前記部分Cは、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した端部Eを有する点が、それぞれ看取できる。
さらに、拡大図1から、部分Bにおいて点線aよりも右側の部分である部分Cは、端部Eに向かって複数の端部がタイヤ軸方向に階段状に形成されているといえる。
(2)甲1発明
上記(1)からみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「トレッド部に、複数のブロックが並べられたラリー用タイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の部分Aと、タイヤ周方向の他方側の部分Bとを有するブロックであり、
前記部分Aは、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記部分Bは、タイヤの軸方向の幅が部分Aよりも大きいことにより、前記部分Aからタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記部分Bは、前記部分Aからタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した部分Cを含み、
前記部分Cは、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した端部Eを有し、前記端部Eに向かって複数の端部がタイヤ軸方向に階段状に形成されており、
前記複数のブロックはタイヤ周方向に並べられ、前記複数のブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する、ラリー用タイヤ。」
2 甲2
(1)本件特許の出願前に公開された甲2には、図面とともに、以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア)明細書
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、氷雪路走行性能(スノー性能)を維持しながら、加速走行時における騒音を低減しうる雪泥地走行用ラジアルタイヤに関する。」
「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。図1において、雪泥地走行用ラジアルタイヤ(以下タイヤ1という)は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5の廻りでタイヤ軸方向の内側から外側に折返されるカーカス6、及びこのカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内方に巻装される強靱なベルト層7によって補強される。」
「【0011】次に、前記トレッド部2は、本例では、図2に示すように、タイヤ周方向に連続してのびる縦溝10と、この縦溝10に交わる横溝11とを具え、これによって、複数のブロック12が隔置するブロックパターンを形成している。なおトレッド部2は、その一部にタイヤ周方向にのびるリブを含んでも良い。
【0012】前記縦溝10は、本例では、タイヤ赤道C0両側の内の縦溝10Aと、その外側に配される中の縦溝10Bと、さらに外側に配される外の縦溝10Cとの6本からなり、縦溝10A、10Cを広巾のジグザグ溝として、中の縦溝10Bを細い直線溝として形成している。
【0013】又縦溝10B、10C間、及び縦溝10Cとトレッド縁Teとの間には、前記横溝11が配される。これによって、縦溝10A、10A間を周方向にのびるリブ12Dとして形成するとともに、縦溝10A、10B間をブロック12Aが並ぶブロック列13A、縦溝10B、10C間をブロック12Bが並ぶブロック列13B、並びに縦溝10Cとトレッド縁Teとの間をブロック12Cが並ぶブロック列13Cとしてそれぞれ形成している。
【0014】なお前記縦溝10、横溝11は、ジグザグ状、波状、直線状、屈曲線状など種々の形状とすることができ、又各ブロック列13においてブロックサイズ、ブロック間隔を違えたり、さらにはブロック列13を形成することなく、ブロック12をトレッド全面に亘って規則的、あるいは不規則的に分散配置することもできる。」
(イ)図面
あ 図1
「
[図:0001399322000003.jpg]
」
い 図2
「
[図:0001399322000004.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)上記図2の太枠囲いは当審が追記したものであり、ブロック列13Aのブロック12Aのうちの一つのブロックを示すものである。下記図(以下「拡大図2」という。)は、当審が作成したものであり、当該太枠囲い内の一つのブロックを拡大した図であって、A部分、B部分、C部分の相互の位置関係がわかるよう示したものである。
[図:0001399322000005.jpg]
一つのブロックのうち、上の実線楕円で囲んだ部分はタイヤ周方向の一方側のA部分を示し、下の実線楕円で囲んだ部分はタイヤ周方向の他方側のB部分を示し、C及び点線楕円で囲んだ部分はB部分の一部であるC部分を示している。
(イ)拡大図2から、以下のことがそれぞれ看取できる。
あ A部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びていること。
い B部分は、タイヤ軸方向の幅が前記A部分よりも大きいことにより、前記A部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っていること。
う B部分は、A部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出したC部分を含むこと。
え C部分は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出したE端部を有すること。
お C部分は、最も突出した部分に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状であること。
(ウ)【0008】及び【0011】の記載を踏まえると、図1及び拡大図2から、C部分は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有することが看取できる。
(2)甲2発明
上記(1)からみて、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「トレッド部2に、複数のブロック12Aが並べられたタイヤであって、
ブロック12Aの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側のA部分と、タイヤ周方向の他方側のB部分とを有する一つのブロックであり、
前記A部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記B部分は、タイヤ軸方向の幅が前記A部分よりも大きいことにより、前記A部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記B部分は、前記A部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出したC部分を含み、
前記C部分は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、
前記C部分は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出したE端部を有するタイヤ。」
3 甲3
(1)本件特許の出願前に公開された甲3には、図面とともに、以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア)明細書
「【0011】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は内部にエア、窒素ガス等が充填されて使用される空気入りラジアルタイヤであり、この空気入りタイヤ11は走行時に接地するトレッド部12を有する。このトレッド部12の踏面に形成されたトレッドパターンはタイヤ周方向(以後、周方向)に連続して延びる一対の主溝13を有し、これら主溝13は幅広であるため、接地時においても閉じることはない。また、これら主溝13はタイヤ赤道(トレッドセンター)Sを挟むよう該タイヤ赤道Sの両側に形成されており、この結果、これら主溝13間にはタイヤ赤道Sを跨いでいる陸部14が形成される。そして、前記主溝13間に位置する陸部14にはタイヤ赤道Sに対して30度程度の角度で傾斜した傾斜溝15が複数形成され、これらの傾斜溝15は周方向に等距離離れて配置されている。また、これら傾斜溝15はタイヤ幅方向(以後、幅方向)両端が前記一対の主溝13にそれぞれ開口することで、これら主溝13と交差しており、この結果、前記陸部14には一対の主溝13と複数の傾斜溝15とにより、周方向に繰り返し配置された同一形状である複数の陸部片16が画成される。なお、前記傾斜溝15のタイヤ赤道Sに対する傾斜角は、前述した角度未満であっても、あるいは、前述した角度を超えていてもよい。
