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特許異議申立

2021-700944

ポリアミド樹脂組成物ならびにそれからなる成形体および車載カメラ用部品

審判番号
2021-700944
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-139786
登録番号
6854032
請求日
2021年10月01日
審決日
2022年07月11日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ユニチカ株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人森本国際特許事務所
  • 【異議申立人】岩崎 勇
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 杉江 渉
  • 審判官 橋本 栄和
分類
P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項、特許法第36条第6項
データ出所
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特許第6854032号発明「ポリアミド樹脂組成物ならびにそれからなる成形体および車載カメラ用部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6854032号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6854032号の請求項1、4に係る特許に対する申立てを却下する。 特許第6854032号の請求項2~3、5~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6854032号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、令和2年8月21日を出願日(優先権主張 令和1年10月1日、令和1年10月30日)とする特許出願(特願2020-139786号)に係るものであって、令和3年3月17日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年4月7日である。)。 その後、令和3年10月1日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人である岩崎勇(以下、「申立人」という。)から、特許異議の申立てがなされたものである。 (1)特許異議の申立て以降の経緯 令和3年10月 1日 特許異議申立書 令和4年 1月 4日付け 取消理由通知書 同年 3月 4日 訂正請求書、意見書(特許権者) 同年 3月17日付け 通知書(申立人宛) なお、令和4年3月17日付け通知書に対し、申立人からの応答はなかった。 (2)証拠方法 ア 申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開2010-286544号公報 甲第2号証:特開2015-209521号公報 甲第3号証:特開2003-220667号公報 甲第4号証:特許5206933号公報 甲第5号証:特開2006-117818号公報 甲第6号証:特開2012-136620号公報 参考資料1:「RILSAN CLEAR(リルサンクリアー)物性表」と称する書面、2013年10月24日作成、同年同月25日更新(http://www.tokyozairyo.co.jp/content/200211787.pd) 第2 訂正の適否についての判断 令和4年3月4日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。 (以下、「本件訂正」という。また、設定登録時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件特許明細書等」という。以下、下線は、訂正箇所について当審で付与した。) 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「半芳香族ポリアミド(A)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。」と記載されているのを、 「半芳香族ポリアミド(A)と、非晶性ポリアミド(B)と、繊維状充填材(C)とを含有する樹脂組成物であって、 半芳香族ポリアミド(A)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有し、 非晶性ポリアミド(B)が、アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170であり、 繊維状充填材(C)が、ワラストナイトまたはガラス繊維であり、 (A)と(B)の質量比(A/B)が、90/10~70/30であり、 (C)の含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、40~100質量部であり、 温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「繊維状充填材(C)が、アミノシラン系カップリング剤により表面処理されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。」と記載されているのを、 「繊維状充填材(C)が、アミノシラン系カップリング剤により表面処理されていることを特徴とする請求項2または3に記載のポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に 「繊維状充填材(C)が、アスペクト比10~20の繊維状充填材と、アスペクト比3~6の繊維状充填材とを含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。」と記載されているのを、 「繊維状充填材(C)が、アスペクト比10~20の繊維状充填材と、アスペクト比3~6の繊維状充填材とを含有することを特徴とする請求項2、3、5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。 (6)訂正事項6 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、 「さらに、酸変性されたポリオレフィン(D)を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。」と記載されているのを、 「さらに、酸変性されたポリオレフィン(D)を含有することを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。 (7)訂正事項7 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項1~7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。」と記載されているのを、 「請求項2、3、5、6、7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。」に訂正する。 (8)一群の請求項 本件訂正前の請求項2~10は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1~10は一群の請求項である。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 判断 (1)訂正事項1、3について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は本件訂正前の請求項1を削除するものであり、訂正事項3による訂正は本件訂正前の請求項4を削除するものであるから、訂正事項1、3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項1、3による訂正は、単に特許請求の範囲を削除するものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを、訂正前の請求項1を引用しないものとするとともに、「非晶性ポリアミド(B)」について「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」と具体的に特定し、さらに、「繊維状充填材(C)」について「ワラストナイトまたはガラス繊維」であると特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同法同条同項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを、訂正前の請求項1を引用しないものとする訂正が、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 「非晶性ポリアミド(B)」について「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」と特定する訂正は、本件明細書等の段落【0024】の「飽和吸湿率が3.0質量%以下の非晶性ポリアミド(B)の市販品としては、例えば、「リルサンクリアーG850」(飽和吸湿率2.7質量%、アルケマ社製)、「リルサンクリアーG170」(飽和吸湿率2.8質量%、アルケマ社製)が挙げられる」との記載からみて、新規事項の追加に当たらない。