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特許異議申立

2021-700972

アシスト装置

審判番号
2021-700972
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-237378
登録番号
6890407
請求日
2021年10月08日
審決日
2023年03月23日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】住友重機械工業株式会社
  • 【権利者代理人】森下 賢樹
  • 【権利者代理人】富所 輝観夫
  • 【異議申立人】株式会社 ハーモニック・ドライブ・システムズ
  • 【異議申立人代理人】横沢 志郎
審判長/審判官
  • 審判長 内藤 真徳
  • 審判官 井上 哲男
  • 審判官 倉橋 紀夫
分類
P1651.121-ZAA(A61H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6890407号発明「アシスト装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6890407号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について、訂正することを認める。 特許第6890407号の請求項1-5に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6890407号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和3年5月27日付けでその特許権が設定され、令和3年6月18日に特許掲載公報が発行されたところ、令和3年10月8日に特許異議申立人株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズにより請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 その後の手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年 3月24日付け 取消理由通知 令和 4年 6月24日提出 意見書(特許権者) 令和 4年 9月 7日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和 4年12月 9日提出 意見書(特許権者)及び訂正請求書 令和 5年 2月 3日提出 意見書(異議申立人) 以下、令和4年12月9日提出の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記主軸受けは、1つの単列式転がり軸受のみにより構成されるか」と記載されているのを、「前記主軸受けは、1つの単列式転がり軸受(クロスローラ軸受は含まない)のみにより構成されるか」に訂正する(請求項1を引用する請求項4,5も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記減速機は、起振体と、前記起振体により撓み変形される外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置を含む請求項1記載のアシスト装置。」と記載されているのを、「人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、前記第一部分に装着される第一部材と、前記第二部分に装着される第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、前記固定部材と前記出力部材との間には軸受は主軸受のみが配置され、前記主軸受は、専らラジアル荷重に対応するための1つの単列式転がり軸受のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成され、前記減速機は、起振体と、前記起振体により撓み変形される外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置を含むアシスト装置。」に訂正する(請求項2を引用する請求項4,5も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記単列式転がり軸受は、深溝玉軸受により構成される請求項1又は2記載のアシスト装置。」と記載されているのを、「人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、前記第一部分に装着される第一部材と、前記第二部分に装着される第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、前記固定部材と前記出力部材との間には軸受は主軸受のみが配置され、前記主軸受は、1つの単列式転がり軸受のみにより構成され、前記単列式転がり軸受は、深溝玉軸受により構成されるアシスト装置。」に訂正する(請求項3を引用する請求項5も同様に訂正する。)。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に「1つの単列式転がり軸受」とあるのを、「1つの単列式転がり軸受(クロスローラ軸受は含まない)」と、1つの単列式転がり軸受からクロスローラ軸受を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0045】には、「なお、単列式転がり軸受としては、単列の深溝玉軸受の他に、単列の円筒ころ軸受、単列の針状ころ軸受等が好適である。大型化する複列の軸受や高価なアンギュラ軸受、円錐ころ軸受、自動調心軸受、クロスローラー軸受は含まれない。また、スラスト軸受全般も含まれない。」との記載があり、訂正事項1は当該記載に基づくものである(なお、当該記載における「クロスローラー軸受」と訂正事項1に係る「クロスローラ軸受」は、表記は異なるが同じものと認められる。)