特許異議申立
2021-701135
環化重合性モノマーを含有する3Dプリント用インク
- 審判番号
- 2021-701135
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-540414
- 登録番号
- 6880201
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2022年09月12日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
- 【権利者代理人】樋口 洋
- 【異議申立人】下河 あい
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 奥田 雄介
- 分類
- P1651.536-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6880201号発明「環化重合性モノマーを含有する3Dプリント用インク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6880201号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第6880201号の請求項1ないし13、15に係る特許を維持する。
特許第6880201号の請求項14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6880201号(請求項の数は15。以下、「本件特許」という。)についての出願は、2018年(平成30年)1月31日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2017年2月1日 アメリカ合衆国、2017年10月18日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願に係るものであって、令和3年5月7日にその特許権の設定登録がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人 下河あい(以下、「申立人」という。)により、令和3年12月2日に、請求項1~15に係る本件特許について、特許異議の申立てがされ、令和4年3月4日付けで取消理由が通知され、同年6月8日に特許権者 スリーディー システムズ インコーポレーテッド(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月16日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年7月22日に申立人より意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において「前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマーを含み」と記載されているのを、「前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、10~80質量%のオリゴマー硬化性材料、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、
前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13、15も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクのアクリレート含有種を重合させることを主に含み」と記載されているのを、「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13、15も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において「環重合させる」と記載されているのを、「環化重合させる」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13、15も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項2において「前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマーを含み」と記載されているのを、「前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、10~80質量%のオリゴマー硬化性材料、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、
前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み」に訂正する。請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13、15も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項2において「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクのアクリレート含有種を重合させることを主に含み」と記載されているのを、「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み」に訂正する。請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13、15も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項2において「環重合させる」と記載されているのを、「環化重合させる」に訂正する。請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13、15も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項15において「請求項14に記載の方法。」と記載されているのを、「請求項1又は2に記載の方法。」に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項3において「請求項1または2」と記載されているのを、「請求項1又は2」に訂正する。
(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「いずれか1項」と記載されているのを、「いずれか一項」に訂正する。
なお、請求項1ないし15について、請求項3ないし15はそれぞれ請求項1又は2を直接または間接的に引用するものであるから、請求項1ないし15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、インクの組成についてより詳細に特定するものであるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0035】、【0041】、【0044】及び特許請求の範囲の請求項14の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項3~13、15についても同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項1の訂正は、インクを部分的に硬化させる重合に関わる化学種についてより具体的に特定するものであるから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0011】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項3~13、15についても同様である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項1の訂正は、「環重合」との記載を「環化重合」に訂正するものであるから、訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0011】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項3~13、15についても同様である。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項2の訂正は、インクの組成についてより詳細に特定するものであるから、訂正事項4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項4に係る請求項2の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0035】、【0041】、【0044】及び特許請求の範囲の請求項14の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項2を直接または間接的に引用する請求項3~13、15についても同様である。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る請求項2の訂正は、インクを部分的に硬化させる重合に関わる化学種についてより具体的に特定するものであるから、訂正事項5は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項5に係る請求項2の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0011】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項2を直接または間接的に引用する請求項3~13、15についても同様である。
