特許異議申立
2018-701052
スロットマシン
- 審判番号
- 2018-701052
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-121647
- 登録番号
- 特許第6348144号(P6348144)
- 請求日
- 2018年12月26日
- 審決日
- 2019年09月13日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人 武和国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 長崎 洋一
- 審判官 田邉 英治
- 審判官 大谷 純
- 分類
- P1651.113-YAA(A63F) / P1651.121-YAA(A63F) / P1651.537-YAA(A63F) / P1651.55 -YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第44条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6348144号発明「スロットマシン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6348144号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第6348144号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
【目次】
第1 手続の経緯
第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
2 訂正の内容
3 訂正の適否
4 まとめ
第3 特許異議の申立について
1 本件訂正発明
2 取消理由の概要
3 当審における判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 理由1(新規事項)について
イ 理由2(サポート要件)について
ウ 理由3(明確性)について
エ 理由4(新規性)及び理由5(進歩性)について
(2)特許異議申立理由について
(3)特許異議申立人の意見について
第4 むすび
【本文】
第1 手続の経緯
特許第6348144号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年12月29日に出願した特願2011-290384号の一部を平成28年6月20日に新たな特許出願(特願2016-121647号)としたものであって、平成30年6月8日にその特許権の設定登録がされ、同年6月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月26日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により特許異議の申立てがされ、当審において平成31年4月17日付けで取消理由を通知した。特許権者である株式会社三共は、その指定期間内である同年(令和1年)6月17日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、これに対して、特許異議申立人は、同年8月5日に意見書を提出した。
第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6348144号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「遊技状態制御手段とを備え、」と記載されているのを、
「遊技状態制御手段と、
表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、
前記導出操作手段の操作態様を報知可能な報知期間に、所定ゲーム数にわたって制御する報知制御手段と、を備え、」(下線は、訂正箇所を示す。以下同様。)に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、
「前記特定遊技状態への制御が開始した後に該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ、前記特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、」と記載されているのを、
「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ、該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、
「前記特定遊技状態への制御が中断した後、再度前記特定遊技状態へ制御されたときは、前記特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始せず、」と記載されているのを、
「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した後、該報知期間中において前記特定遊技状態へ再度制御されたときは、該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始せず、」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落[0009]に、
「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
ゲームを進行可能な状態において進行操作がなされた場合に、ゲームを進行させる制御を行うゲーム進行制御手段と、
ゲームに関連する信号を外部出力する制御を行う外部出力制御手段と、
遊技用価値の付与を伴う付与表示結果と遊技用価値が用いられることなく次のゲームを行うことが可能な再遊技表示結果とを含む複数種類の表示結果のうちのいずれかの導出を許容する事前決定手段と、
ゲームの結果に応じて、前記事前決定手段によって前記再遊技表示結果の導出が許容される確率が所定遊技状態よりも高い特定遊技状態に制御する遊技状態制御手段とを備え、
前記外部出力制御手段は、
遊技に用いられる賭数を示す賭数信号を出力する賭数信号出力手段と、
前記特定遊技状態への制御に基づいて、該特定遊技状態に制御された最初のゲームにおける前記賭数信号が出力される前に特定遊技状態信号の出力を開始可能な特定遊技状態信号出力手段と、
前記付与表示結果が導出されたときに付与信号を出力する付与信号出力手段とを含み、
前記特定遊技状態信号出力手段は、
前記特定遊技状態信号の出力を開始してから該特定遊技状態信号が所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、
前記特定遊技状態への制御が開始した後に該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ、前記特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、
前記特定遊技状態への制御が中断した後、再度前記特定遊技状態へ制御されたときは、前記特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始せず、
前記特定遊技状態信号の出力を開始した以降で開始される所定ゲームにおいて、前記付与表示結果が導出されずに前記付与信号が出力されなかったときには前記特定遊技状態信号の出力を終了する一方、前記付与表示結果が導出されて前記付与信号が出力されたときには前記特定遊技状態信号の出力を前記付与信号の出力が終了するまで継続させた後に終了する。」と記載されているのを、
「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
ゲームを進行可能な状態において進行操作がなされた場合に、ゲームを進行させる制御を行うゲーム進行制御手段と、
ゲームに関連する信号を外部出力する制御を行う外部出力制御手段と、
遊技用価値の付与を伴う付与表示結果と遊技用価値が用いられることなく次のゲームを行うことが可能な再遊技表示結果とを含む複数種類の表示結果のうちのいずれかの導出を許容する事前決定手段と、
ゲームの結果に応じて、前記事前決定手段によって前記再遊技表示結果の導出が許容される確率が所定遊技状態よりも高い特定遊技状態に制御する遊技状態制御手段と、
表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、
前記導出操作手段の操作態様を報知可能な報知期間に、所定ゲーム数にわたって制御する報知制御手段と、を備え、
前記外部出力制御手段は、
遊技に用いられる賭数を示す賭数信号を出力する賭数信号出力手段と、
前記特定遊技状態への制御に基づいて、該特定遊技状態に制御された最初のゲームにおける前記賭数信号が出力される前に特定遊技状態信号の出力を開始可能な特定遊技状態信号出力手段と、
前記付与表示結果が導出されたときに付与信号を出力する付与信号出力手段とを含み、
前記特定遊技状態信号出力手段は、
前記特定遊技状態信号の出力を開始してから該特定遊技状態信号が所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、
前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ、該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、
前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した後、該報知期間中において前記特定遊技状態へ再度制御されたときは、該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始せず、