から、いわゆる新規事項を追加するものではない。 また、訂正事項1は、上記のとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1を引用する訂正前の請求項2の請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めると共に、訂正前の請求項1の「1つの単列式転がり軸受」を、「専らラジアル荷重に対応するための1つの単列式転がり軸受」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同条同項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消すると共に、本件特許明細書の段落【0043】~【0044】の「アシスト装置10の関節に組み込まれる減速機40の場合には、関節より先端部側(出力側)については第二部材22の重量を支えることができれば良く、第二部材22の先端部には重量物が搭載されず、関節の向きや姿勢はほぼ一定の状態で使用される。このため、軸受に作用する荷重は、専らラジアル荷重であり、これに比べてアキシャル荷重やモーメント荷重は非常に小さくなる。また、そのラジアル荷重も小さい。 上記減速機40において、「出力側の構成と一体的に連結される部材(出力部材)」としてはスペーサ46が該当し、その「部材を支持する軸受(主軸受け)」としては第二軸受47が該当する。 上述したように、第二軸受47に作用する荷重は小さいので、主として回転を支持する目的で一つの単列式転がり軸受を使用することができる。単列式転がり軸受の一例としては、深溝玉軸受が挙げられる。」の記載(下線は、当審で付与。)に基いて、「専らラジアル荷重に対応するための1つの単列式転がり軸受」と特定するものであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項1又は2を引用する訂正前の請求項3のうち、請求項1を引用するものにおいて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めると共に、訂正前の請求項1の「前記主軸受は、1つの単列式転がり軸受のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成され」を、「前記主軸受は、1つの単列式転がり軸受のみにより構成され」に限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同条同項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項3は上記のとおりであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)一群の請求項に係る訂正か否かについて 訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~5の訂正について、訂正前の請求項2~5は、いずれも訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって訂正される訂正前の請求項1との関係で一群の請求項を構成するものである。 したがって、本件訂正は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 (5)独立特許要件について 本件訂正においては、訂正前の請求項1~5について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕についての訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明5」といい、それらをまとめて「本件特許発明」という。)は、上記第2の1において示した、次のとおりのものである。 「【請求項1】 人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、 前記第一部分に装着される第一部材と、 前記第二部分に装着される第二部材と、 前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、 当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、 前記固定部材と前記出力部材との間には軸受は主軸受のみが配置され、 前記主軸受は、1つの単列式転がり軸受(クロスローラ軸受は含まない)のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成されるアシスト装置。 【請求項2】 人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、 前記第一部分に装着される第一部材と、 前記第二部分に装着される第二部材と、 前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、 当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、 前記固定部材と前記出力部材との間には軸受は主軸受のみが配置され、 前記主軸受は、専らラジアル荷重に対応するための1つの単列式転がり軸受のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成され、 前記減速機は、起振体と、前記起振体により撓み変形される外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置を含むアシスト装置。 