2021-701153
拡散板
- 審判番号
- 2021-701153
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-504876外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6883510
- 請求日
- 2021年12月08日
- 審決日
- 2022年06月30日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続等の経緯
特許第6883510号の請求項1~請求項8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2017-504876号)は、2016年(平成28年)3月10日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年3月12日)を国際出願日とする出願であって、令和3年5月12日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和3年6月9日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和3年12月8日に、本件特許の請求項1~請求項8に係る特許に対して、特許異議申立人 小林 宏子(以下「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた。
その後の手続等の概要は、以下のとおりである。
第2 本件訂正請求について
令和4年4月14日にされた訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6883510号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm2]を満たし、」
と記載されているのを、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、」
に訂正する(本件訂正請求による訂正後の請求項5~請求項8についても、同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm2]を満たし、」
と記載されているのを、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、」
に訂正する(本件訂正請求による訂正後の請求項5~請求項8についても、同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm2]を満たし、」
と記載されているのを、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、」
に訂正する(本件訂正請求による訂正後の請求項5~請求項8についても、同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm2]を満たし、」
と記載されているのを、
「 前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、」
に訂正する(本件訂正請求による訂正後の請求項5~請求項8についても、同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、
「 前記複数のマイクロレンズの平均ピッチをPとし、各々のマイクロレンズの正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするとき、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm2]を満たす、」
と記載されているのを、
「 前記複数のマイクロレンズの平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、各々のマイクロレンズの正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするとき、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たす、」
に訂正する。
(6)本件訂正請求は、一群の請求項である、請求項1~請求項8を対象として請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分は、訂正前の請求項1における「前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSk」の内容を明確にするためのものである。
また、訂正事項1による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分は、「P×P×Sk」の数値範囲を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)及び同条同項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものである。
また、これは、請求項1を引用する請求項5~請求項8についてみても、同じである。
イ 新規事項
訂正事項1による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分について、本件特許の明細書の【0112】には、「まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。」と記載されている。
また、訂正事項1による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分について、本件特許の明細書の【0036】及び【0103】には、それぞれ、「ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。」及び「P×P×Sk=30×32×0.051≒49[μm2]となる。」と記載されている。
上記記載から、訂正事項1による訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項1による訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないことは明らかである。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分は、訂正前の請求項2における「前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSk」の内容を明確にするためのものである。
また、訂正事項2による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分は、「P×P×Sk」の数値範囲を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)及び同条同項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものである。
また、これは、請求項2を引用する請求項5~請求項8についてみても、同じである。
イ 新規事項
訂正事項2による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分について、本件特許の明細書の【0112】には、「まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。」と記載されている。
また、訂正事項2による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分について、本件特許の明細書の【0036】及び【0103】には、それぞれ、「ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。」及び「P×P×Sk=30×32×0.051≒49[μm2]となる。」と記載されている。