(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る請求項2の訂正は、「環重合」との記載を「環化重合」に訂正するものであるから、訂正事項6は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項6に係る請求項2の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0011】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項2を直接または間接的に引用する請求項3~13、15についても同様である。
(7)訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項14の訂正は、請求項14の記載を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項7に係る請求項14の訂正が、新規事項の追加に該当しないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(8)訂正事項8について
訂正事項8に係る請求項15の訂正は、訂正事項1、4、7に伴って引用関係を訂正するものであり、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項8に係る請求項15の訂正が、新規事項の追加に該当しないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(9)訂正事項9について
訂正事項9に係る請求項3の訂正は、記載の統一を図るものであり、「誤記の訂正」を目的とするものである。
そして、訂正事項9に係る請求項3の訂正が、新規事項の追加に該当しないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(10)訂正事項10について
訂正事項10に係る請求項5の訂正は、記載の統一を図るものであり、「誤記の訂正」を目的とするものである。
そして、訂正事項10に係る請求項5の訂正が、新規事項の追加に該当しないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-15]について訂正することを認める。
第3 本件特許
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、「本件発明1」のようにいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
三次元物品をプリントする方法であって、
三次元物品を形成するために流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させること;
全てのインクの層の堆積が完了する前に、前記インクを部分的に硬化させること;及び
全てのインクの層の堆積が完了した後に、前記インクを後硬化させること
を含み、
前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、10~80質量%のオリゴマー硬化性材料、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、
前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、
前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有し、
インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、
部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む、方法。
【請求項2】
三次元物品をプリントする方法であって、
流体状態のインクを容器内に保持する工程;
前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、前記インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成する工程;
前記第1の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供する工程;
前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、前記インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程であって、前記第1の断面と第2の断面とがz方向に互いに結合される工程;及び
三次元物品の形成の後に、前記三次元物品を後硬化させる工程
を含み、
前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程が、インクを部分的に硬化させることを含み、
前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、10~80質量%のオリゴマー硬化性材料、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、
前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、
前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有し、
インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、
部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む、方法。
【請求項3】
後硬化に用いられる光源が、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
後硬化に水銀ランプが用いられ、かつ部分的硬化にキセノンアークランプが用いられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記環化重合性モノマーが、インクの総質量に基づき、20~40質量%の量でインク中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素が、1,5-の関係を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素が、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記環化重合性モノマーが式(I)の構造を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法:
【化1】
[図:0001395189000001.jpg]
式中、
Xは、O、S、NH、NR5、又はCR5R6であり;
R1は、H、又は1~10の炭素原子を有する炭化水素基であり;
R2は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
R3は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
R4は
[図:0001395189000002.jpg]
であり;
R5は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;
R6は1~4の炭素原子を有する炭化水素基であり;及び
R2及びR3の炭素原子の総数は5を超えない。
【請求項9】
XがOである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Xが、S、NH、NR5、又はCR5R6である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
R2及びR3の炭素原子の総数が3を超えない、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R2及びR3の炭素原子の総数が2である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記環化重合性モノマーが式(II)の構造を有する、請求項8に記載の方法。
【化2】
[図:0001395189000003.jpg]
【請求項14】(削除)
【請求項15】
前記インクが、少なくとも1つの光開始剤、少なくとも1つの着色剤、又は禁止剤及び安定剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
第4 特許異議申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(実施可能要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(進歩性)
本件特許の請求項1~15に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 証拠方法
甲第1号証:「UV・EB硬化技術の最新応用展開―3Dプリンターから住環境まで―」 株式会社シーエムシー出版、2014年7月7日
甲第2号証:「Cyclopolymerization. 25. Five-Membered Ring Formation through Head-to-Head and Tail-to-Tail Additions in Radical and Anionic Polymerizations of α-(Allyloxymethyl)acrylates」、Macromolecules、1999年、第32巻、 p.322-327