【請求項3】 人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、 前記第一部分に装着される第一部材と、 前記第二部分に装着される第二部材と、 前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、 当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、 前記固定部材と前記出力部材との間には軸受は主軸受のみが配置され、 前記主軸受は、1つの単列式転がり軸受のみにより構成され、 前記単列式転がり軸受は、深溝玉軸受により構成されるアシスト装置。 【請求項4】 前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する滑り軸受は、前記固定部材と前記出力部材とが直接的に摺接する相互間に潤滑剤が塗布されている請求項1又は2に記載のアシスト装置。 【請求項5】 前記出力部材は、前記出力部材側から作用される外部荷重により、他の部位に比べてより小さい外部荷重で破断し易い脆弱部を有する請求項1から4のいずれか一項に記載のアシスト装置。」 第4 取消理由の概要 本件特許発明に対し、令和4年9月7日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)には、概略次の取消理由が記載されている。 本件特許発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(甲号証)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当事者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物一覧: 甲第1号証:特開2015-217440号公報 甲第2号証:特開2015-154858号公報 以下、それぞれ「甲1」、「甲2」という。 第5 甲号証記載事項 1 甲1の記載及び甲1発明 甲1には、以下の事項が記載されている。 (1)「【背景技術】 【0002】 本出願人は先に人体の運動機能の補助、歩行アシスト等として利用できるロボティックスーツを提案した(特許文献1)。このロボティックスーツは、人体の屈曲可動部位に関節部を設け、関節部間をリンクにより結合し、関節部を支点としてモータによりリンクを回動駆動する構成(外骨格型)を備える。また、装置構成として人体を支持するリンクを使用せず、大腿部、下腿部等に支持ベルトを装着し、支持ベルトに駆動力を作用させることにより、運動、歩行の補助をなすように構成した非外骨格型のロボティックウェアがある。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2012-66375号公報 【非特許文献】 【0004】 【非特許文献1】田中浩仁、橋本稔、“非外骨格型構造を持つロボティックウェアの開発”、第19回ロボティクスシンポジア論文集、p.153-158,2014 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上述したロボティックスーツ、ロボティックウェアに装着されるモータユニット(アクチュエータ)は、それ自体かなりの重量があり、外骨格型のロボティックスーツは骨格(リンク)により重量を支えることができるのに対し、非外骨格型のロボティックウェアは人体で重量を支えなければならない。また、歩行時にモータユニットの揺動による慣性力が人体に作用するという問題や、モータユニットが腰部分から外側に張り出して装着されているため、モータユニットが手に当たるという問題がある。 【0006】 本発明は、ロボティックスーツあるいはロボティックウェア等の人体に装着して用いるロボット装置に用いられるモータユニットの小型化、軽量化を図ることにより、装着性、使用性のよいロボティックウェアを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明に係るロボティックウェアは、人体の可動部位を支持する支持手段と、支持手段を駆動して人体の動作をアシストするモータユニットを備えるロボティックウェアにおいて、前記モータユニットは、モータと、モータに連繋して用いる減速機と、減速機を収容するハウジングケースとを備え、前記減速機は、サーキュラ・スプラインと、前記モータを収容可能な内径の内部空間を備えるフレクスプラインと、ウェーブ・ジェネレータとを備え、前記モータの基部側が、前記フレクスプラインの内部空間に収容され、モータの出力軸と前記ウェーブ・ジェネレータとが連結されていることを特徴とする。 前記ハウジングケースが樹脂からなることにより、効果的にモータユニットの軽量化を図ることができ、さらにロボティックウェアの装着性を向上させることができる。 【0008】 また、前記支持手段として、人体の可動部位を支持する支持ベルトと、該支持ベルトに連繋して前記可動部位の側方に配置された支持板とを備え、関節部に対応する位置に、前記支持板に連繋して前記モータユニットを配し、関節部を支点として前記モータユニットにより前記支持板を回動駆動する構成を備える非外骨格型のロボティックウェアに、とくに好適に適用することができる。 また、前記支持手段として、腰ベルトと、大腿部上部ベルトとを備え、前記支持板として、大腿部上部支持板と、大腿部下部支持板とを備え、前記モータユニットを、前記大腿部上部支持板に支持するとともに、前記大腿部下部支持板に連繋して設けたことを特徴とする。 また、前記支持手段として、大腿部下部ベルトと、下腿部上部ベルトとを備え、前記支持板として、下腿部上部支持板と、下腿部下部支持板とを備え、前記モータユニットを、前記下腿部上部支持板に支持するとともに、前記下腿部下部支持板に連繋して設けたことを特徴とする。」 (2)「【0013】 股関節用装着ユニット12は、腰ベルト121と、大腿部上部ベルト12aと、大腿部上部支持板12bと、大腿部下部支持板12cと、モータユニット20aとを備える。同様に、股関節用装着ユニット14は、腰ベルト121と、大腿部上部ベルト14aと、大腿部上部支持板14bと、大腿部下部支持板14cと、モータユニット20bとを備える。腰ベルト121は左右の股関節用装着ユニット12、14で共通の部材である。 