2021-701230
加飾シート、加飾シートを含む構造体及びその製造方法
- 審判番号
- 2021-701230
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-257350外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6898059
- 請求日
- 2021年12月22日
- 審決日
- 2022年04月28日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 分類
- P1652.121-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
特許第6898059号の請求項1-7に係る特許についての出願は、平成27年12月28日に出願され、令和3年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月7日に特許掲載公報が発行された。
そして、令和3年12月22日に特許異議申立人笹井栄治(以下「申立人」という。)は、請求項1-2に係る特許に対する本件特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第6898059号の請求項1-2の特許に係る発明は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1-2に各々記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)
「【請求項1】基材に接着される加飾シートであって、表面層と、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む第1樹脂層と、前記第1樹脂層と隣接するように配置され前記基材に接着される接着層であって、該接着層は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー混合物の架橋された(メタ)アクリル共重合体を含んでなり、30℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が1.0×103Pa以上、1.0×106Pa以下である接着層、とをこの順に含み、前記接着層の貯蔵弾性率が、130℃、1.0Hzにおいて、1.0×103Pa以上、1.0×105Pa以下であり、真空圧空成形法による基材への貼り付けに使用される、加飾シート。【請求項2】前記接着層の厚さが50μm~1mmである、請求項1に記載の加飾シート。」
第3 申立理由の概要
申立人は、下記の甲号証を証拠として提出し、次の取消理由を主張している。
本件発明1-2は、引用文献1-4に記載された発明に基いて特許を受けることができないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特許第5777714号公報(甲第1号証)
2.特許第5697955号公報(甲第2号証)
3.甲1号証記載の接着層の測定結果(甲第3号証)(文献の名称は甲第3号証には記載されていないため、異議申立書、証拠説明書において用いられている名称を使用した。)
4.特開2010-47020号公報(甲第4号証)
第4 文献の記載
1.引用文献1には以下の記載がある。
「【0001】本発明は、化粧フィルム等のフィルムにより表面が被覆された成形品に関する。特に、化粧フィルムによりその表面が被覆された、自動車の内装品や外装品、および冷蔵庫などの家電製品やパソコン、スマートフォンなどの情報電子機器の筐体などの成形品に関する。」
「【0009】本発明の目的は、基体を有し、その表面がフィルムで被覆された成形品であって、良好な外観を有し、高温環境などの厳しい実使用環境下においても外観が損なわれない成形品を提供することである。」
「【0032】フィルムの製造(1)アクリル系粘着剤層を有するフィルム(α0)の製造綜研化学社製のアクリル系粘着剤(SKダイン1309(商品名)、組成:アクリル酸及びアクリル酸エステル)および綜研化学社製の硬化剤(L-45、組成:トリレンジイソシアネート)を、溶剤としてのトルエンおよび酢酸エチルと共に1000:6:100:100の重量比で混合し、室温にて2分間よく攪拌した。この混合物を、東レフィルム加工社製の剥離フィルム(セラピールWZ(商品名)、厚み38μm)に塗布し、100℃にて2分間乾燥させて厚み30μmの粘着剤層を得た。この粘着剤層の上に、基材層としての、リケンテクノス株式会社のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETG樹脂フィルム、SET329 FZ26401(商品名)、厚み100μm)を貼り合わせて、アクリル系粘着剤層を有するフィルム(α0)を得た。なお、粘着剤のガラス転移点は-25℃、粘度は10Pa・s(25℃)であった。また、粘着剤層の剥離フィルムと接している面の表面粗さは、2μmであった。」
「【0035】上記のようにして得た基体およびフィルムを用い、図1に示す真空成形法または図2に示す真空圧空成形法によって、基体の表面がフィルムで被覆された成形品を得た。得られた成形品を室温で24時間以上放置した後、下記試験を行った。結果を、使用した基体、フィルムおよび成形法とともに、表1に示す。なお、表1において、真空圧空成形法の場合の下室(8)の圧力および上室(7)の圧力は、図2(c)における圧力である。」
