特許異議申立
2021-701187
半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置
- 審判番号
- 2021-701187
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-165661
- 登録番号
- 6888870
- 請求日
- 2021年12月15日
- 審決日
- 2022年08月01日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】京セラ株式会社
- 【権利者代理人】有永 俊
- 【異議申立人】平位 和也
- 審判長/審判官
- 審判長 蔵野 雅昭
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 土橋 敬介
- 分類
- P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6888870号発明「半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6888870号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6888870号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成29年8月30日に出願された特願2017-165661号に係る出願であって、令和3年5月24日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月15日に特許異議申立人 平位 和也(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和4年3月31日付けで取消理由通知が通知された後に同年6月6日に特許権者 京セラ株式会社(以下、「特許権者」という。)により意見書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
特許第6888870号の請求項1ないし7の特許に係る発明は、それぞれ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」といい、これらをあわせて「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)球状アルミナを含有する半導体封止用樹脂組成物であって、 前記(D)球状アルミナは、該樹脂組成物中に75質量%以上95質量%未満含まれるとともに、(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有することを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、平均粒子径が0.5μm以上2μm未満の(E)微細シリカを(D)球状アルミナと(E)微細シリカの合計量に対し0.1~20質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(F)離型剤を前記樹脂組成物中に0.05~1.0質量%含有するとともに、前記(F)離型剤は、(F1)融点が75℃以上90℃未満の離型剤、及び(F2)融点が90℃以上125℃以下の離型剤であり、前記(F1)と前記(F2)の配合割合が(F1):(F2)=95:5~80:20であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記半導体封止用樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が3~6W/mk、及び/又は誘電率が5~8であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記半導体装置が指紋センサを備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体装置がシステムインパッケージを備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の趣旨
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の趣旨
申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の趣旨は、次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許発明1ないし7は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第4号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許発明1ないし7は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
概略は、以下のとおり。
本件明細書に記載の実施例及び比較例は、本件特許発明1が「前記(D)球状アルミナは、該樹脂組成物中に75質量%以上95質量%未満含まれるとともに、(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、」との構成を具備することにより所望の効果が得られることを明らかにするものでない。
したがって、本件特許明細書に記載された実施例の構成を、本件特許発明1の範囲まで拡張ないし一般化することはできず、本件特許発明1は、本件特許明細書の特許発明の詳細な説明に記載されたものではない。本件特許発明2ないし7についても同様である。
(4)申立理由4(委任省令要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
概略は、以下のとおり。
本件特許明細書に記載の実施例及び比較例からは、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナの含有率、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナの含有率、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナの含有率の各々の各々が、実施例及び比較例の間の評価の相違にどの程度影響を及ぼしているかを、理解することはできない。
よって、本件特許発明の詳細な説明の記載からは、本件特許発明の課題と解決手段との関係を理解できないため、本件特許発明1ないし7の技術上の意義が不明である。
したがって、本件特許発明の詳細な説明の記載は、委任省令要件を満たさない。
(5)証拠方法
甲第1号証:特開2004-244491号公報
甲第2号証:特開2014-5359号公報
甲第3号証:特開2017-135053号公報
甲第4号証:特開2004-277509号公報
甲第5号証:特開昭58-186107号公報
以下、順に「甲1」ないし「甲5」という。
2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和4年3月31日付けで通知された取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(甲4等に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、4、5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1、2、4ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、上記取消理由1は、上記1の申立理由2を含むものである。
第4 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された事項及び甲4発明
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「高熱伝導エポキシ樹脂組成物及び半導体装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付したものである。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)固形のエポキシ樹脂、(B)固形のフェノール樹脂、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材として0.5μm~1.5μm及び5~20μmに粒度分布の極大ピークを有し、なおかつ表面がシランカップリング剤で処理されているアルミナを必須成分とする高熱伝導エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の高熱伝導エポキシ樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする半導体置。