モータユニット20a、20bは、大腿部上部支持板12b、14bと、大腿部下部支持板12c、14cとの間を連繋し、モータユニット20a、20bの取り付け位置を支点として、大腿部下部支持板12c、14cを揺動駆動する。」 (3)「【0016】 モータ(アクチュエータ)を駆動制御する方法はとくには限定されないが、例として、同調制御方法に基づく制御方法を用いることができる。同調制御方法とは、介護者が被介護者の動こうとするタイミングに合わせて力を加えるように補助するといったように、介護者が被介護者の動作に同調しながら運動を補助するという制御方法である。モータユニットに設けたトルクセンサにより、駆動部と使用者との間の相互作用力(トルク)を検知しながらモータの駆動を制御することにより、使用者の動きに同調しながら使用者の動作を補助するように駆動させることもできるし、リハビリ運動のように使用者に負荷をかけるように駆動させることもできる。」 (4)「【0019】 図2は、従来のロボティックウェアに用いられているモータユニット30の構成を示す部分断面図である。 このモータユニット30は、減速機32を内蔵するハウジングケース34と、ハウジングケース34に固定したモータ36とを備える。減速機32は、ウェーブ・ジェネレータとフレクスプラインとサーキュラ・スプラインとを備えるハーモニックドライブ(登録商標)型の減速機である。 モータ36は、ハウジングケース34のケース上に固定して用いられ、モータ36の出力軸が減速機32のウェーブ・ジェネレータに連結され、モータ36と減速機32とが連繋される。モータユニット30は、外観的には、ハウジングケース34の上にモータ36が搭載された形態となる。 【0020】 減速機32のサーキュラ・スプライン32aは、ハウジングケース34の他方の開口部の内周側面にベアリングを介して回転自在に取り付けられる。サーキュラ・スプライン32aの面上には、ハウジングケース34の他方の開口面から外方に先端が突出する駆動ピン33が立設されている。 サーキュラ・スプライン32aの内側には、サーキュラ・スプライン32aの内周側面と外周側面とが歯合するフレクスプライン32bが配置され、フレクスプライン32bのフランジ部32cがハウジングケース34の内面に固定される。トルクセンサ40はフレクスプライン32bのフランジ部32cの近傍に取り付けられている。 【0021】 本実施形態においては、減速機32としてシルクハット型のハーモニックドライブ(登録商標)減速機SHG-17-50を使用し、モータ36としてブラシレスDCモータを使用した。 ハウジングケース34はアルミニウム製であり、ハウジングケース34の他方の開口部の周縁部上には、モータユニット30の周方向の取り付け位置を規定する位置決めピン38が設けられる。 【0022】 次に、このモータユニット30を図1に示したロボティックウェアに装着する構成部分について説明する。ロボティックウェアのモータユニット20a、20b、20c、20dには上述したモータユニット30を共通に装着する。以下では、モータユニット20a、20b、20c、20dのかわりにモータユニット30とする。 大腿部下部支持板12c、14cと、下腿部下部支持板16e、18eの上部には、モータユニット30の駆動ピン33が係合する係合部が設けられている。この係合部は支持板と一体の円板状に設けられた部位であり、駆動ピン33が挿入される係合孔が、駆動ピン33の配置位置に合わせて、厚さ方向に貫通して設けられている。モータユニット30は係合孔に駆動ピン33を抜き差しするようにして、大腿部下部支持板12c、14cと、下腿部下部支持板16e、18eに脱着可能となる。 【0023】 大腿部上部支持板12b、14bと、下腿部上部支持板16d、18dの下部には、それぞれモータユニット30のハウジングケース34を支持するリング状に形成した支持部が設けられている。支持部にはモータユニット30の位置決めピン38が係合する位置決め孔が設けられ、位置決めピン38を位置決め孔に挿入することにより、支持板の係合孔とモータユニット30の駆動ピン33とが位置決めされ、係合孔と駆動ピン33とが係合する。 この状態でモータユニット30を駆動制御することにより、大腿部下部支持板12c、14cと、下腿部下部支持板16e、18eは、モータユニット30を装着した位置を支点として回動(揺動)駆動される。このように、図1に示すロボティックウェアは、モータユニット30をロボット装置に簡単に脱着して使用することができる。」 (5)「【0024】 (改良型モータユニット) 図3は、改良型のモータユニットの構成例を示す部分断面図である。本実施形態のモータユニット30aは、減速機構としてウェーブ・ジェネレータとフレクスプラインとサーキュラ・スプラインとを備える減速機を使用することは上記例と同様である。 本実施形態のモータユニット30aにおいて、図2に示したモータユニット30と相違する点は、扁平型のウェーブ・ジェネレータと内部空間の大きなフレクスプラインを備える減速機を使用し、ハウジングケース34とモータ36とを合わせたモータユニット30aの全高を、従来のモータユニット30の全高よりも低くしたことにある。 【0025】 内部空間の大きなフレクスプラインを使用するとは、フレクスプラインとして、その内部空間にモータ36を収容できるサイズのものを使用するということである。内部空間にモータ36を収容することにより、モータユニット30aの全高を従来型のモータユニット30よりも低くすることができる。本実施形態では、フレクスプラインの内部空間にモータ36を収容するため、従来型のモータユニット30で使用している減速機よりも外径が大きなフレクスプラインを備える減速機を使用した。 なお、サーキュラ・スプライン32aに駆動ピン33を立設し、フレクスプライン32bのフランジ部32cにトルクセンサ40を装着した構成は図2に示すモータユニット30と同様である。 