【0012】
20は陸部14(全ての陸部片16)に形成され両端が隣接する傾斜溝15にそれぞれ開口することで該傾斜溝15に交差する複数の交差溝であり、これらの交差溝20は各陸部片16においてタイヤ赤道Sの両側に1個ずつ設けられており、この結果、いずれの陸部片16もタイヤ赤道Sを跨ぐ中央ブロック21と、該中央ブロック21と前記一対の主溝13との間にそれぞれ配置された一対の外側ブロック22とに区画される。ここで、これら中央、外側ブロック21、22は、陸部片16が前述のように周方向に等距離離れて複数配置されているので、同様に周方向に等距離離れて複数配置されることになる。前述した各交差溝20は長手方向中央部で折れ曲がった略くの字形を呈し、折れ曲がり点より片側の第1溝部20aはほぼ周方向に延びる一方、残り片側の第2溝部20bは傾斜溝15にほぼ直交し、この結果、第1溝部20aの傾斜溝15に対する開口端は第2溝部20bの傾斜溝15に対する開口端よりタイヤ赤道Sに近接している。また、前述の各外側ブロック22には傾斜溝15にほぼ平行に延びる分断溝23が形成され、これらの分断溝23は幅方向外端が主溝13に、幅方向内端が交差溝20、詳しくは交差溝20の屈曲点近傍にそれぞれ開口することで、外側ブロック22を周方向に2つの外側ブロック片24、25に分断する。
【0013】
一方、各中央ブロック21には傾斜溝15にほぼ直交して延びる分割溝28が形成され、これら分割溝28の両端は隣接する傾斜溝15にそれぞれ開口することで、各中央ブロック21をほぼ2等分し、2個の略コの字形を呈する中央ブロック片29と中央ブロック片30とに分断する。ここで、前記分割溝28はその延在方向中央がタイヤ赤道S上に位置し、この結果、前記中央ブロック片29、30はタイヤ赤道Sを跨いだ状態で配置されていることになる。また、前述した各傾斜溝15は、陸部14の幅方向中央部において、第1溝部20aと傾斜溝15とが交差する2つの交差点間をタイヤ赤道Sを跨いで延びる中央部15aと、陸部14の幅方向両端部において、主溝13と傾斜溝15との交差点から分割溝28と傾斜溝15との交差点まで延び、前記中央部15aにほぼ平行に延びる一対の外側部15bと、前記中央部15aの幅方向両外端と前記一対の外側部15bの幅方向内端とを接続し、前記第1溝部20aの延長線上をほぼ周方向に延びる一対の中間部15cとから構成されている。この結果、前記傾斜溝15は長手方向にジグザグ状に折れ曲がっていることになる。
【0014】
前述した各中央ブロック21の幅方向外側側壁21aでその周方向中央部にはタイヤ赤道Sに向かって凹んだ台形状の凹溝32が形成され、これらの凹溝32は前記交差溝20と同一深さで、交差溝20の折れ曲がり部に開口するとともに、分断溝23の延長線上に位置している。この結果、前記中央ブロック片29、30は略コの字形を呈することになる。また、前記中央ブロック21(中央ブロック片29、30)には分断溝23の延在方向にほぼ平行な複数のサイプ33が、また、外側ブロック22(外側ブロック片24、25)には分割溝28にほぼ平行な複数のサイプ34がそれぞれ形成され、これらのサイプ33、34には、両端が周囲の溝に開口したもの、または、片端のみが周囲の溝の開口し、残り片端がブロックの途中で終了したもの、あるいは、両端がブロックの途中で終了したものがある。ここで、前記サイプ33、34は接地時に閉じる、即ち、接地領域においては閉じる一方、接地領域から離脱すると開くもので、その幅は 3mm以下である。また、前記サイプ33のうち、片端が凹溝32に連通しているサイプは、残り片端が分割溝28に開口することで、中央ブロック21(中央ブロック片29、30)を2等分している。
【0015】
そして、前記交差溝20、分断溝33、外側ブロック片24、25、分割溝28、中央ブロック片29、30は、分割溝28上の対称点A、ここでは、分割溝28とタイヤ赤道Sとが交差する対称点Aを中心として点対称で配置されており、この結果、分割溝28に接する2個の中央ブロック片29、30の側壁29a、30a同士は互いに対向することになる。ここで、前述のように各外側ブロック22は傾斜溝15に沿って延びる分断溝23によって周方向に分断され、2つの外側ブロック片24、25となっているため、これら外側ブロック片24、25の曲げ剛性は低いが、中央ブロック21は傾斜溝15にほぼ直交する分割溝28によって中央ブロック片29、30に分割されているものの、傾斜溝15に沿って分断されてはいないため、該中央ブロック21(中央ブロック片29、30)の凹溝32近傍における曲げ剛性は陸部14内で最大となり、陸部14全体で剛性段差が発生する。」
「【0018】
また、この実施形態では、前述のように一対の主溝13間に位置する陸部14に傾斜溝15、交差溝20、分断溝23、分割溝28を形成しているが、これら傾斜溝15、交差溝20、分断溝23、分割溝28の溝底を、図3に示すように、底上げして主溝13の溝深さより浅くなった底上げ部43を形成する一方、前記外側ブロック片24の周方向側壁24aの周方向中央部に接する部位の溝の底上げ部43における底上げ量を、他の部位における溝の底上げ部43の底上げ量より小としている、例えば、凹所を形成することで段階的にあるいは連続的に溝深さを深くしている。このように周方向長が長いことで剛性が高くなった外側ブロック片24(周方向側壁24a)の周方向中央部近傍における溝(傾斜溝15の中間部15c、交差溝20の第1溝部20a)の底上げ量を小とすれば、該周方向中央部近傍における外側ブロック片24の剛性が低下し、この結果、陸部14全体における剛性がより均一化してさらなるピッチノイズの低下および耐摩耗性の向上を図ることができる。」
(イ) 図面
あ 図1
「
[図:0001399322000006.jpg]
」
い 図2
「
[図:0001399322000007.jpg]
」
う 図3
「
[図:0001399322000008.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)上記図1の「中央ブロック片30」を拡大すると、以下の図(以下「拡大図3」という。)のとおりとなる。
中央ブロック片30のA部分~D部分の相互の位置関係が分かるように表示している。
[図:0001399322000009.jpg]
拡大図3から、以下のことがそれぞれ看取できる。
あ A部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向とほぼ沿って延びていること。
い B部分は、タイヤ軸方向の幅がA部分よりも大きいことにより、A部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っていること。
う C部分は、A部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出しており、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出したE端部を有するとともに、E端部に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状であること。
え B部分は、A部分からタイヤ軸方向の他方側にC部分よりも小さく突出しているD部分を含んでいること。
(イ)【0011】及び【0018】の記載を踏まえると、上記図1、図3及び拡大図3から、C部分は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有することが看取できる。
(ウ)上記図2から、トレッド部に、複数のブロックがタイヤ周方向に並べられたものであり、これらブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する構成が看取できる。
(2)甲3発明
上記(1)からみて、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「トレッド部12に、複数のブロックが並べられた空気入りラジアルタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側のA部分と、タイヤ周方向の他方側のB部分とを有するブロックであり、
前記A部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向にほぼ沿って延びており、
前記B部分は、タイヤ軸方向の幅が前記A部分よりも大きいことにより、前記A部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記B部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出したC部分を含み、
