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特許異議申立

2025-701050

入浴装置

審判番号
2025-701050
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-012800
登録番号
7672829
請求日
2025年11月07日
審決日
2026年04月01日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】酒井医療株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人 佐野特許事務所
  • 【異議申立人】オージー技研 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 中屋 裕一郎
  • 審判官 小川 恭司
  • 審判官 岩瀬 昌治
分類
P1651.121-Y (A61H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7672829号発明「入浴装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7672829号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7672829号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和3年1月29日に出願され、令和7年4月25日にその特許権の設定登録がされ、令和7年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年11月7日に特許異議申立人オージー技研株式会社(代表者:奥田宏)(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7672829号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 入浴スペースを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車椅子が進入可能な入浴装置であって、 前記入浴スペースを囲み、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備えるドームと、 前記ドーム内に配置され、前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する下部ノズルと、 を備え、 前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、 前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の前記前側への進入を防ぐストッパーを更に備え、 前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部の前記前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた状態において、 前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され、 前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入り、 前記下部ノズルは、その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する入浴装置。 【請求項2】 前記下部ノズルに供給する液体の量を調整するバルブを備える請求項1に記載の入浴装置。 【請求項3】 前記下部ノズルは、前記ストッパーよりも前記後側に配置されている請求項1又は2に記載の入浴装置。 【請求項4】 前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部の前記前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた状態において、前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部に対して、前記下部ノズルの中心軸が垂直となる角度で傾いている請求項1乃至3の何れか1項に記載の入浴装置。 【請求項5】 前記下部ノズルを第1下部ノズルとした場合に、前記第1下部ノズルよりも前記前側に配置される第2下部ノズルを更に備える請求項1乃至4の何れか1項に記載の入浴装置。 【請求項6】 前記第2下部ノズルは、前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部がチルトされた状態で、前記肛門想定位置が前記第2下部ノズルの前記噴射角度に基づく第2下部ノズル噴射範囲に入り、かつ、チルトされた前記座面部の前記前側の端が前記第2下部ノズル噴射範囲に入らない位置に設けられる請求項5に記載の入浴装置。 【請求項7】 前記下部ノズルの向きは調整可能、又は、固定されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の入浴装置。 【請求項8】 前記座面部がチルトする車椅子を備え、 チルトするとき、前記車椅子の座面部は、水平状態から前記前側が引き上げられる請求項1乃至7の何れか1項に記載の入浴装置。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許異議申立人が主張する申立理由 特許異議申立人は、以下に示す甲第1号証~甲第9号証(以下「甲1」等という。)を提出し、請求項1~8に係る特許は、以下の理由により、取り消されるべきものである旨を主張する。 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1~8は、甲1、甲2又は甲3の何れか1つに記載の発明と、甲4に記載された技術的事項と、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)と、ノズル配置の周知技術(甲5、甲8、甲9)に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明3~8は、甲1、甲2又は甲3の何れか1つに記載の発明と、甲4に記載された技術的事項と、甲5に記載された事項と、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)と、ノズル配置の周知技術(甲5、甲8、甲9)に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件発明1~8は、甲1、甲2又は甲3のいずれか1つに記載の発明と、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)と、甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明3~8は、甲1、甲2又は甲3のいずれか1つに記載の発明と、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)と、甲4に記載された技術的事項と、甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(進歩性) 本件発明1~8は、甲5に記載の発明と、甲4に記載された技術的事項と、シャワーバスにおけるチルト可能な車椅子の周知技術およびドームの周知技術(甲1、甲2、甲3)に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法 甲1:Viami美浴○R(当審合議体注:○の中にRの代用表記。)シャワー入浴装置製品カタログ、表紙、会社案内と目次の見開きページ、9―10ページ、裏表紙、エア・ウォーター株式会社 甲2:AMANO ALL PRODUCTS 2009、表紙、6-7ページ、70-71ページ、裏表紙、2008年12月作製、株式会社アマノ 甲3:MINATO GENERAL CATALOGUE 2003、表紙、4-5ページ、139ページ、317-320頁、裏表紙、ミナト医科学株式会社 甲4:特開2003-70871号公報 甲5:特開2004-248748号公報 甲6:特開2000-157604号公報 甲7:特開2000-197679号公報 甲8:実願昭49-39329号(実開昭50―127986号)のマイクロフィルム 甲9:特開平11-47216号公報 第4 甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明 1 甲1について (1)甲1の記載事項 ア「 [図:0001434192000001.jpg] 」(表紙) イ「 [図:0001434192000002.jpg] 」(会社案内と目次の見開きページの中央部中段) ウ「 [図:0001434192000003.jpg] 」(9ページ上中段) エ「 [図:0001434192000004.jpg] 」(9ページ下段) オ「 [図:0001434192000005.jpg] 」(10ページ上段) カ「 [図:0001434192000006.jpg] 」(10ページ中段) キ「 [図:0001434192000007.jpg] 」(10ページ下段) ク「 [図:0001434192000008.jpg] 」(裏表紙下部) (2)頒布された日について 上記(1)クの記載によれば、甲1の記載の内容は、2019年8月現在のものであって、2019年8月現在のものを、1年以上も経過してから公開することは不自然であるから、甲1は遅くとも本件特許出願前に頒布された刊行物と認める。 (3)甲1に記載された発明 甲1から、「リクライニング式シャワー入浴装置」について次のことがいえる。 ア 上記(1)エ、オから、リクライニング式シャワー入浴装置は、入浴者が入浴できる内部空間を有していることがわかる。 上記(1)カから、入浴者を座らせたキャスター付きリクライニングチェアが、内部空間の中へ移動可能であるといえる。 上記(1)カの左側の写真と中央の写真を比較すると、キャスター付きリクライニングチェアは、その座面をほぼ水平な状態と傾いた状態とに角度調整できることがわかる。 イ 上記(1)ウ、及び上記(1)エの中央と右側の写真から、装置本体は、内部空間を上部及び両横部から覆う外殻と、扉とにより形作られていることがわかる。 上記(1)カから、外殻は、入浴者を座らせたキャスター付きリクライニングチェアを内部空間の中へ移動させるための開口を有するといえる。 ウ 上記(1)エ、キから、外殻の内側の上部及び両横部にシャワーノズルが設けられていること、このシャワーノズルにより、キャスター付きリクライニングチェアに座った入浴者の身体全体を包みこむようにシャワーをかけることができるといえる。 上記ア~ウより、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「 入浴者が入浴できる内部空間を有し、前記入浴者を座らせたキャスター付きリクライニングチェアであって、座面をほぼ水平な状態と傾いた状態とに角度調整できるキャスター付きリクライニングチェアを、前記内部空間の中へ移動できるリクライニング式シャワー入浴装置であって、 前記内部空間を上部及び両横部から覆い、前記入浴者を座らせた前記キャスター付きリクライニングチェアを、前記内部空間の中へ移動させるための開口を有し、扉とともに装置本体を形作る外殻と、 前記外殻の内側の上部及び両横部に設けられ、前記キャスター付きリクライニングチェアに座った入浴者の身体全体を包みこむようにシャワーをかけることができるシャワーノズルと、 を備える、 リクライニング式シャワー入浴装置。」 2 甲2について (1)甲2の記載事項 ア「 [図:0001434192000009.jpg] 」(第6ページ下段) イ「 [図:0001434192000010.jpg] 」(第70ページ上中段) ウ「 [図:0001434192000011.jpg] 」(第70ページ下段) エ「 [図:0001434192000012.jpg] 」(第71ページ上段) オ「 [図:0001434192000013.jpg] 」(第71ページ右中段) カ「 [図:0001434192000014.jpg] 」(第71ページ左中下段) キ「 [図:0001434192000015.jpg] 」(第71ページ左下段) (2)頒布された日について 上記(1)アの記載から、甲2は、本件特許出願前に頒布された刊行物と認められる。 (3)甲2に記載された発明 甲2から、「ミストシャワーブース」について次のことがいえる。 ア 上記(1)イ、エから、ミストシャワーブーズは、入浴者を収容可能な空間を有することがわかる。 上記(1)エ、オから、シャワーチェアはキャスター付きであることわかる。上記(1)ウ、エから、入浴者を座らせたキャスター付きシャワーチェアが、入浴者を収容可能な空間の中へ移動可能であるといえる。 上記(1)オのキャスター付きシャワーチェアをチルトリクライニングさせる様子を示した写真から、キャスター付きシャワーチェアは、その座面をほぼ水平な状態と傾いた状態とに変更できるものといえる。 イ 上記(1)イ、ウ、エから、ミストシャワーブーズ本体は、入浴者を収容可能な空間を左右、上部、正面から覆う外殻と、扉とにより形作られていることがわかる。 上記(1)ウから、入浴者を収容可能な空間を左右、上部、正面から覆う外殻が、入浴者を座らせた前記キャスター付きシャワーチェアを入浴者を収容可能な空間へ移動させるための開口を有することは明らかである。 ウ 上記(1)ウ、エから、外殻の左右、上部、及び正面の内側、並びに扉の内側にシャワーノズルを備えており、このシャワーノズルにより、キャスター付きリクライニングチェアに座った入浴者に全身くまなくシャワーを当てることができるといえる。 エ 上記(1)エから、外殻の正面の内側のシャワーノズルは、キャスター付きリクライニングチェアの傾いた状態の座面とほぼ同じ高さにあり、傾いた状態の座面に向って、ほぼ水平方向にシャワーを噴射することがわかる。 上記ア~エより、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「 入浴者を収容可能な空間を有し、前記入浴者を座らせたキャスター付きシャワーチェアであって、座面をほぼ水平な状態と傾いた状態とに変更できるキャスター付きシャワーチェアを、入浴者を収容可能な空間の中へ移動できるミストシャワーブースであって、 入浴者を収容可能な空間を左右、上部及び正面から覆い、前記入浴者を座らせた前記キャスター付きシャワーチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動させるための開口を有し、扉とともにミストシャワーブース本体を形作る外殻と、 前記外殻の左右、上部、及び正面の内側、及び扉の内側に設けられ、キャスター付きシャワーチェアに座った入浴者の全身くまなくシャワーを当てることができるシャワーノズルと、 を備え、 外殻の正面の内側のシャワーノズルは、傾いた状態の座面とほぼ同じ高さにあり、傾いた状態の座面に向って、ほぼ水平方向にシャワーを噴射する、 ミストシャワーブース。」 3 甲3について (1)甲3の記載事項 ア「 [図:0001434192000016.jpg] 」(表紙) イ「 [図:0001434192000017.jpg] 」(第139ページ上段) ウ「 [図:0001434192000018.jpg] 」(第139ページ左上中段) エ「 [図:0001434192000019.jpg] 」(第139ページ中央~右中上段) オ「 [図:0001434192000020.jpg] 」(第139ページ左中下段) カ「 [図:0001434192000021.jpg] 」(第139ページ中央~右中段) キ「 [図:0001434192000022.jpg] 」(第319ページ中右上段) (2)頒布された日について 上記(1)ア及びキの記載から、甲3は、2003年4月~2004年3月末に発行されたカタログと考えることが自然であるから、遅くとも本件特許出願前に頒布された刊行物と認められる。 (3)甲3に記載された発明 甲3から、「ドリームシャワー」について次のことがいえる。 ア 上記(1)エから、ドリームシャワーは、入浴者を収容可能な空間を有することがわかる。 上記(1)エ、オ、カから、シャローチェアはキャスター付きであることわかる。 上記(1)カのシャローチェアをリクライニングさせる様子を示した写真から、シャローチェアは、リクライニングに伴い座面がほぼ水平な状態から傾いた状態に変更されるといえる。 イ 上記(1)エから、ボディ本体は、左右、上部、正面及び扉から覆う外殻と扉とにより形作られていることがわかる。 上記(1)エから、外殻、入浴者を座らせた前記キャスター付きシャローチェアを入浴者を収容可能な空間へ移動させるための開口を有することは明らかである。 ウ 上記(1)イ、ウから、シャワーノズルを備えており、このシャワーノズルにより、キャスター付きシャローチェアに座った入浴者の身体を包み込むようにシャワーを当てることができるといえる。また、そのシャワーノズルはボディの内側に設けられていることは明らかである。 上記ア~ウより、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲3発明] 「 入浴者を収容可能な空間を有し、前記入浴者を座らせたキャスター付きシャローチェアであって、リクライニングに伴い座面がほぼ水平な状態から傾いた状態に変更されるキャスター付きシャローチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動できるドリームシャワーであって、 入浴者を収容可能な空間を左右、上部及び正面から覆い、入浴者を座らせたキャスター付きシャローチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動させるための開口を有し、扉とともにボディ本体を形作る外殻と、 ボディの内側に設けられ、前記キャスター付きシャローチェアに座った入浴者の全身くまなくシャワーを当てることができるシャワーノズルと、 を備える、 ドリームシャワー。」 4 甲4について (1)甲4の記載事項 「【0007】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の入浴用椅子Aと椅子の支持部材Bを示した斜視図である。入浴用椅子Aは、座席部1と背もたれ2と肘掛け3から成り、座席部1は幅方向中央位置に前端から後方に向かいほぼ中央までV字型の切欠部11を形成し、その切欠部11の端部から座席部後端までの座席上面に局部洗浄用溝12を形成している。」 「【0010】座席部1は正面視で僅かに下方向に湾曲した形状であり、幅方向の中央を前端から後方に向かって先細りのV字型の切欠部11を形成し、座席上面の切欠端部13から座席部後端に渡って先細りでかつ次第に浅くした形状の局部洗浄用溝12を形成している。」 「【0012】図4は、本発明の入浴用椅子Aに人が座った状態を示す断面図である。この状態で座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていき水を出すと水は局部洗浄用溝12を通って座席部後端から排水される。この時の局部洗浄用溝12の前方部の水流W1の流速はシャワーノズルから噴出された時とほぼ同じ速さだが、局部洗浄用溝12の幅および深さが前方から後方に向かって徐々に小さくなっているため後方部の水流W2の流速は前方部の水流W1の流速より早くなり、かつ溝に沿って上向きに流れるため局部を効果的に洗浄することができる。背もたれ2の前面には切欠部21の上端から背もたれ2の上端に向かって逃溝22を形成して隆起した背骨の圧迫を防止する形状としている。」 「【図1】 [図:0001434192000023.jpg] 」 「【図2】 [図:0001434192000024.jpg] 」 「【図3】 [図:0001434192000025.jpg] 」 「【図4】 [図:0001434192000026.jpg] 」 (2)甲4に記載された技術的事項 ア 【0007】、【0010】、図1~3から、入浴用椅子Aは、座席部1の前端から後方に向かって切欠部11が形成され、座席上面の切欠端部13から座席部後端に渡って局部洗浄用溝12が形成されていることがわかる。 イ 【0012】、図4から、入浴用椅子Aの座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていき、座席部1の後方へ向けて水を出すことで、局部洗浄用溝12に沿って流れる水が、人の局部を洗浄することがわかる。 上記ア、イより、甲4には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲4記載の技術的事項] 「 座席部1の前端から後方に向かって切欠部11が形成され、座席上面の切欠端部13から座席部後端に渡って局部洗浄用溝12が形成された入浴用椅子Aであって、 座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていき、座席部1の後方へ向けて水を出すことで、局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する入浴用椅子A。」 5 甲5について (1)甲5の記載事項 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、入院患者、障害者(以下、被介護者という)に好適な介護用浴槽装置及び介護用洗浄装置に関する。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】 上記特許文献1記載の装置においては、浴槽施設が一番障害の重い、重度障害者が用いることを念頭に置き設計されたものであった。 それゆえ、障害の度合いの少ない者にとっては、過剰な設備ともいいうるもので、リラックスして入浴ができるものではなく、介護する側にとっても、障害の度合いに見合わない必要以上の介護を強いられる場合があった。 本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中度若しくは軽度の障害者のための入浴施装置であって、介護者の負担をより低減し、被介護者にとって、通常の浴槽に入浴するような感覚で、より快適な入浴を可能とする介護用浴槽装置を提供することにある。 さらには中度若しくは軽度の障害者のための洗浄装置であって、介護者の負担をより低減し、被介護者にとって、リラックスした状態で洗浄できる介護用洗浄装置を提供することにある。」 「【0021】 図3に示すように実施の形態2の介護用洗浄装置は、車椅子が出入り可能なように開口部が設けられたコの字状の仕切壁20が設けられている。この仕切壁20は図5を見てもわかるように、頭部側の仕切壁は低く、頭部側の仕切壁と連なる側面の仕切壁は低く、足方向部分の側面の仕切壁は高い構造になっている。 コの字状の仕切壁20の内側には下半身洗浄ノズル21、洗浄用上下動シャワー22、温風ノズル23、洗髪台24、洗髪用シャワー25、ターンテーブル26が設けられている。 【0022】 リクライニング可能な背もたれのある、着座部の中央に開口部のある専用の車椅子5に乗った被介護者は、介護者に付き添われ、コの字状の仕切壁20の内側へと搬送される。ターンテーブル26上の車止め6,7で車椅子5を固定した後、180度車椅子5を回転させ、洗髪台24側に頭が向くように配置する。 なお、ここでターンテーブル26を用いたが、開口部から後ろ向きに介護者が車椅子5を引っ張り、被介護者をコの字壁20内に搬送した後、コの字壁20の一部分に設けられた出入り自由な開口から介護者が外に出るようにしても良いし、車椅子5を後ろ向きにして、介護者が車椅子5を押すようにしても良い。いずれにしろ図3~5に示すような向きに被介護者をコの字状の仕切壁20内に配置すればよいのである。 【0023】 その後、仕切壁20の中央部の下方に設けられ、上方に向けられた下半身洗浄用ノズル21と、仕切壁20の中央部の上方に設けられ、下方向に向けられた洗浄用上下動シャワー22により、温水を噴出させて、洗浄を開始する。 ここで下半身洗浄用ノズル21は、収納可能にして、被介護者を搬入した後、所定位置に配置するようにしても良い。 前述したように専用の車椅子5の着座部の中央が開口しており、被介護者の肛門等の汚れがちな下半身部分が露出するようになっている。