前記特定遊技状態信号の出力を開始した以降で開始される所定ゲームにおいて、前記付与表示結果が導出されずに前記付与信号が出力されなかったときには前記特定遊技状態信号の出力を終了する一方、前記付与表示結果が導出されて前記付与信号が出力されたときには前記特定遊技状態信号の出力を前記付与信号の出力が終了するまで継続させた後に終了する。」に訂正する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、「表示結果」の導出に関し、「表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段」を備えること、及び、これに関連して「前記導出操作手段の操作態様を報知可能な報知期間に、所定ゲーム数にわたって制御する報知制御手段」を備えること、との発明特定事項を加えることで特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、「表示結果」の導出に関する発明特定事項を新たに加えるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1のうち、「表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段」を備えるとする訂正について、本件特許明細書の段落[0045]に「…前記可変表示装置に表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段(例えば、ストップスイッチ8L、8C、8R)とを備え…」(なお、“…”は、転記を省略している箇所を示す。以下同様。)と記載されている。
また、訂正事項1のうち、「前記導出操作手段の操作態様を報知可能な報知期間に、所定ゲーム数にわたって制御する報知制御手段」を備えるとする訂正について、本件特許明細書の段落[0045]に「…前記導出操作手段の操作態様(例えば、正解の押し順や不正解の押し順)…」と、段落[0338]に「…遊技状態がRT0~3であるときに、サブ制御部91により、内部抽選結果を報知するナビ演出を実行可能な報知期間となるアシストタイム(以下、ATという)に演出状態を制御可能となっている。…」と、段落[0350]に「ナビストック数とは、所定ゲーム数(本実施例では50ゲーム)にわたりATに制御される権利の数を示す。ナビストック数を1消費(減算)することにより、所定ゲーム数の間、ATに制御され、その間ナビ演出が実行される。…」と、段落[0361]に「サブ制御部91は、ATに制御されている場合には、遊技状態に応じたナビ対象役に当選することにより、ナビ演出を実行する。…」と、段落[0364]に「また、押し順ベルのいずれかに当選したときのナビ演出としては、右下がりベルまたは中段ベルを確実に入賞させるための押し順(図19参照)が報知される。…」と、段落[0893]に「…一連のATとは、たとえば、初当りのATからサブ制御部91により制御することが決定されるATが終了するまでや、ナビストック1に対応する50ゲームのATなどをいい、潜伏期間や遊技者の操作ミスなどにより制御される非AT中を含む概念をいう。…」と、記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前に「前記特定遊技状態への制御が開始した後に該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても」とあったものを、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても」とすることで、「特定遊技状態信号」の「出力」に関して、特定遊技状態への制御が開始し、かつ該特定遊技状態への制御が中断する期間が報知期間中である点、及び、特定遊技状態への制御が開始したときの該特定遊技状態への制御に基づいて特定遊技状態信号の出力が開始する点を限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項2は、「特定遊技状態信号」の「出力」に関する発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2について、本件特許明細書の段落[0400]に「外部出力制御処理では、まず、RT2信号の出力命令が設定されているか否かを判定し(Sk101)、RT2信号の出力命令が設定されていればSk102に移行する。RT2信号の出力命令は、前述したように、次ゲームから通常・RT2が開始する場合及び通常・RT2が当該ゲームで終了した場合に設定される。」と、段落[0401]に「Sk102においては、出力命令をクリアし、Sk103においてRT2信号の出力を開始し、Sk104においてRT2信号を出力している期間を特定するためのRT2出力中カウンタの値を1加算し、Sk114に移行する。RT2出力中カウンタの値は、RAM41cにおいて記憶される。」と、段落[0403]に「Sk105において、RT2信号が出力中であると判定されたときには、Sk106においてRT2出力中カウンタの値を1加算し、Sk107に移行する。Sk107においては、1ゲームが終了したときで、かつメダルOUT信号を出力していた場合にはその出力が完了した後であるか否かが判定される。具体的には、RT2信号の出力を開始してから新たに開始されたゲームが終了して、図22のSd6におけるゲーム終了時処理に移行されたか否か、およびメダルOUT信号を出力中でないか否かが判定される。Sk107では、1ゲームが終了し、かつメダルOUT信号が出力されていないときか、あるいは1ゲームが終了した後でかつメダルOUT信号の出力が完了したときにSk108に移行する。」と、段落[0404]に「Sk107において、1ゲームが終了したときであって、かつメダルOUT信号を出力していた場合にはその出力が完了した後であると判定されたときには、Sk108において、RT2出力中カウンタの値が、2000ms以上相当の値に到達したか否かが判定される。2000ms以上相当の値とは、本実施例においては、2000÷(外部出力制御処理が実行される間隔=0.56×4)≒892.8であるから、893以上の値となる。Sk108では、RT2信号の出力を開始してから新たに開始されたゲームが終了するまでに2000ms以上経過していれば、2000ms以上相当の値に到達したと判定される。」と、段落[0405]に「Sk108においてRT2出力中カウンタの値が2000ms以上相当の値に到達していると判定されたときには、Sk109においてRT2信号の出力を停止させるとともに、RT2出力中カウンタの値をリセットしてSk114へ移行する。」と、段落[0406]に「一方、Sk108において、RT2出力中カウンタの値が2000ms以上相当の値に到達していないと判定されたときには、Sk110において到達していない旨を示す時間未達フラグをRAM41cに設定する。時間未達フラグが設定されるのは、RT2信号の出力を開始してから2000ms経過するまでに、新たにゲームを開始して終了させたときである。このため、時間未達フラグが設定される場合とは、たとえば、前回ゲームが終了してから今回ゲームを即座に開始させた後、直ちにストップスイッチを操作して終了させた場合などが該当する。Sk110において時間未達フラグが設定された場合には、RT2信号の出力を停止させることなく、Sk114へ移行させる。」と、段落[0421]に「RT2信号とメダルIN信号が被って出力されると、メダルIN信号により特定される消費メダル数が通常・RT2の開始後のものであるのか、通常・RT2の開始前のものであるのか、や通常・RT2の終了後のものであるのか、通常・RT2の終了前のものであるのか、を確実に特定できなかったり、メダルIN信号により特定されるゲームが、通常・RT2の開始後のゲームであるのか、通常・RT2の開始前のゲームであるのか、や通常・RT2の終了後のゲームであるのか、通常・RT2の終了前のゲームであるのか、を確実に特定できなかったりするという問題が生じる。」と、段落[0431]に「また、本実施例においてメイン制御部41は、RT2信号の出力制御中、すなわちRT2信号の出力開始後、出力制御が終了する前に、再度、RT2信号の出力命令が設定された場合(RT2開始後即座に終了してしまった場合など)には、RT2信号の出力を完了させた後、再びRT2信号を出力するようになっている。…」と、段落[0439]に「ATが開始した後、通常・RT1においてリプレイGR1~6のいずれかが当選すると、サブ制御部91により昇格リプレイを入賞させるためのナビ演出が実行され、これに従って停止操作を行うことで昇格リプレイが入賞し、通常・RT1から通常・RT0に移行し、さらに通常・RT1においてリプレイGR11~15のいずれかが当選すると、サブ制御部91により特殊リプレイを入賞させるためのナビ演出が実行され、これに従って停止操作を行うことで特殊リプレイが入賞し、通常・RT0から通常・RT2に移行する。…」と、段落[0893]に「(2) 前述した実施例におけるスロットマシン1においては、通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力する例について説明した。しかし、AT中であって通常・RT2中において、遊技者の操作ミスやボーナスの当選などによりATおよび通常・RT2が中断された場合に、その後、再びATおよび通常・RT2へ移行させることも可能となるが、この場合、一連のATに対してRT2信号を複数回送信してしまい、外部機器において初当りAT回数を正確に把握することができない。よって、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにしてもよい。一連のATとは、たとえば、初当りのATからサブ制御部91により制御することが決定されるATが終了するまでや、ナビストック1に対応する50ゲームのATなどをいい、潜伏期間や遊技者の操作ミスなどにより制御される非AT中を含む概念をいう。