(「リルサン」については、本件特許についての出願の優先日当時に登録されていた商標であり、「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850」及び「アルケマ社製」「リルサン(登録商標)クリアーG170」は、本件特許についての出願の優先日時に販売されていたものと解釈した。) また、「繊維状充填材(C)」について「ワラストナイトまたはガラス繊維」であると特定する訂正は、本件明細書等の段落【0027】の「本発明の樹脂組成物を構成する繊維状充填材(C)は、・・・例えば、・・・、ガラス繊維、・・・ワラストナイト・・・が挙げられる。中でも、汎用性が高いので、ガラス繊維、ワラストナイトが好ましい」との記載からみて、新規事項の追加に当たらない。そして、これらの訂正が、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (3)訂正事項4~7について ア 訂正の目的 訂正事項4~7による訂正は、上記の訂正事項1、3による訂正前の請求項1、4の削除に合わせて、引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4~7は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (2)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~7による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 本件発明 上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6854032号の特許請求の範囲の記載は、以下に示す訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10のとおりのものである(以下、請求項1~10に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 半芳香族ポリアミド(A)と、非晶性ポリアミド(B)と、繊維状充填材(C)とを含有する樹脂組成物であって、 半芳香族ポリアミド(A)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有し、 非晶性ポリアミド(B)が、アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170であり、 繊維状充填材(C)が、ワラストナイトまたはガラス繊維であり、 (A)と(B)の質量比(A/B)が、90/10~70/30であり、 (C)の含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、40~100質量部であり、 温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 【請求項3】 炭素数8以上の脂肪族ジアミンが、デカンジアミンであることを特徴とする請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 繊維状充填材(C)が、アミノシラン系カップリング剤により表面処理されていることを特徴とする請求項2または3に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項6】 繊維状充填材(C)が、アスペクト比10~20の繊維状充填材と、アスペクト比3~6の繊維状充填材とを含有することを特徴とする請求項2、3、5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項7】 さらに、酸変性されたポリオレフィン(D)を含有することを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項8】 請求項2、3、5、6、7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。 【請求項9】 成形体における繊維状充填材(C)の平均長さが50μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の成形体。 【請求項10】 請求項8または9に記載の成形体を含有する車載カメラ用部品。」 第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 取消理由通知の概要 当審が令和4年1月4日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)取消理由A(実施可能要件) 本件明細書の発明の詳細な説明は、下記「第6 当審の判断」「1 取消理由について」「(1)取消理由A(実施可能要件)について」「ア 取消理由A(実施可能要件)の概要」に記載した点で、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が本件訂正前の本件発明1~10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の本件発明1~10についての特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 2 特許異議の申立ての理由の概要 申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)申立理由1(実施可能要件、サポート要件) 本件明細書の発明の詳細な説明は、「第6 当審の判断」「2 特許異議申立書に記載された申立理由について」「(1)申立理由1(実施可能要件、サポート要件)について」「ア 申立理由1(実施可能要件、サポート要件)の概要」に記載した点で、当業者が本件訂正前の本件発明1~10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、同様の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものではない。 よって、本件訂正前の本件発明1~10についての特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(新規性) ア 本件訂正前の請求項1~5、7、8、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1~5、7、8、10に係る発明の特許は、同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(進歩性) ア 本件訂正前の請求項1~5、7~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由3-1」という)。 イ 本件訂正前の請求項1~5、7~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由3-2」という)。 ウ 本件訂正前の請求項1~5、7~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由3-3」という)。 よって、本件訂正前の請求項1~5、7~10に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項 1 本件明細書に記載された事項 本件明細書には、以下の事項が記載されている。 (本a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体、車載カメラ部品に関するものである。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、上記課題を解決するものであって、機械的特性、寸法安定性、吸湿条件下でのリフロー耐熱性に優れつつ、接着性にも優れるポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、非晶性ポリアミドと繊維状充填材とを特定量含有する半芳香族ポリアミドの樹脂組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。 ・・・ 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、機械的特性、寸法安定性、吸湿条件下でのリフロー耐熱性に優れつつ、接着性にも優れるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。 ・・・ 【0010】 本発明のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)と非晶性ポリアミド(B)と繊維状充填材(C)とを含有する。」 (本b)「【0011】 本発明の樹脂組成物を構成する半芳香族ポリアミド(A)は、芳香族ジカルボン酸成分と、脂肪族ジアミン成分とを含有する。 【0012】 半芳香族ポリアミド(A)の芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分として含有することが好ましい。本発明において、「テレフタル酸を主成分とする」とは、芳香 族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を90モル%以上含有することを意味する。芳香族ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量は、95モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を主成分として含有しない場合、得られる樹脂組成物は、吸湿条件下でのリフロー耐熱性が低くなることがある。 【0013】 芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸以外の他の芳香族ジカルボン酸を含有してもよい。他の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。 【0014】 半芳香族ポリアミド(A)の脂肪族ジアミン成分は、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分として含有することが好ましい。本発明において、「炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする」とは、脂肪族ジアミン成分が、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを90モル%以上含有することを意味する。脂肪族ジアミン成分中の、炭素数8以上の脂肪族ジアミンの含有量は、95モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の脂肪族ジアミン成分が、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分として含有しない場合、得られる樹脂組成物は、加工性が低下することがある。 炭素数8以上の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンが挙げられる、中でも、耐熱性と加工性のバランスの観点から、1、10-デカンジアミンがより好ましい。」 (本c)「【0024】 本発明の樹脂組成物を構成する非晶性ポリアミド(B)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定される融解熱量が1cal/g以下のポリアミドである。 本発明において、非晶性ポリアミド(B)は、温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が3.0質量%以下であることが好ましく、2.7質量%以下であることがより好ましい。 非晶性ポリアミド(B)の飽和吸湿率が3.0質量%を超えると、得られる成形体は、吸湿による寸法変化率が大きくなることがあり、また吸湿した状態の成形体は、リフロー温度に晒された場合、ブリスターが発生することがある。 飽和吸湿率が3.0質量%以下の非晶性ポリアミド(B)の市販品としては、例えば、「リルサンクリアーG850」(飽和吸湿率2.7質量%、アルケマ社製)、「リルサンクリアーG170」(飽和吸湿率2.8質量%、アルケマ社製)が挙げられる。非晶性ポリアミド(B)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 【0025】 非晶性ポリアミド(B)のガラス転移温度は特に限定されないが、80~200℃であることが好ましく、110~170℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が80℃未満であると、得られる樹脂組成物は、耐熱性が著しく低下する場合がある。一方、ガラス転移温度が200℃を超えると、得られる樹脂組成物は、エポキシ樹脂等の接着剤に対する接着性が低くなる場合がある。 【0026】 本発明の樹脂組成物において、半芳香族ポリアミド(A)と非晶性ポリアミド(B)の質量比(A/B)は、90/10~70/30であることが必要であり、85/15~75/25であることが好ましい。樹脂組成物は、(A)の質量比率が、(A)と(B)の合計に対して、90質量%を超えると、エポキシ樹脂等の接着剤に対する接着性が低くなる。一方、前記質量比率が70質量%未満の場合、得られる成形体は、吸湿による寸法変化率が大きくなったり、吸湿した状態の成形体は、リフロー温度に晒された場合に、ブリスターが発生する。」 (本d)「【0027】 本発明の樹脂組成物を構成する繊維状充填材(C)は、平均長さ/繊維径で定義されるアスペクト比が、3以上であることが好ましく、例えば、・・・が挙げられる。中でも、汎用性が高いので、ガラス繊維、ワラストナイトが好ましい。これらの繊維状充填材は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 繊維状充填材の表面は、半芳香族ポリアミド(A)中への分散性を高める目的で、アミノシラン系カップリング剤やエポキシ樹脂によって表面処理されていることが好ましく、中でも、機械的特性や、エポキシ樹脂等の接着剤に対する接着性を向上させる観点から、アミノシラン系カップリング剤によって表面処理されていることがより好ましい。アスペクト比が3未満の充填材を用いた場合、エポキシ樹脂等の接着剤に対する接着性が小さくなることがある。 【0028】 本発明において、繊維状充填材(C)の、成形体における平均長さは、吸湿による寸法変化の異方性が低減することから、50μm以下であることが好ましい。なお、繊維状充填材(C)の「平均長さ」とは、成形体中の500個の充填材について、各充填材の最も長い部分の長さを平均した値である。原料として用いる繊維状充填材(C)は、平均長さが特に限定されないが、成形体において平均長さが50μm以下となるものが好ましい。原料として用いる繊維状充填材(C)の平均長さの下限は、特に限定されないが、原料の取り扱いの観点から、0.1μmであることが好ましい。 樹脂組成物における繊維状充填材(C)は、アスペクトの異なる2種類の繊維状充填材(C)を含有すると、得られる成形体は、吸湿による寸法変化の異方性を小さくすること ができることから、アスペクト比が10~20の繊維状充填材(CH)と、アスペクト比が3~6の繊維状充填材(CL)とを、質量比(CH/CL)40/60~60/40で含有することが好ましい。 【0029】 本発明の樹脂組成物における繊維状充填材(C)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)と非晶性ポリアミド(B)の合計100質量部に対して、40~100質量部であることが必要であり、50~80質量部であることが好ましい。樹脂組成物は、繊維状充填材(C)の含有量が40質量部未満の場合、機械的特性が低下することに加え、エポキシ樹脂等の接着剤に対する接着性が低くなり、前記含有量が100質量部を超えると、半芳香族ポリアミド(A)や非晶性ポリアミド(B)との溶融混練が困難となり、ペレットを製造することができなくなる。 【0030】 本発明の樹脂組成物において、繊維状充填材(C)100質量部に対する非晶性ポリアミド(B)の含有量は、10~50質量部であることが好ましい。非晶性ポリアミド(B)の含有量が10質量部未満であると、樹脂組成物は、溶融粘度が高くなり、ペレットを製造することができない場合があり、非晶性ポリアミド(B)の含有量が50質量部を超えると、樹脂組成物は、機械的特性が低下する場合がある。」 (本e)「【0031】 本発明のポリアミド樹脂組成物は、曲げ弾性率が低くなり耐衝撃性が向上することから、さらに、酸変性されたポリオレフィン(D)を含有してもよい。 酸変性されたポリオレフィンとは、モノマー成分として不飽和カルボン酸をさらに含有するポリオレフィンである。不飽和カルボン酸の含有量は、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。 酸変性されたポリオレフィン(D)としては、例えば、エチレン/オレフィン系モノマー/不飽和カルボン酸共重合体、エチレン/芳香族ビニル系モノマー/ジエン系モノマー/不飽和カルボン酸共重合体が挙げられる。エチレン/オレフィン系モノマー/不飽和カルボン酸共重合体の市販品としては、例えば、「タフマーMH5020」(無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、三井化学社製)が挙げられる。また、エチレン/芳香族ビニル系モノマー/ジエン系モノマー/不飽和カルボン酸共重合体の市販品としては、「タフテックM1943」(無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SEBS)、旭化成社製)が挙げられる。 