特許異議申立
2021-701090
粘着シート
- 審判番号
- 2021-701090
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-514641
- 登録番号
- 6873354
- 請求日
- 2021年11月18日
- 審決日
- 2023年02月08日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】籾井 孝文
- 【異議申立人】森川 真帆
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.536-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J) / P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の9、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6873354号発明「粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6873354号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。
特許第6873354号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和2年11月30日(優先権主張 令和元年12月27日 令和2年7月1日 日本国受理)を国際出願日とする出願であって、令和3年4月22日に特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行され、その後同年11月18日に特許異議申立人 森川 真帆(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和4年 2月 1日付 取消理由通知
令和4年 4月 5日 訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)及び意見書の提出
令和4年 4月21日付 申立人への通知書
令和4年 6月 3日 申立人からの意見書の提出
第2 本件訂正についての判断
1 請求の趣旨
令和4年4月5日にされた本件訂正請求に係る請求の趣旨は、「特許第6873354号の明細書及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める」というものである。
2 訂正事項
本件訂正は、次の訂正事項からなるものである。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に、
「レーザー光照射によりガスを発生するガス発生層を備え、
該ガス発生層のナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]が、下記式(1)を満たす、粘着シート。
Log(Er(gas)×106)≧8.01×h(gas)-0.116・・・(1)」
と記載されているのを、
「レーザー光照射によりガスを発生するガス発生層を備え、
該ガス発生層の厚みが、10μm~60μmであり、
該ガス発生層のナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]が、下記式(1)を満たす、粘着シート。
Log(Er(gas)×106)≧8.01×h(gas)-0.116・・・(1)」
と訂正する。(請求項1を引用する請求項2~19も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落0098、0100、0101に記載の実施例4及び実施例7を削除する。
ア 本件特許明細書の段落【0098】の「[実施例2~16、比較例1~5]」と記載されているのを、「[実施例2~3、5~6、8~16、比較例1~5]」と訂正する。
イ 本件特許明細書の段落【0100】【表1】において、実施例4の列を削除する。
ウ 本件特許明細書の段落【0101】【表2】において、実施例7の列を削除する。
3 訂正要件について
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~19は、いずれも本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は、請求項1~19からなる一群の請求項ごとにされたものであって、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的要件
訂正事項1により、訂正前には式(1)のみで特定された請求項1におけるh(gas)、すなわち「ガス発生層の厚み」が、訂正後には、「10μm~60μm」と更に特定されたことから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
イ 新規事項の追加の有無
本件の願書に添付した明細書の段落【0100】の【表1】におけるガス発生層の厚みは、実施例1では10μm、実施例2では30μm、実施例3では40μmとされている。また、同段落【0102】の【表3】における実施例15ではガス発生層の厚みは60μmとされている。
したがって、ガス発生層の厚みを10μm~60μmとする訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。よって、訂正事項1は、特許法第120条の9で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上の拡張・変更の有無