…」と、記載されていることから、当該訂正事項2は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、本件訂正前に「前記特定遊技状態への制御が中断した後、再度前記特定遊技状態へ制御されたときは」とあったものを、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した後、該報知期間中において前記特定遊技状態へ再度制御されたときは」とすることで、「特定遊技状態信号」の「出力」に関して、特定遊技状態への制御が開始し、かつ該特定遊技状態への制御が中断し、さらに特定遊技状態へ再度制御される期間が報知期間中である点、及び、特定遊技状態への制御が開始したときの該特定遊技状態への制御に基づいて特定遊技状態信号の出力が開始する点を限定し、また、本件訂正前に「前記特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始せず」とあったものを、「該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始せず」とすることで、「特定遊技状態信号」の「出力」に関して、特定遊技状態への再度の制御に基づいて特定遊技状態信号の再度の出力を開始しない点を限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項3は、「特定遊技状態信号」の「出力」に関して、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3について、本件特許明細書の段落[0400]に「外部出力制御処理では、まず、RT2信号の出力命令が設定されているか否かを判定し(Sk101)、RT2信号の出力命令が設定されていればSk102に移行する。RT2信号の出力命令は、前述したように、次ゲームから通常・RT2が開始する場合及び通常・RT2が当該ゲームで終了した場合に設定される。」と、段落[0401]に「Sk102においては、出力命令をクリアし、Sk103においてRT2信号の出力を開始し、Sk104においてRT2信号を出力している期間を特定するためのRT2出力中カウンタの値を1加算し、Sk114に移行する。RT2出力中カウンタの値は、RAM41cにおいて記憶される。」と、段落[0439]に「ATが開始した後、通常・RT1においてリプレイGR1~6のいずれかが当選すると、サブ制御部91により昇格リプレイを入賞させるためのナビ演出が実行され、これに従って停止操作を行うことで昇格リプレイが入賞し、通常・RT1から通常・RT0に移行し、さらに通常・RT1においてリプレイGR11~15のいずれかが当選すると、サブ制御部91により特殊リプレイを入賞させるためのナビ演出が実行され、これに従って停止操作を行うことで特殊リプレイが入賞し、通常・RT0から通常・RT2に移行する。…」と、段落[0893]に「(2) 前述した実施例におけるスロットマシン1においては、通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力する例について説明した。しかし、AT中であって通常・RT2中において、遊技者の操作ミスやボーナスの当選などによりATおよび通常・RT2が中断された場合に、その後、再びATおよび通常・RT2へ移行させることも可能となるが、この場合、一連のATに対してRT2信号を複数回送信してしまい、外部機器において初当りAT回数を正確に把握することができない。よって、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにしてもよい。一連のATとは、たとえば、初当りのATからサブ制御部91により制御することが決定されるATが終了するまでや、ナビストック1に対応する50ゲームのATなどをいい、潜伏期間や遊技者の操作ミスなどにより制御される非AT中を含む概念をいう。…」と、記載されていることから、当該訂正事項3は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項1~3により、本件特許明細書の段落[0009]の記載が特許請求の範囲の記載と整合が取れなくなったことを是正するものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、本件特許明細書の段落[0009]の記載を、特許請求の範囲の記載と整合を取るためのものであるから、訂正事項1~3それぞれのウで説明したとおり、訂正事項4は、本件特許明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
4 まとめ
上記1~3において検討したとおりであるから、本件訂正請求に係る上記訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、上記訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正請求に係る訂正を認める。
第3 特許異議の申立について
1 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(当審にて請求項1をA~J、K’、L’、M、X1、X2に分説した。なお、K’、L’は、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lに対応する)。
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C ゲームを進行可能な状態において進行操作がなされた場合に、ゲームを進行させる制御を行うゲーム進行制御手段と、
D ゲームに関連する信号を外部出力する制御を行う外部出力制御手段と、
E 遊技用価値の付与を伴う付与表示結果と遊技用価値が用いられることなく次のゲームを行うことが可能な再遊技表示結果とを含む複数種類の表示結果のうちのいずれかの導出を許容する事前決定手段と、
F ゲームの結果に応じて、前記事前決定手段によって前記再遊技表示結果の導出が許容される確率が所定遊技状態よりも高い特定遊技状態に制御する遊技状態制御手段と、
X1 表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、
X2 前記導出操作手段の操作態様を報知可能な報知期間に、所定ゲーム数にわたって制御する報知制御手段と、を備え、
G 前記外部出力制御手段は、
遊技に用いられる賭数を示す賭数信号を出力する賭数信号出力手段と、
H 前記特定遊技状態への制御に基づいて、該特定遊技状態に制御された最初のゲームにおける前記賭数信号が出力される前に特定遊技状態信号の出力を開始可能な特定遊技状態信号出力手段と、
I 前記付与表示結果が導出されたときに付与信号を出力する付与信号出力手段とを含み、
J 前記特定遊技状態信号出力手段は、
前記特定遊技状態信号の出力を開始してから該特定遊技状態信号が所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、
K’ 前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ、該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し、
L’ 前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した後、該報知期間中において前記特定遊技状態へ再度制御されたときは、該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始せず、
M 前記特定遊技状態信号の出力を開始した以降で開始される所定ゲームにおいて、前記付与表示結果が導出されずに前記付与信号が出力されなかったときには前記特定遊技状態信号の出力を終了する一方、前記付与表示結果が導出されて前記付与信号が出力されたときには前記特定遊技状態信号の出力を前記付与信号の出力が終了するまで継続させた後に終了する、スロットマシン。」
2 取消理由の概要
当審において平成31年4月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次の(1)~(5)のとおりである。
(1)理由1.(新規事項)平成29年12月4日付け手続補正書でした補正が、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lについて、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものである。
(2)理由2.(サポート要件)本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lは本件特許明細書に記載されておらず、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。
(3)理由3.(明確性)本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は構成K、Lについて明確でなく、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。
(4)理由4.(新規性)本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第3号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(5)理由5.(進歩性)本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第3、4号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠方法>
甲第3号証:特開2013-138747号公報(公知日:平成25年7月18日)
甲第4号証:特開2012-40118号公報(公知日:平成24年3月1日)
3 当審における判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 理由1(新規事項)について
