特許異議申立
2023-700964
油中水型乳化化粧料
- 審判番号
- 2023-700964
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-539671
- 登録番号
- 7240318
- 請求日
- 2023年09月14日
- 審決日
- 2024年08月05日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社 資生堂
- 【権利者代理人】内田 直人
- 【権利者代理人】奥原 康司
- 【異議申立人】大山 貴裕
- 【異議申立人】小山 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 瀬良 聡機
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.112-YAA(A61K) / P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7240318号発明「油中水型乳化化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7240318号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7240318号の請求項1~3に係る特許を維持する。
特許第7240318号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7240318号の請求項1~4に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)8月31日(優先権主張 2017年9月1日)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月7日に特許権の設定登録がされ、同年同月15日にその特許掲載公報が発行され、その後、同年9月14日に、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 大山 貴裕(以下「特許異議申立人A」という。)及び特許異議申立人 小山 幸子(以下「特許異議申立人B」という。)により、それぞれ、特許異議の申立て(以下「特許異議申立A」「特許異議申立B」という。)がされたものである。
そして、令和5年11月14日付けで当審合議体から取消理由が通知され、令和6年1月15日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年同月22日付けで当審合議体から特許法120条の5第5項に基づく通知書が出され、特許異議申立人Aから同年2月16日に、特許異議申立人Bから同年同月19日に、それぞれ、意見書が提出され、同年4月9日付けで当審合議体から取消理由(決定の予告)が通知され、同年6月12日に訂正請求書及び意見書が提出されたものである(令和6年1月15日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。)。
第2 訂正の適否についての判断
1 令和6年6月12日に提出された訂正請求書による訂正請求について
令和6年6月12日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書により令和6年6月12日に特許権者が行った訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。
2 訂正の趣旨
本件訂正の「請求の趣旨」は、「特許第7240318号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」ものであり、その内容は以下の訂正事項1~3のとおりである。
3 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)。
(1)訂正事項1
請求項1について、訂正前に「(D)シリコーンエラストマー」とあるのを、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項3について、訂正前に「シリコーン樹脂粉末」とあるのを、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項4を削除する。
4 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「油中水型乳化化粧料」の成分である「(D)シリコーンエラストマー」の種類を「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11」の4種に限定した訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー」については、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)の段落【0030】の記載に基づき、「ポリシリコーン-11」については、実施例の【表4】の実施例15のエラストマー成分の記載に基づき、それぞれ訂正したものであり、明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、明細書等に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。
エ したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項3における「化粧料」の成分である「シリコーン樹脂粉末」の種類を「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー」に限定した訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、実施例の【表1】~【表4】に用いられている樹脂粉末の記載に基づき訂正したものであり、明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、明細書等に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。
エ したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項4を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ また、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、請求項4を削除する訂正であるから、明細書等に記載された事項の範囲内で行われるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。
ウ したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
なお、独立特許要件について、特許異議申立人による特許異議の申立ては、本件訂正前のすべての請求項に対してされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(4)一群の請求項について
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2は請求項1を引用しているものであり、請求項3は請求項1及び請求項2を引用しているものであり、請求項4は、請求項1~3を引用しているものであるので、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである(請求項3は、訂正事項2によっても訂正され、請求項4は、訂正事項3によっても訂正されている。)。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
5 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。
第3 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)有機変性粘土鉱物;
(B)HLB6以下の界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー;
(E)20~50質量%の揮発性油分;及び
(F)水を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(E)揮発性油分と前記(C)ワックスとの配合量比率([(E)/(C)])が50以下である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】(削除)」
第4 特許異議申立人が申し立てた理由及び取消理由(決定の予告)で提示した取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
(1)特許異議申立人Aが申し立てた理由
異議申立理由1A:請求項1に係る発明は、甲第3A号証及び甲第4A号証を参照すれば、甲第3A号証及び甲第4A号証に関する商品「イオナヴィー リペアバーム」は、本件特許出願前に販売され、日本国内又は外国において公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
異議申立理由2A:請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1A号証に記載された発明及び甲第2A号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)特許異議申立人Bが申し立てた理由
異議申立理由1B:請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10B号証を参照すれば、甲第1B号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
異議申立理由2B-1:請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B号証に記載された発明及び甲第1B~5B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
異議申立理由2B-2:請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3B号証に記載された発明、並びに甲第1B、2B及び6B号証に記載された技術的事項、又は甲第3B及び7B~10B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
異議申立理由2B-3:請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5B号証に記載された発明、並びに甲第1B、2B、6B及び11B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
異議申立理由2B-4:請求項1及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第11B号証に記載された発明及び甲第1B、3B、及び5B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
異議申立理由3B-1:請求項1~4に係る特許に関して、訂正前の本件特許発明においては、当業者であっても、請求項1で規定する「シリコーンエラストマー」と請求項3で規定する「シリコーン樹脂粉末」をどのように区分けするのか理解できず、「シリコーンエラストマー」の外延が不明確であるから、請求項1~4に係る発明は明確ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
異議申立理由3B-2:請求項4に係る特許に関して、「5~200の硬度をもつ」ことが規定されているところ、硬度の範囲を確定するための「硬度」の測定条件が不明確であるから、請求項4に係る発明は明確ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、請求項4に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
異議申立理由4B:請求項4に係る特許に関して、「5~200の硬度をもつ」ことが規定されているところ、甲第5B号証の本件特許発明と類似の組成を有する油中水型固形化粧料において、ステフィック状とするために適した硬度「25℃において、5~120」の硬度の範囲の記載を参照すると、上記規定される範囲ははるかに広いものであり、技術常識ともいえない「硬度200」のときにどのようにしてバーム状の剤型に調製できるのか当業者といえども特許明細書の記載から理解できず、当該硬度に調製できないから、特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項4に係る発明を当業者が実施できるように記載されておらず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないので、請求項4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
甲第1A号証:特開2011-231102号公報
甲第2A号証:特開2017-31149号公報
甲第3A号証:「世界のウェブアー カイブ|国立国会図書館インターネット、資料収集保存事業」、[online]、 平成28年5月6日、[令和5年8月24日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20160506045855/http://www.ionaint|.com:80 /vie/product/balm.html>
甲第4A号証:イオナインターナショナル株式会社の商品「イオナヴィー リペアバーム」の製品情報、[令和5年9月6日検索]、インターネット<URL:https://ionavie.jp/balm.html>
甲第1B号証:特開2017-31149号公報
甲第2B号証:特開2002-255738号公報
甲第3B号証:特開2006-36769号公報
甲第4B号証:特開2011-219448号公報
