特許異議申立
2021-701097
遊技機
- 審判番号
- 2021-701097
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-162623外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6882119
- 請求日
- 2021年11月19日
- 審決日
- 2022年06月02日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】重信 和男
- 【権利者代理人】石川 好文
- 【権利者代理人】林 修身
- 【権利者代理人】大久保 岳彦
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人平木国際特許事務所
- 分類
- P1651.113-YAA(A63F) / P1651.121-YAA(A63F) / P1651.55 -YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第129条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6882119号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6882119号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。
特許第6882119号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6882119号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年8月25日の特許出願であって、令和3年5月10日に特許の設定登録がなされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行され、同年11月19日に、特許異議申立人である日本電動式遊技機特許株式会社(以下、「申立人」という。)により本件特許に対し特許異議の申立てがなされ、同年12月2日に、申立人により特許異議申立書についての手続補正書(以下、「申立書補正書」という。)が提出され、当審において、令和4年1月19日付けで取消理由が通知され、特許権者である株式会社三共より同年3月23日に意見書及び訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)が提出され、これに対して、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたところ、申立人から同年5月17日に意見書が提出されたものである。
2 訂正請求について
(1)訂正の内容
本件訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1(以下、「訂正前の請求項1」という。)に
「所定操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機であって、」とあるのを、
「ボタン操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機であって、」に訂正する。
イ 訂正事項2
訂正前の請求項1に
「前記基板ボックスの特定面には、凹部が設けられており、」とあるのを、
「前記基板ボックスには、第1凹部が設けられるとともに、該第1凹部の底面には、第2凹部が設けられており、」に訂正する。
ウ 訂正事項3
訂正前の請求項1に
「前記凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されており、」とあるのを、
「前記第2凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されており、」に訂正する。
エ 訂正事項4
訂正前の請求項1に
「前記開口の幅は、前記凹部の幅よりも狭く、」とあるのを、
「前記開口の幅は、前記第2凹部の幅よりも狭く、」に訂正する。
オ 訂正事項5
訂正前の請求項1に
「前記凹部は、略円形状に形成され、」とあるのを、
「前記第2凹部は、略円形状に形成され、」に訂正する。
カ 訂正事項6
訂正前の請求項1に
「前記凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されている」とあるのを、
「前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されており、」に訂正する。
キ 訂正事項7
訂正前の請求項1において
上記訂正事項6の「前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されており、」の後に
「前記操作部のボタンは、前記開口から前記第2凹部内に張り出しており、」を加える。
ク 訂正事項8
訂正前の請求項1において
上記訂正事項7の「前記操作部のボタンは、前記開口から前記第2凹部内に張り出しており、」の後に
「前記基板ボックスには、前記第1凹部を被覆可能な蓋が設けられ、」を加える。
ケ 訂正事項9
訂正前の請求項1において
上記訂正事項8の「前記基板ボックスには、前記第1凹部を被覆可能な蓋が設けられ、」の後に
「前記蓋には、前記第1凹部を被覆したときに、前記第2凹部に臨んで突出する突出部が形成されている」を加える。
コ 訂正事項10
願書に添付した明細書の【0006】に
「(A)所定操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機であって、