(ア)はじめに
取消理由1は、本件訂正発明の構成K’、L’に関して、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lの発明特定事項は、平成29年12月4日付け手続補正書でした補正により加入されたものであるが、当該補正は新規事項を追加するものであるというものであった。
そこで、本件訂正発明の構成K’、L’について、検討する。
(イ)「中断」について
構成K’、L’のいずれにも「特定遊技状態への制御が中断した」ことが特定されている。そこで、この「中断」について、当初明細書等の記載に基づいて、まず検討する。当初明細書等には、「中断」について、以下の3箇所に記載がある。
a 段落[0045]
段落[0045]には、
「(6) (1)のスロットマシンにおいて、前記ゲーム進行制御手段から送信される制御情報(コマンド)に基づいて演出の制御を行う演出制御手段(サブ制御部91)と、
・・・
前記演出制御手段は、
前記決定結果情報送信手段から送信された前記決定結果情報を受信する決定結果情報受信手段と、
遊技者にとって有利な有利期間(例えば、AT)に制御する有利期間制御手段と、
前記導出操作手段の操作態様を特定可能な情報を報知する操作態様報知手段とを備え、
前記操作態様報知手段は、
前記有利期間制御手段によって前記有利期間に制御されている場合において、前記決定結果情報受信手段が前記第2決定結果を示す前記決定結果情報を受信したときには、前記価値付与手段によって有利な価値が付与される操作態様(例えば、正解の押し順)を特定可能な情報を報知し(例えば、正解の押し順のナビ演出を実行するサブ制御部91の制御)、
前記決定結果情報受信手段が前記第1決定結果を示す前記決定結果情報を受信した場合において、前記正解操作の連続回数(例えば、正解カウンタの値)が所定回(例えば、3回)となる可能性があり、かつ前記特定遊技状態信号を外部出力すると判別したとき(例えば、初当りAT時)には、前記決定結果情報から特定される前記操作態様(例えば、正解の内部押し順)を特定可能な情報を報知する一方で、前記正解操作の連続回数が所定回となる可能性があり、且つ前記特定遊技状態信号を外部出力しないと判別したとき(例えば、中断後AT時)には、該特定される操作態様とは異なる操作態様を特定可能な情報を報知し、
前記特定遊技状態信号出力手段は、前記特定遊技状態において、前記操作態様決定手段が決定した操作態様で前記導出操作手段を操作する正解操作が所定回連続(例えば、3回)して行われた場合、前記特定遊技状態信号を出力する(変形例(2)の(b)参照)。」
と記載されている。この記載における「中断後AT時」を検討するために、当初明細書等の記載を参照する。
上記段落[0045]の記載において、「(1)のスロットマシンにおいて」として参照される段落[0010]には、以下のように記載されている。
「なお、以下の構成を備えるものであってもよい。
(1) 遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置(リール2L、2C、2R)に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(スロットマシン1)であって、
・・・
ゲームに関連する信号(外部出力信号)を外部出力する制御を行う外部出力制御手段(メイン制御部41、図23)とを備え、
前記外部出力制御手段は、
前記複数の遊技状態のうち特定遊技状態(通常・RT2)の制御を条件として、前記特定遊技状態に対応する特定遊技状態信号(RT2信号)を出力する特定遊技状態信号出力手段(図23のSk101~Sk113)と、
・・・。」
このことからすると、上記段落[0045]の記載における、「特定遊技状態」とは「通常・RT2」であり、「特定遊技状態信号」とは「RT2信号」である。また、上記段落[0045]の記載において、「(変形例(2)の(b)参照)」として参照される、段落[0904]から[0911]の記載を見ると、段落[0904]には、
「(b) 通常・RT2において、操作手順に関わらず入賞可能な所定役に当選したときにメイン制御部41により操作手順を決定し、当該操作手順を特定するための情報を特定するためのコマンドをサブ制御部91に送信し、サブ制御部91では、一連のATに制御されてからRT2信号を1回出力するまで(すなわち操作手順が所定回数連続して正解するまで)は、所定役に当選したときにコマンドから特定される操作手順を示唆するナビ演出を実行し、メイン制御部41では所定役当選ゲームにおける操作手順が所定回数連続して決定した操作手順と合致したと判定したときにRT2信号を出力するようにし、サブ制御部91では、一連のATに制御されてからRT2信号を1回出力した後は(すなわち操作手順が所定回数連続して正解した後)は、所定役に当選したときに操作手順が所定回数連続してメイン制御部41側で決定した操作手順と合致しないようにナビ演出を実行して、メイン制御部41からさらにRT2信号が出力されないようにしてもよい。このように構成する場合には、通常・RT2が終了したときにRT2信号を出力しないようにする。以下、より具体的に説明する。」
と、段落[0908]には、
「一方、サブ制御部91は、一連のAT中の、通常・RT2において、すでにRT2信号出力済フラグが設定されているときであって、通常リプレイ当選したときで、さらに正解カウンタの値が所定値より1少ない値(たとえば2)であるときには、内部当選コマンドから特定されるリールと異なるリールを示唆する特殊ナビ演出を実行することにより、メイン制御部41からRT2信号を出力させないようにする。」
と、段落[0909]から[0910]には、
「[0909] 以上のように構成することにより、サブ制御部91は、RT2信号を外部出力する必要があるか否かに応じて、メイン制御部41が決定した操作手順を報知するか否かを決定し、メイン制御部41は正解操作の連続回数を基にRT2信号を外部に出力するため、サブ制御部91の正確な制御状態を示す情報を外部に出力することができる。従って、サブ制御部91の制御状態もメイン制御部41が外部に出力することができるため、外部出力するための信号経路を複雑にすることなく、サブ制御部91の制御状態であっても、正確にスロットマシン外部に伝達することができる。
[0910] なお、一連のATをナビストック1に対応する50ゲームのATとした場合には、ナビストック1に対応してRT2信号を1回出力することができ、その結果、外部機器において、ナビストック1に対応するATに制御された回数を正確に認識することができる。」
と、記載されている。これらのことからすると、上記段落[0045]の記載における、「前記正解操作の連続回数が所定回となる可能性があり、且つ前記特定遊技状態信号を外部出力しないと判別したとき」とは、通常・RT2において、一連のATに制御されてからRT2信号を1回出力した後のときであり、そのときにRT2信号を出力させないような構成とすることで、外部機器においてATに制御された回数を正確に認識することができるものである。
また、段落[0046]には、
「このような構成によれば、演出制御手段は、操作態様決定手段が決定した操作態様で導出操作手段を操作する正解操作の連続回数及び特定遊技状態信号を外部出力する必要があるか否かに応じて、操作態様決定手段が決定した操作態様を報知するか否かを決定することができる。そして、演出制御手段が特定遊技状態信号を外部出力する必要があると判別した場合に操作態様決定手段が決定した操作態様を報知するため、ゲーム進行制御手段は、正解操作が所定回連続して行われたことに応じて特定遊技状態信号を外部出力し、必要に応じて演出制御手段の制御状態を示す情報を外部に出力することができる。ここで、演出制御手段の制御状態を示す情報を外部に出力することができない場合や、不要な場合であっても演出制御手段の制御状態を示す情報を外部に出力してしまう場合等、外部に出力するスロットマシンの情報としては、正確なものとは言えない。しかしながら、演出制御手段は、特定遊技状態信号を外部出力する必要があるか否かに応じて、操作態様決定手段が決定した操作態様を報知するか否かを決定し、ゲーム進行制御手段は正解操作の連続回数を基に演出制御手段の制御状態を示す特定遊技状態信号を外部に出力するため、演出制御手段の正確な制御状態を示す情報を外部に出力することができる。従って、演出制御手段の制御状態もゲーム進行制御手段が外部に出力することができるため、外部出力するための信号経路を複雑にすることなく、演出制御手段の制御状態であっても、正確にスロットマシン外部に伝達することができる。」
と記載されており、段落[0045]に記載されるような構成を取ることで、演出制御手段の正確な制御状態を示す情報を外部に出力することができるとしている。
以上の点を踏まえると、段落[0045]に記載された「中断後AT時」における「中断」とは、一連のATに制御されている状態において、通常・RT2から、通常・RT2ではなくなることを意味していると認められる。
b 段落[0439]
段落[0438]から[0439]には、次のとおり記載されている。
「[0438] また、本実施例では、図30に示すように、ナビストック抽選に当選し、1以上のナビストックを獲得すると、0~32ゲームの潜伏期間を経た後、ATの制御が開始される。このATは、通常・RT2に移行した時点から、所定ゲーム数(本実施例では50ゲーム+α(上乗せ数))経過するまで1セットのATとして継続する。
[0439] ATが開始した後、通常・RT1においてリプレイGR1~6のいずれかが当選すると、サブ制御部91により昇格リプレイを入賞させるためのナビ演出が実行され、これに従って停止操作を行うことで昇格リプレイが入賞し、通常・RT1から通常・RT0に移行し、さらに通常・RT1においてリプレイGR11~15のいずれかが当選すると、サブ制御部91により特殊リプレイを入賞させるためのナビ演出が実行され、これに従って停止操作を行うことで特殊リプレイが入賞し、通常・RT0から通常・RT2に移行する。以後、特別役の当選などにより中断する場合を除きナビ演出に従って停止操作を行っていれば、ATが終了するまでは、通常・RT2に制御されることとなる。」
