2021-701056
スパッタリングターゲット及び、その製造方法
- 審判番号
- 2021-701056
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-521760外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6869237
- 請求日
- 2021年11月10日
- 審決日
- 2022年01月27日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JX金属株式会社
- 【権利者代理人】アクシス国際特許業務法人
- 【異議申立人】遠藤 弘忠
- 分類
- P1652.113-Y (C23C) / P1652.121-Y (C23C) / P1652.537-Y (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許第6869237号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)6月7日(優先権主張 平成28年6月7日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和3年4月15日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~5に係る特許に対して、同年11月10日に、特許異議申立人 遠藤 弘忠(以下、「申立人」という。)により甲第1~7号証を証拠方法として特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~9に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、このうち「本件発明1」~「本件発明5」をまとめて「本件発明」ということがある)。
「【請求項1】AlとScとの合金からなり、Scを25原子%~50原子%で含有するスパッタリングターゲットであって、酸素含有量が2000質量ppm以下であり、ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが20%以下であり、前記ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが、ターゲット表面における複数の測定点で測定して得られるビッカース硬さ(Hv)の測定値の標準偏差を、前記測定値の平均値で除して百分率で表すことにより算出され、Al-Sc相、Al2-Sc相およびAl3-Sc相からなる群から選択される一又は複数の金属間化合物から構成されているスパッタリングターゲット。【請求項2】続きを表示(全20行)酸素含有量が1000質量ppm以下である請求項1に記載のスパッタリングターゲット。【請求項3】ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが5%以下である請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。【請求項4】炭素含有量が1000質量ppm以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。【請求項5】Li、Na、K、Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の元素を合計0.1質量%以下でさらに含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。【請求項6】不活性ガス又は真空雰囲気下、Al原料を、酸素含有量が3000質量ppm以下のSc原料とともに溶解させた後に、不活性ガス又は真空雰囲気下で冷却し、Scを25原子%~50原子%で含有するAlとScとの合金のインゴットを鋳造により得る溶解工程と、前記インゴットに圧力を加えて塑性加工を施す鍛造工程とを含み、前記インゴットが、Al-Sc相、Al2-Sc相およびAl3-Sc相からなる群から選択される一又は複数の金属間化合物から構成されているスパッタリングターゲットの製造方法。【請求項7】溶解工程で、酸素含有量が100質量ppm~3000質量ppmのSc原料を用いる請求項6に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。【請求項8】鍛造工程での塑性加工の加工率を、50%~95%とする請求項6又は7に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。【請求項9】鍛造工程で、前記インゴットを500℃~1200℃に加熱した状態で塑性加工を行う請求項6~8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、第2項(進歩性)について
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第1項、第2項の規定に違反してされたものである。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件発明1~5は、本件発明6~9に係る「スパッタリングターゲットの製造方法」のような溶解工程及び鍛造工程を経ていることに相当する発明特定事項を有しておらず、例えば、発明が解決しようとする課題の欄で否定しているアトマイズ法を包含しつつ、溶解法または真空溶解法を経て得られたスパッタリングターゲットを包含している。
しかし、本件特許明細書には、溶解工程及び鍛造工程を経る製法以外の製法を採用したとしても、本件発明の課題を解決できる根拠が示されていないから、アトマイズ法を包含しつつ、溶解法または真空溶解法を経て得られたスパッタリングターゲットが、本件発明の課題を解決できるとは認められない。