前記基板ボックスの特定面には、凹部が設けられており、
前記凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されており、
前記開口の幅は、前記凹部の幅よりも狭く、
前記凹部は、略円形状に形成され、
前記凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されている、遊技機。
・・・」とあるのを、
「(A)ボタン操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機であって、
前記基板ボックスには、第1凹部が設けられるとともに、該第1凹部の底面には、第2凹部が設けられており、
前記第2凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されており、
前記開口の幅は、前記第2凹部の幅よりも狭く、
前記第2凹部は、略円形状に形成され、
前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されており、
前記操作部のボタンは、前記開口から前記第2凹部内に張り出しており、
前記基板ボックスには、前記第1凹部を被覆可能な蓋が設けられ、
前記蓋には、前記第1凹部を被覆したときに、前記第2凹部に臨んで突出する突出部が形成されている、遊技機。
・・・」に訂正する。
(2)訂正要件についての検討
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「所定操作が可能な操作部」が「ボタン操作が可能な操作部」であることを限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項1は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の【0031】には「設定基板3は、左右方向よりも上下方向の方が長いいわば縦長の略矩形を有しており、基板ケース20の載置板21における右側部分に載置されている。」と記載され、【0044】には「また、設定基板3に搭載された設定キースイッチ7、セグメント表示装置8、及びリセットスイッチ9は、設定基板3に設けられた配線、主基板に設けられた配線、及びこれらの配線を接続する設定基板側コネクタ6及び主基板側コネクタを介してマイクロコンピュータ4に接続されている。」と記載され、【0037】には「リセットスイッチ9は、ボタン搭載部9Aと、ボタン9Bとを備えている。ボタン搭載部9Aは、ボタン9Bを搭載する台座である。」と記載されているから、訂正事項1は、【0031】、【0037】及び【0044】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項1は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記基板ボックス」に「第1凹部」が設けられるとともに、訂正前の請求項1の「前記基板ボックスの特定面」が「第1凹部の底面」であり、訂正前の請求項1の「凹部」が、「第1凹部の底面」に設けられている「第2凹部」であることを限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項2は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の【0038】には「基板カバー30は、図3に示す隔壁40を備えており、」と記載され、【0045】には「基板カバー30における設定基板収容部30Bには、天板部41が設けられている。天板部41は、板状の上段部42と板状の下段部43を備えており、全体として平面視した形状が設定基板3と略同一形状とされている。天板部41の奥側の面には、上外枠片44、下外枠片45、及び右外枠片46が設けられている。上外枠片44、下外枠片45、及び右外枠片46は、天板部41の外縁に沿って下方を向いて突設されており、天板部41の奥側を囲っている。」と記載され、【0046】には「天板部41における上段部42は、下段部43よりの奥側から手前方向への高さが高くなっており、上段部42と下段部43の間には段差が設けられている。」と記載され、【0049】には「下段部43には、リセットスイッチ取付部48が設けられている。リセットスイッチ取付部48は、下段部43におけるリセットスイッチ9に対応する位置に設けられている。リセットスイッチ取付部48は、リセットスイッチを操作するための開口部である。リセットスイッチ9は、リセットスイッチ取付部48を臨んで設けられている。このため、基板カバー30の外側から遊技店の店員(責任者)などがリセットスイッチ9を操作可能とされている。リセットスイッチ取付部48の前端には前端開口48Aが設けられ、奥端には奥端開口48Bが設けられている。」と記載されており、図3~図5には、天板部41の奥側の面に隔壁40、上外枠片44、下外枠片45、及び右外枠片46に囲われることで周囲よりも凹んだ上段部42及び下段部43が形成され、このうちの下段部43に周囲よりも凹んだリセットスイッチ取付部48が形成された態様が記載されている。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等の【0038】、【0045】、【0046】、【0049】、図3~図5に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項2は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項2において訂正前の請求項1の「凹部」を「第2凹部」に訂正することに伴い、訂正前の請求項1の「前記凹部」を「前記第2凹部」とする訂正であるから、特許法第129条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項3は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の【0049】には「下段部43には、リセットスイッチ取付部48が設けられている。