露出した下半身部分を中心に下半身洗浄用ノズル21から噴出された温水が供給されるようになっている。」 「【図3】 [図:0001434192000027.jpg] 」 「【図4】 [図:0001434192000028.jpg] 」 「【図5】 [図:0001434192000029.jpg] 」 (2)甲5に記載された発明 図3~5から、入浴時に被介護者が向いている方向を前方、その反対方向を後方としたとき、下半身洗浄ノズル21には、前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21があり、その前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21はともに、着座部の後方側の端部よりも前方、かつ、着座部よりも下に配置され、前方側の下半身洗浄ノズル21は上方かつ斜め後方に温水を噴出し、後方側の下半身洗浄ノズル21は上方に向けて温水を噴出する点が看て取れる。 【0021】~【0023】、上記より、甲5には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲5発明] 「 コ字状の仕切壁20の内側へと、リクライニング可能な背もたれのある、着座部の中央に開口部のある専用の車椅子5に乗った被介護者が搬送される、介護用洗浄装置であって、 コ字状の仕切壁20は、車椅子が出入り可能な開口部が設けられ、頭部側の仕切り壁と、その頭部側の仕切壁と連なる側面の仕切壁とからなり、 コ字状の仕切壁20の中央部の下方に、上方に向けられ、車椅子5の着座部の中央の開口から露出する被介護者の下半身部分を中心に噴出された温水を供給する下半身洗浄用ノズル21が設けられ、 車椅子5に乗った被介護者をコの字状の仕切壁20の開口部からコの字状の仕切壁20の内側へと搬送し、ターンテーブル26上の車止め6、7で車椅子5を固定した後、180度車椅子5を回転させ、洗髪台24側に頭が向くように被介護者を配置し、 入浴時に被介護者が向いている方向を前方、その反対方向を後方としたとき、 下半身洗浄ノズル21には、前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21があり、その前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21はともに、着座部の後方側の端部のよりも前方、かつ、着座部よりも下に配置され、 前方側の下半身洗浄ノズル21は上方かつ斜め後方に温水を噴出し、後方側の下半身洗浄ノズル21は上方に向けて温水を噴出する、介護用洗浄装置。」 6 甲6について (1)甲6の記載事項 「【0016】図1から図3に示す座位型入浴室1には、入浴者Hを運搬する入浴用車椅子12と、該入浴用車椅子12に乗せられた入浴者Hを招き入れて該入浴者Hに入浴装置本体3からの湯を供給する入浴カバー13とが備えられている。入浴カバー13は、下方が開口し、その側壁13aの後部側には、入浴用車椅子12を招き入れるための開閉自在な扉15が備えられている。さらに、その外部には、入浴装置本体3からの湯を分配供給するシャワー配管10が配設されており、該シャワー配管10には、入浴カバー13の壁部を貫通するとともに該シャワー配管10からの湯を入浴カバー13内の入浴者Hに噴射するノズル部10aが設けられている。 【0017】シャワー配管10は、入浴カバー13の両側壁13aに固定された2本の配管10b及び10cと、上壁13bに固定された1本の配管10dとからなり、これらは、前記クイック継手11の前記他方の側が取り付けられた共通配管10eに共に接続されている。ノズル部10aは、配管10b、10c、10dのそれぞれに、一定間隔をおいて複数固定されており、そのノズル出口は、入浴カバー13内の入浴者Hを向いた状態で固定されている。」 「【0019】図4に示すように、この凹み13c内には、入浴装置本体3と入浴カバー13との間の結合・分離を行う連結機構18が設けられており、該連結機構18は、スタンド5の下部5a側に固定されたループ部18aと、該ループ部18aに係合するフック部18bとを備えている。このフック部18bは、ハンドル18cの操作によりループ部18aに係合・解除できるようになっている。さらに、図1から図3に示すように、入浴カバー13の下端には、該入浴カバー13内に招かれた入浴用車椅子12の走行を規制する板形状のストッパ19が固定されている。」 【0020】図1に示すように、入浴用車椅子12は、床面F上を転動自在とされた複数のキャスター12aで支持された複数本の脚部12bと、これら脚部12bの上端に固定された着座部12cと、該着座部12cに回動自在に取り付けられた背もたれ12d及びフットレスト12eと、背もたれ12dに固定されたハンドル12fとから構成されている。この入浴用車椅子12は、床面F上を走行自在とされている。」 「【0023】次に、前記介護者は入浴者Hを入浴用車椅子12に乗せ、入浴装置本体3の近傍まで運搬する。そして入浴者Hを入浴用車椅子12に乗せたまま、扉15を開いて入浴カバー13内へと招き入れる。このとき、前記介護者は、入浴カバー13のストッパ19に入浴用車椅子12のキャスター12aが当たるのを感知することで、十分に入浴用車椅子12が入浴カバー13内に入ったことを確認する。扉15を閉め、給湯器6において湯温の調節を行った後、シャワー配管10への湯の供給を行う。すると、湯はノズル部10aから入浴者Hへと噴射され、入浴が行われる。入浴者Hを洗った後の汚水は、入浴カバー13の下方から流れ出て、図示されない排水ピットから排出される。」 「【図1】 [図:0001434192000030.jpg] 」 「【図2】 [図:0001434192000031.jpg] 」 「【図3】 [図:0001434192000032.jpg] 」 (2)甲6に記載された技術的事項 ア 上記【0020】から、入浴用車椅子12は、着座部12cと、該着座部12cに回動自在に取り付けられた背もたれ12d及びフットレスト12eと、を備えていることがわかる。 上記【0016】、【0023】から、座位型入浴室1は、入浴用車椅子12が入浴カバー13内に入るものであることがわかる。 イ 上記【0016】、【0017】から、入浴カバー13が側壁13a、上壁13bを備えることがわかる。 上記【0016】から、入浴カバー13が、側壁13aの後部側に、入浴カバー13内へ入浴用車椅子12を招き入れるための扉15を備えることがわかる。 ウ 上記【0016】、【0017】から、複数個のノズル部10aが入浴カバー13に固定された配管10b、10c、10dのそれぞれに、ノズル出口が入浴カバー13内の入浴者Hを向いた状態で固定されていることがわかる。 エ 上記【0019】から、入浴カバー13の下端には、該入浴カバー13内に招かれた入浴用車椅子12の走行を規制する板形状のストッパ19が固定されていることがわかる。 オ 上記図1、図3から、複数個のノズル部10aのうち一つが、着座部12cの下方に設けられていること、着座部12cの下方に設けられたノズル部10aは、上方に向けて湯を入浴者Hへと噴射することが看取できる。 上記ア~オより、甲6には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲6記載の技術的事項] 「 着座部12cと、該着座部12cに回動自在に取り付けられた背もたれ12d及びフットレスト12eとを備えた入浴用車椅子12が入浴カバー13内に入る座位型入浴室1であって、 入浴カバー13が、側壁13a、上壁13bを備えるとともに、側壁13aの後部側に、入浴カバー13内へ入浴用車椅子12を招き入れるための扉15を備え、 入浴カバー13に固定された配管10b、10c、10dのそれぞれに、ノズル出口が入浴カバー13内の入浴者Hを向いた状態で固定されている複数個のノズル部10aを備え、 入浴カバー13の下端には、該入浴カバー13内に招かれた入浴用車椅子12の走行を規制する板形状のストッパ19が固定され、 複数個のノズル部10aのうち一つが、着座部12cの下方に設けられ、上方に向けて湯を入浴者Hへと噴射する座位型入浴室1。」 7 甲7について (1)甲7の記載事項 「【0017】浴槽本体に設ける車止めは、車椅子の進入限を規定し、車椅子上の入浴者の安全性を向上させることができる。」 「【0020】浴槽本体10は、前面と上面とを開放する箱形に形成されている。浴槽本体10の底部は、仕切板11を介して二重底に形成されている。仕切板11は、浴槽本体10の底面を形成しており、仕切板11上には、無数の上向きの突起を有する滑り止め12が敷設されている。なお、仕切板11、滑り止め12には、連通口11a、11a…が前部、奥部に形成されており(図2、図3)、車椅子C用の車止め13、13が奥部上面に付設されている。また、浴槽本体10は、仕切板11の上方に追焚用の管路41a、41bが接続されており、仕切板11の下には、湯の給排出用の管路42aが接続されている。浴槽本体10の下部には、ブレーキ付きのキャスタ15、15…が付設されている。」 「【0031】その後、操作ユニット16の別の操作スイッチ16iを操作してポンプ42bを作動させ、貯湯タンク42の湯を浴槽本体10に導入して貯留させれば、浴槽本体10内の入浴者Pは、車椅子Cに乗ったまま入浴することができる。また、入浴者Pは、操作ユニット16の操作スイッチ16iを適切に選択操作することにより、ボイラ41による追焚き動作を実行する他、図示しないシャワや水栓等を使用することができる。ただし、ボイラ41は、浴槽本体10内の湯温を検出することにより、自動的に追焚き動作を実行してもよい。」 「【図2】 [図:0001434192000033.jpg] 」 (2)甲7に記載された技術的事項 ア 上記【0011】、【0031】から、浴槽本体10は、車椅子を走行させて車椅子のまま進入することができ、貯湯タンク42の湯を導入して貯留させることができることがわかる。 イ 上記【0017】、【0020】、図2から、車椅子C用の車止め13、13が、浴槽本体10の底面を形成する仕切板11の奥部上面に付設されていることがわかる。 上記ア、イより、甲7には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲7記載の技術的事項] 「 車椅子を走行させて車椅子のまま進入することができ、貯湯タンク42の湯を導入して貯留させる浴槽本体10であって、 車椅子C用の車止め13、13が、浴槽本体10の底面を形成する仕切板11の奥部上面に付設されている浴槽本体10。」 8 甲8について (1)甲8の記載事項 ア 「以下、その実施例を図について説明すると、(1)は前面に入浴者(例えば身体障害者)を出入りさせる開口を設け、その開口に水密扉(2)を施した筺型の浴槽で、湯水を噴流として数個のノズルから循環ポンプ(3)によつて噴出させて入浴者を自動的に洗滌する。 (4)はこの浴槽(1)の後部に底面よりも多少上方に固定された入浴者用の椅子で、その腰かけ面には入浴者がこしかけた時に陰部全域を露出される略丸孔(5)を形成している。」(明細書1ページ16行~2ページ5行) イ 「(8)は上記浴槽(1)のやや前寄り底部中央に設けられた第3噴流ノズルで、このノズルは湯水を上記丸孔(5)に向けて前方から斜め上方に噴出する。」(明細書2ページ13~15行) ウ 「第3ノズル(8)は丸孔(5)に湯水を下方前寄りから斜めに噴出して陰部全域を一度に洗滌する。」(明細書3ページ5~6行) エ 「上述の説明から明らかなように本考案による風呂装置は第1ノズルを浴槽の前部両側に設けて湯水を浴槽後部に位置する入浴者の略隣に向けて噴出させ、第2ノズルを浴槽の後部或いは背部の両側に上記第1ノズルとは異なる高さで設けて湯水を浴槽前後方向く噴出させ、第3ノズルを浴槽の底部中央の前寄りに設けて湯水を椅子のまる孔に向って噴出させたので、入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめて洗滌効果を向上させることができ、また延ばされた足や陰部も充分に洗滌できる等の効果を奏する。」