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特許異議申立

2021-700996

有機無機複合粒子とその製造方法、および化粧料

審判番号
2021-700996
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-511051
登録番号
6861453
請求日
2021年10月15日
審決日
2022年09月21日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日揮触媒化成株式会社
  • 【権利者代理人】奥町 哲行
  • 【異議申立人】山田 友則
審判長/審判官
  • 審判長 杉江 渉
  • 審判官 近野 光知
  • 審判官 橋本 栄和
分類
P1652.113-YAA(C08L) / P1652.121-YAA(C08L) / P1652.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6861453号発明「有機無機複合粒子とその製造方法、および化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6861453号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、〔3-9〕について訂正することを認める。 特許第6861453号の請求項1、2、4-9に係る特許を維持する。 特許第6861453号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6861453号(請求項の数12。以下、「本件特許」という。)は、平成31年3月28日(優先権主張 平成30年3月30日 日本国)を国際出願日とする出願に係る特許であって、令和3年4月1日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年4月21日である。)。 その後、令和3年10月15日に、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、特許異議申立人である山田友則(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和4年 2月17日付け取消理由通知書 同年 4月22日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年 5月12日付け通知書(申立人あて) なお、申立人に対して、令和4年5月12日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年4月25日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかの一項に記載の」とあるのを、「請求項1または2に記載の」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、2または4に記載の」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4または5に記載の」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4、5または6に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6または7に記載の」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7または8に記載の」に訂正する。 (8)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7、8または9に記載の」に訂正する。 (9)一群の請求項について 訂正前の請求項3~9について、請求項4~9は、請求項3を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項3~9に対応する訂正後の請求項3~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1~9による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、請求項3の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2~9は、訂正事項1による請求項3の削除に合わせて、引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正事項1~9は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件の特許異議の申立てにおいて、訂正前の請求項1~9について申立てがされているから、請求項1~9に対して独立特許要件は課されない。また、請求項10~12は、本件訂正による訂正がされていない。 したがって、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件が課される請求項はない。 4 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~12に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む球状の有機無機複合粒子であって、平均粒子径d1が0.5~25μm、真密度が1.03~2.00g/cm3、真球度が0.80以上である有機無機複合粒子。 【請求項2】 水に対する接触角が90°以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合粒子。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記有機無機複合粒子の分散液を、超音波分散機を用いて60分間分散させたとき、分散後の平均粒子径d3と、分散前の平均粒子径d1の比(d3/d1)が、0.95~1.05の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機複合粒子。 【請求項5】 前記シリカ成分として、平均粒子径d2が5nm~1μmの範囲にあるシリカ粒子が含まれることを特徴とする請求項1、2または4に記載の有機無機複合粒子。 【請求項6】 前記バイオマスプラスチックは、平均粒子径d4が1nm~1μmの粒子であることを特徴とする請求項1、2、4または5に記載の有機無機複合粒子。 【請求項7】 前記バイオマスプラスチックが、グルコース分子を構成単位とした結晶性セルロースであることを特徴とする請求項1、2、4、5または6に記載の有機無機複合粒子。 【請求項8】 前記有機無機複合粒子が外殻の内部に空洞を有する中空粒子であることを特徴とする請求項1、2、4、5、6または7に記載の有機無機複合粒子。 【請求項9】 請求項1、2、4、5、6、7または8に記載の有機無機複合粒子が配合された化粧料。 【請求項10】 シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%が分散された分散液に、界面活性剤と非水系溶媒を加えて、0.5~500μmの乳化液滴を含む乳化液を調製する乳化工程と、 前記乳化液滴を脱水処理する脱水工程と、 前記脱水工程で得られた非水系溶媒分散体を固液分離して平均粒子径が0.5~25μmで真球度が0.80以上の有機無機複合粒子を固形物として得る工程と、を含むことを特徴とする有機無機複合粒子の製造方法。 【請求項11】 前記乳化工程と前記脱水工程の間に、前記乳化液滴を凍結する凍結工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の有機無機複合粒子の製造方法。 【請求項12】 前記乳化工程において、前記乳化液滴が-10~0℃で凍結されたことを特徴とする請求項11に記載の有機無機複合粒子の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由について 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由 本件特許の請求項1~9に係る特許は、下記(1)~(8)のとおり、特許法第113条第2項及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、 下記(9)の甲第1号証~甲第8号証(以下、「甲1」等という。)を提出する。 (1)申立理由1(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1~2,4~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1~2、4~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1~4、6、7、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1~4、6、7、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲3に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)申立理由4(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、5、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1、5、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲4に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5)申立理由5(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲5に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲5に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (6)申立理由6(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲6に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲6に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (7)申立理由7(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲7に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (8)申立理由8(サポート要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の上記請求項に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 a 請求項3~9に対し、請求項3に記載の「弾性率」に関して、「甲第8号証…には「一般にポリマービーズに掛かる荷重F(kg)と圧縮弾性率E(kg/mm2)は下記の式で表される。