前記アに記載したように、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではなく、特許法第120条の9で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的要件
訂正事項2は、前記訂正事項1によって訂正された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために、明細書の段落0098、0100、0101に記載の実施例4及び実施例7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
イ 新規事項の追加の有無
前記アのとおり、訂正事項2は願書に添付した明細書の実施例4及び7を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の9で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項2は、訂正事項2は願書に添付した明細書の実施例4及び7を削除するものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではなく、特許法第120条の9で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 明細書の訂正と関係する請求項
訂正事項2によって実施例4及び7が削除されたが、明細書に記載された実施例1~3、5、6、8~15は、請求項1~19に係る発明の実施例である。したがって、訂正事項2は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項1~19全てについて行うものといえるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条第4項に適合するものである。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるから、請求項1~19に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明19」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
レーザー光照射によりガスを発生するガス発生層を備え、
該ガス発生層の厚みが、10μm~60μmであり、
該ガス発生層のナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]が、下記式(1)を満たす、粘着シート。
Log(Er(gas)×106)≧8.01×h(gas)―0.116・・・(1)
【請求項2】
波長360nmの光透過率が、0%~40%である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
波長380nmの光透過率が、10%~100%である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記ガス発生層が、紫外線吸収剤を含み、
該紫外線吸収剤の最大吸収波長が、360nm以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
前記ガス発生層が、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物である、請求項1から4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
前記ガス発生層が、アクリル系ポリマーを含む、請求項1から5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
前記ガス発生層の少なくとも片側にガスバリア層を備え、
該ガスバリア層のナノインデンテーション法による弾性率が、0.1MPa~100MPaである、
請求項1から6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
前記ガスバリア層の厚みが、0.1μm~50μmである、請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記バリア層が、粘着性を示す、請求項1から8のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項10】
波長500nmの光透過率が、70%~100%である、請求項1から9のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項11】
ヘイズ値が、50%以下である、請求項1から10のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項12】
前記粘着シートの表面が、レーザー光照射により、変形する、請求項1から11のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項13】
前記粘着シートの表面が、レーザー光照射により、凸状に変形する、請求項12に記載の粘着シート。
【請求項14】
前記粘着シートへのレーザー光照射による該粘着シート表面の水平変位が、50μm以下である、請求項12または13のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の粘着シート上に電子部品を貼着すること、および、該粘着シートにレーザー光を照射して該粘着シートから該電子部品を剥離することを含む、電子部品の処理方法。
【請求項16】
前記電子部品の剥離が、位置選択的に行われる、請求項15に記載の電子部品の処理方法。
【請求項17】
前記粘着シートに前記電子部品を貼着した後、該粘着シートから該電子部品を剥離する前に、
該電子部品に所定の処理を行うことを含む、