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、半導体装置における回路基板と半導体素子との間の空隙を確実に充填し、生産性に優れ、なおかつ接続部分に高い信頼性を付与する高熱伝導エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)固形のエポキシ樹脂、(B)固形のフェノール樹脂、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材として0.5μm~1.5μm及び5~20μmに粒度分布の極大ピークを有し、なおかつ表面がシランカップリング剤で処理されているアルミナを必須成分とする高熱伝導エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、固形のエポキシ樹脂、固形のフェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填材として所定の粒度分布及び処理表面を有するアルミナを含有してなることを特徴とする高熱伝導エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置についてである。本発明における無機充填材は、その粒径が小さく、かつ所定の粒度分布を有することに一つの特徴がある。半導体装置における回路基板と半導体素子との間の空隙を確実に充填する、という点では、無機充填材の粒子径は小さいほど望ましい。しかし粒子径の小さい無機充填材のみでは空隙を充填するのに十分な流動性を得ることが出来ず、十分な流動性を得ようとして無機充填材量を低減すると、十分な信頼性及び熱伝導性を得ることが出来ない。そのため、極大ピークを0.5μm~1.5μmに有するアルミナと極大ピークを5~20μmに有するアルミナを組み合わせる必要がある。粒径が小さい方の極大ピークが0.5μm未満もしくは1.5μmを超えると、流動性が著しく低下する。さらに粒径が大きい方の極大ピークでも、5μm未満もしくは20μmを超えると、同様に流動性が著しく低下する。
【0008】
しかし、回路基板と半導体素子との間の空隙の大きさを考慮して粒子径を調整しても、粒子同士が凝集してしまっては空隙を充填する際の障害となって未充填もしくはボイドを引き起こし易くなり、半導体装置の信頼性を低下させる恐れがある。そこで、アルミナ表面に表面処理剤を固着させて粒子同士の凝集を抑制する手法が有効となる。表面に固着させる表面処理剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂との相溶性を考慮した場合シランカップリング剤が好ましい。アルミナ表面にシランカップリング剤を固着させる方法としては、アルミナとシランカップリング剤を攪拌混合する方法が有効である。カップリング剤をアルミナの表面に均一に処理するために、水又は有機溶媒を、更に加えて攪拌するという手法も有効である。また、アルミナ表面にシランカップリング剤をより強固に固着させるには、アルミナとシランカップリング剤を攪拌混合した後、混合機から取り出して常温にて1日以上放置したものを用いるのがより好ましい。また、より反応を進めるために攪拌時に混合機内の温度を50~150℃に加熱するか、或いは常温で攪拌し混合機から取り出した後に50~150℃で加熱してもよい。混合機としては、特に限定しないが、例えばボールミル、ヘンシェルミキサー、Vブレンダーやダブルコーンブレンダー等のブレンダー類、コンクリートミキサーやリボンブレンダー等が挙げられる。また、気化させたアミノ基含有シランカップリング剤を処理したアルミナ(例えば、アドマテックス(株)製アルミナ等が挙げられる)に、更にシランカップリング剤を表面に固着させるのがより好ましい。最も好ましいのは、気化させたアミノ基含有シランカップリング剤を処理したアルミナに、更にグリシジル基含有シランカップリング剤を表面に固着させる方法である。なおアルミナの最大粒径については、半導体装置における回路基板と半導体素子との間の空隙の大きさを考慮して、従来公知の分級法を適宜用いて調整することが出来る。
【0009】
ここでの無機充填材の粒度分布は、JIS M8100 粉塊混合物-サンプリング方法通則に準じて無機充填材を採取し、JIS R 1622-1995ファインセラミックス原料粒子径分布測定のための試料調整通則に準じて、無機充填材を測定用試料として調整し、JIS R 1629-1997 ファインセラミックス原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準じて(株)島津製作所・製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD-7000(レーザー波長:405nm)を用いて、溶媒に水を用い無機充填材の屈折率が実数部1.80、虚数部1.00の条件のもと測定した値である。また比表面積は、JIS R 1626-1996 ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法に準じて、窒素を吸着質として用い、BET1点法によって測定した値である。
【0010】
常温で固形のエポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
常温で固形のフェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができ、例えば1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0013】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、(A)~(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、(A)~(D)成分、その他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー等の押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
【0014】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
[図:0001388403000001.jpg]
を、常温においてミキサーで混合し、70~120℃で2本ロールにより混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0015】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
スリット充填性:40μm、60μm、80μmの流路厚を有する金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分でトランスファー成形し、各流路の充填距離を測定した。単位はmm。
模擬金型充填性:長さ145mm、幅15mm、厚み0.5mmの矩形型流路中に、9mm×9mm×0.42mm(厚み)の四角柱を6個有する(四角柱と四角柱の間隔は3mm)狭路充填を想定した評価用金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分でトランスファー成形し、0.08mmギャップの充填性(未充填、ボイドの有無)を判定した。」
「【0017】
【表1】
[図:0001388403000002.jpg]
【0018】
【表2】
[図:0001388403000003.jpg]
【0019】
【発明の効果】
本発明に従うと、高熱伝導エポキシ樹脂組成物は、半導体装置における回路基板と半導体素子との間の空隙を確実に充填し、生産性に優れ、なおかつ接続部分に高い信頼性を付与することから、産業上有用である。」
イ 甲4発明
甲4に記載された事項について、特に実施例1(段落【0014】【表1】)に着目すると共に、【請求項1】、段落【0005】の記載も踏まえて整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認める。
「カップリング剤処理アルミナA:アルミナP(平均粒径8.2μm、比表面積1.1m2/g、極大ピーク粒径9.8μm、最大粒径45μm以下)100重量%に気化させたアミノ基含有シランカップリング剤数百ppm固着させた(アドマテックス(株)製)後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合したもの
64.00重量%
カップリング剤処理アルミナH:アルミナQ(平均粒径0.7μm、比表面積7.9m2/g、極大ピーク粒径0.7μm、最大粒径45μm以下)100重量%に気化させたアミノ基含有シランカップリング剤数百ppm固着させた(アドマテックス(株)製)後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合したもの
20.00重量%
ビフェニル型エポキシとトリフェノールメタン型エポキシの混合物(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコートYL6677、エポキシ当量163)
8.12重量%
トリフェノールメタン型フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH-7500-3S、軟化点83℃、水酸基当量103)
5.28重量%
1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUという。) 0.20重量%
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 0.50重量%
三酸化アンチモン 1.00重量%