前記C部分は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、
前記C部分は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出したE端部を有し、E端部に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状であり、
前記B部分は、前記A部分からタイヤ軸方向の他方側に前記C部分よりも小さく突出しているD部分を含み、
前記複数のブロックはタイヤ周方向に並べられ、前記複数のブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する、空気入りラジアルタイヤ。」
4 甲4
本件特許の出願前に国際公開された甲4には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)明細書
ア 1ページ29行~2ページ2行(なお、行数は、国際公開公報の表記に基づく。ドイツ語のウムラウトは省略し、エスツェットは「ss」として表記した。また、日本語訳は、原則、申立人による英訳及び日本語訳のうち、日本語訳を採用した。甲4において以下同じ。)
「Der Erfindung liegt die Aufgabe zu Grunde, einen Fahrzeugluftreifen der eingangs genannten Art, welcher fur den erwahnten Einsatzzweck auf Light- Tracks, Pickups und dergleichen und insbesondere auf speziellen Untergrunden, wie Schnee, Schneematsch, sonstigem Matsch und dergleichen geeignet ist, hinsichtlich seiner Handling-, Brems- und Traktionseigenschaften sowie seiner Lebensdauer zu verbessern.」
(日本語訳:本発明は、操作性、制動性、牽引特性、更には、寿命に関して、特に、雪、ぬかるみ、その他の泥濘地等のような特別の種類の路面において、ライトトラックやピックアップ等の用途に好適であり、先に言及された種類の乗り物用空気入りタイヤを改善するという目的に基づいている。)
イ 4ページ7行~10行
「Bei der gezeigten, vereinfachten Ausfuhrung sind die Umfangsrillen 7, 8 in Umfangsrichtung gerade umlaufende Rillen, sie konnen jedoch auch Zickzack- oder wellenformig verlaufen und daher gegenuber der Umfangsrichtung insbesondere unter einem Winkel < 45° geneigte Abschnitte aufweisen.」
(日本語訳:簡略化された態様に示されるように、周方向溝7、8は、周方向に沿って直線状に走る溝であるが、それらは、ジグザクに又は波打つような形で走っていてもよいし、そうすることで周方向に対して特に45°未満の角度に方向付けられる部分を有するようにしてもよい。)
ウ 4ページ26行~5ページ17行
「An den die Umfangsrillen 7, 8 begrenzenden Blockflanken 10, 11, 12 sind jeweils zwei Vorsprunge 13 ausgebildet, an den Blockflanken 11 ' und 12', welche die Querrillen 5, 6 begrenzen, jeweils ein Vorsprung 14. Die Anordnung der Vorsprunge 13, 14 ist bevorzugt derart, dass sie jeweils an gegenuberliegenden Blockflanken 10, 11, 12, 11 ', 12' einander paarweise gegenuberliegen. Die Vorsprunge 13, 14 verlaufen entlang der Blockflanken 10, 11, 12, 11 ', 12' beginnend in einem Abstand ai von 1,5 mm bis 2,5 mm, insbesondere 2 mm, von der jeweiligen Blockoberflache bis zum jeweiligen Rillengrund. Die Vorsprunge 13, 14 weisen jeweils Oberflachen 13a, 14a mit einer in einem Abstand a2von 0,3 mm bis 1,0 mm, insbesondere 0,4 mm bis 0,6 mm, parallel zur Blockflanke 10, 11, 12, 11 ', 12' verlaufenden Kante auf, von welcher eine unter einem Winkel β von bis zu 7°, insbesondere bis zu 5°, zur jeweiligen Blockflanke 10, 11, 12, 11 ', 12' verlaufende Stirnflache 13b, 14b bis zum jeweiligen Rillengrund verlauft. Zwischen der Stirnflache 13b, 14b und der jeweiligen Blockflanke 10, 11, 12, 11 ', 12' verlaufen in radialer Richtung schmale Seitenflachen 13c, 14c. Die Oberflachen 13a, 14a sind langgestreckte Vierecke, insbesondere im Wesentlichen gleichseitige Trapeze, und verlaufen parallel zu den Profilblockoberflachen. Die langere Trapezgrundlinie befindet sich an der jeweiligen Blockflanke 10, 11, 12, 11 ', 12', die kurzere Grundlinie der Trapezform verlauft parallel zur jeweiligen Blockflanke 10, 11, 12, 11 ', 12' und ist jene Kante, von welcher die Stirnflache 13b, 14b ausgeht. Die grosste Langserstreckung Li der Vorsprunge 13 - entlang der Erstreckung der jeweiligen Umfangsrille 7, 8 - betragt 4 mm bis 10 mm, die Langserstreckung Li ' jener Kante, an welcher die Stirnflache 13b anschliesst, kann um bis zu 3 mm kurzer sein. Der gegenseitige Abstand b der paarweise an den Blockflanken 10, 11 und 12 angeordneten Vorspunge 13 betragt mindestens 2 mm, ihr Abstand zu den jeweiligen Blockecken mindestens 1 mm.」