(明細書3ページ7~17行) 「 [図:0001434192000034.jpg] 」 (2)甲8に記載された技術的事項 ア 上記(1)エの「入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめて洗滌効果を向上させる」との記載及び第1図から、風呂装置の浴槽(1)は、湯を貯めて使う浴槽であることがわかる。 イ 上記(1)ア、第1図から、腰かけ面に入浴者がこしかけた時に陰部全域を露出される略丸孔(5)が形成された椅子(4)が、浴槽(1)の後部に底面よりも多少上方に固定されることがわかる。 ウ 上記(1)ア~ウ、第1図から、椅子(4)にこしかけた入浴者の陰部全域に向けて、湯水を下方前寄りから斜め上方に噴出する、浴槽(1)のやや前寄り底部中央に設けられた第3噴流ノズル(8)が浴槽(1)内に設けられることがわかる。また、上記エから、第1噴流ノズル、第2噴流ノズル及び第3噴流ノズル(8)により入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめることがわかる。 上記ア~ウより、甲8には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲8記載の技術的事項] 「 湯を貯めて使う、風呂装置の浴槽(1)であって、 腰かけ面に入浴者がこしかけた時に陰部全域を露出される略丸孔(5)が形成された椅子(4)が、浴槽(1)の後部に底面よりも多少上方に固定されており、 入浴者を出入りさせる開口を設け、その開口に水密扉(2)を施した浴槽(1)と、 椅子(4)にこしかけた入浴者の陰部全域に向けて、湯水を下方前寄りから斜め上方に噴出する、浴槽(1)のやや前寄り底部中央に設けられた第3噴流ノズル(8)が浴槽(1)内に設けられ、第1噴流ノズル、第2噴流ノズル及び第3噴流ノズル(8)により入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめる浴槽(1)。」 9 甲9について (1)甲9の記載事項 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、被洗浄者(患者)をその頭部を外部に露出させて本体内に収容し、該被洗浄者の身体部に温水又は水を吹き付けて洗浄する身体洗浄装置に関し、特にそのネックピースに関するものである。」 「【0007】図1~図3において、6は身体洗浄装置、7はその本体である。本体7はFRP(繊維強化プラスチック)により形成されるもので、後面及び下面を残す上面、左右側面及び前面が閉塞された箱状に形成し、該本体7の後面側の出入口8をFRP製のドア9により開閉し、この部から車椅子に乗せた被洗浄者(患者)50を出入りさせる。上記本体7の上壁の後部側に広幅かつ平面視U形状の凹欠部11aを形成し、この凹欠部11aから被洗浄者50の頭部を露出させる。」 「【0014】上記側壁5の内壁15aに多数のノズル21を所定の間隔をおいて取付ける。このノズル21は、予め位置決めして本体7内に収容した被洗浄者50の上半身及び脚部に向けて湯を噴出する固定ノズル21a、及び適宜位置を変更させて上記被洗浄者50の陰部及び肛門部に向けて湯を噴出する可動ノズル21bからなる。上記可動ノズル21bは内壁15aから内方に突出させた可撓性のホース24の先端に取付ける。そして、前述した親管22に可橈性かつ小径の枝管(ホース)23を多数並列に接続し、その先端を上記各固定ノズル21aの基部及び可動ノズル21bのホース24の基部に接続する。」 「【0022】 【発明の効果】以上の説明から明らかな如く、本発明は、軟質のプラスチックシートにより本体の露出口よりも広面積の主体を形成するとともに、該主体の内周部に洗浄者の首部に嵌合する嵌合孔を形成し、この主体を中心部で二分し、該二分した分割片を一端部で互いに回動可能に連結するようにしたので、被洗浄者の頭部が露出する露出口を被洗浄者の首部の大きさに左右されることなく良好に閉塞することができる。しかも、被洗浄者を身体洗浄装置の本体内に収容した後に、容易に取付け・取外しすることができる。また、各分割片をそれぞれの分割部で上下に重ねてその一端側で互いに回動可能に連結したので、洗浄者の首部に嵌合する嵌合孔の大きさを容易に調節することができる。等の効果を奏する。」 「【図2】 [図:0001434192000035.jpg] 」 (2)甲9に記載された技術的事項 ア 上記【0007】、図2から、車椅子に乗せた被洗浄者50が、身体洗浄装置6に、出入りすることがわかる。 イ 上記【0007】、図2から、本体7は、後面及び下面を残す上面、左右側面及び前面が閉塞された箱状に形成し、該本体7の後面側の出入口8をFRP製のドア9により開閉することがわかる。 ウ 【0014】から、適宜位置を変更させて被洗浄者50の陰部及び肛門部に向けて湯を噴出する可動ノズル21bが、本体7の前面の内壁15aから内方に突出させた可撓性のホース24の先端に取付けられることがわかる。 エ 図2から可動ノズル21bは、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方の位置から、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出することも可能であることがわかる。 上記ア~エより、甲9には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲9記載の技術的事項] 「 車椅子が出入りする身体洗浄装置6であって、 本体7は、後面及び下面を残す上面、左右側面及び前面が閉塞された箱状に形成し、該本体7の後面側の出入口8をFRP製のドア9により開閉し、 適宜位置を変更させて被洗浄者50の陰部及び肛門部に向けて湯を噴出する可動ノズル21bが、本体7の前面の内壁15aから内方に突出させた可撓性のホース24の先端に取付けられ、 可動ノズル21bは、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方の位置から、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出することも可能である身体洗浄装置6。」 第5 当審における判断 1 甲1を主引例とする場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)後者の「入浴者が入浴できる内部空間」は、前者の「入浴スペース」に相当する。後者の「有し」は、前者の「備え」に相当する。 後者の「座面」は前者の「座面部」に相当し、後者の「ほぼ水平な状態と傾いた状態とに角度調整できる」ことは前者の「チルトした状態としない状態とを切替可能な」ことに相当する。後者の「座面をほぼ水平な状態と傾いた状態とに角度調整できるキャスター付きリクライニングチェア」又は「キャスター付きリクライニングチェア」は、前者の「チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車椅子」又は「車椅子」に相当する。 後者の「キャスター付きリクライニングチェアを、前記内部空間の中へ移動できる」ことは、前者の「車椅子が進入可能な」ことに相当し、後者の「リクライニング式シャワー入浴装置」は、前者の「入浴装置」に相当する。 (イ)後者の「前記内部空間を上部及び両横部から覆い」という事項は、前者の「前記入浴スペースを囲み」という事項に相当する。 後者の「前記入浴者を座らせた前記キャスター付きリクライニングチェアを前記内部空間の中へ移動させるための開口」又は「開口」は、前者の「前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口」又は「進入口」に相当する。後者の「有し」は、前者の「備える」に相当する。 後者の「扉とともに装置本体を形作る外殻」は、前者の「ドーム」に相当する。 (ウ)後者の「前記外殻の内側の上部及び両横部に設けられ、」は、前者の「前記ドーム内に配置され」に相当する。 後者においては、「前記入浴者を座らせた前記キャスター付きリクライニングチェア」は「開口」を介して「前記内部空間の中へ移動させ」られていることから、後者の「前記リクライニングチェアに座った入浴者の身体全体を包みこむように」という事項は、前者の「前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて」という事項に相当する。 後者の「シャワーをかけることができる」ことは、前者の「所定の噴射角度で液体を噴射する」ことに相当する。 後者の「シャワーノズル」と前者の「下部ノズル」とは、「所定のノズル」である点で一致する。 そうすると、両発明は、次の一致点で一致し、相違点1-1、1-2で相違する。 <一致点> 「入浴スペースを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車いすが進入可能な入浴装置であって、 前記入浴スペースを囲み、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備えるドームと、 前記ドーム内に配置され、前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する所定のノズルと、 を備える入浴装置。」 <相違点1-1> 本件発明1は、「前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の前記前側への進入を防ぐストッパーを更に備え、」るのに対し、甲1発明は、ストッパーを有さない点。 <相違点1-2> 「所定のノズル」に関し、本件発明1は、「所定のノズル」が「下部ノズル」であり、その「下部ノズル」の噴射態様が、前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、「前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部の前記前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた状態において、前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入り、前記下部ノズルは、その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」のに対し、甲1発明は、「所定のノズル」が、「シャワーノズル」であって、その噴射態様は明らかではない点。 イ 判断 以下、上記第3の1(1)の申立理由1、同(2)の申立理由2に分けて、上記相違点について検討する。 (ア)申立理由1について 事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。 甲4に記載された技術的事項は、「座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていき、座席部1の後方へ向けて水を出すことで、局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する」ものであるから、シャワーノズルCは予め定められた角度に固定されているものではない。また、座席上面に設けられている局部洗浄用溝12に水が流れるように、甲4の図4に示されている位置にシャワーノズルCを持っていくものであるから、シャワーノズルCは座席部よりも下に配置されるものではない。さらに、「局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する」ものであって、シャワーノズルCから噴射した液体で人の局部を直接洗浄するものではないから、シャワーノズルCの噴射範囲を、洗浄対象である、チルトされた座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入る範囲とすることや、シャワーノズルCの中心軸が肛門想定位置に向くようにする必要はない。 そうすると、甲1発明の入浴装置の外殻に予め設けられているシャワーノズルと、甲4に記載された技術的事項における座席部1の切欠部11に持っていくシャワーノズルCとは、その前提が異なっているから、甲4に記載された技術的事項を、甲1発明のシャワーノズルに適用する動機付けはない。また、仮に適用できたとしても、相違点1-2におけるシャワーノズルを配置する位置、ノズルの噴射範囲、ノズルの中心軸に関する構成は、依然として相違点として残る。 