特許異議申立
2021-701142
シームレスカプセル
- 審判番号
- 2021-701142
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-257131外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6884369
- 請求日
- 2021年12月03日
- 審決日
- 2023年04月20日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6884369号発明「シームレスカプセル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6884369号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
特許第6884369号の請求項1~8、10~16に係る特許を維持する。
特許第6884369号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6884369号(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成28年12月28日に出願され、令和3年5月14日にその特許権の設定登録(請求項数16)がされ、令和3年6月9日に特許掲載公報が発行され、その後、特許異議申立人佐藤知里(以下「申立人」という。)より、請求項1~16に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。以後の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和3年12月 3日 :特許異議申立書の差出
令和4年 3月31日付け:取消理由通知書及び審尋
同年 6月 1日 :訂正請求書、意見書及び回答書の提出
(特許権者)
同年 7月14日 :意見書の提出(申立人)
同年 8月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年12月 5日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
令和5年 2月15日 :意見書の提出(申立人)
なお、令和4年6月1日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正について
1 訂正の内容
令和4年12月5日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、一群の請求項である請求項1~16について請求するものであって、次の訂正事項1~9からなるものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「直径が5mm以上であり、皮膜の最小厚みTlに対する最大厚みT2の割合T2/Tlが2.3以下であるシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「直径が5~20mmであり、皮膜の最小厚みTlに対する最大厚みT2の割合T2/Tlが2.3以下であり、皮膜率が10質量%以下であり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に、
「皮膜率が3~60質量%である請求項1~6のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「皮膜率が3~10質量%である請求項1~6のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に、
「皮膜率が10質量%以下である請求項1~7のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「皮膜率が1~10質量%である請求項1~6のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に、
「直径が13mm以上である請求項1~9のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「直径が13mm以上である請求項1~8のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に、
「直径が15mm以上である請求項1~10のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「直径が15mm以上である請求項1~8、10のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12に、
「内包物がゲル状である請求項1~11のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「内包物がゲル状である請求項1~8、10、11のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13に、
「皮膜の厚みの標準偏差をSD、皮膜の厚みをTとするとき、値[SD/T]が、0.2以下である請求項1~12のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
と記載されているのを、
「皮膜の厚みの標準偏差をSD、皮膜の厚みをTとするとき、値[SD/T]が、0.2以下である請求項1~8、10~12のいずれかに記載のシームレスカプセル。」
に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項14に、
「皮膜の構成成分を含む皮膜液を通過させる外側ノズル及び内包物の構成成分を含む内容液を供給する内側ノズルを同心円状に備えた同心多重ノズルと、形成管とを備えた装置を用い、内側ノズルの吐出口から内容液を、外側ノズルの吐出口から皮膜液を、それぞれ形成管内に吐出することにより、形成管内でカプセルを形成させるカプセル形成工程を含む、請求項1~13のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法であって、
同心多重ノズルの軸心線と、形成管の軸心線との距離をXとし、カプセルの直径をDとするとき、値X/Dを、3以下となるように調整し、かつ、
内側ノズルの吐出口の幅をYとし、カプセルの直径をDとするとき、値Y/Dを、0.4以下に調整する、シームレスカプセルの製造方法。」
と記載されているのを、
「皮膜の構成成分を含む皮膜液を通過させる外側ノズル及び内包物の構成成分を含む内容液を供給する内側ノズルを同心円状に備えた同心多重ノズルと、形成管とを備えた装置を用い、内側ノズルの吐出口から内容液を、外側ノズルの吐出口から皮膜液を、それぞれ形成管内に吐出することにより、形成管内でカプセルを形成させるカプセル形成工程を含む、請求項1~8、10~13のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法であって、
皮膜液の粘度が50~500mPa・sであり、
同心多重ノズルの軸心線と、形成管の軸心線との距離をXとし、カプセルの直径をDとするとき、値X/Dを、3以下となるように調整し、かつ、
内側ノズルの吐出口の幅をYとし、カプセルの直径をDとするとき、値Y/Dを、0.4以下に調整する、シームレスカプセルの製造方法。」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「直径が5mm以上」を「直径が5~20mm」とし、また、「皮膜率が10質量%以下」及び「皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」ことを新たに特定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
「直径が5~20mm」(直径の上限値が20mm)、及び、「皮膜率が10質量%以下」であることは、それぞれ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の表14(実施例12のカプセル直径(D))及び請求項8に記載された事項であり、また、「皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」ことは、令和4年3月31日付け取消理由通知において引用した甲4の実施例11又は12において製造されたシームレスカプセルの皮膜ではないものに特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項7において、本件明細書等の請求項8及び【0065】の記載に基づいて、「皮膜率が3~60質量%」を「皮膜率が3~10質量%」とするものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項8において、本件明細書等の【0065】の記載に基づいて、「皮膜率が10質量%以下」を「皮膜率が1~10質量%」とし、また、引用する請求項数を減らすものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5)訂正事項5~8について