また、段落[0324]には、
「通常・RT2は、通常・RT0において特殊リプレイが入賞したときに移行する。この際、遊技状態フラグの値は、通常遊技状態を示す0000から変わらず、RTフラグの値が、RT2を示す0010に更新される。そして、通常・RT2は、移行出目が停止して通常・RT1に移行するか、特別役が当選して内部中1または内部中2に移行することで終了する。」
との記載がある。
これらの記載からすると、段落[0439]の「中断」とは、ATの制御が開始され、通常・RT2に移行した後、移行出目が停止して通常・RT1に移行するか、特別役が当選して内部中1または内部中2に移行することにより、1セットのATは継続しているが、通常・RT2が終了することを意味していると認められる。
c 段落[0893]
段落[0893]には、
「(2) 前述した実施例におけるスロットマシン1においては、通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力する例について説明した。しかし、AT中であって通常・RT2中において、遊技者の操作ミスやボーナスの当選などによりATおよび通常・RT2が中断された場合に、その後、再びATおよび通常・RT2へ移行させることも可能となるが、この場合、一連のATに対してRT2信号を複数回送信してしまい、外部機器において初当りAT回数を正確に把握することができない。よって、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにしてもよい。一連のATとは、たとえば、初当りのATからサブ制御部91により制御することが決定されるATが終了するまでや、ナビストック1に対応する50ゲームのATなどをいい、潜伏期間や遊技者の操作ミスなどにより制御される非AT中を含む概念をいう。以下に具体例を説明する。」
と記載されている。また、「以下に具体例を説明する」として記載される段落[0894]から[0911]の記載を見ると、段落[0894]には、
「(a) 通常・RT2中において、操作手順に応じて第1の入賞役(たとえば下段リプレイ)か第2の入賞役(たとえば通常リプレイ)を入賞させ得る特定の抽選対象役について抽選し、一連のATに制御されてからRT2信号を1回出力するまで(すなわち下段リプレイが1回入賞するまで)は、特定の抽選対象役に当選したときに第1の入賞役を入賞させ得る操作手順を示唆するナビ演出を実行し、RT2信号がすでに出力済みの一連のATにおいて特定の抽選対象役に当選したときには第2の入賞役を入賞させ得る操作手順を示唆するナビ演出を実行するようにし、第1の入賞役が入賞したときにRT2信号を出力するようにしてもよい。このように構成する場合には、通常・RT2が終了したときにRT2信号を出力しないようにする。以下、より具体的に説明する。」
と、段落[0898]から[0901]には、
「[0898] 以上のように構成することにより、一連のAT中においてリプレイGR41~リプレイGR44のいずれかに当選したときに、サブ制御部91は、RT2信号出力済フラグが設定されているか否かを判定して、RT2信号出力済フラグが設定されていないときには下段リプレイを入賞させるための操作手順を示唆して下段リプレイ入賞させ、その結果、RT2信号を出力させるのに対し、RT2信号出力済フラグが設定されているときには通常リプレイを入賞させるための操作手順を示唆して通常リプレイ入賞させて、RT2信号を出力させないようにすることができる。すなわち、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するように構成されている。
[0899] これにより、サブ制御部91によって一連のAT中においてすでにRT2信号を出力したか否かにより、メイン制御部41からRT2信号を出力させるか否かをコントロールできるようになる。このため、外部機器において一連のATに制御された回数を正確に認識することができる。
[0900] また、サブ制御部91は、RT2信号を外部出力する必要があるか否かに応じて、メイン制御部41が決定した操作手順を報知するか否かを決定し、メイン制御部41は下段リプレイ入賞を基にRT2信号を外部に出力するため、サブ制御部91の正確な制御状態を示す情報を外部に出力することができる。従って、サブ制御部91の制御状態もメイン制御部41が外部に出力することができるため、外部出力するための信号経路を複雑にすることなく、サブ制御部91の制御状態であっても、正確にスロットマシン外部に伝達することができる。
[0901] なお、一連のATをナビストック1に対応する50ゲームのATとした場合には、ナビストック1に対応してRT2信号を1回出力することができ、その結果、外部機器において、ナビストック1に対応するATに制御された回数を正確に認識することができる。」
と、記載されている。また、段落[0904]から[0911]には、上記「(ア)段落[0045]」において摘記したとおりの記載がされている。
これらのことからすると、上記段落[0893]の記載における、「AT中であって通常・RT2中において、遊技者の操作ミスやボーナスの当選などによりATおよび通常・RT2が中断された場合」とは、AT中であって通常・RT2中において、遊技者の操作ミスやボーナスの当選などによりATおよび通常・RT2が中断された場合であって、そのような場合でも、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するように構成することで、外部機器において一連のATに制御された回数を正確に認識することができるものである。
そうすると、段落[0893]の記載における、「中断」とは、一連のAT中において、通常・RT2から、通常・RT2ではなくなることを意味していると認められる。
d 「通常・RT2ではなくなること」について
「本実施例の遊技状態及びRTの移行状況について説明する」([0339])として記載される段落[0346]から[0347]には、
「[0346]
通常・RT2では、特別役が当選することで、当選した特別役の種類に応じて内部中1または内部中2に移行する。
[0347]
通常・RT2において左ベル1~4、中ベル1~4、右ベル1~4のいずれかが当選し、かつ小役を入賞させることができなかった場合に移行出目が停止する。このため、通常・RT2では、左ベル1~4、中ベル1~4、右ベル1~4のいずれかが当選し、小役を入賞させることができなかった場合に通常・RT1へ移行することとなる。」
と記載されており、「通常・RT2ではなくなること」とは、特別役が当選することで、内部中1または内部中2に移行すること、または、移行出目が停止した場合に通常・RT1へ移行することを意味していると認められる。
また、段落[0338]には、
「また、本実施例におけるスロットマシンは、遊技状態がRT0~3であるときに、サブ制御部91により、内部抽選結果を報知するナビ演出を実行可能な報知期間となるアシストタイム(以下、ATという)に演出状態を制御可能となっている。また、特に、遊技者にとって有利な通常・RT2においてATに制御されている状態をアシストリプレイタイム(以下、ARTという)と呼ぶ。」
と記載されており、ATとなるのは、遊技状態がRT0~3であるときであり、内部中1または内部中2ではATにはならないものと認められる。
e 「中断」についてのまとめ
以上のことからすると、当初明細書等において、「中断」とは、一連のATに制御されている状態において、通常・RT2から、AT状態が継続したまま通常・RT1へ移行することで、または、内部中1または内部中2に移行してAT状態ではなくなることで、通常・RT2ではなくなることを、意味していると認められる。
(ウ)構成K’について
a 「中断」について
本件訂正発明には「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合」と特定されており、この「中断した場合」は、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に」、「該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合」であることが特定されている。当該特定の「報知期間中」、「特定遊技状態」及び「特定遊技状態信号」はそれぞれ本件特許明細書に記載した事項である「AT中」、「通常・RT2」及び「RT2信号」に対応することからすると、上記特定は、「AT中(前記報知期間中)において通常・RT2(前記特定遊技状態)への制御が開始し通常・RT2(該特定遊技状態)への制御に基づいてRT2信号(前記特定遊技状態信号)の出力を開始した後に、AT中(該報知期間中)において通常・RT2(該特定遊技状態)への制御が中断した場合」ということになる。そうすると、上記特定では「AT中(前記報知期間中)において」との点が特定されており、上記(イ)eで示した「中断」の意味に合致しており、上記特定は当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
b 「継続」について
構成K’の「該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し」との特定は、構成Jに「前記特定遊技状態信号出力手段は、」「該特定遊技状態信号が所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し」と特定されていることに対応するものである。そして、構成K’において、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ」という場合に、「該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続」することについては、以下のとおりである。