また、技術常識に照らしても、本件発明1は、本件発明6~9に係る「スパッタリングターゲットの製造方法」のような溶解工程及び鍛造工程を経ていることに相当する発明特定事項を有していないから、発明の詳細な説明の記載を本件発明1~5の範囲まで拡張ないし一般化することはできないので、本件発明1~5が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合しない。
3 証拠方法
第4 特許異議申立理由についての当審の判断
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、第2項(進歩性)について
(1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
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ア 甲第1号証には以下(1a)~(1c)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項4】
アルミニウムと希土類元素との合金からなるスパッタリングターゲットにおいて、
アルミニウムと希土類元素との元素比は、合金ターゲットが二種の金属間化合物のみで構成される範囲にあり、
前記二種の金属間化合物のうち、一方の金属間化合物が合金中で分散粒子を形成し、該分散粒子の長径が、合金ターゲットの厚さ方向を通る断面において平均30μm以下であることを特徴とするアルミニウムと希土類元素との合金ターゲット。」
(1b)「【0014】
本発明の目的は、アルミニウムに、希土類元素を添加したアルミニウム合金ターゲットであって、スパッタ時の昇温によって組成変化を起こさず、金属間化合物が微分散された、安定したターゲットを焼結法によって効率よく製造する方法を提供することである。また、その製法により得られるターゲットを提供することを目的とする。」
(1c)「【0037】
(実施例1)
アルミニウム塊189.49gと、スカンジウム塊210.51gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=60:40)とした。次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製した。この合金粉末は、150μm以下の粉末であり、SEMによる直接観察における平均粒子径は約20μmであった。次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製した。この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行った。焼結温度は950℃、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、保持時間は無しとした。これにより、得られた焼結体の表面研摩を施して、合金ターゲットを得た。
・・・
【0040】
図1は、実施例1の合金ターゲットの電子顕微鏡のSEM画像であり、(a)は倍率1000倍、(b)は倍率5000倍である。図1(b)画像のAの四角印の部分のEDS分析による組成は、Al:59.4at%、Sc:40.6at%であり、Bの四角印の部分のEDS分析による組成は、Al:47.7at%、Sc:52.3at%であった。Aの四角印の部分(海島構造の島に相当、A相という。)は、元素の組成比から、Al2Scであり、Bの四角印の部分(海島構造の海に相当、B相という。)は、元素の組成比から、AlScであると考えられる。・・・
・・・
【0046】
(実施例2)
アルミニウム塊230.48gと、スカンジウム塊180.74gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=68:32)とした。次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製した。この合金粉末は、150μm以下の粉末であり、SEMによる直接観察における平均粒子径は約16μmであった。次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製した。この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行なった。焼結温度は1000℃、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、保持時間は無しとした。これにより、得られた焼結体の表面研摩を施して、合金ターゲットを得た。
【0047】
(実施例3)
焼結温度を1200℃とした以外は実施例2と同様に行い、合金ターゲットを得た。
・・・
【0049】
図5は、実施例2の合金ターゲットの電子顕微鏡のSEM画像である。図6は、焼結温度を1200℃とした実施例3の合金ターゲットの電子顕微鏡のSEM画像である。倍率はいずれも1000倍である。図5及び図6において両者とも濃灰色部(海島構造の島に相当、A相)は元素の組成比から、Al3Scであり、薄灰色部(海島構造の海に相当、B相)は、元素の組成比から、Al2Scであると考えられる。
・・・
【0054】
(実施例4)
アルミニウム塊230.48gと、スカンジウム塊180.74gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=68:32)とした。次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製した。アトマイズ法で得た合金粉末のうち、SEMによる直接観察による平均粒径が約117μmの粉末を得た。次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製した。この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行なった。加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、焼結温度は1000℃で行い、保持時間は無しとした。これにより、得られた焼結体の表面研摩を施して、合金ターゲットを得た。