カルナバワックス 0.30重量%
カーボンブラック 0.30重量%
からなる、半導体装置における回路基板と半導体素子との間の空隙を確実に充填することのできる高熱伝導エポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲4発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「ビフェニル型エポキシとトリフェノールメタン型エポキシの混合物」、「トリフェノールメタン型フェノール樹脂」、「1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7」は、各々、本件特許発明1の「(A)エポキシ樹脂」、「(B)フェノール樹脂硬化剤」、「(C)硬化促進剤」に相当する。
また、甲4発明の「カップリング剤処理アルミナA」及び「カップリング剤処理アルミナH」は、本件特許発明1の「(D)球状アルミナ」における「アルミナ」に相当し、その含有量は、84.00重量%(=64.00+20.00)で重複一致する。
さらに、甲4発明の「半導体装置における回路基板と半導体素子との間の空隙を確実に充填することのできる高熱伝導エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「半導体封止用樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、<相違点4-1>で相違する。
<一致点>
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)アルミナを含有し、前記(D)アルミナは、該樹脂組成物中に84.00質量%含まれる半導体封止用樹脂組成物
<相違点4-1>
(D)アルミナが、本件特許発明1では、「球状」で「(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する」のに対し、甲4発明では、「カップリング剤処理アルミナA:アルミナP(平均粒径8.2μm、比表面積1.1m2/g、極大ピーク粒径9.8μm、最大粒径45μm以下)100重量%に気化させたアミノ基含有シランカップリング剤数百ppm固着させた(アドマテックス(株)製)後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合したもの 64.00重量%とカップリング剤処理アルミナH:アルミナQ(平均粒径0.7μm、比表面積7.9m2/g、極大ピーク粒径0.7μm、最大粒径45μm以下)100重量%に気化させたアミノ基含有シランカップリング剤数百ppm固着させた(アドマテックス(株)製)後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合したもの 20.00重量%」である点
そこで、<相違点4-1>について検討する。
まず、新規性について検討する。
ところで、無機充填剤(シリカ、アルミナ)は特定の粒径を目標に製造されるが、目標に対して一定のばらつきが生じるものであり、例えば、本件特許明細書の【図1】や【図2】に見られるように、その粒度分布は対数正規分布に従うのが一般的である。そして、対数正規分布に従う場合、実数座標に直すと分布は大きい粒径側に偏ったものとなるから、σを大きくしていくと、平均粒径の値も大きくなっていくものである。
カップリング剤処理アルミナHは、平均粒径と極大ピーク粒径が0.7μmと両粒径が一致していることから、σが非常に小さいか、或いは0.7μmよりも小さい領域に極大ピーク粒径とは別のピークを持つ粒子を少量含有することが推察される。
してみると、甲4発明のカップリング剤処理アルミナHにおいて、そのほぼ全量が2μm未満の粒子であることが推察される。甲4発明のアルミナにおける当該アルミナHの割合は、23.81重量%(=20/(20+64)×100)であるから、甲4発明における2μm未満のアルミナは、当該アルミナH分で23.81重量%含まれていることとなる。
一方、カップリング剤処理アルミナAは、平均粒径が8.2μm、極大ピーク粒径が9.8μmである。上記で述べたように、対数正規分布に従うと分布は大きい粒径側に偏ったものとなるから、単一ピークからなる場合、平均粒径は極大ピーク粒径以下の値にはならない。そうすると、当該アルミナAは、平均粒径が極大ピーク粒径以下となっているから、単一ピークではなく、9.8μmよりも小さい領域に1つ以上の極大ピーク粒径とは別のピークを持つことが推察される。
してみると、当該アルミナAは、単一ピークを有するものよりも小粒径側に分布が広がるものとなり、当該アルミナHと当該アルミナAの重なりが「僅か」となるのかは定かではない。
このため、甲4発明における2μm未満のアルミナは、当該アルミナH分で、既に23.81重量%含まれていることから、甲4発明における2μm未満の粒子の全体量が、25質量%以下となる蓋然性が高いとは言えない。
よって、当該相違点1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲4発明ではない。
ついで、進歩性について検討する。
甲1には、その【特許請求の範囲】に、
「【請求項1】
粒度分布において0.5~65μmの範囲内に少なくとも2つ以上の頻度極大ピークを有する平均粒子径5~40μmの球状アルミナ粉末100質量部あたり、平均粒径0.8μm以下、比表面積が6~50m2/gの球状シリカ粉末を3~20質量部含有してなることを特徴とする高熱伝導性無機質粉末。
【請求項2】
球状アルミナ粉末の頻度極大ピークが、25~65μm、5~15μm、0.5~3μmのうち2つ以上存在することを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性無機質粉末。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高熱伝導性無機質粉末を含有してなることを特徴とする高流動性、低バリ特性の高熱伝導性樹脂組成物。」が記載されている。
甲2には、その【特許請求の範囲】に、
「【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)と、を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記無機充填材(D)を前記エポキシ樹脂組成物中に85質量%以上含み、前記無機充填材として球状アルミナ(D1)を前記エポキシ樹脂組成物中に70質量%以上含み、前記球状アルミナ(D1)が、レーザー回折散乱法による平均粒子径D50が2μm以上55μm以下、窒素吸着法により測定した比表面積が1.0m2/g以下、さらにウラン、トリウム合計量が10ppb以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
・・・
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された電子部品装置が備える半導体素子の連続動作時における前記エポキシ樹脂組成物の硬化物と前記半導体素子の接触面の温度が100~150℃となる電子部品装置。
【請求項11】
前記半導体素子がメモリー機能を備えるものである請求項10記載の電子部品装置。
【請求項12】
前記電子部品装置がシステムインパッケージ(SiP)を備えることを特徴とする請求項10ないし請求項11記載の電子部品装置。」が記載されている。
甲3には、その【特許請求の範囲】に、
「【請求項1】
静電容量型センサにおける封止膜を形成するために用いられる高誘電樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂(A)と、
比誘電率(1MHz)が5以上である高誘電性無機充填剤(B)と、
を含み、
平坦な底面を有するアルミ箔容器の前記底面の全面を覆うように前記高誘電樹脂組成物を前記アルミ箔容器に収容し、大気圧下175℃の雰囲気下で3分間加熱することにより前記高誘電樹脂組成物を硬化させたとき、硬化した前記高誘電樹脂組成物の前記底面に接する面において形成された空隙の面積が、硬化した前記高誘電樹脂組成物の前記底面に接する面の総面積に対して3%以上28%以下である高誘電樹脂組成物。
・・・
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか一項に記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)がアルミナ、酸化チタンおよびチタン酸バリウムから選択される一種または二種以上を含む高誘電樹脂組成物。」が記載されている。
しかしながら、甲4及び甲1ないし3のいづれの証拠にも「(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、」という特定事項は記載も示唆もされていない。
そうすると、当該相違点に係る特定事項は、甲4発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件特許発明1は、当該相違点に係る特定事項により、「熱伝導性及び/又は誘電率が高く、流動性に優れ、封止時のワイヤの変形を低減できるとともに、狭小部への充填性が良好でパッケージ表面の汚れ等の外観不良のない半導体封止用樹脂組成物、及び該半導体封止用樹脂組成物を用いて封止された、高熱伝導性及び/又は高誘電率で、かつワイヤの変形や狭小部への未充填部がなく、高い信頼性を備えた半導体装置を提供することができる」(同【0011】)という効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2、4ないし7について