上記記載から、訂正事項2による訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項2による訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないことは明らかである。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分は、訂正前の請求項3における「前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSk」の内容を明確にするためのものである。
また、訂正事項3による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分は、「P×P×Sk」の数値範囲を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)及び同条同項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものである。
また、これは、請求項3を引用する請求項5~請求項8についてみても、同じである。
イ 新規事項
訂正事項3による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分について、本件特許の明細書の【0112】には、「まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。」と記載されている。
また、訂正事項3による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分について、本件特許の明細書の【0036】及び【0103】には、それぞれ、「ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。」及び「P×P×Sk=30×32×0.051≒49[μm2]となる。」と記載されている。
上記記載から、訂正事項3による訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項3による訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないことは明らかである。
したがって、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分は、訂正前の請求項4における「前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSk」の内容を明確にするためのものである。
また、訂正事項4による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分は、「P×P×Sk」の数値範囲を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)及び同条同項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものである。
また、これは、請求項4を引用する請求項5~請求項8についてみても、同じである。
イ 新規事項
訂正事項4による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分について、本件特許の明細書の【0112】には、「まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。」と記載されている。
また、訂正事項4による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分について、本件特許の明細書の【0036】及び【0103】には、それぞれ、「ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。」及び「P×P×Sk=30×32×0.051≒49[μm2]となる。」と記載されている。
上記記載から、訂正事項4による訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項4による訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないことは明らかである。
したがって、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分は、訂正前の請求項8における「各々のマイクロレンズの正面方向の相対輝度の標準偏差をSk」の内容を明確にするためのものである。
また、訂正事項1による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分は、「P×P×Sk」の数値範囲を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項5による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)及び同条同項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものである。
イ 新規事項
訂正事項5による訂正のうち、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」を追加する部分について、本件特許の明細書の【0112】には、「まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。」と記載されている。
また、訂正事項5による訂正のうち、「P×P×Sk≦400[μm2]」を「P×P×Sk≦49[μm2]」とする部分について、本件特許の明細書の【0036】及び【0103】には、それぞれ、「ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。」及び「P×P×Sk=30×32×0.051≒49[μm2]となる。」と記載されている。
上記記載から、訂正事項5による訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項5による訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないことは明らかである。
したがって、訂正事項5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項~7項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6883510号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
そうしてみると、特許異議の申立ての対象となっている、請求項1~請求項8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項8に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、続きを表示(全56行)当該拡散板は透過型の拡散板であり、前記複数の微細構造体は凸形状であり、前記複数の微細構造体の凸面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔH[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λの関係を満たすことを特徴とする拡散板。【請求項2】主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、当該拡散板は透過型の拡散板であり、前記複数の微細構造体は凹形状であり、前記複数の微細構造体の凹面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔD[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、0.2≦ΔD×(n-1)×1000/λの関係を満たすことを特徴とする拡散板。