甲第2号証-1:甲第2号証の日本語部分翻訳
甲第3号証:ウィキペディア「キセノンランプ」<URL:https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=キセノンランプ&oldid=62164274、2016年12月3日時点の版、2021年11月30日印刷
甲第4号証:国際公開第2016/143559号
甲第5号証:特開2016-4165号公報
甲第6号証:特開2011-137123号公報
甲第7号証:ウィキペディア「プレキュア」<URL: https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=プレキュア&oldid=62506976、2017年1月2日時点の版、2021年11月30日印刷
また、特許異議申立人は、令和4年7月22日に提出した意見書とあわせて、次の甲第8号証を提出している。
甲第8号証:「光硬化性樹脂の硬化度と硬化挙動の評価」、成形加工、第19巻 第2号(2007)、第68-74頁
なお、証拠の表記については、特許異議申立書及び上記意見書における記載におおむね従った。以下、甲第1~8号証を「甲1」~「甲8」のようにいう。
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が令和4年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりであって、申立人の申立理由1と同旨である。
・取消理由(実施可能要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 取消理由(実施可能要件)について
(1)判断基準
製造方法の発明において、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その製造方法を使用し、その製造方法により生産した物を使用することができる程度の記載があることを要する。
これを踏まえ、以下検討する。
(2)発明の詳細な説明の記載
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。以下同様。
・「【0005】
3Dプリントシステム用インクを使用して、上記の様式での使用を含めて、様々な用途のための様々な物品を形成することができる。しかしながら、優れた機械的特性を有する物品を形成することができるインクに対する非常に高い需要がある。例えば、熱可塑性材料から形成した物品と同様の機械的特性を有する物品を形成することができるインクに対する高い需要がある。
【0006】
従来のアクリレートを含有する3Dプリントシステム用インクを用いて非常に良好な解像度で物品をプリントできるが、得られる物品はしばしば、硬く、脆弱であり、又は柔軟であるが壊れやすいものとなる。そのような物品の耐衝撃性は、一部の他の物品と比較して特に低いものとなり得る。従って、改善された機械的特性を有する物品を形成する、3Dプリント用の改善されたアクリレート含有インクに対する要求が存在する。特に、熱可塑性材料から形成される物品が示す機械的特性に近い機械的特性を有する物品を製造するアクリレート含有インクに対する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、一部の実施形態では、従来のアクリレート含有インクを超える1つ以上の利点をもたらし得る、3Dプリンタと共に使用するためのインクを本明細書に記載する。例えば、本明細書に記載のインクを用いて、従来のアクリレート含有インクを用いてプリントしたものと比較して、耐衝撃性の改善を含めて、改善された機械的特性を有する物品をプリントすることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクを用いてプリントした物品は、従来のアクリレート含有インクを用いてプリントした物品と比較して、改善された引張弾性率、引張強度、及び/又は伸びも有する。加えて、一部の例では、本明細書に記載のインクは、従来のアクリレート含有インクと比較して、低減された粘度を有する。結果として、本明細書に記載のインクを、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセシング(DLP)、及びマルチジェットプリンティング(Multi-Jet Printing)(MJP)に基づく3Dプリンタなど、様々な異なる3Dプリンタで使用することができる。さらに、少なくとも部分的にはその低減された粘度により、本明細書に記載のインクは容易かつ迅速にプリントすることもできる。」
・「【0011】
別の態様では、上記のインクのいずれかを使用して3D物品をプリントする方法を本明細書に記載する。一部の例では、例えば、そのような方法は、流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させることを含む。さらには、一部の実施形態では、全てのインクの層の堆積が完了する前に、そのインクを部分的に硬化させる。部分的に硬化させることは、アクリレート重合を介して、環化重合性モノマーのアクリレート部分及び/又はインクの他のアクリレート含有種を重合させることを主に含む。加えて、一部の例では、全てのインクの層の堆積の完了に続いて、インクを後硬化させる。後硬化は、一部の実施形態では、インクの環化重合性モノマーのアクリレート部分と、エテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含む。さらに、一部の例では、部分的硬化及び後硬化はそれぞれ、光硬化、すなわち、光源を用いて硬化させることを含む。さらには、一部の実施形態では、後硬化に用いられる光源は、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有する。例えば、一部の例では、後硬化に用いられる光源は水銀ランプであってよく、部分的硬化に用いられる光源はキセノンアークランプであってよい。
【0012】
本明細書に記載される3D物品をプリントする別の方法において、その方法は、流体状態の本明細書に記載のインクを容器内に保持する工程、及び前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって、物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成する工程を含む。そのような方法は、第1の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供する工程、及び、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程をさらに含んでいてよく、前記第1の断面と第2の断面は、z方向に互いに結合している。下記にてさらに説明するように、前述の工程を、3D物品を完成するのに必要な所望の回数だけ繰り返してよい。さらには、一部の例では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程は、インクを部分的に硬化させることを含む。インクを部分的に硬化させることは、アクリレート重合を介して、環化重合性モノマーのアクリレート部分及び/又はインクの1つの又は他の追加のアクリレート含有種を重合させることを主に含み得る。加えて、一部の例では、記載の方法は、3D物品を、その形成に続いて後硬化することをさらに含む。後硬化は、一部の例では、インクの環化重合性モノマーのアクリレート部分と、エテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み得る。さらに、部分的硬化及び後硬化はそれぞれ、光硬化を含み得る。一部のそのような例では、後硬化に用いられる光源は、部分的硬化に用いられる光源よりも高いエネルギーを有し得る。例えば、水銀(Hg)ランプを後硬化のために用いてよく、またキセノンアークランプを部分的硬化のために用いてよい。」
・「【0021】
I.3Dプリント用インク
1つの態様では、3Dプリンタと共に使用するためのインクを本明細書に記載する。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、環化重合性モノマーを含む。加えて、本明細書に記載のインクは、一部の例では、以下の1つ以上をさらに含む:オリゴマー硬化性材料;追加のモノマー硬化性材料;少なくとも1つの光開始剤;少なくとも1つの着色剤;並びに、禁止剤及び安定剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤。
【0022】
次に、インクの具体的成分について検討するとして、本明細書に記載のインクは、環化重合性モノマーを含む。環化重合性モノマーは、アクリレート部分、及びエテニル又はエチニル部分を含む。一部の実施形態では、エテニル部分は、ビニル部分、アリル部分、又は(メタ)アクリレート部分であってよく、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレート、或いはその混合物又は組合せを含む。エチニル部分は、一部の実施形態では、アセチレンエチン基又はプロパルギル基である。さらに、アクリレート部分のα-炭素と、エテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有する。理論に拘束されることを意図するものではないが、そのようなモノマーは、環化重合を介して硬化又は重合させることができると考えられる。例えば、モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させて、5、6、7、又は8員環を形成することができる。本明細書に記載の例示的な環化重合性モノマーの環化重合を図1に示す。理論に拘束されることを意図することなく、この環化重合は、特に他のアクリレート含有インクと比較した場合に本明細書に記載のインクを用いて3Dプリントした物品でみられる機械的性質の改善に少なくとも部分的に寄与し得ると考えられる。さらには、再度理論に拘束されることを意図するものではないが、本明細書に記載の環化重合性モノマーは、アクリレート重合を介して重合又は硬化させることもでき、この第2の重合又は硬化経路の存在は、本明細書に記載の環化重合性モノマーを含有するインクから形成される物品の特性をさらに改善し得ると考えられる。この第2の重合又は硬化経路も図1に示す。」