・・・
【0056】
図7は、実施例4の合金ターゲットの電子顕微鏡のSEM画像である。倍率は1000倍である。濃灰色部(海島構造の島に相当、A相)は元素の組成比から、Al3Scであり、薄灰色部(海島構造の海に相当、B相)は、元素の組成比から、Al2Scであると考えられる。」
イ 前記ア(1a)、(1c)によれば、甲第1号証には「アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット」が記載されており、当該「アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット」は、アルミニウムと希土類元素との合金からなるスパッタリングターゲットにおいて、アルミニウムと希土類元素との元素比は、合金ターゲットが二種の金属間化合物のみで構成される範囲にあり、前記二種の金属間化合物のうち、一方の金属間化合物が合金中で分散粒子を形成し、該分散粒子の長径が、合金ターゲットの厚さ方向を通る断面において平均30μm以下であるものである。
そして、甲第1号証の実施例1に注目すると、前記「アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット」は、アルミニウム塊189.49gと、スカンジウム塊210.51gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=60:40)とし、次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製し、この合金粉末は、150μm以下の粉末であり、SEMによる直接観察における平均粒子径は約20μmであり、次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製し、この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行ったものであり、焼結温度は950℃、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、保持時間は無しとし、これにより得られた焼結体の表面研摩を施して合金ターゲットを得たものであり、Al2ScであるA相と、AlScであるB相からなるものである。
ウ 前記イによれば、甲第1号証には、
「アルミニウムと希土類元素との合金からなるスパッタリングターゲットにおいて、アルミニウムと希土類元素との元素比は、合金ターゲットが二種の金属間化合物のみで構成される範囲にあり、前記二種の金属間化合物のうち、一方の金属間化合物が合金中で分散粒子を形成し、該分散粒子の長径が、合金ターゲットの厚さ方向を通る断面において平均30μm以下であるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲットであって、アルミニウム塊189.49gと、スカンジウム塊210.51gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=60:40)とし、次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製し、この合金粉末は、150μm以下の粉末であり、SEMによる直接観察における平均粒子径は約20μmであり、次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製し、この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行ったものであり、焼結温度は950℃、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、保持時間は無しとし、これにより得られた焼結体の表面研摩を施して合金ターゲットを得たものであり、Al2ScであるA相と、AlScであるB相からなるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット。」の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
エ 同様に、甲第1号証の実施例2~4に注目すると、甲第1号証には、
「アルミニウムと希土類元素との合金からなるスパッタリングターゲットにおいて、アルミニウムと希土類元素との元素比は、合金ターゲットが二種の金属間化合物のみで構成される範囲にあり、前記二種の金属間化合物のうち、一方の金属間化合物が合金中で分散粒子を形成し、該分散粒子の長径が、合金ターゲットの厚さ方向を通る断面において平均30μm以下であるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲットであって、アルミニウム塊230.48gと、スカンジウム塊180.74gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=68:32)とし、次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製し、この合金粉末は、150μm以下の粉末であり、SEMによる直接観察における平均粒子径は約16μmであり、次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製し、この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行なったものであり、焼結温度は1000℃、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、保持時間は無しとし、これにより、得られた焼結体の表面研摩を施して合金ターゲットを得たものであり、Al3ScであるA相と、Al2ScであるB相からなるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット。」の発明(以下、「甲1発明2」という。)、