【0026】 図3に示すように、本実施形態では、ハウジングケース34の一方(モータ取り付け側)の開口部径を、モータ36の外径よりも僅かに大径とし、モータ36の基部側(出力軸が延出する側)をハウジングケース34の開口部からフレクスプラインの内部空間に挿入してモータ36をセットする。モータ36は出力軸をウェーブ・ジェネレータ32dに連結し、減速機と連繋させる モータ36の基部側をハウジングケース34内に収容したことにより、ハウジングケース34に収容したモータ36の高さ分が、従来のモータユニット30の全高よりも低くなる。 このようにモータユニット30aの構成を改良することにより、図2の従来型のモータユニット30では、ハウジングケース34とモータ36とを合わせた高さ(駆動ピン33、位置決めピン38は高さ寸法から除く)が81mmであったのに対し、本実施形態のモータユニット30aでは、ハウジングケース34とモータ36とを合わせた全高が63mmとなり、従来型と比較して18mm、高さを低くすることができた。 【0027】 図3に示すモータユニット30aでは、ハウジングケース34の他方の開口部側は、駆動ピン33を除きサーキュラ・スプライン32aによって囲まれた平面領域をハウジングカバー42により被覆している。ハウジングカバー42の中央部は円柱状に突出する。この突出部位は、ハウジングケース34から外方に延出するウェーブ・ジェネレータ32dの軸部を収容する部位である。ハウジングカバー42にはPOM(polyoxymethylene)を使用した。 【0028】 モータユニット30aは前述したモータユニット30と同様に、図1に示すロボティックウェアのモータユニット20a、20b、20c、20dとして利用することができる。モータユニット30aの作用は従来型のモータユニット30と同様である。 本実施形態のモータユニット30aをロボティックウェアに適用した場合は、モータユニット30aの全高が従来型よりも低くなり、モータユニット30aの突出高さが抑えられるから、ロボティックウェアを使用した際に、モータユニットが手に当たるといった頻度を抑えることができ、ロボティックウェアの使用性を改善することができる。」 (6)「 [図:0001411221000001.jpg] 」 (7)「 [図:0001411221000002.jpg] 」 なお、上記【図3】中の丸は当審で付与した。 (8)上記(1)~(3)の特に下線部の記載及び(6)の図面の記載からすれば、ロボティクスウェアの股関節用装着ユニット12,14は、腰ベルト121と大腿部上部ベルト12a,14aで腰関節に装着され使用者の動作を補助するものであるから、「腰と大腿部の間の股関節の動きを補助する非外骨格型のロボティクスウェア」を構成する。 (9)上記(2)、(5)の特に下線部の記載及び(6)、(7)の図面の記載からすれば、腰ベルト121と大腿部上部ベルト12a、14aは使用者の腰と大腿部に装着されるものであるから、「腰に装着される大腿部上部支持板12b、14bと、大腿部に装着される大腿部下部支持板12c、14cと、大腿部上部支持板12b、14bと大腿部下部支持板12c、14cの間に介装される減速機構を備えるモータユニット20a、20b」を備えている。 (10)上記(2)、(4)、(5)の特に下線部の記載及び(6)、(7)の図面の記載からすれば、モータユニット20a、20bの減速機構は「位置決めピン38により大腿部上部支持板12b、14bに連結されるハウジングケース34と、駆動ピン33により大腿部下部支持板12c、14cに連結されるサーキュラ・スプライン32a」を備えており、図3に付記した丸内の構成からすれば、当該ハウジングケース34とサーキュラ・スプライン32aの間には1つのベアリングのみが配置されている。 (11)上記(8)~(10)の認定によれば、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「腰と大腿部の間の股関節の動きを補助する非外骨格型のロボティクスウェアであって、 腰に装着される大腿部上部支持板12b、14bと、 大腿部に装着される大腿部下部支持板12c、14cと、 大腿部上部支持板12b、14bと大腿部下部支持板12c、14cの間に介装される減速機構を備えるモータユニット20a、20bとを備え、 前記減速機構は、位置決めピン38により前記大腿部上部支持板12b、14bに連結されるハウジングケース34と、駆動ピン33により前記大腿部下部支持板12c、14cに連結されるサーキュラ・スプライン32aと、当該ハウジングケース34とサーキュラ・スプライン32aの間には1つのベアリングのみが配置される非外骨格型のロボティクスウェア。」 2 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0050】 さらに、幾つかの実施形態では、図4に示すように、上腕センサユニット30A及び前腕センサユニット30Bは、感圧センサ41,42及び感圧センサ43,44よりも腕側に、一定以上の力が加わる過負荷時に破損する破損部60が設けられている。図4に例示する上腕センサユニット30A及び前腕センサユニット30Bにおいて、「感圧センサ41,42及び感圧センサ43,44よりも腕側」の部材としては、上腕保持部31,33と、前腕保持部32,34と、連結部36とが該当する。破損部60は、材料や形状等に起因する局所的な低強度部として形成することが望ましい。具体的に、破損部60は、例えば連結部36における上腕保持部31,33のいずれかの根本近傍及び前腕保持部32,34のいずれかの根本近傍に切欠き状等で形成されていることが好ましい。 これにより、感圧センサ41,42及び感圧センサ43,44は高剛性とし適切に機能させつつも、過負荷時には、この破損部60で意図的に破損させるようにすることで、装着者の腕に過度な力が加わることを防止して、当該装着者に対する安全面にも配慮できると共に、感圧センサ41,42及び感圧センサ43,44の破損を効果的に抑制できる。 【0051】 また、幾つかの実施形態では、図2~図4に示す上腕保持部31,33のいずれか及び前腕保持部32,34のいずれかは、一定以上の力により装着状態が解除されるように構成されている。