・「【0039】
本明細書に記載の一部の実施形態で有用である市販のオリゴマー硬化性材料のいくつかの非限定的な例として、以下のものが挙げられる:SARTOMER社がSR 611という商品名で市販している、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;RAHN USA社がGENOMER 1122という商品名で市販している、単官能性ウレタンアクリレート;ALLNEX社がEBECRYL 8402という商品名で市販している、脂肪族ウレタンジアクリレート;DYMAX社がBR-952という商品名で市販している、多官能性アクリレートオリゴマー;DYMAX社がBR-371Sという商品名で市販している、脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート;及びDYMAX社がBR-541MBという商品名で市販している、脂肪族ポリエーテルウレタンメタクリレート。他の市販のオリゴマー硬化性材料も使用できる。」
・「【0043】
本明細書に記載の一部の実施形態で追加のモノマー硬化性材料として有用である市販のモノマー硬化性材料の追加の非限定的な例として以下のものが挙げられる:SARTOMER社がSR 506という商品名で市販している、イソボルニルアクリレート(IBOA);SARTOMER社がSR 423Aという商品名で市販している、イソボルニルメタクリレート;SARTOMER社がSR 272という商品名で市販している、トリエチレングリコールジアクリレート;SARTOMER社がSR 205という商品名で市販している、トリエチレングリコールジメタクリレート;SARTOMER社がSR 833Sという商品名で市販している、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;SARTOMER社がSR 368という商品名で市販している、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;SARTOMER社がSR 339という商品名で市販している、2-フェノキシエチルアクリレート;SARTOMER社がSR 349という商品名で市販している、エトキシル化(3モル)ビスフェノールAジアクリレート;RAHN USA社がGENOMER 1120という商品名で市販している、環式単官能アクリレート;及びSARTOMER社がSR 399LVという商品名で市販している、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート。他の市販のモノマー硬化性材料も使用できる。」
・「【0067】
II.3D物品をプリントする方法
別の態様では、3D物品又は物体をプリントする方法を本明細書に記載する。本明細書に記載の3D物品又は物体をプリントする方法は、層ごとの様式で、本明細書に記載のインクの複数の層から3D物品を形成することを含み得る。上記セクションIに記載のいずれのインクを用いてもよい。例えば、一部の例では、インクは、インクの総質量に基づき、10~70又は20~40質量%の上記セクションIに記載の環化重合性モノマーを含む。加えて、一部の実施形態では、インクは、30℃で1,600cp以下又は500cp以下の動的粘度を有する。さらに、3D物品のコンピュータ可読形式の画像に従って、インクの層を堆積させることができる。一部の実施形態では、予め選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータに従って、インクを堆積させる。さらには、一部の例では、本明細書に記載のインクの1つ以上の層は、約10μm~約100μm、約10μm~約80μm、約10μm~約50μm、約20μm~約100μm、約20μm~約80μm、又は約20μm~約40μmの厚さを有する。他の厚さも可能である。
【0068】
加えて、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法には、例えば、MJP又はSLAの3Dプリント方法が含まれ得ると解されたい。例えば、一部の例では、3D物品をプリントするMJP法は、3Dプリントシステムの造形パッドなどの基体上に、流体状態の本明細書に記載のインクの層を選択的に堆積させることを含む。加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つ以上のインクの層のうちの少なくとも1つの層を支持材料で支持することをさらに含む。本開示の目的と矛盾しないいずれの支持材料も使用できる。
【0069】
本明細書に記載の方法は、インクの層を硬化させる工程を含んでいてよい。例えば、一部の例では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、インクを硬化させるのに十分な波長及び強さの電磁放射線にインクを曝すことをさらに含み、硬化は、インクの1つ以上の成分の1つ以上の重合性部分又は官能基を重合させることを含み得る。一部の例では、堆積されたインクの層を、別の又は隣接するインクの層の堆積の前に硬化させる。加えて、堆積されたインクの1つ以上の層を硬化させる工程は、一部の実施形態では、その1つ以上の層を、例えば紫外(UV)線、可視光線、又は赤外線などの電磁放射線に曝すことにより行われる。
【0070】
「材料堆積」法(MJPなど)又は「バット重合」法(SLAなど)を含めて、様々な方法に関するさらなる詳細を以下に提供する。」
・「【0071】
A.材料堆積法
材料堆積法では、本明細書に記載のインクの1つ以上の層を基体上に選択的に堆積させ、さらに硬化させる。インクの硬化は、インクの1つの層、各層、いくつかの層、又は全ての層の選択的堆積の後に生じ得る。
【0072】
一部の例では、本明細書に記載のインクを、3Dプリントシステムの造形パッドなどの基体上に、流体状態で選択的に堆積させる。選択的堆積には、例えば、事前に選択されたCADパラメータに従ってインクを堆積させることが含まれ得る。例えば、一部の実施形態では、プリントすべき所望の3D物品に対応するCADファイルの図面を作製し、十分な数の水平スライスにスライスする。その後、CADファイルの図面の水平スライスに従って、層ごとにインクを選択的に堆積させて所望の3D物品をプリントする。「十分な」数の水平スライスは、例えば正確かつ精密にそれを製造するために、所望の3D物品をうまくプリントするのに必要な数である。
【0073】
さらに、一部の実施形態では、事前に選択された量の本明細書に記載のインクを、適切な温度に加熱し、適切なインクジェットプリンタの1つ又は複数のプリントヘッドを通して噴射させて、プリントチャンバ内のプリントパッド上に層を形成する。一部の例では、事前に選択されたCADパラメータに従ってインクの各層を堆積させる。インクを堆積させるための適切なプリントヘッドは、一部の実施形態では、圧電プリントヘッドである。本明細書に記載のインク及び支持材料の堆積に適したさらなるプリントヘッドは、様々なインクジェットプリント装置製造メーカーから市販されている。例えば、Xerox、Hewlett Packard、又はRicohのプリントヘッドを一部の例で使用し得る。
【0074】
加えて、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、堆積した際に実質的に流体のままである。或いは、他の例では、インクは、堆積してすぐに相変化を示す、及び/又は、堆積してすぐに固化する。さらには、一部の例では、プリント環境の温度を、インクの噴射された液滴が受容面と接触すると固化するように制御し得る。他の実施形態では、インクの噴射された液滴は、受容面と接触しても固化せず、実質的に流体状態のままである。加えて、一部の例では、各層が堆積された後、堆積された材料は、次の層の堆積前に、電磁放射線(例えば、UV線、可視光線又は赤外線)を用いて平坦化及び硬化される。任意選択で、平坦化及び硬化の前に、いくつかの層を堆積させてもよく、或いは、多数の層を堆積及び硬化させた後に、1つ以上の層を堆積させ、その後硬化させずに平坦化してもよい。平坦化により、分配された材料を平らにして過剰な材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一に滑らかな露出した面又は平坦な上向きの面を作り出すことによって、材料の硬化前に1つ以上の層の厚さを補正する。一部の実施形態では、平坦化は、1つ以上のプリント方向において逆回転し得るが、1つ以上の他のプリント方向においては逆回転しないローラなどの、ワイパ装置を用いて達成される。一部の例では、ワイパ装置は、ローラと、ローラから過剰の材料を除去するワイパとを備える。さらに、一部の例では、ワイパ装置は加熱される。硬化前の本明細書に記載の噴射されたインクの粘稠度は、一部の実施形態では、その形状を保持するのに十分であり、かつ平坦化装置からの過剰な粘性抵抗に曝されないことが望ましいことに留意されたい。
【0075】