当初明細書等には、RT2信号の出力の開始及び停止に関し、段落[0399]から[0410]に記載があり、この記載からすると、RT2信号の出力中に、RT2信号の出力が停止するのは、「1ゲームが終了し、かつメダルOUT信号が出力されていないときか、あるいは1ゲームが終了した後でかつメダルOUT信号の出力が完了したとき」(段落[0403]。Sk107でY)に、「RT2出力中カウンタの値が2000ms以上相当の値に到達していると判定されたとき」(段落[0405]。Sk108でY)に、RT2信号の出力を停止させる(段落[0405]。Sk109)場合、または、「1ゲーム終了時でないか、1ゲーム終了時であってもメダルOUT信号を出力中であると判定されたとき」(段落[0407]。Sk107でN)において、「時間未達フラグが設定されている」、すなわち、「RT2信号を出力させた後であって新たに1ゲームが終了した後であるが、当該1ゲームが終了したときに2000ms経過していなかったために、未だRT2信号を出力している状態である」(段落[0407]。Sk111でY)と判定されたとき、「メダルIN信号の出力制御を終了したタイミングである」(段落[0408]。Sk112でY)と判定されたときに、RT2信号の出力を停止させる(段落[0409]。Sk113)場合である。すなわち、RT2信号の出力が停止するのは、RT2信号の出力を開始してから、2000ms経過した後に次のゲームが終了したとき(段落[0427]から[0428]、図24)、2000ms経過した後に次のゲームが終了したときで、メダルOUT信号の出力が完了したとき(段落[0429]、図25)、2000ms経過するまでに次のゲームが終了したとき、さらに次々ゲームが開始されてメダルIN信号の所定期間に亘る出力が完了したとき(段落[0430]、図26)であり、いずれの場合にも、所定期間(2000ms)以上の期間にわたってRT2信号は出力されている。
そして、構成K’の「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合」とは、当初明細書等における「中断」の意味を踏まえると、「AT中(前記報知期間中)において通常・RT2(前記特定遊技状態)への制御が開始し通常・RT2(該特定遊技状態)への制御に基づいてRT2信号(前記特定遊技状態信号)の出力を開始した後に、AT中(該報知期間中)において通常・RT2(該特定遊技状態)への制御が」、「一連のATに制御されている状態において、通常・RT2から、AT状態が継続したまま通常・RT1へ移行することで、または、内部中1または内部中2に移行してAT状態ではなくなることで、通常・RT2ではなくなる」場合であるが、このような場合でも、RT2信号については、上述のとおり、所定期間以上の期間にわたってRT2信号は出力されている。
そうすると、構成K’における「継続」との特定についても、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(エ)構成L’について
本件訂正発明の構成L’には、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合」と特定されているが、この特定については、上記(ウ)aで示したことと同様、上記(イ)eで示した「中断」の意味に合致しており、上記特定は当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(オ)まとめ
以上(ア)~(エ)のとおり、本件訂正発明の構成K’、L’について、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとすることはできず、本件特許が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした出願に対してされたとすることはできない。
イ 理由2(サポート要件)について
取消理由2は、本件訂正発明の構成K’、L’に関して、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lにおける「特定遊技状態への制御が中断」は、「一連のATに制御されている状態」ではないときに、あるいは、「一連のATに制御されている状態」と関係なく、「特定遊技状態への制御が中断」されることも含むものであるが、この点については、当初明細書等に記載されておらず、また自明でもないというものであった。
しかるに、本件訂正発明の構成K’、L’については、上記アで示したとおり、「AT中(前記報知期間中)において」との点が特定されており、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとなっているとともに、上記第2 3(2)ウ、(3)ウで示したとおり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そうすると、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
ウ 理由3(明確性)について
取消理由3は、本件訂正発明の構成K’、L’に関して、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lについて、構成Kでは、特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、特定遊技状態信号の出力を継続するのに対し、構成Lでは、特定遊技状態への制御が中断した後に、特定遊技状態信号の出力を開始しないことになり、互いに矛盾した動作となっており、発明が明確でないというものであった。
ここで、本件訂正発明の構成K’、L’は、いずれも「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した」点で共通しており、構成K’では、該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、「前記所定期間が経過していなければ、該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続」するというものであり、構成L’では、該特定遊技状態への制御が中断した後、「該報知期間中において前記特定遊技状態へ再度制御されたときは、該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始」しないというものである。「特定遊技状態信号」に着目して見ると、構成K’では、特定遊技状態への制御に基づいて出力を開始した特定遊技状態信号が、特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、その出力を継続するというものである。一方、構成L’では、特定遊技状態への制御に基づいて出力を開始した特定遊技状態信号が、特定遊技状態への制御が中断した後に、特定遊技状態へ再度制御されたときは、該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始しないというものであり、「特定遊技状態への制御に基づいて出力を開始した特定遊技状態信号」と、「特定遊技状態への再度の制御に基づいて」「再度の出力」がされうる「特定遊技状態信号」とは、異なる時点で出力される特定遊技状態信号であり、この後者の特定遊技状態信号について、「特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始しない」とするものである。そうすると、構成K’の「特定遊技状態信号の出力を継続し」における特定遊技状態信号と、構成L’の「特定遊技状態への制御に基づいて出力を開始した特定遊技状態信号」は、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した」ものである特定遊技状態信号である点では共通するが、構成L’の「前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始せず」における再度の出力が開始されない「特定遊技状態信号」は、「該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した後、該報知期間中において前記特定遊技状態へ再度制御されたとき」に「再度の出力」がされうる「特定遊技状態信号」であり、上記構成K’と構成L’とで共通する特定遊技状態信号とは異なる時点で出力される異なる特定遊技状態信号であって、異なる特定遊技状態信号に対して、構成K’では出力を継続し、構成L’では出力を開始しないとすることが、互いに矛盾した動作となるものではない。
そうすると、本件訂正発明は、本件発明の構成K’、L’について明確でないとすることはできず、この点で本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
エ 理由4(新規性)及び理由5(進歩性)について
取消理由通知においては、本件出願の出願日について、本件訂正発明の構成K’、L’に関して、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成K、Lの発明特定事項は、原出願の当初明細書等に記載がなく、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内ではないから、本件出願は不適法な分割出願であり、特許法第44条第2項の遡及効を得ることはできず、本件の出願日は現実の出願日(平成28年6月20日)であるとした上で、新規性及び進歩性の取消理由を通知した。
一方、上記アで示したとおり、本件訂正請求により本件訂正発明の構成K’、L’についての特定は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、また、本件訂正発明の構成K’、L’については、上記第2 3(2)ウ、(3)ウで示したとおり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、この点は、原出願の当初明細書等にも記載されている。