・・・圧縮弾性率は変形量の1.5乗に反比例することから変形量と圧縮弾性率は直線関係にないことが分かる。したがって、変形量を規定した上で圧縮弾性率を定義する必要がある。」と記載されている。 本件特許明細書第0066段落には有機無機複合粒子の弾性率の測定方法が記載されているが、変位量の規定がなく、どの変位量での圧縮弾性率であるのかが記載されていない。」(申立書45頁下3行~46頁5行) b 請求項1~9に対し、請求項1に関して、「本件特許発明1に係る有機無機複合粒子は、「シリカ成分1.0~83.0重量%と、生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む」と規定されている。そうすると、本件特許発明1に係る有機無機複合粒子は、シリカ成分1.0重量%及びバイオマスプラスチック17重量%の場合に、その他成分として最大82重量%もの成分を含有する有機無機複合粒子を包含している。…本願明細書には、シリカ成分及びバイオマスプラスチック以外の成分については、0028段落にて20重量%以下で酸化チタン等が記載されているのみで、実施例では、シリカ成分及びバイオマスプラスチックを合計で100重量%使用するのみであり、その他成分については何ら記載がない。」(申立書46頁14~24行) c 請求項1~9に対し、請求項1に関して、「本件特許発明1に係る有機無機複合粒子は、「生分解性を有するバイオマスプラスチック」と規定されている。通常、粒子の流動性は、その表面性やシリカとの相溶性等の観点から、粒子を構成する具体的な成分の影響を受けると考えるのが相当と解されるが、本件特許の実施例で開示される生分解性を有するバイオマスプラスチックは、I型セルロースのみである。」(申立書47頁8~12行) (9)証拠方法 甲第1号証 特開2010-52974号公報 甲第2号証 特開平5-201830号公報 甲第3号証 再公表特許WO99/28350号公報 甲第4号証 特開2015-165007号公報 甲第5号証 特開2012-108181号公報 甲第6号証 特開2014-81573号公報 甲第7号証 特開2011-184615号公報 甲第8号証 林藤克彦ら、「単分散高分子微粒子の液晶スペーサへの応用」、高分子論文集、Vol.50、No.7、p.551~555、1993年7月 2 当審が通知した取消理由 令和4年2月17日付け取消理由通知で通知した取消理由は、以下のとおりである。 取消理由1(明確性) 本件の特許請求の範囲の請求項3~9の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。 よって、本件の請求項3~9に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 本件発明3において特定される弾性率は、変形量の値が特定されないと技術的にみてその値の意味が明確であるとはいえず、変形量の特定がない弾性率により特定されている本件発明3は明確であるとはいえない。 また、本件発明3を直接的又は間接的に引用する本件発明4~9も明確でない。 第5 当審の判断 以下に述べるように、当審が通知した取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、請求項1、2、4~9に係る特許は取り消すことはできない。 そして、請求項3に係る特許に対する申立ては、本件訂正により請求項3が削除されたことにより却下する。 1 請求項3に係る特許に対する申立ての却下 第2及び第3で示したとおり、本件特許の請求項3は本件訂正により削除され、訂正前の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象を欠くこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により決定をもって却下すべきものである。 2 取消理由1について 取消理由1は、請求項3に記載の「弾性率」が明確でないというものであるが、本件訂正により、請求項3は削除されたため、請求項3及びこれを引用する請求項4~9に係る発明に対する取消理由1については、判断を要しない。 3 申立ての理由について (1)申立理由1(甲1を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 甲1には、請求項1~2、【0018】、【0029】、【0031】、【0045】及び【0057】の記載があり、【0057】には、比較例3として、「シリカ分散液(平均粒子径70nm、固形分濃度20質量%)の500gを、バイオセルロース分散液(30質量%)の100gに加え、攪拌混合して、噴霧液とした。この噴霧液をスプレードライヤー(NIRO社製、NIRO ATMIZER)に供し、入口温度280℃、出口温度110℃、噴霧速度2リットル/分の条件で噴霧乾燥を実施し、平均粒子径5μm、細孔容積0.76ml/gのシリカ系粒子が得られた。」と記載されている。 そうすると、甲1には、比較例3に着目して、次の発明が記載されているといえる。 「シリカ分散液(平均粒子径70nm、固形分濃度20質量%)の500gを、バイオセルロース分散液(30質量%)の100gに加え、攪拌混合して噴霧液とし、この噴霧液をスプレードライヤーに供し、入口温度280℃、出口温度110℃、噴霧速度2リットル/分の条件で噴霧乾燥を実施して得られた、平均粒子径5μm、細孔容積0.76ml/gのシリカ系粒子」 (以下、「甲1発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 甲1発明の「シリカ」及び「バイオセルロース」は、本件発明1の「シリカ成分」及び「生分解性を有するバイオマスプラスチック」に相当する。 甲1発明の「シリカ系粒子」は、シリカ分散液とバイオセルロース分散液を混合した噴霧液を噴霧乾燥して得られ、シリカとバイオセルロースからなる粒子であるから、本件発明1の「有機無機複合粒子」に相当する。そして、甲1発明の「シリカ系粒子」の平均粒子系は5μmであり、本件発明1の「平均粒子系d1が0.5~25μm」を満たす。 さらに、甲1発明における「噴霧液」は、固形分濃度で、シリカを100g(=20質量%×500g)、バイオセルロースを30g(=30質量%×100g)含有し、これを噴霧乾燥して得られた「シリカ系粒子」は、シリカを23質量%、バイオセルロースを77質量%含有すると推察されるから、本件発明1の「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む」を満たすといえる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む球状の有機無機複合粒子であって、平均粒子径d1が0.5~25μm、である有機無機複合粒子。」の点で一致し、次の点で相違するといえる。 相違点1a:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「球状」で「真球度が0.80以上」であるのに対して、甲1発明は、「球状」で「真球度が0.80以上」であるか不明である点 相違点1b:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるのに対して、甲1発明は、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるか不明である点 (イ)検討 相違点1aについて検討する。 甲1には、比較例3における真球度は記載されておらず、甲1の記載から、甲1発明に係る「シリカ系粒子」の真球度を認定することはできない。なお、甲1の図1には、実施例1で得られた球状シリカ系粒子の走査型電子顕微鏡写真が示されているが、これは甲1発明(比較例3)の写真ではないし、甲1に記載された実施例1と比較例3とは、バイオセルロース分散液の濃度が異なり、製造条件が異なるものである。 また、甲1発明に係る「シリカ系粒子」の製造方法は、シリカ分散液とバイオセルロース分散液を混合した噴霧液を噴霧乾燥するのに対し、本件発明1に係る「有機無機複合粒子」の製造方法は、シリカ成分と生分解性プラスチックが分散された混合液に、非水系溶媒と界面活性剤を加えて乳化し、脱水処理、固液分離、乾燥及び解砕の各工程を経るものであり(本件明細書の【0034】~【0044】(有機無機複合粒子の製造方法)、【0054】及び【0055】(実施例1)、並びに【0067】~【0076】(実施例2~11)を参照)、本件発明1と甲1発明とは、全く異なる製造方法によって得られたものである。そして、本件発明1の上記製造方法を採用することは、「真球度が0.80以上」であることに寄与するものと解される。 そうすると、甲1発明に係る「シリカ系粒子」の真球度は不明であるという他なく、相違点1aは実質的な相違点であり、本件発明1は、相違点1bについて検討するまでもなく、甲1に記載された発明であるとはいえない。 