訂正事項5~8は、訂正前の請求項10~13において、引用する請求項から、削除された請求項9を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(6)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項14において、本件明細書等の【0087】の記載に基づいて、「皮膜液の粘度が50~500mPa・s」であること特定し、また、引用する請求項から、削除された請求項9を除くものであるから、訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(7)訂正事項1~3、9により実質的に訂正されることになる請求項2~8、10~16における訂正についても、同様である。
(8)独立特許要件について
特許異議の申立てがされた請求項1~16については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
3 小括
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
第3 訂正発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、請求項1~16に係る発明(以下、請求項の番号に従い「訂正発明1」などという。)は、令和4年12月5日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
直径が5~20mmであり、皮膜の最小厚みTlに対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下であり、皮膜率が10質量%以下であり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。
【請求項2】
直径が7mm以上である請求項1記載のシームレスカプセル。
【請求項3】
直径が10mm以上である請求項1又は2記載のシームレスカプセル。
【請求項4】
皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.1以下である請求項1~3のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項5】
真球度が80%以上である請求項1~4のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項6】
直径が10mm以上であり、皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.1以下であり、真球度が85%以上である請求項1~5のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項7】
皮膜率が3~10質量%である請求項1~6のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項8】
皮膜率が1~10質量%である請求項1~6のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
直径が13mm以上である請求項1~8のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項11】
直径が15mm以上である請求項1~8、10のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項12】
内包物がゲル状である請求項1~8、10、11のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項13】
皮膜の厚みの標準偏差をSD、皮膜の厚みをTとするとき、値[SD/T]が、0.2以下である請求項1~8、10~12のいずれかに記載のシームレスカプセル。
【請求項14】
皮膜の構成成分を含む皮膜液を通過させる外側ノズル及び内包物の構成成分を含む内容液を供給する内側ノズルを同心円状に備えた同心多重ノズルと、形成管とを備えた装置を用い、内側ノズルの吐出口から内容液を、外側ノズルの吐出口から皮膜液を、それぞれ形成管内に吐出することにより、形成管内でカプセルを形成させるカプセル形成工程を含む、請求項1~8、10~13のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法であって、
皮膜液の粘度が50~500mPa・sであり、
同心多重ノズルの軸心線と、形成管の軸心線との距離をXとし、カプセルの直径をDとするとき、値X/Dを、3以下となるように調整し、かつ、
内側ノズルの吐出口の幅をYとし、カプセルの直径をDとするとき、値Y/Dを、0.4以下に調整する、シームレスカプセルの製造方法。
【請求項15】
値X/Dを2以下、値Y/Dを0.28以下に調整する請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
値X/Dを2以下、値Y/Dを0.28以下に調整し、歩留まり率80%以上でシームレスカプセルを得る請求項14又は15に記載の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 特許異議の申立の理由の概要
本件特許の設定登録時の請求項1~16に係る特許について、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の概要は以下のとおりである。
〔申立理由1:新規性〕
請求項1、2、4、5、7、9に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明でであり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4、5、7、9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。(甲号証:対象請求項の順に示す。以下同様。)
・甲1:請求項1、2、4、5
・甲2:請求項1、4、5、7、9
・甲3:請求項1、4、5、7、9
〔申立理由2:進歩性〕
請求項1~11、13に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~11、13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
・甲1:請求項1~6
・甲2:請求項1、2、4、5、7、9
・甲3:請求項1、4、5、7、9
・甲4(主引例)及び甲1又は甲2(副引例):請求項7、8、13
・甲4(主引例)及び甲3(副引例):請求項8、13
・甲5(主引例)及び甲1(副引例):請求項7、9、10、11
・甲5(主引例)及び甲2又は甲3(副引例):請求項3、6、10、11
・甲6(主引例)及び甲1(副引例):請求項5、7、9
〔申立理由3:明確性〕
請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔申立理由4:実施可能要件〕
請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔申立理由5:サポート要件〕
請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔異議申立人が提出した甲号証〕
甲1:国際公開第2009/004999号
甲2:特開2002-136576号公報
甲3:特許第5989953号公報
甲4:国際公開第2014/171433号
甲5:特開平6-55060号公報
甲6:特表2006-512944号公報
甲7:改訂 医薬品添加物ハンドブック,株式会社薬事日報社,2007年,p.505-509
甲8:改訂 医薬品添加物ハンドブック,株式会社薬事日報社,2007年,p.265-268
甲9:材料,1968、Vol.17,No.177,p.560-563
甲10:改訂 医薬品添加物ハンドブック,株式会社薬事日報社,2007年,p.582-585
甲11:国際公開第2016/056229号
甲12:特開昭62-282658号公報
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
本件訂正前の、令和4年6月1日にされた訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~16に係る特許について、当審が通知した取消理由の概要は次のとおりである。
〔取消理由1:新規性〕
請求項1、2、4、5、7~9、13に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4、5、7~9、13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
・甲1:請求項1、2、4、5、7、9、13
・甲3:請求項1、4、5、7、9、13
・甲4:請求項1、2、4、5、8、13
〔取消理由2:進歩性〕
請求項1~13に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
・甲1:請求項1~7、9~13
・甲3:請求項1~7、9~11、13
・甲4:請求項1~6、8~11、13
・甲4(主引例)及び甲1~3(副引例):請求項1~6、8~11、13
〔取消理由3:明確性〕
