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特許異議申立

2021-700130

汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法

審判番号
2021-700130
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-163494
登録番号
6737439
請求日
2021年02月04日
審決日
2022年05月17日
公報発行日
2022年08月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】栗田工業株式会社
  • 【権利者代理人】大谷 保
  • 【異議申立人】大矢 真紀子
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 関根 崇
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.537-YAA(C02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6737439号発明「汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6737439号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕について訂正することを認める。 特許第6737439号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6737439号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年8月28日(優先権主張 平成29年3月14日)を出願日とする出願であって、令和2年7月20日にその特許権の設定登録がされ、同年8月12日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 2月 4日 :特許異議申立人 大矢真紀子(以下「申立 人」という。)による請求項1~6に係る 特許に対する特許異議の申立て 令和3年 5月25日付け:取消理由通知 同年 7月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 9月16日 :申立人による意見書の提出 同年11月16日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和4年 1月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、上記令和4年1月14日付けの訂正請求に対しては、申立人に期間を指定して意見を求めたが、意見書の提出はなされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年1月14日付けの訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1、2からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。 なお、本件訂正請求がされたので、令和3年7月19日付けの訂正請求書における訂正請求(以下、「先の訂正請求」という。)は、特許法第120条の5第7項に規定により取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1について、 「ポリマーA:ポリマー構成単位の単量体組成が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体1~100モル%と、非イオン性単量体0~99モル%とからなる架橋ポリマー」 との記載を、 「ポリマーA:ポリマー構成単位の単量体組成が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体55~85モル%と、非イオン性単量体15~45モル%とからなる架橋ポリマー」 に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4について、 「ポリマーC:ポリマー構成単位の単量体組成が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体30~98モル%と、下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体2~70モル%と、非イオン性単量体0~68モル%とからなる架橋ポリマー」 との記載を、 「ポリマーC:ポリマー構成単位の単量体組成が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体55~80モル%と、下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体5~15モル%と、非イオン性単量体10~30モル%とからなる架橋ポリマー」 に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1の記載を請求項2及び3が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~3は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~3を訂正の単位として請求されたものである。 また、訂正前の請求項4の記載を請求項5及び6が引用する関係にあるから、訂正前の請求項4~6は一群の請求項であるところ、本件訂正事項2に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項4~6を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否・独立特許要件について)の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、ポリマーAを構成するカチオン性単量体の組成割合が「1~100モル%」であったのを「55~85モル%」に、非イオン性単量体の組成割合が「0~99モル%」であったのを「15~45モル%」にそれぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、ポリマーAのカチオン性単量体の組成割合を「55~85モル%」とすることは、願書に添付した明細書の段落【0021】に記載されている。一方、同明細書には、ポリマーAの非イオン性単量体の組成割を「15~45モル%」とすることの明示はないけれど、カチオン性単量体と非イオン性単量体とで構成されるポリマーAについて、カチオン性単量体の組成割合が55~85モル%であるときに、非イオン性単量体の組成割合が15~45モル%になることは明らかであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項4において、ポリマーCを構成するカチオン性単量体の組成割合が「30~98モル%」であったのを「55~80モル%」に、アニオン性単量体の組成割合が「2~70モル%」であったのを「5~15モル%」に、非イオン性単量体の組成割合が「0~68モル%」であったのを「10~30モル%」にそれぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、ポリマーCのカチオン性単量体の組成割合を「55~80モル%」に、アニオン性単量体の組成割合を「5~15モル%」に、非イオン性単量体の組成割合を「10~30モル%」にすることは、願書に添付した明細書の段落【0032】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)独立特許要件について 特許異議の申立ては、請求項1~6についてされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、これらを纏めて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリマーとして下記ポリマーAのみを含み、前記ポリマーAは、1.0N硝酸ナトリウム水溶液における30℃での固有粘度が0.8~3.7dL/gである、汚泥脱水剤。 