特許異議申立
2023-700960
歩行補助車
- 審判番号
- 2023-700960
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-175958
- 登録番号
- 7239234
- 請求日
- 2023年09月13日
- 審決日
- 2023年12月21日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社幸和製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】山下 高広
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 一浩
- 審判官 近藤 利充
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P1651.121-Y (A61H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7239234号発明「歩行補助車」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7239234号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7239234号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和 元年11月18日(優先権主張 平成31年 2月28日)に出願した特願2019-207838号の一部を令和 4年11月 2日に新たな特許出願としたものであって、令和 5年 3月 6日にその特許権の設定登録がされ、令和 5年 3月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和 5年 9月13日に特許異議申立人 山下高広(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレストと、前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部と、を有する上部フレームと、
前記補助対象者の前方において上下方向に延びる接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレームと、
前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッドと、
前記第1胴体パッドよりも少なくとも一部が上方に位置し、後方へ転倒しそうなった前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッドと、
前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、前記補助対象者の折り曲げた膝に接触して当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータと、
前記膝サポータよりも下方に位置し、前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイドと、
を備え、
前記膝サポータが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第1曲面を有し、
前記車体下侵入禁止ガイドが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第2曲面を有し、
前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい、歩行補助車。
【請求項2】
前記第2胴体パッドは、前記補助対象者の胴体を支持するための支持姿勢と、前記補助対象者の離脱を許容する離脱許容姿勢と、を切り替え可能に構成されている、請求項1に記載の歩行補助車。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第7号証(以下、各甲号証に付された数字に対応して「甲1」などという。)を提出し、以下の理由により、本件特許は取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1
本件発明は、甲1に記載された発明、及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2
本件発明は、甲6に記載された発明、及び甲2~4、7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
[証拠方法]
甲1:特開2019-30629号公報
甲2:特開2003-265558号公報
甲3:特開平10-57425号公報
甲4:特開2012-200406号公報
甲5:中国実用新案第205796005号明細書
甲6:中国実用新案第208319511号明細書
甲7:米国特許第5255697号明細書
第4 本件明細書等の記載
本件出願の願書に添付した明細書又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。
「【0079】
[下肢サポータ8]
足腰が弱い補助対象者の転倒の仕方として少なくとも2つ考えられる。1つ目の転倒態様は、足を地面につけた状態で脱力して膝だけが前に折れ曲がり、胴体が下方に沈み込む転倒である。この態様の転倒を防止又は抑制するためには、図17、図18及び図21に示すように、歩行補助車が規定する補助対象者が起立すべき起立領域Ar1の前方に、折れ曲がる膝に接触して膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータ80を設けることが好ましい。
【0080】