請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔取消理由4:実施可能要件〕
請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔取消理由5:サポート要件〕
請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 甲1を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1)甲1発明
甲1には、実施例4(特に、[0046]~[0047][表4])において製造されたシームレスカプセルとして、次の発明が記載されていると認められる。
「以下の表4の組成比(重量部)である、シェル組成物水溶液とOMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90とから製造され、水分活性0.2以下になるまで乾燥された、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90 200mgを含む、カプセルのサイズが中心値約8mmφ(バラツキ7.5~8.5mmφの範囲内)のシームレスカプセル。
[表4]
[図:0001399323000001.jpg]
」(以下「甲1発明」という。)
(2)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「カプセルサイズ中心値約8mmφ」及び「シェル」は、それぞれ訂正発明1の「直径が5~20mm」及び「皮膜」に相当する。
甲1発明の「シェル」は、ゼラチン4、濃グリセリン、ソルビトール及び黄色色素5号を含むものであるから、訂正発明1の「皮膜は、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「直径が5~20mmであり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。」
<相違点1-1>
訂正発明1は、「皮膜率が10質量%以下」であるのに対し、甲1発明は、対応する事項を特定していない点。
<相違点1-2>
訂正発明1は、「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下」であるのに対し、甲1発明は、対応する事項を特定していない点。
(なお、「相違点〇-△」は、ハイフン「-」の前の数字〇は甲〇発明の数字〇を表し、ハイフンの後の数字△は相違点の数に応じて順次付けた数字である。以下同様。)
イ 判断
(ア)新規性について
まず、相違点1-1について検討する。
甲1発明は、水分活性0.2以下になるまで乾燥されたシームレスカプセルであるから、甲1発明において、精製水を除いた皮膜の組成(ゼラチン、濃グリセリン、ソルビトール、黄色色素5号の合計 230重量部)と、内容物(OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90 1000重量部)とから、皮膜率を計算すると約18.7重量%(230÷(1000+230)×100)となる。そして、重量%と質量%とは同じ数値になるので、甲1発明の皮膜率である約18.7重量%は「約18.7質量%」に相当するところ、この値は、訂正発明1の「10質量%以下」とは、大きく異なる値である。
そうすると、相違点1-1は、実質的な相違点である。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
なお、以下では、訂正発明の皮膜率に関して「%」とのみ表記されている場合は「質量%」を表すという前提で判断し、皮膜率の「重量%」又は「質量%」をいずれも「%」と略記する。
(イ)進歩性について
a 相違点1に関し、甲1には、「本発明の課題は、カプセル内容物の安定性に優れ、またカプセル内容物が高含有化されうるシームレスカプセル、それらの製造方法、しかもアイズがないか、または存在しても極めて小さく、また偏肉が極めて少ないシームレスカプセルを提供することである。」([0008])と記載され、「シェルの重量とカプセル内容物の重量との重量比は、通常10:1~1:10で、好ましくは3:1~1:10である。」([0023] )と記載されている。
上記のシェル(皮膜)とカプセル内容物との重量比から、皮膜率の範囲を計算すると、通常、約91%~9.1%(10÷11×100~1÷11×100)、好ましくは、約75%~9.1%(3÷4×100~1÷11×100)となり、皮膜率として、10%より低い約9.1%という下限値が記載されている。
しかしながら、一般には、シェルの重量を少なくしカプセル内容物の重量を多くして、皮膜率を小さくすると、シェル(皮膜)の組成やカプセル直径によっては、カプセルを形成しにくくなる可能性があり、甲1に記載された実施例4以外の実施例における皮膜率を精製水を除いた値で計算すると、実施例1~3、5は30.0%、実施例6と7は、5000ppm以下となるエチルアルコールを皮膜の組成から除いて計算すると32.7%、揮発する可能性のあるブルーベリーフレーバーも皮膜の組成から除くと30.0%となり、実施例において製造されたカプセルは、全て10%を大きく超えるものである。
そして、どのような組成とすれば皮膜率を10%以下まで低下できるのかについて、甲1には具体的な指針もない。
このような甲1の記載に基づいて、甲1の実施例4におけるシェル(皮膜)の組成とカプセル直径のままで(あるいはカプセル直径を変更する場合でも)、甲1に記載されたシェルとカプセル内容物との重量比(皮膜率)の下限値に近い10%まで低下させることができることを、具体的な根拠に基づいて理解することはできないから、甲1発明において、皮膜率を10%以下とし、相違点1に係る訂正発明1の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
b また、甲1には、「本発明は、…偏肉が極めて少なく、アイズがないか、または極めて小さいシームレスカプセルに関するものである。」([0001])、「本発明のシームレスカプセルにおける偏肉の程度は、カプセル化直後に顕微鏡で観察する時、乾燥前のシェルの厚みの最小/最大比が0.6以上、…である。…乾燥前のシェルの厚みの最小/最大比は、乾燥後においても維持される。」([0035])と記載されており、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」を換算すると、「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が約1.7以下」となる。そして、前記「T2/T1が約1.7以下」は、訂正発明1の「T2/T1が2.3以下」(相違点1-2)に相当する。
しかしながら、甲1の実施例4におけるシェル(皮膜)の組成とカプセル直径のままで、皮膜率を10%まで低下した場合においても(相違点1-1)、偏肉の程度が低く維持され、T2/T1を2.3以下(シェルの厚みの最小/最大比に換算すると約0.4以上)程度の偏肉の少なさとでき、相違点1-2に係る訂正発明1の構成とできるかも、当業者には明らかではないから、甲1発明において、相違点1-1及び相違点1-2を満たすものとすることを、当業者が容易に想到することができたとまではいえない。
c したがって、訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明2~7、10~13について
訂正発明2~7、10~13は、訂正発明1を含み、更に発明特定事項を特定したものであるから、少なくとも相違点1-1及び相違点1-2において甲1発明と相違する。
したがって、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明2、4、5、7、13は、甲1に記載された発明ではないし、また、訂正発明2~7、10~13は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
申立人は、甲1の[0023]の記載を皮膜率に換算すると、1/11(9.09%)~10/11(90.9%)であるから、実施例4の皮膜率を[0023]の記載事項に基づき10%以下にすることは、当業者が適宜設計し得る事項である旨を主張する(令和5年2月15日提出の意見書3頁)。
しかしながら、上記(2)イ(イ)に説示したように、[0023]の記載のみに基づいて、実施例4(甲1発明)の皮膜率を[0023]の記載事項に基づき10%以下とし、同時に、T2/T1を2.3以下とすることができることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上によれば、甲1を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、理由がない。
2 甲3を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1)甲3発明
甲3には、実施例1(特に、【0062】、【0078】【表1】)において製造されたシームレスカプセルとして、次の発明が記載されていると認められる。
「以下の表1の実施例1の組成の、直径6.3mm、被膜率23重量%である、偏肉など無く、正しく同心球上にカプセル化された、シームレスカプセル。