【請求項3】主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、当該拡散板は反射型の拡散板であり、前記複数の微細構造体は凸形状であり、前記複数の微細構造体の凸面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔH[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、0.1≦ΔH×1000/λの関係を満たすことを特徴とする拡散板。【請求項4】主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし、当該拡散板は反射型の拡散板であり、前記複数の微細構造体は凹形状であり、前記複数の微細構造体の凹面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔD[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、0.1≦ΔD××1000/λの関係を満たすことを特徴とする拡散板。【請求項5】前記所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が、正面方向の輝度値で規格化した拡散特性の角度に対する拡散プロファイルにおいて、最大値の半分の強度になる半値角度より内側を見たときに、前記拡散特性の傾きの絶対値が最初に0.02[a.u./deg]以下になる角度又は前記拡散特性の傾きの絶対値が最初に極小点となる角度のいずれか広い方の角度よりも内側の角度範囲において、前記拡散特性の傾きの絶対値の最大値が0.08[a.u./deg]以下で、かつ、前記拡散特性の傾きの絶対値の平均値が0.04[a.u./deg]以下となることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の拡散板。【請求項6】前記複数の微細構造体がマイクロレンズであって、前記マイクロレンズの底面の形状が多角形状である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の拡散板。【請求項7】前記複数の微細構造体がマイクロレンズであって、前記マイクロレンズの底面の形状が四角形又は六角形であり、前記マイクロレンズが周期的に配列されている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の拡散板。【請求項8】請求項1~7のいずれか1項に記載の拡散板であって、前記拡散板の主面に複数のマイクロレンズが配列されており、前記複数のマイクロレンズの前記主面に垂直な断面の形状は、互いに異なっているとともに、対称軸を有さず、前記複数のマイクロレンズの平均ピッチをPとし、光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、各々のマイクロレンズの正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするとき、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たす、ことを特徴とする拡散板。」
第4 取消しの理由及び証拠
1 取消しの理由
令和4年2月9日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由は、理由1(サポート要件)本件特許の特許請求の範囲(請求項1~8)の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない、理由2(明確性要件)本件特許の特許請求の範囲(請求項1~8)の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、理由3(委任省令要件)本件特許は、発明の詳細な説明が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
2 証拠について
特許異議申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
第5 当合議体の判断
1 理由1(サポート要件)について
本件特許発明1の発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の【0011】に記載のとおり、「輝度ムラや色ムラの少ない光学特性と画像を投影した際の良好な外観品位とを得られる簡素な構成の拡散板を提供すること」にある。
ここで、本件特許の明細書の【0036】には、「また、複数の曲率を持ったマイクロレンズ2の特性を表すパラメータとして、各々のマイクロレンズ2の正面方向の相対輝度の標準偏差Skを定義する。拡散板1の正面方向の相対正面輝度のばらつき(標準偏差)は、0.005≦Skとすることが望ましい。さらに、ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。」と記載されている。また、本件特許の明細書において、このP×P×Skの値について、従来技術である特許文献4(当合議体注:特表2004-505306号公報)の図40に記載されたマイクロレンズアレイは、2600[μm2](同【0046】)であるのに対し、本件の実施例に示されたものは49[μm2](同【0103】)、比較例1として示されたものは171[μm2](同【0108】)、比較例2として示されたものは472[μm2](同【0109】)である。そして、本件特許の明細書における、【0044】、【0107】~【0110】の記載、及び、図9A~図9Cを参照すると、本件の実施例に記載されたものは、特許文献4の図4に示される従来技術や比較例1~2に示されたものに比べて粒々感が弱く、良好な画質となっているといえる。そうすると、上記【0036】のP×P×Skの値は小さい方が好ましいという記載と、本件の実施例の、従来技術及び比較例1~2とのP×P×Skの値の比較結果をあわせ考えると、P×P×Sk≦49[μm2]の範囲内にあることが好ましいことが理解できる。
そして、本件特許発明1の「拡散板」は「透過型」であり、「P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦49[μm2]を満たし」、「0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λの関係を満たす」ものであるから(当合議体注:Pは、複数の微細構造体の平均ピッチであり、Skは、光を拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの、複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差であり、ΔH[μm]は、複数の微細構造体の凸面の頂点の主面からの最大高さと最小高さとの差であり、nは、微細構造体の屈折率であり、をn、λ[nm]は、入射光の波長である。以下、同様である。)、当業者であれば、Sk≧0.005及び0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λの関係を満たすという輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、P≦200[μm]及びP×P×Sk≦49[μm2]を満たすことで外観不良(粒々感)を良好にすることができ、よって本件所期の課題を解決し得ることが認識できる。
以上勘案すると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えないものである。