さらには、支持材料は、使用する場合には、インクについて上述した様式に準拠する様式で堆積され得る。支持材料は、例えば、支持材料がインクの1つ以上の層に隣接又は連続するように、事前に選択されたCADパラメータに従って堆積され得る。支持材料の噴射された液滴は、一部の実施形態では、受容面と接触すると固化又は凝固する。一部の例では、堆積された支持材料もまた平坦化、硬化、又は平坦化及び硬化を受ける。本開示の目的と矛盾しないあらゆる支持材料を使用することができる。
【0076】
インク及び支持材料の層状の堆積を、3D物品が形成されるまで繰り返してよい。一部の実施形態では、3D物品をプリントする方法は、インクから支持材料を除去する工程をさらに含む。
【0077】
インクの硬化は、1つのインクの層、各インクの層、いくつかのインクの層、又は所望の3D物品をプリントするのに必要な全てのインクの層の選択的堆積の後に生じ得る。一部の実施形態では、堆積されたインクの部分的硬化は、1つのインクの層、各インクの層、いくつかのインクの層、又は所望の3D物品をプリントするのに必要な全てのインクの層の選択的堆積の後に行われる。「部分的に硬化された」インクは、本明細書における参照目的のために、更なる硬化を受けることができるものである。例えば、部分的に硬化されたインクは、約30%まで重合又は架橋されている、或いは約50%まで重合又は架橋されている。一部の実施形態では、部分的に硬化されたインクは、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、又は約95%まで重合又は架橋されている。
【0078】
一部の実施形態では、堆積されたインクの部分的硬化は、電磁放射線源を用いてインクに照射する、又はインクを光硬化することを含み得る。例えば、UV線、可視光線、又は赤外線を放射する電磁放射線源など、本開示の目的と矛盾しないあらゆる電磁放射線源を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、例えばキセノン(Xe)アークランプなど、約300nm~約900nmの波長を有する光を放射するものであってよい。
【0079】
さらには、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクの部分的硬化は、(メタ)アクリレート重合を介して、環化重合性モノマーのアクリレート部分を重合させること及び/又はインクの1つ上の他の(メタ)アクリレート含有種を重合させることを含む。一部の例では、部分的硬化は主にそのような(メタ)アクリレート重合を含む。例えば、一部の例では、重合の50%超、60%超、又は70%超が、例えばインクのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分の環化重合などの他の重合経路を介するのではなく、アクリレート重合を介して生じる。所望の3D物品の構築中に実施される部分的硬化中に、(メタ)アクリレート重合経路以外の経路を介して一部の重合が生じても又は全く生じなくてもよい。
【0080】
さらに、一部の実施形態では、部分的硬化が行われた後に、後硬化が行われる。例えば、一部の例では、後硬化は、所望の3D物品を形成するのに必要な全てのインクの層を選択的に堆積させた後、全てのインクの層を部分的に硬化させた後、或いは前記の工程の両方を実施した後に、実施される。さらには、一部の実施形態では、後硬化は光硬化を含む。本開示の目的と矛盾しないあらゆる電磁放射線源を、本明細書に記載の後硬化工程に使用してよい。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、部分的硬化に使用される電磁放射線源よりも高いエネルギー、低いエネルギー、又はそれと同じエネルギーを有する光源であってよい。後硬化に用いられる電磁放射線源が部分的硬化に使用されるものよりも高いエネルギー(すなわち、より短い波長)を有する一部の例では、キセノン(Xe)アークランプを部分的硬化に使用することができ、水銀(Hg)ランプを後硬化に使用することができる。
【0081】
加えて、一部の例では、本明細書に記載のインクの堆積された層の後硬化は、インクの環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分との環化重合を含む。一部の例では、後硬化は主にそのような環化重合を含む。例えば、一部の実施形態では、後硬化中の重合の50%超、60%超、又は70%超が、例えば(メタ)アクリレート重合を介するなどの他の経路によるものではなく、環化重合を介して生じる。後硬化中に、本明細書に記載の環化重合以外の経路を介して一部の重合が生じても又は全く生じなくてもよい。
【0082】
加えて、後重合の後に、一部の例では、堆積されたインクの層は、少なくとも約80%が重合又は架橋されている、或いは少なくとも約85%が重合又は架橋されている。一部の実施形態では、堆積されたインクの層は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%が重合又は架橋される。一部の例では、堆積されたインクの層は、約80~100%、約80~99%、約80~95%、約85~100%、約85~99%、約85~95%、約90~100%、又は約90~99%が重合又は架橋される。」
・「【0083】
B.バット重合法
SLA法などのバット重合法を用いて、本明細書に記載のインクから3D物品を形成することも可能である。従って、一部の例では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載のインクを流体状態で容器内に保持する工程、及び容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの流体層の少なくとも一部を固化し、それによって、3D物品の断面を画成する固化層を形成する工程を含む。加えて、本明細書に記載の方法は、インクの固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面に未固化インクの新しい又は第2の流体層を提供し、続いて、容器内のインクにエネルギーを再び選択的に印加し、インクの新しい又は第2の流体層の少なくとも一部を固化して、3D物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程をさらに含み得る。さらに、インクを固化するためにエネルギーを印加することによって、3D物品の第1及び第2の断面を、z方向(又は、上記の上昇又は降下方向に対応する造形方向)に互いに結合又は接着させることができる。さらには、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程は、インクを硬化させるのに十分なエネルギーを有する電磁放射線を印加することを含み得る。一部の例では、電磁放射線は、300~900nmの平均波長を有し、他の実施形態では、電磁放射線は、300nm未満の平均波長を有する。一部の例では、硬化放射は、コンピュータ制御されたレーザ光線によって提供される。加えて、一部の例では、インクの固化層を上昇又は降下させる工程は、流体インクの容器内に配置された昇降プラットフォームを使用して行われる。本明細書に記載の方法はまた、昇降プラットフォームを上昇又は降下させることによってもたらされる流体インクの新しい層を平坦化する工程も含み得る。このような平坦化は、一部の例では、ワイパ又はローラによって行うことができる。
【0084】
3D物品を提供するために、前述のプロセスを所望の回数だけ繰り返してよいことをさらに理解されたい。例えば、一部の例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができ、ここで、nは、約100,000まで、約50,000まで、約10,000まで、約5000まで、約1000まで、又は約500までであってよい。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクのn番目の流体層の少なくとも一部を固化し、それによって、3D物品のn番目の断面を画成するn番目の固化層を形成する工程、インクのn番目の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+1)番目の層を提供する工程、容器内のインクの(n+1)番目の層にエネルギーを選択的に印加して、インクの(n+1)番目の層の少なくとも一部を固化して、3D物品の(n+1)番目の断面を画成する(n+1)番目の固化層を形成する工程、インクの(n+1)番目の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+2)番目の層を提供する工程、及び、前述の工程の繰返しを続けて3D物品を形成する工程を含み得る。さらに、インクの層にエネルギーを選択的に印加する工程など、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程を、コンピュータ可読フォーマットにある3D物品の画像に従って行うことができることを理解されたい。ステレオリソグラフィを使用する3Dプリントの一般的な方法は、特に、米国特許第5,904,889号及び同第6,558,606号にさらに記載されている。
【0085】