本件特許発明2、4ないし7は、本件特許発明1を引用するものであるから、上記アで検討したのと同様、本件特許発明4及び5は、甲4発明ではないし、また、本件特許発明2、4ないし7は、甲4に基いて当業者が容易になし得たものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲4発明は、本件特許発明1の「(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、」との特定事項を満たす蓋然性が高く、また当該特定事項を満たさない場合であっても、甲4には請求項1に、0.5μm~1.5μm及び5~20μmに粒度分布の極大ピークを有し、なおかつ表面がシランカップリング剤で処理されているアルミナを含有することが記載されているため、当業者は、アルミナの粒度分布の極大ピークが前記を満たすように、平均粒径の異なる二種のアルミナを適宜選択して使用するとともに両者の配合比を最適化することで、本件特許発明1の特定事項を容易に実現できる旨主張する。
しかしながら、上記(2)で示したように、甲4に記載された発明は、本件特許発明1の当該特定事項を満たす蓋然性が高いとはいえないし、また、申立人は、実験成績証明書等の具体的な証拠をもって、甲4に記載された発明が、本件特許発明1の当該特定事項を満たすことを主張するものではない。
また、上記(2)で示したように、当該特定事項について、甲4及び甲1ないし3のいずれの証拠にも記載も示唆もされていなし、当該特定事項を設計的事項とする理由もない。
よって、申立人の主張を首肯することができない。
(4)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、4及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、2、4ないし7は、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。
第5 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)、申立理由2(甲第4号証を主引用例とする進歩性欠如)(本件特許発明3のみ)、申立理由3(サポート要件)、申立理由4(委任省令要件)である。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、高熱伝導性無機質粉末およびその樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布において0.5~65μmの範囲内に少なくとも2つ以上の頻度極大ピークを有する平均粒子径5~40μmの球状アルミナ粉末100質量部あたり、平均粒径0.8μm以下、比表面積が6~50m2/gの球状シリカ粉末を3~20質量部含有してなることを特徴とする高熱伝導性無機質粉末。
【請求項2】
球状アルミナ粉末の頻度極大ピークが、25~65μm、5~15μm、0.5~3μmのうち2つ以上存在することを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性無機質粉末。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高熱伝導性無機質粉末を含有してなることを特徴とする高流動性、低バリ特性の高熱伝導性樹脂組成物。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は樹脂に高充填しても容易に高粘度化しない、高流動性かつ低バリ特性を有する高熱伝導性樹脂組成物を調製することのできる高熱伝導性無機粉末と、それを樹脂に充填した樹脂組成物を提供することである。本発明の目的は、特定の粒度構成を有する球状アルミナ粉末と特定の粒度構成を有する球状シリカ粉末とを特定量併用することによって達成することができる。」
「【0022】
本発明の高熱伝導性無機質粉末は、シランカップリング剤等の表面処理を行うことによって、粉末の吸水率を低減させ、樹脂組成物の高強度化、更には樹脂と粉末との間の界面抵抗を低下させ、熱伝導率を一段と向上させることができる。
【0023】
シランカップリング剤として、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4エポキシシンクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシリメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等、その他表面処理剤として、Zrキレート、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が用いられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、上記した本発明の高熱伝導性無機粉末が充填されてなるものである。充填量は、用途によって異なるが、50~95質量%が一般的である。
【0025】
樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が使用される。
【0026】
樹脂組成物がアンダーフィル材のように液状樹脂組成物である場合、樹脂には液状エポキシ樹脂が用いられる。液状エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂であればいかなるものでも使用可能である。その具体例をあげれば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSなどのグリシジルエーテル、フタル酸やダイマー酸などの多塩基酸とエポクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル酸エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、アルキル変性多官能エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エオキシ樹脂、1,6-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,7-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、更には難燃性を付与するために臭素などのハロゲンを導入したエポキシ樹脂等である。この中でも常温で液状のエポキシ樹脂が好適に用いられるが、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを一種又は2種類以上が使用される。
【0027】
液状エポキシ樹脂の硬化剤については、液状エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、クロロフェノール、t-ブチルフェノール、ノニルフェノール、イソプロピルフェノール、オクチルフェノール等の群から選ばれた1種又は2種以上の混合物をホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はパラキシレンとともに酸化触媒下で反応させて得られるノボラック型樹脂、ポリパラヒドロキシスチレン樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物、ピロガロールやフロログルシノール等の3官能フェノール類、無水マレイン酸、無水フタル酸や無水ピロメリット酸等の酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等を挙げることができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物には、次の成分を必要に応じて配合することができる。すなわち、低応力化剤として、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ブロックコポリマーや飽和型エラストマー等のゴム状物質、各種熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂状物質、更にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂の一部又は全部をアミノシリコーン、エポキシシリコーン、アルコキシシリコーンなどで変性した樹脂等、難燃助剤として、Sb2
O3、Sb2O4、Sb2O5等、難燃剤として、ハロゲン化エポキシ樹脂やリン化合物等、着色剤として、カーボンブラック、酸化鉄、染料、顔料等である。
【0029】
