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特許異議申立

2021-701037

抗ウイルス性を有する表面処理剤及び表面処理剤が塗布されている抗ウイルス性シート状物

審判番号
2021-701037
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-239937
登録番号
6867743
請求日
2021年11月02日
審決日
2022年01月21日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ロンシール工業株式会社
  • 【異議申立人】森川 真帆
審判長/審判官
  • 審判長 村上 騎見高
  • 審判官 大熊 幸治
  • 審判官 小堀 麻子
分類
P1651.537-Y (A01N) / P1651.121-Y (A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第6867743号発明「抗ウイルス性を有する表面処理剤及び表面処理剤が塗布されている抗ウイルス性シート状物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6867743号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6867743号は平成26年11月27日に出願され、令和3年4月13日に特許権の設定登録がなされ、同年5月12日にその特許公報が発行され、その後、請求項1~5に係る特許に対して、令和3年11月2日に特許異議申立人 森川真帆(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件請求項1~5に係る発明 本件請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を分散質とするアニオン系水性樹脂エマルジョンにアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系化合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物から選ばれる少なくとも1つである被塗装体に抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系界面活性剤が添加された抗ウイルス性表面処理剤。 【請求項2】 アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を分散質とするアニオン系水性樹脂エマルジョンに被塗装体に抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系界面活性剤および水に不溶な充填剤が添加され、前記水性樹脂エマルジョンの固形分に対する前記充填剤の含有量が1~10重量%であり、前記充填剤がシリカである抗ウイルス性表面処理剤。 【請求項3】 前記アニオン系水性樹脂エマルジョンの分散質がウレタン系樹脂である請求項1または請求項2に記載の抗ウイルス性表面処理剤。 【請求項4】 前記アニオン系水性樹脂エマルジョンの固形分と前記スルホン酸系界面活性剤の合計に対し前記スルホン酸系界面活性剤が1~10重量%含有されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の抗ウイルス性表面処理剤。 【請求項5】 シート状物の少なくとも片面に、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の抗ウイルス性表面処理剤が塗布されて前記シート状物の表面に膜厚が1~100μmである前記水性樹脂エマルジョンによる膜が形成されている抗ウイルス性シート状物。」 第3 異議申立ての理由についての検討 1 申立人の異議申立ての理由について 申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 甲第1号証:特開2012-140613号公報 甲第2号証:特開2007-107173号公報 甲第3号証:特開2008-73118号公報 (以下、甲第1~3号証を「甲1」~「甲3」という。) ・申立ての理由1 本件発明1~5は、本件出願時点における技術常識からみて、特許を受けようとする発明が明確でない。 よって、本件発明1~5は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、同法第113条第4号に該当し取消されるべきものである。 ・申立ての理由2 本件発明1~5は、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。 よって、本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、同法第113条第4号に該当し取消されるべきものである。 ・申立ての理由3 本件発明1~5は、本件出願前に頒布された甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、同法第113条第2号に該当し取消されるべきものである。 2 申立ての理由1について (1)申立人の主張 申立人は、「a)「アルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキJレジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系化合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物から選ばれる少なくとも1つである」との規定(本件発明1)、 b)「被塗装体に抗ウイルス性を付与するための」との規定(本件発明1および2)、および c)「界面活性剤」との規定(本件発明1および2) がなされている。」とした上で、以下のとおり主張する。 ア 「しかしながら、上記a)の規定については、ここに列挙されている化合物には、「アルキル硫酸エステル系化合物」、「ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系化合物」のような、「スルホン酸系界面活性剤」ではなく「硫酸エステル系界面活性剤」が含まれている…ことから、<スルホン酸系化合物>の規定として明確ではない。」 イ 「また、上記b)およびc)の規定については、これらの規定がi)<スルホン酸系化合物>の用途を規定したものであるのか、ii)抗ウイルス性、界面活性性を発揮する<スルホン酸系化合物>の種類・構造を規定したものであるのかが明確でない。