【表1】
[図:0001399323000002.jpg]
」(以下「甲3発明」という。)
(当審注:表1中のシームレスカプセル化の適否の基準は、【0059】に記載される、以下のとおりであり、実施例1は「〇」となっている。
○:偏肉など無く、正しく同心球状にカプセル化することができた。
△:少しだけ中心部にずれがあるが、カプセルを正常に製造することができる。
×:偏肉がひどいか、またはカプセル化が困難であり、カプセルを正常に製造することができなかった。)
(2)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「直径6.3mm」及び「被膜」は、それぞれ訂正発明1の「直径が5~20mm」及び「皮膜」に相当し、また、甲3発明の被膜は、「カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む」ものではない。
そうすると、訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「直径が5~20mmであり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。」
<相違点3-1>
訂正発明1は、「皮膜率が10質量%以下」であるのに対し、甲3発明は、「被膜率が23重量%」である点。
<相違点3-2>
訂正発明1は、「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下」であるのに対し、甲3発明は、対応する事項を特定していない点。
イ 判断
(ア)新規性について
皮膜率(被膜率)についての相違点3-1は実質的な相違点である。
したがって、相違点3-2について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲3に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
a 相違点3-1に関し、甲3には、被膜率については、表1に記載された「23重量%」(全ての実施例)という特定の数値しか記載されておらず、被膜率を10重量%以下にすることについて記載も示唆されていない。
また、甲3に記載された「シームレスカプセルにおける内容物に分散する粉末状成分の量を多くし、かつ処理工程を複雑化または処理時間の長期化を避ける」という課題(【0006】)を考慮しても、甲3発明において、被膜率を10重量%以下とする動機付けがあるともいえない。
b 甲3には、実施例において製造したシームレスカプセルについて、偏肉の程度について○、△、×の三段階で評価しているものの(【0059】)、相違点3-2の「T2/T1」に着目して、この値を一定値以下にすることについて記載も示唆もない。
そうすると、甲3発明において、被膜率を10重量%以下とし(相違点3-1)、同時に、T2/T1を2.3以下とする(相違点3-2)とすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
c したがって、訂正発明1は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明2~7、10、11、13について
訂正発明2~7、10、11、13は、訂正発明1を含み、更に発明特定事項を特定したものであって、少なくとも相違点3-1及び相違点3-2において甲3発明と相違する。
したがって、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明4、5、7、13は、甲3に記載された発明ではないし、また、訂正発明2~7、10、11、13は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上によれば、甲3を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、理由がない。
3 甲4を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1)甲4発明
甲4には、実施例11又は実施例12(特に、[0139]~[0146]、[表9]、[表10]、[表18])において製造されたシームレスカプセルとして、次の発明が記載されていると認められる。
「以下の表9のカプセル皮膜液と、カプセル内容物としてレモンオイルを用いて製造した、カプセル外径5.0mm、膜厚の標準偏差(SD)/膜厚(T)=4.89/48=0.102、皮膜率10%のシームレスカプセル。
[表9]
[図:0001399323000003.jpg]
」(以下「甲4発明A」という。)
「以下の表10のカプセル皮膜液と、カプセル内容物としてジャスミンオイルを用いて製造した、カプセル外径7.0mm、膜厚の標準偏差(SD)/膜厚(T)=6.90/58=0.119、皮膜率7%のシームレスカプセル。
[表10]
[図:0001399323000004.jpg]
」(以下「甲4発明B」という。)
(2)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲4発明A又は甲4発明Bとを対比する。
甲4発明Aの「カプセル外径5.0mm」と甲4発明Bの「カプセル外径7.0mm」は、訂正発明1の「直径が5~20mm」に相当する。
また、甲4発明Aの「皮膜率10%」と甲4発明Bの「皮膜率7%」は、訂正発明1の「皮膜率が10質量%以下」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲4発明A又は甲4発明Bとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「直径が5~20mmであり、皮膜率が10質量%以下である、シームレスカプセル。」
<相違点4-1>
訂正発明1は、「皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」のに対し、甲4発明A又は甲4発明Bは、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜である点。
<相違点4-2>
訂正発明1は、「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下」であるのに対し、甲4発明A又は甲4発明Bは、対応する事項を特定していない点。
イ 判断
(ア)新規性について
皮膜の組成についての相違点4-1は実質的な相違点である。
したがって、相違点4-2について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲4に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
a 甲4には、カプセル同士の付着がなく、カプセル内容物の経時的変化がなく、耐熱性及び耐湿性に優れた、指で圧力をかけた際に容易に割ることができ、割れ感が良く、内容物を放出することができ、崩壊可能なカプセルを提供することを課題とする発明について記載されている([0013])。
甲4には、カプセル皮膜の組成については、「本発明のカプセル皮膜には、少なくとも造膜性基剤を用いる。本発明のカプセル皮膜に用いる造膜性基剤としては、特に限定されないが、寒天、カラギーナン、ゼラチン等が挙げられる。…造膜性基剤として、寒天とカラギーナンとを少なくとも組み合わせるのが好ましい。」([0040])、「本発明のカプセルにおいて、特に限定されないが、得られるカプセルの保存性、崩壊性等に優れる点から、カプセル皮膜にアルギン酸又はその塩を使用したものが好ましい。」([0054])、「可塑剤を用いることにより、比較的ばらつきの小さい(すなわち、SD値の小さい)カプセルを効率よく得やすい。可塑剤としては、特に限定されず、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;ブドウ糖、果糖、グルコース、ガラクトース等の単糖類;…等が挙げられる。これらのうち、グリセリン、デンプン、デンプン誘導体、セルロース誘導体などを好適に使用してもよい。」([0064]~[0066])と記載されている。
また、甲4には、「本発明の崩壊可能なカプセルの皮膜率は、特に限定されないが、…通常5.0%以上18.0%以下」であること([0033])、「本発明のカプセルの外径は、特に限定されず、通常1.0~15.0mmであり、…より好ましくは2.0~5.0mmである」こと([0038])が記載されている。
上記のとおり、甲4には、皮膜を構成する成分について、複数の選択肢が記載され、カプセル外径(直径)を1.0~15.0mm程度とできることが記載されている。
しかしながら、甲4に記載された実施例のうち、造膜性基剤としてゼラチンを用いた実施例13~19は「皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」ものであって、相違点4-1の訂正発明1の構成を満たすものであるが、それらの実施例のカプセル外径(直径)は、1.0~3.5mmであって、5mmより小さいものである。