本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である場合、硬化剤との反応を促進させるために硬化促進剤を配合することができる。その硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7,トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が用いられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、上記各材料の所定量を撹拌、溶解、混合、分散させることにより製造することができる。これらの混合物の混合、撹拌、分散等の装置としては、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。またこれらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0032】
実施例1~9 比較例1~13
表1に示すアルミナ粉末A1~A8、表2に示す溶融シリカ粉末(非晶質化率98%以上)S1~S6を準備し、これを表3に示すような配合で総量200kgを660リットルのWコーンブレンダー(セイシン工業社製商品名「SCM-300」)にて、1回転/秒で30分間混合し、表4に示すように実施例に係る無機質粉末A~Iと、比較例に係る無機粉末J~Uを調整した。なお、粒度分布測定装置にはコールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置「LS-230」を用いた。
【0033】
表5に示される配合物30体積部と表4に示す無機質粉末70体積部とを混合してエポキシ樹脂組成物を調整し、(1)熱伝導率、(2)流動性、(3)バリ特性、(4)金型摩耗量を以下に従い測定した。それらの結果を表6に示す。
【0034】
(1)熱伝導率直径28mm、厚さ3mmの円盤状サイズ穴を設けた金型に樹脂組成物を流し込み、脱気後150℃×20分で成型した。熱伝導率測定装置(アグネ社製「ARC-TC-1型」)を用い、室温において温度傾斜法で測定した。
【0035】
(2)流動性スパイラルフロー金型を用い、EMMI-66(EpoxyMolding Material Institute;Society of Plastic Industry)に準拠して行った。金型温度は175℃、成型圧力7.4MPa、保圧時間90秒とした。
【0036】
(3)バリ特性2μm、5μm、10μm、30μmのスリットを持つバリ測定用金型を用い、成形温度は175℃、成形圧力は7.4MPaで成型した際にスリットに流れ出た樹脂をノギスで測定し、それぞれのスリットで測定された値を平均しバリ特性とした。
【0037】
(4)金型摩耗量厚み6mm、孔径3mmのアルミニウム製ディスクの孔に175℃に加熱されたエポキシ樹脂組成物を150cm3通過させた後のディスクの質量減少量を摩耗量として測定した。
【0038】
【表1】
[図:0001388403000004.jpg]
【0039】
【表2】
[図:0001388403000005.jpg]
【0040】
【表3】
[図:0001388403000006.jpg]
【0041】
【表4】
[図:0001388403000007.jpg]
【0042】
【表5】
[図:0001388403000008.jpg]
【0043】
【表6】
[図:0001388403000009.jpg]
【0044】
表1~6から明らかなように、本発明の高熱伝導性無機粉末を用いた樹脂組成物は、熱伝導率、金型摩耗量、高流動性、および低バリ特性の全てにおいて、比較例よりも優れていることが分かる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂に高充填しても容易に高粘度化しない、高流動性かつ低バリ特性を有する高熱伝導性樹脂組成物を調製することのできる、高熱伝導性無機粉末と、それを樹脂に充填した樹脂組成物が提供される。」
イ 甲1発明
甲1の無機粉末Dを使用した実施例4に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認める。
「配合物30体積部と無機粉末D70体積部とを混合してなるエポキシ樹脂組成物であって、
配合物が、エポキシ樹脂(オツトクレゾールノボラック型(日本化薬社製「EOCN-1020」))63.8質量%、硬化剤(フェノールノボラック樹脂(群栄化学社製「PMS-4261」))32.1質量%、硬化促進剤(トリフェニルホスフィン(北興化学社製))0.6質量%、離型剤(モタン酸エステル(クラリアンドジャパン社製)(WaxEflakes))3.5質量%、シランカップリング剤(オルガノシラン(信越化学工業製「KBM-403」))無機質粉末に対して0.5質量%)であり、
無機粉末Dが、アルミナ粉末A4(球形度0.90、平均粒径10μm、頻度極大ピーク7μm)85質量%とアルミナ粉末A5(球形度0.85、平均粒径0.6μm、頻度極大ピーク1μm)5質量%を混合した平均粒径7μm、頻度極大ピークが1.2μmと6μmに2つ有する球状アルミナ粉末と、溶融シリカS1(球形度0.85、平均粒径0.6μm、比表面積12m2/g)10質量%を混合したもの、であるエポキシ樹脂組成物」(以下、「甲1発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「エポキシ樹脂(オツトクレゾールノボラック型(日本化薬社製「EOCN-1020」))」、「硬化剤(フェノールノボラック樹脂(群栄化学社製「PMS-4261」))」、「硬化促進剤(トリフェニルホスフィン(北興化学社製))」、「エポキシ樹脂組成物」は、各々、本件特許発明1の「(A)エポキシ樹脂」、「(B)フェノール樹脂硬化剤」、「(C)硬化促進剤」、「樹脂組成物」に相当する。
また、甲1発明の無機粉末Dの「頻度極大ピークが1.2μmと6μmに2つ有する」「球状アルミナ粉末」は、本件特許発明1の「質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する」「(D)球状アルミナ」に相当する。
そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、<相違点1-1>ないし<相違点1-3>で相違する。
<一致点>
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)アルミナを含有し、前記(D)アルミナは、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する、樹脂組成物
<相違点1-1>
(D)球状アルミナが、本件特許発明1では「(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、」であるのに対して、甲1発明は、その点が不明な点
<相違点1-2>
(D)球状アルミナが、本件特許発明1では「該樹脂組成物中に75質量%以上95質量%未満含まれる」であるのに対して、甲1発明は、その点が不明な点
<相違点1-3>
用途が、本件特許発明1では「半導体封止用」であるのに対して、甲1発明は、その点が不明な点
そこで、<相違点1-1>について検討する。
甲1発明のアルミナ粉末A4は、球状アルミナ粉末中に、94.4質量%(85/(85+5)質量%含有されており、その平均粒径は10μmである。当該平均粒径は、甲1の段落【0018】及び当業者の技術常識からして、D50を意図するものと解される。
そうすると、甲1発明は、球状アルミナ粉末中粒径10μmを超えるものが、94.4質量%×50%=47.2質量%となり、少なくとも「(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有」する事項は満たさないことは明らかである。
そして、甲1及び甲2ないし4のいづれの証拠にも「(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、」という特定事項は記載も示唆もされていない。
よって、当該相違点に係る特定事項は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
また、本件特許発明1は、当該相違点に係る特定事項により、「熱伝導性及び/又は誘電率が高く、流動性に優れ、封止時のワイヤの変形を低減できるとともに、狭小部への充填性が良好でパッケージ表面の汚れ等の外観不良のない半導体封止用樹脂組成物、及び該半導体封止用樹脂組成物を用いて封止された、高熱伝導性及び/又は高誘電率で、かつワイヤの変形や狭小部への未充填部がなく、高い信頼性を備えた半導体装置を提供することができる」(同【0011】)という効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、本件特許発明1を引用するものであるから、上記アで検討したのと同様、甲1発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲1発明は、本件特許発明1の「(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~93.3質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを1.7~10質量%含有し、」との特定事項を満たす蓋然性が高く、また当該特定事項を満たさない場合であっても、甲1には請求項2に、球状アルミナ粉末の頻度極大ピークが、25~65μm、5~15μm、0.5~3μmのうち2つ以上存在することが記載されているため、当業者は、球状アルミナの頻度極大ピークが前記を満たすように、平均粒径の異なる二種のアルミナを適宜選択して使用するとともに両者の配合比を最適化することで、本件特許発明1の特定事項を容易に実現できる旨主張する。