甲第5B号証:国際公開第2015/174241号
甲第6B号証:特表2015-506375号公報
甲第7B号証:特開2003-226635号公報
甲第8B号証:特開2005-314327号公報
甲第9B号証:特表2010-500400号公報
甲第10B号証:信越化学工業株式会社の製品カタログ、2014年2月発行
甲第11B号証:Mintel GNPD [online]に掲載された商品情報、QUO-Colour Correcting Hydrating Balm、(ID#)4756327(掲載時期2017年4月)及びその抄訳
なお、特許異議申立人Aは、令和6年2月16日に意見書と同時に、参考資料1を、特許異議申立人Bは、令和6年2月19日に意見書と同時に、参考資料1~4を、特許権者は、令和6年6月12日に意見書とともに、参考資料1~6を、それぞれ、記載要件に関する資料として提出している。
ア 特許異議申立人A提出の参考資料1(日本化粧品工業会のデータベース 「化粧品の成分表示名称リスト」による 「ポリシリコーン-11」の検索結果(令和6年2月2日に検索))及び特許異議申立人B提出の参考資料3(日本化粧品工業会のデータベース 「化粧品の成分表示名称リスト」による 「ポリシリコーン-11」の検索結果(令和6年2月4日に検索))の記載
「化粧品の成分表示名称リスト
・・・
成分番号 556704
表示名称 ポリシリコーン-11
表示名称 Polysilicone-11
定義 本品は、シクロメチコン(*)の存在下でメチルヒドロキシジメチルシロキサンと末端にビニル基を持つシロキサンとの反応によって得られる架橋重合体である。」
イ 特許権者提出の参考資料1(「日本化粧品成分表示名称事典」第3版、日本化粧品工業連合会編集、2013年4月15日発行)の記載
「日本化粧品成分表示名称事典(第3版)」の発行にあたって
厚生省(現厚生労働省)は、「化粧品規制の在り方に関する検討会」の 「今後の化粧品規制の在り方について-最終とりまとめ-」(平成10年7月23日) を受け、化粧品の全成分表示を 義務づける告示を平成12年9月29日に公布しました。
「今後の化粧品規制の在り方について-最終とりまとめ-」において、(1)成分表示の名称リストは業界団体(日本化粧品工業連合会)が作成する、(2)新規成分の名称は企業の申請等に基づき業界団体(日本化粧品工業連合会)が定期的に決定し追加公表する、と提言されたことから、日本化粧品工業連合会では、「全成分表示名称委員会」を設置して表示名称の作成作業を開始し、 順次「化粧品の成分表示名称リスト」(以下「表示名称リスト」といいます)を発行し、同時にホームページ上で公開を行ってまいりました。
・・・
本書が、薬事法に基づく化粧品の成分表示を行うに際しての参考の書として活用いただけるだけではなく、化粧品原料の調達業務や化粧品の開発業務に資することが出来れば幸いです。
・・・
平成25年4月」((1)頁1~27行)
「ポリシリコポリシリコーン-11 (556704)
INCI名:POLYSILICONE-11
・・・
定義:本品は、シクロメチコン(*)の存在下でメチルヒドロキシジメチルシロキサンとシジメチルシロキサンと末端にビニル基を持つシロキサンとの反応によって得られる架橋重合体である。」(919頁ポリシリコポリシリコーン-11 の項目)
ウ 特許権者提出の参考資料2(「化粧品の全成分表示記載のガイドライン(改訂)」、日本化粧品工業連合会、平成14年2月27日)の記載
「 平成14年2月27日
化粧品の全成分表示記載のガイドライン(改訂)
日本化粧品工業連合会
・・・
3. 成分表示に用いる成分名称
日本化粧品工業連合会が作成する「化粧品の成分表示名称リスト」に収載されている表示名称又は表示別名称(表示別名称は、平16年4月30日をもって廃止)を用いて記載する。
・・・」(日本化粧品工業連合会の化粧品の全成分表示記載のガイドライン(改訂)の3.の項目)
エ 特許権者提出の参考資料3(「化粧品用シリコーン セレクションガイド」信越化学工業株式会社、2024年1月)の記載
「13 シリコーンゲル
・・・
KSG-15 化粧品表示名称 ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
シクロペンタシロキサン
INCI DIMETHICDNENINYL DIMETHICONE CROSSPOLYMER
METHYL TRIMETHICONE
・・・」(22頁製品リスト)
オ 特許権者提出の参考資料5(「日本化粧品工業連合会表示名称作成ガイドライン」、日本化粧品工業連合会、平成14年2月27日)の記載
「III.表示名称
表示名称は、対応する INCI名をIII-1.に基づき翻訳して作成するが、対応する INCI名が化学名でない場合はIII-2.に基づき音訳して作成することを原則とする。
ただし、III-3.元素記号及び略号に定めた英名及びINCI 名に該当する場合は、これらに対応する元素記号及び略号を用いて作成する。」(3頁下から5行~最下行)
「一般的な決まり
1.できる限り簡潔な化学名を使用する。
2.一般に認知されている化学略語が適用できる場合は、それを使用する。本書で使用する略語の一覧は、「F.略語」に示す。
3.慣用的な基幹名は、他の命名体系と矛盾のない場合、連結形としてそのまま残す。
4.その成分の複雑性や類似性のため、他に適切な命名法がない場合に限り、名称と数字を組み合わせたものを INCI名として使用する。基幹名は、構造又は組成を示唆するものとする(例:Polysilicone-1)。
・・・」(13頁8~16行)
カ 特許権者提出の参考資料6(「Cosmetic Powders」(化粧品用粉末)、Grant Industriesカタログ)の記載
訳文にて示す。
「化粧パウダー
ポリシリコーン-11 エラストマー パウダー
製品詳細
・・・」
2 取消理由の概要
令和6年1月15日に提出された訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明の特許に対して、当審合議体が令和6年4月9日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
理由1:(明確性要件)本件特許は、本件訂正前の請求項1~3に係る発明に関して、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」との発明特定事項の技術的意味及び範囲が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
具体的には、以下のア~ウの理由が通知されている。
ア 「(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー」及び「ポリシリコーン-11」の3種の「シリコーンエラストマー」の化学構造について
「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」との発明特定事項の技術的意味及び範囲が不明確である。
具体的には、「(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー」及び「ポリシリコーン-11」の3種の「シリコーンエラストマー」は化学構造を一義的に特定できるものとはいえない。
イ (D)成分の存在形態(シリカ被覆されたシリコーン樹脂粉末)について
(D)成分について、発明の詳細な説明の【0031】に「シリコーンエラストマーは、架橋型シリコーン樹脂粉末と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ」との記載があり、市販品を使用することができる旨説明されているところ、実施例においては、配合するシリコーンエラストマーに関して何ら説明がなく、どのようなものが処方されたのか不明確である。例えば、市販品であるシリカ被覆されたシリコーン樹脂粉末を用いた場合には、配合の質量%には、被覆されたシリカの質量が含まれているのかが、不明確である。
ウ (D)成分の存在形態(溶媒を含めたシリコーンゲル状態)について
(D)成分について、発明の詳細な説明の【0031】に「シリコーンエラストマーは、架橋型シリコーン樹脂粉末と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ、例えば、KSG-15、KSG-18A、KSG-16(以上、信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。」との記載があり、シリコーンゲルの状態の市販品を使用することができる旨説明されているところ、実施例においては、配合するシリコーンエラストマーに関して何ら説明がなく、(ア)エラストマー成分として、シリコーン樹脂粒子自体を配合したのか、(イ)エラストマー成分が溶媒又はベースオイルを含んだ形態で配合したのかや、(ウ)(イ)の場合には、配合の質量%には、溶媒やベースオイルが含まれているのかが、不明確である。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、当審合議体の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
I 取消理由(決定の予告)の判断
1 理由1(明確性要件)について
(1)特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)の判断の前提
明確性要件に適合するか否かは、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確かどうかで判断すべきであるとされている。
(2)判断
ア 取消理由アについて
本件訂正により、「化粧品の成分表示名称リスト」に収載されていない「(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー」の2種については、選択 肢から削除されている。
化粧品業界では、薬事法に基づく厚生省(現厚生労働省)の告示(平成12年9月29日)に基づき、化粧品に「全成分表示」をすることが義務づけられており(特許権者提出の参考資料1)、「全成分表示」は日本化粧品工業連合会(現「日本化粧品工業会」)が作成した「化粧品の成分表示名称リスト」に収載された「化粧品成分表示名称(以下、「表示名称」)という」を用いて記載することとされている(特許権者提出の参考資料2)といえる。
また、「ポリシリコーン-11」については、「化粧品の成分表示名称リスト」に収載され、「シクロメチコンの存在下でメチルヒドロキシジメチルシロキサンと末端にビニル基を持つシロキサンとの反応によって得られる架橋重合体である」との製造するための出発原料による定義があること(異議申立人A提出の参考資料1及び異議申立人B提出の参考資料3)、「ポリシリコーン-11」は「POLYSILICONE-11」という「INCI名」に対応する「表示名称」であるということ(特許権者提出の参考資料1)、化粧品業界では、「表示名称」を用いて全成分表示や原料調達がされているという事実(特許権者提出の参考資料1)、「表示名称」は「INCI名」を日本語に置き換えることにより作成されるが、他に適切な命名法がない場合に限り基幹名(構造又は組成を示唆するもの)と数字の組み合わせの使用が認められているということ(特許権者提出の参考資料5の3頁及び13頁)、「ポリシリコーン11」という表示名称を付した「シリコーンエラストマー」が流通していること(特許権者提出の参考資料6)を考慮すると、定義が最終的な化学構造を明確に示していない、製造するための出発原料による定義であるからといって、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、上記取消理由アは、本件訂正により解消しているといえる。
イ 取消理由イについて
「シリカ被覆されたシリコーンエラストマー粉末」に該当する製品「被覆パウダー」の「表示名称」は、「シリカ」が付されることにより、「シリカ被覆されていない「ドライパウダー」の「表示名称」と明確に区別されること、及び本件特許発明1の(D)シリコーンエラストマーには、「シリカ」という記載がないので、「シリカ被覆パウダー」が含まれないという理解に合理性がある。
したがって、上記取消理由イは解消している。
ウ 取消理由ウについて
本件特許明細書は、その全体を通して、配合成分を「表示名称」を用いて特定しており、【0031】では、「シリコーンエラストマー」を「シリコーンゲル」の形態で配合してもよいことを記載していると理解できる。
そして、本件特許明細書の実施例において(溶媒を含む)「シリコーンゲル」を使用した場合には、実施例の処方に「シリコーンエラストマーの表示名称」と「溶媒の表示名称」を、それらの配合量とともに記載するはずであるから、本件特許明細書の実施例において「表示名称」で特定しているシリコーンエラストマーの配合量は、シリコーンエラストマーの「実分」の配合量を意味していることは明らかで、当該表示名称のシリコーンエラストマーと溶媒を含む「シリコーンゲル」であると理解することに一定の合理性があるといえる。
したがって、上記取消理由ウは解消している。
3 取消理由(決定の予告)の判断のまとめ
以上のとおり、取消理由(決定の予告)において通知した取消理由ア~ウは、いずれも本件訂正及び意見書による主張により解消しており、理由がない。
なお、令和5年11月14日付け取消理由において、本件特許登録時の請求項4に対して通知されたサポート要件違反の取消理由については、本件訂正においても、請求項4が削除されているので、取消理由は存在していない。
II 取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について
特許異議申立人の申し立てた理由のうち、異議申立理由3B-1(明確性要件)については、令和5年11月14日付け取消理由として採用されている。
また、硬度に関する特定事項を有する請求項4に対する異議申立理由3B-2(明確性要件)、及び異議申立理由4B(実施可能要件)については、上記令和5年11月14日付け取消理由で通知されたサポート要件違反の取消理由により、請求項4が削除されているので、異議申立理由とならない。
以下に、取消理由に採用しなかった異議申立理由1A(公然実施)、異議申立理由2A(進歩性)、異議申立理由1B(新規性)、及び異議申立理由2B-1~4(進歩性)について述べる。