2つ目の転倒態様は、後方に転倒する場合である。この場合、第2胴体パッド30bで補助対象者の胴体が支持される。しかし、地面につけた足が動かないまま更に後方に転倒しようとする場合には、補助車が後方に動いて足又は下腿が路面と車体の間に挟まれてしまうおそれが考えられる。この事態を防止するためには、車体下侵入禁止ガイド81を設けることが好ましい。【0081】
・・・下肢サポータ8のサポート面のうち最も後方となる頂点8dよりも下となる第2サポート面83は、上後方から下前方へ向かって延びている。これにより、補助車が後方に動いたとしても、頂点8dが一番初めに下腿(すね)に当たって補助車の更なる後方への移動を規制でき、また、第2サポート面83が下腿(すね)又は足にあたることで、複数個所で補助対象者と接触するので、一カ所のみの接触に比べて補助対象者に与える感覚を低減可能となる。」
第5 甲各号証の記載事項、認定事項、並びに甲1発明及び甲6発明
1 甲1
(1) 記載事項
甲1には、次の記載がある。
ア 「【0013】
図1から図4を参照して、本実施の形態にかかる歩行車100は、走行部として、左右の前輪101L,101Rと、左右の後輪102L,102Rと、当該前輪101L,101Rのそれぞれを枢支する前脚フレーム103L,103Rと、当該後輪102L,102Rのそれぞれを枢支する後脚フレーム104L,104Rとを含む。そして、左の前脚フレーム103Lと左の後脚フレーム104Lとは、両者の上部が所定の角度で左の連結部材105Lに取り付けられている。同様に、右の前脚フレーム103Rと右の後脚フレーム104Rとは、両者の上部が所定の角度で右の連結部材105Rに取り付けられている。
【0014】
左右の連結部材105L,105R同士は、左右メインフレーム107やサブ左右フレーム109などによって、所定の間隔をあけて互いに連結される。なお、左右の前脚フレーム103L,103R同士や、左右の後脚フレーム104L,104L(当審注:「104R」の誤記と認める。)同士も、各種のフレームによって所定の間隔をあけて互いに連結されることが好ましい。」
イ 「【0016】
左右の連結部材105L,105Rのそれぞれには、左右の縦メインフレーム110L,110Rが挿通される。後述するように、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれは、左右の連結部材105L,105Rのそれぞれに対する高さが調整可能である。
【0017】
左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれの上端部には、後方に向けて、左右のアームレスト120L,120Rのそれぞれが取り付けられる。また、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれの上端部には、前方に向けて、ハンドル112とブレーキレバー114とが取り付けられる。
【0018】
ハンドル112とブレーキレバー114とは、平面視においてU字状に形成されている。ハンドル112とブレーキレバー114とは、側面視において、前部が上方に曲げられている。これによって、歩行車100の使用車(当審注:「使用者」の誤記と認める。)は、アームレスト120L,120Rに肘を置きながら、ハンドル112やブレーキレバー114を握りやすく構成されている。本実施の形態においては、ブレーキレバー114が上方へ回動されることによって、左右の後輪102L,102Rにブレーキがかかるように構成されている。」
ウ 「【0025】
また、図5および図6を参照して、本実施の形態にかかる歩行車100は、上述したように、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれが左右の連結部材105L,105Rに対して上下方向に高さ調節することが可能である。本実施の形態においては、左右の連結部材105L,105Rを連結する左右メインフレーム107に取り付けられた調整レバー111,111を互いに中央に寄せることによって、左右の縦メインフレーム110L,110Rの左右の連結部材105L,105Rに対する高さを変更することができる。」
エ 「【0032】
このように、本実施の形態にかかる歩行車100は、アームレスト120L,120Rの上方に、当接支持部材131L,131Rが設けられるため、歩行車100の使用中に使用者の上半身を左右方向から支持したり、歩行車100の使用中に使用者の上半身が左右に傾いても左右方向から支持したりすることができる。」
オ 「【0037】
図12は、本実施の形態にかかる歩行車100の使用時における全体構成を示す背面側からの斜視図である。図13は、本実施の形態にかかる膝当て150を示す斜視図である。図12および図13を参照して、本実施の形態においては、左右メインフレーム107(図2を参照)に、膝当て150が取り付けられる。膝当て150は、使用時において、ユーザの左右の膝の前方または前下方のエリアに配置され、ユーザの膝が少し曲げられた状態において、当該ユーザの膝を前下方から後上方へ向けて支持するものである。
【0038】
これによって、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で立ち止まっている使用者の上半身や脇を当接支持部材131L,131Rによって上方へ支持しつつ、使用者の膝を膝当て150によって前下方から後上方へ支持することができる。換言すれば、立ち止まっている使用者は、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で、上半身や脇を当接支持部材131L,131Rによって下方から支持されつつ、両膝を前下方から支持される。つまり、本実施の形態にかかる歩行車100は、立ち止まっている使用者の疲れを低減することができる。特に、膝を伸ばしきることが困難な高齢者の脇と膝とを効率的に支えることができる。
【0039】
なお、上述したように、膝当て150は、使用者の両膝を前下方から後上方に向けて支持してもよいし、単に前方から後方へ支持するものであってもよい。