しかしながら、上記(2)で示したように、甲1に記載された発明は、本件特許発明1の当該特定事項を満たす蓋然性が高いとはいえないし、また、申立人は、実験成績証明書等の具体的な証拠をもって、甲1に記載された発明が、本件特許発明1の当該特定事項を満たすことを主張するものではない。
また、上記(2)で示したように、当該特定事項について、甲1及び甲2ないし4のいづれの証拠にも記載も示唆もされていなし、当該特定事項を設計的事項とする理由もない。
よって、申立人の主張を首肯することができない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲4を主引用例とする進歩性欠如)(本件特許発明3のみ)
本件特許発明3は、本件特許発明1を引用し、さらに限定したものであるが、本件特許発明1は、上記第4 1(2)アで示したとおり、甲4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。そうすると、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4に基いて当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件特許発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項3に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細には次の記載がある。
「【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-036410号公報
【特許文献2】特開2014-240351号公報
【特許文献3】特開2005-119929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、比較的粒子径の大きな無機充填材を高充填すると、小型・薄型パッケージの場合、封止材厚みを薄くしている為、金型と半導体素子間で未充填部が発生してしまう。また、特許文献3に記載の方法は液状封止を目的としている為、無機充填材を高充填することができず、十分な熱伝導率や誘電率が得られなかった。
【0007】
一方、封止材厚みを薄くした場合、金型からの離型性が悪くなり、金型汚れや封止材の破損や欠けが顕著に生じてしまう。その為、離型性を向上させる目的で離型剤を多量に使用するとパッケージ表面の汚れやフローマーク、チップ上のウェルド等の外観不良が生じてしまう。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性及び/又は誘電率が高く、流動性に優れ、封止時のワイヤの変形を低減できるとともに、狭小部への充填性が良好でパッケージ表面の汚れ等の外観不良のない半導体封止用樹脂組成物、及び該半導体封止用樹脂組成物を用いて封止された、高熱伝導性及び/又は高誘電率で、かつワイヤの変形や狭小部への未充填部がなく、高い信頼性を備えた半導体装置を提供することを目的とする。」
「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の粒度分布を有する球状アルミナを特定量含有させた半導体封止用樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)球状アルミナを含有する半導体封止用樹脂組成物であって、
前記(D)球状アルミナは、該樹脂組成物中に75質量%以上95質量%未満含まれるとともに、(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~95質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを0~10質量%含有し、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有することを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
[2]さらに、平均粒子径が0.5μm以上2μm未満の(E)微細シリカを(D)球状アルミナと(E)微細シリカの合計量に対し0.1~20質量%含有することを特徴とする上記[1]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
[3]さらに、(F)離型剤を前記樹脂組成物中に0.05~1.0質量%含有するとともに、前記(F)離型剤は、(F1)融点が75℃以上90℃未満の離型剤、及び(F2)融点が90℃以上125℃以下の離型剤であり、前記(F1)と前記(F2)の配合割合が(F1):(F2)=95:5~80:20であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
[4]前記半導体封止用樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が3~6W/mk、及び/又は誘電率が5~8であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
[6]前記半導体装置が指紋センサを備えることを特徴とする上記[5]に記載の半導体装置。
[7]前記半導体装置がシステムインパッケージを備えることを特徴とする上記[5]に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱伝導性及び/又は誘電率が高く、流動性に優れ、封止時のワイヤの変形を低減できるとともに、狭小部への充填性が良好でパッケージ表面の汚れ等の外観不良のない半導体封止用樹脂組成物、及び該半導体封止用樹脂組成物を用いて封止された、高熱伝導性及び/又は高誘電率で、かつワイヤの変形や狭小部への未充填部がなく、高い信頼性を備えた半導体装置を提供することができる。」
「【0024】
〔(D)球状アルミナ〕
本発明で使用する(D)成分の球状アルミナは、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~95質量%、(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを0~10質量%含有するものである。また、(D4)20μmを超える大粒径の球状アルミナは含有しないことが好ましい。
(D1)成分、(D2)成分、及び(D3)成分の配合割合がそれぞれ上記範囲内であれば球状アルミナが最密充填され、流動性が良好となり、さらに誘電率が向上する。一方、上記配合割合を逸脱し、(D1)成分が5質量%より少ないと溶融粘度が上昇し、25質量%より多いと十分な熱伝導率が得られない。(D2)成分が65質量%より少ないと十分な熱伝導率が得られなくなり、95質量%より多いと溶融粘度が上昇し狭小部の充填性が悪化する。(D3)成分が10質量%より多いと溶融粘度が上昇し、ワイヤ流れが生じる可能性がある。また、(D4)成分が含まれると狭小部の充填性が不十分となるおそれがある。
熱伝導率は粒子径に依存する為、大粒子径ほど高熱伝導となる傾向にあるが、(D2)成分の含有量が上記範囲内であると20μmを超える大粒子径の球状アルミナを含有しなくても十分な熱伝導性が得られる。
【0025】
なお、本明細書において、「球状」とは、粒子の長径(a)と短径(b)の比(b/a)が0.8~1.0であることを意味し、真球でなくてもよい。
また、本明細書において、「粒径」とは、特に限定しない限り、レーザ回折・光散乱法に基づく粒度分布測定によって得られた体積基準の粒径をいう。本明細書において「平均粒子径」とは、特に限定しない限り、レーザ回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径(D50、メジアン径ともいう。)をいう。
【0026】
(D)成分の球状アルミナは、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する。各領域に1つ以上の極大値を有することで、(D)成分の球状アルミナは、大小2つ以上の粒径の異なる球状アルミナを含むこととなり、この粒径の異なる球状アルミナによるベアリング効果により、溶融粘度が下がり、ワイヤ流れが低減し、狭小部への充填性が良好となる。
なお、本明細書において、「ベアリング効果」とは、粒径の大きな粒子の間に粒径の小さな粒子が入り込むことにより、粒径の大きな粒子の移動をより自由にし、樹脂組成物全体としての流動性を向上させるものである。
【0027】
(D)成分の球状アルミナの粒度分布は、レーザ回折・散乱法により求めることができ、例えば、(株)堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(製品名)により取得できる。
【0028】
また、(D)成分の球状アルミナを分級することで、混在している寸法の大きなアルミナを予め除去しておくことができる。球状アルミナの平均粒子径を2~20μmにする時、例えば、粒径25μmで分級することで、寸法の大きなアルミナを予め除去することができる。これにより、狭小部への充填性が良好となる。
【0029】