上述のプリントプロセスを行うことにより、高い特徴解像度を有する本明細書に記載のインクからプリントされた3D物品を提供することができる。本明細書での参照目的のために、物品の「特徴解像度(feature resolution)」とは、物品の制御可能な物理的特徴の最小寸法であり得る。物品の特徴解像度は、マイクロメートル(μm)などの距離の単位、又は、1インチ当たりのドット数(dpi)を単位として記載することができる。当業者に理解されるように、より高い特徴解像度は、より高いdpi値に相当し、またμmでのより短い距離に相当する。一部の例では、本明細書に記載のインクを堆積又は固化することによって形成される物品は、高温での解像度を含めて、約500μm以下、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下の特徴解像度を有し得る。一部の実施形態では、物品は、約50μmと約500μmの間、約50μmと約200μmの間、約50μmと約100μmの間、又は約100μmと約200μmの間の特徴解像度を有する。それに対応して、一部の例では、本明細書に記載の物品は、少なくとも約100dpi、少なくとも約200dpi、少なくとも約250dpi、少なくとも約400dpi、又は少なくとも約500dpiの特徴解像度を有する。一部の例では、物品の特徴解像度は、約100dpiと約600dpiの間、約100dpiと約250dpiの間、又は約200dpiと約600dpiの間である。
【0086】
上記のようなバット重合法において、インクは上記のセクションIIAで記載されたように部分的に硬化され得る。例えば、一部の実施形態では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加してインクの流体層の少なくとも一部を固化させる工程は、インクの流体層の少なくとも一部を部分的に硬化させることを含み得る。他の実施形態では、インクの流体層の少なくとも一部を部分的に硬化させることは、インクの第1の層を提供及び固化した後、インクの第2の層を提供又は固化する前又は後、或いは、インクの1つ、いくつか、又は全てのその後の層を提供又は固化する前又は後に、生じ得る。
【0087】
加えて、本明細書に記載のバット重合法の一部の実施形態では、部分的硬化の後、或いは所望の3D物品が形成された後に、上記のセクションIIAで記載したような後硬化が行われ得る。所望の3D物品は、例えば、CADファイルにおける設計に対応する物品であり得る。」
・「【実施例】
【0090】
本明細書に記載の一部の実施形態に従うインクを以下のように調製した。特に、様々なインクを調製するために、表Iの成分を反応容器内で混合した。表Iにおける量は、インクの総質量に基づき、特定されるインクの各成分の質量%を示す。各インクに関して、適切な混合物を攪拌しながら約75~85℃の温度に加熱した。混合物が実質的に均質化された溶融状態に達するまで加熱及び攪拌を継続した。溶融混合物を濾過した。次に、濾過した混合物を周囲温度まで冷却させた。インク1及び比較インク1の30℃での粘度をASTM D2983に準拠して測定し、結果を下記の表IIに含める。
【表1】
[図:0001395189000004.jpg]
」
・「【0091】
上記の表Iにおいて、インク1、2、3、及び4のモノマー硬化性材料は、上記の式(II)の構造を有する環化重合性モノマーであった。比較インク1のモノマー硬化性材料は、SR 339とIBOA(それぞれ、15.59質量%及び22.04質量%)の混合物であった。比較インク2のモノマー硬化性材料は、SR 339(25.24質量%)とGenomer 1120(8.33質量%)の混合物であった。インク1のオリゴマー硬化性材料は、比較インク1のものと同じであり、インク2のオリゴマー硬化性材料は、比較インク2のものと同じであった。同様に、インク1と比較インク1の他の成分は同じであり、インク2と比較インク2の他の成分は同じであった。
【0092】
SLAプリントシステムを使用して、インク1及び2、並びに比較インク1及び2を用いて、層ごとに3D物品をプリントした。3D物品の各層を提供した後、次の層を提供する前にキセノンアークランプを用いて各層を部分的に硬化した。3D物品の全ての層を提供した後、水銀ランプを用いて物品を後硬化した。特に、後硬化は、水銀ランプを用いて10回の2分の長さの露光を含んだ。
【0093】
インク1及び2並びに比較インク1及び2から形成されたプリントされた3D物品の機械的特性を以下のように測定し、その結果を表IIに記録する。破断伸びはASTM D638に準拠して測定した;引張強度はASTM D638に準拠して測定した;引張弾性率はASTM D638に準拠して測定した;耐衝撃性(ノッチ付き)はASTM D256に準拠して測定した;及び曲げ弾性率はASTM D790に準拠して測定した。
【表2】
[図:0001395189000005.jpg]
」
・「【図1】
[図:0001395189000006.jpg]
」
(3)判断
本件特許の明細書【0067】~【0087】には、本件発明1~13、15に係る三次元物品をプリントする方法について好ましい実施形態が具体的に記載されている。そして、【0021】~【0066】においては本件発明に用いられるインクについて説明され、特に【0039】、【0043】には、オリゴマー硬化性材料及び追加のモノマー硬化性材料として使用され得る具体的製品も例示されており、さらに【0090】~【0093】には実施例の記載もある。加えて、特許権者は、令和4年6月8日提出の意見書とともに乙1号証を提出し、具体的な使用物質を明記した上で製造実験(以下、「乙1実験」という。)を行っており、本件発明が実施可能であることを示している。
してみれば、当業者であれば、適切な材料及びそれらの配合量を選択するとともに、材料に応じて硬化条件を適宜設定することにより、本件発明1~13、15に係る製造方法の発明を実施することができると理解できる。また、本件発明によって製造される物品の使用方法については、製造される物品に応じて当業者が適宜決定すべきものであることは明らかである。
してみると、当業者は、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、その製造方法を使用し、かつ、その製造方法により生産した物を使用することができるということができるものであり、当業者がその実施にあたり、過度の試行錯誤を要するものともいえない。
よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、いわゆる実施可能要件に適合するものといえる。
なお、申立人は、令和4年7月22日提出の意見書において、以下のア~カの点について主張している。
ア 乙1実験においては、「部分的硬化は405nmで実施」されているから、キセノンアークランプを用いた場合に「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含」むかどうか確認できないし、本件特許明細書には部分硬化の際に照射する光の波長として405nmを選択する根拠となる記載はないから、本件特許明細書の記載から本件特許発明が実施可能であることを示すことにはならない。
イ 乙1実験では、式(II)の環化重合性モノマーを含むインク2の方が、環化重合性モノマーを含まないインク1よりも曲げ弾性率が低下しているから、本件発明の効果が得られていない。
ウ 乙1実験ではIBOAの一部を式(II)の環化重合性モノマーに置き換えたインクの方がグリーン強度が低下しているが、甲1の表2の記載からは、式(II)の環化重合性モノマーはIBOAよりもUV硬化性が高いと考えられ、整合していないから、乙1実験は信憑性が低いか、本件特許明細書及び宣誓書に記載されていない特定の条件下で評価されたものである蓋然性が高い。
エ 甲1、甲8の技術常識に照らして、特許権者は部分硬化においては式(II)の環化重合性モノマーだけが硬化しないという特殊な主張をしているにも拘わらず、照射量や照射強度をどのように選択すればよいかについて開示されていないから、当業者が本件発明を実施することができない。
オ 仮に照射量や照射強度の開示がなくても当業者が本件発明を実施できるとしても、インクを部分硬化させる方法及び後硬化させる方法が何ら特定されていない本件発明1~3、5~15は、依然として当業者が実施できない範囲を含んでいる。
カ 本件発明1、2ではオリゴマー硬化性材料、追加のモノマー硬化性材料は「1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含」むと規定されているだけであり、アクリレート部分と共に環化重合し得る構造を含む化学種も含まれる規定となっているから、用いる化学種によっては、部分硬化でアクリレート部分のみを重合させることはできないから、本件発明1~15は、依然として当業者が実施できない範囲を含んでいる。
以下、上記申立人の主張について検討する。
アについて、部分硬化のための光照射条件は本件発明1、2の発明特定事項ではないから、キセノンアークランプを用いた場合の重合を確認する必要はないし、そもそも硬化のための光照射条件は、用いる材料に応じて当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
イについて、乙1実験は効果確認のための実験ではなく、本件発明を実施できるか否か、すなわち部分硬化及び後硬化が実際に起こっているかを証明する実験であるから、効果確認を主眼に置いたものではないし、本件発明の効果は曲げ弾性率のみによって評価されるものでもない。
ウについて、乙1実験と甲1表2の薄膜タックフリーテストとは照射波長や他モノマー及びオリゴマーとの共存下であること等、硬化条件が異なっているから、一概に乙1実験と甲1の記載とが不整合であるとはいえない。また、本件発明1、2では「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含」むと規定されているから、オリゴマー硬化性材料と追加のモノマー硬化性材料の少なくとも一方だけでも式(II)の環化重合性モノマーの硬化速度よりも速ければ、配合量を調整することで実施可能と考えられるから、申立人の「部分硬化における式(II)の環化重合性モノマーの硬化速度は、オリゴマー硬化性材料、および、式(II)の環化重合性モノマー以外のモノマー硬化性材料の硬化速度より大幅に遅くならなければならないことになる。」との主張には根拠がない。