そして、甲1には、シリカ系粒子の真球度に関する事項は記載されておらず、甲1に記載された事項に基づいて、甲1発明の真球度を0.8以上とすることは動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ 本件発明2、4~7について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~7についても、本件発明1について上記イ(イ)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件発明の効果について 本件発明1の「環境に流出しても水に浮かず、また、非水溶性の有害な化学物質を吸着し難く、更に良好な生分解性を有しているため、環境問題を引き起こす懸念がない」(【0012】)という効果は、本件明細書の「有機無機複合粒子の真密度が1.03g/cm3未満だと、水系環境に流出した際に水に浮くために、生分解の速度が遅延する」(【0015】)との記載から理解できる。 また、肌上に塗布された際の「転がり感」(【0017】)及び「転がり感の持続性」(【0016】、【0017】)の効果については、本件明細書に記載された粉体の感触特性の評価(【0082】~【0083】)では、本件発明1の実施例1~11は、「真球度が0.80以上」を満たさない比較例2と比べて、少なくとも転がり感及び転がり感の持続性で優れ、感触改良材として優れていることが示されている。さらに、パウダーファンデーションの使用感の評価(【0084】~【0086】)では、本件発明1の実施例1~3は、比較例2と比べて、少なくとも塗布中の均一な延び、塗布後の膜の均一性で優れることが示されている。 一方、甲1には、甲1発明(比較例3)の「シリカ系粒子」は優れた吸油性を示すこと(表1)が記載されるにとどまり、本件発明1の上記効果が予測し得るものであるとはいえない。 オ まとめ したがって、本件発明1、2、4~7は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)申立理由2(甲2を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明 甲2には、請求項1、【0007】~【0009】、【0011】~【0013】、【0017】及び実施例の記載があり、実施例1の本発明品3として、球状無水ケイ酸(平均粒径1μm)50g、結晶化セルロース(平均粒径10μm)50g、シリカコロイド(アデライトAT-20N(旭電化社製、固形分20重量%、粒径100~200Å)250g、精製水100gを、ホモミキサーにて6000rpmで10分間混合して、均一なスラリー状物を得て、噴霧乾燥機(大川原化工機社製、スプレードライヤーL-12型(ディスク式))を用いて、ディスク回転数2000rpm、処理速度5kg/hr、120℃、サイクロン差圧80mmAqの噴霧条件で噴霧乾燥を行い、粒径50μm、球形、全空孔体積0.6cm3/g、粒子強度>1000g/cm3である多孔性球状粉体を得たことが記載されている(【0018】、表1)。 そうすると、甲2には、実施例1の本発明品3に着目して、次の発明が記載されているといえる。 「球状無水ケイ酸(平均粒径1μm)50g、結晶化セルロース(平均粒径10μm)50g、シリカコロイド(アデライトAT-20N(旭電化社製、固形分20重量%、粒径100~200Å)250g、精製水100gを、ホモミキサーにて6000rpmで10分間混合して、均一なスラリー状物を得て、噴霧乾燥機(ディスク式)を用いて、ディスク回転数2000rpm、処理速度5kg/hr、120℃、サイクロン差圧80mmAqの噴霧条件で噴霧乾燥を行って得られた、平均粒径50μm、球形、全空孔体積0.6cm3/g、粒子強度>1000g/cm3である多孔性球状粉体」(以下、「甲2発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「球状無水ケイ酸」及び「シリカコロイド」は、本件発明1の「シリカ成分」に相当する。 甲2発明の「結晶化セルロース」は、本件発明1の「バイオマスプラスチック」に相当する。 甲2発明の「多孔性球状粉体」は、本件発明1の「球状の有機無機複合粒子」に相当する。 甲2発明の「多孔性球状粉体」において、「シリカコロイド」の固形分は50g(=250×20重量%)であるから、「球状無水ケイ酸」と「シリカコロイド」の固形分の合計の重量%は、67重量%(=(50+50)/150)であり、「結晶化セルロース」は33重量%であるから、本件発明1の「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%」を満たすといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む球状の有機無機複合粒子」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点2a:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「平均粒子径d1が0.5~25μm」であり、真球度が0.80以上である」のに対して、甲2発明は、「平均粒径50μm」であり、真球度が不明である点 相違点2b:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるのに対して、甲2発明は、真密度が不明である点 (イ)検討 相違点2aについて検討する。 甲2には、実施例3における真球度は記載されておらず、甲2の記載から、甲2発明に係る「多孔性球状粒子」の真球度を認定することはできない。 また、甲2発明に係る「多孔性球状粒子」の製造方法は、球状無水ケイ酸、結晶化セルロース、シリカコロイド及び精製水を、ホモミキサーで混合して均一なスラリー状物を得て、これを噴霧乾燥するのに対し、本件発明1の製造方法は、シリカ成分と生分解性プラスチックが分散された混合液に、非水系溶媒と界面活性剤を加えて乳化し、脱水処理、固液分離、乾燥及び解砕の各工程を経るものであり(本件明細書の【0034】~【0044】(有機無機複合粒子の製造方法)、【0054】及び【0055】(実施例1)、並びに【0067】~【0076】(実施例2~11)を参照)、本件発明1と甲2発明とは、全く異なる製造方法によって得られたものである。そして、本件発明1は、上記製造方法を採用することによっても、「真球度が0.80以上」であることに寄与するものと解される。 そうすると、甲2発明に係る「多孔性球状粒子」の真球度は不明であるという他なく、相違点2aは実質的な相違点であり、相違点2bについて検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。 そして、甲2には、シリカ系粒子の真球度に関する事項は記載されておらず、甲2に記載された事項に基づいて、甲2発明の真球度を0.8以上とすることは動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ 本件発明2、4~9について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~9についても、本件発明1について上記イ(イ)で述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ したがって、本件発明1、2、4~9は、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立理由3(甲3を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明 甲3には、次のとおりの請求項18、請求項20、請求項21、請求項23の記載がある。 「セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下のセルロースからなり、かつ平均粒子径が0.2~20μm、かつ走査型電子顕微鏡で観測される長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.2以下、かつ凝集係数が1.0~3.0であるセルロース微粒子、 ただし 凝集係数=(レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置によって得られる体積換算分布から算出される平均粒子径)÷(走査型電子顕微鏡による体積換算の平均粒子径)であるとする。」(請求項18) 「請求項18又は19に記載のセルロース微粒子中に、少なくとも一の機能性添加剤が分散されている微粒子であって、その微粒子の平均粒子径が0.2~20μmであり、かつ走査型電子顕微鏡で観測される長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.2以下で、かつ凝集係数が 1.0~3.0である セルロース複合体微粒子。」(請求項20) 「機能性添加剤は、オイル系化合物、水溶性高分子、保湿剤、界面活性剤、金属酸化物、紫外線遮蔽剤、無機塩、金属粉、ガム類、染料、顔料、カーボンブラック、シリカ化合物、ラテックス、エマルジヨン剤、アミノ酸類、香料及び防腐剤からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項20に記載のセルロース複合体微粒子。」(請求項21) 「請求項1、2、3又は4に記載のセルロース分散体と少なくとも一種の機能性添加剤とを混合し、その混合液をスプレードライ法により造粒し、かつ乾燥することを含むセルロース複合体微粒子の製造法。」(請求項23) また、甲3には、次の記載がある。 「本発明のセルロース微粒子は、 真球度が極めて高く、L/Dが1.2以下である。この要件は、液体性状を呈するセルロース濃度の本発明の分散体を用いれば 満たすことができるが、該分散体がゲル状を呈するセルロース濃度であっても、本発明の分散体は、チクソトロピー性を有し、スプレードライの際の噴霧時に、粘性の低い液体状態を呈することから好ましく用いることができる。分散媒体としては、表面張力が高く、液滴の球状形成能の高い水や、水がリッチな系を使用するのが望ましい。このことは、セルロース複合体微粒子の製造においても言えることである。 L/Dが1.2を超えると、パウダーとしてのローリング性が低下し、ざらつき感も発生するので好ましくない。本発明のセルロース微粒子は、L/Dを、ほぼ1.0にすることができる。」 (30頁19行~31頁1行) 「混合、分散させる機能性添加剤の混合比率は、セルロースに対し50重量%以下、好ましくは 30重量%以下である。」(34頁27~28行) 「次に同様の混合実験を微粒子シリカに対して行った。実施例1のS1試料,実施例2のS2B試料,比較例2のR2A試料を用いてそれぞれ、微粒子シリカ4.0%,セルロース1.5%の水分散体を調製し、ブレンダーにて15,000rpmの回転速度で10分間混合処理を行った。ここで、微粒子シリカは旭硝子(株)製サンスフェアH-31(平均粒径3.7μm)を用いた。S1B試料,S2B試料,R2A試料を用いて得られた試料をそれぞれ、S29C試料,S29D試料及びR12B試料とした。これら3つの試料のブレンダーによる処理から200時間後の離水状態を評価したところ、S29CとS29Dは離水が全くなく均一な白色の分散体であったのに対し、R12Bでは離水が明瞭に認められた。これらによって、本発明の分散体が無機系の微粒子に対しても高い分散安定性を有していることが確認された。」(54頁22行~55頁9行) そして、請求項18を引用する請求項20を更に引用する請求項21に記載のセルロース複合体粒子を独立形式で記載すると、次のようになる。 「セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下のセルロースからなり、かつ平均粒子径が0.2~20μm、かつ走査型電子顕微鏡で観測される長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.2以下、かつ凝集係数が1.0~3.0であるセルロース微粒子中に、少なくとも一の機能性添加剤が分散されている微粒子であって、その微粒子の平均粒子径が0.2~20μmであり、かつ走査型電子顕微鏡で観測される長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.2以下で、かつ凝集係数が 1.0~3.0である セルロース複合体微粒子であり、 前記機能性添加剤は、オイル系化合物、水溶性高分子、保湿剤、界面活性剤、金属酸化物、紫外線遮蔽剤、無機塩、金属粉、ガム類、染料、顔料、カーボンブラック、シリカ化合物、ラテックス、エマルジヨン剤、アミノ酸類、香料及び防腐剤からなる群から選ばれた少なくとも一種である、前記セルロース複合体微粒子。 ただし、凝集係数=(レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置によって得られる体積換算分布から算出される平均粒子径)÷(走査型電子顕微鏡による体積換算の平均粒子径)であるとする。」 (以下、「甲3発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「機能性添加剤」である「シリカ化合物」は、本件発明1の「シリカ成分」に相当する。 甲3発明の「セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下のセルロース」は、本件発明1の「バイオマスプラスチック」に相当する。 甲3発明の「セルロース複合体微粒子」は、本件発明1の「有機無機複合粒子」に相当する。 甲3発明の「セルロース複合体微粒子」の平均粒子径が0.2~20μmであるから、本件発明1の「平均粒子径d1が0.5~25μm」と重複する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「シリカ成分と生分解性を有するバイオマスプラスチックを含む有機無機複合粒子であって、平均粒子径d1が0.5~25μmである有機無機複合粒子。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点3a:有機無機複合粒子について、本件発明1は、「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含」み、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるのに対して、甲3発明は、「シリカ化合物」が「機能性添加剤」の選択肢の一つであって、「シリカ化合物」と「セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下のセルロース」の重量%は不明であり、真密度も不明である点 相違点3b:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「球状」であり、「真球度が0.80以上である」のに対して、甲3発明は、その真球度が不明である点 (イ)検討 相違点3aについて検討する。 甲3発明は、「機能性添加剤」の選択肢の一つに「シリカ化合物」が例示されるにとどまり、「シリカ化合物」の配合割合は特定されておらず、主たる成分である上記「セルロース」の配合割合さえも特定されていない。 そうすると、相違点3aは実質的な相違点であり、相違点3bについて検討するまでもなく、本件発明1は甲3に記載された発明とはいえない。 そして、甲3には、上述のように、「混合、分散させる機能性添加剤の混合比率は、セルロースに対し50重量%以下、好ましくは 30重量%以下である。」と記載されているが、これは甲3発明に種々の選択肢が挙げられた「機能性添加剤」の配合割合であって、甲3には「セルロース」に対する「シリカ化合物」の配合割合は何ら記載されておらず、ましてや、「真密度が1.03~2.00g/cm3」となるように配合することは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲3発明において、「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含」み、「真密度が1.03~2.00g/cm3」とすることが、甲3の記載を基に動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことではない。 したがって、本件発明1は、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ 本件発明2、4~7、9について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~7、9についても、本件発明1について上記イ(イ)で述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ したがって、本件発明1、2、4~7、9は、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)申立理由4(甲4を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明 甲4には、実施例12として、トナーである樹脂微粒子の製造方法(【0096】~【0099】)が記載され、【0033】(体積平均粒径)、【0047】(疎水性シリカ微粉末)、【0061】~【0064】(外添剤)の記載がある。 具体的には、実施例12のトナーである樹脂微粒子の製造に用いる「ポリ乳酸系樹脂1」及び「スチレンアクリル樹脂微粒子分散液」の調製について、次の記載がある。 「【0081】 以下、実施例中の本文及び表に示した化合物の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。 M-LD:メソラクチド L-LD:L-ラクチド D-LD:D-ラクチド EG:エチレングリコール 【0082】 (製造例) <ポリ乳酸系樹脂(1~15)の合成> 温度計、攪拌棒、及びリービッヒ冷却管を具備した500mLガラスフラスコにラクチド(M-LD、D-LD、L-LD)、及びポリオール(EG)を下記表1に示す通り仕込み、更に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.084部、及び触媒失活剤としてホスホノ酢酸トリエチル0.420部を投入して、室温で10mmHg以下に減圧し30分間脱水乾燥した。窒素ガスにより常圧に戻し、窒素気流下で適宜攪拌しながら180℃に昇温し、3時間攪拌した。その後、系を減圧し、未反応ラクチド等低分子量化合物を留去した。約20分後、低分子量化合物の留出が収まった後減圧を解除し、テフロンシート等に取り出し樹脂を得た。得られたポリ乳酸系樹脂(1~15)の組成及び数平均分子量を表1に示した。 【0083】 【表1】 [図:0001392017000001.jpg] 【0084】 (実施例1) <ポリ乳酸系樹脂微粒子1の作製> -スチレンアクリル樹脂微粒子分散液の調製- 冷却管、撹拌機、及び窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6部、及びイオン交換水486部を入れ、撹拌しながら80℃に加熱して溶解させた。その後、この反応容器中に、過硫酸カリウム2.8部をイオン交換水109部に溶解させたものを加え、その15分間後に、スチレン180部、及びアクリル酸ブチル20部の混合液を90分間かけて滴下した。その後、さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた後、冷却して、スチレンアクリル樹脂微粒子分散液を得た。このスチレンアクリル樹脂微粒子分散液中に含まれる粒子の体積平均粒径は78nmであり、樹脂分の重量平均分子量は220,000、Tgは85℃であった。」 そして、前記「スチレンアクリル樹脂微粒子分散液」を用いて、以下のように、実施例12の樹脂微粒子を製造するための「ワックス分散液」及び「水相」を調製したことが記載されている。 「【0096】 (実施例12) <トナーの作製> -ワックス分散液の調製- カルナウバワックス100部(分子量1,800、酸価2.7mgKOH/g、針入度1.7mm(40℃))、及び酢酸エチル1,000部を仕込み、撹拌しながら79℃で溶解させた後に一気に4℃まで急冷した。これをビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス株式会社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填し、3パスの条件で分散を行い、体積平均粒径0.6μmのワックス分散液を調製した。 