リセットスイッチ取付部48は、下段部43におけるリセットスイッチ9に対応する位置に設けられている。リセットスイッチ取付部48は、リセットスイッチを操作するための開口部である。リセットスイッチ9は、リセットスイッチ取付部48を臨んで設けられている。このため、基板カバー30の外側から遊技店の店員(責任者)などがリセットスイッチ9を操作可能とされている。リセットスイッチ取付部48の前端には前端開口48Aが設けられ、奥端には奥端開口48Bが設けられている。」と記載されていることから、訂正事項3は、【0049】に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項3は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項2において訂正前の請求項1の「凹部」を「第2凹部」に訂正することに伴い、訂正前の請求項1の「前記凹部」を「前記第2凹部」とする訂正であるから、訂正事項4は、特許法第129条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項4は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の【0050】には「前端開口48A及び奥端開口48Bは、いずれも略円形状をなしており、前端開口48Aの面積は、奥端開口48Bの面積よりも大きくなっている。前端開口48Aと奥端開口48Bとの間には、前端開口48Aと奥端開口48Bを繋ぐ側壁部48Cが形成されている。側壁部48Cは、すり鉢状をなしており、角のないなめらかな曲面状をなしている。」と記載されていることから、訂正事項4は、本件特許明細書の【0050】に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項4は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
オ 訂正事項5
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項2において訂正前の請求項1の「凹部」を「第2凹部」に訂正することに伴い、訂正前の請求項1の「前記凹部」を「前記第2凹部」とする訂正であるから、訂正事項5は、特許法第129条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項5は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の【0050】には「前端開口48A及び奥端開口48Bは、いずれも略円形状をなしており、前端開口48Aの面積は、奥端開口48Bの面積よりも大きくなっている。前端開口48Aと奥端開口48Bとの間には、前端開口48Aと奥端開口48Bを繋ぐ側壁部48Cが形成されている。側壁部48Cは、すり鉢状をなしており、角のないなめらかな曲面状をなしている。」と記載されていることから、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
訂正事項5は、本件特許明細書の【0050】に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項5は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
カ 訂正事項6
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、訂正事項2において訂正前の請求項1の「凹部」を「第2凹部」に訂正することに伴い、訂正前の請求項1の「前記凹部」を「前記第2凹部」とする訂正、及び以下の訂正事項7の訂正を行うことに対して、整合させるための訂正であるから、特許法第129条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項6は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の【0050】には「前端開口48A及び奥端開口48Bは、いずれも略円形状をなしており、前端開口48Aの面積は、奥端開口48Bの面積よりも大きくなっている。前端開口48Aと奥端開口48Bとの間には、前端開口48Aと奥端開口48Bを繋ぐ側壁部48Cが形成されている。側壁部48Cは、すり鉢状をなしており、角のないなめらかな曲面状をなしている。」と記載されていることから、訂正事項6は、本件特許明細書の【0050】に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項6は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
キ 訂正事項7