1 異議申立理由1A(公然実施)について
請求項1について
1-1 甲号証の記載
(1)甲第3号証
「プルプルの心地よさ!瞬間保湿 美肌 イオナヴィー リ
ジェルクリーム ペアバーム 」
・・・
バーム状だから
・・・
さらさら・すべすべ、新感覚の付け心地
・・・
配合全成分
シクロペンタシロキサン、水、セレシン、エチルヘキサン酸セチル、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ベンチレングリコール、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ヒドロキシエチルウレア、コンドロイチン硫酸Na、岩石抽出物、ローヤルゼリーエキス、グルコシルセラミド、マンダリンオレンジ果皮エキス、レモングラス葉/茎エキス、ワイルドタイムエキス、マヨラナ葉エキス、セイヨウシロヤナギ樹皮エキス、サガラメエキス、オタネニンジン根エキス、タベブイアインペチギノサ樹皮エキス、ゲンチアナ根エキス、緑藻エキス、 褐藻エキス、紅藻エキス、アッケシソウエキス、サンザシエキス、ナツメ果実エキスグレープフルーツ果実エキス、リンゴ果実エキス、オレンジ果汁、レモン果汁、ライム果汁、グリチルレチン酸ステアリル、ローマカミツレ花油、セージ油、BG、a-グルカン、PEG-150、(ジメチコン/ピニルジメチコン)クロスポリマー、ジステアルジモ=ウムヘクトライト、塩化Na、フェノキシエタノール」
(2)甲第4号証
「ベタつかない!くずれない!肌あれ防止リペアバーム
・・・
バーム状だから可能なフィットカで、肌あれポイントにとどまり、集中的に潤いを守り抜きます。
・・・
配合全成分
シクロペンタシロキサン、水、セレシン、エチルヘキサン酸セチル、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ペンチレングリコール、 PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ヒドロキシエチルウレア、コンドロイチン硫酸Na、岩石抽出物、ローヤルゼリーエキス、グルコシルセラミド、マンダリンオレンジ果皮エキス、レモングラス葉/茎エキス、ワイルドタイムエキス、マヨラナ葉エキス、セイヨウシロヤナギ樹皮エキス、サガラメエキス、オタネニンジン根エキス、タベブイアインペチギノサ樹皮エキス、ゲンチアナ根エキス、緑藻エキス、褐藻エキス、紅藻エキス、アッケシソウエキス、サンザシエキス、ナツメ果実エキス、グレープフルーツ果実エキス、リンゴ果実エキス、オレンジ果汁、レモン果汁、ライム果汁、グリチルレチン酸ステアリル、ローマカミツレ花油、セージ油、BG、α-グルカン、PEG-150、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジステアルジモニウムヘクトライト、塩化Na、BHT、フェノキシエタノール」
1-2 対比・判断
(1)公然実施発明について
ア 甲第3号証及び甲第4号証の「イオナヴィーリペアバーム」との商品名の商品が公然実施発明といえるかについて検討する。
甲第3号証及び甲第4号証には、「イオナヴィーリペアバーム」との商品名が共通しているものの、甲第3号証は、イオナインターナショナル社の商品紹介のホームページであり、甲第4号証は、ゼリア新薬の商品紹介のホームページであると理解できる。
そして、甲第3号証及び甲第4号証で示される配合全成分は完全には一致しておらず、各成分の組成割合に関する表示も全くなく、甲第3号証及び甲第4号証の関係を立証する証拠もない。
また、特許異議申立人Aは、特許異議申立書14頁で、「イオナヴィーリペアバーム」を2023年8月24日に市場から入手してガスクロマトグラフィー分析して、シクロペンタシロキサンや水の含有量の分析をした旨記載しているが、この記載は、実験成績証明書の形で示されていないことに加えて、2023年8月24日に市場から入手した「イオナヴィーリペアバーム」と、甲第3号証に関する「イオナヴィーリペアバーム」の関係が不明であるし、分析した商品の保管状態や入手経緯が不明であるので、成分組成に変更がなかったかどうかも不明である。
したがって、上記事項を考慮すると、同一商品名であるからといって、甲第3号証及び甲第4号証の「イオナヴィーリペアバーム」との商品名のものが同一商品であったとはいえないし、上記分析された成分組成を有する商品がインターネットアーカイブに保存されていたアドレスから読み取った2016年5月6日に公然実施発明となっていたとはいえない。
イ 対比
さらに、甲第3号証から表示された商品が販売されていたとした上で、「シクロペンタシロキサン、水、セレシン、エチルヘキサン酸セチル、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ベンチレングリコール、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ヒドロキシエチルウレア、コンドロイチン硫酸Na、岩石抽出物、ローヤルゼリーエキス、グルコシルセラミド、マンダリンオレンジ果皮エキス、レモングラス葉/茎エキス、ワイルドタイムエキス、マヨラナ葉エキス、セイヨウシロヤナギ樹皮エキス、サガラメエキス、オタネニンジン根エキス、タベブイアインペチギノサ樹皮エキス、ゲンチアナ根エキス、緑藻エキス、 褐藻エキス、紅藻エキス、アッケシソウエキス、サンザシエキス、ナツメ果実エキスグレープフルーツ果実エキス、リンゴ果実エキス、オレンジ果汁、レモン果汁、ライム果汁、グリチルレチン酸ステアリル、ローマカミツレ花油、セージ油、BG、a-グルカン、PEG-150、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジステアルジモニウムヘクトライト、塩化Na、フェノキシエタノールを成分とするバーム状のジェルクリーム」を実施発明として念のため認定したとして(以下「甲3実施発明」という。)、本件特許発明1と甲3実施発明(イオナヴィーリペアバーム)とを対比する。
両者は、
「(A)有機変性粘土鉱物;
(B)HLB6以下の界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー;
(E)揮発性油分;及び
(F)水を含有する化粧料」という点で一致し、
以下の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1では、成分(E)が20~50質量%と特定されているのに対して、甲3実施発明では、揮発性油分の量が不明である点。
相違点2:本件特許発明1は、「油中水型乳化化粧料」と特定されているものの、甲3実施発明では、「バーム状のジェルクリーム」であって、「油中水型乳化化粧料」であるかどうか不明である点。
ウ 相違点の判断
甲3実施発明において、シクロペンタシロキサンの含有量は、上記のとおり不明であり、特許異議申立書14頁で、「イオナヴィーリペアバーム」を2023年8月24日に市場から入手してガスクロマトグラフィー分析の結果を甲3実施発明の結果とすることはできないので、成分(E)が20~50質量%であるとはいえず、相違点1は、実質的相違点である。
また、異議申立書14頁で、「イオナヴィーリペアバーム」を2023年8月24日に市場から入手して、溶解性の結果から判断した「油中水型乳化物」であるとの特許異議申立人Aの主張を参照しても、甲3実施発明の結果とすることはできないので、「油中水型乳化化粧料」とはいえず、相違点2も実質的相違点である。
1-3 異議申立理由1A(公然実施)のまとめ
以上のとおり、甲第3号証及び甲第4号証の「イオナヴィーリペアバーム」は、公然実施発明とはいえず、異議申立理由1A(公然実施)には理由がない。
2 異議申立理由2A(進歩性)について
請求項1~3について
2-1 甲号証の記載
(1)甲第1A号証
(1a)「【請求項1】
(A)25℃における屈折率が1.45以上の高屈折率シリコーン油を4~18質量%と、
(B)(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーと、
(C)疎水性または疎水化処理粉体と、
(D)ワックスと
を含むことを特徴とする固形乳化化粧料。
・・・
【技術分野】
【0001】
本発明は固形乳化化粧料、特にその仕上がり及び安定性の改善に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の如き高屈折率シリコーン油には、固形乳化化粧料へ高配合するとワックスを析出させてしまい、製品の表面が白変するという問題点があった。そのため、前記高屈折率シリコーン油が構成油分の一つとして配合された固形乳化化粧料は存在するものの、その配合量は2%程度に止まっている。このような少量の配合では、高屈折の前記油分を配合しても、到底十分なツヤ出し効果を得ることはできなかった。
また、例えば、特許文献1には揮発性油分と不揮発性油分とシリコーン弾性粉体とを特定比で配合した、肌の凹凸を補正することのできる油中水型乳化化粧料が記載されている。しかしながら、構成油分の屈折率からツヤ出し効果の両立への期待は低く、また前記した配合限界の問題から、該化粧料へツヤ出しに十分な量の高屈折率シリコーン油を追加配合することも不可能であった。
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、高屈折率シリコーン油が多量且つ安定に配合され、且つ、ツヤのある仕上がり及び肌の凹凸補正効果を有する固形乳化化粧料を提供することを目的とする。」
(1b)「
[図:0001416462000001.jpg]
」
(2)甲第2A号証
(2a)「【請求項1】
(A)ワックス及び(B)ジステアルジモニウムヘクトライトで液状油分を増粘又は固化した外油相、及び(C)内相粉末を水性媒体に分散させた内水相を含む油中水型乳化固形化粧料。」
(2b)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明における課題は、水相に粉末を配合することにより得られる優れた使用感(のびの軽さ及びみずみずしい感触)を更に改善するとともに、十分なカバー力を有し、なおかつ高温においても安定で化粧持ちに優れた油中水型乳化固形化粧料を提供することにある。
・・・
【0014】
本発明におけるジステアルジモニウムヘクトライト(B成分)は、化粧料等の油相増粘剤(ゲル化剤)として従来から使用されている有機変性粘土鉱物の一種である。例えば、「ベントン38V」又は「ベントン38VCG」という商品名で市販されているジステアルジモニウムヘクトライトが好適に使用できる。」
(2c)「【0053】
処方例2:乳化頬紅(スティック状)
(処方) (質量%)
(1)ジメチルポリシロキサン 43.6
(2)マイクロクリスタリンワックス 1
(3)セレシンワックス 5
(4)ソルビタンモノイソステアレート 1
(5)(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー 1
(6)PEG-10ジメチコン 2
(7)ジステアルジモニウムヘクトライト 0.7
(8)内相粉末レーキ 4
(9)イオン交換水 35
(10)プロピレングリコール 6
(11)モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 0.5
(12)防腐剤 0.1
(13)香料 0.1」
2-2 甲第1A号証に記載された発明
甲第1A号証は、固形乳化化粧料に関する発明であって、請求項1に係る発明(摘記(1a))に対応した試験例1-1の固形乳化化粧料(摘記(1b))に関する発明として、以下の発明(以下「甲1A発明」という。)が認定できる。
「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 17.64質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン 30.65質量%、PEG-10ジメチコン 2質量%、セスキイソステアリン酸ソルビタン 1質量%、ジステアリルジモニウムクロリド 0.2質量%、パルミチン酸 0.15質量%、トコフェノール 0.02質量%、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー 3.36質量%、マイクロクリスタリンワックス 0.8質量%、パラフィンワックス 3.5質量%、シリコーン処理酸化鉄 2.75質量%、シリコーン処理顔料級酸化チタン 12質量%、シリコーン処理中粒子酸化チタン 7質量%、イオン交換水 15.08質量%、時プロピレングリコール 3.5質量%、フェノキシエタノール 0.35質量%を含有し、クロスポリマー:直鎖シリコーンが1.6:9.4である固形乳化化粧料」
2-3 対比・判断
(1)本件特許発明1との対比
ア 甲1A発明と本件特許発明1を対比すると、甲1発明の「PEG-10ジメチコン」は、表1から界面活性剤として添加されており、本件特許発明1の「(B)HLB6以下の界面活性剤」と、「界面活性剤」という点で共通している。
また、甲1A発明の「マイクロクリスタリンワックス」及び「パラフィンワックス」は、本件特許発明1の「(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に該当する。
そして、甲1A発明の「(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー」は、本件特許発明1の「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」と、シリコーンエラストマーという限りにおいて、共通している。
さらに、甲1A発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン 30.65質量%」は、本件特許明細書【0034】の記載からみて(甲1A発明の「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 17.64質量%」は揮発性油分とはいえない。)、本件特許発明1の「(E)20~50質量%の揮発性油分」に該当するといえる。
また、甲1A発明の「イオン交換水」は、本件特許発明1の「水」に該当する。
さらに、甲1A発明の「固形乳化化粧料」は、本件特許発明1の「油中水型乳化化粧料」と、「乳化化粧料」という点で共通している。