【0097】 -水相の調製- 水990部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)37部、酢酸エチル90部、及び前記スチレンアクリル樹脂微粒子分散液83部を混合撹拌し、水相2を得た。」 そして、甲4には、上記「ポリ乳酸系樹脂1」、「ワックス分散液」及び「水相2」を用いて、以下のように、実施例12の樹脂微粒子を製造したことが記載されている。 「【0098】-樹脂微粒子19(トナー)の作製- 180部の前記ポリ乳酸系樹脂1、前記ワックス分散液120部、カーボンブラック(Printex35、デグサ社製)12部、及び酢酸エチル100部を均一になるまで混合攪拌して得た混合液をビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス株式会社製)に仕込み、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒間で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスし、油相2を調製した。 次に、90部の前記油相2を容器に入れた。別の容器内に、150部の前記水相2を入れ、TK式ホモミキサーを用いて、50℃にて8,000rpmで攪拌しながら、90部の前記油相2を添加し、2分間混合して乳化スラリー2を得た。 更に、攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、100部の前記乳化スラリー2を仕込み、攪拌周速20m/分間で攪拌しながら、50℃で10時間脱溶媒した後、洗浄、濾過、及び乾燥を行った。その後、目開き75μmのメッシュで篩い、母体2を作製した。 【0099】 得られた100部の前記母体2と、外添剤としての疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、周速30m/秒間で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩い、実施例12の樹脂微粒子19を作製した。」 また、表3には、実施例12の樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)が6.0μmであることが記載されている。 「【0111】 [図:0001392017000002.jpg] 」 以上の記載から、甲4には、実施例12に着目して、上記「ポリ乳酸系樹脂1」、「ワックス分散液」及び「水相2」を用いて作製された樹脂微粒子である、次の発明が記載されているといえる。 「180部のポリ乳酸系樹脂1、ワックス分散液120部、カーボンブラック(Printex35)12部、及び酢酸エチル100部を均一になるまで混合攪拌して得た混合液をビーズミルに仕込み、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒間で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして、油相を調製し、 90部の前記油相を容器に入れ、別の容器内に、150部の水相2を入れ、TK式ホモミキサーを用いて、50℃にて8,000rpmで攪拌しながら、90部の前記油相を添加し、2分間混合して乳化スラリーを得て、 更に、攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、100部の前記乳化スラリーを仕込み、攪拌周速20m/分間で攪拌しながら、50℃で10時間脱溶媒した後、洗浄、濾過、及び乾燥を行った後、目開き75μmのメッシュで篩い、母体2を作製し、 得られた100部の前記母体2と、外添剤としての疎水性シリカ(H2000)1.0部を、ヘンシェルミキサーを用いて、周速30m/秒間で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩うことにより作製した、体積平均粒径(Dv)が6.0μmである、樹脂微粒子。」(以下、「甲4発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明の「疎水性シリカ」は、本件発明1の「シリカ成分」に相当する。 本件発明1の「バイオマスプラスチック」には、ポリ乳酸が包含されるから(本件明細書の【0033】)、甲4発明の「ポリ乳酸系樹脂1」は、本件発明1の「バイオマスプラスチック」に相当する。 甲4発明の「樹脂微粒子」は、本件発明1の「有機無機複合粒子」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「シリカ成分と生分解性を有するバイオマスプラスチックを含む有機無機複合粒子」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点4a:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含」み、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるのに対して、甲4発明は、「疎水性シリカ」と「ポリ乳酸系樹脂1」の配合割合及び真密度が不明である点 相違点4b:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「球状」であり、「平均粒子径d1が0.5~25μm」であり、「真球度が0.80以上」であるのに対して、甲4発明は、体積平均粒径(Dv)が6.0μmであり、真球度が不明である点 (イ)検討 事案に鑑みて、相違点4bから検討する。 甲4には、実施例12の樹脂微粒子(甲4発明)の真球度は記載されていないから、甲4発明に係る「樹脂微粒子」の真球度は不明であるという他なく、相違点4bは実質的な相違点であり、相違点4aについて検討するまでもなく、本件発明1は甲4に記載された発明であるとはいえない。 また、甲4には、トナーの真球度に関連する事項として、「前記平均円形度は、前記トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、0.900~0.980が好ましく、0.950~0.975がより好ましい。」(【0064】)と記載されているが、本件発明1の「真球度」は、有機無機複合粒子の写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、その最大径DLと、これに直交する短径DSとの比(DS/DL)を測定し、それらの平均値であり(本件明細書【0061】)、甲4に記載の上記平均円形度は、本件発明1の「真球度」と測定方法が異なるものである。仮に、甲4に記載の平均円形度が本件発明1の「真球度」に対応する指標だとしても、甲4には、いずれの実施例の平均円形度も記載されておらず、甲4の実施例以外の記載を見ても、上記範囲の平均円形度を有するトナーを得るための製造条件は記載されていない。 そうすると、甲4発明において、「真球度が0.80以上」とすることは動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ 本件発明5、9について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5、9についても、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ したがって、本件発明1、5、9は、甲4に記載された発明でないし、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由5(甲5を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲5に記載された事項及び甲5に記載された発明 甲5には、【0011】、【0024】、【0025】、【0028】、【0052】~【0056】の記載があり、実施例1として、次の事項が記載されている。 「【0052】 実施例1 結着樹脂として、分子量を低減したポリ乳酸(分子量35,000、軟化点145℃)90質量部、着色剤としてカーボンブラック(CABOT社MOGULL)4質量部、離型剤として、カルナウバワックス1号粉末(日本ワックス(株)社製)6質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社(株)製、標準羽装着)に投入し混合した。 【0053】 得られた混合粉体を2軸押出機(スクリュウ径43mm、L/D=34)で溶融混練したあと、延伸、冷却し、ロートプレックス(ホソカワミクロン(株)社製、2mmスクリーン)で粗砕した後、衝突式粉砕機(日本ニューマチック工業(株)製IDS-2)・風力分級機(日本ニューマチック工業(株)製DSX-2)にて、トナー平均粒径が6.0μmになるように粉砕分級を行い着色微粒子を得た。 【0054】 得られた着色微粒子100重量部に、外添剤として、「RY50」(日本アエロジル(株)社製:疎水性シリカ、1次粒子径40nm)を2.5重量部、「TG-810G」(キャボット社製:疎水性シリカ、1次粒子径7nm)を0.8質量部添加し、コンポジットミキサーCP-15(日本コークス(株)製)で2850rpmで10分間撹拌混合しトナーを得た。 【0055】 得られたトナーにおける外添剤の被覆率は152.6%であり、かさ比重(AD値)は0.267であった。」 そうすると、甲5には、実施例1に着目して、次の発明が記載されているといえる。 「結着樹脂として、分子量を低減したポリ乳酸(分子量35,000、軟化点145℃)90質量部、着色剤としてカーボンブラック「MOGULL」4質量部、離型剤として、カルナウバワックス1号粉末6質量部を、ヘンシェルミキサーに投入して、混合し、得られた混合粉体を2軸押出機(スクリュウ径43mm、L/D=34)で溶融混練したあと、延伸、冷却し、ロートプレックス(2mmスクリーン)で粗砕した後、衝突式粉砕機(IDS-2)・風力分級機(DSX-2)にて、トナー平均粒径が6.0μmになるように粉砕分級を行い着色微粒子を得て、当該着色微粒子100重量部に、外添剤として、「RY50」(疎水性シリカ、1次粒子径40nm)を2.5重量部、「TG-810G」(疎水性シリカ、1次粒子径7nm)を0.8質量部添加し、コンポジットミキサー「CP-15」で2850rpmで10分間撹拌混合して得た、外添剤の被覆率が152.6%であり、かさ比重(AD値)が0.267であるトナー。」