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特許異議申立

2021-701147

分散液及びその製造方法並びに銅化合物粒子

審判番号
2021-701147
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-063564外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6885145
請求日
2021年12月06日
審決日
2022年02月14日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (A01N) / P1651.537-Y (A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6885145号発明「分散液及びその製造方法並びに銅化合物粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6885145号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6885145号は平成29年3月28日(優先日:平成28年3月28日、平成28年12月21日)に出願され、令和3年5月17日に特許権の設定登録がなされ、同年6月9日にその特許公報が発行され、その後、請求項1~7に係る特許に対して、同年12月6日に特許異議申立人 岩部英臣(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件請求項1~7に係る発明 本件請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明7」、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 非水系溶媒中に、脂肪酸で被覆された一価銅化合物微粒子と、サッカリン、サリチル酸、アスパラギン酸、クエン酸から選択される少なくとも1種である安定化剤とを含有することを特徴とする分散液。 【請求項2】 前記一価銅化合物粒子が、更に前記脂肪酸のエステル化合物で被覆されている請求項1記載の分散液。 【請求項3】 前記一価銅化合物が、亜酸化銅である請求項1又は2に記載の分散液。 【請求項4】 前記非水系溶媒が、エステル系溶媒である請求項1~3の何れかに記載の分散液。 【請求項5】 分散剤を更に含有する請求項1~4の何れかに記載の分散液。 【請求項6】 前記一価銅化合物が、抗ウイルス性を有する請求項1~5の何れかに記載の分散液。 【請求項7】 一価銅化合物微粒子表面に、脂肪酸及び該脂肪酸のエステル化合物が被覆されていることを特徴とする銅化合物微粒子。 第3 異議申立ての理由についての検討 1 申立人の異議申立ての理由について 申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 甲第1号証:特開2014-1190号公報 甲第2号証:芝田隼次外1名,資源と素材,114(6),1998,427-431 甲第3号証:特開2015-120896号公報 甲第4号証:国際公開第2014/208456号 甲第5号証:国際公開第2010/026730号 甲第6号証:特表2014-519504号公報 (以下、甲第1~6号証を「甲1」~「甲6」という。) ・申立ての理由1-1 本件発明1~6は、甲1に記載された発明及び甲1~4に記載された事項から、本件発明7は、甲1に記載された発明及び甲3~4に記載された事項から、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 ・申立ての理由1-2 本件発明1~6は、甲3に記載された発明及び甲3並びに周知技術(甲4~6)から、本件発明7は、甲3に記載された発明及び周知技術(甲4~6)から、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 ・申立ての理由2-1 本件実験例からみて、分散剤を含まない分散液が本件発明の課題を解決できるか否か不明である。よって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~4、6に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。このため、本件発明1~4及び6は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず、特許を受けることができないものである。 よって、本件発明1~4及び6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ・申立ての理由2-2 本件実験例からみて、請求項7に係る発明について、銅化合物微粒子のみで、分散剤や安定化剤が存在しなくても発明の課題を解決できるか否か不明であり、出願時の技術常識に照らしても、請求項7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。このため、本件発明7は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず、特許を受けることができないものである。 よって、本件発明7に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立ての理由1-1~1-2について (1)甲1の記載事項 ア「【請求項1】 一価の銅化合物微粒子と、還元剤と、分散媒を含む抗ウイルス組成物であって、pH6以下であることを特徴とする抗ウイルス組成物。 