「アルミニウムと希土類元素との合金からなるスパッタリングターゲットにおいて、アルミニウムと希土類元素との元素比は、合金ターゲットが二種の金属間化合物のみで構成される範囲にあり、前記二種の金属間化合物のうち、一方の金属間化合物が合金中で分散粒子を形成し、該分散粒子の長径が、合金ターゲットの厚さ方向を通る断面において平均30μm以下であるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲットであって、アルミニウム塊230.48gと、スカンジウム塊180.74gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=68:32)とし、次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製し、この合金粉末は、150μm以下の粉末であり、SEMによる直接観察における平均粒子径は約16μmであり、次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製し、この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行なったものであり、焼結温度は1200℃、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、保持時間は無しとし、これにより、得られた焼結体の表面研摩を施して合金ターゲットを得たものであり、Al3ScであるA相と、Al2ScであるB相からなるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット。」の発明(以下、「甲1発明3」という。)、及び、
「アルミニウムと希土類元素との合金からなるスパッタリングターゲットにおいて、アルミニウムと希土類元素との元素比は、合金ターゲットが二種の金属間化合物のみで構成される範囲にあり、前記二種の金属間化合物のうち、一方の金属間化合物が合金中で分散粒子を形成し、該分散粒子の長径が、合金ターゲットの厚さ方向を通る断面において平均30μm以下であるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲットであって、アルミニウム塊230.48gと、スカンジウム塊180.74gとを真空アーク溶解炉(真空冶金社製、AME-300型)により溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=68:32)とし、次に、この合金塊をアトマイズ法による粉末製造装置(日新技研社製、NEV-GP5T型)に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製し、アトマイズ法で得た合金粉末のうち、SEMによる直接観察による平均粒径が約117μmの粉末を得て、次に、この合金粉末を黒鉛製金型に詰め、5MPaで予備加圧し圧粉体を作製した。この圧粉体を、金型とパンチで密閉されたまま、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製、SPS9.40MK-VIII型)に移し、放電プラズマ焼結を行なったものであり、加圧力は65MPa、焼結時の真空度は、5Pa以下とし、焼結温度は1000℃で行い、保持時間は無しとし、これにより得られた焼結体の表面研摩を施して合金ターゲットを得たものであり、Al3ScであるA相と、Al2ScであるB相からなるものである、アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット。」の発明(以下、「甲1発明4」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット」は、スパッタリングターゲットであって、「溶解合金インゴット(原子パーセント比でAl:Sc=60:40)」から製造されたものであるから、「AlとScとの合金からな」るものといえ、この「溶解合金インゴット」が「原子パーセント比でAl:Sc=60:40」であることは、本件発明1において「Scを25原子%~50原子%で含有する」ことと合致するので、本件発明1における「AlとScとの合金からなり、Scを25原子%~50原子%で含有するスパッタリングターゲット」に相当する。
また、甲1発明1において、「アルミニウムと希土類元素との合金ターゲット」が「Al2ScであるA相と、AlScであるB相からなる」ことは、本件発明1において、「スパッタリングターゲット」が、「Al-Sc相、Al2-Sc相およびAl3-Sc相からなる群から選択される一又は複数の金属間化合物から構成されている」ことに相当する。
すると、本件発明1と甲1発明1とは、
「AlとScとの合金からなり、Scを25原子%~50原子%で含有するスパッタリングターゲットであって、Al-Sc相、Al2-Sc相およびAl3-Sc相からなる群から選択される一又は複数の金属間化合物から構成されているスパッタリングターゲット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2:本件発明1は、「スパッタリングターゲット」が、「ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが20%以下であり、前記ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが、ターゲット表面における複数の測定点で測定して得られるビッカース硬さ(Hv)の測定値の標準偏差を、前記測定値の平均値で除して百分率で表すことにより算出され」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明1の「スパッタリングターゲット」は「ビッカース硬さ(Hv)のばらつき」が明らかでない点。