請求項15または16に記載の電子部品の処理方法。
【請求項18】
前記処理が、グラインド加工、ダイシング加工、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、エッチング、蒸着、モールディング、回路形成、検査、検品、洗浄、転写、配列、リペアまたはデバイス表面の保護である、請求項17に記載の電子部品の処理方法。
【請求項19】
前記粘着シートから前記電子部品を剥離した後、電子部品を別のシートに配置することを含む、請求項15から18のいずれかに記載の電子部品の処理方法。」
第4 令和4年2月1日付の取消理由について
1 令和4年2月1日付けで当審が通知した取消理由は、次のとおりのものである。
(1)本件訂正前の本件発明1~19に係る記載は、後記(2)の理由により、特許法第36条第6項第1号及び第36条第4号第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件発明1~19に係る特許は特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(2)ガス発生層の厚さについて
ア 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0023】の記載された「押し込み深さ約1500nmの測定条件」で測定した場合について検討すると、「ダイヤモンド製のBerkovich型(三角錐型)探針」を、ガス発生層の切り出した断面に、深さ1500nmで押し込んだ場合は、押し込まれた探針の接触投影面積は、約55.3μm2(24.565×(1500nm)2)であり、上記接触投影面積は、一辺が約11.3μmの正三角形に相当する。
そうすると、ガス発生層の切り出した断面、すなわち、ガス発生層の「厚みh」が11.3μmを超えるものでなければ、「ナノインデンテーション法による弾性率Er」は測定できないことになる。
イ ガス発生層の「厚みh」が60μm(実施例15)を超えるものについては、本件特許明細書の【0024】に記載されているように、ガス発生層内にガスが発生しても良好な変形部が形成できるとはいえないし、そのようなものについては、請求項1で規定される「弾性率Er」の下限値が極端に小さいものとなって、本件発明の課題を解決することができないものが含まれるようになることも明らかである。
2 当審の判断
(1)前記1(2)アの理由について
ア 本件訂正後の本件特許明細書の実施例1~3、5~6、8~17のうち、実施例1~3に注目する。実施例1~3のガス発生層の組成は本件明細書の段落【0100】の【表1】の記載から、ポリマー、架橋剤の種類及び配合量、紫外線吸収剤の種類及び配合量は全て一致していることが読み取れる。
イ そして、実施例1~3におけるガス発生層の厚みh(gas)[μm]は、実施例1が10、実施例2が30、実施例3が40であることが読み取れる。
ウ ガス発生層の弾性率Er(gas)[MPa]は、実施例1が1.41、実施例2が1.41、実施例3が1.41であることが読み取れる。
エ そして、前記実施例1のガス発生層の弾性率Er(gas)[MPa]の値は、正しい値であるという通常の前提で検討すると、前記1(2)アでの指摘にかかわらず、ガス発生層の厚みh(gas)が10μmであるときの、ガス発生層の弾性率Er(gas)は測定可能であって、本件発明1~19に係る記載は、特許法第36条第6項第1号及び第36条第4号第1号に規定する要件を満たさないということはできない。
ウ 前記イを踏まえれば、前記1(2)アにおける「ダイヤモンド製のBerkovich型(三角錐型)探針」を、ガス発生層の切り出した断面に、深さ1500nmで押し込んだ場合」における接触深さは、0.85μmになるという特許権者の主張は採用でき、この場合、探針の接触投影面積は、17.7μm2となり、正三角形の一辺の長さは、6.4μmとなる。したがって、ガス発生層の厚さが10μm以上である本件発明1~19において、ナノインデンテーション法による弾性値を正確に測定できるものといえる。
(2)前記1(2)イの理由について
本件訂正により、ガス発生層の厚みの上限が60μmに特定されたことにより、前記1(2)イの理由は解消された。
第5 取消理由に採用しなかった理由について
1 申立人の主張の概要
(1)甲号証及び参考資料
申立人が提示した甲第1~3号証(以下「甲1」~「甲3」という。)及び参考資料1~3は次のとおりである。
甲1:特開2017-132940号公報
甲2:特開2015-160882号公報
甲3:特表2019-527465号公報
参考資料1:稲葉文男(外7名)編集、レーザーハンドブック(1982年)、91~92頁
参考資料2:レーザ協会編集、レーザ応用技術ハンドブック(1984年)、66~67頁
参考資料3:高分子学会編集、入門レーザー応用技術(1993年)、173~181頁
2 甲1~3及び参考資料の記載事項
(1)甲1には次の記載がある。
「【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを備える粘着テープであって、
該粘着テープの23℃×30分後におけるSUS板に対する粘着力が、0.01N/20mm~0.6N/20mmであり、
該粘着剤層の25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率が、4.0MPa~30MPaである、
粘着テープ。」
「【0018】