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項1に新たに「前記操作部のボタンは、前記開口から前記第2凹部内に張り出しており、」なる発明特定事項を加えて「遊技機」を限定する訂正であるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項7は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の【0051】には「基板ケース20に設けられた設定基板3から奥端開口48Bまでの距離は、リセットスイッチ9におけるボタン搭載部9Aの奥側から手前方向への高さと略同一とされている。また、リセットスイッチ9に設けられた円筒形状のボタン9Bの径は、奥端開口48Bの径よりやや小さくされている。このため、リセットスイッチ9のボタン9Bは、奥端開口48Bを通って、奥端開口48Bよりも手前側に張り出している。前端開口48Aの径は、例えば19mmとされている。」と記載され、図5(A)には、リセットスイッチ9のボタン9Bは、奥端開口48Bを通って、奥端開口48Bよりも手前側に張り出す態様が記載されていることから、訂正事項7は、本件特許明細書等の【0051】、図5(A)に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項7は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ク 訂正事項8
(ア)訂正の目的について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項1に新たに「前記基板ボックスには、前記第1凹部を被覆可能な蓋が設けられ、」なる発明特定事項を加えて「遊技機」を限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項8は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の【0054】には「基板カバー30における天板部41には、蓋部材50が取り付けられている。蓋部材50は、蓋部51を備えている。蓋部51における左端部の上下位置には、図2及び図5(A)に示すように、基板カバー30に設けられた回転支持用の突起部49Aに嵌め込まれる孔部55が設けられている。蓋部材50は、突起部49Aが嵌め込まれた孔部55を繋ぐ回転軸周りに回転することによって開閉可能とされている。蓋部材50が閉鎖された状態では、蓋部材50は、設定キー取付部47の上段開口部47A、リセットスイッチ取付部48の前端開口48A及び奥端開口48Bを被覆している。」と記載され、図1、図5には、蓋部材50が閉鎖された状態で上段部42及びリセットスイッチ取付部48が設けられた下段部43が被覆される態様が記載されていることから、訂正事項8は、本件特許明細書等の【0054】、図1、図5に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項8は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ケ 訂正事項9
(ア)訂正の目的について
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項1に新たに「前記蓋には、前記第1凹部を被覆したときに、前記第2凹部に臨んで突出する突出部が形成されている」なる発明特定事項を加えて「遊技機」を限定する訂正であるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項9は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の【0055】には「さらに、蓋部材50における蓋部51には、奥方に凹む没入部53が設けられている。没入部53は、セグメント表示装置8及びリセットスイッチ9の前方に設けられており、没入部53は、天板部41における上段部42よりも奥方であり、下段部43よりも手前位置まで延在している。」と記載され、図5には、蓋部材50が閉鎖された状態において、蓋部51の没入部53がリセットスイッチ取付部48に臨んで突出する態様が記載されていることから、訂正事項9は、本件特許明細書等の【0055】、図5に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項9は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
コ 訂正事項10
(ア)訂正の目的について
訂正事項10は、訂正事項1~9に係る訂正により、訂正前の請求項1における特許請求の範囲の訂正を行った結果、記載表現が一致しなくなった本件特許明細書の【0006】の記載を、訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項10は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、また、カテゴリーや対象を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、訂正事項1~9に係る訂正による訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であり、訂正事項1~9と同様に、本件特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内の訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項10は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
3 本件訂正発明
上記2で検討したとおり、本件訂正は認められ、本件特許の請求項1に係る特許は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件訂正発明」という。なお、符号A等は、分説するため当審が付した。)。
「【請求項1】
A ボタン操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機であって、