エについて、上記ウにおいても指摘したとおり、申立人が主張するような「部分硬化においては式(II)の環化重合性モノマーだけが硬化しない」ことにはならないし、照射条件は材料に応じて当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎない。
オについて、上記ア、エにおいても指摘したとおり、照射条件は材料に応じて当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎず、キセノンアークランプ及び水銀ランプ以外の方法も当業者であれば適宜選択可能である。
カについて、本件発明1、2では「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む」とあるように、重合反応自体で発明が特定されているから、この重合が起こらない材料や照射条件のものは本件発明に含まれていない。
よって、申立人の主張はいずれも採用できない。
(4)小括
以上のことから、取消理由通知に記載した取消理由には、理由がない。
2 取消理由通知に記載した取消理由において採用しなかった申立理由について
(1)申立理由2について
ア 判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 発明の詳細な説明の記載
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、上記1(2)のとおりの記載がある。
ウ 判断
本件特許の明細書【0006】によると、本件特許に係る発明の課題は、「改善された機械的特性を有する物品を形成する、3Dプリント用の改善されたアクリレート含有インクに対する要求」に応えることであると解される。
そして、【0007】には「本明細書に記載のインクを用いて、従来のアクリレート含有インクを用いてプリントしたものと比較して、耐衝撃性の改善を含めて、改善された機械的特性を有する物品をプリントすることができる。」ことが記載され、【0022】には「理論に拘束されることを意図するものではないが、そのようなモノマーは、環化重合を介して硬化又は重合させることができると考えられる。例えば、モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させて、5、6、7、又は8員環を形成することができる。本明細書に記載の例示的な環化重合性モノマーの環化重合を図1に示す。理論に拘束されることを意図することなく、この環化重合は、特に他のアクリレート含有インクと比較した場合に本明細書に記載のインクを用いて3Dプリントした物品でみられる機械的性質の改善に少なくとも部分的に寄与し得ると考えられる。さらには、再度理論に拘束されることを意図するものではないが、本明細書に記載の環化重合性モノマーは、アクリレート重合を介して重合又は硬化させることもでき、この第2の重合又は硬化経路の存在は、本明細書に記載の環化重合性モノマーを含有するインクから形成される物品の特性をさらに改善し得ると考えられる。」と記載されており、さらに、「追加のモノマー硬化性材料」を含まないものではあるものの実施例も記載されており、本明細書に記載の環化重合性モノマーを含まないインクよりも優れた機械的特性を有することが示されている。
以上の記載に鑑みれば、「インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、10~80質量%のオリゴマー硬化性材料、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有」するインクを用いることで、改善された機械的特性を有する物品をプリントすることができると当業者は理解する。
そして、本件発明1~13、15は、「インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、10~80質量%のオリゴマー硬化性材料、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有」するインクを用いてプリントする方法であるから、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるので、本件発明1~13、15に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
なお、申立人は、特許異議申立書において、本件発明1~15では環化重合性モノマー及び環化重合性モノマー以外の成分について特定されていないため、実施例の結果を本件発明1~15の範囲まで拡張ないし一般化できるとは到底いえない(特許異議申立書第31頁第11~16行)旨主張するが、これらについて特定されているか否かは上記判断を左右するものではない。
(2)申立理由3について
ア 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 判断
申立人は、特許異議申立書において本件発明1、2の「部分的」及び「主に含」むとの特定事項が不明確である旨主張しているので、以下検討する。
「部分的」とは、少なくとも「部分」であって0%又は100%ではないことを意味することは日本語として明らかであり、本件特許明細書【0077】の「例えば、部分的に硬化されたインクは、約30%まで重合又は架橋されている、或いは約50%まで重合又は架橋されている。一部の実施形態では、部分的に硬化されたインクは、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、又は約95%まで重合又は架橋されている。」との記載からもその解釈は裏付けられているといえる。
また、「主に」とは、当該重合における主たる反応、すなわち最大割合を占める反応であると理解されるところ、本件特許明細書【0079】の「一部の例では、部分的硬化は主にそのような(メタ)アクリレート重合を含む。例えば、一部の例では、重合の50%超、60%超、又は70%超が、例えばインクのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分の環化重合などの他の重合経路を介するのではなく、アクリレート重合を介して生じる。」との記載、及び、同【0081】の「一部の例では、後硬化は主にそのような環化重合を含む。例えば、一部の実施形態では、後硬化中の重合の50%超、60%超、又は70%超が、例えば(メタ)アクリレート重合を介するなどの他の経路によるものではなく、環化重合を介して生じる。」との記載に鑑みても、50%を超えれば最大割合を占めることになるのは明らかであるところ、上記解釈は裏付けられているといえる。
してみると、本件発明1、2の「部分的」及び「主に含」むとの特定事項は、いずれも第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
また、本件発明1、2に関して請求項1、2に他に不明確な記載はないし、請求項3~13、15にも不明確な記載はない。
したがって、本件特許の請求項1~13、15の記載は、明確性要件に適合する。
(3)申立理由4について
ア 主な証拠に記載された事項等
(ア)甲4の記載事項
・「[0024]
引張強度および耐衝撃性をより高める観点からは、重合することにより主鎖に環構造を形成し得る光重合性モノマーの含有量は、モデル材インクの全質量に対して30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。上記観点からは、重合することにより主鎖に環構造を形成し得る光重合性モノマーの含有量は、モデル材インクの全質量に対して40質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。」
・「[0090]
紫外線を照射するための光源の例には、低圧水銀ランプおよび殺菌灯を含む蛍光管、冷陰極管、紫外レーザー、100Pa以上1MPa以下の範囲に含まれる動作圧力を有する水銀ランプ、メタルハライドランプおよび発光ダイオード(LED)が含まれる。立体造形物をより速く硬化させる観点から、光源は、照度100mW/cm2以上の紫外線を照射することができる、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLEDが好ましく、これらのうち、消費電力をより少なくする観点から、LEDが好ましい。LEDの具体例には、395nm水冷LED、Phoseon Technology社製が含まれる。」
・「[0104]
[表1]
[図:0001395189000007.jpg]
」
・「[0105]
[表2]
[図:0001395189000008.jpg]
」
・「[0119]
1-3.モデル材インク
表2に記載のモノマー組成物、表3に記載のポリマーおよび光重合開始剤であるIRGACURE 819(BASF社製、「IRGACURE」は同社の登録商標、以下単に「819」ともいう。)を、表4~表6に記載の組成に応じた量で、80℃に加温しながら攪拌しながら溶解させ、モデル材インク1~34、38を調製した。」
・「[0124]
[表4]
[図:0001395189000009.jpg]
」
・「[0125]
[表5]
[図:0001395189000010.jpg]
」
・「[0128]
3.立体造形物の製造
3-1.第1の立体造形物の製造