イ まず、前記アの相違点1から検討すると、本件特許明細書には、以下(a)~(c)の記載がある。
(a)「【0001】この発明は、AlとScとの合金からなり、圧電性材料等の薄膜形成に用いて好適なスパッタリングターゲット及び、その製造方法に関するものであり、特には、スパッタリングにより形成する圧電性材料の圧電特性の向上に寄与することのできる技術を提案するものである。・・・【先行技術文献】続きを表示(全20行)【特許文献】【0007】【特許文献1】特開2015-96647号公報【特許文献2】特開2012-12673号公報・・・【発明が解決しようとする課題】【0009】ところで、上述したような圧電性薄膜で良好な圧電特性を得るには、それを形成するためのスパッタリングターゲットに含まれる酸素や炭素を減らすことが必要である。しかるに、スカンジウム等の希土類金属は、酸素と非常に活性であるので、アルミニウムとスカンジウムからなる合金のスパッタリングターゲットは、特にアトマイズ法により製造すると、酸素含有量が1.0質量%程度と極めて多くなる。それ故に、従来のスパッタリングターゲットでは、圧電性薄膜の圧電特性を向上させることができなかった。【0010】このことに対しては、スパッタリングターゲットの製造を、特許文献1で提案されているようなアトマイズ法ではなく、溶解法により行うことにより、スパッタリングターゲットの酸素含有量を低減できると考えられる。しかしながら、溶解法では、粉末法のような出発原料(微粒子、アトマイズ等)の選定ができないことから、溶解法により製造されてスカンジウムを比較的多い量で含有するスパッタリングターゲットは、ターゲット全体で硬さにばらつきが生じ、スパッタリングの際などに割れるという問題がある。【0011】特許文献2では、真空溶解法によりスカンジウムアルミニウム合金のスパッタリングターゲットを作製することが記載されているが、真空溶解法では、スカンジウムの組成を均一に制御することが困難であることから、小径ターゲットでないと所望の特性を得ることができなかった。【0012】この発明は、従来のスパッタリングターゲットにおけるこのような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、所要のターゲット硬さを確保しつつ、スパッタリングにより形成する圧電性材料の圧電特性の向上に寄与することができるスパッタリングターゲット及び、その製造方法を提供することにある。」
(b)「【発明の効果】【0021】この発明によれば、硬さのばらつきが小さく、かつ酸素含有量が低いスパッタリングターゲットを得ることができる。それにより、スパッタリング時に割れる可能性が低く、有効に使用できるとともに、圧電性材料の薄膜を形成するスパッタリングを行った場合、当該圧電性材料の圧電特性の向上に寄与することができる。」
(c)「【0032】(製造方法)以上の述べたスパッタリングターゲットは、たとえば次のようにして製造することができる。はじめに、Al原料とSc原料を混ぜ合わせて、真空または不活性ガス中での溶解法に基いて溶解炉内で溶解させた後、これを冷却し、ターゲット素材としてのAlとScとの合金のインゴットを得る。ここで、Sc原料は、Sc含有量が25原子%~50原子%(25原子%以上かつ33原子%未満または、33原子%以上かつ50原子%以下)となるように添加する。なおここでの冷却は、たとえば、不活性ガス中で常温になるまで放置する自然冷却とすることができるが、これに限定されるものではない。続きを表示(全11行)このような溶解法によれば、真空または不活性ガス雰囲気で溶解法を行うことにより、製造されるスパッタリングターゲットの酸素濃度を十分に低減でき、スカンジウムの組成を均一なものに調整することが可能になる。・・・【0033】特にここで添加するSc原料は、酸素含有量の少ないものとする。それにより、スパッタリングターゲットの酸素含有量をさらに低減することができる。具体的には、Sc原料の酸素含有量は、酸素含有量3000質量ppm以下とする。・・・・・・【0039】(実施例1)Sc含有量が38原子%になるようにAl原料とSc原料を混合し、Ar雰囲気下で高周波加熱により融点1150℃の溶解を実施し、電源をオフにして当該不活性ガス中で2時間放置して自然冷却させ、AlとScの合金のインゴットを作製した。ここで、Sc原料の炭素含有量は40質量ppmであり、酸素含有量は1400質量ppmであった。次いで、鍛造工程を行い、インゴットをAr雰囲気で1000℃に加熱した状態で、当該インゴットに対して、加工率85%のプレス加工を1回施した後、所要の加工を行って、スパッタリングターゲットを製造した。」
ウ そして、前記イ(a)(【0009】~【0010】)によれば、圧電性薄膜で良好な圧電特性を得るには、それを形成するための「スパッタリングターゲット」に含まれる酸素や炭素を減らすことが必要であるが、スカンジウム等の希土類金属は、酸素と非常に活性であるので、アルミニウムとスカンジウムからなる合金の「スパッタリングターゲット」は、特に、本件特許明細書に記載される特許文献1(特開2015-96647号公報(前記イ(a)【0007】))で提案されているようなアトマイズ法により製造すると、酸素含有量が1.0質量%程度と極めて多くなることから、本件発明においては、「スパッタリングターゲット」を、前記イ(c)に記載されるように、Sc原料を酸素含有量が3000質量ppm以下の少ないものとした上で、アトマイズ法ではなく、Al原料とSc原料を混ぜ合わせて、真空または不活性ガス中で溶解炉内で溶解させる溶解法により製造するものである。