B 前記基板ボックスには、第1凹部が設けられるとともに、該第1凹部の底面には、第2凹部が設けられており、
C 前記第2凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されており、
D 前記開口の幅は、前記第2凹部の幅よりも狭く、
E 前記第2凹部は、略円形状に形成され、
F 前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されており、
G 前記操作部のボタンは、前記開口から前記第2凹部内に張り出しており、
H 前記基板ボックスには、前記第1凹部を被覆可能な蓋が設けられ、
I 前記蓋には、前記第1凹部を被覆したときに、前記第2凹部に臨んで突出する突出部が形成されている、
J 遊技機。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
当審において令和4年1月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のア~イのとおりである。
ア 1(新規性)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 2(進歩性)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
甲第1号証:特開2001-149607号公報
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ機に搭載される装置に関する。」
「【0006】
【発明の実施の形態】図1~図3は本発明の第1実施形態であって、図1は球発射制御装置の側面を一部破断して示し、図2は球発射制御装置の外観を示し、図3は球発射制御装置の分解された外観を示す。図1~図3において、1はケースベース、2はケースカバーである。ケースベース1及びケースカバー2は外部より内部を見ることが可能な透視性の在る合成樹脂製である。3はケースベース1とケースカバー2とで囲まれた内部空間に収納された回路基板、5は回路基板3をケースベース1に固定する止ねじ、6は回路基板3に実装された球打力調整ボリューム、7は球打力調整ボリューム6の操作部、8は球打力調整ボリューム6の内側に配置された操作部7の表面に形成された工具挿入溝、9は回路基板3に実装された電解コンデンサである。電解コンデンサ9は耐電圧の高い電気特性を有し、背が高い形状を有する。」
「【0009】10はケースカバー2に設けられた筒状のガイド孔部である。ガイド孔部10は、ケースカバー2より操作部7に向けて膨出し、ケース側開口10aの口径L1が部品側開口10bの口径L2よりも大きく設定される(L1>L2)。ガイド孔部10の内側面は、ケース側開口10aより部品側開口10bに行くに従って徐々に小径となる截頭錐形に形成される。ガイド孔部10の部品側開口10bと球打力調整ボリューム6との間には小さな隙間Hを有する。隙間Hはガイド孔部10に挿入された図外の工具が球打力調整ボリューム6の周りには行かない程度に設定される。つまり、図外の針金やピアノ線等の不正操作部材が隙間Hを形成するガイド孔部10や操作部7に引っ掛かりケースベース1とケースカバー2とよりなる内部空間(ケースの内部)に挿入されることはない。」
「【0011】そして、ガイド孔部10に挿入された工具はガイド孔部10内側面のケース側開口10aより部品側開口10bに行くに従って徐々に小径となる截頭錐形によって操作部7の工具挿入溝8へと案内されて挿入される。その状態において、工具により操作部7が回転操作されることにより、球打力調整を行うことができる。又、ガイド孔部10と球打力調整ボリューム6との間に隙間Hが形成されているので、ガイド孔部10が球打力調整ボリューム6を押付けるような不都合もない。又、ガイド孔部10は球打力調整ボリューム6と対応して設けられているので、回路基板3への電解コンデンサ9やそれ以外の全部の電気部品の配置に支障を招くことはない。」
「【図1】
[図:0001388397000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001388397000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001388397000003.jpg]
」
甲第1号証の図1によれば、「ケースカバー2に設けられたガイド孔部10のケース側開口10aの下方に、球打力調整ボリューム6に形成された凹部が設けられ、当該凹部の内部に操作部7が設けられている」ことがみてとれる(以下、「認定事項1」という。)。
甲第1号証の図1によれば、球打力調整ボリューム6に形成された凹部の断面は平行な2本の直線であり、図3によれば、球打力調整ボリューム6に形成された凹部を軸方向から見ると略円形であることから、「球打力調整ボリューム6に形成された凹部は略円筒形状である」と認められる(以下、「認定事項2」という。)。
そうすると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている(aないしjの符号は、本件訂正発明の分説AないしJに対応させて付与した。)。
甲1発明
「a パチンコ機に搭載される球発射制御装置において、回路基板3がケースベース1とケースカバー2とで囲まれた内部空間に収納され、球打力調整ボリューム6が回路基板3に実装され、操作部7が球打力調整ボリューム6の内側に配置され(【0001】、【0006】)、