イ したがって、本件特許発明1と甲1A発明とは、「(B)界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)シリコーンエラストマー;
(E)20~50質量%の揮発性油分;及び
(F)水を含有する乳化化粧料。」という点で一致しており、以下の点で相違する。
相違点1-1:本件特許発明1は、「有機変性粘土鉱物」が含有されているのに対して、甲1A発明では、含有されていない点。
相違点2-1:本件特許発明1には、界面活性剤が、「HLB6以下」と特定されているのに対して、甲1A発明では、「HLB6以下」であるかどうか不明である点。
相違点3-1:本件特許発明1は、「油中水型乳化化粧料」であるのに対して、甲1A発明は、固形乳化化粧料である点。
(2)相違点の判断
ア 相違点1-1について
甲1A発明の固形乳化化粧料は、摘記(1a)に記載されるように、高屈折率シリコーン油には、固形乳化化粧料へ高配合するとワックスを析出させてしまい、製品の表面が白変するという問題点があり、十分なツヤ出し効果を得ることはできなかったところ、高屈折率シリコーン油が多量且つ安定に配合され、且つ、ツヤのある仕上がり及び肌の凹凸補正効果を有する固形乳化化粧料を提供することを目的としたもので、甲第1A号証に有機変性粘土鉱物を添加することに関し記載も示唆もない。
さらに、水相に粉末を配合することにより得られる優れた使用感を更に改善するとともに、十分なカバー力を有し、なおかつ高温においても安定で化粧持ちに優れた油中水型乳化固形化粧料を提供することを課題とした甲第2A号証に記載された油相増粘剤(ゲル化剤)であるジステアルジモニウムヘクトライトをわざわざ添加する動機付けはない。
イ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1においては、表1~4及び図1で結果が示され、本件特許明細書【0010】に記載されるように、本件特許発明1の構成全体により、バーム状と呼べる程度の硬度を有する固形又は半固形の油中水型乳化化粧料であり、ワックスを含む被膜で肌を被覆することによって優れた保湿効果を有し、また、塗布する際には肌上で溶けて崩れるような独特の感触を与え、水溶性又は親水性の薬剤を安定に配合することが可能であるという予測できない、かつ顕著な効果を奏しているといえる。
ウ 小括
本件特許発明1は、相違点2-1及び3-1を検討するまでもなく、甲1A発明及び甲第2号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1をさらに、「(E)揮発性油分」と「(C)ワックスとの配合量比率([(E)/(C)])」、及び「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する」ことで、それぞれ、技術的に限定した水中油型化粧料であるから、上記((1)及び(2))で検討したのと同様に、本件特許発明2及び3と甲1A発明との対比において、少なくとも相違点1-1を有し、本件特許発明2及び3は、甲第1A号証に記載された発明及び甲第2A号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-4 異議申立理由2A(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~3は、甲第1A号証に記載された発明及び甲第2A号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、異議申立理由2A(進歩性)には理由がない。
3 異議申立理由1B(新規性)及び異議申立理由2B-1~4(進歩性)について
3-1 甲号証の記載
(1)甲第1B号証
(1a)「【請求項1】
(A)ワックス及び(B)ジステアルジモニウムヘクトライトで液状油分を増粘又は固化した外油相、及び(C)内相粉末を水性媒体に分散させた内水相を含む油中水型乳化固形化粧料。」
(1b)「【0053】
処方例2:乳化頬紅(スティック状)
(処方) (質量%)
(1)ジメチルポリシロキサン 43.6
(2)マイクロクリスタリンワックス 1
(3)セレシンワックス 5
(4)ソルビタンモノイソステアレート 1
(5)(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー 1
(6)PEG-10ジメチコン 2
(7)ジステアルジモニウムヘクトライト 0.7
(8)内相粉末レーキ 4
(9)イオン交換水 35
(10)プロピレングリコール 6
(11)モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 0.5
(12)防腐剤 0.1
(13)香料 0.1」
(1c)「【0017】
本発明の固形化粧料を構成する液状油分には液状シリコーン油を含めるのが好ましい。液状シリコーン油は、揮発性又は不揮発性の直鎖状シリコーン油及び環状シリコーン油を含む。なお、本明細書における直鎖状シリコーン油には、直鎖状及び分岐鎖状構造のシリコーン油が含まれるものとする。具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。環状シリコーン油の例としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。」
(2)甲第2B号証
(2a)「【請求項1】 次の成分(a)~(d);
(a)融点が80℃以上である固形油を0.01~7.5質量%
(b)抱水性油剤を0.01~7.5質量%
(c)シリコーン油を40質量%以上含有する油相
(d)水を5質量%以上
とを含有することを特徴とする油中水型化粧料。」
(2b)「【0018】本発明の油中水型化粧料には、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、上記成分の他に通常化粧料に使用される成分、例えば、粉体、水溶性高分子、アルコール類、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、植物抽出物等の美容成分、香料等を配合することができる。
【0019】本発明の油中水型化粧料には、着色剤、隠蔽剤、紫外線遮蔽剤、感触調整剤等の目的で、通常化粧品に使用される粉体が配合可能である。このような粉体は、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無多孔質等の粒子構造等により特に限定されず、具体的には、酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、合成セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、これら粉体は一種又は二種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。本発明の油中水型化粧料に前記粉体を配合する場合の配合量は、使用性及び使用感の点から、概ね1~50%が好ましい。」
(2c)「【0038】
実施例13:油中水型クリーム状アイシャドウ
(成分) (質量%)
1.デカメチルシクロペンタシロキサン 15
2.メチルフェニルポリシロキサン 2
3.部分架橋型オルガノポリシロキサン(注17) 0.1
4.シリコーン系界面活性剤(注6) 2
5.シリコーン系界面活性剤(注11) 2
6.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 5
7.ジイソステアリン酸ジグリセリル 0.5
8.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1
9.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 8
10.N-ラウロイルL-グルタミン酸
(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)(注4) 5
11.エチレン・プロピレン共重合体(注2) 1
12.酸化チタン 1
13.板状硫酸バリウム 3
14.赤色226号 1.5
15.黄色401号 2
16.窒化ホウ素 1.5
17.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム
・エポキシ積層粉末(注18) 2
18.シリコーンパウダー(注19) 3
19.精製水 残量
20.1,3-ブチレングリコール 6
21.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
22.香料 適量
注17:KSG-21(信越化学工業社製)
注18:DCグリッターゴールドI-R(0.005)(東色ピグメント社製)
注19:トレフィルE505C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)」
(3)甲第3B号証
(3a)「【請求項1】
エステル油とワックスを含む脂肪相中に乳化された水相と、ポリヒドロキシル化鎖を有するシリコーン界面活性剤を含むことを特徴とする油中水型固形エマルション。
【請求項2】
前記エマルションが、37℃で1ヶ月後、貫通力が45g以上である硬度を有することを特徴とする請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
エステル油とワックスを含む脂肪相中に乳化性界面活性剤で乳化された水相と、C1~C22アルキルジメチコーンコポリオールを含む油中水型固形エマルションであって、
前記エマルションが、37℃で少なくとも1ヶ月後、貫通力が45g以上である硬度を有することを特徴とする油中水型固形エマルション。
・・・
【請求項7】
前記エステル油が、ネオペンタン酸イソデシル、オクタン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸トリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソデシル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸2-オクチルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルおよびエルカ酸2-オクチルドデシル、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のエマルション。
・・・
【請求項8】
前記エステル油が、組成物の全重量に対して5重量%~20重量%、好ましくは7重量%~15重量%、優先的には8重量%~12重量%の範囲の含量で存在することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエマルション。
・・・
【請求項13】
前記ワックスが、カンデリラワックスおよびオゾケライト、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のエマルション。
・・・
【請求項19】
前記ポリヒドロキシル化鎖を有するシリコーン界面活性剤が、ポリヒドロキシル化鎖、特にポリグリセロール化鎖を有する、乳化性のエラストマー系架橋オルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1、2および4から12のいずれか一項に記載のエマルション。
・・・
【請求項26】
前記エマルションが、モノ-、ジ-、トリ-もしくはセスキ-オレイン酸グリセリルもしくはモノ-、ジ-、トリ-もしくはセスキ-オレイン酸ソルビトールまたはモノ-、ジ-、トリ-もしくはセスキ-ステアリン酸グリセリルもしくはモノ-、ジ-、トリ-もしくはセスキ-ステアリン酸ソルビトール、ラウリン酸グリセリルまたはラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリオールの脂肪酸エステル;例えば炭素原子6~22個を有する、ペンダントまたはシリコーン骨格末端にあるアルキルもしくはアルコキシ鎖を有するアルキルまたはアルコキシジメチコーンコポリオール;グリコールのポリオキシアルキレン化脂肪酸エステルなどのポリマー、およびこれらの混合物から選択される追加の乳化性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1、2および15から23に記載のエマルション。
【請求項27】
前記追加の界面活性剤が、請求項24に記載したC8~C22アルキルジメチコーンコポリオールであることを特徴とする請求項26に記載のエマルション。
・・・
【請求項36】
前記エマルションが、組成物の全重量に対して10重量%~40重量%、好ましくは15重量%~30重量%、優先的には15重量%~25重量%の範囲の含量で水を含むことを特徴とする請求項1から35のいずれか一項に記載のエマルション。
・・・
【請求項42】
前記エマルションが、フィラーを少なくとも1つ含むことを特徴とする請求項1から41のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項43】
前記フィラーが、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ-β-アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリジン、デンプン、チッ化ホウ素、ポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルの中空ミクロスフェア、アクリル酸コポリマーの中空ミクロスフェア、シリコーン樹脂マイクロビーズ、ポリオルガノシロキサンエラストマー粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア、ガラスまたはセラミックマイクロカプセル、ならびに炭素原子8~22個を含む有機カルボン酸から誘導される金属石鹸から選択されることを特徴とする請求項42に記載のエマルション。
・・・
【請求項52】