【請求項2】 前記一価の銅化合物微粒子が、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、およびチオシアン化物からなる群から少なくとも1種類選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス組成物。 【請求項3】 前記一価の銅化合物微粒子が、CuCl、CuBr、Cu(CH3COO)、CuSCN、Cu2S、Cu2O、およびCuIからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の抗ウイルス組成物。」 イ「【0007】 そこで本発明は、上記課題を解決するために、エンベロープの有無に関係なく一価の銅化合物が低濃度でウイルスを不活化でき、即効性があり、長期安定性に優れた抗ウイルス組成物を提供するものである。なお本明細書において、ウイルス不活化性と抗ウイルス性とは同義で用いている。」 ウ「【0014】 以下、本発明の抗ウイルス組成物について詳述する。本発明の抗ウイルス組成物は、抗ウイルス効果を示す一価の銅化合物微粒子と、分散媒と、還元剤と、からなる懸濁液状の抗ウイルス組成物である。 【0015】 本発明の抗ウイルス組成物に用いられる有効成分としては一価の銅化合物微粒子が挙げられる。これらはエンベロープの有無に関わらず、ウイルスを吸着してウイルスを不活化することが可能であり、タンパク質や脂質の存在下でも不活化可能である。一価の銅化合物微粒子のウイルス不活化機構については現在のところ必ずしも明確ではないが、一価の銅化合物微粒子が水分と接触すると、その一部がイオン化し一価の銅イオンを放出するが、この一価の銅イオンはウイルスと接触またはウイルス表面に吸着すると、電子を放出し、結果、この放出された電子が活性種を形成し、形成した活性種により何らかのダメージを与え、不活化させるものと思われる。 【0016】 具体的な一価の銅化合物微粒子としては、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、水酸化物、シアン化物、チオシアン酸塩またはこれらの混合物からなることが好ましく、中でもCuCl、Cu(CH3COO)、CuI、CuBr、Cu2O、CuOH、CuCN、CuSCNからなる群から少なくとも1種以上選択されることが好適である。 【0017】 本実施形態において、含有される一価の銅化合物微粒子の大きさは特に限定されないが、平均の粒子径が1nm以上、200μm以下とすることが好ましく、本実施形態の抗ウイルス組成物をスプレーに用いる場合では、スプレーのノズルからの良好な放出性を考慮すると、一価の銅化合物微粒子の平均粒子径は、10nm以上100μm以下であることが特に好ましい。 … 【0020】 また本発明の抗ウイルス組成物は分散媒を含んでいる。具体的な分散媒としては、水および/または低級アルコールを用いることができる。低級アルコールとしてはメタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコールを用いることができる。また、これらの分散媒は2種以上混合して用いてもよい。なお、本発明において、含有される分散媒の構成成分の比率は、必要に応じて変更可能である。 【0021】 また本発明の抗ウイルス組成物は還元剤を含むことを特徴とする。有効成分として一価の銅化合物を用いると、分散媒中に溶け出た一価の銅イオンは、安定ではあるが抗ウイルス効果の低い二価になろうとするため、長期に保管すると二価の銅イオンの比率が高くなり抗ウイルス性能が低くなってしまう。しかし、ここで還元剤を添加しておくと、二価の銅イオンが還元作用により抗ウイルス効果の高い一価の銅イオンとなるため、一価の銅イオンの状態が維持され、抗ウイルス効果の高い状態で安定に長期保管できるようになる。さらに本発明の抗ウイルス組成物は水溶液だけでなく、一価の銅化合物微粒子を含んでいるので、常に一価の銅イオンが飽和状態(濃度の高い状態)で溶液中に存在することができる。 【0022】 使用可能な還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウムや、次亜燐酸ナトリウムや、ヒドラジンや、2価の錫化合物や、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸などのオキシカルボン酸や、それらの塩などが挙げられる。また、還元剤は、還元糖、糖アルコール類、アルコール類であってもよい。還元糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フルクトース、マルトースなどを挙げることができる。また、糖アルコール類は、例えば、ソルビトールなどを挙げることができる。また、アルコール類は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなどを挙げることができる。さらに有機酸では、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸などのオキシカルボン酸や、それらの塩などが挙げられる。 … 【0025】 なお、本実施形態の抗ウイルス組成物には、一価の銅化合物微粒子の分散性をさらに高めるための分散剤を添加してもよい。分散剤としては、例えば界面活性剤や高分子系分散剤を用いることができる。 【0026】 界面活性剤としては、具体的には、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を使用できる。アニオン系界面活性剤としては、親水基としてカルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つものとすることができる。また、カルボン酸系としては、例えば石鹸の主成分である脂肪酸塩やコール酸塩とすることができる。