そして、甲4には、「カプセル同士の付着がなく、カプセル内容物の経時的変化がなく、耐熱性及び耐湿性に優れた、指で圧力をかけた際に容易に割ることができ、割れ感が良く、内容物を放出することができ、崩壊可能なカプセル提供すること」を課題とする発明について記載されており([0013])、このような特徴を有するカプセルを得るためには、カプセル皮膜の組成やカプセルの外径(直径)など様々なバランスが影響するものといえる。
そうすると、甲4発明A又は甲4発明Bから、甲4の記載に基づいてカプセル皮膜の組成を変更した場合においても、カプセル外径(直径)が「5~20mm」の範囲内のままとなり、上記課題を達成できるカプセルとでき、相違点4-1に係る訂正発明1の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
b また、甲4発明AはSD/Tが0.102、甲4発明BはSD/Tが0.119であり、膜厚のばらつきが小さいことが記載されているが、T2/T1を2.3以下とすることは具体的に記載されていない。
そうすると、甲4発明A又は甲4発明Bから、甲4の記載([0040]~[0052])に基づいてカプセル皮膜の成分を加えたり取り除いたりした場合においても(相違点4-1)、カプセル外径(直径)が「5~20mm」の範囲内となるにとどまり、T2/T1を2.3以下とすることを(相違点4-2)、当業者が容易に想到することができたとまではいえない。
c さらに、甲1、甲2、甲3に記載されたカプセルは、いずれも、指で圧力をかけた際に崩壊可能なカプセルではなく、甲4発明A又は甲4発明Bとは物性が異なるカプセルに関するものであるから、これらの記載を考慮しても、上記判断は左右されない。
d したがって、訂正発明1は、甲4に記載された発明に基づいて、あるいは、甲4に記載された発明及び甲1~3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明2~6、8、10、11、13について
訂正発明2~6、8、10、11、13は、訂正発明1を含み、更に発明特定事項を特定したものであって、甲4発明A又は甲4発明Bとは、少なくとも相違点4-1において相違する。
したがって、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明2、4、5、8、13は、甲4に記載された発明ではない。
また、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明2~6、8、10、11、13は、甲4に記載された発明に基づいて、又は、甲4に記載された発明及び甲1~3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、甲4の実施例17に記載された、以下の甲4発明Cに基づいて、甲4の[0038]の記載に基づいて、甲4発明Cのカプセル外径を5~15.0mmの範囲にすることは、当業者が適宜設計し得る事項である旨主張する(令和5年2月15日提出の意見書6~9頁)。
「表15に記載のカプセル皮膜液と、カプセル内容物としてジンジャーオイルとを用いて製造した、カプセル外径3.5mm、膜厚の標準偏差(SD)/膜厚(T)=4.91/34=0.144、皮膜率7%のシームレスカプセル。
[図:0001399323000005.jpg]
」
しかしながら、実施例のうち、甲4発明C(実施例17)と同じ皮膜組成である実施例13~16、18、19は、いずれもカプセル外径(直径)は、1.0~3.5mmであって、5.0mmより小さいものであり、また、甲4には、好ましいカプセル外径は「2.0~5.0mm」であること([0038])が記載されている。
そして、甲4は、指で圧力をかけた際に崩壊可能なカプセルを提供することを課題とする発明について記載されており([0013])、このような特徴を有するカプセルを得るためには、カプセル皮膜の組成やカプセルの外径(直径)など様々なバランスが影響するものといえる。
そうすると、甲4発明Cにおいて、[0038]の記載に基づいて製造時のポンプの回転数を変えさえすれば、カプセル外径(直径)が5~20mmの範囲となり、かつ、上記課題を解決できるカプセルが製造できることを、当業者が容易に想到することができたとまではいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
イ なお、申立人は、訂正発明7について、甲4を主引例とする申立理由2(進歩性)を主張している。
しかしながら、上記(2)イ(イ)に説示した訂正発明1と同様の理由により、訂正発明7は、甲4に記載された発明及び甲1~3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上によれば、甲4を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、理由がない。
4 取消理由3(明確性)について
(1)特許請求の範囲における「皮膜率」について
取消理由(明確性)は、要するに、本件明細書の表1の仕様1において記載された「カプセル皮膜液量」は、原料と適量の水を含む、乾燥前の皮膜液の量を意味するとの解釈に基づいて、本件明細書の表14~15に記載された皮膜率の数値は、乾燥前の皮膜液の量に基づいて計算されたものであると理解できるところ、請求項1には、乾燥後の完成したカプセルにおける数値として「皮膜率」が記載されていることと整合しないから、請求項1、及び、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~16における「皮膜率」がどの状態におけるものであるのか明確ではない、というものである。
これに対し、特許権者は、仕様1において、「皮膜液」と表現せず、「カプセル皮膜液」と表現していること、また、仕様12と13において「カプセル皮膜液量(皮膜)」と記載していることからわかるように、「カプセル皮膜液」は、皮膜(皮膜液のうち皮膜となったもの)の量であり、表14~15において記載された「皮膜率」と矛盾しないから、乾燥後の完成したカプセルにおける数値として記載された請求項1の「皮膜率」に、何ら不明確な点はない旨を主張する(令和4年12月5日提出の意見書3頁)。
特許権者が主張するように、仕様12と13において「カプセル皮膜液量(皮膜)」と記載していることも考慮すると、仕様1の「カプセル皮膜液量」は、「皮膜」すなわち乾燥した皮膜そのもの量を表していると理解するのが相当であり、そのように理解すれば、表14~15に記載された「皮膜率」と請求項1の「皮膜率」は、【0065】に記載されるとおり、いずれも乾燥後の完成したカプセルにおける皮膜の数値となり、皮膜率の意味が整合するから、請求項1の「皮膜率」は明確である。
したがって、訂正発明1~8、10~16は、明確である。
(2)申立人の主張について
申立人は、特許権者の上記の主張に対して、「カプセル皮膜」にわざわざ「液」を付記したカプセル皮膜液は、当業者であってもカプセル皮膜と同義として理解するのは極めて困難である旨を主張する(令和5年2月15日提出の意見書10頁)。
「カプセル皮膜」に「液」を付記した・しないにかかわらず、仕様12には、「カプセル皮膜液量(皮膜)」と記載され、カプセル皮膜液量は皮膜そのものであると記載されていることも考慮すれば、当業者であれば、仕様1の「カプセル皮膜液量」も、「皮膜」の量(すなわち乾燥後の完成したカプセルにおける皮膜の量)を意味すると理解するのが相当である。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)小括
以上によれば、取消理由3(明確性)は、理由がない。
5 取消理由4(実施可能要件)及び取消理由5(サポート要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、おおむね、次の事項が記載されている。
(本1)本発明の目的は、比較的粒径(直径)が大きいシームレスカプセルを提供することにある(【0006】)。
(本2)特許文献1(特許第4822299号公報)及び特許文献2(特開2015-81249号公報)には、シームレスカプセルの直径は広く記載されているものの、実際には、シームレスカプセルの直径はせいぜい3.5mmや4mmであり、大粒径(例えば、9mm以上)のシームレスカプセルが製造された例は存在せず、直径の大きいシームレスカプセルを製造直径の大きいシームレスカプセルを一般的な方法により作成しようとすれば、実際には、途中で割れてしまって、カプセル自体が形成されないか、なんとか製造できても、乾燥途中や小さい衝撃で割れてしまい、皮膜率や皮膜厚みが小さい場合には表面張力の影響が大きいことなどによりカプセル形成に支障があるなど、実用性を担保できるシームレスカプセルを形成できない場合があることがわかった(【0007】、【0008】)。
(本3)本発明者らは、シームレスカプセルの製造条件を制御することなどにより、比較的大粒径であってもシームレスカプセルが得られること、また、皮膜の厚みのバラツキ(偏肉)が小さいなどの特性を有するシームレスカプセルは、大粒径であるにもかかわらず実用に耐えうるカプセルであることなどを見いだした(【0009】)。
(本4)シームレスカプセルは、代表的には、皮膜液を通過させる外側ノズル及び内容液を供給する内側ノズルを同心円状に備えたノズルユニット(同心多重ノズル)と、形成管とを備えた装置を用い、内側ノズルの吐出口から内容液を、外側ノズルの吐出口から皮膜液を、それぞれ形成管内に吐出することにより、形成管内でカプセルを形成させる工程を経て製造される(【0082】)。