(日本語訳:2つの突起13はそれぞれ周方向溝7、8に隣接するブロック側面10、11、12上に形成され、1つの突起14はそれぞれ横溝5、6に隣接するブロック側面11’、12’上に形成されている。突起13、14は、好ましくは、それらが反対側のブロック側面10、11、12,11’、12’上において互いに対をなして反対側に位置するように配置される。突起13、14はブロック側面10、11、12、11’、12’に沿って延在し、対応するブロック表面から1.5mm~2.5mm、特に2mmとなる距離a1から始まり、対応する溝底まで至る。突起13、14はそれぞれ0.3mm~1.0mm、特に0.4mm~0.6mmの距離a2でブロック側面10、11、12、11’、12’に対して平行に延びるエッジを備えた面13a、14aを有し、そのエッジから対応するブロック側面10、11、12、11’、12’に対して最大7°、特に最大5°の角度βで端面13b、14bと対応する溝底まで伸びている。狭い側面13c、14cは端面13b、14bと対応するブロック側面10、11、12、11’、12’との間において径方向に延びている。面13a、14aは細長い長方形、特に実質的に等辺の台形であり、輪郭ブロックの表面と平行に延在する。台形の長辺は対応するブロック側面10、11、12、11’、12’上に位置し、台形の短辺は対応するブロック側面10、11、12、11’、12’と平行に延在し、端面13b、14bが始まるエッジである。突起13の長手方向の最大幅L1は、対応する周方向溝7、8にの幅に沿うものであるが、4mm~10mmであり、端面13bが接合するエッジの長手方向の幅L1’は最大で3mm短い。ブロック側面10、11、12上に対をなすように配置された突起13間の相互距離bは少なくとも2mmであり、それらの対応するブロックコーナーからの距離は少なくとも1mmである。)
エ 5ページ19行~22行
「Die Vorsprunge 14 an den Blockflanken 11 ' und 12' weisen eine Langserstreckung L2 entlang der Blockflanken 11 ', 12' auf, die insbesondere 10 mm bis 20 mm betragt, die Langserstreckung L2' an jener Kante, an welche die Stirnflache 14b anschliesst, kann um bis zu 3 mm kleiner als L2 sein.」
(日本語訳:ブロック側面11’、12’上の突起14はブロック側面11’、12’に沿って長手方向の幅L2を有し、それは特に10mm~20mmであり、端面14bが接合するエッジの長手方向の幅L2’はL2よりも最大で3mm短い。)
オ 5ページ24行~31行
「Die Begrenzungskanten der Oberflachen 13a, 14a wirken als,,Traktionskanten" und tragen zu einer Verbesserung der Verzahnung des Laufstreifens mit weichem Untergrund, wie Schnee, Matsch, Sand und dergleichen bei. Die gegenuber der Neigung der Blockflanken 10, 11, 12, 11 ', 12' zur radialen Richtung grossere Neigung der Stirnflachen 13b, 14b der Vorsprunge 13, 14 bewirkt eine besonders vorteilhafte Stabilisierung der Profilblocke la, 2a, 3a durch die Vorsprunge 13, 14. Das Gummimaterial der Vorsprunge 13, 14 schutzt ferner die Profilblocke la, 2a 3a vor Einschnitten oder Beschadigungen, insbesondere durch scharfe Steine und dergleichen.」
(日本語訳:面13a、14aの境界エッジは「トラクションエッジ」として機能し、雪、泥、砂等の軟らかい路面に対するトレッドの積極的な引っ掛かりに関する改善に貢献する。突起13、14の端面13b、14bの傾斜は、ブロック側面10、11、12、11’、12’径方向に対する傾斜よりも大きいものであるが、特に、突起13,14による輪郭ブロック1a、2a、3aの有利な安定化をもたらす。また、突起13、14のゴム材料は、特に鋭利な石等による切断や損傷から輪郭ブロック1a、2a、3aを保護する。)
(2)図面
ア 図1
「
[図:0001399322000010.jpg]
」
イ 図2
「
[図:0001399322000011.jpg]
」
5 甲5
本件特許の出願前に公開された甲5には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)明細書
「【0007】そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、ラグ溝などの剛性的な不連続部分で発生するタイヤ車軸力の変動に対して逆方向の車軸力を発生させることにより、トレッド部の剛性的な不連続部分に起因するパターンノイズを低下するようにした空気入りタイヤを提供することを目的とする。」
「【0025】即ち、本発明の空気入りタイヤ10のトレッド部11は、図1に示すようにトレッド部11の踏み面部Tに、タイヤ周方向Xに延びる少なくとも1本(通常は複数本)のリブ溝(周方向溝)12が形成され、このリブ溝12によってリブ列Bが形成されるとともに、このリブ列Bの周方向には、このリブ列Bをタイヤ幅方向Yに横切って、タイヤ周方向Xに対して剛性的な不連続部分となるラグ溝(横溝)13が適宜間隔をもって多数形成される。
【0026】そして、前記リブ溝12と前記ラグ溝13によって多数のブロック(陸部)14が形成され、これらブロック14の表面が図外の路面との接地面となる。尚、この基本例では、前記ラグ溝13はタイヤ周方向Xに対して若干傾斜して形成されるようになっており、かつ、隣接したリブ列Bに形成したラグ溝13がタイヤ幅方向Yに重ならないように、これら隣接したリブ列B,B間ではラグ溝13がタイヤ周方向Xにずれて形成されている。
【0027】前記空気入りタイヤ10は、前記踏み面部Tの境界に接地ラインKが形成されるが、この接地ラインKは走行時のタイヤ回転に伴って、矢印Uで示す図中上方に移動するものとする。この接地ラインKは、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向Yのセンター部分では車幅方向Yに延びている。
【0028】ここで、本発明にあっては、図2に示すように前記リブ溝12の壁面12aに、前記ラグ溝13で発生されるタイヤ車軸力の変動分を打ち消す剛性変化部分としての突出部20を形成してある。即ち、ラグ溝13は路面との間に空間部が形成され、従来の課題点としても記載したように、このラグ溝13が剛性の低下部分となってタイヤ車軸力を大きく低下する。
【0029】このとき、前記突出部20は、これを設けたリブ溝12を形成するリブ列Bに対して相対する側、つまり離れる側の壁面12aに形成される。また、突出部20は、図1ではラグ溝13を挟んで両側のリブ溝12の壁面12aに形成したが、いずれか一方のリブ溝12のみに形成することもできる。
【0030】また、前記突出部20の中心C1は、図1に示すように接地ラインKがラグ溝13に最初に接触する接触開始点P1を通る第1ライン位置K1と、最後にこのラグ溝13から離れる接触終了点P2を通る第2ライン位置K2と、の範囲Zに存在しておればよい。
【0031】図3,図4はトレッド部11に対する前記突出部20の形状およびその大きさを示し、図3に示すように突出部20は、先端に平坦面20aを設けて平面形状が略円弧状となるように前記壁面12aから突設されるとともに、図4に示すようにリブ溝12の底面12bからリブ溝12の開放部12cに向かって除々に突出量が減少して、断面が略三角形状となるように突設される。
【0032】このとき、図3,図4に示すようにリブ溝12のタイヤ表面の幅をW1、ラグ溝13のタイヤ表面の幅をW2とすると、突出部20のタイヤ周方向Xの長さWaは、0.5W2≦Wa≦4W2として設定することが好ましく、また、突出部20の突出量Wbは、0.05W1≦Wb≦0.5W1として設定することが好ましい。更に、リブ溝12の深さをD1とすると、突出部20の底面12bからの高さDcは、0.3D1≦Dc≦1.0D1として設定することが好ましい。
【0033】図5,図6は前記トレッド部11および突出部20の具体的な寸法例を示し、リブ溝12は幅W1および深さD1が共に8mmとなる断面正方形の溝形状とし、かつ、ラグ溝13も幅W2および深さ(符号無し)が共に8mmとなる断面正方形の溝形状として形成してある。このラグ溝13の傾斜角θは30度である。また、突出部20は長さWaが8mm、突出量Wbが3mm、高さDcが8mmとして形成してある。図5中CLはタイヤ幅方向Yのタイヤ赤道面を示す。
【0034】(作用)かかる構成になる空気入りタイヤ10では、トレッド部11の踏み面部Tに形成されたリブ溝12の壁面12aに、リブ列Bの周方向に適宜間隔をもって形成されたラグ溝13に対応させて突出部20を形成し、この突出部20を剛性変化部分として用いたので、リブ列Bは突出部20の形成部分でトレッド圧縮剛性を増加することができる。