【0040】
また、膝当て150は、歩行中には別の位置へ待避できることが好ましい。たとえば、図14に示すように、膝当て150が、左右メインフレーム107を軸に、上方へ回動可能に構成されてもよい。これによって、膝当て150が歩行の邪魔になりにくくすることができる。」
甲1には、次の図がある(枠囲いは当審が付したものである。以下同様。)。
図5
[図:0001406731000001.jpg]
図6
[図:0001406731000002.jpg]
図9
[図:0001406731000003.jpg]
図12
[図:0001406731000004.jpg]
図13
[図:0001406731000005.jpg]
(2) 認定事項
ア 段落0016の「左右の連結部材105L,105Rのそれぞれには、左右の縦メインフレーム110L,110Rが挿通される。」なる記載を踏まえて、図9、12をみると、左右の縦メインフレーム110L,110Rが挿通される左右の連結部材105L,105Rにおける挿通部位は、歩行車100の使用者の前方において上下方向に延びている。
イ 段落0025の「左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれが左右の連結部材105L,105Rに対して上下方向に高さ調節することが可能である。」なる記載を踏まえて、図5、6をみると、左右の連結部材105L,105Rは、左右の連結部材105L,105Rにおける挿通部位を介して、左右の縦メインフレーム110L,110Rを支持している。
ウ 段落0014の「左右の後脚フレーム104L,104L(当審注:「104R」の誤記と認める。)同士も、各種のフレームによって・・・互いに連結されることが好ましい。」なる記載を踏まえて、上記図9、12をみると、枠囲いで示す部材は、左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレームであって、断面略円形のパイプからなることが看取できる。
エ 図9、12の図示内容から、左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレームは、膝当て150よりも下方に位置している。
オ 図13の枠囲いで示す部分は、曲面を含むことが看取できる。図12の図示内容も踏まえると、膝当て150は、側面視で後方に突出する曲面を有している。
(3) 甲1発明
上記(1)及び(2)を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれの上端部には、左右のアームレスト120L,120Rのそれぞれが取り付けられ、ハンドル112が取り付けられ、歩行車100の使用者は、アームレスト120L,120Rに肘を置きながら、ハンドル112を握りやすく構成され、
左右の連結部材105L,105Rのそれぞれには、左右の縦メインフレーム110L,110Rが挿通され、左右の連結部材105L,105Rにおける挿通部位は、歩行車100の使用者の前方において上下方向に延び、左右の連結部材105L,105Rは、左右の連結部材105L,105Rにおける挿通部位を介して、左右の縦メインフレーム110L,110Rを支持し、左右の前輪101L,101Rと、左右の後輪102L,102Rと、当該前輪101L,101Rのそれぞれを枢支する前脚フレーム103L,103Rと、当該後輪102L,102Rのそれぞれを枢支する後脚フレーム104L,104Rとを含み、左の前脚フレーム103Lと左の後脚フレーム104Lとは、左の連結部材105Lに取り付けられ、同様に、右の前脚フレーム103Rと右の後脚フレーム104Rとは、右の連結部材105Rに取り付けられ、左右の連結部材105L,105R同士は、左右メインフレーム107やサブ左右フレーム109などによって、互いに連結され、
当接支持部材131L,131Rが設けられるため、歩行車100の使用中に使用者の上半身を左右方向から支持することができ、
左右メインフレーム107に、膝当て150が取り付けられ、膝当て150によって、立ち止まっている使用者は、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で、両膝を前下方から支持され、膝当て150は、歩行中には別の位置へ待避でき、
左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレームは、膝当て150よりも下方に位置し、
膝当て150は、側面視で後方に突出する曲面を有し、
左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレームは、断面略円形のパイプからなる、歩行車100。」
2 甲6
(1) 記載事項
甲6には、次の記載がある(ここでは、申立人が提出した甲6の抄訳文のみ記載する。)。
ア 「
[図:0001406731000006.jpg]
」
イ 「
[図:0001406731000007.jpg]
[図:0001406731000008.jpg]
[図:0001406731000009.jpg]
」
ウ 「
[図:0001406731000010.jpg]
[図:0001406731000011.jpg]
(当審注:「肘掛杆31」は「アームレストロッド33」の誤記と認める。)」
甲6には、次の図がある。
図1
[図:0001406731000012.jpg]
図5
[図:0001406731000013.jpg]
(2) 認定事項
ア 段落0043の「下部ブラケット本体2と上部ブラケット本体ブラケットは伸縮管28を介して接続され」なる記載を踏まえて、図1をみると、下部ブラケット体2は、上下方向に延びる伸縮管28を介して、上部ブラケット体1を支持している。