甲5発明の「前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21はともに、着座部の後方側の端部のよりも前方、かつ、着座部よりも下に配置され」るものではある。しかし、「前方側の下半身洗浄ノズル21は上方かつ斜め後方に温水を噴出」するものであるが、その噴射範囲に着座部の後方側の端は入っていない。また、後方側の下半身洗浄ノズル21は斜め後方に温水を噴出するものではない。さらに、甲5発見の車椅子5の背もたれはリクライニング可能であるが、着座部は角度が変わるものではなく、甲5には、リクライニングした着座部の後方側の端部を噴射範囲に含めることについては、記載も示唆もない。 すなわち、甲5発明の「前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21」はいずれも、本件発明1の「下部ノズル」のように、「噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端」「が入り」、かつ、「肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」ものではない。 したがって、甲1発明のシャワーノズルに、甲5発明の「前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21」の位置や噴射態様を適用したとしても、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項には至らない。 甲8に記載された技術的事項の「第3噴流ノズル(8)」は、「浴槽(1)のやや前寄り底部中央に設けられ」、「入浴者を出入りさせる開口を設け、その開口に水密扉(2)を施した浴槽(1)と、椅子(4)にこしかけた入浴者の陰部全域に向けて、湯水を下方前寄りから斜めに噴出する」ものである。 しかし、甲8に記載された技術的事項の「第3噴流ノズル(8)」は、「湯を貯めて使う、風呂装置の浴槽(1)」で用い、他の噴流ノズルとともに「入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめる」ものであり、甲1発明の「シャワーノズル」のようにシャワーのために用いるノズルではなく、ノズルとしての使用態様が異なるから、甲1発明の「シャワーノズル」に甲8に記載された技術的事項の「第3噴流ノズル(8)」の配置や湯水の噴出態様を適用する動機付けはないし、仮に適用しても、相違点1-2におけるシャワーノズルの噴射範囲、ノズルの中心軸に関する構成は、依然として相違点として残る。 甲9に記載された技術的事項の「可動ノズル21bは、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方の位置から、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出することも可能である」が、「本体7の前面の内壁15aから内方に突出させた可撓性のホース24の先端に取付けられ」るもので、その名称が指すとおり可動なものであり、常に、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方にとどまり、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出するものであるとは言えない。 さらに、甲9に記載された技術的事項の椅子は座面の角度が変わるものでもなく、甲9には、チルトした状態の座面の後側の端を噴射範囲に入れることは、甲9には記載も示唆もされていない。 すなわち、甲9に記載された技術的事項の「可動ノズル21b」は、本件発明1の「下部ノズル」のように、「前記座面部がチルトされた状態において」、「前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端」「が入り」、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」ものとはいえない。 よって、甲1発明に甲9に記載された技術的事項を適用しても、相違点1-2に係る本件発明1の構成には至らない。 また、甲5、甲8、甲9から、「前記座面部がチルトされた状態において」、「前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端」「が入り」、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」、シャワーのためのノズルが周知とはいえない。 さらに、甲6に記載された記載された技術的事項の「ノズル部10a」は、「複数個のノズル部10aのうち一つが、着座部12cの下方に設けられ、上方に向けて湯を入浴者Hへと噴射する」が、常に、着座部よりも下方にとどまり、着座部に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出するものであるとは言えないし、甲7は、本件発明1の「ストッパー」に関連する事項の証拠として提出されたものであり、ノズルに関する事項の証拠として提出されたものではない。したがって、甲5、甲8、甲9以外の申立人が提出した証拠をみても、「前記座面部がチルトされた状態において」、「前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端」「が入り」、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」、シャワーのためのノズルが周知とはいえないし、その他にかかるシャワーのためのノズルが周知技術であるといえる証拠も示されていない。 そして、甲1発明において、シャワーノズルを座面よりも下に配置した上で、そのシャワーノズルで、噴射範囲に座面の後側の端が入るようし、肛門想定位置に向けて斜め後方にシャワーをかけることが設計的事項に過ぎないと認めるにたる証拠も示されていない。 したがって、甲1発明において、甲4~9に記載された技術的事項又は発明から、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項に至ることは、当業者が容易になしたことではない。 さらに、本件発明1は、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項により、「座面部64がチルトされている(傾いている)ので、入浴者Pに噴射された液体は、座面部64の後側の端に向けて流れ、集まり、床面に落ち」、「液体、汚れが落ちる所から下部ノズルの位置を外すことができ」、「入浴者Pから洗い流された汚れがノズル2に付着しない」し、「汚れが下部ノズル24に付着しないので、衛生的に好ましい。また、下部ノズル24が汚れを噴射することもない」(本件特許明細書【0043】)という、当業者が予測し得ない効果を奏するものである。 以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲4に記載された技術的事項、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)、ノズル配置の周知技術(甲5、甲8、甲9)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。よって、甲1を主引例として、上記第3の1(1)の申立理由1により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (イ)申立理由2について 事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。 上記(ア)で検討した通り、甲4に記載された技術的事項を、甲1発明のシャワーノズルに適用する動機付けはない。また、仮に適用できたとしても、相違点1-2におけるシャワーノズルを配置する位置、ノズルの噴射範囲、ノズルの中心軸に関する構成は、依然として相違点として残る。 また、上記(ア)と同様に、本件発明1の下部ノズルのような、「前記座面部がチルトされた状態において」、「前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端」「が入り」、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」シャワーのためのノズルが周知とはいえないし、甲1発明において、シャワーノズルを座面よりも下に配置した上で、そのシャワーノズルで、噴射範囲に座面の後側の端が入るようにし、肛門想定位置に向けて斜め後方にシャワーをかけることが設計的事項に過ぎないと認めるにたる証拠も示されていない。 そして、上記(ア)と同様に、本件発明1は、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項に発明特定事項により、当業者が予測し得ない効果を奏するものである。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲4に記載された技術的事項、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、甲1を主引例として、上記第3の1(2)の申立理由2により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)イと同様に、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、、甲1を主引例として、上記第3の1(1)の申立理由1、及び同(2)の申立理由2により、本件発明2~8に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立人の主張について ア 申立理由1 上記第3の1(1)の申立理由1に関し、申立人は、相違点2として本件発明1は、「下部ノズルは、「チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され」、「その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」という構成である」こと(特許異議申立書(以下「申立書」という。)第34ページ第9~13行)をあげ、「甲第5号証、甲第8号証および甲第9号証に記載されているとおり、本件特許発明1が属する、椅子又は車椅子上の被介護者がシャワー入浴を行うための介護入浴装置の技術分野における周知技術」と主張している(申立書第35ページ第9~12行)。 しかし、上記(1)イ(ア)のとおり、甲5発明の「前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21」はいずれも、本件発明1の「下部ノズル」のように、「噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端」「が入り」、かつ、「肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」ものではない。 また、上記(1)イ(ア)のとおり、甲8に記載された技術的事項の「第3噴流ノズル(8)」は、「湯を貯めて使う、風呂装置の浴槽(1)」で用い、他の噴流ノズルとともに「入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめる」ものであり、甲1発明の「シャワーノズル」のようにシャワーのために用いるノズルではない。 そして、上記(1)イ(ア)のとおり、甲9に記載された技術的事項の「可動ノズル21b」は、常に、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方にとどまり、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出するものであるとは言えないし、チルトした状態の座面の後側の端を噴射範囲に入れることは、甲9には記載も示唆もされていない。 したがって、甲5発明、甲8及び甲9記載の技術事項から、「チルトされた前記座面部」「よりも下に配置され」、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」ことが、周知技術であるということはできない。 