さらに、前記ii)の場合には、この規定により、<スルホン酸系化合物>の種類・構造がどのように規定されるのかが明確でない。」 (2)検討 ア 上記(1)アについて 本件【0013】には以下の記載がある。 「本発明に用いるスルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられる。この中でも抗ウイルス性に優れるとの観点からアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に抗ウイルス性に優れるアルキルベンゼンスルホン酸系化合物がより好ましい。」 他の文献において、「アルキル硫酸エステル系化合物」や「ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系」が「スルホン酸系界面活性剤」と区別されるとしても、本件発明における「スルホン酸系界面活性剤」は上記のように規定されるものである。 よって、「<スルホン酸系化合物>の規定として」本件発明は明確である。 イ 上記(1)イについて 本件発明の詳細な説明の記載に鑑みると、「被塗装体に抗ウイルス性を付与するための…界面活性剤」との規定は、被塗装体に塗布した際に抗ウイルス性が発現する機能を有する「界面活性剤」を指すものと解するのが相当である。 よって、係る規定を有する本件発明は明確である。 (3)まとめ したがって、本件発明1~5は明確であるから、申立ての理由1には理由がない。 3 申立ての理由2について (1)申立人の主張 申立人は以下のとおり主張する。 ア 「スルホン酸系界面活性剤として、本件発明1~5のように a)アルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系化合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物から選ばれる少なくとも1つである[本件発明1]、 b)被塗装体に抗ウイルス性を付与するための[本件発明1および2]、 スルホン酸系界面活性剤を用いた場合にも、実施例1~7のような「アルキルベンゼンスルホン酸Na」を用いた場合と同等の作用効果が発揮されるとはいえない。 したがって、本件発明1~2、および本件発明1~2を直接的または間接的に引用する本件発明3~5は、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。」 イ 「次に述べるように、実施例1~7を比較してみても、「水性樹脂エマルジョンの固形分に対してシリカが1~10重量%含有される」ことにより、「抗ウイルス性の向上が図られる」との作用効果を発揮するとはいえない。 a)上記本件特許明細書の段落【0017】で挙げられた作用機序により「抗ウイルス性の向上が図られる」とすると、充填材として「シリカ」を用いなくても、適度の粒径・細孔を有する充填材を用いた場合には、同様の作用効果が発揮されるといえ、充填材として「シリカ」を用いたことにより、特別に「抗ウイルス性の向上が図られる」という作用効果が顕著に発揮される訳ではない。 b)上記本件特許明細書の段落【0017】で挙げられた作用機序により「抗ウイルス性の向上が図られる」とすると、「シリカ」の粒径・細孔が「抗ウイルス性の向上が図られる」という作用効果を発揮するための重要な要素といえるが、<実施例1>および<実施例2>で用いられている「水性樹脂エマルジョンA-1」ならびに<実施例4>で用いられている「水性樹脂エマルジョンA-3」では、どのような粒径・細孔の「シリカ」が添加されているのか不明である。 c)実施例1~7では、抗ウイルス性を付与する「スルホン酸系界面活性剤」の添加量、水性樹脂エマルジョンの樹脂(ウレタン系、アクリル系)が異なっており、これらの抗ウイルス性の評価(○、△)からは、充填材として「シリカ」を含有することにより、「抗ウイルス性の向上が図られる」との作用効果を確認することはできない。すなわち、<実施例5>では抗ウイルス性が△となっているが、これは「スルホン酸系界面活性剤」の添加量が0.5部と少ないことに起因しているといえる。 また、<実施例3>と<実施例4>を比較すると、水性樹脂エマルジョンの樹脂として同じく「ウレタン系」を用い、「スルホン酸系界面活性剤」の添加量が3.5部と同量であるにもかかわらず、シリカが添加されていない<実施例3>では抗ウイルス性が△であり、シリカが添加された<実施例4>では抗ウイルス性が○であるが、この抗ウイルス性の評価(○、△)は、ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が3以上を○、1以上3未満を△とする大雑把なものであってウイルス力価の差の数値が具体的に示されていないことから、両者の抗ウイルス性に顕著な差異があることは何ら確認できない。言い換えれば、両者の抗ウイルス性に僅かな差がある場合、恣意的に○と△の閾値をこの間に設定し、効果の差異を○、△と強調して表現することも可能である。 したがって、本件発明2、および本件発明2を直接的または間接的に引用する本件発明3~5の抗ウイルス性表面処理剤または抗ウイルス性シート状物における、「水性樹脂エマルジョンの固形分に対してシリカが1~10重量%含有される」ことによる作用効果は、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、認識できるとはいえない。」 (2)検討 ア 上記(1)アについて 本件【0013】には以下の記載がある。 「本発明に用いるスルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられる。この中でも抗ウイルス性に優れるとの観点からアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に抗ウイルス性に優れるアルキルベンゼンスルホン酸系化合物がより好ましい。 本発明で用いるスルホン酸系界面活性剤において、スルホン酸基は例えばインフルエンザウイルスのノイライミダーゼとの親和性が高く、阻害作用を現すことができると想定している。また官能基の構造はノイライミダーゼへの接近に関して影響を示し、嵩高くなく立体障害を受け難い構造が重要となると考えられる。その点において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は好適であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。 