(D)成分の球状アルミナの配合量は、樹脂組成物全体の75質量%以上95質量%未満であり、この範囲を外れると上記効果が得られないうえ、成型品の寸法精度、耐湿性、機械的強度等が低下する。すなわち、(D)成分の球状アルミナの配合量が樹脂組成物全体の75質量%未満では十分な熱伝導性及び/又は誘電率が得られず、また、線膨張係数が増大して成形品の寸法精度、耐湿性、機械的強度等が低下するおそれがある。また、95質量%以上では、溶融粘度が増大して流動性や成形性が低下するおそれがある。このような観点から、(D)成分の配合量は、樹脂組成物全体の80~90質量%であることが好ましい。」
「【実施例】
【0047】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において使用した材料は表1に示した通りである。また、「部」は特に断らない限り「質量部」を意味する。
【0048】
【表1】
[図:0001388403000010.jpg]
【0049】
(実施例1)
エポキシ樹脂(a)6.55部;フェノール性硬化剤(b)3.30部;硬化促進剤(c-1)0.22部、硬化促進剤(c-2)0.10部;球状アルミナ(d-1)5.00部、球状アルミナ(d-2)82.50部および球状の微細シリカ(e)2.80部の混合物;離型剤(f-1)0.10部、離型剤(f-2)0.10部、離型剤(f-3)0.03部、;カップリング剤0.40部、消泡剤0.1部、ならびに着色剤0.30部を常温(20℃)で混合し、次いで、ミキシング2軸ロールを用い120℃で加熱混練し半導体封止用樹脂組成物を得た。
【0050】
(実施例2~5、及び比較例1~5)
表2に記載の種類及び配合量の各成分に変更した以外は、実施例1と同様にして半導体封止用樹脂組成物を得た。なお、表2中、空欄は配合なしを表す。
【0051】
上記各実施例及び各比較例で得られた半導体封止用樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
【0052】
<半導体封止用樹脂組成物>
(1)スパイラルフロー
半導体封止用樹脂組成物を金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間150秒間の条件で、トランスファ成形し、樹脂組成物の流動距離(cm)を測定した。
【0053】
(2)ゲルタイム
175℃に保持された熱板上で、一定量の半導体封止用樹脂組成物を直径4~5cmの円状に広げ、一定速度で練り合わせた際に、半導体封止用樹脂組成物が増粘し、最終的に粘りのなくなった時間を測定した。
【0054】
(3)溶融粘度
高化式フローテスタ((株)島津製作所製、CFT-500C)を用い、ノズル長1.0mm、ノズル径0.5mm、温度175℃、荷重圧力10kgf/cm2(約0.98MPa)の条件で溶融粘度を測定した。
【0055】
(4)成形性(狭小部充填性)
半導体封止用樹脂組成物を用いて、FBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)を、金型温度175℃で、硬化時間2分間の条件でトランスファ成形した後、得られた成型品20個の外観を目視観察し、金型と半導体素子間の狭小部の未充填部や突起等の発生を下記の基準で評価した。
○:狭小部への未充填部、及び突起がなく、外観不良なし(良好)
×:狭小部への未充填部、及び/又は突起があり、外観不良あり(不良)
【0056】
(5)成形性(ボイド)
半導体封止用樹脂組成物を用いて、FBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)を、金型温度175℃で、硬化時間2分間の条件でトランスファ成形した後、得られた成型品20個の外観を目視観察し、ボイドの発生状況を観察し、下記の基準により判定した。さらに、超音波探傷装置〔日立建機ファインテック (株)製、FS300II〕により成形品の内部及び外部ボイドの発生状況を観察し、下記の基準により判定した。
○:外観異常またはボイドの発生なし
△:長径0.3mm以下のボイドが発生
×:長径0.3mmを超えるボイドが発生
【0057】
(6)成形性(フローマーク)
半導体封止用樹脂組成物を用いて、FBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)を、金型温度175℃で、硬化時間2分間の条件でトランスファ成形した後、得られた成型品20個の外観を目視観察し、シミやムラ等の発生を下記の基準で評価した。
○:封止材表面にシミやムラの発生なし
△:封止材表面の一部にシミやムラが発生
×:封止材表面の全体にシミやムラが発生
【0058】
(7)耐熱性(ガラス転移点)
半導体封止用樹脂組成物を金型温度175℃で、硬化時間2分間の条件で短冊状(3mm×4mm×10mm)の成型品を作成し、熱機械測定装置TMA SS6000(セイコー社製)を用いてTMA法により測定し、α1とα2の交点をガラス転移点とした。尚、測定条件は室温(25℃)から300℃まで、昇温速度5℃/minで行った。
【0059】
(8)熱伝導率
半導体封止用樹脂組成物を金型温度175℃、硬化時間10分間の条件で円盤状試験片状(直径100mm、厚さ26mm)の成型品を作成し、迅速熱伝導率計(京都電子工業(株)製、製品名:Kemtherm QTM-3)を用いて熱伝導率を測定した。
なお、熱伝導率3~6W/mkを合格とした。
【0060】
(9)誘電率
半導体封止用樹脂組成物を金型温度175℃、硬化時間10分間の条件で円盤状試験片状(直径50mm、厚さ3mm)の成形品(テストピース)を作成し、該テストピースを金型温度175℃で8時間ポストキュアした後、日本ヒューレットパッカード(株)製のQメータにて誘電率を周波数1MHzで測定した。
なお、誘電率5~8を合格とした。
【0061】
(10)ワイヤ流れ性
半導体封止用樹脂組成物を用いて、金型温度175℃、硬化時間2分間、次いで金型温度175℃、硬化時間8時間の条件でFBGAパッケージ(50mm×50mm×0.54mm、チップ厚0.31mm)をトランスファ成形法で成形した後、X線検査装置((株)島津製作所製SMX-1000Plus)によりワイヤの変形を観察し、最大変形部のワイヤ流れ率を測定し、下記の基準で評価した。
○:ワイヤ流れ率5%未満(良好)
△:ワイヤ流れ率5%以上10%未満
×:ワイヤ流れ率10%以上(不良)
【0062】
<半導体パッケージ>
(11)耐半田リフロー性
上記(10)で作製したFBGAパッケージに、30℃、相対湿度60%、192時間の吸湿処理を施した後、IRリフロー処理(260℃、10秒)を行い、パッケージの内部クラック(剥離)の発生の有無を超音波探傷装置(SAT)で観察し、その発生率(不良数(個)/総数(個))を調べた(n=20)。
【0063】
上記結果を表2下欄に示した。なお、半導体封止用樹脂組成物の調製に使用した球状アルミナ(複数種の球状アルミナの混合物)の粒度分布について実施例1~4を図1に、比較例1~5を図2に示した。この粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA-920)を用いて測定し、(D1)粒径が2μm未満の粒子、(D2)粒径が2μm以上10μm未満の粒子、(D3)粒径が10μm以上20μm以下の粒子、及び(D4)粒径が20μmを超える粒子の含有割合を質量基準で求めたものである。
【0064】
【表2】
[図:0001388403000011.jpg]
【0065】
以上より、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、流動性を適正な範囲とすることができるため、ワイヤ流れや狭小部充填性に問題がなく、シミ等の外観異常がなく、かつ熱伝導率及び/又は誘電率が高いものとなることがわかった。」
(4) サポート要件の判断
ア 本件特許発明の課題
本件特許発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】等より、「熱伝導性及び/又は誘電率が高く、流動性に優れ、封止時のワイヤの変形を低減できるとともに、狭小部への充填性が良好でパッケージ表面の汚れ等の外観不良のない半導体封止用樹脂組成物、及び該半導体封止用樹脂組成物を用いて封止された、高熱伝導性及び/又は高誘電率で、かつワイヤの変形や狭小部への未充填部がなく、高い信頼性を備えた半導体装置を提供すること」である。
イ 検討
(ア) 発明の詳細な説明について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0024】に、「〔(D)球状アルミナ〕
本発明で使用する(D)成分の球状アルミナは、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~95質量%、(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを0~10質量%含有するものである。また、(D4)20μmを超える大粒径の球状アルミナは含有しないことが好ましい。
(D1)成分、(D2)成分、及び(D3)成分の配合割合がそれぞれ上記範囲内であれば球状アルミナが最密充填され、流動性が良好となり、さらに誘電率が向上する。一方、上記配合割合を逸脱し、(D1)成分が5質量%より少ないと溶融粘度が上昇し、25質量%より多いと十分な熱伝導率が得られない。(D2)成分が65質量%より少ないと十分な熱伝導率が得られなくなり、95質量%より多いと溶融粘度が上昇し狭小部の充填性が悪化する。(D3)成分が10質量%より多いと溶融粘度が上昇し、ワイヤ流れが生じる可能性がある。また、(D4)成分が含まれると狭小部の充填性が不十分となるおそれがある。