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤を含む。粘着剤を構成するベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー;天然ゴム;メタクリル酸メチルなどのモノマーをグラフトした特殊天然ゴム;SBS、SBR、SEPS、SIS、SEBS、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ブチルゴムなどの合成ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、剥離後の被着体への糊残りが少なく、高凝集性を有し、透明性に優れる点で、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。ベースポリマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。」
「【0041】
粘着剤層には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤などが挙げられる。」
「【0049】
基材を構成する材料としては、任意の適切な材料が用いられ得る。好ましくは、基材としては、プラスチックフィルムが用いられる。
【0050】
プラスチックフィルムは、任意の適切な樹脂材料を含み得る。このような樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンまたはエチレン-酢酸ビニル共重合体であり、より好ましくは、ポリ塩化ビニルである。ポリ塩化ビニルは応力緩和性に優れるため、ニードル突き上げ時の衝撃を適度に緩和し、小片化された被着体(例えば、LEDチップ)の位置ずれや脱落を抑制できる。このようなポリ塩化ビニルを用いれば小片化された被着体(例えば、LEDチップ)の出荷用粘着テープとして好適な粘着テープを得ることができる。」
「【0090】
〔実施例1〕
(非粘着層)
シリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS-723A」)60重量部、シリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS-723B」)40重量部、アクリル共重合ポリマー(メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=70/30/10)50重量部、スズ系触媒(信越化学工業社製、商品名「Cat-PS3」)10重量部を、溶液状態で混合して、混合溶液(1)を得た。混合溶液(1)中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比は、重量比で、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=2:1であった。
製造例1で得られた軟質ポリ塩化ビニルフィルム(1)の片方の面に、上記混合溶液(1)を塗布して、乾燥し、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmの非粘着層(1)を形成させた。
(粘着剤層)
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、DIC社製、商品名「スーパーベッカミンJ-820-60N」)10重量部、エポキシ系架橋剤(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)ジクロルヘキサン、三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)1.0重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学社製)0.7重量部、DOP可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ジェイプラス社製)40重量部を含む粘着剤溶液(1)を調製した。この粘着剤溶液(1)を、上記軟質ポリ塩化ビニルフィルム(1)の非粘着層(1)と反対側の面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの粘着剤層(1)を形成した。
(粘着テープ)
以上のようにして、非粘着層(1)/軟質ポリ塩化ビニルフィルム(1)/粘着剤層(1)から構成される粘着テープ(1)を製造した。得られた粘着テープ(1)を上記評価1~3に供した。結果を表1に示す。
【0091】
〔実施例2〕
(非粘着層)
実施例1と同様にして、混合溶液(1)を調製した。
製造例2で得られた軟質ポリ塩化ビニルフィルム(2)の片方の面に、上記混合溶液(1)を塗布して、乾燥し、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmの非粘着層(1)を形成させた。
(粘着剤層)
エポキシ系架橋剤の配合量を3重量部とし、DOP可塑剤40重量部に代えてDOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ADEKA社製、商品名「アデカサイザーD-810」)80重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤溶液(2)を調製した。この粘着剤溶液(2)を、上記軟質ポリ塩化ビニルフィルム(2)の非粘着層(1)と反対側の面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの粘着剤層(2)を形成した。
(粘着テープ)
以上のようにして、非粘着層(1)/軟質ポリ塩化ビニルフィルム(2)/粘着剤層(2)から構成される粘着テープ(2)を製造した。得られた粘着テープ(2)を上記評価1~3に供した。結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例3〕
(非粘着層)
実施例2と同様にして、軟質ポリ塩化ビニルフィルム(2)上に非粘着層(1)を形成した。