イ 段落0042の「下部ブラケット体2は、下端部の前方に固定ロッドを設け」及び「該足乗せ棒27の両端部を固定ロッドに固定連結し」との記載を踏まえると、図1において、符号「27」が示す部材のすぐ後方の、これと平行な部材は、固定ロッドである。
ウ 図1、5の図示内容から、固定ロッドは、図5の位置に配置された腰掛け板24よりも下方に位置していることが看取できる。
(3) 甲6発明
上記(1)及び(2)を総合すると、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。
「上部ブラケット体1と、下部ブラケット体2と、脇窩ブラケット3とを含み、
左右のブラケット31の前端と上部ブラケット体1の接続は、アームレストロッド33に設定され、左右のブラケット31がちょうど脇の下で人体を支え、上部ブラケット体1の前端は、安全ブラケット11に設置され、安全ブラケット11の両端はハンドル112とセットし、使用者が多機能歩行器を使用するとき、使用者はハンドルを強く握ることができ、このとき、腕をアームレストロッド33に載せることができ、
下部ブラケット体2は、上下方向に延びる伸縮管28を介して、上部ブラケット体1を支持し、下部ブラケット体2は4つの万能ブレーキキャスター22の下端に設定され、下部ブラケット体2は下端の両側に転倒防止輪25を設け、下部ブラケット体2後端に接続され、アンチバックフリップホイール26を設定し、
背もたれチューブ12を備え、
脚力の衰えによるトレーニングの立ち上がり時に腰掛け板24が膝の位置を支えることができ、腰掛け板を使用しないときには取り外すこともでき、
下部ブラケット体2は、下端部の前方に固定ロッドを設け、固定ロッドは、腰掛け板24よりも下方に位置する、多機能歩行器。」
3 甲2
甲2(特に要約、段落0009、図1を参照。)には、フレーム1に設けられた膝パッド26は、患者が起立動作をする時患者の膝を受け止める、転倒防止歩行車が記載されている。
4 甲3
甲3(特に要約、段落0011、図1を参照。)には、脚用クッション部材42が起立した乗員19のすね19dを受けるようになっている、電動走行車が記載されている。
5 甲4
甲4(特に段落0018~0019、0026、0063、図11を参照。)には、ニーサポート24は、サポート本体240を備え、サポート本体240を後方に移動させ、補助対象者Aの膝頭を後方(膝裏方向)に押圧する、立ち上がり動作アシストロボットが記載されている。
6 甲5
甲5(特に段落0006、0030、図1を参照。)には、連結アーム2には、転倒防止のための衝撃吸収用のフランネル21が巻かれている、脳性麻痺児用歩行器が記載されている。
7 甲7
甲7(特に要約、明細書第1欄第47~54行、図1を参照。)には、下側フレーム部材10は、保護パッド45で覆われている、歩行支援装置が記載されている。
第6 当審の判断
1 申立理由1について
(1) 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「歩行車100の使用者」が「肘を置」く「アームレスト120L,120R」は、本件発明1の「歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレスト」に相当し、以下同様に、
「アームレスト120L,120Rに肘を置きながら」「握りやすく構成され」た「ハンドル112」は、「前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部」に、
「左右のアームレスト120L,120R」と「ハンドル112」が「取り付けられ」る「左右の縦メインフレーム110L,110R」は、「アームレストと、」「把手部と、を有する上部フレーム」に、
「歩行車100の使用者の前方において上下方向に延び、」「左右の縦メインフレーム110L,110Rが挿通され」る「左右の連結部材105L,105Rにおける挿通部位」は、「前記補助対象者の前方において上下方向に延びる接続部」に、
「左右の前輪101L,101Rと、左右の後輪102L,102R」は、「車輪」に、
「当該前輪101L,101Rのそれぞれを枢支する前脚フレーム103L,103Rと、当該後輪102L,102Rのそれぞれを枢支する後脚フレーム104L,104R」、「左の前脚フレーム103Lと左の後脚フレーム104Lと」が「取り付けられ」る「左の連結部材105L」及び「右の前脚フレーム103Rと右の後脚フレーム104Rと」が「取り付けられ」る「右の連結部材105R」であって「左右の連結部材105L,105Rにおける挿通部位を介して、左右の縦メインフレーム110L,110Rを支持」する「左右の連結部材105L,105R」、「左右の連結部材105L,105R同士」が「互いに連結され」る「左右メインフレーム107やサブ左右フレーム109など」は、「接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレーム」に、
「歩行車100の使用中に使用者の上半身を左右方向から支持することができ」る「当接支持部材131L,131R」は、「前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッド」に、
「歩行車100」は、「歩行補助車」に、それぞれ相当する。
また、機能及び構造から、甲1発明の「膝当て150」が本件発明1の「膝サポータ」に相当することを踏まえれば、甲1発明の「立ち止まっている使用者は、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で、両膝を前下方から支持」し、「歩行中には別の位置へ待避でき」る「膝当て150」と、本件発明1の「前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、前記補助対象者の折り曲げた膝に接触して当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータ」とは、「前記補助対象者の折り曲げた膝に接触する膝サポータ」の限りで一致する。そして、甲1発明の「膝当て150」が「有」する「側面視で後方に突出する曲面」は、本件発明1の「膝サポータ」が「有」する「側面視で後方に突出する第1曲面」に相当する。