ここで、この一連の製造工程において、同心心多重ノズルの軸心線(中心線)と、形成管の軸心線(中心線)との距離(すなわち、同心多重ノズルの形成管の中心からのずれ)をXとし、カプセル(皮膜)の直径をDとするとき、値X/Dを、3.5以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.4以下などとなるように調整してもよい(【0083】)。
また、内側ノズルの吐出口の幅(すなわち、ノズル間隔)をYとし、カプセル(皮膜)の直径をDとするとき、値Y/Dを、0.4以下、好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.28以下などとなるように調整してもよい(【0084】)。
このような条件の調整(選択)により、シームレスカプセル、とりわけ、前記のような比較的大きい粒径のシームレスカプセルを効率よく得ることができ、皮膜厚みの偏りが小さいシームレスカプセルや、複数のカプセル間でのバラツキの小さいシームレスカプセルを得やすい。しかも、カプセルの成形性そのものが高く、原材料を比較的もれなくカプセル化できる(【0085】)。
皮膜液や内容液の粘度は、適宜選択できるが、皮膜液の粘度は、例えば、50mPa・s以上(例えば、70~500mPa・s、好ましくは80~300mPa・s)であってもよく、また、内容液の粘度は、流動性を担保できる範囲であればよく、内包物の種類などに応じて適宜選択できる(【0087】)。
カプセル(又は皮膜)の径(直径、平均直径)は、比較的大きく、例えば、5mm以上(例えば、6~50mm)、11mm以上(例えば、19mm以上)とすることもできる(【0059】)。
本発明のカプセルは、通常、皮膜の厚みの偏りが小さく、例えば、カプセル(又は皮膜)の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が、3.5以下(例えば、3.2以下)の範囲から選択でき、さらに好ましくは2.5以下(例えば、2.3以下)であってもよく、1.2以下であってもよい(【0060】)。
本発明では、比較的バラツキの小さいカプセルを提供することができ、例えば、皮膜の厚みの標準偏差をSD、皮膜の厚み(平均厚み)をTとするとき、値SD/Tは、0.5以下、特に0.2以下であってもよく、0.15以下とすることもできる(【0063】)。
球状のカプセルにおいて、真球度(平均真球度)は、例えば、50%以上、特に80%以上であってもよく、85%以上(例えば、90%以上)とすることもできる(【0070】)。
(本5)実施例において、図1に説明するような液中滴下法(同心円状のノズルから流動性のある液体を一定間隔の振動を与えながら押し出し、カプセルを液中で冷却することでカプセルを成型する方法)により、皮膜液及び内容液は、仕様1~13(当審注:仕様1及び仕様12のみ摘記する。)に示すものを用いてシームレスカプセルの製造を試みた。
結果を表14及び表15に示す。
[仕様1]
[図:0001399323000006.jpg]
[仕様12]
[図:0001399323000007.jpg]
【表14】
[図:0001399323000008.jpg]
【表15】
[図:0001399323000009.jpg]
[図:0001399323000010.jpg]
(2)取消理由4(実施可能要件)について
ア 上記(1)の記載事項によれば、シームレスカプセルを製造するに当たって、同心多重ノズルと形成管とを備えた装置において、X/Dを3以下、Y/Dを0.4以下とすることにより(訂正発明14で特定された条件に相当)、皮膜率が小さくても、比較的大きい粒径のシームレスカプセルを効率良く得ることができ、皮膜の厚みの偏りが小さいシームレスカプセルや、複数のカプセル間でのバラツキの小さいシームレスカプセルを得やすいことが記載され、皮膜液の粘度は例えば50mPa以上(例えば、70~500mPa)、内包液の粘度は流動性を担保できる範囲であればよく、その他の条件(皮膜液の温度、内容液の温度、冷却温度、冷却時間、乾燥温度、乾燥時間など)は、適宜設定できることが記載されている(本3、本4)。
また、本件明細書の【実施例】の欄には、仕様1~13として、カプセル内溶液量(当審注:内溶は、内容の誤記と認める。)、カプセル皮膜液量、皮膜と内包物の原材料、液中滴下法の皮膜液と内容液の粘度と温度、冷却液オイルの温度が記載され、この仕様1~13の条件を用いて、同心多重ノズルと形成管とを備えた装置において所定のX/DとY/Dとすることにより、実施例1~17及び参考例1~4のシームレスカプセルの製造を行った結果が表14及び表15に記載されている(本5)。
表15の参考例1~4においては、X/Dが3以下、Y/Dが0.4以下のいずれかを満たさない製造条件では、直径10mm又は11mmのシームレスカプセルを製造しようとしても、成形可否が「×」であり、歩留まり率が「0%」であったことが記載されるのに対し、表14の実施例1~5、7、12、13においては、X/Dが3以下、Y/Dが0.4以下を満たす条件で製造すると、直径が8~20mm、皮膜率が5~10質量%、T2/T1が1.2~1.8、カプセル真球度が90~96%、SD/Tが0.070~0.13のシームレスカプセルが、歩留まり85~92%で製造できたことが記載されている(本5)。
なお、表14の実施例6、8~11、及び、表15の実施例14~17において、X/Dが3以下、Y/Dが0.4以下を満たす条件で製造して得られた、直径が10~18mmのシームレスカプセルは、皮膜率とT2/T1のいずれかの数値が訂正発明1において特定された数値を満たさないものであるから、訂正発明1に対応するシームレスカプセルではない。
イ そうすると、発明の詳細な説明の記載、特に実施例1~5、7、12、13に関する記載に基づけば、訂正発明1の発明特定事項である「直径が5~20mm」「T2/T1が2.3以下」「皮膜率が10質量%以下」を備えるシームレスカプセルを、当業者であれば過度な試行錯誤なく製造できるといえる。
また、訂正発明2~8、10、11、13において特定された、直径、皮膜率、T2/T1、真球度、SD/Tの数値を満たすシームレスカプセルも、実施例1~5、7、12、13において実際に製造されており、訂正発明12において特定された「内容物がゲル状である」に対応するシームレスカプセルも、豚ゼラチンを含む内包物である仕様10、12、13の条件を用いた実施例10、12、13において実際に製造されているから、訂正発明2~8、10、11~13に係るシームレスカプセルについても、発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者であれば、過度な試行錯誤なく製造できるといえる。
そして、訂正発明14~16は、訂正発明1~8、10~13に係るシームレスカプセルの製造方法に係る発明であるところ、訂正発明14において特定された皮膜液の粘度は【0059】に記載されたものであり、実施例1~5、7、12、13の製造方法は、X/Dが3以下及びY/Dが0.4以下(訂正発明14)、X/Dが2以下及びY/Dが0.28以下(訂正発明15、16)、及び、歩留まり率80%以上(訂正発明16)という訂正発明14~16における発明特定事項の数値を満たすものであるから、訂正発明14~16に係る製造方法を、発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者であれば、過度な試行錯誤なく実施できるといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、訂正発明1~8、10~16について、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されている。
(3)取消理由5(サポート要件)について
ア 訂正発明1~8、10~16が解決しようとする課題は、【0006】の記載及び特許請求の範囲の記載を考慮すると、比較的粒径(直径)が大きい、直径5~20mmのシームレスカプセルであって、皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下であり、皮膜率が10質量%以下であるシームレスカプセル、及びその製造方法を提供することにあると認められる。
イ 上記(2)において説示したように、発明の詳細な説明には、訂正発明1~8、10~16について、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されているのであるから、発明の詳細な説明の記載により、比較的粒径(直径)が大きい、直径5~20mmのシームレスカプセルであって、皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下であり、皮膜率が10質量%以下であるシームレスカプセル、及びその製造方法を提供するという課題を解決できることを、当業者が認識できるものといえる。
したがって、訂正発明1~8、10~16は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。
(4)申立人の主張について