(以下、「甲5発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲5発明を対比する。 甲5発明の「「RY50」(疎水性シリカ、1次粒子径40nm)」及び「「TG-810G」(疎水性シリカ、1次粒子径7nm)」は、疎水性シリカであるから、本件発明1の「シリカ成分」に相当する。 甲5発明の「分子量を低減したポリ乳酸」は、本件発明1の「バイオマスプラスチック」に相当する。 甲5発明の「トナー」は、本件発明1の「有機無機複合粒子」に相当する。 甲5発明の「トナー」の構成成分は、ポリ乳酸90質量部、カーボンブラック4質量部、カルナウバワックス1号粉末6質量部からなる着色微粒子100質量部、疎水性シリカである「RY50」及び「TG-810G」はそれぞれ2.5質量部及び0.8質量部であるから、「トナー」の合計質量(103.3質量部)に対する「疎水性シリカ」及び「ポリ乳酸」の質量%は3.2質量%及び87.1質量%であるから、本件発明1の「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%」を満たすといえる。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは、 「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む有機無機複合粒子」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点5a:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「球状」であり、「平均粒子径d1が0.5~25μm」であり、「真球度が0.80以上」であるのに対して、甲5発明は、外添剤である疎水性シリカを添加する前の「トナー平均粒径が6.0μm」であり、「トナー」の真球度が不明である点 相違点5b:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるに対して、甲5発明は、「トナー」の真密度が不明である点 (イ)検討 相違点5bについて検討する。 甲5には、実施例1における真密度は記載されておらず、甲5の記載から、甲5発明に係る「トナー」の真密度を認定することはできない。 そうすると、甲5発明に係る「トナー」の真密度は不明であるという他なく、相違点5aは実質的な相違点であり、相違点5aについて検討するまでもなく、本件発明1は甲5に記載された発明であるとはいえない。 そして、甲5には、甲5発明に係る「トナー」の真密度に関連する事項は記載されておらず、甲5に記載された事項に基づいて、甲5発明の真密度を「1.03~2.00g/cm3」とすることは動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ 本件発明5について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5についても、本件発明1について上記イ(イ)で述べたのと同じ理由により、甲5に記載された発明でないし、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ したがって、本件発明1及び5は、甲5に記載された発明でないし、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6)申立理由6(甲6を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲6に記載された事項及び甲6に記載された発明 甲6には、【0011】、【0022】、【0040】、表1~7の記載があり、実施例1-1として、次の事項が記載されている。 「【0047】 <トナーの製造> 例1-1乃至1-34および例2-1乃至2-96 ヘンシェルミキサー(三井鉱山製)を用いて、樹脂(恒温恒湿槽に入れ加水分解させたポリ乳酸樹脂)100質量部、および顔料100質量部を攪拌した。二軸押出機(池貝(株)製)により溶融混練した。得られた混練物を冷却延伸してフェザーミル(ホソカワミクロン(株)製)にて2mm以下に粉砕して顔料マスターバッチを得た。 【0048】 得られた顔料マスターバッチ4質量部と、ポリ乳酸樹脂100質量部と、離型剤(カルナウバワックス1号粉末、日本ワックス(株)製)6質量部と、帯電制御剤(LP-147、日本カーリット(株)製)1質量部と、酸価調整剤(カルボジライトLA-1、日清紡績(株)製またはアクリルポリマーUG-4040、東亞合成(株)製)1質量部を、ヘンシェルミキサーで攪拌した後、二軸押出機で溶融混練し、冷却後、衝突版式粉砕機(NPK製)を用いて粉砕し、気流式分級機(NPK製)を用いて分級し、平均粒子径7.5μmの粉体を得た。 【0049】 得られた粉体に、外添剤として大粒径疎水性シリカ粒子(TG-C602ON、数平均粒径200nm、キャボット社製)、中粒径疎水性シリカ粒子(RX50、数平均粒径40nm、日本アエロジル(株)製)、および小粒径疎水性シリカ粒子(RX200、数平均粒径12nm、日本アエロジル(株)製)を添加し、ヘンシェルミキサーで攪拌して粉体に表面処理をし、例1-1乃至1-34および例2-1乃至2-96のトナーを製造した。外添剤の添加量は、外添処理前のトナー粒子100質量部に対する質量部として、表1~7に示す。」 「【0059】 試験結果を下記表1~7に示す。 【0060】 【表1】 [図:0001392017000003.jpg] 」 ここで、「酸価調整剤(カルボジライトLA-1、日清紡績(株)製またはアクリルポリマーUG-4040、東亞合成(株)製)1質量部」は表1と一致しないため、表1のとおり、「10質量部」の誤記であると解した。また、「顔料マスターバッチ」の原料である「樹脂(恒温恒湿槽に入れ加水分解させたポリ乳酸樹脂)」は、「ポリ乳酸樹脂」とは解さないこととした。 そうすると、甲6には、実施例1-1に着目して、次の発明が記載されているといえる。 「ヘンシェルミキサーを用いて、樹脂(恒温恒湿槽に入れ加水分解させたポリ乳酸樹脂)100質量部、および顔料100質量部を攪拌し、二軸押出機により溶融混練し、得られた混練物を冷却延伸してフェザーミルにて2mm以下に粉砕して顔料マスターバッチを得て、当該顔料マスターバッチ4質量部と、ポリ乳酸樹脂100質量部と、離型剤(カルナウバワックス1号粉末)6質量部と、帯電制御剤(LP-147)1質量部と、酸価調整剤(カルボジライトLA-1)10質量部を、ヘンシェルミキサーで攪拌した後、二軸押出機で溶融混練し、冷却後、衝突版式粉砕機を用いて粉砕し、気流式分級機を用いて分級し、平均粒子径7.5μmの粉体を得て、当該粉体に、外添剤として大粒径疎水性シリカ粒子(TG-C602ON、数平均粒径200nm)1.0質量部、中粒径疎水性シリカ粒子(RX50、数平均粒径40nm)1.0質量部、および小粒径疎水性シリカ粒子(RX200、数平均粒径12nm)0.10質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで攪拌して粉体に表面処理をして得られた、トナー粒子。」(以下、「甲6発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲6発明を対比する。 甲6発明の「外添剤」である「大粒径疎水性シリカ粒子」、「中粒径疎水性シリカ粒子」及び「小粒径疎水性シリカ粒子」は、本件発明1の「シリカ成分」に相当する。 甲6発明の「ポリ乳酸樹脂」は、本件発明1の「バイオマスプラスチック」に相当する。 甲6発明の「トナー粒子」は、本件発明1の「有機無機複合粒子」に相当する。 甲6発明の「トナー粒子」は、ポリ乳酸樹脂100質量部、シリカ粒子2.1質量部を含有するから、「トナー粒子」の合計質量(123.1質量部)に対する「シリカ粒子」及び「ポリ乳酸樹脂」の配合割合を算出すると、それぞれ1.7質量%及び81質量%となるから、本件発明1の「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%」を満たすといえる。 そうすると、本件発明1と甲6発明とは、 「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む有機無機複合粒子」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点6a:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「球状」であり、「平均粒子径d1が0.5~25μm」であり、「真球度が0.80以上」であるのに対して、甲6発明は、外添剤である疎水性シリカを添加する前の「平均粒子径が7.5μm」であり、「トナー粒子」の真球度が不明である点 相違点6b:有機無機複合粒子が、本件発明1は、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるに対して、甲6発明は、「トナー粒子」の真密度が不明である点 (イ)検討 事案を鑑みて相違点6bから検討する。 甲6には、実施例1-1における真密度は記載されておらず、甲6の記載から、甲6発明に係る「トナー粒子」の真密度を認定することはできない。 そうすると、甲6発明に係る「トナー粒子」の真密度は不明であるという他なく、相違点6bは実質的な相違点であり、相違点6aについて検討するまでもなく、本件発明1は甲6に記載された発明であるとはいえない。 