さらに、上記のスルホン酸系界面活性剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩等がある。抗ウイルス性に優れる点でアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)がさらに好ましい。 また、複数のスルホン酸系界面活性剤を抗ウイルス性が阻害されない限りにおいて添加してもよく、その他の種類の界面活性剤を加えることも制限されない。」 この記載からみて、「スルホン酸基」の存在による、例えばインフルエンザウイルスへの阻害作用の発現が理解できる。そして、実施例では、その一例としてアルキルベンゼンスルホン酸Naを用いてその有効性が確認されている。そうであれば、これらの「スルホン酸系界面活性剤」はいずれも有為なものであると認識できる。そして、申立人はアルキルベンゼンスルホン酸Na以外の「スルホン酸系界面活性剤」が有為でないことが確認できる証拠を示さない。 よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものといえる。 イ 上記(1)イについて 本件【0017】には以下の記載がある。 「水に不溶な充填剤を含有することで抗ウイルス性が向上する理由は現時点で以下のように想定している。充填剤を含む抗ウイルス性表面処理剤が塗布されると、被塗装体の表面で水性樹脂エマルジョンによる膜が形成される。この膜の表面には含有されている充填剤により微小な凹凸が形成される。この膜表面の微小な凹凸により膜とウイルスとの接触面積が大きくなる。また、この膜の表面に存在する充填剤にウイルスが吸着されスルホン酸系界面活性剤とウイルスとの接触機会が増大する。」 b)に関し、この記載に鑑みると、水性樹脂エマルジョンによる膜の表面に、含有されている充填剤により微小な凹凸が形成される機構が示されているものと認められ、係る「微小な凹凸」において、充填剤の粒径や細孔がどの程度であるかは特に取り上げられるものではないことが理解できる。そうすると、充填剤の粒径や細孔について特に定めなくとも、本件発明の作用効果は十分確認できるものといえる。 また、a)及びc)に関し、申立人が認識するとおり、<実施例3>と<実施例4>を比較すると、水性樹脂エマルジョンの樹脂として同じく「ウレタン系」を用い、「スルホン酸系界面活性剤」の添加量が3.5部と同量であるにもかかわらず、シリカが添加されていない<実施例3>では抗ウイルス性が△であり、シリカが添加された<実施例4>では抗ウイルス性が○である。 以上のことから、シリカの添加による作用効果は十分確認されているということができる。 よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものといえる。 (3)まとめ したがって、本件発明1~5は本件発明の詳細な説明に記載したものであるから、申立ての理由2には理由がない。 4 申立ての理由3について (1)甲1の記載事項 ア 「【請求項1】 一般式(1)~(3)で示される構造式の置換基を少なくとも一つ有する単量体成分を30~80重量%含有する共重合体を含むインフルエンザウイルス感染阻止剤1~10重量%と、合成樹脂と、上記インフルエンザウイルス感染阻止剤及び合成樹脂を分散させている水とを含むことを特徴とする水性フロアーポリッシュ。 【化1】 [図:0001384237000001.jpg] (m,n及びpはそれぞれ0~2の整数を示し、R1~R19はそれぞれ、水素、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体の何れかであって、R1~R5のうちの少なくとも一つは、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体であり、R6~R12のうちの少なくとも一つは、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体であり、R13~R19のうちの少なくとも一つは、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体である。) … 【請求項3】 請求項1に記載の水性フロアーポリッシュを塗布、乾燥させてなる塗膜を有することを特徴とするインフルエンザウイルス感染阻止製品。」 イ 「【0050】 インフルエンザウイルス感染阻止剤を構成している共重合体を固定させる担持体としては、特に限定されず、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミキュライト、パーライトなどの無機担体や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などの有機高分子担体などが挙げられる。 … 【0053】 本発明の水性フロアーポリッシュにおけるインフルエンザウイルス感染阻止剤の含有量は、少ないと、水性フロアーポリッシュを乾燥させて得られる塗膜が所望のインフルエンザウイルス感染阻止効果を発揮しないことがあり、多いと、水性フロアーポリッシュの塗工性が低下することがあるので、1~10重量%に限定され、1~5重量%が好ましく、1~2.5重量%がより好ましい。 … 【0056】 塗膜を形成するための合成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂とウレタン系樹脂の混合物などが挙げられる。 【0057】 アクリル系樹脂は、アクリル系単量体を重合又は共重合させることによって製造され、アクリル系単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。アクリル系単量体としては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、アルキル基の炭素数が1~10であるアルキルアクリレート、アルキル基の炭素数が1~10であるアルキルメタクリレートが好ましい。 【0058】 アクリル系単量体と共重合する単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、イタコン酸などのα,β-モノエチレン性カルボン酸、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、クロル酢酸ビニル、アリルアルコール、ジビニルベンゼン、エチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートはメタクリレート又はアクリレートを意味する。 