申立人は、(i)本件明細書の実施例1~13及び14~17のデータを基に、各実施例のシームレスカプセルのコア密度を算出したところ、実施例1、2、9~13、17は、MCTオイル等の密度として不適切な数値となったこと、(ii)本件明細書の表1~13における皮膜の固形分濃度と、想定される粘度とが整合しないこと、及び、(iii)本件特許の請求項1~16には、皮膜に関して重要な役目を担う水及びその量の記載がないこと、などから、本件特許の請求項1~16は、実施可能要件及びサポート要件に違反する旨を主張する(特許異議申立書16~21頁)。
しかしながら、上記(i)の主張については、令和4年6月1日提出の回答書において特許権者が主張するように、(ア)表14における実施例2に記載されたカプセル直径「8」が「10」の誤記であることは、Tの数値(131μm)及びT/D×100(%)の数値(1.31)から明らかであること、(イ)実施例2、9~12、17の「T」「SD」は、他の実施例等に比べて明らかに1桁大きいことや、その他の記載と整合しないことから、実際の10倍の値と誤って記載されていることは明らかといえ、このような誤記を踏まえて計算すると、実施例2、9~12、17(更には実施例1、13)のコア密度において、MCTオイル等の密度と著しく異なるものは存在しない。
また、上記(ii)の主張については、異議申立人の主張は、仕様1における「皮膜」の欄の組成(皮膜中の水の割合10質量%)を、乾燥前の皮膜液の組成とした前提の主張であるが、上記4に説示したとおり、仕様1における「皮膜」の欄の組成は、乾燥した後の皮膜における組成を表したものと理解するが相当であり、申立人の主張はその前提において誤りがある。
さらに、上記(iii)の主張については、特許請求の範囲において皮膜に関する水とその量が記載されていなくても、発明の詳細な説明において、皮膜液は、加温(加熱)溶融により液状となっていてもよく、皮膜形成成分が水などの溶媒に溶解した溶液であってもよく、皮膜液の粘度は、50mPa以上(例えば、70~500mPa)であってもよい旨の記載がされており(【0086】【0087】)、皮膜の粘度を調節するための水の量は当業者が適宜設定可能なものといえるから、特許請求の範囲において皮膜に関する水とその量が記載されていなくても、実施可能要件及びサポート要件に違反するとはいえない。
したがって、申立人が主張する上記(i)~(iii)の主張は採用できるものではない。
(5)小括
以上によれば、取消理由4(実施可能要件)及び取消理由5(サポート要件)は、理由がない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立の理由について
1 甲2を主引例とする申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1)甲2を主引例とする申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は、本件特許の設定登録時の請求項1、4、5、7、9を対象とするものであるが、本件訂正によりその内容が訂正され、引用関係が多重引用形式であるので、訂正前の請求項の記載との対応が複雑になっていることから、念のため、上記の各請求項と同様にカプセルに関する全ての請求項の発明である、訂正発明1~8、10~13について、以下検討する。
(2)甲2発明
甲2には、実施例(特に、【0051】~【0056】、【表1】~【表3】)において製造されたシームレスカプセルとして、次の発明が記載されていると認められる。
「以下の表1の1カプセル当たりの組成である、偏芯度(皮膜の薄い部分の厚さW1/皮膜の厚い部分の厚さW2)0.55、球形度(カプセルの長径L1-L2)125μm、皮膜率40%(表1に記載される<皮膜>の小計40.0mg/1カプセルの合計100mg)の、シームレスカプセル。
[表1]
[図:0001399323000011.jpg]
」(以下「甲2発明」という。)
(3)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「偏芯度(皮膜の薄い部分の厚さ/皮膜の厚い部分の厚さ)0.55」は、換算すると、皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が1.82となるから、訂正発明1の「T2/T1が2.3以下」に相当する。
また、甲2発明の皮膜は、ゼラチンとグリセリンとからなるので、訂正発明1の「皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下であり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。」
<相違点2-1>
訂正発明1は、「皮膜率が10質量%以下」であるのに対し、甲2発明は、「皮膜率40質量%」である点。
<相違点2-2>
訂正発明1は、「直径が5mm以上」であるのに対し、甲2発明は、対応する事項を特定していない点。
イ 判断
(ア)新規性について
相違点2-1は、実質的な相違点であるから、相違点2-2について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲2に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
甲2には、皮膜率(相違点2-1)に関する記載はないから、甲2発明に係るシームレスカプセルにおいて、その皮膜率を40%から10%以下まで低下させる動機付けがあるとはいないし、また、甲2発明の薬液及び皮膜の組成のままで、その皮膜率を10質量%以下まで低下させることができるのかも明らかではない。
そうすると、甲2発明において、皮膜率を10%以下とし相違点2-1に係る訂正発明1の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
また、甲2には、シームレスカプセルの直径を5mm以上とすること(相違点2-2)について記載も示唆もない。
したがって、訂正発明1は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)訂正発明2~8、10~13について
訂正発明2~8、10~13は、訂正発明1を含み、更に発明特定事項を特定したものであって、甲2発明とは、少なくとも相違点2-1及び相違点2-2において相違する。
したがって、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明2~8、10~13は、甲2に記載された発明ではないし、また、訂正発明2~8、10~13は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上によれば、甲2を主引例とする申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は、理由がない。
2 甲5を主引例とする申立理由2(進歩性)について
(1)判断の対象とする請求項について
甲5を主引例とする申立理由2(進歩性)は、本件特許の設定登録時の請求項3、6、7、9~11を対象とするものであるが、本件訂正によりその内容が訂正され、引用関係が多重引用形式であるので、訂正前の請求項の記載との対応が複雑になっていることから、念のため、上記の各請求項と同様にカプセルに関する全ての請求項の発明である、訂正発明1~8、10~13について、以下検討する。
(2)甲5発明A及び甲5発明B
甲5の請求項1の「継ぎ目なしカプセル粒子」に関する実施例5及び実施例9の記載によれば、甲5には、それぞれ次の発明が記載されている。
「以下の材料を用いて製造された、平均粒子径5.2mm、皮膜率41.7重量%、粒子径分布の変動係数6.1%、平均皮膜厚さ1.5mmである、継ぎ目無しカプセル粒子。
最内層:トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン6重量%、ポリオキシエチレン(平均付加モル数20)ソルビタントリオレエート12.6重量%、ソルビタンセスキオレエート1.4重量%を混合し、水70重量%を混合攪拌して得た水分散体に、エタノール10重量%を混合した親水性有機溶剤含有水性分散体
中間層:トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン
最外層:ゼラチン30重量%、グリセリン4重量%、水66重量%の70℃に保った水溶液」(以下「甲5発明A」という。)
「以下の材料を用いて製造された、平均粒子径7.5mm、皮膜率47重量%、粒子径分布の変動係数6.0%、平均皮膜厚さ1.2mmである、継ぎ目無しカプセル粒子。
最内層:トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン6.6重量%、ポリオキシエチレン(平均付加モル数20)ソルビタントリオレエート10.5重量%、ソルビタンセスキオレエート1.2重量%を混合し、水81.7重量%を投入した水分散体
中間層:トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン
最外層:ゼラチン30重量%、グリセリン4重量%、水66重量%の70℃で溶解後、45℃に冷却させた水溶液」(以下「甲5発明B」という。)
(3)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲5発明A又は甲5発明Bとを対比する。