【0032】 ポリアミド樹脂組成物が、酸変性されたポリオレフィン(D)を含有する場合、酸変性されたポリオレフィン(D)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)と非晶性ポリアミド(B)の合計100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。 【0033】 本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、繊維状充填材(C)以外の他の充填材、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、結晶核剤等の添加剤を含有してもよい。 繊維状充填材(C)以外の他の充填材としては、粒子状、板状、不定形状の充填材が挙げられる。その含有量は、ポリアミド樹脂組成物において、30質量%以下であることが好ましい。ただし、粒子状の充填材を含有する場合、接着性の観点から、ポリアミド樹脂組成物における含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。 上記充填材以外の添加剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物において、2質量%以下であることが好ましい。」 (本f)「【0034】 本発明のポリアミド樹脂組成物は、温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が、2.5質量%以下であることが必要であり、2.0質量%以下であることが好ましい。樹脂組成物の飽和吸水率が2.5質量%を超えると、得られる成形体は、吸湿による寸法変化率が大きくなったり、吸湿した状態の成形体は、リフロー温度に晒された場合に、ブリスターが発生したりする。飽和吸湿率が2.0質量%以下の樹脂組成物は、飽和吸水率が3.0質量%以下の非晶性ポリアミド(B)を原料として用いることにより製造することができる。 【0035】 本発明の樹脂組成物を成形してなる、本発明の成形体は、機械的特性に優れ、曲げ強度を150MPa以上とすることができ、好ましくは、170MPa以上とすることができ、また、曲げ弾性率を5.0GPa以上とすることができ、好ましくは7.0MPa以上とすることができる。 【0036】 また、本発明の成形体は、寸法安定性に優れ、真円度を2.0%以下とすることができ、好ましくは、1.0%以下とすることができる。 【0037】 また、本発明の成形体は、リフロー耐熱性に優れ、吸湿による寸法変化率を、MD、TDともに、0.15%以下とすることができ、好ましくは、0.12%以下とすることができ、吸湿した状態の成形体は、リフロー温度に晒されても、ブリスター発生を抑制することができる。 【0038】 また、本発明の成形体は、エポキシ樹脂等の接着剤に対する接着性が大きくなり、後述する評価方法で測定される接着強度を、2.5MPa以上とすることができ、好ましくは、3.0MPa以上とすることができる。」 (本g)「【実施例】 【0043】 以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。 【0044】 A.測定方法 ・・・ 【0046】 (3)非晶性ポリアミド(B)の飽和吸湿率 非晶性ポリアミド(B)のペレットを十分に乾燥した後、ファナック社製射出成形機(α-100iA)を用いて、非晶性ポリアミド(B)のガラス転移点をTgとして、シリンダー温度(Tg+110℃)、金型温度(Tg-90℃)の条件で、肉厚1mmの60mm角の板状試験片を作製し、得られた板状試験片を温度85℃、相対湿度85%の条件下で168時間吸湿処理したのち、処理前後の質量から、下記式より算出した。 飽和吸湿率(%)=(吸湿処理後質量-吸湿処理前質量)/吸湿処理前質量×100 ・・・ 【0049】 (6)樹脂組成物の飽和吸湿率 上記(4)におけるダンベル片の作製条件と同じ条件で、幅20mm×長さ20mm×厚み2mmの板状試験片を作製した。金型は、20mm×2mmの面にフィルムゲートを有するものを用いた。 得られた板状試験片の質量を測定して、「吸湿処理前質量」とした。その後、温度85℃、相対湿度85%の条件下で板状試験片を168時間静置した後、測定した板状試験片の質量を「吸湿処理後質量」として、下記式より飽和吸湿率を測定した。 飽和吸湿率[%]=(吸湿処理後質量-吸湿処理前質量)/{吸湿処理前質量×(100-灰分[%])/100)}×100 なお、灰分は、上記方法で作製した複数個の板状試験片を削り、削り屑約2gをるつぼに入れ、電気炉にて600℃で12時間処理して求めた。 【0050】 (7)吸湿寸法変化率 上記(6)に記載の方法で作製した板状試験片の4辺の長さを測定し、MD(流動方向)、TD(MDと直交する方向)の平均値を算出し、吸湿前寸法とした。この板状試験片を(5)と同じ条件で吸湿した後、同様に板状試験片の4辺の長さを測定し、吸湿後寸法とした。下記式から吸湿寸法変化率を算出した。 吸湿寸法変化率[%]=(吸湿処理後寸法-吸湿処理前寸法)/吸湿処理前寸法×100」 (本h)「B.原料 実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。 【0055】 (1)芳香族ジカルボン酸成分 ・TPA:テレフタル酸 (2)脂肪族ジアミン成分 ・HDA:1,6-ヘキサンジアミン ・MPDA:2-メチルペンタンジアミン ・NDA:1,9-ノナンジアミン ・DDA:1,10-デカンジアミン (3)モノカルボン酸成分 ・STA:ステアリン酸 (4)重合触媒 ・SHP:次亜リン酸ナトリウム一水和物 【0056】 (5)半芳香族ポリアミド(A) ・ポリアミド10T [工程(i)] TPA粉末4560質量部、重合触媒9質量部、STA490質量部を、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したDDA4950質量部を、33質量部/分の速度で、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)にTPA粉末に添加し反応生成物を得た。原料モノマーのモル比は、DDA:TPA:STA=49.6:47.4:3.0(原料モノマーの末端基の当量比率はDDA:TPA:STA=50.4:48.1:1.5)であった。 [工程(ii)] 工程(i)で得られた反応生成物を、引き続き工程(i)で用いたリボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド10Tを得た。 【0057】 ・ポリアミド9T、ポリアミド6T 樹脂組成を表1のように変更する以外は、ポリアミド10Tを製造した場合と同様の操作をおこなって、ポリアミド9T、ポリアミド6Tを得た。 【0058】 表1に、ポリアミド10T、ポリアミド9T、ポリアミド6Tの樹脂組成およびその特性値を示す。 【0059】 【表1】 [図:0001389391000001.jpg] 【0060】 (6)脂肪族ポリアミド ・ポリアミド66:旭化成製Leona1200、温度85℃、Tm260℃ 【0061】 (7)非晶性ポリアミド(B) ・G850:アルケマ社製リルサンクリアーG850、飽和吸湿率2.7%、Tg147℃ ・G170:アルケマ社製リルサンクリアーG170、飽和吸湿率2.8%、Tg168℃ ・G21:エムスケミージャパン社製GrivoryG21、飽和吸湿率4.4%、Tg125℃ 【0062】 (8)繊維状充填材(C) ・4w10012:NYCO/巴工業社製4w10012、ワラストナイト(アミノシラン未処理品)、繊維径4.5μm×繊維長50μm、アスペクト比11 ・SH-800S:キンセイマテック社製SH-800S、ワラストナイト(アミノシラン処理品)、繊維径8μm、アスペクト比15 ・FPW-400S:キンセイマテック社製FPW-400S、ワラストナイト(アミノシラン処理品)、繊維径8μm、アスペクト比5 ・T-262H:日本電気硝子社製T-262H、ガラス繊維(アミノシラン処理品)、繊維径11μm×繊維長3mm、アスペクト比272 ・4w:イメリス社製4w、ワラストナイト(未処理品)、繊維径4.5μm×繊維長50μm、アスペクト比11 【0063】 (9)板状充填材 ・マイカ:レプコ社製S-325(アミノシラン未処理品)、平均粒径27μm、アスペクト比30 ・タルク:日本タルク社製MSZ-C(アミノシラン処理品)、平均粒径11.5μm 【0064】 (10)酸変性されたポリオレフィン(D) ・MH5020:三井化学社製タフマーMH5020、無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体 【0065】 実施例1 半芳香族ポリアミド(ポリアミド10T)80質量部と非晶性ポリアミド(G850)20質量部をドライブレンドし、混合物を得た。 上記混合物を、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)の主供給口に供給し、サイドフィーダーより繊維状充填材(4w10012)100質量部を供給し、溶融混練をおこなった。シリンダー温度は(ポリアミド10Tの融点+10℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/時間であった。