b1-c-d ケースカバー2に設けられた筒状のガイド孔部10は、ケースカバー2より操作部7に向けて膨出し、ケース側開口10aの口径L1が部品側開口10bの口径L2よりも大きく設定され(L1>L2)、ガイド孔部10の内側面は、ケース側開口10aより部品側開口10bに行くに従って徐々に小径となる截頭錐形に形成され(【0009】)、ガイド孔部10に挿入された工具はガイド孔部10内側面のケース側開口10aより部品側開口10bに行くに従って徐々に小径となる截頭錐形によって操作部7の工具挿入溝8へと案内されて挿入され、その状態において、工具により操作部7が回転操作されることにより、球打力調整を行うことができ(【0011】)、
b2 ケースカバー2に設けられたガイド孔部10のケース側開口10aの下方に、球打力調整ボリューム6に形成された凹部が設けられ、当該凹部の内部に操作部7が設けられ(認定事項1)、
ef 球打力調整ボリューム6に形成された凹部は、略円筒形状である(認定事項2)
j パチンコ機(【0001】)。」
(3)対比
本件訂正発明と甲1発明とを、分説に従い対比する。
(a)甲1発明の「操作部7」は、本件訂正発明の「ボタン操作が可能な操作部」と、「所定操作が可能な操作部」である点で共通する。
甲1発明の「回路基板3」、「ケースベース1とケースカバー2」及び「パチンコ機」は、それぞれ本件訂正発明の「基板」、「基板ボックス」及び「遊技機」に相当する。
したがって、甲1発明の構成aは、本件訂正発明の構成Aと、「所定操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機」である点で共通する。
(b)甲1発明の構成b1-c-dにおいて、「ケースカバー2」に「筒状のガイド孔部10」が設けられていることは、本件訂正発明において、「前記基板ボックスには、第1凹部が設けられ」ることに相当する。
甲1発明の構成b2において、「球打力調整ボリューム6に形成された凹部が設けられ」ることは、本件訂正発明において、「前記基板ボックスには」、「第2凹部が設けられて」いることと、「所定の部材に、第2凹部が設けられている」点で共通する。
したがって、甲1発明の構成b1-c-d、構成b2は、本件訂正発明の構成Bと、「前記基板ボックスには、第1凹部が設けられ」、「所定の部材には、第2凹部が設けられて」いる点で共通する。
(c)甲1発明において、「ガイド孔部10に挿入された工具はガイド孔部10内側面のケース側開口10aより部品側開口10bに行くに従って徐々に小径となる截頭錐形によって操作部7の工具挿入溝8へと案内されて挿入され、その状態において、工具により操作部7が回転操作されることにより、球打力調整を行うことができ」ることから、工具が、「筒状のガイド孔部10」が設けられる「ケースカバー2」の外部から、「操作部7の工具挿入溝8」に「挿入され」、「その状態において、工具により操作部7が回転操作される」ための開口が、「球打力調整ボリューム6に形成され」、その「内部に操作部7が設けられ」る「凹部」にあることは明らかであり、このことは、本件訂正発明の「前記第2凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されて」いることに相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明の構成Cに相当する構成を有する。
(e)甲1発明の「球打力調整ボリューム6に形成された凹部は、略円筒形状である」ことは、本件訂正発明の「前記第2凹部は、略円形状に形成され」ることと、「前記第2凹部は、略円形状に形成され」ることに相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明の構成Eに相当する構成を有する。
(f)甲1発明の「球打力調整ボリューム6に形成された凹部は、略円筒形状である」ことは、本件訂正発明の「前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されて」いることに相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明の構成Fに相当する構成を有する。
(j)甲1発明の「パチンコ機」は、本件訂正発明の「遊技機」に相当する。
以上によれば、本件訂正発明と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「A’ 所定操作が可能な操作部が設けられた基板が収容された基板ボックスを備える遊技機であって、
B’ 前記基板ボックスには、第1凹部が設けられ、所定の部材には、第2凹部が設けられており、
C 前記第2凹部には、前記基板ボックスの外部から前記操作部を操作可能とする開口が形成されており、
E 前記第2凹部は、略円形状に形成され、
F 前記第2凹部の開口に連なる領域は曲面で形成されている
J 遊技機。」
[相違点1](構成A)
「操作部」が、本件訂正発明では、「ボタン操作」が可能であるのに対して、甲1発明では、「ボタン操作」が可能でない点。
[相違点2](構成B)
「第2凹部」が、本件訂正発明では、「基板ボックスに」設けられた「第1凹部」の「底面」に設けられるのに対し、甲1発明では、「球打力調整ボリューム6」に設けられる点。
[相違点3](構成D)
本件訂正発明では、「前記開口の幅は、前記第2凹部の幅よりも狭」いのに対して、甲1発明では、このような構成を有していない点。
[相違点4](構成G)
本件訂正発明では、「前記操作部のボタンは、前記開口から前記第2凹部内に張り出して」いるのに対して、引用発明の「操作部7」は、ボタンを有していないため、このような構成でない点。
[相違点5](構成H、I)
本件訂正発明では、「前記基板ボックスには、前記第1凹部を被覆可能な蓋が設けられ、」「前記蓋には、前記第1凹部を被覆したときに、前記第2凹部に臨んで突出する突出部が形成されている」に対して、引用発明では、「ケースベース1とケースカバー2」には、「筒状のガイド孔部10」を被覆可能な蓋が設けられていない点。