前記エマルションが、親水性もしくは親油性ゲル化剤および/または増粘剤、抗酸化剤、芳香剤、防腐剤、中和剤、サンスクリーン剤、ビタミン剤、保湿剤、セルフタンニング化合物、抗シワ活性剤、柔軟剤、親水性もしくは親油性活性剤、フリーラジカル捕捉剤、金属イオン封鎖剤および被膜剤、ならびにこれらの混合物から選択される化粧品成分を含むことを特徴とする請求項1から51のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項53】
組成物が、ファンデーション、アイシャドー、メイクアップルージュ、コンシーラー製品、ボディメイクアップ製品、口紅、スキンケアベース、ケアクリーム、リップケア組成物、抗紫外線組成物、セルフタンニング組成物、デオドラントであることを特徴とする請求項1から52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
請求項1から53のいずれか一項に記載の組成物を含むファンデーション。
【請求項55】
請求項1から54のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に適用することを含む、皮膚メイクアップまたはケアを行うための非治療的化粧方法。」
(3b)「【0185】
[実施例1]
下記の組成を有する固形ファンデーションを作製した。
油相:
カンデリラワックス 1.8g
オゾケライト 1.2g
イソノナン酸イソトリデシル 9.0g
シクロペンタシロキサン 22.5g
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムおよび水酸化アルミニウムで被覆した酸化鉄 2.2g
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムおよび水酸化アルミニウムで被覆した二酸化チタン 7.8g
疎水性ヒュームドシリカ(Degussa社のAerosil R972) 0.5g
シリカマイクロビーズ 9.0g
ポリメタクリル酸メチル 3g
二酸化チタンナノ顔料 3g
「Elfacos(登録商標)ST 9」の名で販売されているAkzo Nobel社製のエチレンオキシド(45EO)とエポキシドデカン(22mol)のコポリマー 4g
イソステアリン酸ポリグリセリル-4 1.50g
ポリグリセロール化鎖を有するシリコーン(Shin-Etsu社のKF 6104) 2g
水相:
水 20g
ブチレングリコール 3g
グリセロール 5g
硫酸マグネシウム 1g
オキシエチレン化オキシプロピレン化(18 EO/18 PO)ポリジメチルシロキサン、シクロペンタシロキサンおよび水の混合物(10/88/2)(Dow Corning社の DC 2-5225 C ) 2g
防腐剤 1.50g
【0186】
組成物は下記の方法に従って製造した。
【0187】
ワックス、コポリマーElfacos ST 9および不揮発性油を含む混合物を、透明で均一な混合物が得られるまで90℃まで加熱し、次いで揮発性油、顔料およびフィラーを70℃で攪拌しながら添加する。次いで、水相成分の混合物を70℃まで加熱しながら調製し、水相を70℃で攪拌しながら油相に導入して油中水型エマルションを得る。
【0188】
得られたエマルションを70℃で予熱した深皿に注入し、固形エマルションが得られるまで室温にまで冷却する。
【0189】
20℃で24時間経た時点で測定した硬度が118.2gであり、37℃で1ヶ月間保存した後に測定した硬度が45gを上回る固形ファンデーションが得られる。ここで硬度測定は、前述のプロトコルに従って行われる。
【0190】
ファンデーションは、皮膚に適用するとリッチでクリーミーである。」
(4)甲第4B号証
(4a)「【請求項1】
(a)部分架橋型ポリエーテル変性シリコーン、部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーン又はこれらの組み合わせ、
(b)アクリル-シリコーン系グラフト共重合体、及び
(c)分岐型シリコーン界面活性剤 0.05~0.7重量%
を含有する油中水型乳化物からなるウォーターブレイクメイクアップ化粧料。」
(4b)「【0044】
・その他の成分
上記の(d)成分及び(e)成分以外の任意的成分としては、化粧品に通常用いられる成分、例えば油剤、粉体成分、界面活性剤、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、その他の薬剤等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲の量で配合できる。」
(4c)「【0057】
有機粉体の例としては、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、メチルメタクリレートクロスポリマー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、または、これらの繊維状パウダー、ジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つ架橋型シリコーン微粉末、架橋型球状ポリメチルシルセスキオキサン微粉末、架橋型球状オルガノポリシロキサンゴム表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆してなる微粉末、樹脂の積層末、デンプン末、脂肪酸デンプン誘導体末、ラウロイルリジン等が挙げられる。」
(5)甲第5B号証
(5a)「[請求項1](A)0.01~50質量%の揮発性流動油分;
(B)10質量%以上の水;
(C)前記揮発性流動油分をゲル化することのできるワックス;
(D)シリコーンエラストマー;及び
(E)シリコーン系界面活性剤を含有する、うるおい補給用スティック状化粧料」。
(5b)「[0014] 本発明の化粧料における(A)揮発性流動油分の配合量は、0.01~50質量%、好ましくは1~35質量%、より好ましくは5~20質量%である。配合量が0.01質量%未満であるとべたつきやギラつき、ファンデーションのヨレが起こり、50質量%を超えて配合すると滑らかなのびが失われ、さらに、スティックの欠けや崩れが生じやすくなる。また、塗布時のみずみずしさが失われる。」
(5c)「[0019] 前記の条件を満たすワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ミリスチン酸ミリスチル、セレシンワックス、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ホホバ油(水添ホホバ油)、ライスワックス等のロウ類又は固形炭化水素、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
[0020] 本発明の化粧料における(C)ワックスの配合量は、上記の揮発性流動油分を前記所定の硬度にゲル化できる量であればよい。通常は、0.1~20質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~10質量%である。配合量が0.1質量%未満であると硬度が低すぎてスティックの形状を保てなくなる場合があり、20質量%を超えて配合すると硬度が高すぎてのびが悪く肌に塗布しにくくなる場合がある。
[0021] 本発明の化粧料は、さらに(D)シリコーンエラストマーを含有する。シリコーンエラストマーを配合することにより、経時的に揮発性油分が蒸発することによりスティックが細くなる「痩せ」を抑制し、優れた形状安定性が達成できるとともに、肌の凹凸補正効果も付与される。さらに、製造工程においてスティック形状に成型する際、中心の凹みを抑制するために徐冷が必要となるが、シリコーンエラストマーの配合により徐冷して固化するまでに、乳化粒子が増大することを抑制する効果がある。
[0022] 本発明で用いられるシリコーンエラストマーとしては、例えば、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーなどの架橋型シリコーン樹脂粉末の一種または二種以上が挙げられる。
[0023] シリコーンエラストマーは、架橋型シリコーン樹脂粉末と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ、例えば、KSG-18A、KSG-16、KSG-15AP(以上、信越シリコーン社製)、エラストマーブレンドDC9045(東レ・ダウコーニング社製)などを挙げることができる。なお、これらのシリコーンゲルに溶媒として含まれる揮発性流動油分は上記成分(A)に分類され、その配合量は成分(A)の配合量に加算される。
[0024] 本発明の化粧料における(D)シリコーンエラストマーの配合量は、通常は、0.005~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~2質量%である。配合量が0.005質量%未満であると乳化安定性の低下、スティックの痩せ、化粧直し時の凹凸補正効果の低下が生じる場合があり、10質量%を超えて配合すると塗布時のみずみずしさが失われる場合がある。
[0025] 本発明の化粧料は、さらに(E)シリコーン系界面活性剤を含有している。本発明で使用されるシリコーン系界面活性剤としては、シリコーン骨格にポリオキシアルキレン構造を導入したポリエーテル変性シリコーンが好ましく用いられる。例えば、シリコーン鎖をポリオキシアルキレン鎖で架橋した架橋物、シリコーン鎖に側鎖としてポリオキシアルキレン基を導入した側鎖型のポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
[0026] シリコーン系界面活性剤の具体例としては、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-15ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン、(ジメチコン/(PEG10/15))クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の架橋型ポリエーテル変性シリコーンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して配合することもできる。
[0027] なお、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等の架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、(E)シリコーン系界面活性剤としてのみならず、前記(D)シリコーンエラストマーとしても作用しうるものであるが、本明細書においては、界面活性剤としての機能を持つものは(E)シリコーン系界面活性剤に分類して区別されるものとする。
[0028] また、(E)シリコーン系界面活性剤についても、当該界面活性剤と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよく、市販されているシリコーンゲルを使用することができる。例えば、KSG-210、KSG-710、KSG-360Z(以上、信越シリコーン社製)等が例示される。なお、これらのシリコーンゲルに溶媒として含まれる揮発性流動油分も上記成分(A)に分類され、その配合量は成分(A)の配合量に加算されることは言うまでもない。
[0029] 本発明の化粧料における(E)シリコーン系界面活性剤の配合量は、通常は、0.05~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。配合量が0.05質量%未満であると乳化安定性が低下し、20質量%を超えて配合するとべたつき、みずみずしさが失われる場合がある。」
(5d)「[0054][表6]
[図:0001416462000002.jpg]
・・・
[0060] <処方例3:スティック状保湿バーム>
成分 配合量(質量%)
(1)水 残余
(2)グリセリン 13
(3)1,3-ブチレングリコール 8
(4)水酸化カリウム 0.1
(5)PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.2
(6)KSG-210(※1) 1.5
(7)イソドデカン 3.5
(8)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 6.5
(9)ジメチコン(2cs) 8
(10)テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2
(11)ワセリン 2
(12)マイクロクリスタリンワックス 0.75
(13)ポリエチレンワックス 4.25
(14)KSG-18A(※4) 4
(15)D-メチオニン 1
(16)スルホ石炭酸亜鉛塩 0.2
(17)ナットウ抽出物 0.1
(18)ラベンダー油 0.001
(19)β-カロチン 0.00005
(20)エデト酸二ナトリウム 0.05
(21)塩化ナトリウム 1
(22)メチルパラベン 0.1
(23)エチルパラベン 0.15」
(6)甲第6B号証
(6a)「【0154】
【表3】
[図:0001416462000003.jpg]
(7)甲第7B号証
(7a)「【請求項1】 次の成分(a)~(c);
(a)架橋型シリコーン
(b)ビタミンAおよび/またはその脂肪酸エステル
(c)油溶性抗酸化剤
を含有していることを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
(7b)「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について説明する。本発明に用いられる成分(a)の架橋型シリコーンは、油中水型乳化化粧料の経時における保存安定性を向上し、且つ、伸び広がりのよさ、後肌のべとつきのなさ、しっとりとしたコクのある使用感などの良好な感触を付与する目的で含有されるものである。」
(8)甲第8B号証
(8a)「【請求項1】
次の成分(イ)~(ハ)を必須成分として含有することを特徴とする油中水型化粧料:
(イ) シリコーン架橋弾性体;
(ロ) 架橋型シリコーンポリマーを含有するシリコーンゲル;及び
(ハ) HLBが7以下の親油性界面活性剤。」
(8b)「【0011】
本発明の化粧料において、成分(イ)としては、べたつかず、使用性の良さを与えるシリコーン架橋弾性体(シリコーンエラストマー)が用いられる。本発明に用いられるシリコーン架橋弾性体は、粉末状であればよく、個々の粒子の形態は球状に限らないが、好ましくは球状である。」