その後、ストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 【0066】 実施例2~13、比較例1~12 樹脂組成を表2、3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 【0067】 比較例13 4w10012の配合量を150質量部とした以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ようとしたが、繊維状充填材の含有量が高かったため、ペレットを得ることができなかった。 【0068】 実施例1~13、比較例1~12で得られたポリアミド樹脂組成物の樹脂組成およびその特性値を表2~3に示す。 【0069】 【表2】 [図:0001389391000002.jpg] 【0070】 【表3】 [図:0001389391000003.jpg] 【0071】 実施例1~13のポリアミド樹脂組成物は飽和吸湿率が小さく、成形体は、曲げ強度、曲げ弾性率が高く、吸湿寸法変化率が小さく、吸湿した状態でリフロー温度に晒されても、ブリスターが発生しにくく、エポキシ樹脂に対する接着強度が高かった。 実施例3、7、8のポリアミド樹脂組成物を対比すると、繊維状充填材(C)として、アスペクト比が10~20の繊維状充填材と、アスペクト比が3~6の繊維状充填材とを併用した実施例7、8の方が、アスペクト比が10~20の繊維状充填材単独を用いた実施例3よりも、真円度が低く、吸湿による寸法変化の異方性が小さいことがわかる。 実施例3、10のポリアミド樹脂組成物を対比すると、アミノシラン処理をしたワラストナイトを用いた実施例3の方が、未処理のワラストナイトを用いた実施例10よりも、曲げ強度および接着強度が高いことがわかる。 実施例3、12のポリアミド樹脂組成物を対比すると、酸変性ポリオレフィンを用いた方が、曲げ弾性率が低いことがわかる。 実施例1、11のポリアミド樹脂組成物を対比すると、繊維状充填材と板状充填材を併用した実施例11の方が、真円度が低く、吸湿による寸法変化の異方性が小さいことがわかる。 【0072】 比較例1~5のポリアミド樹脂組成物は、非晶性ポリアミドを含有しないため、成形体は、接着強度が低かった。 比較例6のポリアミド樹脂組成物は、飽和吸湿率が高い非晶性ポリアミドを用いたため、成形体は、吸湿率が高くなり、吸湿による寸法変化が大きかった。 比較例7のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミドと非晶性ポリアミドの合計に対する半芳香族ポリアミドの質量比率が低かったため、成形体は、吸湿による寸法変化が大きく、吸湿した状態の成形体は、リフロー温度に晒されると、ブリスターが発生した。 比較例8のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミドとしてポリアミド6Tを用いたため、飽和吸水率が高くなり、成形体は、吸湿による寸法変化が大きく、吸湿した状態の成形体は、リフロー温度に晒されると、ブリスターが発生した。 比較例9のポリアミド樹脂組成物は、繊維状充填材を含有しないため、成形体は、曲げ強度、曲げ弾性率および接着強度が低く、また、吸湿による寸法変化が大きかった。 比較例10のポリアミド樹脂組成物は、繊維状充填材ではなく板状充填材であるタルクを用いたため、曲げ強度、曲げ弾性率および接着強度が低かった。 比較例11のポリアミド樹脂組成物は、繊維状充填材ではなく板状充填材であるマイカを用いたため、接着強度が低かった。 比較例12のポリアミド樹脂組成物は、繊維状充填材の含有量が少なかったため、曲げ強度、曲げ弾性率および接着強度が低かった。」 2 各甲号証及び参考資料に記載された事項 (1)甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 (甲1a)「【請求項1】 テレフタル酸単位を60~100モル%含有するジカルボン酸単位と1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位を60~100モル%含有するジアミン単位とを有するポリアミド(A)および繊維状強化材(B)を溶融混練してなりポリアミド(A)の含有率が50~80質量%であり繊維状強化材(B)の含有率が20~50質量%であるポリアミド組成物を成形してなるカメラモジュールのバレルまたはホルダであって、上記繊維状強化材(B)の溶融混練前における平均長さが300μm以下であるカメラモジュールのバレルまたはホルダ。 【請求項2】 前記繊維状強化材(B)がワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカーおよびミルドファイバーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のカメラモジュールのバレルまたはホルダ。 ・・・ 【請求項5】 テレフタル酸単位を60~100モル%含有するジカルボン酸単位と1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位を60~100モル%含有するジアミン単位とを有するポリアミド(A)および繊維状強化材(B)を溶融混練してなりポリアミド(A)の含有率が50~80質量%であり繊維状強化材(B)の含有率が20~50質量%である、カメラモジュールのバレルまたはホルダ成形用ポリアミド組成物であって、上記繊維状強化材(B)の溶融混練前における平均長さが300μm以下であるカメラモジュールのバレルまたはホルダ成形用ポリアミド組成物。 【請求項6】 前記繊維状強化材(B)がワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカーおよびミルドファイバーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載のカメラモジュールのバレルまたはホルダ成形用ポリアミド組成物。」 (甲1b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、テレフタル酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位を主成分とするジアミン単位とを有するポリアミドを含むポリアミド組成物を成形してなり、リフロー耐熱性に優れ、低異方性であるとともに、表面が平滑で低埃性に優れ、ポリアミド組成物が細部にまで確実に充填されていて、光遮蔽性にも優れるカメラモジュールのバレルまたはホルダ、および当該バレルまたはホルダを成形するために使用されるポリアミド組成物に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、リフロー耐熱性に優れ、低異方性であるとともに、表面が平滑で低埃性に優れ、ポリアミド組成物が細部にまで確実に充填されていて、光遮蔽性にも優れるカメラモジュールのバレルまたはホルダ、および当該バレルまたはホルダを成形するために使用されるポリアミド組成物を提供することを目的とする。 ・・・ 【発明の効果】 【0013】 本発明のカメラモジュールのバレルまたはホルダは、リフロー耐熱性に優れ、低異方性であるとともに、表面が平滑で低埃性に優れ、ポリアミド組成物が細部にまで確実に充填されていて、光遮蔽性にも優れる。」 (甲1c)「【0016】 本発明において使用されるポリアミド(A)は、テレフタル酸単位を60~100モル%含有するジカルボン酸単位と、1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位を60~100モル%含有するジアミン単位とを有する。 【0017】 ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸単位がテレフタル酸単位を60~100モル%含有することにより、得られるバレルまたはホルダの耐熱性や寸法安定性が向上する。ジカルボン酸単位におけるテレフタル酸単位の含有率は75~100モル%の範囲内であることが好ましく、90~100モル%の範囲内であることがより好ましい。 ・・・ 【0019】 ポリアミド(A)を構成するジアミン単位は、1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位を60~100モル%含有する。ジアミン単位における1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位の含有率は、75~100モル%の範囲内であることが好ましく、90~100モル%の範囲内であることがさらに好ましい。1,9-ジアミノノナン単位および/または2-メチル-1,8-ジアミノオクタン単位を上記の割合で含有するポリアミド(A)を使用すると、リフロー耐熱性、寸法安定性などの諸物性に優れるバレルやホルダが得られる。」 (甲1d)「【0034】 本発明において使用される繊維状強化材(B)は、溶融混練前における平均長さが300μm以下である。当該平均長さが300μm以下であると、得られるバレルやホルダは、低異方性、表面平滑性、低埃性、細部充填性に優れる。