本件特許発明2は「透過型」であり、本件特許発明1における「0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λ」を「0.2≦ΔD×(n-1)×1000/λ」に置き換えたものである(当合議体注:ΔD[μm]は、複数の微細構造体の凹面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差である。以下、同様である。)。本件特許発明3は「反射型」であり、本件特許発明1における「0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λ」を「0.1≦ΔH×1000/λ」に置き換えたものである。本件特許発明4は「反射型」であり、本件特許発明1における「0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λ」を「0.1≦ΔD×1000/λ」に置き換えたものである。
そうしてみると、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~4は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えないものである。
また、本件特許発明5~本件特許発明8は、本件特許発明1~本件特許発明4のうちのいずれかの構成をすべて含むものであるから、本件特許発明1~本件特許発明4と同様の理由により、本件特許発明5~本件特許発明8は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えないものである。
したがって、本件特許発明1~本件特許発明8は、発明の詳細な説明に記載したものである。
2 理由2(明確性要件)について
本件特許発明1~4、8における「前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差」に関し、「複数のマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差(Sk)」につき、【0094】~【0102】に定義されており、かつ、訂正により、「光を前記拡散板のパターン面に対して垂直に入射させたときの」ものであることが特許請求の範囲において明らかとなった。
ここで、入射させる光の強度分布が不均一であったり、拡散光のような非平行光であれば、相対輝度の標準偏差を有効に測定できないことは、技術常識に照らし明らかであるので、当業者であれば、複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差を測定するために用いる、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させる光は、強度分布が均一であり、平行光であると当然に理解する。
そうしてみると、本件特許発明1~4、8における「前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差」は、明確である。
本件特許発明5~本件特許発明8は、本件特許発明1~本件特許発明4のうちのいずれかの構成をすべて含むものであるから、本件特許発明1~本件特許発明4と同様の理由により明確である。
したがって、本件特許発明1~本件特許発明8は、明確である。
3 理由3(委任省令要件)について
まず、委任省令の趣旨は、発明をすることは技術的思想を創作することであるから、出願時の技術水準に照らして当該発明がどのような技術上の意義を有するのか(どのような技術的貢献をもたらしたか)を理解できるように記載することが重要であって、かかる理由から、委任省令では発明がどのような技術的貢献をもたらすのかが理解でき、また審査や調査に役立つように「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を記載すべきものとしたものである。
これを本件特許の明細書についてみると、本件特が解決しようとする課題は、【0011】に記載のとおり、「輝度ムラや色ムラの少ない光学特性と画像を投影した際の良好な外観品位とを得られる簡素な構成の拡散板を提供すること」を目的として、Sk≧0.005及び0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λの関係を満たすという輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、P≦200[μm]及びP×P×Sk≦49[μm2]を満たすことにより上記課題を解決し得る点を見いだした点において、出願時の技術水準に照らし、技術的貢献をもたらしたものである。
そして、【0100】及び【0112】には、それぞれ、「ここで、光線追跡の考え方によれば、面積Sは輝度と比例関係にあるため、レンズの正面輝度Iは、I=αSとなる(αは任意の係数)。」及び「まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。」と記載されている。
ここで、上記2で述べたように、当業者であれば、複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差を測定するために用いる、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させる光は、強度分布が均一であり、平行光であると理解でき、入射させる光の強度分布が不均一であったり、拡散光のような平行光であれば、相対輝度の標準偏差を有効に測定できないことは、明らかである。
そうしてみると、本件特許の明細書において、相対正面輝度Iの標準偏差Skとレンズの面積Sとの関係に不明確な点はないから、レンズの正面方向の相対輝度の標準偏差を変数とする式を満たす要件を設けることの技術上の意義も明らかである。
したがって、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、請求項に係る発明の属する技術分野の理解又は課題及びその解決手段の理解をすることができるといえ、発明の技術上の意義が不明であるとすることはできない。
第6 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和4年6月2日付け意見書において、「本件特許発明1~8は、本件出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない(特許法第36条第6項1号)。」(以下「主張1」という。)、「訂正後の本件特許発明1における正面入射の条件を直接かつ一義的に導出することはできない。かつ、本件明細書の他の記載部分に照らしても、当該正面入射の条件は当業者にとって自明であるともいえない。よって、上記訂正事項は、新規事項追加に該当する。」(以下「主張2」という。)、「本件特許発明1~8は、明確であるとはいえず、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)を満たさない。(以下「主張3」という。)、「この出願の発明の詳細な説明は、本件特許発明1~8について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない(特許法第36条第4項第1号)。」(以下「主張4」という。)と主張している。
しかしながら、上記主張1は上記第5「1」で、上記主張2は上記第2「3」で、上記主張3は上記第5「2」で、上記主張4は上記第5「3」で、それぞれ述べたとおりである。上記主張2について補足すると、正面入射させる光の強度分布が均一であったり、平行光であることは、当業者にとって明らかであるから、正面入射の条件は当業者にとって自明のことである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、いずれも採用することができない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、当合議体が通知した取消しの理由及び特許異議申立ての理由によっては、請求項1~請求項8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~請求項8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701153