(9)甲第9B号証
(9a)「【要約】
パーソナルケア組成物であって、約0.1%~約15%の乳化性シリコーンエラストマー、約0.1%~約40%の少なくとも1つの固化剤、約1%~約75%の水相、約0.1%~約74%の水を含み、その組成物は、油中水型エマルションの形態であり、第一の温度21℃において約2g~約45gの第一の硬さを有し、第二の温度33℃において第一の硬さの65%以下である第二の硬さを有する。」
(9b)「【0039】
1.エラストマー
本発明の組成物は、適用の際に組成物のべたつき感を減少させ、心地よい感触を提供するのに有用なシリコーンエラストマーを含む。有用なシリコーンエラストマーの一つの非限定的な例は、米国特許公開第2003/0049212A1号に記載のような架橋オルガノポリシロキサン(又はシロキサン)エラストマーである。エラストマーは乳化性及び非乳化性シリコーンエラストマーを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「乳化性」は、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン)又はポリグリセリン部分の少なくとも1つを有する架橋オルガノポリシロキサンエラストマーを意味し、「非乳化性」は、ポリオキシアルキレン又はポリグリセリン部分を本質的に有さない架橋オルガノポリシロキサンエラストマーを意味する。」
(10)甲第10B号証
(10a)甲第10B号証は、信越化学工業株式会社の製品カタログ(2014年2月発行)であり、化粧品用シリコーン オリジナル原料PLUS という表題のものである。
上記カタログには、以下の記載がある。
ア 4頁下の表にKSG-16の架橋物 表示名称(INCI)として、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとの記載がある。
18頁の表に、シリコーン複合パウダーとして、KSP-100、101、102、105が(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー」であること、KSP-300は、ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーであることが示されている。
イ また、シリコーンレジンパウダーとして、KMP-590、591は、ポリメチルシルセスキオキサンであることが示されている。
(11)甲第11B号証
訳文にて示す。
(11a)「クオ-カラーコレクテフィング ハイドレーティング バーム」の商品情報として、
「成分
緑:メチルトリメチコン、水、ジメチコン、セレシン、トリメチルペンタンジオール/アジピン酸/グリセリンクロスポリマー、エチルヘキサン酸セチル、ポリシリコーン-11、 ポリメチルシルセスキオキサン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、合成金雲母、ペンチレングリコール、塩化ナトリウム、ジステアルジモニウムヘクトライト、リンゴ酸ジイソステアリル、VP/VAコポリマー、アモジメチコン、ヒドロキシプロヒルメチルセルロース、セスキイソステアリン酸ソルビタン、トリエトキシカプリリルシラン、水酸化アルミニウム、フェノキシエタノール、および酸化スズ」
3-2 甲号証に記載された発明
(1)甲第1B号証に記載された発明
甲第1B号証は、前記甲第2A号証と同じ文献であり、摘記(1a)に対応した、実施例における処方例として、摘記(1b)の処方例2に係る発明として以下の発明が認定できる(以下「甲1B発明」という。)
「(1)ジメチルポリシロキサン 43.6(質量%、以下同様。)
(2)マイクロクリスタリンワックス 1
(3)セレシンワックス 5
(4)ソルビタンモノイソステアレート 1
(5)(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー 1
(6)PEG-10ジメチコン 2
(7)ジステアルジモニウムヘクトライト 0.7
(8)内相粉末レーキ 4
(9)イオン交換水 35
(10)プロピレングリコール 6
(11)モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 0.5
(12)防腐剤 0.1
(13)香料 0.1
の成分組成の乳化頬紅(スティック状)」
(2)甲第3B号証に記載された発明
甲第3B号証は、油中水型固形エマルションに関する文献であって、実施例1に係る発明として、以下の発明(以下「甲3B発明」という。)が認定できる。
「下記の組成を有する固形ファンデーションを作製するにあたり、
油相が、
カンデリラワックス 1.8g
オゾケライト 1.2g
イソノナン酸イソトリデシル 9.0g
シクロペンタシロキサン 22.5g
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムおよび水酸化アルミニウムで被覆した酸化鉄 2.2g
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムおよび水酸化アルミニウムで被覆した二酸化チタン 7.8g
疎水性ヒュームドシリカ(Degussa社のAerosil R972) 0.5g
シリカマイクロビーズ 9.0g
ポリメタクリル酸メチル 3g
二酸化チタンナノ顔料 3g
「Elfacos(登録商標)ST 9」の名で販売されているAkzo Nobel社製のエチレンオキシド(45EO)とエポキシドデカン(22mol)のコポリマー 4g
イソステアリン酸ポリグリセリル-4 1.50g
ポリグリセロール化鎖を有するシリコーン(Shin-Etsu社のKF 6104) 2g
であり、
水相が、
水 20g
ブチレングリコール 3g
グリセロール 5g
硫酸マグネシウム 1g
オキシエチレン化オキシプロピレン化(18 EO/18 PO)ポリジメチルシロキサン、シクロペンタシロキサンおよび水の混合物(10/88/2)(Dow Corning社の DC 2-5225 C ) 2g
防腐剤 1.50g
であり、
ワックス、コポリマーElfacos ST 9および不揮発性油を含む混合物を、透明で均一な混合物が得られるまで90℃まで加熱し、次いで揮発性油、顔料およびフィラーを70℃で攪拌しながら添加すし、次いで、水相成分の混合物を70℃まで加熱しながら調製し、水相を70℃で攪拌しながら油相に導入して油中水型エマルションを得て、得られたエマルションを70℃で予熱した深皿に注入し、固形エマルションが得られるまで室温にまで冷却し、20℃で24時間経た時点で測定した硬度が118.2gであり、37℃で1ヶ月間保存した後に測定した硬度が45gを上回る固形ファンデーション」
(3)甲第5B号証に記載された発明
甲第5B号証は、肌のうるおい補給に用いることのできるスティック状化粧料に関するン文献であって、請求項1に係る発明に対応した処方例3(摘記(5d))に関する発明として、以下の発明(以下「甲5B発明」という。)が認定できる。
「(1)水 残余
(2)グリセリン 13(質量%、以下同様。)
(3)1,3-ブチレングリコール 8
(4)水酸化カリウム 0.1
(5)PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.2
(6)KSG-210(※1) 1.5
(7)イソドデカン 3.5
(8)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 6.5
(9)ジメチコン(2cs) 8
(10)テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2
(11)ワセリン 2
(12)マイクロクリスタリンワックス 0.75
(13)ポリエチレンワックス 4.25
(14)KSG-18A(※4) 4
(15)D-メチオニン 1
(16)スルホ石炭酸亜鉛塩 0.2
(17)ナットウ抽出物 0.1
(18)ラベンダー油 0.001
(19)β-カロチン 0.00005
(20)エデト酸二ナトリウム 0.05
(21)塩化ナトリウム 1
(22)メチルパラベン 0.1
(23)エチルパラベン 0.15
の成分組成のスティック状保湿バーム」
(4)甲第11B号証に記載された発明
甲第11B号証は、MiNTELの商品情報であるが、以下の発明(以下「甲11B発明」という。)が認定できる。
「成分として、メチルトリメチコン、水、ジメチコン、セレシン、トリメチルペンタンジオール/アジピン酸/グリセリンクロスポリマー、エチルヘキサン酸セチル、ポリシリコーン-11、 ポリメチルシルセスキオキサン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、合成金雲母、ペンチレングリコール、塩化ナトリウム、ジステアルジモ二ウムヘクトライト、リンゴ酸ジイソステアリル、VP/VAコポリマー、アモジメチコン、ヒドロキシプロヒルメチルセルロース、セスキイソステアリン酸ソルビタン、トリエトキシカプリリルシラン、水酸化アルミニウム、フェノキシエタノール、および酸化スズを含有するコンシーラー」
3-3 本件特許発明と甲号証に記載された発明の対比
異議申立理由1B(新規性)、異議申立理由2B-1(進歩性)について
請求項1~3について
(1)本件特許発明1と甲1B発明の対比
本件特許発明1と甲1B発明を対比すると、甲1B発明の「ジステアルジモニウムヘクトライト」は、本件特許発明1の「有機変性粘土鉱物」に相当し、甲1B発明の「PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」は、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤であるので、本件特許発明1の「HLB6以下の界面活性剤」と、「界面活性剤」という点で共通している。
また、甲1B発明の「マイクロクリスタリンワックス」及び「セレシンワックス」は、本件特許発明1の「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
さらに、甲1B発明の「(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー」は、本件特許発明1の「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」と、「シリコーンエラストマー」という点で共通している。
そして、甲1B発明の「乳化頬紅(スティック状)」は、甲第1B号証の【0011】及び【0051】の記載から「油中水型乳化化粧料」であると理解できるので、本件特許発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当し、甲1B発明の「イオン交換水」は、本件特許発明の「水」に該当する。
したがって、本件特許発明1と甲1B発明とは、「(A)有機変性粘土鉱物;
(B)界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)シリコーンエラストマー;
(F)水を含有する油中水型乳化化粧料。」という点で一致しており、以下の点で相違する。
相違点1-1:本件特許発明1には、界面活性剤が、「HLB6以下」と特定されているのに対して、甲1B発明では、「HLB6以下」であるかどうか不明である点。
相違点2-1:本件特許発明1は、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」を含有することが特定されているのに対して、甲1B発明においては、「(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー」を含有する点。
相違点3-1:本件特許発明1は、「20~50質量%の揮発性油分」が含有されることが特定されているのに対して、甲1B発明では、揮発性油分が含有されていること、及びその含有量が不明である点。
(2)判断
事情に鑑み、相違点2-1から検討する。
ア 相違点2-1に関し、本件特許発明1においては、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」が含有されているのに対して、甲1B発明では、任意成分としての外相粉末としてのシリコーン樹脂粉末が、たまたま、「(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー」であっただけで、異なるシリコーンエラストマーであるから相違点2-1は実質的な相違点である。
特許異議申立人Bは、甲第10号証のエラストマーに関する情報から、甲1B発明の「(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー」がシリコーンエラストマーである蓋然性が高い旨主張しているが、本件訂正により、(D)のシリコーンエラストマーは、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」となったのであるから、相違点2-1は実質的な相違点である。
また、甲1B発明において、シリコーン樹脂粉末である「(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー」を、特定の3種の「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」に変更する動機付けはない。
したがって、甲1B発明において、甲第1B号証に記載された技術的事項を参酌しても、相違点2-1は容易になし得る技術的事項とはいえない。
イ 相違点3-1に関し、本件特許発明1においては、揮発性油分の含有量が、「20~50質量%」であることが特定されているが、甲第1号証においては、揮発性油分及びその含有量に関して記載がなく、本件出願時の技術常識でもないので、相違点3-1は、実質的な相違点である。
また、甲1B発明においては、ジメチルポリシロキサンが43.6質量%含有されることが記載されるものの、一般記載としては、【0017】(摘記(1c))に揮発性又は不揮発性の油分を区別することなく列挙する記載があるのみであり、ジメチルポリシロキサンが揮発性油分であることは示唆されないし、本件特許明細書【0034】からもそのことは理解できない。