【0035】従って、タイヤ回転に伴って接地ラインKにラグ溝13が到達した時点で発生するタイヤ車軸力の変動分(この場合、ラグ溝13が剛性低下部分となってタイヤ車軸力は減少される)を、前記突出部20によって打ち消すことができるため、ラグ溝13に起因するタイヤ車軸力の変動が突出部20で抑制でき、ひいては、車軸の加振力を低減して、これに起因するパターンノイズを効果的に減少することができる。これによって、走行中における車室内の静粛性を確保して乗り心地性を向上することができる。
【0036】また、前記突出部20がリブ溝12内に設けられることにより、この突出部20がタイヤ表面から突出することが無いため、突出部20が踏み面部Tの領域内に位置した場合にもタイヤ10表面を滑らかに接地させることができる。このため、前記突出部20によってタイヤ10に別の振動原因が発生するのを防止することができる。
【0037】更に、前記突出部20を前記ラグ溝13に対してタイヤ幅方向Yに相対する位置に設けたので、タイヤ10がこれの回転に伴って略タイヤ幅方向Yに順次連続して接地していく際に、突出部20とラグ溝13とは略同時に接地することになり、このラグ溝13で発生するタイヤ車軸力の変動分を突出部20の剛性変化部分で安定的に打ち消して、パターンノイズの低減効果を高めることができる。
【0038】更にまた、前記ラグ溝13と前記突出部20を、タイヤの接地ラインK上に同時に存在させたことにより、ラグ溝13が路面に接触した瞬間に同じタイミングで突出部20の形成部分も接地し、ラグ溝13で変動するタイヤ車軸力を高精度で打ち消すことができ、パターンノイズの抑制効果を著しく高めることができる。
【0039】また、本実施形態の空気入りタイヤ10では、剛性変化部分を、リブ溝12の壁面12aに形成されてトレッド圧縮剛性を増加する突出部20としたので、この突出部20を前記壁面12aを突出させるという簡単な構造とすることができるため、タイヤの加硫型枠の構造を大幅に複雑化することなく剛性変化部分を簡単に形成することができる。
【0040】次に、前記空気入りタイヤ10を、タイヤサイズ195/65R14 ,内圧200kPa ,荷重4kN として構成したものをタイヤ車軸力検出装置によって試験し、その結果を図7のグラフによって示す。
【0041】即ち、この試験は、突出部20を設けないラグ溝16のみの場合(ピーク値F1で示す)と、リブ溝12の片側の壁面12aのみに突出部20を設けた場合(ピーク値F2で示す)と、リブ溝12の対向する両壁面12aに突出部20を設けた場合(ピーク値F3で示す)とをそれぞれ比較したもので、それぞれをP-P値で比較した場合にF1>F2>F3となり、のラグ溝16のみの場合に比較して、の突出部20を両壁面12aに設けた場合は40パーセントの改善効果が得られた。
【0042】(実施形態)以上説明した空気入りタイヤ10の基本的構成に基づいて、図8~図14に示す第1~第7実施形態によって具体的な空気入りタイヤ10a~10gを開示する。
【0043】(第1実施形態)図8は本発明の第1実施形態の空気入りタイヤ10aのトレッド部11を示す底面図で、前記基本構造と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0044】この第1実施形態の空気入りタイヤ10aのトレッド部11は、タイヤ幅方向Yの中央部に3列のリブ列B1,B2,B3が設けられるとともに、両肩部分(幅方向Y両側部分)に幅広のリブ列B4,B5が設けられる。
【0045】この場合、中央部の3列のリブ列B1,B2,B3は、B1をセンターリブ、B2,B3をセカンドリブと称し、かつ、両肩部分のリブ列B4,B5をショルダーリブと称するものとする。勿論、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5はタイヤ周方向Xに延びる複数のリブ列12で形成され、かつ、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5には多数のラグ溝13が形成されており、これらリブ溝12およびラグ溝13によって多数のブロック14が形成され、この実施形態ではタイヤ周方向Xに60個のブロック14が配置されるようになっている。
【0046】尚、この実施形態ではセンターリブB1およびセカンドリブB2,B3に形成されるラグ溝13は一定方向に傾斜(傾斜角θ)されるが、ショルダーリブB4,B5に形成されるラグ溝13はタイヤ幅方向Yに平行に形成されている。
【0047】前記空気入りタイヤ10が接地した際の踏み面部Tの外周境界が接地ラインKとなり、この接地ラインKはタイヤ回転に伴って図中上方へと連続的に移動する。また、踏み面部Tのタイヤ幅方向Yの境界はショルダーリブB4,B5上に位置し、接地幅ラインKwが設定される。
【0048】ここで、この第1実施形態では前記各リブ列B1,B2,B3,B4,B5の各ラグ溝13に対応して突出部20が設けられるようになっており、各突出部20は各ラグ溝13に相対するリブ溝12の壁面12aに形成される。従って、この実施形態では各リブ溝12の両壁面12aにそれぞれ突出部20が設けられることになる。
【0049】また、突出部20は全てのラグ溝13に対応させて設けたことにより、各壁面12aのタイヤ周方向Xにはブロック14の個数に対応した60個の突出部20が設けられる。
【0050】ところで、前記突出部20の形成位置は、図1に示したようにそのラグ溝13に対して接地ラインKが接触開始点P1を通る第1ライン位置K1と、接触終了点P2を通る第2ライン位置K2との間に設定されるが、ショルダーリブB4,B5にあっては、接触開始点P1′はラグ溝13と接地幅ラインKwとの交点によって設定される。このことは以下の各実施形態において同様となる。尚、ショルダーリブB4,B5の接触終了点P2′は、中央部のリブ列B1,B2,B3と同様にラグ溝13と接地ラインKとの交点によって決定される。」
「【0051】(第2実施形態)図9は本発明の第2実施形態の空気入りタイヤ10bのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。」
「【0056】(第3実施形態)図10は本発明の第3実施形態の空気入りタイヤ10cのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。」
「【0059】(第4実施形態)図11は本発明の第4実施形態の空気入りタイヤ10dのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。」
「【0063】(第5実施形態)図12は本発明の第5実施形態の空気入りタイヤ10eのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。」
「【0066】(第6実施形態)図13は本発明の第6実施形態の空気入りタイヤ10fのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。」
「【0070】(第7実施形態)図14は本発明の第7実施形態の空気入りタイヤ10gのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。」
(2)図面
ア 図1
「
[図:0001399322000012.jpg]
」
イ 図2
「
[図:0001399322000013.jpg]
」
ウ 図3
「
[図:0001399322000014.jpg]
」
エ 図4
「
[図:0001399322000015.jpg]
」
オ 図5
「
[図:0001399322000016.jpg]
」
カ 図8
「
[図:0001399322000017.jpg]
」
キ 図9
「
[図:0001399322000018.jpg]
」
ク 図10
「
[図:0001399322000019.jpg]
」
ケ 図11
「
[図:0001399322000020.jpg]
」
コ 図12
「
[図:0001399322000021.jpg]
」
サ 図13
「
[図:0001399322000022.jpg]
」
シ 図14
「
[図:0001399322000023.jpg]
」
第6 当審の判断
1 甲1発明を主引用発明とする場合
(1)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲1発明とを対比するに、後者の「トレッド部」は、その機能及び構造からみて、前者の「トレッド部」に相当し、以下同様に、「ブロック」は「ブロック」「第1ブロック」「第2ブロック」に、「ラリー用タイヤ」は「タイヤ」に、「部分A」は「第1部分」に、「部分B」は「第2部分」に、「部分C」は「第1突出部」に、「端部E」は「突出端」に、「踏面」は「踏面」に、「輪郭形状」は「輪郭形状」に、それぞれ相当する。