熱伝導率は粒子径に依存する為、大粒子径ほど高熱伝導となる傾向にあるが、(D2)成分の含有量が上記範囲内であると20μmを超える大粒子径の球状アルミナを含有しなくても十分な熱伝導性が得られる。」との記載がされている。
また、同段落【0026】には、「(D)成分の球状アルミナは、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する。各領域に1つ以上の極大値を有することで、(D)成分の球状アルミナは、大小2つ以上の粒径の異なる球状アルミナを含むこととなり、この粒径の異なる球状アルミナによるベアリング効果により、溶融粘度が下がり、ワイヤ流れが低減し、狭小部への充填性が良好となる。
なお、本明細書において、「ベアリング効果」とは、粒径の大きな粒子の間に粒径の小さな粒子が入り込むことにより、粒径の大きな粒子の移動をより自由にし、樹脂組成物全体としての流動性を向上させるものである。」と記載され、さらに同段落【0029】に、「(D)成分の球状アルミナの配合量は、樹脂組成物全体の75質量%以上95質量%未満であり、この範囲を外れると上記効果が得られないうえ、成型品の寸法精度、耐湿性、機械的強度等が低下する。すなわち、(D)成分の球状アルミナの配合量が樹脂組成物全体の75質量%未満では十分な熱伝導性及び/又は誘電率が得られず、また、線膨張係数が増大して成形品の寸法精度、耐湿性、機械的強度等が低下するおそれがある。また、95質量%以上では、溶融粘度が増大して流動性や成形性が低下するおそれがある。このような観点から、(D)成分の配合量は、樹脂組成物全体の80~90質量%であることが好ましい。」との記載がされている。
すなわち、上記記載によると、半導体封止用樹脂組成物として、「(D)球状アルミナは、該樹脂組成物中に75質量%以上95質量%未満含まれるとともに、(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~95質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを0~10質量%含有し、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する」という特定事項により、本件特許発明の課題が解決され得ることについて合理的な説明がされていることが覗える。
(イ)実施例について
実施例1ないし5は、(D)成分の球状アルミナが、上記(イ)の発明の詳細な説明で示される特定事項の範囲内のものであり、熱伝導率が3.1~3.3W/mk、誘電率が6.2~6.6と高く、狭小部充填性、ワイヤ流れ性の結果がほぼ「○」と性能が良好なものとなっている。
一方、比較例1は、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナが51.5質量%、(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナが37.7質量%含有するもので、上記特定事項の範囲外のものであり、比較例2は、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナが6.0質量%、(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナが81.5質量%含有するもので、上記特定事項の範囲外のものであり、比較例3は、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを34.9質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを63.7質量%含有するもので、上記特定事項の範囲外のものであり、比較例4は、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを0.9質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを96.9質量%含有するもので、上記特定事項の範囲外のものであり、比較例5は、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを7.8質量%、(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを22.2質量%含有するもので、上記特定事項の範囲外とものであるところ、狭小部充填性、ワイヤ流れ性の結果がほぼ「×」と、性能が悪いものとなっている。
すなわち、実施例・比較例で示される(D1)粒径2μm未満の球状アルミナの含有量、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナの含有量、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナの含有量と試験結果(所望の効果)の関係は、上記(ア)の発明の詳細な説明の記載内容を裏付けるものとなっている。
(ウ)まとめ
上記(ア)及び(イ)の検討をふまえると、当業者は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)球状アルミナを含有する半導体封止用樹脂組成物において、「前記(D)球状アルミナは、該樹脂組成物中に75質量%以上95質量%未満含まれるとともに、(D)球状アルミナ中に(D1)粒径2μm未満の球状アルミナを5~25質量%、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナを65~95質量%、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナを0~10質量%含有し、質量基準の粒度分布において、粒径2μm未満の領域及び粒径2μm以上10μm未満の領域に、それぞれ1つ以上の極大値を有する」という特定事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし7についても同様である。
(5)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、上記第3 1(3)の概略による主張をしているので、以下検討する。
上記(4)イで示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナ、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナ、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナの各含有量範囲と奏される所望の効果との関係について記載されており、その関係を5つの実施例と5つの比較例とでもって、裏付けがされている。
よって、申立人の主張は首肯することができない。
(6)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3によっては取り消すことはできない。
4 申立理由4(委任省令要件)について
申立人は、特許異議申立書において、上記第3 1(4)の概略に示されるように、本件特許発明の詳細な説明の記載からは、本件特許発明の課題と解決手段との関係を理解できないため、本件特許発明1ないし7の技術上の意義が不明である旨の主張をしている。
しかしながら、上記3(4)において示したように、発明の詳細な説明において、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナ、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナ、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナの各含有量範囲とその奏される所望の効果との関係について記載されており、そのことが5つの実施例と5つの比較例とでもって裏付けがされている。
そうすると、本件特許明細書に記載の実施例及び比較例から、(D1)粒径2μm未満の球状アルミナの含有率、(D2)粒径2μm以上10μm未満の球状アルミナの含有率、及び(D3)粒径10μm以上20μm以下の球状アルミナの含有率の各々が、実施例及び比較例の間の評価の相違にどの程度影響を及ぼしているかを、発明の詳細な説明の記載を参酌することで理解することができる。
そして、本件特許発明1により、本件特許発明の課題が解決されると共に、「熱伝導性及び/又は誘電率が高く、流動性に優れ、封止時のワイヤの変形を低減できるとともに、狭小部への充填性が良好でパッケージ表面の汚れ等の外観不良のない半導体封止用樹脂組成物、及び該半導体封止用樹脂組成物を用いて封止された、高熱伝導性及び/又は高誘電率で、かつワイヤの変形や狭小部への未充填部がなく、高い信頼性を備えた半導体装置を提供することができる。」(段落【0011】)という効果が奏されるのであるから、本件特許発明1ないし7の技術上の意義は明らかである。
よって、申立人の主張は首肯することができない。
第6 むすび
したがって、上記第4、第5で検討したように、当審で通知した取消理由、並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701187