さらに、処方例1及び3には、デカメチルシクロペンタシロキサンが10質量%、17質量%含有された例が記載されているが、別の成分組成を有する処方例からデカメチルシクロペンタシロキサンのみを適用し、含有量として、ジメチルポリシロキサンのままとする理由は全くない。
したがって、甲1B発明において、甲第1B号証に記載された技術的事項を参酌しても、相違点3-1は容易になし得る技術的事項とはいえない。
また、甲第1B号証【0017】及び【0020】、甲第3B号証【0019】及び【0022】、甲第5B号証【0014】及び実施例8等の記載を参照しても、個々の文献において、含有量に関する記載として、たまたま示されているだけであり、油中水型乳化化粧料において、揮発性油分の含有量を20~50質量%にすることが周知技術であって、甲1B発明において、揮発性油分の含有量を20~50質量%に特定する動機付けがあることにはならない。
ウ また、本件特許発明1においては、表1~4及び図1で結果が示され、本件特許明細書【0010】に記載されるように、本件特許発明1の構成全体により、予測できない、かつ顕著な効果を奏しているといえる。
エ 小括
本件特許発明1は、相違点1-1を検討するまでもなく、甲第1B号証に記載された発明とはいえないし、甲1B発明並びに甲第1B号証、甲第3B号証、及び甲第5号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1をさらに、「(E)揮発性油分」と「(C)ワックスとの配合量比率([(E)/(C)])」、及び「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する」ことで、それぞれ、技術的に限定した水中油型化粧料であるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様に、本件特許発明2及び3と甲1B発明との対比において、少なくとも相違点2-1及び3-1を有し、本件特許発明2及び3は、甲第1B号証に記載された発明とはいえないし、甲第1B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第3B号証、及び甲第5B号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)異議申立理由1B(新規性)及び2B-1(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~3は、甲第1B号証に記載された発明とはいえないし、甲第1B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第3B号証、及び甲第5B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、異議申立理由1B(新規性)及び異議申立理由2B-1(進歩性)には理由がない。
異議申立理由2B-2(進歩性)について
請求項1~3について
(1)本件特許発明1と甲3B発明の対比
本件特許発明1と甲3B発明を対比すると、甲3B発明の「シクロペンタシロキサン」は、本件特許発明1の「揮発性油分」に該当し、甲3B発明の「カンデリラワックス」は、本件特許発明1の「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に該当する。
また、甲3B発明の「ポリグリセロール化鎖を有するシリコーン(Shin-Etsu社のKF 6104)」は、本件特許発明1の「HLB6以下の界面活性剤」と、「界面活性剤」という点で共通している。
そして、甲3B発明は、「ワックス、コポリマーElfacos ST 9および不揮発性油を含む混合物を、透明で均一な混合物が得られるまで90℃まで加熱し、次いで揮発性油、顔料およびフィラーを70℃で攪拌しながら添加し、次いで、水相成分の混合物を70℃まで加熱しながら調製し、水相を70℃で攪拌しながら油相に導入して油中水型エマルションを得て、得られたエマルションを70℃で予熱した深皿に注入し、固形エマルションが得られるまで室温にまで冷却し、20℃で24時間経た時点で測定した硬度が118.2gであり、37℃で1ヶ月間保存した後に測定した硬度が45gを上回る固形ファンデーション」であるから、本件特許発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当するといえる。
したがって、本件特許発明1と甲3B発明とは、「(B)界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(E)揮発性油分;
(F)水を含有する油中水型乳化化粧料。」という点で一致しており、以下の点で相違する。
相違点1-3:本件特許発明1は、「有機変性粘土鉱物」が含有されているのに対して、甲3B発明では、含有されていない点。
相違点2-3:本件特許発明1には、界面活性剤が、「HLB6以下」と特定されているのに対して、甲3B発明では、「HLB6以下」であるかどうか不明である点。
相違点3-3:本件特許発明1は、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」を含有することが特定されているのに対して、甲3B発明においては、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」を含有していない点。
相違点4-3:本件特許発明1は、「20~50質量%の揮発性油分」が含有されることが特定されているのに対して、甲3B発明では、「シクロペンタシロキサン」が製造過程で油相に22.5g含有されていると特定されている点。
(2)判断
相違点1-3から検討する。
ア 3B発明の固形ファンデーションは、摘記(3a)に記載されるように、エステル油とワックスを含む脂肪相中に乳化された水相と、ポリヒドロキシル化鎖を有するシリコーン界面活性剤を含むことを特徴とする油中水型固形エマルションであって、甲第3B号証には、有機変性粘土鉱物を添加することに関し記載も示唆もない。
さらに、甲第1B号証の【0014】及び処方例2、甲第2B号証の実施例13、甲第6B号証の処方D、甲第11B号証の成分の記載を参照しても、個々の文献において、「ジステアルジモニウムヘクトライト」が成分として、たまたま示されているだけであり、油中水型乳化化粧料において、ワックスとともにジステアルジモニウムヘクトライトに代表される有機変性粘土鉱物を配合することが周知技術であって、甲3B発明において、有機変性粘土鉱物を添加する動機付けがあることにはならない。
また、甲第5B号証、甲第7B~10B号証のシリコーンエラストマーに関する記載を参照しても、上記判断に影響はない。
イ また、本件特許発明1においては、表1~4及び図1で結果が示され、本件特許明細書【0010】に記載されるように、本件特許発明1の構成全体により、予測できない、かつ顕著な効果を奏しているといえる。
ウ 小括
本件特許発明1は、相違点2-3~4-3を検討するまでもなく、甲3B発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、甲第11B号証(及び甲第5B号証、甲第7B号証~甲第10B号証)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1をさらに、「(E)揮発性油分」と「(C)ワックスとの配合量比率([(E)/(C)])」、及び「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する」ことで、それぞれ、技術的に限定した水中油型化粧料であるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様に、本件特許発明2及び3と甲3B発明との対比において、少なくとも相違点1-3を有し、本件特許発明2及び3は、甲第3B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、甲第11B号証(及び甲第5B号証、甲第7B号証~甲第10B号証)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)異議申立理由2B-2(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~3は、甲第3B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、及び甲第11B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、異議申立理由2B-2(進歩性)には理由がない。
異議申立理由2B-3(進歩性)について
請求項1~3について
(1)本件特許発明1と甲5B発明の対比
本件特許発明1と甲5B発明を対比すると、甲5B発明の「イソドデカン 3.5質量%」、「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン6.5質量%」及び「ジメチコン(2cs) 8質量」、は、本件特許発明1の「20~50質量%の揮発性油分」に「揮発性油分」という限りにおいて共通しており、甲5B発明の「マイクロクリスタリンワックス」は、本件特許発明1の「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に該当する。
また、甲5B発明の「PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」及び「KSG-210(※1)」([0054]の表の脚注から、
[図:0001416462000004.jpg]
)
は、本件特許発明1の「HLB6以下の界面活性剤」と、「界面活性剤」という点で共通している。
さらに、甲5B発明の「KSG-18A(※4)」は、[0054]の表の脚注から、
[図:0001416462000005.jpg]
であるので、本件特許発明1の「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」と、シリコーンエラストマーという点で共通している。
そして、甲5B発明の「スティック状保湿バーム」は、本件特許明細書[0009][0011][0015]の「スティック状の油中水型乳化化粧料」に関する記載も考慮すると、本件特許発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当するといえる。
したがって、本件特許発明1と甲5B発明とは、「(B)界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)シリコーンエラストマー;
(E)揮発性油分;
(F)水を含有する油中水型乳化化粧料。」という点で一致しており、以下の点で相違する。
相違点1-5:本件特許発明1は、「有機変性粘土鉱物」が含有されているのに対して、甲5B発明では、含有されていない点。
相違点2-5:本件特許発明1には、界面活性剤が、「HLB6以下」と特定されているのに対して、甲5B発明では、「HLB6以下」であるかどうか不明である点。
相違点3-5:シリコーンエラストマーに関して、本件特許発明1は、「(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」を含有することが特定されているのに対して、甲5B発明においては、「PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」及び「
[図:0001416462000006.jpg]
」
を含有するものの、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」を含有していない点。
相違点4-5:本件特許発明1は、「20~50質量%の揮発性油分」が含有されることが特定されているのに対して、甲5B発明では、「イソドデカン 3.5質量%」、「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン6.5質量%」及び「ジメチコン(2cs) 8質量」含有されていると特定されている点。
(2)判断
相違点1-5から検討する。
ア 甲第5B発明のスティック状保湿バームは、摘記(5a)に記載されるように、揮発性流動油分、水、前記揮発性流動油分をゲル化することのできるワックス、シリコーンエラストマー、及びシリコーン系界面活性剤を含有するうるおい補給用スティック状化粧料を具体化したものであって、甲第5B号証には、有機変性粘土鉱物を添加することに関し記載も示唆もない。
さらに、甲第1B号証の【0014】及び処方例2、甲第2B号証の実施例13、甲第6B号証の処方D、甲第11B号証の成分の記載を参照しても、個々の文献において、「ジステアルジモニウムヘクトライト」が成分として、たまたま示されているだけであり、油中水型乳化化粧料において、ワックスとともにジステアルジモニウムヘクトライトに代表される有機変性粘土鉱物を配合することが周知技術であって、甲5B発明において、有機変性粘土鉱物を添加する動機付けがあることにはならない。
イ また、本件特許発明1においては、表1~4及び図1で結果が示され、本件特許明細書【0010】に記載されるように、本件特許発明1の構成全体により、予測できない、かつ顕著な効果を奏しているといえる。
ウ 小括