(粘着剤層)
エポキシ系架橋剤の配合量を6重量部としたこと以外は、実施例2と同様にして、粘着剤層(3)を形成した。
(粘着テープ)
以上のようにして、非粘着層(1)/軟質ポリ塩化ビニルフィルム(2)/粘着剤層(3)から構成される粘着テープ(3)を製造した。得られた粘着テープ(3)を上記評価1~3に供した。結果を表1に示す。」
「【0094】
【表1】
[図:0001397163000001.jpg]
」
(2)甲2には次の記載がある。
「【請求項1】
粘着層を備え、
該粘着層が、結晶化度80%以上のポリテトラフルオロエチレンを含む、
粘着シート。
【請求項2】
前記粘着層の25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率が、0.5MPa以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層の厚みが、0.03mm以上である、請求項1または2に記載の粘着シート。」
「【0018】
本発明の粘着シートは、電子デバイス用の部材(例えば、基板)を仮固定する粘着シートとして好適に用いられ得る。本発明の粘着シートは、電子デバイスに用いられる部材を加工、処理、搬送等するプロセスにおいて所定の台座に仮固定するのに十分な粘着性を有し、かつ、当該粘着性は、上記プロセスを経た後に、台座から部材を容易に剥離し得る程度の粘着力であることが好ましい。上記部材としては、例えば、シリコン製の部材、サファイヤ製の部材、炭化ケイ素製の部材、ガラス製(例えば、ソーダライム製、強化ガラス製)の部材、樹脂製(例えば、ポリイミド製、ポリカーボネート製、ポリーテルスルホン製)の部材、金属製(例えば、ステンレス製)の部材、ガラス繊維を含む部材、有機無機ハイブリッド材料から構成される部材(例えば、シルセスキオキサンとポリカーボネート等の熱可塑性樹脂とから構成される基板)等が挙げられる。上記台座としては、ガラス製(例えば、ソーダライム製、強化ガラス製)の台座、シリコン製の台座、サファイヤ製の台座、金属製(例えば、ステンレス製)の台座等が挙げられる。また、本発明の粘着シートは、上記部材同士を貼着するために用いることもできる。」
「【0053】
[実施例1]
PTFEファインパウダー(商品名「ポリフロンPTFE F-104」、圧縮強さ(ASTM D695、1%変形、25℃)5~6MPa、ダイキン工業社製)100重量部と、液状潤滑剤としてn-ドデカンを20重量部とを混合して、ペースト状の混和物を得た。得られた混和物をペースト押し出しにより成形して、押し出し成形体(厚み2mm)を得た。次いで、得られた押し出し成形体を、一対の金属ロール間に通して、厚み0.2mmまで圧延した。その後、150℃で60秒間加熱し、液状潤滑剤を乾燥除去して、乾燥成形体を得た。さらに、得られた乾燥成形体を、100℃で5分間加熱し、その後、25℃の室温下で冷却して、厚み0.2mmのPTFEシートからなる粘着シートを得た。
【0054】
[実施例2]
実施例1と同様にして、乾燥成形体を得た。得られた乾燥成形体を200℃で5分間加熱し、その後、25℃の室温下で冷却して、厚み0.2mmのPTFEシートからなる粘着シートを得た。
【0055】
[実施例3]
実施例1と同様にして、乾燥成形体を得た。得られた乾燥成形体を320℃で5分間加熱し、その後、25℃の室温下で冷却して、厚み0.2mmのPTFEシートからなる粘着シートを得た。」
「【0063】
[実施例11]
PTFEファインパウダー(商品名「ポリフロンPTFE F-104」、圧縮強さ(ASTM D695、1%変形、25℃)5~6MPa、ダイキン工業社製)100重量部と、液状潤滑剤としてn-ドデカンを20重量部とを混合して、ペースト状の混和物を得た。得られた混和物をペースト押し出しにより成形して、押し出し成形体(厚み2mm)を得た。次いで、得られた押し出し成形体を、一対の金属ロール間に通して、厚み0.51mmまで圧延した。その後、150℃で60秒間加熱し、液状潤滑剤を乾燥除去して、乾燥成形体を得た。さらに、得られた乾燥成形体を延伸温度280℃で、長手方向に2倍延伸し、その後、25℃の室温下で冷却して、厚み0.4mmのPTFEシートからなる粘着シートを得た。」
「
[図:0001397163000002.jpg]
」
(3)甲3には次の記載がある。
「【請求項1】
複数の個別部品を第1の基板から第2の基板に移送する段階であって、
前記第1の基板に前記複数の個別部品を付着する動的剥離層の上面の複数の領域を同時に照射し、前記照射された領域の各々が前記個別部品の対応する1つと位置合わせされる段階を含み、
前記照射により、前記照射された領域の各々における前記動的剥離層の少なくとも一部のアブレーションが誘発され、
前記アブレーションにより、前記個別部品の少なくともいくつかが前記第1の基板から同時に取り外される、移送する段階、
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の領域を照射する段階が、前記複数の領域にレーザエネルギーを照射する段階を含む、請求項1に記載の方法。
・・・
【請求項6】
前記動的剥離層の前記部分厚さのアブレーションが、前記照射された領域の各々における前記動的剥離層の残りの厚さの変形を誘発する、請求項5に記載の方法。
・・・
【請求項13】
前記動的剥離層の付着力を低下させることが、前記動的剥離層を刺激に晒すことを含む、請求項12に記載の方法。」
「【0027】