さらに、甲1発明の「膝当て150よりも下方に位置」する「左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレーム」と、本件発明1の「前記膝サポータよりも下方に位置し、前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド」とは、「前記膝サポータよりも下方に位置する部材」の限りで一致する。そして、甲1発明の「左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレーム」は「断面略円形のパイプからなる」から、当該パイプは、側面視で後方に突出する曲面を有しており、本件発明1の「前記膝サポータよりも下方に位置」する部材が「有」する「側面視で後方に突出する第2曲面」に相当する。
そうすると、両者は、
「歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレストと、前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部と、を有する上部フレームと、
前記補助対象者の前方において上下方向に延びる接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレームと、
前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッドと、
前記補助対象者の折り曲げた膝に接触する膝サポータと、
前記膝サポータよりも下方に位置する部材と、
を備え、
前記膝サポータは、側面視で後方に突出する第1曲面を有し、
前記膝サポータよりも下方に位置する前記部材は、側面視で後方に突出する第2曲面を有する、歩行補助車。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1は、「前記第1胴体パッドよりも少なくとも一部が上方に位置し、後方へ転倒しそうなった前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッド」を備えるのに対し、甲1発明は、そのようなものを備えない点。
[相違点2]
「前記補助対象者の折り曲げた膝に接触する膝サポータ」が、本件発明1は、「前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、」「当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する」ものであるのに対し、甲1発明は、「立ち止まっている使用者は、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で、両膝を前下方から支持」するものであり、「歩行中には別の位置へ待避でき」るものである点。
[相違点3]
「前記膝サポータよりも下方に位置する部材」が、本件発明1は、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド」であるのに対し、甲1発明は、「左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレーム」である点。
[相違点4]
「前記膝サポータ」が「有」する「側面視で後方に突出する第1曲面」を、本件発明1は、「前記膝サポータが形成するサポート面」が有するのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
[相違点5]
「前記膝サポータよりも下方に位置する部材」が「有」する「側面視で後方に突出する第2曲面」を、本件発明1は、「前記車体下侵入禁止ガイドが形成するサポート面」が有するのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
[相違点6]
本件発明1は、「前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい」のに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(2) 相違点についての検討
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
(ア) 甲1発明
本件発明1の「車体下侵入禁止ガイド」は、「地面につけた足が動かないまま更に後方に転倒しようとする」(本件明細書等の段落0080)状況に備えたものであるが、これは、第2胴体パッド30bを備えることにより、補助車が後方に動いて足又は下腿が路面と車体の間に挟まれてしまうおそれがあることによる(前記第4参照)。
他方、甲1発明は、その構造からそもそも後方に転倒しても、歩行車100は後方に動かないから、甲1発明において「車体下侵入禁止ガイド」を設ける動機付けはない。
仮に、甲1発明において、地面につけた足が動かないまま補助対象者が更に後方に転倒しようとする状況が生じたとしても、甲1発明の「左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレーム」について、甲1の図9、12からその配置を推認すると、図9の側面視において、膝当て150後端の第1曲面が存在すると思われる位置(「連結部材105L」の後下端付近)に比べ、当該フレームの第2曲面が存在する位置(「縦メインフレーム110L」よりも前方)は、相当程度前方にある。そうすると、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合に」、補助対象者の下腿が、仮に、膝当て150の側面視で後方に突出する曲面に接触したとしても、その後、さらに左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレームにも接触するのかは不明である。