そうすると、本件出願は、適法な分割出願であり、その出願日は原出願の出願日(平成23年12月29日)とみなされる。
そして、取消理由通知の理由4(新規性)及び理由5(進歩性)で引用した刊行物(甲第3、4号証)は、いずれも本件出願の出願遡及日より後に公知となったものであり、これらの刊行物に基づいて、本件訂正発明の新規性及び進歩性を否定することはできない。
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
(2)特許異議申立理由について
当審における平成31年4月17日付け取消理由通知は、特許異議申立の理由を全て含むものであることから、特許異議申立理由は、上記第3 3(1)において検討済みである。
(3)特許異議申立人の意見について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和1年8月5日に提出した意見書において、以下の主張をしている。
(a)「(2)構成K、Lの新規事項について」
「(2-3)平成29年12月4日提出の手続補正書による補正の適法性
a.「該特定遊技状態信号の出力を継続」について
権利者は、平成29年12月4日提出の意見書において、構成Kに含まれる「特定遊技状態信号の出力を継続する」という事項は、当初明細書等の段落[0431]に記載されていると主張しているが、段落[0431]の記載は、以下のとおりであり、「継続」に関する記載は全くない。
「【0431】
また、本実施例においてメイン制御部411は、RT2信号の出力制御中、すなわちRT2信号の出力開始後、出力制御が終了する前に、再度、RT2信号の出力命令が設定された場合(RT2開始後即座に終了してしまった場合など)には、RT2信号の出力を完了させた後、再びRT2信号を出力するようになっている。一方、電源投入時において電断前の状態に復帰する際に、RT2信号の出力制御中の状態に復帰する場合には、復帰前にRT2信号の出力命令が設定され、その時点から改めてRT2信号を出力するようになっている。」
また、当初明細書等の段落[0431]は、段落[0432](「このため」より明らか)につながり、この段落[0432]には、図27、図28に関しての説明が記載されている。そして、図27、図28には、以下のように、RT2への制御は、電断により中断すること、および、復帰後にRT2信号は一旦offとなり、それからonとなっていることが示されている。
しかしながら、いずれの図にも、このRT2への制御が中断した場合に、RT2信号の出力を継続することは示されていない。すなわち、「該特定遊技状態信号の出力を継続」についての記載はない。
(図面省略)
」
(b)「(2)構成K、Lの新規事項について」
「(2-3)平成29年12月4日提出の手続補正書による補正の適法性」
「b.「前記特定遊技状態への制御が中断した後、・・前記特定遊技状態信号の出力を開始しない」について
当初明細書等の段落[0893]には、「一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにしてもよい。」という記載は確かにある。しかし、段落[0893」の該当箇所の記載は、正確には以下のとおりである。
「【0893】
・・・前述した実施例におけるスロットマシン1においては、通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力する例について説明した。しかし、AT中であって通常・RT2中において、遊技者の操作ミスやボーナスの当選などによりATおよび通常・RT2が中断された場合に、その後、再びATおよび通常・RT2へ移行させることも可能となるが、この場合、一連のATに対してRT2信号を複数回送信してしまい、外部機器において初当りAT回数を正確に把握することができない。よって、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにしてもよい。一連のATとは、たとえば、・・・」
上記段落[0893]の後段に記載されているものは、前述した実施例(図27、図28を含む)とは別の実施例の説明であり、本件特許発明は、当初明細書等の段落[0065]から始まる本実施例(前述した実施例)に関する発明であり、本実施例と別の実施例を補正により追加することはできない。」
(c)「(3)権利者による訂正請求及び意見書について
令和1年6月17日提出の訂正請求書と意見書について、意見書に対して、反論する。訂正請求により前述の構成K、Lは、それぞれ構成K’、L’となった。
(3-1)構成K’について
権利者は意見書の第6頁第6行~第8行において、構成K’の根拠として、当初明細書等の段落[0400]、[0401]、[0403]から[0406]、[0421]、[0431]、および図24をあげ、「通常・RT2への制御が開始し該通常・RT2への制御に基づいてRT2信号の出力を開始する点、通常・RT2への制御が中断した場合であっても、2000msが経過していなければ、該RT2信号の出力を継続する点が開示されています。」と主張している。
しかしながら、上記根拠個所である当初明細書等の段落[0400]、[0401]、[0403]から[0406]、[0421]、[0431]、および図24には、「中断」、「継続」に関する記載はない。
もっとも、上記根拠個所以外の段落である当初明細書等の段落[0430]には、図26の説明があり、ゲームの終了を「中断」ととらえると、権利者の上記主張に類似する記載はある。しかし、構成K’では、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断」とあるように、特定遊技状態への制御、すなわち、RTへの制御の中断を、「中断」としている。したがって、ゲームの終了を「中断」ととらえることはできない。
また、以下のように、図26には、RT2への制御の中断は示されていない。
したがって、段落[0430]にも、構成K’の「該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、前記所定期間が経過していなければ、前記特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し」という事項は記載されていない。
(図面省略)
したがって、構成Kの文言を残した構成K’は新規事項を含んでいるから訂正によっても理由1(新規事項)は解消されていない。
なお、訂正請求書における訂正事項2(構成K’)では、根拠個所が意見書と整合しておらず、上記に加えて、段落[0439]、[0893]も存在する。特に段落[0893]には構成K’の根拠となる記載は見当たらない。」
(d)「(3-2)構成L’について
権利者は、意見書の第6頁22行~第7頁5行において、構成L’の根拠として当初明細書等の段落[0439]と段落[0893]とをあげ、「一連のAT中において通常・RT2への制御を開始し、該通常・RT2への制御が中断された後に、該一連のAT中において通常・RT2へ再度制御されることがあった場合でも、該通常・RT2への再度の制御に基づいてRT2信号の再度の出力を開始しない点が開示されています。」と主張している。
しかしながら、上記「(2-3)b.「前記特定遊技状態への制御が中断した後、・・前記特定遊技状態信号の出力を開始しない」について」で記載したとおり、上記段落[0893]の後段に記載されているものは本実施例とは別の実施例の説明である。そして、この別の実施例は、「前記の実施例のように、通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力すると、一連のATに対してRT2信号を複数回送信してしまい、外部機器において初当りAT回数を正確に把握することができない。よって、通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力する替わりに、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力する」という実施例である。すなわち、別の実施例は、「通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力しない」ことを前提とする実施例である。
一方、構成K’は、「前記所定期間が経過していなければ、前記特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続」という事項を含むことから、当初明細書等の段落[0882]に記載されているように、「RT2信号を検出するのに比較的長い時間を要する古い外部機器でもRT2信号を確実に検出できる」ようにすることを課題とする発明の発明特定事項である。そして、この発明は、当初明細書等の段落[0065]から始まる「「通常・RT2への制御に関連してRT2信号を毎回出力する」ことを前提とする本実施例に関する発明である。
したがって、構成L’は、構成K’を含む発明の本実施例とは別の実施例の構成である。
このように、前提が相反する本実施例に別の実施例の構成を追加することはできない。また、当初明細書等には、追加してよいとの記載もない。
すなわち、構成Lから構成L’へ訂正しても、上記「(2-3)b.「前記特定遊技状態への制御が中断した後、・・前記特定遊技状態信号の出力を開始しない」について」で説明した、構成Lが新規事項を含むという取消理由は解消されておらず、構成Lの文言を残した構成L’は新規事項を含んだままである。」
(e)「また、理由3(明確性)についても、訂正によっても解消していない。すなわち、本件特許の請求項1に係る発明は、構成K、Lを構成K’、L’にする訂正によっても、依然として、明確でない。