図1A及び図1Bを参照すると、レーザアシスト移送プロセスは、剛性又は可撓性基板上に個別部品を高スループット、低コスト、非接触で組み立てるために使用される。個別部品という用語は、一般に、例えば、電子、電気機械、光電池、フォトニック、光電子の部品、モジュール又はシステムなどの製品または電子デバイスの一部となる任意のユニット、例えば半導体材料の一部に回路が形成されている半導体材料を意味する。個別部品は、極薄であり、最大厚さが50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、10μm以下、又は5μm以下であることを意味する。個別部品は、1辺が300μm、1辺が100μm、1辺が50μm、1辺が20μm、又は1辺が5μm以下の最大長又は幅寸法を持つ超小型のものを意味する。個別部品は、超薄型と超小型の両方であり得る。
【0028】
特に図1Aを参照すると、個別部品12は、動的剥離層22によって支持基板16に付着される。支持基板という用語は、一般に、例えば、1つ以上の半導体ダイを含むウェハのような、製造業者によって組み立てられた個別部品の集まり等、1つ以上の個別部品を含む任意の材料を指す。
【0029】
個別部品12は、集積回路デバイスを含む活性面32を含む。図1A及び図1Bの例では、個別部品12の活性面32は、動的剥離層22から離れるように向いており、いくつかの例では、活性面32は、動的剥離層22の方に向くことができる。
【0030】
図1Bを参照すると、ブリスター移送プロセスでは、レーザ光線24のエネルギーが支持基板16の背面30に加えられる。支持基板16は、レーザエネルギーの波長に対して透過性である。レーザエネルギー24は、支持基板16を通過し、動的剥離層22の領域に入射し、レーザエネルギー24が入射する領域(これは、照射領域と称される)における動的剥離層の部分厚さのアブレーションを引き起こす。アブレーションは、限られた気体を発生させ、それは、膨張して動的剥離層22の非アブレーション残部に応力を発生させる。この応力により、動的剥離層の材料が弾性変形し、ブリスター26が形成される。弾性変形に起因する応力が動的剥離層材料の降伏強度を超えると、動的剥離層が塑性変形する。ブリスター26は、個別部品12に機械的な力を加える。ブリスター26によって及ぼされる機械的な力が個別部品12と動的剥離層22との間の付着を克服するのに十分であるとき、(重力と組み合わせて)ブリスター26によって及ぼされる機械的な力は、例えば、ターゲット基板28への移送のために、個別部品を支持基板16から離れるように前へ押し出す。」
「【0065】
個別化された個別部品は、一時的な基板から、その上に配置された動的剥離層を有する透明な支持基板に移送される(702)。いくつかの実施例では、支持基板には、既に付けられた動的剥離層を設けることができる。いくつかの例では、動的剥離層は、支持基板に付けられる。支持基板は、ガラス又は透明ポリマーなどの材料で形成され、その後のレーザアシスト移送プロセス中に使用される波長を含む、紫外線、可視または赤外線電磁スペクトルの少なくともいくつかの波長に対して少なくとも部分的に透過性である。いくつかの例では、単一化されたウェハの部品は、一時的な基板を使用せずに直接支持基板に移送される。例えば、単一化された部品の直接的な移送は、レーザリフトオフプロセスを使用して、成長基板から支持基板へエピ層厚マイクロLEDを移送するために使用することができる。」
「【0068】
いくつかの例では、個別部品は、ダイシングの前に、例えば全体または部分的なウェハとしての支持基板に移送することができる。例えば、ウェハまたは部分ウェハは、支持基板上に取り付けられ、次いで、ウェハは、個別部品にダイシングされ得る。いくつかの例では、支持基板に移送する前にウェハを部分的にダイシングすることができ、支持基板に移送した後にダイシングを完了することができる。」
「【0081】
熱、紫外線、または他のタイプの刺激のような刺激の適用によって、動的剥離層の付着性が低下する(808)。次に、個別部品は、レーザアシスト移送プロセスを使用してデバイス基板に移送される(810)。図10の例では、個別部品は、シングル部品モードで個別に移送されるものとして示されている。いくつかの例では、複数の個別部品をマルチ部品モードで同時に移送することができる。いくつかの例では、個別部品の移送は、第1の移送プロセスにおいて不良なダイが支持基板から除去され、次に第2の移送プロセスにおいて良好なダイがデバイス基板に移送される、良好なダイのみのプロセスを含む。デバイス基板上の個別部品は、デバイス基板に結合され、デバイス基板上の回路要素に相互接続される(812)。」
「
[図:0001397163000003.jpg]
」
「
[図:0001397163000004.jpg]
」
(4)参考資料1には次の記載がある。
91頁2~7頁
「12.1 レーザー加工
レーザー光は指向性がよいので,小さいスポットに収束できる.出力の大きいレーザー光を加工試料面に収束すると、光の強さは非常に大きくなるので,加工面の微少部分はレーザー光を吸収して高温に加熱され溶融または蒸発する.レーザー光による微少穴あけ加工および溶融は,それぞれ収束レーザー光による試料の加熱蒸発および加熱溶融により行われる.」
(5)参考資料2には次の記載がある。なお、下線などは申立人が付加したものである。
ア 66頁2~12行
「
[図:0001397163000005.jpg]
」
イ 66頁最下部
「
[図:0001397163000006.jpg]
」
(6)参考資料3には次の記載がある。なお、下線及び枠線は申立人が付したものである。
ア 173頁1~7行
「
[図:0001397163000007.jpg]
」
イ 174頁2~5行
「現在,エキシマーレーザーを使用してのアブレーションは,有機・高分子材料以外にも,金属,無機(セラミックス),生体物質などのあらゆる物質を対象として,基礎と応用の両面からの研究が活発になっている・・・」
ウ 178頁16~20行及び表15.1
「
[図:0001397163000008.jpg]
」
エ 180頁表15.2
「