また、スルホン酸系としては合成洗剤に多く使われる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。より具体的には、脂肪酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリウム石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩などのカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などのスルホン酸塩、アルキルリン酸カリウム塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸などが挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて用いてもよい。 【0027】 また、ノニオン系界面活性剤としては、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物および高級アルコールエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸エチレンオキシド付加物およびポリエチレングリコール脂肪酸エステル、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物および脂肪酸アミドエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、非イオン界面活性剤グリセリンおよびペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド脂肪酸、アルカノールアミドなどが挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて用いてもよい。 【0028】 さらに、高分子系分散剤としては、ポリウレタンプレポリマー、スチレン・ポリカルボン酸共重合体、リグニンスルホン酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、ゼラチン、さらに、オリゴマーおよびプレポリマーとしては、不飽和ポリエステル、不飽和アクリル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、マレイミド、ポリエン/ポリチオールや、アルコキシオリゴマーなどが挙げられる。」 エ「【0033】 抗ウイルス組成物をスプレー剤などの剤形としたときに、含有される一価の銅化合物粒子の粒子径が小さいと、分散剤などを入れていても凝集することがある。凝集が起きると、分散媒に均一に分散しにくかったり、ノズルが詰まったり、1度に噴霧できる範囲が狭くなるなど、十分な抗ウイルス効果を発揮できない場合がある。他にもマスクなど抗ウイルス効果を付けたい基材の表面に抗ウイルス組成物を噴霧した場合に、凝集体は基剤との密着性が悪いため脱落する場合がある。 【0034】 これに対し、複合粒子を用いた抗ウイルス組成物は、一価の銅化合物粒子(子粒子)が樹脂粒子(母粒子)に付着および/または埋没して固定されることにより、一価の銅化合物粒子の凝集を抑制することができる。したがって、本実施形態の抗ウイルス組成物は、スプレー剤とした場合にも、一価の銅化合物粒子の分散性が高く、十分な抗ウイルス効果を発揮できる。つまり、一価の銅化合物微粒子の量が少量で高い抗ウイルス効果が得られるため、スプレー剤として噴霧しても透明性が高いスプレー剤が提供できる。さらに、母粒子が樹脂である複合粒子は、同じ粒径の銅化合物微粒子に比べて粒子重量が軽くなるため、分散媒中において沈降しにくい(分散状態が維持されやすい)という利点がある。」 (2)甲3の記載事項 ア「【請求項1】 硬化性樹脂に脂肪酸修飾金属超微粒子が分散して成ることを特徴とする硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 イオン安定化剤を更に含有する請求項1記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 前記脂肪酸修飾金属超微粒子が、金属粒子表面に脂肪酸が配位し、該脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位してなる金属超微粒子である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。 … 【請求項6】 硬化性樹脂組成物が脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液を含有してなり、 前記脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液が、高沸点溶媒としてグリセリンを使用し、該高沸点溶媒に、銀、銅、亜鉛のいずれかの金属を有する脂肪酸金属塩とサッカリン添加し、これを加熱混合することにより、銀、銅、亜鉛いずれかの金属超微粒子表面に脂肪酸とグリセリドが配位してなる脂肪酸修飾金属超微粒子が分散して成る脂肪酸修飾金属超微粒子分散高沸点溶媒を調製し、該脂肪酸修飾金属超微粒子分散高沸点溶媒を低沸点溶媒と混合した後、前記高沸点溶媒及び低沸点溶媒を二相分離すると共に、高沸点溶媒から低沸点溶媒中に脂肪酸修飾金属超微粒子を抽出することにより得られた脂肪酸修飾金属超微粒子含有低沸点溶媒である請求項1~5の何れかに記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項7】 低沸点溶媒が、メチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンである請求項6記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項8】 前記脂肪酸又はグリセリドの溶解度パラメーター(SP値)と、低沸点溶媒の溶解度パラメーター(SP値)の差が3以下である請求項6又は7記載の硬化性樹脂組成物。」 