よって、申立人の主張は採用できない。 また、上記第3の1(1)の申立理由1に関し、申立人は、相違点3として本件発明1は、「下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入る」ことをあげ(申立書第34ページ第17~19行)、この相違点3について、「下部ノズルの噴射角度に基づく噴射範囲に、座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入ることは、甲第4号証に記載されている」と主張する(申立書第35ページ第28行~第36ページ第1行)。 しかしながら、上記(1)イ(ア)のとおり、甲4に記載された技術的事項は、座席上面に設けられている局部洗浄用溝12に水が流れるように、座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていくものであるし、「座席部1の前端から後方に向かって切欠部11が形成され、座席上面の切欠端部13から座席部後端に渡って局部洗浄用溝12が形成された」椅子を前提とするものであるから、甲4に記載された技術的事項を、甲1発明のシャワーノズルに適用する動機付けはない。また、甲4に記載された技術的事項は、「局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する」ものであって、シャワーノズルCから噴射した液体で人の局部を直接洗浄するものではないから、シャワーノズルCの噴射範囲を、洗浄対象である、チルトされた座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入る範囲とすることや、シャワーノズルCの中心軸が肛門想定位置に向くようにする必要はない。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立理由2 上記第3の1(2)の申立理由2に関し、申立人は、申立理由1と同じ相違点を上げ(申立書第45ページ第15~第46ページ第1行)、その相違点2に関し、「チルトされた座面部を備えた甲1発明の入浴装置において、甲第4号証に記載の事項に基づき、構成F,Hを得ることは当業者にとって容易である」と主張している(申立書第46ページ第28行~第47ページ第2行)。なお、構成Fとは、「前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され」であり、構成Hとは「前記下部ノズルは、その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する入浴装置」である。 しかし、上記アと同様の理由により、申立人の主張は採用できない。 2 甲2を主引例とする場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)後者の「入浴者を収容可能な空間」は、前者の「入浴スペース」に相当する。後者の「有し」は、前者の「備え」に相当する。 後者の「座面」は前者の「座面部」に相当し、後者の「ほぼ水平な状態と傾いた状態とに角度調整できる」は前者の「チルトした状態としない状態とを切替可能な」ことに相当する。後者の「キャスター付きシャワーチェア」は、前者の「車椅子」に相当する。 後者の「キャスター付きシャワーチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動できる」ことは、前者の「車椅子が進入可能な」ことに相当し、後者の「ミストシャワーブース」は、前者の「入浴装置」に相当する。 (イ)後者の「入浴者を収容可能な空間を左右、上部及び正面から覆い」は、前者の「前記入浴スペースを囲み」に相当する。後者の「前記入浴者を座らせた前記キャスター付きシャワーチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動させるための開口」又は「開口」は、前者の「前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口」又は「進入口」に相当する。後者の「有し」は、前者の「備える」に相当する。 後者の「扉とともにミストシャワーブース本体を形作る外殻」は、前者の「ドーム」に相当する。 (ウ)後者の「前記外殻の左右、上部、正面、及び扉の内側に設けられ」は、前者の「前記ドーム内に配置され」に相当する。 後者においては、「前記入浴者を座らせた前記キャスター付きシャワーチェアを」、「開口」を介して、「入浴者を収容可能な空間へ移動させ」ていることから、後者の「キャスター付きシャワーチェアに座った入浴者の全身くまなくシャワーを当てることができる」という事項は、前者の「前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する」という事項に相当する。 後者の「シャワーノズル」と前者の「下部ノズル」とは、「所定のノズル」である点で一致する。 そうすると、両発明は、次の一致点で一致し、相違点2-1、2-2で相違する。 <一致点> 「入浴スペースを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車いすが進入可能な入浴装置であって、 前記入浴スペースを囲み、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備えるドームと、 前記ドーム内に配置され、前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する所定のノズルと、 を備える入浴装置。」 <相違点2-1> 本件発明1は、「前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の前記前側への進入を防ぐストッパーを更に備え、」るのに対し、甲2発明は、ストッパーを有さない点。 <相違点2-2> 「所定のノズル」に関し、本件発明1は、「所定のノズル」が「下部ノズル」であり、前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、「前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部の前記前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた状態において、前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入り、前記下部ノズルは、その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」のに対し、甲2発明は、「所定のノズル」が、「外殻の正面の内側のシャワーノズルは、傾いた状態の座面とほぼ同じ高さにあり、傾いた状態の座面に向って、ほぼ水平方向にシャワーを噴射する」点。 イ 判断 以下、上記第3の1(1)の申立理由1、同(2)の申立理由2に分けて、上記相違点について検討する。 (ア)申立理由1について 事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。 相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項と、上記1(1)アの相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項とは同じである。そして、甲1発明と甲2発明とは、内部空間を覆う外殻の内側のシャワーノズルを設けたシャワー入浴装置である点で共通しているから、上記1(1)イ(ア)で論じた事項は、相違点2-2についても当てはまる。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲4に記載された技術的事項、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)、ノズル配置の周知技術(甲5、甲8、甲9)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、甲2を主引例として、上記第3の1(1)の申立理由1により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (イ)申立理由2について 事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。 上記(ア)と同様の理由で、相違点1-2に関して上記1(1)イ(イ)で論じた事項は、相違点2-2についても当てはまる。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲4に記載された技術的事項、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、甲2を主引例として、上記第3の1(2)の申立理由2により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)イと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、甲2を主引例として、上記第3の1(1)の申立理由1及び同(2)の申立理由2により、本件発明2~8に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立人の主張について ア 申立理由1 上記第3の1(1)の申立理由1に関し、「(i-1)甲第1号証の代わりに甲第2号証を用いる場合」として、「申立ての理由1における「(a)本件特許発明1について」~「(c)本件特許発明3について」および「(e)本件特許発明5について」~「(h)本件特許発明8について」の説明において、「甲第1号証」、「甲1発明」をそれぞれ、「甲第2号証」、「甲2発明」に読み替えることで、甲第1号証の代わりに甲第2号証を用いる場合の申立ての理由1の説明とし、」と主張し(申立書第42ページ第13~18行)、そして、本件発明4については、「甲2発明と、ストッパの周知技術(甲第5号証、甲第6号証および甲第7号証)と、ノズル配置の周知技術(甲第5号証、甲第8号証および甲第9号証)と、甲第4号証と、甲第5号証により、当業者は本件特許発明4を容易に想到することができる。」と主張する(申立書第43ページ第14~17行)。 しかし、本件発明1に関して、上記1(3)アと同じ主張については、上記1(3)アと同様であるから、本件発明1に係る特許は、甲2を主引例とする申立理由1によって取り消すことはできない。 本件発明4を含め、本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本件発明2~8に係る特許は、本件発明1に係る特許と同様に、甲2を主引例として、申立理由1によって取り消すことはできない。 イ 申立理由2 上記第3の1(2)の申立理由2に関し、「(i-1)甲第1号証の代わりに甲第2号証を用いる場合」として、「申立ての理由2における「(a)本件特許発明1について」~「(h)本件特許発明8について」の説明において、「甲第1号証」、「甲1発明」をそれぞれ、「甲第2号証」、「甲2発明」に読み替えることで、甲第1号証の代わりに甲第2号証を用いる場合の申立ての理由1の説明とする。」と主張する(申立書第50ページ第23~27行)。 しかし、本件発明1~8に関して、上記1(3)イと同じ主張については、上記1(3)イと同様であるから、本件発明1~8に係る特許は、甲2を主引例とする申立理由2によって取り消すことはできない。 3 甲3を主引例とする場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 (ア)後者の「入浴者を収容可能な空間」は、前者の「入浴スペース」に相当する。後者の「有し」は、前者の「備え」に相当する。 