2つのインクジェットヘッドおよびそれぞれのインクジェットに連通するインクタンクを有する立体造形システムの、第1のインクジェットヘッド(ピエゾヘッド512L、コニカミノルタIJ社製)に連通する第1のインクタンクにモデル材インク1を、第2のインクジェットヘッド(ピエゾヘッド512L、コニカミノルタIJ社製)に連通する第2のインクタンクにサポート材インクを、それぞれ充填した。ステージを水平方向に走査しながら、第1のインクジェットヘッドからモデル材インク1を、第2のインクジェットヘッドからサポート材インクをそれぞれ出射し着弾させ、光源からUV光を照射して硬化させて、モデル材層100およびサポート材層200を含む第1の層を形成した。」
・「[請求項1]
インクジェット法による立体造形用インク組成物であって、
重合することにより主鎖に環構造を形成し得るモノマーを含む光重合性モノマーと、
重量平均分子量が5000以上80000以下のポリマーと、
光重合開始剤と、を含み、
前記光重合性モノマーの溶解度パラメータと前記ポリマーの溶解度パラメータとの差は、0.30(cal/cm3)1/2以上2.0(cal/cm3)1/2以下であることを特徴とする、立体造形用インク組成物。」
・「[請求項9]
第1のインクジェットヘッドのノズルから、請求項1~7のいずれか1項に記載の立体造形用インク組成物を吐出して第1のインク層領域を形成し、
前記形成された第1のインク層領域に活性光線を照射してモデル材層領域を形成し、
前記第1のインク層領域の形成および前記モデル材層領域の形成を繰り返して、複数の前記モデル材層領域を積層することにより立体造形物を製造する、立体造形物の製造方法。」
(イ)甲4に記載された発明
(ア)の摘記事項、特に[請求項9]及びモデル材インク1を用いた実施例について整理すると、甲4には以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
第1のインクジェットヘッドのノズルから、立体造形用インク組成物を吐出して第1のインク層領域を形成し、
前記形成された第1のインク層領域に活性光線を照射してモデル材層領域を形成し、
前記第1のインク層領域の形成および前記モデル材層領域の形成を繰り返して、複数の前記モデル材層領域を積層することにより立体造形物を製造する、立体造形物の製造方法であって、
前記立体造形用インク組成物は、環形成モノマーとしてα―(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを57.6質量%含み、その他のモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレートを9.6質量%を含む、製造方法。
イ 本件発明1との対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
三次元物品をプリントする方法であって、
三次元物品を形成するために流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させること;
全てのインクの層の堆積が完了する前に、前記インクを硬化させること;
を含み、
前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、
前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、
前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有し、
インクを硬化させることが、光硬化を含む、方法。
・相違点1-1
インクを硬化させる工程について、本件発明1が「全てのインクの層の堆積が完了する前に、前記インクを部分的に硬化させること;及び全てのインクの層の堆積が完了した後に、前記インクを後硬化させることを含み」と特定するとともに、さらに部分的硬化及び後硬化について「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む」と特定するのに対し、甲4発明はそのような特定を有しない点。
・相違点1-2
インク材料について、本件発明1が「10~80質量%のオリゴマー硬化性材料」であって「前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含」む材料を含むと特定するのに対し、甲4発明はそのような特定を有しない点。
ウ 判断
まず相違点1-1について検討する。
甲4にはインクの硬化工程を部分的硬化と後硬化に分けて行う点について記載されておらず、甲4の他の記載及び他の証拠を見ても、甲4発明において部分的硬化と後硬化を行う動機となる記載が見当たらない。ましてや、部分的硬化と後硬化の重合について「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む」構成とすることは記載も示唆もされていない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2との対比
本件発明2と甲4発明とを対比すると、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
三次元物品をプリントする方法であって、
流体状態のインクを保持する工程;
前記インクにエネルギーを印加して、前記インクの少なくとも一部を固化させる工程;
を含み、
前記インクは、インクの総質量に基づき、10~70質量%の環化重合性モノマー、及び80質量%までの追加のモノマー硬化性材料を含み、
前記環化重合性モノマーは、アクリレート部分及びエテニル又はエチニル部分を含み、
前記追加のモノマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含み、
前記アクリレート部分のα-炭素とエテニル又はエチニル部分のα-炭素は、1,5-、1,6-、1,7-、又は1,8-の関係を有し、
インクの少なくとも一部を固化させることが、光硬化を含む、方法。
・相違点2-1
インクを保持する工程について、本件発明2が「流体状態のインクを容器内に保持する工程」及び「前記第1の固化層を上昇又は降下させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供する工程」を含むと特定するのに対し、甲4発明はそのような特定を有しない点。
・相違点2-2
インクを固化させる工程について、本件発明2が「前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、前記インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それによって物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成する工程であって、前記第1の断面と第2の断面とがz方向に互いに結合される工程;及び三次元物品の形成の後に、前記三次元物品を後硬化させる工程を含み、前記容器内のインクにエネルギーを選択的に印加する工程が、インクを部分的に硬化させることを含み」と特定するとともに、さらに部分的硬化及び後硬化について「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む」と特定するのに対し、甲4発明はそのような特定を有しない点。
・相違点2-3
インク材料について、本件発明2が「10~80質量%のオリゴマー硬化性材料」であって「前記オリゴマー硬化性材料は、1つ以上のアクリレート部分を含む化学種を含」む材料を含むと特定するのに対し、甲4発明はそのような特定を有しない点。
オ 判断
事案に鑑み、まず相違点2-2について検討する。
甲4にはインクの硬化工程を部分的硬化と後硬化に分けて行う点について記載されておらず、甲4の他の記載及び他の証拠を見ても、甲4発明において部分的硬化と後硬化を行う動機となる記載が見当たらない。ましてや、部分的硬化と後硬化の重合について「インクを部分的に硬化させることが、アクリレート重合を介してインクの前記オリゴマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種及び/又は前記追加のモノマー硬化性材料のアクリレート部分を含む化学種を重合させることを主に含み、かつ後硬化させることが、前記環化重合性モノマーのアクリレート部分とエテニル又はエチニル部分とを環化重合させることを主に含み、部分的に硬化させること及び後硬化させることがそれぞれ光硬化を含む」構成とすることは記載も示唆もされていない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明3~13、15について
本件発明3~13、15は、いずれも請求項1又は2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1、2のいずれかの特定事項を全て有するものである。
してみると、上記イ~オのとおり、本件発明1、2がいずれも甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3~13、15も、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由2~4には、いずれも理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし13、15に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1ないし13、15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項14に係る特許は、訂正により削除されたため、申立人による請求項14に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701135