イ「【技術分野】 【0001】 本発明は、金属超微粒子を含有してなる抗菌性樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、金属超微粒子の分散性に優れ、優れた光学特性を有し、生産性にも優れた硬化性樹脂組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ナノメートルのオーダーの金属超微粒子は、比表面積が大きいこと、量子サイズ効果によって特有の物性を示すことなど、一般的な材料とはその性質が異なることから、電子材料、磁性材料、光学材料、浸透成膜、触媒材料、抗菌剤など、様々な分野で研究・利用が進められている。 その一方、金属超微粒子は活性が高く不安定であるため、金属超微粒子単体ではその形態を維持しにくいため金属超微粒子同士が凝集してしまい、光学特性が求められる用途においては、透明性が低下し、性能が低下或いは発現しないといった問題がある。」 ウ「【0007】 従って本発明の目的は、分散性、生産性に優れていると共に、抗菌性能を有する銀等の金属を効率よく溶出可能であり、優れた抗菌性能を発現可能な硬化性樹脂組成物を提供することである。 本発明の他の目的は、分散性に優れ少量の脂肪酸修飾金属超微粒子であっても抗菌性能を発現可能な抗菌性硬化性樹脂組成物を提供することである。 … 【発明の効果】 【0009】 本発明の硬化性樹脂組成物においては、脂肪酸修飾金属超微粒子が凝集することなく分散していることから優れた抗菌性能と有すると共に透明性にも優れている。尚、抗菌とは、菌の増殖や繁殖を抑制するものを示す。 また硬化性樹脂の希釈溶剤が、金属超微粒子表面に脂肪酸が配位し、該脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位してなる脂肪酸修飾金属超微粒子を含有する低沸点溶媒から成る脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液を含有することにより、上述した効果を発現可能な脂肪酸修飾金属超微粒子含有硬化性樹脂組成物を調製することができ、生産性にも顕著に優れている。 更に本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化性樹脂の希釈溶剤に脂肪酸修飾金属超微粒子が含有されていることにより、生成された脂肪酸修飾金属超微粒子を取り出すことなく、樹脂中へ分散させることができ、生産性にも優れている。 更にまた、金属超微粒子表面に配位した脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位されていることにより、このグリセリドが低沸点溶媒との相溶性に顕著に優れていることから、後述するように高沸点溶媒から低沸点溶媒への抽出が促進され、脂肪酸修飾金属超微粒子を高濃度で分散安定性よく含有する低沸点溶媒から成る脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液を調製することができる。」 エ「【発明を実施するための形態】 【0011】 (脂肪酸修飾金属超微粒子) 本発明の脂肪酸修飾金属超微粒子における脂肪酸としては、ミリスチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,パルミチン酸,n-デカン酸,パラトイル酸,コハク酸,マロン酸,酒石酸,リンゴ酸,グルタル酸,アジピン酸、酢酸等の脂肪族カルボン酸、フタル酸,マレイン酸,イソフタル酸,テレフタル酸,安息香酸、ナフテン酸等の芳香族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸等を挙げることができる。 … 金属超微粒子の金属成分は、Cu,Ag,Au,Id,Pd,Pt,Fe,Ni,Co,Zn,Nb,Ru及びRhから成る群から選択される少なくとも1種を用いることができるが、抗菌性能の点から銀、銅、亜鉛が好適であり、特に銀が好適である。 … 【0015】 (光硬化性樹脂組成物) … 脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液と組合せで用いる希釈溶剤としては、従来よりアクリル系樹脂の希釈溶剤として用いられていたものを使用することができるが、特に…酢酸エチル、酢酸ブチル等の比較的極性が小さく、沸点の低い溶媒を好適に用いることができる。… … 【0019】 [イオン安定化剤] 本発明の硬化性樹脂組成物においては、金属イオンの過度の還元を抑制する観点から、イオン安定化剤を含有することが特に好ましい。これにより金属超微粒子の還元を抑制し、抗菌性能を向上することができる。 このようなイオン安定化剤としては、低沸点溶媒又は高沸点溶媒にその一部又は全部が可溶し、且つ、酸解離係数(pka)が4.5以下のものがよく、例えば、サリチル酸(pKa2.8)、アスパラギン酸(pKa1.93)、クエン酸(pKa2.90)、…o-安息香酸スルフィミド(サッカリン(pKa2.2))…およびこれらの組み合わせがある。」 オ「【0021】 (脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液の製造方法) 本発明の硬化性樹脂組成物に含有される脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液は以下の2つの製造方法によって調製される。 (1)第一の製造方法 (1-1)第一工程 第一の製造方法における第一工程では、高沸点溶媒であるグリセリン中で、金属超微粒子表面に脂肪酸又はグリセリドが配位して成る脂肪酸修飾金属超微粒子が生成される。このような脂肪酸修飾金属超微粒子が形成され得る限りその条件は問わないが、好適には、銀、銅、亜鉛の何れかの金属を有する脂肪酸金属塩及びサッカリンをグリセリンに添加し、添加した後の高沸点溶媒の温度が120~230℃、特に140~170℃の範囲となるように加熱し、加熱温度によって左右されるが、10~120分間、特に30~80分間加熱混合することにより、金属超微粒子表面に脂肪酸とグリセリドが配位して成る脂肪酸修飾金属超微粒子をグリセリン中に形成することが可能になる。すなわち、脂肪酸金属塩を上記温度範囲で加熱することにより、脂肪酸金属塩が脂肪酸と金属に分解還元され、金属が金属超微粒子を形成し、脂肪酸が粒子表面に配位する。脂肪酸とグリセリンのエステル化反応が進行してグリセリドが生成されると共に、金属超微粒子表面に脂肪酸と同様にグリセリドが配位し、脂肪酸修飾金属超微粒子がグリセリン中に分散される。 … 【0026】 (脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液) 本発明の硬化性樹脂組成物に含有される脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液は、前述した通り、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の低沸点溶媒中に平均1次粒子径が100nm以下、特に10~50nm、平均2次粒子径が900nm以下、特に200nm~700nmの脂肪酸修飾金属超微粒子が分散してなる分散液であり、硬化性樹脂組成物に含有させて使用した場合、組成物自体の透明性を低下させることがない。… また脂肪酸修飾金属超微粒子が顕著に凝集することなく均一に分散していることから、優れた抗菌性能を発現することができる。 更にこの脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液においては、分散液中に存在する金属超微粒子は、粒子表面に脂肪酸が配位し、この脂肪酸の周囲又は粒子表面にグリセリドが配位した金属超微粒子であることから、分散安定性に顕著に優れており、長時間経過した場合でも沈殿することがほとんどないことから、透明材を構成する樹脂組成物層においても分散性よく均一に分散する。… 【0027】 (高沸点溶媒) 脂肪酸修飾金属超微粒子分散液の調製に使用される高沸点溶媒としてはグリセリンを使用することができ、更にグリセリンと共に使用し得る高沸点溶媒としては、脂肪酸修飾金属超微粒子を凝集・沈殿することなく分散可能である限り使用することができるが、好適には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒を挙げることができ、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチルエーテルを好適に用いることができる。 【0028】 (低沸点溶媒) 脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液において、脂肪酸修飾金属超微粒子を含有する分散媒として使用される低沸点溶媒は、上記高沸点溶媒の沸点よりも小さく且つ高沸点溶媒と二相分離可能な溶剤であり、低沸点溶媒と金属超微粒子表面に配位する脂肪酸又はグリセリドとのSP値の差が小さいことが重要であり、これにより、高沸点溶媒から脂肪酸修飾金属超微粒子を抽出させると共に、高沸点溶媒を副生物や残渣物と共に除去することが可能になる。 低沸点溶媒の沸点は、好適には40~120℃の範囲にあることが、透明材を構成する樹脂組成物層の生産性や取扱性等の点から望ましい。 このような低沸点溶媒としては、これに限定されないが、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。 また本発明においては、上記低沸点溶媒の中でも、二相分離に際して高沸点溶媒中の脂肪酸修飾金属超微粒子を効率よく抽出可能とするために、上述した脂肪酸又はグリセリドと相溶性の高い低沸点溶媒を選択することが望ましいことから、粒子表面に配位する脂肪酸又はグリセリドのSP値(溶解度パラメータ)と、低沸点溶媒のSP値の差(絶対値)が、3以下となるように低沸点溶媒を選択することが望ましい。」 カ「【0031】 (実施例1) グリセリン700g(SP値:20)にステアリン酸銀3.85g(ステアリン酸のSP値:9.1)とサッカリン0.385gを加え、150℃で40分間加熱した。グリセリンを60℃まで冷却後、メチルイソブチルケトン700g(SP値:8.7)を加えて攪拌した。1時間程静置した後にメチルイソブチルケトン層を採取し、0.05重量%脂肪酸修飾銀超微粒子含有分散液Aを得た。GC測定により分散液中にはモノステアリン酸グリセリド(SP値:10.8)が755ppm含有していた。」 (2)甲各号証に記載された発明、及び、本件発明1との対比 ア 甲1を主引用例とするもの(申立ての理由1-1) 甲1の請求項1からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されている。 「一価の銅化合物微粒子と、還元剤と、分散媒を含む抗ウイルス組成物であって、pH6以下であることを特徴とする抗ウイルス組成物。」 そうすると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。 「一価銅化合物微粒子を含有する組成物」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点1: 本件発明1は「一価銅化合物微粒子」が「非水系溶媒中」にあるのに対し、甲1発明は「分散媒」中であり、これが非水系のものか明らかでない点。 