甲5発明Aの「平均粒子径5.2mm」又は甲5発明Bの「平均粒子径7.5mm」は、訂正発明3の「直径が5~20mm」に相当する。
甲5発明A又は甲5発明Bの「最外層」は、その組成からみて、訂正発明1の「皮膜は、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」に相当し、また、甲5発明A又は甲5発明Bの「継ぎ目無しカプセル粒子」は、訂正発明1の「シームレスカプセル」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲5発明A又は甲5発明Bとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「直径が5~20mmであり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。」
<相違点5-1>
訂正発明1は「皮膜率が10質量%以下」であるのに対し、甲5発明Aは「皮膜率41.7重量%」、甲5発明Bは「皮膜率47重量%」である点。
<相違点5-2>
訂正発明1は、「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下」であるのに対し、甲5発明A又は甲5発明Bは、対応する事項を特定していない点。
イ 判断
(ア)甲5には、「本発明においてカプセル粒子の重量に対する皮膜の重量比率である皮膜率は、カプセル粒子の保存安定性と浴槽中等の水中でのカプセル粒子の崩壊性から、通常5~60重量%、好ましくは10~50重量%、更に好ましくは13~40重量%である。皮膜率が5重量%未満だとカプセル粒子の保存時に崩壊し易くなり、60重量%を超えると浴槽中等の水中でのカプセル粒子の崩壊性および完全溶解性が不良になってしまう。」(【0034】)と記載され、皮膜率が10重量%以下のカプセル粒子の実施例をみると、実施例8において、平均粒子径4mm、皮膜率7.9重量%の継ぎ目無しカプセル粒子が製造されたことが記載されている。
しかしながら、甲5の実施例において製造された、平均粒子径が5mm以上の継ぎ目無しカプセル粒子の皮膜率は、皮膜率41.7重量%(実施例1と7 平均粒子径5.1mm、実施例5(甲5発明A) 平均粒子径5.2mm)又は皮膜率47重量%(実施例9(甲5発明B) 平均粒子径7.5mm)であり、いずれも、皮膜率は10重量%を大きく超えるものである。
一般には、皮膜の重量を少なくしカプセル内容物の重量を多くして、皮膜率を小さくすると、皮膜の組成や平均粒子径によっては、カプセル粒子を形成しにくくなる可能性があるから、甲5発明A又は甲5発明Bにおいて、平均粒子径をそのままとして、皮膜率を41.7重量%又は47重量%から、10重量%以下まで少なくすることが可能であるかは、当業者において明らかであるとはいえない。
(イ)また、甲5には、「本発明においては、前記のように多重ノズルの各ノズルから各液を連続的に吐出させて多層液滴を形成させるが、この際に多重ノズルから吐出する多層液柱に振動を与えることにより、カプセル粒子の粒径、皮膜厚さ等をより均一なものとすることができる。」(【0036】)と記載されているものの、皮膜厚さがどの程度均一なものであるのか、記載も示唆もされていないから、甲5発明A又は甲5発明Bにおいて、平均粒子径をそのままとして、皮膜率を41.7重量%又は47重量%から、10重量%以下まで少なくすると同時に(相違点5-1)、T2/T1を2.3以下(相違点5-2)とすることができることを、当業者が容易に想到することができたとまではいえない。
(ウ)そして、甲5とはカプセルの組成などが異なる、甲1、甲2、甲3に記載されたシームレスカプセルについての記載事項を併せ考慮しても、上記の判断は左右されない。
(エ)したがって、訂正発明1は、甲5に記載された発明、及び、甲1、甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)訂正発明2~8、10~13について
訂正発明2~8、10~13は、訂正発明1を含み、更に発明特定事項を特定したものであって、甲5発明A又は甲5発明Bとは、少なくとも相違点5-1及び相違点5-2において相違する。
したがって、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明2~8、10~13は、甲5に記載された発明、及び、甲1、甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上によれば、甲5を主引例とする申立理由2(進歩性)は、理由がない。
3 甲6を主引例とする申立理由2(進歩性)について
(1)甲6を主引例とする申立理由2(進歩性)は、本件特許の設定登録時の請求項5、7、9を対象とするものであるが、本件訂正によりその内容が訂正されていることから、念のため、上記の各請求項と同様にカプセルに関する全ての請求項の発明である、訂正発明1~8、10~13について、以下検討する。
(2)甲6発明
甲6には、実施例1~29において、液体コアとこのコアを包囲しているシームレス固体シェルを有する球状カプセルを製造したことが記載されている(表1~表5)。実施例1~29のうち、カプセル径とシェル含量が、訂正発明1に対応する実施例3~8、10、15~20、22、24に着目すると、次の発明が記載されていると認められる。
「カプセル径5~8mm、シェル含量7.5~10%、シェル厚50~150μm、シェル厚とカプセル径との比が0.010~0.019である、液体コアとこのコアを包囲しているシームレス固体シェルを有する球状カプセルであって、
シェルの組成が、ブタゼラチン260ブルーム60~80%及び水10%に加え、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトールのいずれか一種の可塑剤を10~30%を含み、更にアスパルテーム、アセスルファムK、ブリリアントブルーを含み得るものであり、コアの組成が、植物油60~85%、及び、イチゴ香味剤又はハッカ香味剤である香味剤15~40%からなる、
球状カプセル。」(以下「甲6発明」という。)
(3)訂正発明1について
ア 対比
甲6発明と訂正発明1とを対比する。
甲6発明の「カプセル径5~8mm」、「シェル含量7.5~10質量%」、「シームレス固体シェルを有する球状カプセル」は、それぞれ訂正発明1の「直径が5~20mm」、「皮膜率が10質量%以下」、「シームレスカプセル」に相当する。
また、甲6発明の「シェル」は、その組成からみて、訂正発明1の「皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではない」に相当する。
そうすると、甲6発明と訂正発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「直径が5~20mmであり、皮膜率が10質量%以下であり、皮膜が、カラギーナンと、寒天と、アルギン酸又はその塩と、グリセリンとをすべて含む皮膜ではないシームレスカプセル。」
<相違点6>
訂正発明1は、「皮膜の最小厚みT1に対する最大厚みT2の割合T2/T1が2.3以下」であるのに対し、甲6発明は、対応する事項を特定していない点。
イ 判断
甲6発明のシェル厚は50~150μmであるが、甲6には、各球状カプセルにおけるシェル厚の最大値と最小値やシェル厚の均一性については何ら記載がない。
そうすると、甲6発明においてシェル厚に関し、「T2/T1が2.3以下」となるように調整する動機付けがあるとはいえないし、また、どのように調整すれば「T2/T1が2.3以下」となるのか、当業者において自明であるともいえない。
したがって、甲6発明において、「T2/T1が2.3以下」となるようにし、相違点6に係る訂正発明1の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
そして、甲1に記載されたシームレスカプセルにおいてはT2/T1が2.3以下となる蓋然性が高いとしても、甲6発明とはカプセル組成などが異なる甲1に記載されたシームレスカプセルのT2/T1の数値を、甲6発明における数値として採用する動機付けもない。
したがって、訂正発明1は、甲6に記載された発明、及び、甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)訂正発明2~8、10~13について
訂正発明2~8、10~13は、訂正発明1を含み、更に発明特定事項を特定したものであって、甲6発明とは、少なくとも相違点6において相違する。
したがって、訂正発明1と同様の理由により、訂正発明2~8、10~13は、甲6に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上によれば、甲6を主引例とする申立理由2(進歩性)は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~8、10~16に係る特許を取り消すことはできない。ほかに、請求項1~8、10~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項9に係る特許についての特許異議の申立ては、請求項9が本件訂正により削除されたことによりその対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701142