[図:0001397163000009.jpg]
」
3 申立人の主張及び当審の判断
(1)申立人が主張した取消理由のうち、前記第4で採用しなかった理由は、次のとおりである。
ア 理由1-2:サポート要件違背
(ア)申立人の主張
本件明細書における実施例を整理すると、下記表Aになる。
<表A>
[図:0001397163000010.jpg]
表Aの数値から、どのように本件発明1の式(1)が導出されたかが、明らかでない。
また、表Aと本件発明の式(1)をグラフにすると以下のようになる。
<図B>
[図:0001397163000011.jpg]
ガス発生層の厚さが10μm以下である場合の実施例については、弾性率Erがガス発生層の弾性率を測定できていないから、式(1)の導出過程はさらに不明なものとなっている。また、弾性率Erが大きすぎる場合は、ガス発生層からガスを発生させても、ガス発生層の変形ができなから、本件発明の課題が解決できない。
したがって、本件発明は、課題を解決できない発明を含んでおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものである。
(イ)当審の判断
本件訂正により、訂正前の実施例4及び7が削除されたから、前記(ア)の図Bにおける左側の2つの点は、本件発明の範囲外のものとなった。
また、前記第4において検討したように、厚みhが10μmの実施例は、本件発明の実施例であると認められる。
申立人は、本件発明1における式(1)の導出過程が不明と主張するが、前記(ア)の図Bに示されるように、導出過程が明らかでないにせよ、本件明細書に記載された実施例と比較例とを峻別するために式(1)が定められているといえるから、式(1)を満たす場合に本件明細書に記載された課題が解決されることは読み取れる。
また、弾性率Erの上限は課題が解決できる程度に限られるものであるから、本件発明が課題を解決できない範囲を含むということはできない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
イ 理由1-3
(ア)申立人の主張
本件明細書の実施例においては、特定のアクリル系ポリマー、特定の架橋剤、特定の光重合開始剤、特定の紫外線吸収剤を用いた場合に課題が解決できることを示すに過ぎず、特許請求の範囲の全般に一般化できるものでないから、請求項1~19の記載は特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものでない。また、本件発明3を除く発明では、紫外線吸収剤が特定されていないが、紫外線吸収剤が含まれない場合には、本件発明は、その課題が解決できない。
(イ)当審の判断
申立人は、実施例以外のアクリル系ポリマー、架橋剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤を用いた場合に、本件発明の課題を解決できなくなることを示していないから、申立人の主張を採用することはできない。また、本件発明のガス発生層に照射するレーザーは、紫外光レーザーに限られないから、紫外線吸収剤を本件発明1の特定事項とさせることは適切でない。
ウ 理由1-4
(ア)申立人の主張
本件明細書に記載の実施例1~16及び比較例1~5の粘着シートはいずれも「ガスバリア層」を備えるものであり、「ガスバリア層」を備えない粘着シートは実施例17に記載されているに過ぎない。そして、ガスバリア層を設けない場合の本件発明1~6及び本件発明1~6を直接または間接的に引用する本件発明9~19は、本件発明1の式(1)に示される物性・特性により専ら規定されていることから、ただ一つの実施例17に基づいて本件発明の課題が解決できるとはいえない。
(イ)当審の判断
申立人も認めるように、「ガスバリア層」を備えない実施例17が開示されているから、その開示を参考にして、課題が解決できる発明を実施することは当業者にとって可能であるし、実施例17の結果からみて課題が解決できているといえる。また、申立人の主張は、本件発明の課題が解決できない部分を含んでいることを具体的に主張するものではないから、採用できない。
エ 理由2-2
(ア)申立人の主張
本件発明1における「ガス発生層」について、その物性及び特性が明確でなく、どの程度のレーザー光を照射したときにガスが発生するのかが明らかでない。したがって、本件発明の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない。
(イ)当審の判断
本件明細書の段落【0010】には、ガス発生層10は、レーザー光線によってその成分がガス化することにより、ガスを発生させる層である旨記載されていると解される。どのような層が「ガス発生層」であるか否かは、当業者であれば、明確に区別できるといえる。本件発明の記載が特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たさないということはできない。
オ 理由3(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)
申立人の主張
a 甲1発明
申立人は、前記2(1)に摘記した甲1から、次の甲1発明が読み取れると主張する。
「基材と、該基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを備え、
上記基材は、ポリ塩化ビニルで形成され、
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー、紫外線吸収剤を含み、
上記粘着剤層の厚みが10μm、ナノインデンテーション法による弾性率が23.3MPa、8.07MPa、または10.6MPaである、
粘着テープ。」
b 対比
申立人は、甲1発明における「粘着剤層」について、レーザーを照射すればガスを発生することになるから、本件発明1の「ガス発生層」に相当すると主張する。