相違点2: 本件発明1は「脂肪酸で被覆された」ものであるのに対し、甲1発明はこれが明らかでない点。 相違点3: 本件発明1は「サッカリン、サリチル酸、アスパラギン酸、クエン酸から選択される少なくとも1種」の「安定化剤」を含有するのに対し、甲1発明は「還元剤」を含有する点。 イ 甲3を主引用例とするもの(申立ての理由1-2) 甲3の請求項6及び7における「脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液」に係る規定から、甲3には以下の甲3発明が記載されている。 「高沸点溶媒としてグリセリンを使用し、該高沸点溶媒に、銀、銅、亜鉛のいずれかの金属を有する脂肪酸金属塩とサッカリン添加し、これを加熱混合することにより、銀、銅、亜鉛いずれかの金属超微粒子表面に脂肪酸とグリセリドが配位してなる脂肪酸修飾金属超微粒子が分散して成る脂肪酸修飾金属超微粒子分散高沸点溶媒を調製し、該脂肪酸修飾金属超微粒子分散高沸点溶媒を低沸点溶媒と混合した後、前記高沸点溶媒及び低沸点溶媒を二相分離すると共に、高沸点溶媒から低沸点溶媒中に脂肪酸修飾金属超微粒子を抽出することにより得られた脂肪酸修飾金属超微粒子含有低沸点溶媒であり、低沸点溶媒がメチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンである、脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液」 甲3発明の「低沸点溶媒」の「メチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトン」は、本件発明1の「非水系溶媒」といえることに鑑みると、本件発明1と甲3発明とは以下の点で一致する。 一致点: 「非水系溶媒中に、脂肪酸が周囲に存在する微粒子及び安定化剤を含有する分散液」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点4: 「微粒子」に関し、本件発明1が「一価銅化合物」であるのに対し、甲3発明は「金属」である点。 相違点5: 本件発明1は「脂肪酸で被覆された」ものであるのに対し、甲3発明は「脂肪酸が配位」したものである点。 相違点6: 本件発明1は「サッカリン、サリチル酸、アスパラギン酸、クエン酸から選択される1種以上」の「安定化剤」を含有するのに対し、甲3発明は「イオン安定化剤」を含有する点。 (3)本件発明1~6についての判断 ア 甲1発明との相違点2について検討する。 甲1には、甲1発明に係る「一価銅化合物微粒子」を「脂肪酸が被覆された」ものとすることの記載はなく、また示唆もない。 申立人は、「甲1A発明も「一価の銅化合物微粒子の分散性をさらに高めるための分散剤を添加してもよい。」(【0025】)、「抗ウイルス組成物をスプレー剤などの剤形としたときに、含有される一価の銅化合物粒子の粒子径が小さいと、分散剤などを入れていても凝集することがある。」(【0033】)等の記載から明らかなように、本件発明1と同様に一価銅化合物微粒子を溶媒中における分散性を向上させる目的で、脂肪酸塩やポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の界面活性剤である分散剤を含有してよいとされている。ここで、界面活性剤などの分散剤が、粒子表面に吸着して粒子を覆い、静電気的な反発力や吸着した分散剤による立体障害効果によって凝集を抑制することは周知技術である。この点については、たとえば甲2に「…高分子物質や界面活性剤などを粒子表面に吸着させて,粒子表面を親水性から疎水性に変える,…粒子表面に物理的に吸着した水分子を取り除く,…粒子間に働くファンデルワールス引力や磁気的引力に対して,電気二重層による反発力や吸着層の立体障害効果を利用する。」(P.427左欄)と記載されている。したがって、甲1A発明における界面活性剤は一価の銅化合物微粒子の表面に吸着することになり、一価の銅化合物微粒子は界面活性剤で被覆されることになる。」(申立書26頁3~18行)と主張する。 しかし、【0025】の「なお、本実施形態の抗ウイルス組成物には、一価の銅化合物微粒子の分散性をさらに高めるための分散剤を添加してもよい。分散剤としては、例えば界面活性剤や高分子系分散剤を用いることができる。」との記載からは、係る「分散剤」は甲1発明に係る「抗ウイルス組成物」に添加しうるものに過ぎず、たとえ添加されたとしても、係る「分散剤」で「一価銅化合物微粒子」の表面が被覆されたものになると解されるとは、必ずしもいえない。 また、甲2は「脂肪酸存在下での磁性酸化鉄スラリーの分散安定化とその評価」と題した、γ-Fe2O3粒子の炭化水素溶媒中での挙動に関する報告であり、この記載内容が一価銅化合物微粒子においても同様の事象が発現すると解される根拠を見いだすことができない。 このため、上記主張を勘案することはできない。 そして、この相違点に関し、他の甲各号証を参照しても、甲1発明に係る「一価銅化合物微粒子」を「脂肪酸が被覆された」ものとすることを想起させる記載ないし示唆を見いだすことができない。 したがって、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及びその余の甲各号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲3発明との相違点4について検討する。 (ア)甲3には、甲3発明に係る(超)微粒子である「金属」が一価の金属化合物であることについて何ら記載ないし示唆がない。 また、係る「金属」を一価の金属化合物とすることを想起させる記載ないし示唆は存在せず、他の甲各号証を参照しても、係る「金属」として一価の金属化合物を用いるようにすることを想到させるものは存在しない。 (イ)申立人は、申立書(30頁3~16行)において、以下のとおり主張する。 「甲3A発明では、抗菌性能を持たせるために、脂肪酸が配位した脂肪酸修飾金属超微粒子の金属成分として銅を用いている(【0011】)。また、甲3A発明では、イオン安定化剤を用いて金属イオンの状態を維持するようにしているため(【0019】)、金属成分である銅は、金属銅ではなく、銅イオンとして存在するものであることが分かる。そして、銅イオンに一価と二価があることは自明の事実である。 ここで、一価の銅化合物(すなわち、一価の銅イオン)が抗菌性や抗ウイルス性を有することは、甲5(【0018】-【0020】、【0024】)や甲6(【0028】等)に記載されているとおり、本件特許の出願日(優先日)において既に知られた技術常識であって、周知技術である。 よって、甲3A発明において、銅を金属成分とした金属超微粒子として、一価の銅化合物の粒子を用いることについては、何ら格別の困難性は無い。また、甲3の記載によれば、甲3A発明の金属超微粒子から一価の銅化合物だけを除外するといった特段の事情も認められない。」 しかし、上記のとおり、甲3には「金属」との記載はあるものの、これが一価の金属化合物となることについて明らかでない。また、この「金属」を一価の金属化合物とすること、あるいは、甲3発明に係る「組成物」において一価の金属化合物を用いることは、甲3のみならずその余の甲各号証においても、その示唆がない。 (ウ)したがって、相違点5~6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及びその余の甲各号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1を更に限定するものである。したがって、本件発明1が甲1発明あるいは甲3発明、及びその余の甲各号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件発明2~6も甲1発明あるいは甲3発明、及びその余の甲各号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)甲各号証に記載された発明、及び、本件発明7との対比 ア 甲1を主引用例とするもの(申立ての理由1-1) 上記(2)アで示したとおり、甲1の請求項1からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されている。 「一価の銅化合物微粒子と、還元剤と、分散媒を含む抗ウイルス組成物であって、pH6以下であることを特徴とする抗ウイルス組成物。」 そうすると、本件発明7と甲1発明とは以下の点で一致する。 「一価銅化合物微粒子」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点7: 本件発明7は「一価銅化合物微粒子」の表面に、「脂肪酸及び該脂肪酸のエステル化合物が被覆されている」のに対し、甲1発明は「還元剤」は存在するものの、何らかの物質が「被覆されている」のか明らかでない点。 イ 甲3を主引用例とするもの(申立ての理由1-2) 上記(2)イで示したとおり、甲3には以下の甲3発明が記載されている。 「高沸点溶媒としてグリセリンを使用し、該高沸点溶媒に、銀、銅、亜鉛のいずれかの金属を有する脂肪酸金属塩とサッカリン添加し、これを加熱混合することにより、銀、銅、亜鉛いずれかの金属超微粒子表面に脂肪酸とグリセリドが配位してなる脂肪酸修飾金属超微粒子が分散して成る脂肪酸修飾金属超微粒子分散高沸点溶媒を調製し、該脂肪酸修飾金属超微粒子分散高沸点溶媒を低沸点溶媒と混合した後、前記高沸点溶媒及び低沸点溶媒を二相分離すると共に、高沸点溶媒から低沸点溶媒中に脂肪酸修飾金属超微粒子を抽出することにより得られた脂肪酸修飾金属超微粒子含有低沸点溶媒であり、低沸点溶媒がメチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンである、脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液」 甲3発明において、「グリセリン」と、「脂肪酸金属塩とサッカリン」を添加して加熱混合することによって、本件発明7でいう「脂肪酸」と、「該脂肪酸のエステル化合物」が生成するものと認められるので、本件発明7と甲3発明とは以下の点で一致する。 一致点: 「微粒子表面に、脂肪酸及び該脂肪酸のエステル化合物が存在する微粒子」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点8: 「微粒子」に関し、本件発明7が「一価銅化合物」であるのに対し、甲3発明は「金属」である点。 相違点9: 「微粒子」は、本件発明7では「脂肪酸及び該脂肪酸のエステル化合物が被覆されている」のに対し、甲3発明は「…被覆されている」ものか明らかでない点。 (5)本件発明7についての判断 ア 相違点7について検討する。 甲1には、甲1発明に係る「一価銅化合物微粒子」を「脂肪酸及び該脂肪酸のエステル化合物が被覆されている」ものとすることの記載ないし示唆は存在しない。 上記(3)アで検討したとおり、甲1に記載された「分散剤」は甲1発明に係る「抗ウイルス組成物」に添加しうるものに過ぎず、たとえ添加されたとしても、係る「分散剤」が「一価銅化合物微粒子」の表面に吸着されたものになると解されるとは、必ずしもいえない。 また、甲2は「脂肪酸存在下での磁性酸化鉄スラリーの分散安定化とその評価」と題した、γ-Fe2O3粒子の炭化水素溶媒中での挙動に関する報告であり、この記載内容が一価銅化合物微粒子においても同様の事象が発現すると解される根拠を見いだすことができない。 