換言すれば、一定以上の曲げ力により上腕保持部31,33のいずれか及び前腕保持部32,34のいずれかが折れて破損するように構成されている。 この場合、何らかの不具合等により上腕及び又は前腕に一定以上の大きな力が加わろうとする過負荷時に、上腕保持部31,33のいずれか及び又は前腕保持部32,34が故意(意図的)に折れて破損するため、上腕及び又は前腕へ過度な力が加わることを未然に防止可能としている。」 (2)「 [図:0001411221000003.jpg] 」 (3)「 [図:0001411221000004.jpg] 」 (4)上記(1)の特に下線部の記載及び(2)、(3)の図面の記載からすれば、甲2には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。 「感圧センサ41、42の破損を抑制するため、前腕保持部32,34に過負荷が加わった時に破損する破損部60を設けた点。」 第6 当審の判断 1 本件特許発明1について (1)対比 ア 甲1発明の「腰」、「大腿部」、「股関節」、「補助」及び「非外骨格型のロボティックウェア」は、機能及び構造上、本件特許発明1の人体の「第1部分」、人体の「第2部分」、「関節」、「アシスト」及び「アシスト装置」に相当する。 イ 甲1発明の「大腿部上部支持板12b、14b」及び「大腿部下部支持板12c、14c」は、機能及び構造上、本件特許発明1の「第1部材」及び「第2部材」に相当する。 ウ 甲1発明の「減速機構」及び「ベアリング」は、機能及び構造上、本件特許発明1の「減速機」及び「主軸受」に相当する。 エ 甲1発明の「位置決めピン38により前記大腿部上部支持板12b、14bに連結されるハウジングケース34」及び「駆動ピン33により前記大腿部下部支持板12c、14cに連結されるサーキュラ・スプライン32a」は、機能及び構造上、本件特許発明1の「固定部材」及び「出力部材」に相当する。 オ 甲1発明の「1つのベアリング」は、甲1の段落【0020】(上記第4の1(4)参照。)の「減速機32のサーキュラ・スプライン32aは、ハウジングケース34の他方の開口部の内周側面にベアリングを介して回転自在に取り付けられる。」との記載及び図3(上記第4の1(7)参照。)に付記した丸内の構成からすれば、本件特許発明1の「主軸受」に相当する。 (2)一致点・相違点 上記(1)の対比に基づけば、、本件特許発明1と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、 前記第一部分に装着される第一部材と、 前記第二部分に装着される第二部材と、 前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、 当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、 前記固定部材と前記出力部材との間には主軸受のみが配置されるアシスト装置。 【相違点】 本件特許発明1では、主軸受は、1つの単列式転がり軸受(クロスローラ軸受を含まない)のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成されているのに対し、甲1発明では、主軸受である1つのベアリングについて具体的に特定されていない点。 なお、特許権者は、令和4年12月9日提出の意見書(以下、「特許権者意見書B」という。)において、本件特許発明1は「アシスト装置に使用される減速機の固定部材と出力部材の間に配置される主軸受」という前提構成A1を無視している点を指摘し、本件特許発明1と甲1発明の相違点は、「本件特許発明1においては、アシスト装置に使用される減速機の固定部材と出力部材の間に配置される主軸受は、1つの単列式転がり軸受のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成されるのに対し、甲1発明では、アシスト装置に使用される減速機の固定部材と出力部材の間に配置される主軸受を、(従来の技術常識通り)クロスローラ軸受により構成している点」となる旨主張している(特許権者意見書B3頁18行~6頁21行参照。)。 しかし、甲1発明の「非外骨格型のロボティックウェア」は、人体の第1部分としての腰と人体の第2部分としての大腿部に装着し、アシスト装置として使用されるものであり、減速機構はハウジングケース34とサーキュラ・スプライン32aの間に配置される1つのベアリングを備えるものであるから、上記前提構成A1は甲1発明も備える構成であり、相違点にはあたらない。 また、特許権者は従来の技術常識に照らして、甲1発明の主軸受はクロスローラ軸受であることを前提として、相違点を主張している。 しかし、甲1にはクロスローラ軸受の使用について何ら記載はない。 また、特許権者は従来の技術常識とする根拠として、本件特許明細書の段落【0041】、【0043】及び図3の記載を主張するが、本件特許の出願日からみて本件特許明細書は甲1の出願日後に作成されたものと推認されるから、本件特許明細書の記載のみをもって、甲1発明の出願時に上記技術常識が存在したとすることはできない。また、仮に本件特許明細書に記載された技術常識が甲1発明の出願時に存在していたとしても、当該段落【0041】は、出力側からの外部荷重を受ける産業用ロボットにおいては主軸受にクロスローラ軸受を用いることが技術常識であることを記載するのみであり、甲1発明は、段落【0043】に記載されている、関節より先端部側(出力側)に荷重がかからないアシスト装置に係るものであるから、甲1発明の主軸受にクロスローラ軸受を採用する根拠となる技術常識が本件特許明細書に記載されているとはいえない。 よって、特許権者の主張は採用できない。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 ベアリングとして、クロスローラ軸受でない「単列式転がり軸受」や「滑り軸受」は、例示するまでもなく機械要素として周知の構成であり、これを甲1発明の主軸受のベアリングの具体的構成として採用することは当業者にとって容易である。 