後者の「座面」は前者の「座面部」に相当し、以下同様に、「ほぼ水平な状態から傾いた状態に変更される」という事項は「チルトした状態としない状態とを切替可能な」という事項に、「キャスター付きシャローチェア」は「車椅子」に、「キャスター付きシャローチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動できる」ことは「車椅子が進入可能な」ことに相当するから、後者の「リクライニングに伴い座面がほぼ水平な状態から傾いた状態に変更されるキャスター付きシャローチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動できる」という事項は、前者の「チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車椅子が進入可能な」という事項に相当する。 後者の「ドリームシャワー」は、前者の「入浴装置」に相当する。 (イ)後者の「入浴者を収容可能な空間を左右、上部及び正面から覆い」は、前者の「前記入浴スペースを囲み」という事項に相当する。後者の「前記入浴者を座らせた前記キャスター付きシャローチェアを、入浴者を収容可能な空間へ移動させるための開口」又は「開口」は、後者の「前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口」又は「進入口」に相当する。後者の「有し」は、前者の「備える」に相当する。 後者の「扉とともにボディ本体を形作る外殻」は、前者の「ドーム」に相当する。 (ウ)後者の「ボディの内側に設けられ」は、前者の「前記ドーム内に配置され」に相当する。 後者においては、「前記入浴者を座らせた前記キャスター付きシャローチェア」は「開口」を介して「入浴者を収容可能な空間へ移動させ」られているから、後者の「前記キャスター付きシャローチェアに座った入浴者の全身くまなく」という事項は、前者の「前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて」という事項に相当する。 後者の「シャワーを当てることができる」という事項は、前者の「所定の噴射角度で液体を噴射する」という事項に相当する。 後者の「シャワーノズル」と前者の「下部ノズル」とは、「所定のノズル」である点で一致する。 そうすると、両発明は、次の一致点で一致し、相違点3-1、3-2で相違する。 <一致点> 「入浴スペースを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車いすが進入可能な入浴装置であって、 前記入浴スペースを囲み、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備えるドームと、 前記ドーム内に配置され、前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する所定のノズルと、 を備える入浴装置。」 <相違点3-1> 本件発明1は、「前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の前記前側への進入を防ぐストッパーを更に備え、」るのに対し、甲3発明は、ストッパーを有さない点。 <相違点3-2> 「所定のノズル」に関し、本件発明1は、「所定のノズル」が「下部ノズル」であり、前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、「前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部の前記前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた状態において、前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入り、前記下部ノズルは、その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」のに対し、甲3発明は、「所定のノズル」が、「シャワーノズル」であって、その位置や噴射態様が明らかでない点。 イ 判断 以下、上記第3の1(1)の申立理由1、同(2)の申立理由2に分けて、上記相違点について検討する。 (ア)申立理由1について 事案に鑑み、まず、相違点3-2について検討する。 相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項と、上記1(1)アの相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項とは同じである。そして、甲1発明と甲3発明とは、内部空間を覆う外殻の内側のシャワーノズルを設けたシャワー入浴装置である点で共通しているから、上記1(1)イ(ア)で論じた事項は、相違点3-2についても当てはまる。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明、甲4に記載された技術的事項、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)、ノズル配置の周知技術(甲5、甲8、甲9)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、甲3を主引例として、上記第3の1(1)の申立理由1により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (イ)申立理由2について 事案に鑑み、まず、相違点3-2について検討する。 上記(ア)と同様の理由で、相違点1-2に関し、上記1(1)イ(イ)で論じた事項は、相違点3-2についても当てはまる。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明、甲4に記載された技術的事項、ストッパーの周知技術(甲5、甲6、甲7)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、甲3を主引例として、上記第3の1(2)の申立理由2により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)イと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、甲3を主引例として、上記第3の1(1)の申立理由1及び同(2)の申立理由2により、本件発明2~8に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立人の主張について ア 申立理由1 上記第3の1(1)の申立理由1に関し、「(i-2)甲第1号証の代わりに甲第3号証を用いる場合」として、「申立ての理由1における「(a)本件特許発明1について」~「(c)本件特許発明3について」および「(e)本件特許発明5について」~「(h)本件特許発明8について」の説明において、「甲第1号証」、「甲1発明」をそれぞれ、「甲第3号証」、「甲3発明」に読み替えることで、甲第1号証の代わりに甲第3号証を用いる場合の申立ての理由1の説明とし、」と主張し(申立書第44ページ第5~11行)、そして、本件発明4については、「甲3発明と、ストッパの周知技術(甲第5号証、甲第6号証および甲第7号証)と、ノズル配置の周知技術(甲第5号証、甲第8号証および甲第9号証)と、甲第4号証と、甲第5号証により、当業者は本件特許発明4を容易に想到することができる。」と主張する(申立書第45ページ第8~11行)。 しかし、本件発明1に関して、上記1(3)アと同じ主張については、上記1(3)アと同様であるから、本件発明1に係る特許は、甲3を主引例する申立理由1によって取り消すことはできない。 本件発明4を含め本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本件発明2~8に係る特許は、本件発明1に係る特許と同様に、甲3を主引例として、申立理由1によって取り消すことはできない。 イ 申立理由2 上記第3の1(2)の申立理由2に関し、「(i-2)甲第1号証の代わりに甲第3号証を用いる場合」として、「申立ての理由2における「(a)本件特許発明1について」~「(h)本件特許発明8について」の説明において、「甲第1号証」、「甲1発明」をそれぞれ、「甲第3号証」、「甲3発明」に読み替えることで、甲第1号証の代わりに甲第3号証を用いる場合の申立ての理由1の説明とする。」と主張する(申立書第51ページ第1~6行)。 しかし、本件発明1~8に関して、上記1(3)イと同じ主張については、上記1(3)イと同様であるから、本件発明1~8に係る特許は、甲3を主引例とする申立理由2によって取り消すことはできない。 4 甲5を主引例とする場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明とを対比する。 (ア)後者の「コ字状の仕切壁20の内側」は、前者の「入浴スペース」に相当する。 後者の「着座部」は、前者の「座面部」に相当する。後者の「着座部の中央に開口部のある専用の車椅子5」は、前者の「座面部を有する車椅子」に相当する。 後者の「コ字状の仕切壁20の内側へと」「専用の車椅子5に乗った被介護者が搬送される」ことは、前者の「車椅子が進入可能な」ことに相当する。 後者の「介護用洗浄装置」は前者の「入浴装置」に相当する。 (イ)後者の「車椅子が出入り可能な開口部」又は「開口部」は、前者の「前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口」又は「進入口」に相当する。後者の「設けられ」ることは、前者の「備える」ことに相当する。 後者の「コ字状の仕切壁20」は、「頭部側の仕切り壁と、その頭部側の仕切壁と連なる側面の仕切壁とからな」ることにより、その内側を覆っているから、空間を形成する構造体とみることができる。そうすると、後者の「コ字状の仕切壁20」と、前者の「ドーム」とは、「空間を形成する構造体」という限りにおいて一致し、後者の「コ字状の仕切壁20」が「車椅子が出入り可能な開口部が設けられ、頭部側の仕切り壁と、その頭部側の仕切壁と連なる側面の仕切壁とからな」ることにより、その内側を覆うことと、前者の「ドーム」が「前記入浴スペースを囲む」こととは、「空間を形成する構造体」が「前記入浴スペースを囲む」限りにおいて一致する。 (ウ)後者の「コ字状の仕切壁20の中央部の下方に」「設けられ」ることは、前者の「前記ドーム内に配置され」とは、「空間を形成する構造体内に配置され」という限りで一致する。 後者において、「被介護者」は、「開口部」を介して入ってくるから、後者の「上方に向けられ、車椅子5の着座部の中央の開口から露出する被介護者の下半身部分を中心に噴出」するという事項は、前者の「前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて」という事項に相当する。後者の「上方に向けられ」という事項は、前者の「所定の噴射角度で」という事項に相当し、後者の「温水を供給する」は前者の「液体を噴射する」に相当する。 そして、後者の「下半身洗浄用ノズル21」は、仕切壁20の中央部の「下方に設けられるから、前者の「下部ノズル」に相当する。 そうすると、両発明は、次の一致点で一致し、相違点5-1~5-4で相違する。 <一致点> 「入浴スペースを備え、座面部を有する車椅子が進入可能な入浴装置であって、 前記入浴スペースを囲み、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備える、空間を形成する構造体と、 前記空間を形成する構造体内に配置され、前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の角度で液体を噴射する下部ノズルと、 を備える入浴装置。」 <相違点5-1> 本件発明1は、車椅子の座面部が「チルトした状態としない状態とを切替可能」であるのに対し、甲5発明は、車椅子5の着座部がそのような発明特定事項を有さない点。 <相違点5-2> 「空間を形成する構造体」に関し、本件発明1は、これが「ドーム」であるのに対し、甲5発明は、「頭部側の仕切り壁と、その頭部側の仕切壁と連なる側面の仕切壁とからな」る「コ字状の仕切壁20」である点。 <相違点5-3> 本件発明1は、「前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の前記前側への進入を防ぐストッパーを更に備え」るのに対し、甲5発明は、「車椅子5に乗った被介護者をコの字状の仕切壁20の開口部からコの字状の仕切壁20内側へと搬送し」た際に、「車椅子5を固定」する「ターンテーブル26上の車止め6、7」を有する点。 <相違点5-4> 本件発明1は、前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、「前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接すると共に、前記座面部の前記前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた状態において、前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、当該後側の端の前記前側に予め定められた肛門想定位置よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置され、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入り、前記下部ノズルは、その中心軸が前記肛門想定位置に向いており、前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」のに対し、甲5発明は、「入浴時に被介護者が向いている方向を前方、その反対方向を後方としたとき」、「下半身洗浄ノズル21には、前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21があり、その前方側と後方側の2つの下半身洗浄ノズル21はともに、着座部の後方側の端部のよりも前方、かつ、着座部よりも下に配置され、 前方側の下半身洗浄ノズル21は上方かつ斜め後方に温水を噴出し、後方側の下半身洗浄ノズル21は上方に向けて温水を噴出する」点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、まず、相違点5-4について検討する。 甲5発明の前方側及び後方側の下半身洗浄ノズル21と、甲4に記載された技術的事項のシャワーノズルCとは、下半身を洗浄するノズルである点においては、一応共通する。しかし、甲4に記載された技術的事項は、「座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていき、座席部1の後方へ向けて水を出すことで、局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する」ものであるから、シャワーノズルCは予め定められた角度に固定されているものではない。また、座席上面に設けられている局部洗浄用溝12に水が流れるように、甲4の図4に示されている位置にシャワーノズルCを持っていくものであるから、シャワーノズルCは座席部よりも下に配置されるものではない。さらに、「局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する」ものであって、シャワーノズルCから噴射した液体で人の局部を直接洗浄するものではないから、シャワーノズルCの噴射範囲を、洗浄対象である、チルトされた座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入る範囲とすることや、シャワーノズルCの中心軸が肛門想定位置に向くようにする必要はない。 そうすると、甲5発明の予めコ字状の仕切壁20の中央部の下方に設けられた、前方側及び後方側の下半身洗浄ノズル21と、甲4に記載された技術的事項における座席部1の切欠部11に持っていくシャワーノズルCとは、その前提が異なっているから、甲4に記載された技術的事項を、甲5発明の下半身洗浄ノズル21に適用する動機付けはない。また、仮に甲5発明に甲4に記載された技術的事項を適用したとしても、少なくとも、相違点5-4に係る本件発明1の「前記下部ノズル」が「噴射範囲に」「チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置」を入れ、かつ、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」という発明特定事項には至らない。 申立人が提出した甲4以外の証拠をみても、甲1~3発明は座面の角度が変わるものであるが、そのシャワーノズルが、その噴射範囲に座面の後側の端、および、肛門想定位置を入れ、かつ、肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射するものとはいえない。 甲6に記載された技術的事項は、着座部12cの角度が変わるものでもないし、その「ノズル部10a」は、「複数個のノズル部10aのうち一つが、着座部12cの下方に設けられ、上方に向けて湯を入浴者Hへと噴射する」が、斜め後方かつ上方に湯を噴出するものであるとは言えない。 甲7は、本件発明1の「ストッパー」に関連する事項の証拠として提出されたものであり、ノズルに関する事項の証拠として提出されたものではない。 甲8に記載された技術的事項の「第3噴流ノズル(8)」は、「浴槽(1)のやや前寄り底部中央に設けられ」、「入浴者を出入りさせる開口を設け、その開口に水密扉(2)を施した浴槽(1)と、椅子(4)にこしかけた入浴者の陰部全域に向けて、湯水を下方前寄りから斜めに噴出する」ものであるが、「湯を貯めて使う、風呂装置の浴槽(1)」で用い、他の噴流ノズルとともに「入浴者の周囲に集中的に乱流を生ぜしめる」ものであり、洗浄したい部分にシャワーを当てるためのシャワーノズルに関するものではない。 甲9に記載された技術的事項の「可動ノズル21bは、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方の位置から、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出することも可能である」が、「本体7の前面の内壁15aから内方に突出させた可撓性のホース24の先端に取付けられ」るもので、その名称が指すとおり可動なものであり、常に、椅子の座面よりも下方、かつ、椅子に腰掛けた被洗浄者50の前方にとどまり、座面に対して、斜め後方かつ上方に湯を噴出するものであるとは言えない。さらに、甲9に記載された技術的事項の椅子は座面の角度が変わるもでもなく、甲9には、チルトした状態の座面の後側の端を噴射範囲に入れることは、甲9には記載も示唆もされていない。 したがって、申立人が提出した証拠をみても、本件発明1のように、「前記下部ノズル」のように、「噴射範囲に」「チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入」り、かつ、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」、シャワーのためのノズルが周知とはいえないし、その他にかかるシャワーのためのノズルが周知技術であるといえる証拠も示されていない。 そして、甲5発明において、着座部をチルトさせた上で、前方側又は下方側の下半身洗浄ノズル21を「噴射範囲に」「チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入」り、かつ、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」ことが設計的事項に過ぎないと認めるにたる証拠も示されていない。 したがって、甲5発明において、甲4に記載された技術的事項、並びに、甲1~3、及び甲6~9に記載された技術的事項から、相違点5-4に係る本件発明1の「前記下部ノズル」が「噴射範囲に」「チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入」れ、かつ、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」という発明特定事項に至ることは、当業者が容易になしたことではない。 さらに、本件発明1は、「前記下部ノズル」が「噴射範囲に」「チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入」れ、かつ、「前記肛門想定位置に向けて斜め後方に液体を噴射する」という発明特定事項により、「座面部64がチルトされている(傾いている)ので、入浴者Pに噴射された液体は、座面部64の後側の端に向けて流れ、集まり、床面に落ち」、「液体、汚れが落ちる所から下部ノズルの位置を外すことができ」、「入浴者Pから洗い流された汚れがノズル2に付着しない」し、「汚れが下部ノズル24に付着しないので、衛生的に好ましい。また、下部ノズル24が汚れを噴射することもない」(本件特許明細書【0043】)という、当業者が予測し得ない効果を奏するものである。 以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明、甲4に記載された技術的事項、シャワーバスにおけるチルト可能な車椅子の周知技術およびドームの周知技術(甲1、甲2、甲3)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、上記第3の1(3)の申立理由3により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)イと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記第3の1(3)の申立理由3により、本件発明2~8に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立人の主張について ・申立理由3 上記第3の1(3)の申立理由3に関し、申立人は、相違点5として、「本件特許発明1は、前記下部ノズルの前記噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた前記座面部の前記後側の端、および、前記肛門想定位置が入るのに対し、甲5発明の下半身洗浄ノズル21の噴射角度に基づく噴射範囲には、肛門想定位置が入るが、座面部の後側の端が入っていなく、座面部はチルトされていない点」をあげ(申立書第52ページ第25~29行)、この相違点5に関し、「甲5発明にシャワーバスにおけるチルト可能な車椅子の周知技術を適用する際に、甲第4号証に記載の事項に基づいて、下半身洗浄ノズル21の噴射角度に基づく噴射範囲には、チルトされた座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入るように構成することは、当業者にとって容易である」と主張する(申立書第54ページ第9~13行)。 しかしながら、上記(1)イ(イ)のとおり、甲4に記載された技術的事項は、座席上面に設けられている局部洗浄用溝12に水が流れるように、座席部1の切欠部11にシャワーノズルCを持っていくものであるし、「座席部1の前端から後方に向かって切欠部11が形成され、座席上面の切欠端部13から座席部後端に渡って局部洗浄用溝12が形成された」椅子を前提とするものであるから、甲4に記載された技術的事項を、甲5発明の下半身洗浄ノズル21に適用する動機付けはない。 また、上記(1)イ(イ)のとおり、そもそも、甲4に記載された技術的事項は、「局部洗浄用溝12に沿って流れる水が人の局部を洗浄する」ものであって、シャワーノズルCから噴射した液体で人の局部を直接洗浄するものではないから、シャワーノズルCの噴射範囲を、洗浄対象である、チルトされた座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入る範囲とすることや、シャワーノズルCの中心軸が肛門想定位置に向くようにする必要はない。つまり、甲4に記載された技術的事項は、ノズルの噴射範囲に、チルトされた座面部の後側の端、および、肛門想定位置が入るようするものとはいえない。 よって、申立人の当該主張は採用できない。 したがって、上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1~8に係る特許は、申立理由3によって、取り消すことはできない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701050

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