上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
甲1発明の「トレッド部に、複数のブロックが並べられたラリー用タイヤ」は、本件発明9の「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤ」に相当する。
甲1発明の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方向側の部分Aと、タイヤ周方向の他方側の部分Bとを有するブロック」である構成は、本件発明9の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロック」である。
甲1発明の「前記部分Aは、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びて」いる構成は、本件発明9の「前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びて」いる構成に相当する。
甲1発明の「前記部分Bは、タイヤの軸方向の幅が部分Aよりも大きいことにより、前記部分Aからタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側向に偏って」いる構成は、本件発明9の「前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏って」いる構成に相当する。
甲1発明の「前記部分Bは、前記部分Aからタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した部分Cを含」む構成は、本件発明9の「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含」む構成に相当する。
甲1発明の「前記複数のブロックはタイヤ周方向に並べられ、前記複数のブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成は、複数のブロックのうち並んでいる2つのブロックをブロック1及びブロック2とすると、ブロック1とブロック2はタイヤ周方向に交互に並べられ、ブロック2の踏面は、ブロック1の踏面を反転させたものといえることから、本件発明9の「前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成に相当する。
してみると、本件発明9と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点1]
「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。」
[相違点1]
第1突出部について、本件発明9では、「前記第1突出部は、突出端に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状である」のに対して、甲1発明では、前記部分Cは、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した端部Eを有し、前記端部Eに向かって複数の端部がタイヤ軸方向に階段状に形成されている点。
イ 検討
相違点1について検討する。
甲3発明は、タイヤのブロックであって、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向にほぼ沿って延びているA部分、タイヤ軸方向の幅が前記A部分よりも大きいB部分、及び、前記A部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出したC部分とを含むブロックにおいて、C部分が一方側のE端部に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパー状となっているものである。
ここで、甲1発明と甲3発明とは、部分AとA部分、部分BとB部分、そして部分CとC部分という共通する基本構成からなるタイヤのブロックであることから、甲1発明に甲3発明を適用することで、相違点1に係る本件発明9の構成とすることは当業者にとって何ら困難性はない。
ウ 小括
したがって、本件発明9は、甲1発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と甲1発明とを対比するに、後者の「トレッド部」は、その機能及び構造からみて、前者の「トレッド部」に相当し、以下同様に、「ブロック」は「ブロック」「第1ブロック」「第2ブロック」に、「ラリー用タイヤ」は「タイヤ」に、「部分A」は「第1部分」に、「部分B」は「第2部分」に、「部分C」は「第1突出部」に、「部分D」は「第2突出部」に、「踏面」は「踏面」に、「輪郭形状」は「輪郭形状」に、それぞれ相当する。
上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
甲1発明の「トレッド部に、複数のブロックが並べられたラリー用タイヤ」は、本件発明10の「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤ」に相当する。
甲1発明の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方向側の部分Aと、タイヤ周方向の他方側の部分Bとを有するブロック」である構成は、本件発明10の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロック」である。
甲1発明の「前記部分Aは、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びて」いる構成は、本件発明10の「前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びて」いる構成に相当する。
甲1発明の「前記部分Bは、タイヤの軸方向の幅が部分Aよりも大きいことにより、前記部分Aからタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側向に偏って」いる構成は、本件発明10の「前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏って」いる構成に相当する。
甲1発明の「前記部分Bは、前記部分Aからタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した部分Cを含」む構成は、本件発明10の「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含」む構成に相当する。
甲1発明の「前記部分Bは、前記部分Aからタイヤ軸方向の他方側に前記部分Cよりも小さく突出した部分Dを含」む構成は、本件発明10の「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含」む構成に相当する。
甲1発明の「前記複数のブロックはタイヤ周方向に並べられ、前記複数のブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成は、複数のブロックのうち並んでいる2つのブロックをブロック1及びブロック2とすると、ブロック1とブロック2はタイヤ周方向に交互に並べられ、ブロック2の踏面は、ブロック1の踏面を反転させたものといえることから、本件発明9の「前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成に相当する。
してみると、本件発明10と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違点はない。
[一致点2]
「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含み、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。」
イ 小括
したがって、本件発明10と甲1発明との相違点はなく、本件発明10は、甲1発明であり、また仮に相違点があるとしても、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 甲3発明を主引用発明とする場合
(1)本件発明9
ア 対比
本件発明9と甲3発明とを対比するに、後者の「トレッド部12」は、その機能及び構造からみて、前者の「トレッド部」に相当し、以下同様に、「ブロック」は「ブロック」「第1ブロック」「第2ブロック」に、「空気入りラジアルタイヤ」は「タイヤ」に、「A部分」は「第1部分」に、「B部分」は「第2部分」に、「C部分」は「第1突出部」に、「E端部」は「突出端」に、「テーパ状」は「テーパ状」に、「踏面」は「踏面」に、「輪郭形状」は「輪郭形状」に、それぞれ相当する。
上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