(4)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明において、「球打力調整ボリューム6に形成された凹部」を、本件訂正発明の「基板ボックスに」設けられた「第1凹部」の「底面」に設けられる「第2凹部」のように、「ケースカバー2」に設けられた「ガイド孔部10」の底面に設けることは、「球打力調整ボリューム6」と「ケースカバー2」が別の部材であること、さらに「ケースカバー2」に設けられた「ガイド孔部10」が底面を有していないことから、当業者が容易に想到できたこととはいえない。また、甲1発明において、「球打力調整ボリューム6に形成された凹部」を、「ケースカバー2」に設けられた「ガイド孔部10」の底面に設けることが設計的事項であるとすべき特段の事情もない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲1号証に記載された発明ではなく、甲1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(5)令和4年5月17日に提出された意見書における申立人の主張について
申立人は、相違点2について、令和4年5月17日に提出された意見書において、以下の旨を主張する。
「相違点2について、甲第1号証の図6によれば、案内凸部10cによって区分された上下2段の凹部について、上段の凹部の底面に下段の凹部が設けられている。甲第1号証の図1および図6は、同一の文献に記載された変形例を表すものであるから、図1に示される操作凹部を、図6に示されるように上側(図1のケースカバー2側)に形成し、これによって操作凹部をガイド孔部10の底面に設けることは、当業者が容易に想到し得る事項である。」
申立人の上記主張について検討する。本件特許の願書に添付した明細書及び図面には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。
「【0045】 基板カバー30における設定基板収容部30Bには、天板部41が設けられている。天板部41は、板状の上段部42と板状の下段部43を備えており、全体として平面視した形状が設定基板3と略同一形状とされている。天板部41の奥側の面には、上外枠片44、下外枠片45、及び右外枠片46が設けられている。上外枠片44、下外枠片45、及び右外枠片46は、天板部41の外縁に沿って下方を向いて突設されており、天板部41の奥側を囲っている。…
【0049】 下段部43には、リセットスイッチ取付部48が設けられている。リセットスイッチ取付部48は、下段部43におけるリセットスイッチ9に対応する位置に設けられている。リセットスイッチ取付部48は、リセットスイッチを操作するための開口部である。リセットスイッチ9は、リセットスイッチ取付部48を臨んで設けられている。このため、基板カバー30の外側から遊技店の店員(責任者)などがリセットスイッチ9を操作可能とされている。リセットスイッチ取付部48の前端には前端開口48Aが設けられ、奥端には奥端開口48Bが設けられている。」
「【図4】
[図:0001388397000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001388397000005.jpg]
」
以上の記載を参酌すると、本件訂正発明の構成Bの「該第1凹部の底面には、第2凹部が設けられており」における「第1凹部の底面」とは、「第1凹部」の底を形成する板状の部材(「下段部43」)の凹部側の面(上面)を意味するものと認められる。
これに対して、甲第1号証の【0015】及び図6には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。
甲第1号証の記載:
「【0015】図6は本発明の第4実施形態を示す。図6では、操作部12の先端がガイド孔部10の部品側開口10b内部に挿入された場合において、工具の工具挿入溝8への挿入容易性を高めたものである。つまり、ガイド孔部10は内部に環状の案内凸部10cを備える。案内凸部10cはガイド孔部10の内側面より操作部12に接触しないように突出する。そして、案内凸部10cの上面はケース側開口10aの側より工具挿入溝8に向けたすり鉢状に形成される。よって、工具は案内凸部10cの上面に沿い工具挿入溝8へ案内されて挿入される。案内凸部10cの下面と操作部12の上面との間の隙間Dを小さくすれば、図外の針金やピアノ線等の不正操作部材が隙間Dを形成する案内凸部10cや操作部12で引っ掛かりケースベース1とケースカバー2とよりなる内部空間に挿入されることはない。」
「【図6】
[図:0001388397000006.jpg]
」
申立人の上記主張において、「案内凸部10cによって区分された上下2段の凹部について、上段の凹部の底面に下段の凹部が設けられている」とされているところ、甲第1号証の【0015】及び図6を参照すると、「案内凸部10c」は「ガイド孔部10」の内部に設けられた環状の部材であり、「案内凸部10cの上面」は「ケース側開口10aの側より工具挿入溝8に向けたすり鉢状に形成される」ものであるから、「案内凸部10cの上面」が「上段の凹部」の底面を形成するものとはいい難く、仮に「案内凸部10cの上面」が「上段の凹部」の底面を形成するものであるとしても、「下段の凹部」(部品側開口10bを含む凹部)は、「案内凸部10cの下面」側(「第1凹部の底面」とは反対側)に設けられたものであって、「案内凸部10cの上面」(「第1凹部の底面」)に設けられたものではない。