よって、甲1発明の「左右の後脚フレーム104L,104R同士を互いに連結するフレーム」は、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する」ものであるということはできない。
(イ) 甲2~6に記載された事項
甲2~6のいずれにも、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド」は開示されていない。
(ウ) 相違点3の判断
したがって、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(3) 小括
上記(2)のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 本件発明2
本件発明2は、本件発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記(3)で述べた理由と同じ理由で、本件発明2は、甲1に記載された発明、及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由2について
(1) 本件発明1と甲6発明との対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「使用者が多機能歩行器を使用するとき、使用者は」「腕を」「載せることができ」る「アームレストロッド33」は、本件発明1の「歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレスト」に相当し、以下同様に、
「使用者は」「強く握ることができ、このとき、腕をアームレストロッド33に載せることができ」る「ハンドル112」は、「前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部」に、
「左右のブラケット31の前端と上部ブラケット体1の接続は、アームレストロッド33に設定され、」「ハンドル112とセット」される「安全ブラケット11に設置され」る「上部ブラケット体1」は、「アームレストと、」「把手部と、を有する上部フレーム」に、
「上下方向に延びる伸縮管28」は、「上下方向に延びる接続部」に、
「4つの万能ブレーキキャスター22」、「転倒防止輪25」及び「アンチバックフリップホイール26」は、「車輪」に、
「伸縮管28を介して、上部ブラケット体1を支持し、」「4つの万能ブレーキキャスター22の下端に設定され、」「下端の両側に転倒防止輪25を設け、」「後端に接続され、アンチバックフリップホイール26を設定」する「下部ブラケット体2」は、「接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレーム」に、
「ちょうど脇の下で人体を支え」る「左右のブラケット31」は、「前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッド」に、
「多機能歩行器」は、「歩行補助車」に、それぞれ相当する。
また、甲6発明の「背もたれチューブ12」と、本件発明1の「前記第1胴体パッドよりも少なくとも一部が上方に位置し、後方へ転倒しそうなった前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッド」とは、「前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッド」の限りで一致する。
さらに、機能及び構造から、甲6発明の「腰掛け板24」が本件発明1の「膝サポータ」に相当することを踏まえれば、甲6発明の「脚力の衰えによるトレーニングの立ち上がり時に」「膝の位置を支えることができ、腰掛け板を使用しないときには取り外すこともでき」る「腰掛け板24」と、本件発明1の「前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、前記補助対象者の折り曲げた膝に接触して当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータ」とは、「前記補助対象者の折り曲げた膝に接触する膝サポータ」の限りで一致する。
また、甲6発明の「腰掛け板24よりも下方に位置する」「固定ロッド」と、本件発明1の「前記膝サポータよりも下方に位置し、前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド」とは、「前記膝サポータよりも下方に位置する部材」の限りで一致する。
そうすると、両者は、
「歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレストと、前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部と、を有する上部フレームと、
上下方向に延びる接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレームと、
前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッドと、
前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッドと、
前記補助対象者の折り曲げた膝に接触する膝サポータと、
前記膝サポータよりも下方に位置する部材と、
を備える、歩行補助車。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点7]
「上下方向に延びる接続部」が、本件発明1は、「前記補助対象者の前方において」位置するのに対し、甲6発明は、そのように特定されていない点。
[相違点8]