特許権者は、令和4年6月24日提出の意見書(以下、「特許権者意見書A」という。)において、乙第1号証及び乙第2号証の記載を参照して、甲1の図3の丸内の軸受の構成は、外輪及び内輪に90°の角度を持つV溝が形成されており、円形断面の物体は当該外輪及び内輪に接していないことを指摘して、当該円形断面の物体は転動体ではなく、セパレータを表している旨主張している(特許権者意見書A3頁11行~4頁15行参照。)。 しかし、外輪及び内輪をV溝で構成する軸受けはクロスローラ軸受に限ったものではなく、一般的な玉軸受(必要であれば、特開2002-206524号公報(図1,3参照。)や実願昭48-110146号(実開昭50-54445号)のマイクロフィルム(第1図参照。))でも、断面によっては、転動体(ないし玉)は外輪及び内輪に接していない構成になるものと認められる。 また、クロスローラ軸受においても、円形断面のセパレータは必須の構成ではない(必要であれば、特開2007-68978号公報(図1参照。)や特開昭60-249722号公報(第2,4図参照。))。 よって、上記図3の丸内の構成の図示のみから、甲1がクロスローラ軸受を用いているとすることはできない。 また、特許権者は、ベアリングに周知の単列式転がり軸受又は滑り軸受を採用することについて、特許権者意見書Aにおいて、「また、取消理由通知書においては、『また、仮に甲1発明の上記軸受けが「単列式転がり軸受」でなかったとしても、図3の記載に照らして、当該軸受に周知の「単列式転がり軸受」を採用することは当業者であれば容易に想到できることと認められる。さらに、軸受として「滑り軸受」は周知のものであるから、当該軸受として滑り軸受を採用することも、当業者にとって容易である』と認定されております。しかしながら、以下に説明するように、このような認定には誤りがあるものと思量致します。」と主張し、本件特許明細書の段落【0041】、【0043】、【0051】、【0052】の記載を指摘して、「耐荷重の高い二つの軸受又はクロスローラー軸受という技術常識の構成に替えて、耐荷重の低い1つの単列式転がり軸受又は1つの滑り軸受を主軸受として使用することは、本件特許の出願当時の技術常識からすれば非常識な改変ともいうべきものであり、前述したアシスト装置に特有の事情を見出したうえで発想の転換がなければ容易に想到し得るものではありません。」と主張している(特許権者意見書A7頁5行~8頁10行参照。)。 しかし、上記段落【0041】~【0045】、【0051】、【0052】の記載は、産業用ロボットのロボットアームの関節等に組み込まれる、一般的な減速機の場合はラジアル荷重、アキシャル荷重及びモーメント荷重がかかるためクロスローラ軸受のような高価な軸受が必要である一方、アシスト装置の関節に組み込まれる減速機の場合には、関節より先端部側の荷重を支える必要がないので、軸受に作用する荷重は、専らラジアル荷重であり、これに比べてアキシャル荷重やモーメント荷重は非常に小さく、また、ラジアル荷重も小さいので高価なクロスローラ軸受を用いなくても、単列式転がり軸受や滑り軸受も使用できることを示唆するものである。 一方、甲1は、本件特許発明同様、股関節の動きを補助するアシスト装置に係るものであり、図1(第5の1(6)参照。)に記載されているように、関節より先端部側は大腿部上部ベルト12aで大腿部に固定されているのであるから、減速機の軸受で関節より先端部側の荷重を支える必要がないことは本件特許発明と同様である。 また、甲1の段落【0031】には、強度が劣るハウジングケースでも実用上問題がない旨記載されており、このことからも、甲1発明のロボティックウェアに大きな負荷が懸からないことは明らかである。 したがって、甲1発明のベアリングにあえて高価なクロスローラ軸受を用いる必要性はないし、仮に、図3からクロスローラ軸受が看取できるとしても一例にすぎず、周知の単列式転がり軸受や滑り軸受を採用する阻害要因にはならない。 よって、上記特許権者の主張は失当であり、ベアリングに周知の単列式転がり軸受や滑り軸受を採用することが容易でないということはできない。 また、特許権者は、特許権者意見書Bにおいて、本件特許明細書の段落【0041】~【0045】、【0051】、【0052】に記載されているアシスト装置に特有の事情は、本件特許の出願時点では未公知の知見であるから、本件特許発明を想到することはできない旨主張している(特許権者意見書B8頁15行~10頁6行参照。) しかし、甲1発明は主軸受として何らかのベアリングを用いていることは、図3(第5の1(7)参照。)の記載から明らかであり、これに周知の「単列式転がり軸受」を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、当該採用にあたって特許権者が主張する未公知の知見が必要となるものとは認められない。 そして、本件特許発明の奏する作用効果は、甲1発明に周知の技術を適用することにより生じることが予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 本件特許発明2について (1)一致点・相違点 上記1(1)の対比に基づけば、本件特許発明2と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、 前記第一部分に装着される第一部材と、 前記第二部分に装着される第二部材と、 前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、 当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、 前記固定部材と前記出力部材との間には主軸受のみが配置されるアシスト装置。 【相違点】 1.