本件特許発明1は、相違点2-5~4-5を検討するまでもなく、甲5B発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、及び甲第11B号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1をさらに、「(E)揮発性油分」と「(C)ワックスとの配合量比率([(E)/(C)])」、及び「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する」ことで、それぞれ、技術的に限定した水中油型化粧料であるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様に、本件特許発明2及び3と甲5B発明との対比において、少なくとも相違点1-5を有し、本件特許発明2及び3は、甲第5B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、及び甲第11B号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)また、甲5B号証に記載された発明として、請求項1に係る発明又は実施例8に係る発明を認定した場合にも、本件特許発明1~3との対比において、少なくとも上記相違点1-5を有し、本件特許発明1~3は、甲第5B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、及び甲第11B号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)異議申立理由2B-3(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~3は、甲第5B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第2B号証、甲第6B号証、及び甲第11B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、異議申立理由2B-3(進歩性)には理由がない。
異議申立理由2B-4(進歩性)について
請求項1~3について
(1)本件特許発明1と甲11B発明の対比
本件特許発明1と甲11B発明を対比すると、甲11B発明の「ジステアルジモニウムヘクトライト」は、本件特許発明1の「有機変性粘土鉱物」に相当し、甲11B発明の「PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」は、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤であるので、本件特許発明1の「HLB6以下の界面活性剤」と、「界面活性剤」という点で共通している。
また、甲11B発明の「セレシン」は、本件特許発明1の「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
さらに、甲11B発明の「ポリシリーン11」は、本件特許発明1の「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー」に相当する。
そして、甲11B発明の「コンシーラー」は、本件特許発明1の「油中水型乳化化粧料」と「化粧料」という点で共通している。
したがって、本件特許発明1と甲11B発明とは、「(A)有機変性粘土鉱物;
(B)界面活性剤;
(C)セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択されるシリコーンエラストマー;
(F)水を含有する化粧料。」という点で一致しており、以下の点で相違する。
相違点1-11:本件特許発明1には、界面活性剤が、「HLB6以下」と特定されているのに対して、甲11B発明では、「HLB6以下」であるかどうか不明である点。
相違点2-11:本件特許発明1は、「20~50質量%の揮発性油分」が含有されることが特定されているのに対して、甲11B発明では、揮発性油分が含有されていること、及びその含有量が不明である点。
相違点3-11:本件特許発明は、「油中水型乳化化粧料」であるのに対して、甲11B発明は、「コンシーラー」である点。
(2)判断
事情に鑑み、相違点2-11から検討する。
ア 相違点2-11に関し、本件特許発明1においては、揮発性油分の含有量が、「20~50質量%」であることが特定されているが、甲第11B号証においては、商品情報として成分の羅列記載があるだけで各成分の含有量の記載はなく、揮発性油分及びその含有量に関して記載がない。
また、甲11B発明においては、メチルトリメチコンが成分として含有されることが記載されるものの、メチルトリメチコンが揮発性油分であることは示唆されないし、本件特許明細書【0034】からもそのことは理解できない。
また、甲第1B号証【0017】及び【0020】、甲第3B号証【0019】及び【0022】、甲第5B号証【0014】及び実施例8等の記載を参照しても、個々の文献において、含有量に関する記載として、たまたま示されているだけであり、油中水型乳化化粧料において、揮発性油分の含有量を20~50質量%にすることが周知技術であって、甲11B発明において、揮発性油分の含有量を20~50質量%に特定する動機付けがあることにはらない。
したがって、甲11B発明において、相違点2-11は容易になし得る技術的事項とはいえない。
イ また、本件特許発明1においては、表1~4及び図1で結果が示され、本件特許明細書【0010】に記載されるように、本件特許発明1の構成全体により、予測できない、かつ顕著な効果を奏しているといえる。
ウ 小括
本件特許発明1は、相違点1-11及び3-11を検討するまでもなく、甲11B発明並びに甲第1B号証、甲第3B号証、及び甲第5号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)異議申立理由2B-3(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第11B号証に記載された発明並びに甲第1B号証、甲第3B号証、及び甲第5号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、異議申立理由2B-3(進歩性)には理由がない。
III 特許異議申立人の異議申立書の主張について
1 特許異議申立人Aの意見書における主張について
(1)特許異議申立人Aは意見書1~2頁において、シリコーンエラストマーの選択肢のうち化粧品表示名称検索において該当しないものが含まれているため不明確である旨主張しているが、本件訂正によって、検索されない選択肢は削除されたので、上記主張は採用できない。
(2)特許異議申立人Aは意見書3頁において、甲第3号証に(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーが含まれていることが記載されているので、新規性欠如の理由がある旨主張しているが、前記IIの「1 異議申立理由1A(公然実施)について」で述べたとおり、甲第3号証に関する「イオナヴィーリペアバーム」を公然実施発明ということはできないし、仮に実施発明として認定したとしても、本件特許発明1との間に実質的相違点があり、新規性欠如の理由があるとはいえないので、上記主張は採用できない。
2 特許異議申立人Bの意見書における主張について
(1)特許異議申立人Bは意見書4~6頁において、「(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー」化粧品表示名称として存在しない点、「ポリシリコーン-11」の具体的内容が構造として不明確であるとともに、溶媒との混合物を実施例で含有量を記載しているのか、「(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー」は、シリカで被覆した球状粉体を含むのかという点で不明確である旨主張している。
しかしながら、前記「I 取消理由(決定の予告)の判断」「1 理由1(明確性要件)について」の(2)ア~ウで述べたとおり、「(ジメチコン/フェニルジビニルメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー」は、本件訂正により削除され、「ポリシリコーン-11」は、特許権者の提出した参考資料1~3、5、及び6を考慮すると、定義が最終的な化学構造を明確に示していない、製造するための出発原料による定義であるからといって、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確であるとはいえないこと、「ポリシリコーン-11」は実施例において溶媒を含む含有量で記載されていないこと、本件特許発明の「(D)シリコーンエラストマー」には、「シリカ被覆されたシリコーンエラストマー粉末」は、含まれないことが記載から合理性があり、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確とはいえないことから、上記主張は採用できない。
(2)特許異議申立人Bは意見書2~3頁において、シリコーンエラストマーの選択肢が具体的に特定されても、甲第5B号証【0022】にシリコーンエラストマーの例示の記載があることを挙げ、甲第11B号証には、「ポリシリコーン-11」が記載されていることから進歩性を欠如していることに変わりがないことや、実施例に記載されているシリコーンエラストマー以外はサポート要件違反である旨の主張をしている。
しかしながら、本件特許発明と甲5B発明又は甲11B発明との間には、別の相違点がある上に、相違点を変更する動機付けがないことは上述のとおりであるから、上記進歩性欠如の主張を採用できない。
また、一部のシリコーンエラストマーの場合の実施例がないからといって、他のシリコーンエラストマーの場合の実施例の記載やシリコーンエラストマーに関する一般的記載や本件特許出願時の技術常識も参酌すれば、本件特許明細書の【0007】等に記載された本件特許発明の課題が一定程度解決できることを当業者が認識できるといえるので、上記サポート要件違反の主張も採用できない。
IV まとめ
本件特許発明1は、甲第3A号証及び甲第4A号証を参照しても、甲第3A号証及び甲第4A号証に関する商品で、本件特許出願前に販売され、日本国内又は外国において公然実施された発明であるとはいえないので、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえず、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
本件特許発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1A号証に記載された発明及び本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2A号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえず、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
また、本件特許発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10B号証を参照しても、本件特許出願前に日本国内又は外国で頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B号証に記載された発明であるとはいえないので、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない
そして、本件特許発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B号証に記載された発明及び本件特許出願前に日本国内又は外国で頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B~5B号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえず、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
また、本件特許発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5B号証に記載された発明及び本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B、2B、及び6B号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえず、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
さらに、本件特許発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3B号証に記載された発明及び本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B、2B、及び6B号証に記載された技術的事項、並びに甲第3B、7B~10B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
そして、本件特許発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第11B号証に記載された発明及び本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1B、3B、及び5B号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1~3に係る特許に関して、請求項1~3に係る発明は、明確であり、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合し、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、請求項4に係る特許に関して、請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるので、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合し、本件特許の請求項4に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
そして、請求項4に係る特許に関して、その発明の詳細な説明の記載が請求項4に係る発明を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に適合し、本件特許の請求項4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1~3に係る発明の特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
そして、請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
また、ほかに本件請求項1~3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700964