「前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッド」が、本件発明1は、「前記第1胴体パッドよりも少なくとも一部が上方に位置し、後方へ転倒しそうなった前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な」ものであるのに対し、甲6発明は、そのように特定されていない点。
[相違点9]
「前記補助対象者の折り曲げた膝に接触する膝サポータ」が、本件発明1は、「前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、」「当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する」ものであるのに対し、甲6発明は、「脚力の衰えによるトレーニングの立ち上がり時に」「膝の位置を支えることができ、腰掛け板を使用しないときには取り外すこともでき」るものである点。
[相違点10]
「前記膝サポータよりも下方に位置する部材」が、本件発明1は、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド」であるのに対し、甲6発明は、「固定ロッド」である点。
[相違点11]
本件発明1は、「前記膝サポータが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第1曲面を有」するのに対し、甲6発明は、そのように特定されていない点。
[相違点12]
本件発明1は、「前記車体下侵入禁止ガイドが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第2曲面を有」するのに対し、甲6発明は、そのように特定されていない点。
[相違点13]
本件発明1は、「前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい」のに対し、甲6発明は、そのように特定されていない点。
(2) 相違点についての検討
ア 相違点10
事案に鑑み、まず、上記相違点10について検討する。
(ア) 甲6発明
甲6発明の「前記膝サポータよりも下方に位置する部材」である「固定ロッド」について、甲6の段落0042には「足乗せ棒27と固定ロッドとで足乗せ部を構成し、使用者が腰掛板に腰掛けたとき、使用者は足乗せ部に足を乗せることができる。」との記載はあるが、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する」旨の記載や示唆はない。
また、「固定ロッド」について、甲6の図1、5からその配置を推認すると、側面視において、図5の位置に配置された腰掛け板24の下端が存在すると思われる位置に比べ、固定ロッドが存在する位置は、相当程度前方にある。そうすると、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合に」、補助対象者の下腿が、仮に腰掛け板24に接触したとしても、その後、さらに固定ロッドにも接触するのかは不明である。
よって、甲6発明の「固定ロッド」は、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する」ものであるということはできない。
(イ) 甲2~4、7に記載された事項
甲2~4、7のいずれにも、「前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド」は開示されていない。
(ウ) 相違点10の判断
したがって、甲6発明において、上記相違点10に係る本件発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
イ 相違点11~13
上記相違点11~13について検討する。
(ア) 甲6発明
甲6の図5から、「腰掛け板24」は、上面視で後方に突出する曲面を有することは看取できるが、側面視で後方に突出する曲面を有することは記載されていない。また、甲6の明細書及び他の図にも、記載も示唆もされていない。
さらに、「固定ロッド」の断面形状が円形なのか角形なのか、又は板材なのか等、明細書に開示されておらず、図から看取することもできない。
よって、甲6発明が「前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい」ものであるということはできず、当業者が適宜決定すべき設計的事項ということもできない。
(イ) 甲2~4、7に記載された事項
甲2~4、7のいずれにも、「前記膝サポータが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第1曲面を有し、前記車体下侵入禁止ガイドが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第2曲面を有し、前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい」ものは開示されていない。
(ウ) 相違点11~13の判断
したがって、甲6発明において、上記相違点11~13に係る本件発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(3) 小括
上記(2)のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明、及び甲2~4、7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 本件発明2
本件発明2は、本件発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記(3)で述べた理由と同じ理由で、本件発明2は、甲6に記載された発明、及び甲2~4、7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700960