エ これに対して、甲第1号証には、Sc原料の酸素含有量が記載も示唆もされていないから、甲1発明1は、「スパッタリングターゲット」のSc原料の酸素含有量を3000質量ppm以下としたものとはいえない。
また、甲1発明1は、溶解合金インゴットをアトマイズ法による粉末製造装置に入れ、アルゴンガス雰囲気下にて、アルミニウム-スカンジウム合金粉末を作製する工程を含むものである。
そして、甲1発明1が記載される甲第1号証は、前記イ(a)(【0007】)に記載される特許文献1にほかならず、このことと前記ウによれば、甲1発明1は、「スパッタリングターゲット」の製造工程に、酸素含有量が極めて多くなるとされるアトマイズ法を含むものである。
すると、甲1発明1に係る「スパッタリングターゲット」は、その製造方法が、Sc原料の酸素含有量を3000質量ppm以下としたものとはいえない点、及び、製造工程に酸素含有量が極めて多くなるとされるアトマイズ法を含む点で、本件発明1に係る「スパッタリングターゲット」の製造方法と合致しないから、仮に、真空アーク溶解炉により溶解合金インゴットを製造するものであり、更にアトマイズ法による合金粉末の製造をアルゴンガス雰囲気で行っているとしても、「酸素含有量が2000質量ppm以下であ」るということはできない。
してみれば、前記相違点1は実質的な相違点であるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明1であるとはいえない。
オ また、前記(1)ア(1b)の記載からみれば、甲1発明1は、アルミニウムに希土類元素を添加したアルミニウム合金ターゲットであって、スパッタ時の昇温によって組成変化を起こさず、金属間化合物が微分散された、安定したターゲットを焼結法によって効率よく製造する方法及びその製法により得られるターゲットを提供することを目的とするものである。
このように、甲1発明1は、「スパッタリングターゲット」の「酸素含有量」に着目したものではないから、甲1発明1において、「スパッタリングターゲット」の「酸素含有量」を「2000質量ppm以下」とする動機付けは存在しない。加えて、酸素と非常に活性であるとされるAlとScとの合金からなる「スパッタリングターゲット」の「酸素含有量」を「2000質量ppm以下」とすることを開示する証拠も提出されていないので、甲1発明1において、「スパッタリングターゲット」を、「酸素含有量が2000質量ppm以下であ」る、との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得るものではない。
よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ なお、申立人は、甲1発明1は、真空アーク溶解炉により溶解合金インゴットを得ており、更にアトマイズ法による合金粉末の製造においては、アルゴンガス雰囲気で行っていることから、「スパッタリングターゲット」の「酸素含有量が2000質量ppm以下」である蓋然性が高く、本件発明1と甲1発明1とでは酸素含有量の低減はいずれも溶解を経ることで実現している点で共通するから、前記相違点1は実質的に相違点とならない旨を主張している。
ところが、甲第1号証には、Sc原料の酸素含有量が記載も示唆もされていないから、仮に、甲1発明1が、真空アーク溶解炉により溶解合金インゴットを製造するものであり、更にアトマイズ法による合金粉末の製造をアルゴンガス雰囲気で行っているとしても、最終的に製造された「スパッタリングターゲット」の「酸素含有量」を予測することは困難である。
更に、前記イ(a)によれば、甲第1号証で提案されるアトマイズ法により製造された「スパッタリングターゲット」は、酸素含有量が極めて多くなるとされているのであるから、前記アトマイズ法を含む製造方法により製造された甲1発明1に係る「スパッタリングターゲット」の「酸素含有量が2000質量ppm以下であ」る蓋然性が高いとはいえないので、申立人の前記主張は採用できない。
キ したがって、本件発明1が甲1発明1であるとはいえないし、本件発明1は、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
更に、甲1発明2~甲1発明4について検討しても事情は同じであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、直接的又は間接的に本件発明1を引用するものであって、本件発明2~5と甲1発明1とを対比すると、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点1の点で相違するから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5が甲1発明1であるとはいえない。
そして、甲1発明1において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることが、当業者が容易になし得るものではないことは、前記(2)オに記載のとおりであるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5は、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、甲1発明2~甲1発明4について検討しても事情は同じであるから、本件発明2~5は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)小括
よって、本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1の特許異議申立理由は理由がない。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に基づいて検討する。
(2)当審の判断