甲3発明の「トレッド部12に、複数のブロックが並べられた空気入りラジアルタイヤ」は、本件発明9の「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤ」に相当する。
甲3発明の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側のA部分と、タイヤ周方向の他方側のB部分とを有するブロック」である構成は、本件発明9の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロック」である構成に相当する。
甲3発明の「前記A部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向にほぼ沿って延びて」いる構成は、本件発明9の「前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びて」いる構成に相当する。
甲3発明の「前記B部分は、タイヤ軸方向の幅が前記A部分よりも大きいことにより、前記A部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏って」いる構成は、本件発明9の「前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏って」いる構成に相当する。
甲3発明の「前記B部分は、前記A部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出したC部分を含」む構成は、本件発明9の「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含」む構成に相当する。
甲3発明の「前記C部分は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出したE端部を有し、前記E端部に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状」である構成は、本件発明9の「前記第1突出部は、突出端に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状」である構成に相当する。
甲3発明の「前記複数のブロックはタイヤ周方向に並べられ、前記複数のブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成は、複数のブロックのうち並んでいる2つのブロックをブロック1及びブロック2とすると、ブロック1とブロック2はタイヤ周方向に交互に並べられ、ブロック2の踏面は、ブロック1の踏面を反転させたものといえることから、本件発明9の「前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成に相当する。
してみると、本件発明9と甲3発明とは以下の点で一致し、相違点はない。
[一致点3]
「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、突出端に向かってタイヤ周方向の長さが減少するテーパ状であり、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。」
イ 小括
したがって、本件発明9と甲3発明との相違点はなく、本件発明9は、甲3発明であり、また仮に相違点があるとしても、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明10
ア 対比
本件発明10と甲3発明とを対比するに、後者の「トレッド部12」は、その機能及び構造からみて、前者の「トレッド部」に相当し、以下同様に、「ブロック」は「ブロック」「第1ブロック」「第2ブロック」に、「空気入りラジアルタイヤ」は「タイヤ」に、「A部分」は「第1部分」に、「B部分」は「第2部分」に、「C部分」は「第1突出部」に、「D部分」は「第2突出部」に、「踏面」は「踏面」に、「輪郭形状」は「輪郭形状」に、それぞれ相当する。
上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
甲3発明の「トレッド部12に、複数のブロックが並べられた空気入りラジアルタイヤ」は、本件発明10の「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤ」に相当する。
甲3発明の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側のA部分と、タイヤ周方向の他方側のB部分とを有するブロック」である構成は、本件発明10の「前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロック」である構成に相当する。
甲3発明の「前記A部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向にほぼ沿って延びて」いる構成は、本件発明10の「前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びて」いる構成に相当する。
甲3発明の「前記B部分は、タイヤ軸方向の幅が前記A部分よりも大きいことにより、前記A部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏って」いる構成は、本件発明10の「前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏って」いる構成に相当する。
甲3発明の「前記B部分は、前記A部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出したC部分を含」む構成は、本件発明10の「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含」む構成に相当する。
甲3発明の「前記B部分は、前記A部分からタイヤ軸方向の他方側に前記C部分よりも小さく突出しているD部分を含」む構成は、本件発明10の「前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含」む構成に相当する。
甲3発明の「前記複数のブロックはタイヤ周方向に並べられ、前記複数のブロックのうち並んだ2つは互いに踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成は、複数のブロックのうち並んでいる2つのブロックをブロック1及びブロック2とすると、ブロック1とブロック2はタイヤ周方向に交互に並べられ、ブロック2の踏面は、ブロック1の踏面を反転させたものといえることから、本件発明9の「前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有する」構成に相当する。
してみると、本件発明9と甲3発明とは以下の点で一致し、相違点はない。
[一致点4]
「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の他方側に前記第1突出部よりも小さく突出した第2突出部を含み、
前記複数のブロックは、前記第1ブロックと、第2ブロックとがタイヤ周方向に交互に並べられ、前記第2ブロックの踏面は、前記第1ブロックの踏面を反転させた輪郭形状を有するタイヤ。」
イ 小括
したがって、本件発明10と甲3発明との相違点はなく、本件発明10は、甲3発明であり、また仮に相違点があるとしても、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 まとめ
よって、取消理由通知に記載した取消理由により、請求項9、10に係る特許は取り消されるべきものである。
第7 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由の要旨は以下のとおりである(なお、令和4年2月28日付けの取消理由通知における取消理由も含んでいる。)。
(進歩性)訂正前の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項1、3~6、8 :甲1、及び甲4又は甲5
・請求項1、2、7、11:甲2、及び甲4又は甲5
・請求項1~6、8 :甲3、及び甲4又は甲5
2 対比・判断
2-1 甲1発明を主引用発明とする場合
(1)本件発明1について
ア 対比
上記第6の1の(1)及び(2)のアの対比を踏まえると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点5]
「トレッド部に、複数のブロックが並べられたタイヤであって、
前記ブロックの少なくとも一つは、タイヤ周方向の一方側の第1部分と、タイヤ周方向の他方側の第2部分とを有する第1ブロックであり、