繊維状強化材(B)の溶融混練前における平均長さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また当該平均長さの下限値に特に制限はないが、例えば、0.1μmを挙げることができる。なお、本発明の繊維状強化材(B)の平均長さは、実施例の項目において後述する方法により測定することができる。 【0035】 上記の繊維状強化材(B)としては、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバー、カットファイバーなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカーおよびミルドファイバーからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。 【0036】 本発明のバレルまたはホルダの成形に使用されるポリアミド組成物における上記繊維状強化材(B)の含有率は、リフロー耐熱性、低異方性に優れるとともに、表面が平滑で低埃性に優れ、ポリアミド組成物が細部にまで確実に充填されていて、光遮蔽性にも優れるバレルまたはホルダが得られることから20~50質量%の範囲内であり、25~45質量%の範囲内であることが好ましい。」 (甲1e)「【0037】 本発明のバレルまたはホルダの成形に使用されるポリアミド組成物はカーボンブラックを含むことが好ましい。ポリアミド組成物におけるカーボンブラックの含有率は0.5~3.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.8~2.0質量%の範囲内であることがより好ましい。・・・ 【0038】 ポリアミド(A)および繊維状強化材(B)を溶融混練して上記のポリアミド組成物を得るに当たっては、上記した繊維状強化材(B)以外の他の充填材をさらに溶融混練してもよい。・・・ 【0039】 また上記のポリアミド組成物を得るに当たっては、靭性を改良するための変性エラストマー(無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブテン-スチレンブロック共重合体等)、脂肪族ポリアミド(PA612、PA11、PA12、PA66、PA6等)、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、シンジオタクチックポリスチレン等のポリアミド(A)以外の他種ポリマーをさらに溶融混練してもよい。得られるポリアミド組成物におけるこれらの他種ポリマーの含有率は0~30質量%の範囲内であることが好ましい。 【0040】 また上記のポリアミド組成物を得るに当たっては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の反射材をさらに溶融混練してもよい。得られるポリアミド組成物における反射材の含有率は0~20質量%の範囲内であることが好ましい。 【0041】 さらに上記のポリアミド組成物を得るに当たっては、着色剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸やこれらのエステル等の熱安定剤;ヒンダードフェノール系、チオ系、リン系、ヒンダードアミン系等の酸化防止剤;帯電防止剤;結晶核剤;可塑剤;ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸エステル等のワックス類;シリコーンオイル等の離型剤;滑剤などの他の成分をさらに溶融混練することもできる。得られるポリアミド組成物における他の成分の含有率は0~1質量%であることが好ましい。」 (甲1f)「【実施例】 【0045】 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 ・・・ 【0048】 寸法異方性 以下の実施例または比較例で得られたポリアミド組成物のペレットを用いて、使用したポリアミドの融点より10℃高い温度で射出成形(射出速度50mm/s、保圧300kg/cm2、金型温度140℃、金型:厚み1mm、幅40mm、長さ100mmの直方体状の空間部を有し、一方の1mm×40mmの面にゲートを有する金型)して平板を得た。射出方向をMD、平板表面に平行かつ射出方向と垂直の方向をTDとし、以下の式により成形収縮率の寸法異方性を測定した。 成形収縮率(%)=(金型寸法-成形品寸法)×100/(金型寸法) 寸法異方性=(TDの成形収縮率)/(MDの成形収縮率) ・・・ 【0052】 実施例および比較例では、下記のものを使用した。 〔ポリアミド〕 PA9T-1: テレフタル酸4819.4g(29.01モル)、1,9-ジアミノノナンと2-メチル-1,8-ジアミノオクタンの混合物〔前者/後者=70/30(モル比)〕4772.4g(30.15モル)、安息香酸241.8g(1.98モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物9.8gおよび蒸留水2.5リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ窒素置換した。この混合物を100℃で30分間攪拌し、2時間かけてオートクレーブ内部の温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブ内部の圧力は2MPaまで昇圧した。そのまま2時間反応を続けた後、230℃に昇温し、次いで2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次に、30分間かけて圧力を1MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、極限粘度[η]が0.14dl/gのプレポリマーを得た。これを100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の粒径になるまで粉砕した。これを、230℃、13Pa(0.1mmHg)にて10時間固相重合し、融点が306℃、極限粘度[η]が0.78dl/gである白色のポリアミド(PA9T-1)を得た。 【0053】 PA9T-2: テレフタル酸4819.4g(29.01モル)に代えてテレフタル酸4871.8g(29.33モル)、安息香酸241.8g(1.98モル)に代えて安息香酸164.9g(1.35モル)を使用したこと以外は、上記PA9T-1の製造と同様にして、融点が306℃、極限粘度[η]が0.93dl/gである白色のポリアミド(PA9T-2)を得た。 【0054】 PA9T-3: テレフタル酸4819.4g(29.01モル)に代えてテレフタル酸4921.6g(29.62モル)、安息香酸241.8g(1.98モル)に代えて安息香酸91.6g(0.75モル)を使用したこと以外は、上記PA9T-1の製造と同様にして、融点が306℃、極限粘度[η]が1.2dl/gである白色のポリアミド(PA9T-3)を得た。 【0055】 〔繊維状強化材〕 強化材-1: キンセイマテック株式会社製ワラストナイト「SH1250」(平均長さ0.07mm) 強化材-2: 大塚化学株式会社製チタン酸カリウムウィスカー「ティスモD」(平均長さ0.02mm) 強化材-3: セントラル硝子株式会社製ミルドファイバー(平均長さ0.1mm) 強化材-4: 日東紡績株式会社製ガラス繊維「CS-3G-225」(平均長さ3mm) 【0056】 〔カーボンブラック〕 カーボンブラック: 三菱化学株式会社製「#980B」 【0057】 〔他の成分〕 酸化防止剤: 住友化学株式会社製「スミライザー GA-80」 離型剤: 三井化学株式会社製「HI-WAX200P」 【0058】 [実施例1~7および比較例1] 表1に示す割合で、プラスチック工学研究所製二軸押出機(スクリュー径32mmφ、L/D=30、回転数150rpm、吐出量10kg/h)に繊維状強化材以外の成分を最上流部のホッパーより供給し、繊維状強化材をサイドフィーダーより供給して、溶融混練した。溶融混練されたポリアミド組成物をストランド状に押出し、冷却後切断して、ポリアミド組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法で寸法異方性、表面平滑性、流動性および光透過性を評価した。結果を表1に示した。 【0059】 【表1】 [図:0001389391000004.jpg] 」 (2)甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 (甲2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミンおよび1,12-ドデカンジアミンからなる群から選ばれた1種以上のジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とから構成される半芳香族ポリアミド(A)と、強化材(B)とを、(A)/(B)=40/60~80/20の質量比率で含有するポリアミド樹脂組成物からなる車載カメラ用部品。 【請求項2】 強化材(B)の平均長さが250μm以下であることを特徴とする請求項1記載の車載カメラ用部品。 【請求項3】 半芳香族ポリアミド(A)のジアミン成分が、1,10-デカンジアミンであることを特徴とする請求項1または2記載の車載カメラ用部品。 