そして、甲6には、甲6発明に係る「トナー粒子」の真密度に関連する事項は記載されておらず、甲6に記載された事項に基づいて、甲6発明の真密度を「1.03~2.00g/cm3」とすることは動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ 本件発明5について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5についても、本件発明1について上記イ(イ)で述べたのと同じ理由により、甲6に記載された発明でないし、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ したがって、本件発明1及び5は、甲6に記載された発明でないし、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (7)申立理由7(甲7を主引用文献とする新規性及び進歩性) ア 甲7に記載された事項及び甲7に記載された発明 甲7には、【0007】、【0023】、【0025】、【0028】、【0036】、【0047】~【0049】の記載があり、具体的には次の事項が記載されている。 「【0007】 本発明は、生体への影響が懸念されるような有機溶剤、及び分子レベルの界面活性剤や 分散安定剤等の添加剤を使用せず、熱可塑性樹脂粒子の表面に無機粒子が吸着した球状の 複合微粒子を製造する方法を提供することを目的とする。」 「【0023】 熱可塑性樹脂としては、…生体親和性や生体適合性において優れる点から、ポリエステルであることが好ましく、生体適合性に優れているという点から生分解性ポリマーが好ましく、具体的には脂肪族ポリエステルであることが好ましい。ポリエステルの具体例としては、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ラクチド-εカプロラクトン共重合体、ポリジオキサノン、グリコリド-トリメチレンカーボネート共重合体、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(PHB)、3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシ吉草酸共重合体(PHBV)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリεカプロラクトン(PLC)、酢酸セルロース系(PH)重合体、ポリエチレンサクシネート(PESu)、ポリエステルアミド、変性ポリエステル等が挙げられる。これらの中で、熱可塑性樹脂がポリεカプロラクトン、ポリラクチド、ラクチド-εカプロラクトン共重合体、及びラクチド-グリコリド共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。」 「【0025】 無機粒子に用いられる無機化合物としては、リン酸カルシウム、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズ、酸化亜鉛、金、銀、パラジウム、白金、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレイ(例えば、モンモリロナイト)、前記無機化合物の焼成体等が挙げられるが、これらの中で、生体組織に対する密着性や接着性を有する点、生体内での安全性、熱可塑性樹脂への吸着性において良好であるという観点から、リン酸カルシウムが好ましい。」 「【0052】 ・・・ 実施例1 1.低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子の調製 球状の形態を有するハイドロキシアパタイトナノ粒子を以下に示す湿式法で合成した。なお、Ca(NO3)24H2O、及び(NH4)2HPO4はナカライテスク(株)製のものを用い、25%アンモニア水は和光純薬工業(株)製のものを用い、純水としてMilli-Q waterを使用した。 【0053】 まず、アンモニア水でpHを12に調整したCa(NO3)2水溶液(42mN,800mL)を、冷却管及び半月状攪拌翼を接続した1Lフラスコに注ぎ入れ、室温に保った。このフラスコにアンモニア水でpHを12に調整した(NH4)2HPO4水溶液(100mN,200mL)を室温にて添加し、10時間反応させた。次に、得られた反応物を遠心分離により分離洗浄することにより、低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子を得た。得られた低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子を走査型電子顕微鏡にて観察して粒子径を測定した結果、同粒子径は40nmであった。なお、走査型電子顕微鏡は、日本電子株式会社製、モデル名JSM-6301Fを用いて、倍率90,000倍で観察を行った。 【0054】 2.複合粒子の調製(低融点ポリマー) 前記「1.低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子の調製」によって得られた低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子0.01gを含む水25mLを超音波バス中に15分浸漬することで低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子水分散体を調製した。 【0055】 融点が約60℃であるポリεカプロラクトン(和光純薬工業(株)製;平均分子量=10,000g/mol)0.125gを前記の低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子水分散体25mLを含むガラス瓶へ加えて、80℃において4時間混合した。その後、80℃においてホモジナイザー(IKA製T10 basic ULTRA-TURRAX;20500rpm)を用いて1分間混合した後、空冷にて室温まで冷却した。 【0056】 得られた複合粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1及び図2に示す。平均粒子径は35μmであり、その表面の一部にハイドロキシアパタイトナノ粒子が複合化されていることが確認できた。なお、走査型電子顕微鏡は、日本電子株式会社製、モデル名JSM-6301Fを用いて、倍率200倍(図1)又は30,000倍(図2)で観察を行った。」 そうすると、甲7には、実施例1に着目して、次の発明が記載されているといえる。 「低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子0.01gを含む水25mLを超音波バス中に15分浸漬することで低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子水分散体を調製し、融点が約60℃であるポリεカプロラクトン(平均分子量=10,000g/mol)0.125gを前記の低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子水分散体25mLを含むガラス瓶へ加えて、80℃において4時間混合した後、80℃においてホモジナイザー(T10 basic ULTRA-TURRAX;20500rpm)を用いて1分間混合した後、空冷にて室温まで冷却して得られた、平均粒子径は35μmであり、その表面の一部にハイドロキシアパタイトナノ粒子が複合化されている、複合粒子。」(以下、「甲7発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲7発明を対比する。 甲7発明の「低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子」は、無機粒子である限りにおいて、本件発明1の「シリカ成分」と一致する。 甲7発明の「ポリεカプロラクトン」は、本件発明1の「バイオマスプラスチック」に相当する。 甲7発明の「複合粒子」は、本件発明1の「有機無機複合粒子」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲7発明とは、 「無機粒子と生分解性を有するバイオマスプラスチックを含む有機無機複合粒子」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点7a:「有機無機複合粒子」が、本件発明1では、「シリカ成分1.0~83.0重量%と生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含」み、「真密度が1.03~2.00g/cm3」であるのに対して、甲7発明は、「低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子」0.01gと「ポリεカプロラクトン」0.125gを含み、真密度が不明である点 相違点7b:「有機無機複合粒子」が、本願発明1では、「球状」であり、「平均粒子径d1が0.5~25μm」であり、「真球度が0.80以上」であるのに対して、甲7発明は、「平均粒子径は35μm」であり、真球度が不明である点 (イ)検討 相違点7aについて検討する。 甲7発明はシリカ成分を含んでいないから、相違点7aは実質的な相違点であり、相違点7bについて検討するまでもなく、本件発明1は甲7に記載された発明であるとはいえない。 また、甲7には、無機粒子に用いられる無機化合物として、リン酸カルシウムの他に、シリカも例示されてはいる(【0025】)。しかしながら、甲7発明の「低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子」であるリン酸カルシウムについて、上記【0025】には「これらの中で、生体組織に対する密着性や接着性を有する点、生体内での安全性、熱可塑性樹脂への吸着性において良好であるという観点から、リン酸カルシウムが好ましい。」と記載されており、また、甲7発明の課題は、生体への影響が懸念される添加剤を使用せず、熱可塑性樹脂粒子の表面に無機粒子が吸着した球状の複合微粒子を製造する方法を提供すること」(【0007】)であるから、熱可塑性樹脂への吸着性において好ましいとされるリン酸カルシウムである「低結晶性ハイドロキシアパタイトナノ粒子」に代えて、シリカを用いることが積極的に動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ 本件発明5について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5についても、本件発明1について上記イ(イ)で述べたのと同じ理由により、甲7に記載された発明でないし、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ したがって、本件発明1及び5は、甲7に記載された発明でないし、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (8)申立理由8(サポート要件)について ア 本件明細書に記載された事項 本件明細書には、次の事項が記載されている。 