前記第1部分は、略一定のタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に沿って延びており、
前記第2部分は、タイヤ軸方向の幅が前記第1部分よりも大きいことにより、前記第1部分からタイヤ軸方向の外側に突出し、かつ、その突出がタイヤ軸方向の一方側に偏っており、
前記第2部分は、前記第1部分からタイヤ軸方向の一方側に最も大きく突出した第1突出部を含み、
前記第1突出部は、踏面と、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延びる壁面とを有し、
前記第1突出部は、タイヤ軸方向の前記一方側に最も突出した突出端を有している、タイヤ。」
[相違点2]
第1突出部について、本件発明1では、「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、」「前記凸部は、前記突出端から前記第1部分に向かってのびる」のに対して、甲1発明では、かかる事項を有していない点。
イ 判断
相違点2について検討する。
本件発明1は、相違点2に係る事項のうち「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し」ていることを備えることにより、「剛性の小さい第1突出部15の剛性を局所的に高めて、耐摩耗性を高く維持する」(本件明細書の【0040】)という作用効果を奏するから、当該相違点は設計的事項とはいえない。
また、甲4、甲5は、相違点2に係る事項のうち「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し」ていることを開示するものではない。
そうすると、甲1発明において、相違点2に係る事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3、4、8について
ア 対比
上記第6の1の(1)及び(2)のアの対比を踏まえると、本件発明3、4、8と甲1発明とは、少なくとも以下の相違点3を含む点で相違する。
[相違点3]
第1突出部について、本件発明3、4、8では、「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し」ているのに対して、甲1発明では、かかる事項を有していない点。
イ 判断
相違点3は、「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し」ている点で相違点2と共通するものである。
そうすると、上記(3)のイで説示したのと同様の理由により、甲1発明において、相違点3に係る事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
したがって、本件発明3、4、8は、甲1発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5、6について
本件発明5、6は、本件発明4の発明特定事項を含み、さらに限定をしたものであるから、同様に、甲1発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-2 甲2発明を主引用発明とする場合
(1)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも、第1突出部について、本件発明1では、「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、」「前記凸部は、前記突出端から前記第1部分に向かってのびる」のに対して、甲2発明では、かかる事項を有していない点で相違する。
上記相違点は、上記2-1(1)アで述べた相違点2と同じものであり、その判断についても上記2-1(1)イで説示したのと同様である。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2、7について
本件発明2、7は、本件発明1の発明特定事項を含み、さらに限定をしたものであるから、同様に、甲2発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明11について
ア 対比・判断
本件発明11と甲2発明とを対比すると、少なくとも、第1部分と第2部分について、本件発明11では、「前記第2部分のタイヤ軸方向の最大幅は、前記第1部分のタイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍である」のに対して、甲2発明では、かかる事項の特定がない点で相違する。
本件発明11は、上記相違点に係る事項により、「雪上走行性能や排雪性能が低下するおそれ」や「排水抵抗が大きくなる他、耐摩耗性能が悪化するおそれ」が生じない(本件明細書【0047】)という作用効果を奏するから、当該相違点は設計的事項とはいえず、また、甲2発明において「B部分」(第2部分に相当)のタイヤ軸方向の最大幅を「A部分」(第1部分に相当)タイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍に変更する動機付けがあるとはいえない。
また、甲4、甲5は、上記相違点に係る本件発明11の事項を開示するものではない。
したがって、本件発明11は、甲2発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の34ページにおいて、本件発明11の「前記第2部分のタイヤ軸方向の最大幅は、前記第1部分のタイヤ軸方向の最大幅の1.1~1.5倍である」という事項に対して、甲2の図2の記載及び段落【0014】にブロック形状として種々の形態とすることが記載されていることより、甲2には当該事項が開示されている蓋然性が高い旨主張する。
しかしながら、一般に願書に添付される図面は、特許を受けようとする発明の内容を明らかにするための説明図であり、寸法の正確性をもって記載されたものとは必ずしもいえないから、甲2の図2は、「第2部分」と「第1部分」に相当するもののタイヤ軸方向の最大幅の具体的な比率を開示するとはいえず、また、ブロック形状として種々の形態とすることが示されているとしても、当該比率の具体的な値として「1.1~1.5倍」が開示されているとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
2-3 甲3発明を主引用発明とする場合
(1)本件発明1について
本件発明1と甲3発明とを対比すると、少なくとも、第1突出部について、本件発明1では、「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し、」「前記凸部は、前記突出端から前記第1部分に向かってのびる」のに対して、甲3発明では、かかる事項を有していない点で相違する。
上記相違点は、上記2-1(1)アで述べた相違点2と同じものであり、その判断についても上記2-1(1)イで説示したのと同様である。
したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3、4、8について
本件発明3、4、8と甲3発明とを対比すると、少なくとも、第1突出部について、本件発明3、4、8では、「前記壁面のタイヤ半径方向内方に、局部的に突出する凸部を有し」ているのに対して、甲3発明では、かかる事項を有していない点で相違する。
上記相違点は、上記2-1(2)アで述べた相違点3と同じものであり、その判断についても上記2-1(2)イで説示したのと同様である。
したがって、本件発明3、4、8は、甲3発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2、5、6について
本件発明2、5、6は、本件発明1、4の発明特定事項を含み、さらに限定をしたものであるから、同様に、甲3発明及び甲4、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
よって、申立人の主張する特許異議申立理由により、請求項1~8、11に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明9~10に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであるから、いずれの特許も、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1~8、11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及びその証拠によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明1~8、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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