段落【0001】に、「本発明は、化粧フィルム等のフィルムにより表面が被覆された成形品に関する」と記載されているから、引用文献1に記載されたフィルムは、化粧フィルムとして用いることが意図されたものである。
段落【0035】に「上記のようにして得た基体およびフィルムを用い、図1に示す真空成形法または図2に示す真空圧空成形法によって、基体の表面がフィルムで被覆された成形品を得た」と記載されているから、当該フィルムは、真空圧空成形法によって、基体の表面を被覆するのに用いられるといえる。
したがって、引用文献1には、以下の引用発明が記載されていると認められる。
<引用発明>
「綜研化学社製のアクリル系粘着剤(SKダイン1309(商品名)、組成:アクリル酸及びアクリル酸エステル)および綜研化学社製の硬化剤(L-45、組成:トリレンジイソシアネート)を、溶剤としてのトルエンおよび酢酸エチルと共に1000:6:100:100の重量比で混合し、室温にて2分間よく攪拌し、その混合物を、東レフィルム加工社製の剥離フィルム(セラピールWZ(商品名)、厚み38μm)に塗布し、100℃にて2分間乾燥させて厚み30μmの粘着剤層を得て、この粘着剤層の上に、基材層としてのリケンテクノス株式会社のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETG樹脂フィルム、SET329FZ26401(商品名)、厚み100μm)を貼り合わせて得たフィルムであって、真空圧空成形法によって、基体の表面を被覆するのに用いられる、化粧フィルム。」
2.引用文献2には以下の記載がある。
「【請求項1】ハードコート層(A)、ベースフィルム層(B)、意匠層(C)および接着層(D)からなる多層フィルムであって、接着層(D)は、40℃以上の融点を有し且つ200μm以下の粒子寸法を有する少なくとも1種の固体表面不活性化ポリイソシアネート(D1)、及び少なくとも1種のイソシアネート反応性ポリマー(D2)を有するものであり、固体表面不活性化ポリイソシアネート(D1)に使用されているポリイソシアネートが、イソフォロンジイソシアネートのイソシアヌレートを含み、接着層(D)を介して基体上に70℃以上で10~90秒の加熱でオーバーレイした後、室温で接着層(D)が自己架橋する事を特徴とする多層加飾フィルム。」
「【0066】本発明の多層加飾フィルムは、接着性、加工性に優れ、且つ成形後の耐熱性、耐加水分解性等の二次物性に優れた多層加飾フィルムである。この多層加飾フィルムは、真空成形、例えば3次元加飾工法(Three dimension Overlay Method:「TOM工法」)により各種の基体、例えば金属、プラスチック基材等へ良好な接着性を示すことから、携帯電話、パソコン躯体、エアコン、テレビ、冷蔵庫、自動車内装用途の加飾のみならず、自動車外装などの耐湿熱性などの耐久性が要求される過酷な用途へも利用できる。」
3.引用文献3には以下の記載がある。
[図:0001384292000001.jpg]
[図:0001384292000002.jpg]
[図:0001384292000003.jpg]
4.引用文献4には以下の記載がある。
「【請求項1】凹凸模様或いは印刷模様を備え、凹凸の深さが20μm~300μmである基材に、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以下のベース樹脂を含み、厚みが100μm~2000μmであって且つ前記凹凸の深さの2倍以上であり、JIS Z0237に準拠した下記40℃保持力が0.2mm~10mmである透明粘着シートと、透明な表面材とを、順次積層してなる構成を備えた意匠性積層材。40℃保持力:JIS Z0237に準拠して、シートを38μmPETフィルムで背貼りした後、JIS Z0237で規定するところのSUS板を用いて面積20mm×20mmで接着させ、40℃の環境下で500gfの荷重を2時間かけた後のズレ長さ。【請求項2】基材の凹凸模様或いは印刷模様における凹凸の深さが150μm~300μmであるのに対し、透明粘着シートの厚みが325μm~2000μmであることを特徴とする請求項1記載の意匠性積層材。」
「【0018】(透明粘着シート)透明粘着シートは、厚みが50μm~2000μmで、JIS Z0237に準拠した保持力が0.2mm~10mmであるのが好ましい。シート状であるから、液状に比べて、取り扱いや厚み精度が良い。【0019】透明粘着シートの厚さは、上述のように50μm~2000μmの範囲が好ましく、この範囲内で基材表面の凹凸度合いに合わせて適宜厚さを選択するのが好ましい。ただ、厚さが50μm未満であると凹凸を吸収できなくなる可能性があり、逆に2000μmを越えると例えば紫外線架橋が困難となる。中でも好ましくは、凹凸の深さに対して2倍以上、特に2.5倍以上の厚さにするのがよい。」
第5 当審の判断
1. 理由1(進歩性)について
(1) 本件発明1について
ア. 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「基体」は、本件発明1の「基材」に相当する。
引用発明の「化粧フィルム」は、その文言から見て基体に装飾を加えることが意図されていると解され、フィルムはシート形状を有するから、本件発明1の「加飾シート」に相当する。