「【0007】 そこで、本発明の目的は、環境問題を引き起こす懸念が少なく、さらに、良好な流動性を有するとともに、真球度の高い、平均粒子径0.5~25μmの有機無機複合粒子を提供することにある。このような有機無機複合粒子は、化粧料への配合に適しており、プラスチックビーズと同様な用途に安心して使用することができる。」 「【0015】 有機無機複合粒子の真密度が1.03g/cm3未満だと、水系環境に流出した際に水に浮くために、生分解の速度が遅延する。一方、真密度が2.00g/cm3を超える粒子では、生分解性プラスチックの含有量が低く、プラスチック粒子の様な感触特性が得られにくい。真密度は1.10~1.90g/cm3の範囲が特に好ましい。 【0016】 有機無機複合粒子の真球度が0.80未満であると、肌上に塗布された際の転がり感の持続性が著しく低下する。真球度は0.90以上が特に好ましい。なお、真球度は走査型電子顕微鏡の写真から画像解析法により求められる。 【0017】 有機無機複合粒子の平均粒子径d1が0.5μm未満であると、転がり感、転がり感の持続性、均一な延び広がり性などの化粧料の感触特性が著しく低下する。一方、25μmを超えると、粒子粉体に触ったとき、ざらつきを感じるようになり、ソフト感としっとり感が低減する。また、平均粒子径は2~10μmがより好ましい。なお、平均粒子径はレーザー回折法で求められる。」 「【0025】 <シリカ成分> シリカ成分を例示すると、珪酸バインダーやシリカ粒子が挙げられる。珪酸バインダーとしては、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリ(Naイオンの除去等)したものを使用できる。珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム等のアルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムシリケート等の有機塩基の珪酸塩などが挙げられる。 【0026】 ここで、シリカ粒子とはシリカを含有する無機酸化物粒子を表し、シリカだけでなく、シリカ-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニア、シリカ-セリアなどの複合酸化物が例示できる。シリカ粒子の組成の違いによって有機無機複合粒子の製造条件を変更する必要はない。化粧料に配合する場合には非晶質シリカが好適である。 【0027】 また、シリカ粒子の平均粒子径d2は、5nm~1μmが好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、生分解性粒子に対するバインダーとしての効果が低下する。また、水中環境でのシリカの溶解速度が低下し、その結果、良好な生分解性を損なうことがある。平均粒子径が5nm未満の場合は、粒子としての安定性が低いことから工業的な側面で好ましくない。10nm~0.5μmの範囲が特に望ましい。 【0028】 さらに、有機無機複合粒子には、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウムの少なくとも一つを含む無機酸化物粒子が20重量%以下であれば含まれてもよい。この量であれば、有機無機複合粒子の内部に均一にこの無機酸化物粒子を含有することができる。ここで、酸化鉄として、酸化第二鉄、α-オキシ水酸化鉄、四酸化三鉄が好ましい。また、無機酸化物粒子の平均粒子径は、シリカ粒子と同レベルであることが望ましい。すなわち、5nm~1μmの範囲が適している。」 イ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。 イ 本件発明の課題 本件明細書の【0007】によると、本件発明の課題は、「環境問題を引き起こす懸念が少なく、さらに、良好な流動性を有するとともに、真球度の高い、平均粒子径0.5~25μmの有機無機複合粒子を提供すること」であると解される。 ウ 当審の判断 (ア)申立理由8aについて 上記2で述べたとおり、本件訂正により、請求項3は削除され、請求項1に係る特許に対する申立ては却下すべきものであるから、請求項3及びこれを引用する請求項4~9に係る発明に対する申立理由8aについては、判断を要しない。 (イ)申立理由8bについて この理由は、要するに、本件発明1は、「シリカ成分1.0~83.0重量%と、生分解性を有するバイオマスプラスチック17.0~99.0重量%を含む」と規定され、シリカ成分1.0重量%及びバイオマスプラスチック17重量%の場合に、その他成分として最大82重量%もの成分を含有する有機無機複合粒子を包含するが、本件明細書の【0028】に、20重量%以下で酸化チタン等を含んでもよいことが記載されているのみで、その他成分について他に記載はない、というものである。 a 本件発明1について 本件明細書には、有機無機複合粒子の真球度が0.80未満であると、肌上に塗布された際の転がり感の持続性が著しく低下すること(【0016】)、有機無機複合粒子の平均粒子径d1が0.5μm未満であると、転がり感、転がり感の持続性、均一な延び広がり性などの化粧料の感触特性が著しく低下し、25μmを超えると、粒子粉体に触ったとき、ざらつきを感じるようになること(【0017】)が記載されており、本件発明1の「真球度」及び「平均粒子径」を満たすことにより、流動性の課題を解決できると解される。また、真密度が1.03g/cm3未満だと、水系環境に流出した際に水に浮くために、生分解の速度が遅延することから(本件明細書【0015】)、本件発明1の「真密度」を満たすことにより、環境問題の課題を解決できると解される。そして、本件発明1が上記課題を解決できることは、本件発明1の具体例である実施例1~11により確認できる。 このように、本件発明1は、「シリカ成分」及び「生分解性を有するバイオマスプラスチック」以外の成分が任意であっても、本件発明1の特定事項を充足することにより、上記課題を解決できるものであると解される。そして、本件発明1は、上記課題を解決できる範囲で、シリカ成分及びバイオプラスチック以外の成分を任意に含有してもよいことは当業者にとって明らかである。 したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 b 本件発明2、4~9について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~9についても、本件発明1について上記aで述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明は、本件発明2、4~9が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 (ウ)申立理由8cについて この理由は、要するに、本件発明1における「生分解性を有するバイオマスプラスチック」として、実施例で開示されるのはI型セルロースのみであり、I型セルロース以外を用いる場合に課題を解決できない、というものである。 a 本件発明1について 本件明細書には、「プラスチック粒子は、殺虫剤などの化学物質を吸着し易い。これらが魚介類に蓄積し、濃縮され、これらを通して人体に影響を与える虞がある」(【0003】)及び「このような背景から、自然環境中で微生物などにより水と二酸化炭素に分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる生分解性プラスチックの開発が世界中で進められている。」(【0004】)と記載され、生分解性プラスチックを含む粒子を用いることにより、自然環境中で分解されてしまい、魚介類に化学物質を蓄積される虞がないことが示唆されている。そして、本件明細書には、セルロース以外の種々のバイオマスプラスチックが例示されている(【0033】) このように、本件発明1は、「I型セルロース」の他、「生分解性を有するバイオマスプラスチック」が任意であっても、本件発明1その特定事項を充足することにより、「環境問題を引き起こす懸念が少な」いという上記課題を解決できるものであると解される。 したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 b 本件発明2、4~9について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~9についても、本件発明1について上記aで述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明は、本件発明2、4~9が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 (エ)まとめ したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1、2、4~9が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されている。 よって、本件発明1、2、4~9は、発明の詳細な説明に記載したものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1、2、4~9に係る特許は、申立ての理由及び証拠、並びに当審が通知した取消理由によっては取り消すことができない。 他に請求項1、2、4~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件発明3に係る特許に対する申立ては、本件訂正により請求項3が削除されたことにより、請求項3に対する申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700996

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