このため、甲2に基づく主張を勘案することはできない。 そして、この相違点に関し、他の甲各号証を参照しても、甲1発明に係る「一価銅化合物微粒子」を「脂肪酸及び該脂肪酸のエステル化合物が被覆されている」ものとすることを想起させる記載ないし示唆を見いだすことができない。 したがって、本件発明7は、甲1発明及びその余の甲各号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 相違点8について検討する。 相違点8は相違点4と同旨である。したがって、上記(3)イで検討したとおりである。 したがって、相違点9について検討するまでもなく、本件発明7は、甲3発明及びその余の甲各号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ よって、本件発明1~7に係る特許に対する申立ての理由1-1~1-2には、理由がない。 3 申立ての理由2-1について (1)申立人の主張 申立人は、申立書(40頁24行~41頁5行)において、以下のとおり主張する。 「本件明細書には、実験例1~7の分散液についてゼータ電位評価方法及び経時安定性評価方法によって分散性を評価している(【0029】~【0039】)。そして、結果が表1に示されている(【0043】)。 しかし、ゼータ電位評価方法又は経時安定性評価方法のいずれかの基準を満たす実験例は、いずれも分散剤としてDISPERBYK-2090(ビック・ケミー社製)を含むものであり、分散剤を含まない分散液についての分散性については一切評価されていないため、分散剤を含まない分散液が課題を解決できるか否か不明である。よって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~4、6に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。」 (2)検討 本件【0021】には以下の記載がある。 「本発明の分散液には、上述した銅化合物微粒子及び安定化剤の他、分散剤を含有していることが好適である。これにより、銅化合物微粒子を高濃度で含有する場合にも、銅化合物微粒子が均一に分散された分散液とすることが可能になる。 … 分散剤は、分散液中に0.01~2重量%、特に0.1~1重量%の量で含有されていることが好ましい。上記範囲よりも分散剤の量が少ない場合には上記範囲にある場合に比して銅化合物微粒子の分散性に更なる向上が望めず、一方上記範囲よりも分散剤の量が多くとも更なる効果の向上は望めないと共に経済性にも劣るようになる。」 本件発明1~4及び6には分散剤を用いることの規定はないが、そうであるとしても、上記記載からみて、分散剤を用いないことは、「上記範囲にある場合に比して銅化合物微粒子の分散性に更なる向上が望め(ない)」という程度であり、請求項1~4及び6に関する本件の「分散液」に係る発明の解決課題である「微粒子が分散媒中に均一且つ安定的に分散する」(【0006】)ことを否定するものではない。また、分散剤を用いないことによって上記課題を解決することができないという根拠を見いだすことができず、申立人はその根拠を示さない。 このため、申立人の上記主張を勘案することはできない。 そして、本件発明1~4及び6は本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。 (3)まとめ よって、本件発明1~4及び6に係る特許に対する申立ての理由2-1には、理由がない。 4 申立ての理由2-2について (1)申立人の主張 申立人は、申立書(41頁8~18行)において、以下のとおり主張する。 「本特許明細書に記載の実験例は、全て安定化剤と分散剤を含む分散液についての実施例であり(【0029】-【0036】)、請求項7に係る発明の「銅化合物微粒子」そのものの分散性については何ら評価されていない。そして、実験例のうち、ゼータ電位評価方法で分散性が良好であるとする基準値である30mV以上(【0037】)の実験例は、実験例1及び2のみであり、安定化剤をサッカリンからサリチル酸に変更した実験例3については、安定化剤を含むにもかかわらず、基準値30mVを下回っている(28.81mV)。よって、請求項7に係る発明について、銅化合物微粒子のみで、分散剤や安定化剤が存在しなくても発明の課題を解決できるか否か不明である。よって、出願時の技術常識に照らしても、請求項7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。」 (2)検討 請求項7に関する本件の「銅化合物微粒子」に係る発明の解決課題は「一価銅化合物の微粒子が有する抗ウイルス性を効率よく発現可能」(【0006】)とすることにある。係る優位な「抗ウイルス性」は【0044】~【0047】に示されており、本件発明の実施例である実験例1は上記課題を解決することが確認できる。 また、「分散剤」や「安定化剤」は、本件の「分散液」に係る発明に関わるものであり、「分散剤」や「安定化剤」の有無は「銅化合物微粒子」に係る発明には関係のない事項である。 このため、申立人の上記主張を勘案することはできない。 よって、本件発明7は本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。 (3)まとめ よって、本件発明7に係る特許に対する申立ての理由2-2には、理由がない。 5 まとめ 以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由によっては、本件請求項1~7に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701147

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