当審の判断
a 本件発明1についての検討
甲1には、ガスを発生されることも、レーザを照射することも、何らの記載も認められない。申立人が主張するように、前記2(4)~(6)に摘記した参考資料1~3に記載されているように、適切な条件のレーザ光を照射することにより、高分子がガス化することは読み取れる。しかしながら、本件発明1における「ガス発生層」は、本件発明1における他の層と比較してガスを発生させやすい層であると解されるから、甲1発明における「粘着剤層」とは異なるものである。したがって、申立人の主張は採用できず、本件発明1は甲1発明であるということはできない。
また、甲1発明に「ガス発生層」を設けることを当業者が容易になし得ることということはでいないから、本件発明1は、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものいえない。
b 本件発明2~19についての検討
本件発明2~19は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加した発明であるから、本件発明1と同様に、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものいえない。
カ 理由4(甲2を主引用例とする新規性・進歩性)
申立人の主張
a 甲2発明
申立人は、前記2(2)に摘記した甲2から、次の甲2発明が読み取れると主張する。
「粘着剤層を備え、
上記粘着剤層は、結晶化度80%以上のポリテトラフルオロエチレンを含み、
上記粘着剤層の厚みが0.2mmで、ナノインデンテーション法による弾性率が0.053MPa、0.120MPa、または0.142MPaであるか、
上記粘着剤層の厚みが0.4mmで、ナノインデンテーション法による弾性率が0.021MPaである、
電子デバイス用の基板の仮固定用粘着シート。」
b 対比
申立人は、甲2発明における「粘着剤層」について、レーザーを照射すればガスを発生することになるから、本件発明1の「ガス発生層」に相当すると主張する。
当審の判断
a 本件発明1についての検討
前記オ(イ)aで検討したのと同様に、申立人の前記(ア)bの主張には、誤りがあって採用することができない。したがって、本件発明1は、甲2発明と同一ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということもできない。
b 本件発明2~19についての検討
本件発明2~19は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加した発明であるから、本件発明1と同様に、甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものいえない。
キ 理由5(甲3を主引用例とする新規性・進歩性)
(ア)申立人の主張
a 甲3A発明
申立人は、前記2(3)に摘記した甲3から、次の甲3A発明が読み取れると主張する。
「支持基板、および、該支持基板上に設けられた動的剥離層からなり、
前記支持基板は、レーザエネルギー、紫外線の波長に対して透過性である、
ガラス又は透明ポリマーなどの材料で形成され、
前記動的剥離層は、複数の超小型半導体材料を付着する上面における、レーザエネルギーの照射領域において、アブレーションが誘発され、気体が発生し、凸状のブリスターが形成されるものであり、
前記動的剥離層は、紫外線に晒すことにより付着力が低下できるものである、粘着基板。」
b 対比
(a)相違点3
申立人は、甲3A発明と本件発明1との相違点3は、本件発明1においては、ガス発生層のナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]との関係について「下記式(1)を満たす Log(Er(gas)×106)≧8.01×h(gas)-0.116・・・(1)」と規定されているのに対し、甲3A発明では、このような規定がなされていない点であると主張する。
(b)新規性欠如
申立人は、甲3A発明においても、「動的剥離層」が「レーザエネルギーの照射領域において、アブレーションが誘発され、気体が発生し、凸状のブリスターが形成される」ものであって、本件発明1に規定される弾性率を満たす蓋然性が高く、相違点3は実質的な相違点でないから、本件発明1は新規性を欠如すると主張する。
(c)進歩性欠如
また、相違点3が実質的な相違点であったとしても、相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることと主張する。
(イ)当審の判断
a 本件発明1についての検討
(a)甲3には、その「動的剥離層」について、材質も弾性率についての開示もない。そして、本件発明1における弾性率の特定を満たす蓋然性が高いという申立人の主張を認めるに足る証拠はない。
(b)甲3発明における「動的剥離層」について、弾性率をどの程度とするかの開示も甲3にはなく、また、甲1及び甲2の粘着剤層は、動的剥離層でないから、弾性率を甲1、甲2を参考として定めようとする動機付けはない。
(c)したがって、本件発明1は、甲3A発明ではなく、また、甲3A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
b 本件発明2~19についての検討
本件発明2~19は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加した発明であるから、本件発明1と同様に、甲3発明と同一ではなく、また、甲3発明に基づいて容易に発明をすることができたものいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701090