本件特許発明2では、主軸受は、専らラジアル荷重に対応するための1つの単列式転がり軸受のみにより構成されるか、1つの滑り軸受のみにより構成されるか、前記固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する一箇所の滑り軸受のみにより構成されているのに対し、甲1発明では、主軸受である1つのベアリングについて具体的に特定されていない点。 2.本件特許発明2では、減速機は、起振体と、前記起振体により撓み変形される外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置を含むのに対し、甲2発明では、その点明確でない点。 (2)判断 以下、上記相違点について検討する。 ア 相違点1について ベアリングとして、クロスローラ軸受でない「単列式転がり軸受」や「滑り軸受」は、例示するまでもなく機械要素として周知の構成であり、これを甲1発明の主軸受のベアリングの具体的構成として採用することは当業者にとって容易である。 そして、「1つの単列式転がり軸受」について、「専らラジアル荷重に対応するための」という特定を加える点は、「1つの単列式転がり軸受」の作用を特定したにすぎず、甲1発明のベアリングに「1つの単列式転がり軸受」を採用すれば、ロボティックウェアの構成上、当該「1つの単列式転がり軸受」は、専らラジアル荷重に対応することになることは構造上明らかである(上記1(3)の指摘参照。)。 よって、相違点1に係る本件特許発明2の構成は、甲1発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明できたものである。 イ 相違点2について 甲1の段落【0021】(第5の1(4)参照。)に記載されているように、甲1に記載されたロボティックウェアは、減速機構の減速機にハーモニックドライブ(登録商標)を採用しており、段落【0024】~【0028】(第5の1(5)参照。)及び図3(第5の1(7)参照。)の記載からすれば、当該減速機の「ウェーブ・ジェネレータ32d」、「フレクスプライン32b」及び「サーキュラ・スプライン32a」は、それぞれ本件特許発明2の「起振体」、「外歯歯車」及び「内歯歯車」に相当するから、甲1発明は、減速機構に「起振体と、前記起振体により撓み変形される外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置を含む」ものと認められる。 ウ 小括 よって、本件特許発明2は甲1発明、周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 本件特許発明3について (1)一致点・相違点 上記1(1)の対比に基づけば、本件特許発明3と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストするアシスト装置であって、 前記第一部分に装着される第一部材と、 前記第二部分に装着される第二部材と、 前記第一部材と前記第二部材の間に介装される減速機と、を備え、 当該減速機は、前記第一部材に連結される固定部材と、前記第二部材に連結される出力部材と、前記固定部材と前記出力部材の間に配置される主軸受と、を有し、 前記固定部材と前記出力部材との間には主軸受のみが配置されるアシスト装置。 【相違点】 本件特許発明3では、主軸受は、1つの単列式転がり軸受のみにより構成され、当該単列式転がり軸受は、深溝玉軸受により構成されているのに対し、甲1発明では、主軸受である1つのベアリングについて具体的に特定されていない点。 (2)判断 以下、上記相違点について検討する。 ベアリングとして、クロスローラ軸受でない「単列式転がり軸受」は、例示するまでもなく機械要素として周知の構成であり、また、単列式転がり軸受として深溝球軸受は周知のものである。 よって、甲1発明の主軸受のベアリングの具体的構成として深溝球軸受を採用することは当業者にとって容易である。 したがって、本件特許発明3は甲1発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明1又は2の「滑り軸受」について、「固定部材と前記出力部材を直接的に摺接する滑り軸受は、前記固定部材と前記出力部材とが直接的に摺接する相互間に潤滑剤が塗布されている」点を新たに特定するものである。 しかし、滑り軸受の摺接部に潤滑剤を塗布することは常套手段にすぎず、滑り軸受の採用にあたって、当該常套手段を採用することは当業者が容易になし得ることである。 よって、本件特許発明4は甲1発明、周知の技術及び常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 本件特許発明5について 本件特許発明5は、本件特許発明1~4の「出力部材」について、「出力部材側から作用される外部荷重により、他の部位に比べてより小さい外部荷重で破断し易い脆弱部を有する」点を新たに特定するものである。 しかし、部品の破損を抑制するため、負荷部に過負荷が掛かった時に破損する脆弱部を設けることは、上記甲2記載事項(第5の2(4)参照。)にあるように公知の技術にすぎず、当該技術を甲1発明の出力部材に相当するサーキュラ・スプライン32aに適用することに困難性は認められない。 よって、本件特許発明5は甲1発明、周知の技術及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700972

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    共通の審決分類: 121・A61H
  • 2022-700409異議申立 / 2023-09-27 / 訂正認容マッサージ機
    共通の審決分類: 121・A61H
  • 2020-700994異議申立 / 2022-01-20 / 訂正認容リハビリテーション支援装置及びリハビリテーション支援方法
    共通の審決分類: 121・A61H

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