ア 前記1(2)イ(a)の本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、スパッタリングにより形成する圧電性材料の圧電特性の向上に寄与することのできる技術を提案するものであって、圧電性薄膜で良好な圧電特性を得るには、それを形成するための「スパッタリングターゲット」に含まれる酸素や炭素を減らすことが必要なのであるが、従来の「スパッタリングターゲット」では、特にアトマイズ法により製造すると、酸素含有量が1.0質量%程度と極めて多くなり、圧電性薄膜の圧電特性を向上させることができなかった、という課題や、溶解法により製造されてスカンジウムを比較的多い量で含有する「スパッタリングターゲット」は、ターゲット全体で硬さにばらつきが生じ、スパッタリングの際などに割れるという問題がある、という課題(以下、まとめて「本件課題」という。)を解決しようとするものである。
イ そして、前記1(2)イ(b)によれば、本件発明は、硬さのばらつきが小さく、かつ酸素含有量が低い「スパッタリングターゲット」を得ることにより、スパッタリング時に割れる可能性が低く、有効に使用できるとともに、圧電性材料の薄膜を形成するスパッタリングを行った場合、圧電特性の向上に寄与することができ、もって前記本件課題を解決することができたことが分かる。
ここで、本件発明1における、「酸素含有量が2000質量ppm以下であ」る、との発明特定事項は、「スパッタリングターゲット」の酸素含有量を低減するものにほかならない。また、「ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが20%以下であり、前記ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが、ターゲット表面における複数の測定点で測定して得られるビッカース硬さ(Hv)の測定値の標準偏差を、前記測定値の平均値で除して百分率で表すことにより算出され」る、との発明特定事項は、「スパッタリングターゲット」の硬さのばらつきを小さくするものにほかならない。
ウ そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、「酸素含有量が2000質量ppm以下であり、ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが20%以下であり、前記ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが、ターゲット表面における複数の測定点で測定して得られるビッカース硬さ(Hv)の測定値の標準偏差を、前記測定値の平均値で除して百分率で表すことにより算出され」る、との発明特定事項を有する本件発明1により本件課題を解決できることを理解するのであり、このことは実施例の記載などからも看て取れる。
そうである以上、前記(1)の判断手法に照らせば、本件発明1に係る請求項1の記載は、サポート要件に適合するというべきである。
更に、本件発明1を引用する本件発明2~5について検討しても事情は同じであるから、結局、本件発明1~5に係る請求項1~5の記載は、サポート要件に適合するということができる。
エ 申立人は、本件発明1~5は、本件発明6~9に係る「スパッタリングターゲットの製造方法」のような溶解工程及び鍛造工程を経ていることに相当する発明特定事項を有しておらず、アトマイズ法を包含しつつ、溶解法または真空溶解法を経て得られたスパッタリングターゲットを包含しているが、本件特許明細書には、溶解工程及び鍛造工程を経る製法以外の製法を採用したとしても、本件発明の課題を解決できる根拠が示されていないから、アトマイズ法を包含しつつ、溶解法または真空溶解法を経て得られたスパッタリングターゲットが、本件発明の課題を解決できるとは認められない旨、及び、本件特許の優先日当時の技術常識に照らしても、本件発明6~9に係る「スパッタリングターゲットの製造方法」のような溶解工程及び鍛造工程を経ていることに相当する発明特定事項を有していない本件発明1~5の範囲まで、発明の詳細な説明の記載を拡張ないし一般化することはできない旨を主張する。
しかしながら、仮に、本件発明1~5が、本件発明6~9に係る「スパッタリングターゲットの製造方法」のような溶解工程及び鍛造工程を経ていることに相当する発明特定事項を有しておらず、アトマイズ法を包含しつつ、溶解法または真空溶解法を経て得られたスパッタリングターゲットを包含しており、本件特許明細書に、溶解工程及び鍛造工程を経る製法以外の製法を採用したとしても本件課題を解決できる根拠が示されていないとしても、本件発明1~5が、「酸素含有量が2000質量ppm以下であり、ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが20%以下であり、前記ビッカース硬さ(Hv)のばらつきが、ターゲット表面における複数の測定点で測定して得られるビッカース硬さ(Hv)の測定値の標準偏差を、前記測定値の平均値で除して百分率で表すことにより算出され」る、との発明特定事項を有することに変わりはない。
そして、前記ウによれば、当業者は、当該発明特定事項を有することにより本件発明1~5は本件課題を解決できることを理解するのであるから、発明の詳細な説明の記載に基づいて本件課題が解決できると認識できる範囲を本件発明1~5の範囲まで拡張ないし一般化することに問題はなく、本件発明1~5は発明の詳細な説明に記載された発明というべきであるから、申立人の前記主張はいずれも採用できない。
オ よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するので、前記第3の2の特許異議申立理由は理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるので、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701056