引用発明の「基材層としてのリケンテクノス株式会社のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETG樹脂フィルム、SET329FZ26401(商品名)、厚み100μm)」と、本件発明1の「表面層と、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む第1樹脂層」は、「樹脂層」という点で共通し、その限りで一致する。
引用発明において、「粘着剤層」は「綜研化学社製のアクリル系粘着剤(SKダイン1309(商品名)、組成:アクリル酸及びアクリル酸エステル)および綜研化学社製の硬化剤(L-45、組成:トリレンジイソシアネート)を、溶剤としてのトルエンおよび酢酸エチルと共に1000:6:100:100の重量比で混合し、室温にて2分間よく攪拌し、その混合物を、東レフィルム加工社製の剥離フィルム(セラピールWZ(商品名)、厚み38μm)に塗布し、100℃にて2分間乾燥させて」得られるものである。ここで、アクリル系粘着剤の組成として「アクリル酸及びアクリル酸エステル」とあり、当該アクリル系粘着剤は、硬化剤と混合されることが記載されている。該事項について、技術常識を考慮すれば、当該アクリル系粘着剤は、アクリル酸モノマーとアクリル酸エステルモノマーの「モノマー混合物」からなる「共重合体」であり、当該共重合体が硬化剤で硬化されている、すなわち「架橋」されているといえる。そうすると、引用発明の「綜研化学社製のアクリル系粘着剤(SKダイン1309(商品名)、組成:アクリル酸及びアクリル酸エステル)および綜研化学社製の硬化剤(L-45、組成:トリレンジイソシアネート)を、溶剤としてのトルエンおよび酢酸エチルと共に1000:6:100:100の重量比で混合し、室温にて2分間よく攪拌し、その混合物を、東レフィルム加工社製の剥離フィルム(セラピールWZ(商品名)、厚み38μm)に塗布し、100℃にて2分間乾燥させ」ることにより得られるものは、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー混合物の架橋された(メタ)アクリル共重合体を含んでなる」ものに相当する。
以上から、両者は、以下の一致点で一致しかつ以下の相違点1で相違する。
<一致点>
基材に粘着又は接着される加飾シートであって、
樹脂層と、
前記樹脂層と隣接するように配置され基材に粘着又は接着層であって、該粘着又は接着層は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー混合物の架橋された(メタ)アクリル酸共重合体を含んでなる、粘着又は接着層と
を含み、真空圧空成形法による基材への貼り付けに使用される、加飾シート。
<相違点1>
樹脂層に関して、本件発明1は、「表面層と、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む第1樹脂層」であるのに対して、引用発明は、「基材層としてのリケンテクノス株式会社のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETG樹脂フィルム、SET329FZ26401(商品名)、厚み100μm)」である点。
<相違点2>
「粘着又は接着層」に関して、本件発明1は、「接着層」であって、「接着層の30℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が1.0×103Pa以上、1.0×106Pa以下であり、接着層の貯蔵弾性率が、130℃、1.0Hzにおいて、1.0×103Pa以上、1.0×105Pa以下」であるのに対し、引用発明は、「粘着剤層」であって、その貯蔵弾性率が不明である点。
イ. 判断
事案に鑑み、最初に相違点2について検討する。
申立人は、引用文献1の記載に基づいて再現実験を行って得られた粘着剤層の貯蔵弾性率を測定した結果が引用文献3(甲第3号証)に記載されている旨主張する。しかし、引用文献3には,書類の作成日並びに作成者名及びその者の押印がなく、また、実際に再現実験を行った場所のほか、実験者名も記載されていないから、引用文献3の記載が、引用文献1の記載に基づき忠実にアクリル系粘着剤層を再現して製造したことに加えて本件特許明細書と同一の貯蔵弾性率の測定を行ったと認めることができない。
そうすると、引用発明の粘着剤層が、相違点2に係る本件発明1の接着層に係る貯蔵弾性率であるとはいえない。
そして、本件発明1は、特定される貯蔵弾性率を有する接着層と第1樹脂層と表面層とにより、混入した埃などの異物又は基材表面の凹凸の形状を、接着層に吸収させつつ、それらの形状が表面層に伝播することを第1樹脂層により遮蔽することができるという有利な効果を奏する。
したがって、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて限定するものであるから、上記(1)と同様に、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
第6 結び
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-2に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1-2に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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