したがって、申立人の主張のように、仮に甲第1号証の「図1に示される操作凹部を、図6に示されるように上側(図1のケースカバー2側)に形成」したとしても、「前記基板ボックスには、第1凹部が設けられるとともに、該第1凹部の底面には、第2凹部が設けられており」という本件訂正発明の構成Bとはならないことから、申立人の主張は、採用することができない。
5 取消理由において通知しなかった申立人の申立ての理由について
(1)取消理由において通知しなかった申立人の申立ての理由
申立人は、取消理由において通知した理由の他に、申立書補正書の「(4-1)法17条の2第3項(新規事項要件)について[主位的意見]」において、以下の旨を主張する。
「これらのことからすると、「側壁部48C」が、それでもなお、角の無いなめらかな曲面状から形成されているといえるのは、前記空間が「截頭錐体」(「錐体の頭部を底部と平行な平面で切り取った残りの部分がなす立体。」「広辞苑」第六版)のうちの「截頭円錐体」形状であり、その高さ方向の途中の断面形状がどの高さにおいてもほぼ円形であり、同断面と直交する断面で視た時はいずれも直線状であるという意味の範囲に限定された「なめらかな曲面状」から形成され得ていることを意味しているとしか解し得ない。
そうすると、前記補正により追加された構成要件である、
「前記凹部は、略円形状に形成され、前記凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されている、」
は、「凹部の外周」が特定されていないことや、いかなる「曲面」を示すのか特定されておらず、様々な態様を包含することになり、截頭円錐台形の高さ方向の途中の断面と直交する断面で視た形状が直線状でない、ハット状、腕状や洗面器状など、明細書等に記載されていない様々な態様を含むことになり、明らかに「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであることは明白である。
もっとも、本件特許の明細書段落【0050】には、全明細書のたった一箇所にすぎないが、「・・・側壁部48Cは、すり鉢状をなしており、・・・」と記載されている。
特許権者はこの記載に強く依拠した主張をしているが、明細書全体をみれば、ごく一部の記載であり、文理解釈上、「状」の語は名詞に付される接尾辞であって、「・・・のような形である」、「・・・に似たようすである」といったそもそも曖昧な部分を含んだ結合語であり、幾何学的な用語でもなく、また、技術用語でもないので、これを根拠に強弁することには合理的にみて無理がある。
また、そもそも、すり鉢には、非文献時代を含め、古今東西で様々な形態のものが知られていることから、ただ単に壁が「すり鉢状」であると一言説明したからと言って、他のすべての記載を凌駕するがごとき解釈には合理的にみて困難性がある。
むしろ、上記した截頭円錐体の形状こそ、一般には、逆さにした「すり鉢状」と同意義で表現される用語であるから、本件特許の明細書にいう「すり鉢状」とは、上記した截頭円錐体の形状を単に言い換えた程度に過ぎず、他の形態を意味するものとして解することはできない。
そして、前記解釈に基づき、補正前の特許発明の目的及び作用、効果を検証しても、いささかの矛盾なく、明細書等を一貫して合理的に説明し得るものである。
したがって、前記補正は、「凹部の外周」が特定されておらず、また、いかなる「曲面」をも包含することとなるので、明らかに「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであることは明白である。
よって、前記補正は、法第17条の2第3項に規定する所謂新規事項を追加したものとなるから、本件特許は、同項に規定する要件を満たしていない前記手続補正書による補正をした特許出願に対してされたものである。」
(2)検討
申立人の上記主張における本件訂正前の
「前記凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されている、」
との事項は、本件訂正により、
「前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されており、」
と訂正されたことから、訂正後の当該事項が、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるかを検討する。
本件特許の願書に最初に添付された明細書には、
「【0050】 前端開口48A及び奥端開口48Bは、いずれも略円形状をなしており、前端開口48Aの面積は、奥端開口48Bの面積よりも大きくなっている。前端開口48Aと奥端開口48Bとの間には、前端開口48Aと奥端開口48Bを繋ぐ側壁部48Cが形成されている。側壁部48Cは、すり鉢状をなしており、角のないなめらかな曲面状をなしている。」
と記載されている(下線は当審で付した。)。
本件特許の願書に最初に添付された明細書の【0050】には、本件訂正発明の「前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域」に対応すると認められる「側壁部48C」について、「すり鉢状をなしており、角のないなめらかな曲面状をなしている」ことが記載されていることから、本件訂正発明の「前記第2凹部の外周から前記開口に連なる領域は曲面で形成されており」との事項は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、申立書補正書の「(4-1)法17条の2第3項(新規事項要件)について[主位的意見]」における申立人の主張は採用することができない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書及び申立書補正書に記載した理由によっては、訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701097