【0059】 又、ウレタン系樹脂としては、例えば、特開昭62-230863号公報、特開昭63-23972号公報、特開平6-234912号公報に記載のものが挙げられる。また、カルボキシ基を含有しないウレタン樹脂エマルジョンとしては、例えば、第一工業製薬社から商品名「スーパーフレックス410」、大日本インキ化学工業社から商品名「ハイドランHW-950」、武田薬品工業社から商品名「タケラックW-635」にて市販されている。このカルボキシ基を含有しないウレタン樹脂から形成される塗膜が耐水性及び耐摩耗性に優れているという特徴を有する。又、耐溶剤性に優れ且つ経時的な着色の生じないウレタン樹脂エマルジョンとしては、特開2003-252948号公報に記載のものが挙げられる。」 ウ 「【0075】 以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。 (ベース水性フロアーポリッシュの作製) 【0076】 水性ウレタン樹脂(米国BF Goodrich社製 商品名「サンキュア1818」、ウレタン樹脂の含有量:35重量%)20重量部、アクリル系樹脂エマルジョン(アクリル系樹脂の含有量:40重量%)40重量部、スチレン-マレイン酸共重合体のアンモニア溶液(米国アルコケミカル社製 商品名「SMA2625A」、スチレン-マレイン酸共重合体の含有量:20重量%)8.5重量部、ポリエチレンワックスエマルジョン(ポリエチレンワックスの含有量:20重量%)9.5重量部、炭酸亜鉛のアンモニア水溶液(炭酸亜鉛の含有量:8重量%)5重量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテル4重量部、トリブトキシエチルホスフェート1重量部及び水12重量部を混合してベース水性フロアーポリッシュを作製した。なお、ベース水性フロアーポリッシュ中において、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン-マレイン酸の総量は24.7重量%、水の総量は68重量%であった。 【0077】 なお、アクリル系樹脂エマルジョンは、メタクリル酸10重量%、ブチルアクリレート30重量%及びメチルメタクリレート60重量%からなる単量体をラウリル硫酸ナトリウムの存在下にて常用の乳化重合法によりラジカル重合させて作製されたものであった。ポリエチレンワックスエマルジョンは、非イオン界面活性剤を用いて乳化させて作製されたものであった。 … 【0109】 【表1】 [図:0001384237000002.jpg] 」 (2)甲2の記載事項 ア 「【請求項1】 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有することを特徴とする薄葉紙処理剤。 (A)分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール、 (B)多価アルコール、 (C)界面活性剤。 … 【請求項4】 前記(C)成分は、スルホン酸系界面活性剤を含む請求項1~3のいずれかに記載の薄葉紙処理剤。」 イ 「【0016】 「(C)成分」 (C)成分は界面活性剤である。 … (C)成分としては、アニオン界面活性剤(c-1)…のいずれも用いることができる。 【0017】 (c-1)成分としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩等のスルホン酸系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩…等が挙げられる。 (c-1)成分の中でも、スルホン酸系界面活性剤…が好ましい。特に、抗ウィルス性(インフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性)が向上することから、スルホン酸系界面活性剤が好ましい。」 (3)甲3の記載事項 ア 「【請求項1】 基紙に対して、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薄葉紙処理剤を塗布した、ことを特徴とする衛生薄葉紙。 (A)分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール、 (B)多価アルコール、 (C)界面活性剤。 … 【請求項4】 前記(C)成分は、スルホン酸系界面活性剤を含む請求項1~3の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。」 イ 「【0020】 [(C)成分について] (C)成分は界面活性剤である。 … (C)成分としては、アニオン界面活性剤(c-1)…のいずれも用いることができる。 【0021】 (c-1)成分としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、痾-オレフィンスルホン酸塩、痾-スルホ脂肪酸エステル塩等のスルホン酸系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩…等が挙げられる。 (c-1)成分の中でも、スルホン酸系界面活性剤…が好ましい。特に、抗ウィルス性(インフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性)が向上することから、スルホン酸系界面活性剤が好ましい。」 (4)甲1発明 甲1請求項1から、甲1には以下の甲1発明が記載されている。 「一般式(1)~(3)で示される構造式の置換基を少なくとも一つ有する単量体成分を30~80重量%含有する共重合体を含むインフルエンザウイルス感染阻止剤1~10重量%と、合成樹脂と、上記インフルエンザウイルス感染阻止剤及び合成樹脂を分散させている水とを含むことを特徴とする水性フロアーポリッシュ。 【化1】 [図:0001384237000003.jpg] (m,n及びpはそれぞれ0~2の整数を示し、R1~R19はそれぞれ、水素、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体の何れかであって、R1~R5のうちの少なくとも一つは、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体であり、R6~R12のうちの少なくとも一つは、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体であり、R13~R19のうちの少なくとも一つは、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体である。)」 (5)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 a 甲1発明は「合成樹脂」を分散させているから、係る「合成樹脂」は「水性樹脂エマルジョン」の「分散質」となっているものと認められる。 b 「一般式(1)~(3)で示される構造式の置換基を少なくとも一つ有する単量体成分を30~80重量%含有する共重合体を含むインフルエンザウイルス感染阻止剤」の存在により、甲1発明は「抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系」の剤が添加されたものと認められる。 c 甲1発明は「水性フロアーポリッシュ」であるから、「被塗装体」が存在し、「…感染阻止剤」により係る「被塗装体」の表面に抗ウイルス性を付与するものと認められる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。 一致点: 「合成樹脂を分散質とする水性樹脂エマルジョンに、被塗装体に抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系の剤が添加された抗ウイルス性表面処理剤。」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点1: 水性樹脂エマルジョンを構成する樹脂において、本件発明1は「アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の」「アニオン系」「樹脂」であるのに対し、甲1発明は係る「樹脂」が明らかでない点。 相違点2: スルホン酸系の剤において、本件発明1は「アルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系化合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物から選ばれる少なくとも1つである」のに対し、甲1発明は「一般式(1)~(3)で示される構造式の置換基を少なくとも一つ有する単量体成分を30~80重量%含有する共重合体」(注:一般式(1)~(3)省略)である点。 イ 検討 相違点2について検討する。 甲1発明における「抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系」の剤は、「共重合体」のみである。甲2及び甲3には、薄葉紙に塗布される「抗ウィルス性(インフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性)が向上する」スルホン酸系界面活性剤(甲2【0017】、甲3【0021】)が記載されているが、甲1発明の「抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系」の剤の代わりに、あるいは、加えて、甲2や甲3に記載されたスルホン酸系界面活性剤を用いることの動機付けとなる記載は、甲各号証のいずれからも見いだすことができず、そのような技術常識が存在することも明らかでない。 よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2あるいは甲3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)本件発明2について ア 本件発明2と甲1発明との対比 上記(5)アのa~cは、本件発明2と甲1発明との間にも成立する。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは以下の点で一致する。 一致点: 「合成樹脂を分散質とする水性樹脂エマルジョンに、被塗装体に抗ウイルス性を付与するためのスルホン酸系の剤が添加された抗ウイルス性表面処理剤。」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点3: 水性樹脂エマルジョンを構成する樹脂において、本件発明2は「アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の」「アニオン系」「樹脂」であるのに対し、甲1発明は係る「樹脂」が明らかでない点。 相違点4: 本件発明2は、「水性樹脂エマルジョン」に「水に不溶な充填剤が添加され」、更に、「前記水性樹脂エマルジョンの固形分に対する前記充填剤の含有量が1~10重量%であり、前記充填剤がシリカである」のに対し、甲1発明は、「水性樹脂エマルジョン」に係る「充填剤」の存在が明らかでない点。 イ 検討 相違点4について検討する。 上記(1)イで示したとおり、甲1【0050】には「インフルエンザウイルス感染阻止剤を構成している共重合体を固定させる担持体としては、特に限定されず、例えば…、シリカ…などの無機担体…などが挙げられる。」と、同【0056】には「塗膜を形成するための合成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂とウレタン系樹脂の混合物などが挙げられる。」と記載されている。 しかし、甲1には、シリカの含有量をどの程度とするか何ら記載も示唆もなく、シリカを添加したことで、本件実施例3と同4の対比から確認される抗ウイルス性の向上が企図されると解される記載ないし示唆は存在しない。他の甲各号証の記載を参照しても同様である。 よって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2あるいは甲3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)本件発明3~5について 本件発明3~5は、本件発明1あるいは本件発明2を更に限定するものである。したがって、本件発明1及び本件発明2が甲1発明及び甲2あるいは甲3に記載された技術的事項から当業者が容易になしえたものとはいえないことに鑑みると、本件発明3~5も甲1発明及び甲2あるいは甲3に記載された技術的事項から当業者が容易になしえたものとはいえない。 (8)まとめ よって、本件発明1~5は、甲1発明及び甲2あるいは甲3に記載された技術的事項から当業者が容易になしえたものとはいえず、申立ての理由3には、理由がない。 5 まとめ 以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由によっては、本件請求項1~5に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701037

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