ポリマーA:ポリマー構成単位の単量体組成が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体55~85モル%と、非イオン性単量体15~45モル%とからなる架橋ポリマー 【化1】 [図:0001387464000001.jpg] (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基であり、R4は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基である。Aは酸素原子又はNH基であり、Bは炭素数2~4のアルキレン基又はアルコキシレン基である。X-は陰イオンである。) 【請求項2】 エマルション状液体、又はその乾燥造粒体もしくは粉体である、請求項1に記載の汚泥脱水剤。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。 【請求項4】 下記ポリマーCを含み、前記ポリマーCは、1.0N硝酸ナトリウム水溶液における30℃での固有粘度が0.5~5.0dL/gである、汚泥脱水剤。 ポリマーC:ポリマー構成単位の単量体組成が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体55~80モル%と、下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体5~15モル%と、非イオン性単量体10~30モル%とからなる架橋ポリマー 【化2】 [図:0001387464000002.jpg] (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基であり、R4は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基である。Aは酸素原子又はNH基であり、Bは炭素数2~4のアルキレン基又はアルコキシレン基である。X-は陰イオンである。) 【化3】 [図:0001387464000003.jpg] (式(3)中、R7は水素原子又はCH2COOYであり、R8は水素原子、メチル基又はCOOYである。QはSO3-、C6H4SO3-、CONHC(CH3)2CH2SO3-又はCOO-である。Yは水素原子又は陽イオンである。) 【請求項5】 エマルション状液体、又はその乾燥造粒体もしくは粉体である、請求項4に記載の汚泥脱水剤。 【請求項6】 請求項4又は5に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。」 第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当該取消理由は、要するに、先の訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明は、汚泥脱水剤を構成するカチオン性単量体及びノニオン性単量体のモル比で特定されるものであり、先の訂正請求により訂正された請求項4~6に係る発明は、汚泥脱水剤を構成するカチオン性単量体、ノニオン性単量体及びアニオン性単量体のモル比で特定されるものであるところ、当該請求項1~6に係る発明のうち、各単量体の含有割合が実施例から大きく外れる部分については、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の記載や、各単量体の含有割合が汚泥脱水剤の脱水作用に影響するとの技術常識からみて、当業者において、「添加量が少なくても、脱水効果、特にフロック形成力及び重力ろ過性に優れた汚泥脱水剤、及び該汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法を提供する」(段落【0008】)との課題を解決できると認識できる範囲のものといえないことを論拠として、当該請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。 なお、この取消理由は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由と同旨である。 2 取消理由に対する当審の判断 (1)サポート要件の判断について 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号所定のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。 (2)サポート要件適合性の判断 ア 本件発明の課題は、前記1のとおり、「添加量が少なくても、脱水効果、特にフロック形成力及び重力ろ過性に優れた汚泥脱水剤、及び該汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法を提供する」ことであるといえる(【0008】)。 イ そして、発明の詳細な説明の実施例において、ポリマーAとして、「A1、A2、A3、A5」(表1、3、4)なる、カチオン性単量体と非イオン性単量体を含み且つその組成比(モル%比)が80:20及び60:40の2形態が開示され、ポリマーCとして、「C1」(表1、3、4)なる、カチオン性単量体、アニオン性単量体及び非イオン性単量体を含み且つその組成比(モル%比)が75:5:20の1形態が開示されており、これらのポリマーA、Cを用いた汚泥脱水剤の試験結果(表4のフロック径、20秒ろ過量、SSリーク量、ケーキ脱水率)から、当業者において、上記ポリマーA又はポリマーCを選択することで本件発明の課題を解決できると認識できる。 ウ これに対して、本件発明1~6に係る特許請求の範囲の記載は、前記第3のとおりであるところ、本件発明1は、ポリマーAとして、「ポリマー構成単位の単量体組成が、一般式(1)で表されるカチオン性単量体55~85モル%と、非イオン性単量体15~45モル%」を含むもので、当該ポリマーAは、実施例の2形態(カチオン性単量体:非イオン性単量体が80:20及び60:40)の組成から大きく外れるものではなく実施例と同等の効果を奏することが推認できるし、実際、令和4年1月14日提出の意見書に添付された乙第1号証(実験成績証明書)を参照すると、カチオン性単量体:非イオン性単量体の含有割合が55:45(A6)及び85:15(A7)の場合についても、実施例と同等の効果を奏することが確認されている。そうすると、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~3は、当業者において、前記発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲といえる。また、本件発明4及びこれを引用する本件発明5~6についても同様に判断できる。 エ したがって、前記(1)の判断手法に従えば、本件発明1~6に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (3)小括 したがって、取消理由に理由はない。 第5 申立人の主張の検討 申立人は、特許異議申立書及び令和3年9月16日提出の意見書において、本件発明の課題を解決するためには、本件発明1~3については、カチオン性単量体は主要成分である必要があるとともに、非イオン性単量体成分を所定量含有させる必要がある旨を主張し、また、本件発明4~6については、上記の点に加えてさらにアニオン性単量体を多量に含有しない必要がある旨を主張しているが、前記第4の2(2)で検討したとおり、本件訂正請求により本件発明1~6は、各単量体成分を特定の割合で含有するものとなり、当業者において、発明の詳細な説明の記載などに照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲といえるから、申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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