訂正後の本件発明の構成K’、L’についてみると、構成K’では、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において該特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、・・・該特定遊技状態信号の出力を継続し」とある一方、構成L’では、「前記報知期間中において前記特定遊技状態への制御が開始し該特定遊技状態への制御に基づいて前記特定遊技状態信号の出力を開始した後に、該報知期間中において前記特定遊技状態への制御が中断した後、・・・、該特定遊技状態への再度の制御に基づいて前記特定遊技状態信号の再度の出力を開始せず、」とされており、構成K’では、特定遊技状態への制御が中断した場合であっても、特定遊技状態信号の出力を継続するのに対し、構成L’では、特定遊技状態への制御が中断した後に、特定遊技状態信号の再度の出力を開始しないことになり、互いに矛盾した動作となる。
したがって、訂正後の本件特許の請求項1に係る発明は、構成K’L’について、明確でなく、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
なお、権利者は、意見書の第9頁第17行~第20行において、「つまり、構成L’で規定された、特定遊技状態への再度の制御に基づいて出力が開始しない特定遊技状態信号は、構成K’で規定された、特定遊技状態への制御が開始したときに出力されかつ継続している特定遊技状態信号と別の信号のことを指しており、構成K’と構成L’との間で何ら矛盾した動作はありません。」と主張している。
しかしながら、当初明細書等においては、段落[0010]、[0017]、[0058]、[0060]、[0062]に記載されているように、「特定遊技状態信号」は、RT2信号に対応するとの記載しかない。
したがって、発生の根拠とする制御はどうあれ、構成K’および構成L’のいずれの特定遊技状態信号も、当初明細書等の同じRT2信号に対応する。
また、当初明細書等には、発生の根拠とする制御が異なるRT2信号を受信した外部機器が、根拠とする制御の違いをどのように判別するかの開示はない。つまり、権利者が主張する、構成L’で規定された特定遊技状態信号と、構成K’で規定された特定遊技状態信号とが別の信号であるということは、特定遊技状態信号を受信した外部機器が、構成K’で規定された特定遊技状態信号であるか、構成L’で規定された特定遊技状態信号であるかを判別できないので、全く理解できないことである。」
b 当審における判断
特許異議申立人の上記各主張については、以下のとおり、いずれも採用することができない。
(a)特許異議申立人は、訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の構成Kの「継続」に関して、段落[0431]に記載はないと主張する。これに対して、「継続」については、当初明細書等の段落[0431]に「継続」とのことばの直接的な記載はないものの、上記第3 3(1)ア(ウ)bで示したとおり、本件訂正発明の構成K’の「該特定遊技状態信号が前記所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し」との特定は、構成Jに「前記特定遊技状態信号出力手段は、」「該特定遊技状態信号が所定期間以上の期間にわたって出力されるように該特定遊技状態信号の出力を継続し」と特定されていることに対応するものであること、及び、当該個所で示した検討内容から見て、本件訂正発明の構成K’における「継続」との特定は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項を含むものではない。
また、特許異議申立人は、「当初明細書等の段落[0431]は、段落[0432](「このため」より明らか)につながり」と主張するが、段落[0431]は、前段の「また、本実施例においてメイン制御部41は、RT2信号の出力制御中、すなわちRT2信号の出力開始後、出力制御が終了する前に、再度、RT2信号の出力命令が設定された場合(RT2開始後即座に終了してしまった場合など)には、RT2信号の出力を完了させた後、再びRT2信号を出力するようになっている。」との記載と、後段の「一方、電源投入時において電断前の状態に復帰する際に、RT2信号の出力制御中の状態に復帰する場合には、復帰前にRT2信号の出力命令が設定され、その時点から改めてRT2信号を出力するようになっている。」との記載からなっており、後段が「一方」として記載されていることからして、前段に記載されたRT2信号の出力の制御と、後段に記載された電源投入時のRT2信号の出力の制御とは、異なる場合におけるものである。
すなわち、前段の記載は、「(RT2開始後即座に終了してしまった場合など)」の場合には、「RT2信号の出力命令は、前述したように、次ゲームから通常・RT2が開始する場合及び通常・RT2が当該ゲームで終了した場合に設定される」(段落[0400])ことから、「次ゲームから通常・RT2が開始する場合」及び「通常・RT2が当該ゲームで終了した場合」それぞれの「RT2信号の出力命令」が設定され、「次ゲームから通常・RT2が開始する場合」に設定された「RT2信号の出力命令」によるRT2信号の出力制御中に、「通常・RT2が当該ゲームで終了した場合」の「RT2信号の出力命令」が設定されることとなるが、その場合でも、「RT2信号の出力を完了させた後、再びRT2信号を出力するようになっている」とするものである。そして、電源投入によっても、電断前に通常・RT2の状態であれば、通常・RT2は終了せずに、通常・RT2の状態は継続しており(段落[0432]から[0434]、図27、図28)、前段の「RT2信号の出力制御中、すなわちRT2信号の出力開始後、出力制御が終了する前に、再度、RT2信号の出力命令が設定された場合」には、電断及び電源投入の場合は含まれない。
また、後段の記載は、「電源投入時において電断前の状態に復帰する際」であって、電断前に「RT2信号の出力制御中の状態」であった場合に、「復帰前にRT2信号の出力命令が設定され、その時点から改めてRT2信号を出力するようになっている」とするものであり、「電源投入時において電断前の状態に復帰する際」ではなく、「RT2信号の出力を完了させ」るような、前段に記載された場合は含まれない。
してみれば、前段に記載されたRT2信号の出力の制御と、後段に記載されたRT2信号の出力の制御とは、前段ではRT2信号の出力制御中に、再度RT2信号の出力命令が設定された場合におけるものであり、後段では電源投入時において、RT2信号の出力制御中の状態に復帰する場合におけるものであるという、異なる場合におけるものである。
そして、段落[0432]には「このため」として電源投入後のことが記載されているが、これは段落[0431]の後段の記載を受けたものであり、段落[0431]の前段のRT2信号の出力の制御について記載したものではない。そうすると、段落[0431]前段の記載と、後段の記載とを区別していない特許異議申立人の主張は、採用することができない。
(b)特許異議申立人は、本実施例と別の実施例を補正により追加することはできないと主張する。これに対して、当初明細書等の段落[0888]には、「本発明は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。」と記載され、段落[0893]はその変形例の一つとして記載されている。また、段落[0893]には、「前述した実施例」では「外部機器において初当りAT回数を正確に把握することができない。よって、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにしてもよい。」と記載されており、「以下に具体例を説明する。」として、段落[0894]から[0903]に記載された構成により、「外部機器において一連のATに制御された回数を正確に認識することができる。」(段落[0899])ことや、「外部機器において、ナビストック1に対応するATに制御された回数を正確に認識することができる。」(段落[0901])ことが、段落[0904]から[0911]に記載された構成により、「外部機器において、ナビストック1に対応するATに制御された回数を正確に認識することができる。」(段落[0910])ことが記載されている。そうすると、当初明細書等の段落[0065]から始まる本実施例(前述した実施例)に対して、RT2信号の出力の制御に関して、段落[0894]から[0903]や、段落[0904]から[0911]に記載された具体例の構成で置換することで、一連のAT中において1回だけRT2信号を出力するようにすることは、当初明細書等の記載に基づくものであり、新規事項を含むものではない。
よって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
(c)特許異議申立人は、構成K’は新規事項を含んでいるから訂正によっても新規事項は解消されていないと主張する。これに対し、構成K’の「中断」、「継続」については、上記第3 3(1)ア(ウ)a、bで示したとおりであり、構成K’における「継続」との特定については、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項を含むものではない。
(d)特許異議申立人は、構成L’は、構成K’を含む発明の本実施例とは別の実施例の構成であると主張するが、これに対しては、上記(b)で示したとおり、本実施例について、RT2信号の出力の制御に関して、変形例の構成(段落[0893])で置換するものであって、新規事項を含むものではない。
(e)特許異議申立人の明確性に関する主張については、上記第3 3(1)ウで示したとおり、本件訂正発明は、本件発明の構成K’、L’について明確でないとすることはできず、この点で本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正請求により訂正された請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-701052