【請求項4】 ハウジング、ホルダーまたは鏡筒であることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の車載カメラ用部品。 【請求項5】 テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミンおよび1,12-ドデカンジアミンの群から選ばれた1種以上のジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド(A)と強化材(B)とを(A)/(B)=40/60~80/20の質量比率で含有し、樹脂組成物中の(B)の平均長さが250μm以下であることを特徴とする車載カメラ用部品用樹脂組成物。 【請求項6】 半芳香族ポリアミド(A)のジアミン成分が、1,10-デカンジアミンであることを特徴とする請求項5記載の車載カメラ用部品用樹脂組成物。」 (甲2b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、車載カメラ用部品に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、車両の走行安全性を高めるために、車載カメラを設置することが多くなっている。車載カメラ用部品には、車に設置するという特性上、夏場の高温環境下でも変形しない耐熱性や寸法安定性、バッテリー液である15質量%硫酸に溶解しない耐薬品性、高圧洗浄に対応できる高剛性や低吸水性が求められている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性に優れ、また、高剛性、低吸水性であり、さらに、吸水した状態でリフロー処理した場合であっても外観が損なわれない車載カメラ用部品を提供することを目的とする。 ・・・ 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性に優れ、また、高剛性、低吸水性であり、さらに、吸水した状態でリフロー処理した場合であっても外観が損なわれない車載カメラ用部品を提供することができる。」 (甲2c)「【0011】 本発明の車載カメラ用部品に用いられる樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)および強化材(B)から構成される。 【0012】 半芳香族ポリアミド(A)は、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分から構成される。 【0013】 芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分として含む必要がある。テレフタル酸の含有量は、芳香族ジカルボン酸成分において、95モル%以上とすることが好ましく、100モル%とすることが好ましい。 【0014】 脂肪族ジアミン成分は、炭素数が8~12かつ偶数である直鎖状脂肪族ジアミン、すなわち、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミンおよび1,12-ドデカンジアミンの群から選ばれた1種以上のジアミン(以下、「特定ジアミン」と略称する。)を主成分として含む必要がある。中でも、融点と耐熱性のバランスの観点から、脂肪族ジアミン成分としては1、10-デカンジアミンを用いることが好ましい。炭素数が8未満の脂肪族ジアミンの場合、得られる半芳香族ポリアミドの融点が340℃を超え、アミド結合の分解温度を上回る場合があるので好ましくない。一方、ジアミンの炭素数が12を超える場合、得られる半芳香族ポリアミドの耐熱性が低下し、リフロー工程に適さない場合があるので好ましくない。また、脂肪族ジアミンの炭素数が奇数の場合や脂肪族ジアミンが分岐状の場合、得られる半芳香族ポリアミドの耐リフロー性が低下する場合があるので好ましくない。脂肪族ジアミン成分において、特定ジアミンを95モル%以上含むことが好ましく、100モル%とすることが好ましい。なお、この場合の含有量は、特定ジアミンのうち、最も多い含有量のものを指し、それ以外のものは、後述する他の脂肪族ジアミンとして計算するものとする。 【0015】 テレフタル酸や特定ジアミンは、化学構造が対称であるため、これらのモノマーを用いることにより、結晶性や耐熱性が向上し、剛性や吸水率、耐リフロー性を向上させることができる。」 (甲2d)「【0025】 強化材(B)としては、繊維状強化材、板状強化材、球状強化材が挙げられる。繊維状強化材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維(ステンレス繊維、酸化アルミニウム繊維など)、セラミック繊維、ボロンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、アスベスト、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、針状酸化チタン、セピオライト、ゾノトライト、ミルドファイバー、カットファイバーが挙げられる。板状強化材としては、例えば、ガラスフレーク、タルク、マイカ、グラファイト、金属箔が挙げられる。球状強化材としては、例えば、カーボンブラック、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ハイドロタルサイト、溶融シリカ、ガラス類(ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドガラスファイバー)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなど)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)が挙げられる。中でも、成形加工時に、端部までしっかりと充填されつつ、薄肉にもかかわらず剛性を示すので、タルク、溶融シリカビーズ、ウォラストナイト、酸化チタンウィスカが好ましい。これらの強化材は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。強化材の表面は、芳香族ポリアミド(A)中への分散性を高める目的で、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の高分子または低分子の化合物によって表面処理されていることが好ましい。 【0026】 半芳香族ポリアミド(A)と強化材(B)の含有比率は、(A)/(B)=40/60~80/20(質量比率)とすることが必要であり、50/50~70/30とすることが好ましい。(A)の含有比率が、(A)および(B)の合計100質量部に対し、40質量部未満の場合、ペレットを製造することができないので好ましくない。一方、(A)の含有比率が80質量部を超える場合、機械的強度や剛性や寸法安定性が低下するので好ましくない。」 (甲2e)「【0028】 本発明の車載カメラ用部品に用いる樹脂組成物においては、強化材(B)以外の他の充填材、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、結晶核剤等の添加剤を用いてもよい。添加剤の含有量は、樹脂組成物において、1質量%以下とすることが好ましい。 【0029】 他の充填材としては、例えば、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、アスベスト、二硫化モリブデン、フェノール樹脂粒子、架橋スチレン系樹脂粒子、架橋アクリル系樹脂粒子が挙げられる。他の充填材は、粉末状、クロス状等どのような形態であってもよい。他の充填材の表面は、半芳香族ポリアミド(A)中への分散性を高める目的で、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の高分子または低分子の化合物によって表面処理されていることが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系が挙げられる。熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸やこれらのエステル、銅系化合物、多価アルコールやこれらのエステルが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、チオ系、リン系、ヒンダードアミン系が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸エステル等のワックス類が挙げられる。離型剤としては、例えば、シリコーンオイルが挙げられる。これらは、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。」 (甲2f)「【実施例】 【0033】 以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。 ・・・ 【0039】 (6)吸水率 (5)で得られた板状試験片を、23℃の条件で蒸留水に24時間浸漬し、表面の水分をふき取った後、三菱化学社製カールフィシャー水分計を用いて、150℃の気化条件にて、吸水率を測定した。 ・・・ 【0041】 (8)ブリスターの数(リフロー処理後)、異方リフロー収縮比 得られた樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、ファナック社製射出成形機(α-100iA)を用いて、シリンダー温度(Tm+15℃)、金型温度(Tm-190℃)の条件で、幅20mm×長さ20mm×厚み0.5mmの平板を作製した。金型は、20mm×0.5mmの面にフィルムゲートを有するものを用いた。 得られた平板を85℃×85%RHにて168時間静置した。 その後、赤外線加熱式のリフロー炉中、150℃で1分間加熱した後、100℃/分の速度で265℃まで昇温して10秒間保持する処理した。 上記リフロー処理後、目視でブリスターの数を数えた。 また、射出方向をMD、平板表面に平行かつ射出方向と垂直の方向をTDとして、上記リフロー処理前後の成形品寸法から、MD、TDそれぞれの寸法変化率を求め、以下の式により、異方寸法変化率比を求めた。 異方寸法変化率比=(TDの寸法変化率)/(MDの寸法変化率) ・・・ 【0043】 2.原料 実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。 【0044】 (1)ジカルボン酸成分 ・TPA:テレフタル酸 【0045】 (2)ジアミン成分 ・ODA:1,8-オクタンジアミン ・NDA:1,9-ノナンジアミン ・DA:1,10-デカンジアミン ・DDA:1,12-ドデカンジアミン 【0046】 (3)モノカルボン酸成分 ・STA:ステアリン酸 【0047】 (4)重合触媒 ・SHP:次亜リン酸ナトリウム一水和物 【0048】 (5)強化材 ・B-1:ガラス繊維(日本電気硝子社製T-249H、繊維径10.5μm×繊維長3μm) ・B-2:ウォラストナイト(NYCO/巴工業社製NYAD 5000、繊維径3μm×繊維長9μm) ・B-3:タルク(日本タルク社製P-3、平均粒径5μm) 【0049】 (6)熱可塑性樹脂 ・半芳香族ポリアミド(A-1) [工程(i)] ジカルボン成分としてTPA粉末4560質量部、重合触媒としてSHP9質量部、末端封鎖剤としてのSTA490質量部を、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したDA4950質量部を、33質量部/分の速度で、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)にTPA粉末に添加し反応物を得た。原料モノマーのモル比は、DA:TPA:STA=49.6:47.4:3.0(原料モノマーの末端基の当量比率はDA:TPA:STA=50.4:48.1:1.5)であった。 [工程(ii)] 工程(i)で得られた反応物を、引き続き工程(i)で用いたリボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合し半芳香族ポリアミド(A-1)を得た。 【0050】 ・半芳香族ポリアミド(A-2)~(A-4) 樹脂組成を表1のように変更する以外は、半芳香族ポリアミド(A-1)を製造した場合と同様の操作をおこなって、半芳香族ポリアミドを得た。 【0051】 表1に、半芳香族ポリアミド(A-1)~(A-4)の樹脂組成およびその特性値を示す。 【0052】 【表1】 [図:0001389391000005.jpg] 【0053】 脂肪族ポリアミド(A-5) ・ポリアミド66:ユニチカ社製A125J、融点265℃ 【0054】 脂肪族ポリアミド(A-6) ・ポリアミド6:ユニチカ社製A1030BRL、融点225℃ 【0055】 ポリカーボネート(A-7) ・三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロン S-2000、ガラス転移点150℃ 【0056】 実施例1 半芳香族ポリアミド(A-1)80質量部を、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)の主供給口に供給し、サイドフィーダーより強化材(B-1)20質量部を供給し溶融混練をおこなった。なお、強化材はサイドフィーダーから供給した。シリンダー温度は(用いた半芳香族ポリアミドの融点+10℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/時間であった。その後、ストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 【0057】 実施例2~7、比較例1~3、5、6 樹脂組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1のポリアミド樹脂組成物を製造した場合と同様の操作をおこなって、ペレットを得た。 【0058】 比較例4 半芳香族ポリアミド(A-1)の含有量を30質量部、強化材(B-1)の含有量を70質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ようとしたが、強化材の含有量が高かったため、ペレットを得ることができなかった。 【0059】 比較例7 半芳香族ポリアミドの代わりにポリカーボネート(A-7)を用いて、シリンダー温度を250℃にする以外は、実施例1と同様の操作をおこなってペレットを得た。 【0060】 実施例1~7、比較例1~3、5~7で得られたポリアミド樹脂組成物の樹脂組成およびその特性値を表2に示す。 【0061】 【表2】 [図:0001389391000006.jpg] 【0062】 実施例1~7は、引張強度、引張弾性率、荷重たわみ温度がいずれも高く、成形収縮率、吸水率が低く、耐薬品性や耐リフロー性にも優れていた。 実施例6、7は、強化材の平均長さが短かったため、成形収縮率、異方寸法変化率比のいずれもが小さかった。 【0063】 比較例1は、熱可塑性樹脂にポリアミド9Tを用いたため、リフロー処理後にブリスターが発生し、異方寸法変化率比が大きかった。 比較例2は、熱可塑性樹脂にポリアミド66を用いたため、吸水率が高く、耐薬品性が不良であった。また、リフロー処理後にブリスターが発生し、異方寸法変化率比が大きかった。 比較例3は、熱可塑性樹脂にポリアミド6を用いたため、吸水率が高く、耐薬品性が不良で、リフロー処理後、ブリスターが発生し、異方寸法変化率が測定できないほど試験片が変形していた。 比較例4は、強化材を用いなかったため、引張強度、引張弾性率、荷重たわみ温度が低く、成形収縮率が大きかった。また、リフロー処理後、ブリスターが発生し、異方寸法変化率比が大きかった。 比較例6は、半芳香族ポリアミドおよび強化材の合計に対する強化材の含有量が低かったため、引張強度、引張弾性率が低く、成形収縮率が大きかった。また、リフロー処理後、ブリスターが発生し、異方寸法変化率比が大きかった。 比較例7は、熱可塑性樹脂にポリカーボネートを用いたため、荷重たわみ温度が低かった。また、リフロー処理後、ブリスターが発生し、異方寸法変化率が測定できないほど試験片が変形していた。」 (3)甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 (甲3a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリアセタール系樹脂からなるポリアセタール系樹脂成形体と他の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂成形体とが接着した複合成形体であって、前記ポリアセタール系樹脂成形体は、ポリアセタール系樹脂100重量部に対して、ポリエーテルエステルアミド樹脂又は融点もしくは軟化点が165℃以下のポリアミド樹脂を0.1~20重量部含有し、且つ前記ポリアセタール系樹脂成形体における前記熱可塑性樹脂成形体との接着面が表面処理されていることを特徴とする複合成形体。 ・・・ 【請求項8】 前記熱可塑性樹脂成形体が、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系樹脂を少なくとも含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の複合成形体。 ・・・」 (甲3b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアセタール系樹脂成形体と熱可塑性樹脂成形体とが接着した、機能的で、機械的特性及び耐熱性等の性能に優れる有用な複合成形体及びその製造方法に関する。 ・・・ 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ポリアセタール系樹脂成形体と他の熱可塑性樹脂からなる成形体とが高い密着力で接着した複合成形体、及び該複合成形体を容易に製造可能な製造方法を提供することにある。本発明の他の課題は、ポリアセタール系樹脂の優れた特性(例えば、機械的強度、耐薬品性、耐熱性など)を損なうことなく、他の熱可塑性樹脂と複合化した複合成形体及び該複合成形体を容易に製造可能な製造方法を提供することにある。本発明の更に他の課題は、成形加工性の高い汎用的な複合成形体及び該成形体を容易に製造可能な製造方法を提供することにある。」 (甲3c)「【0023】本発明に用いられる融点もしくは軟化点が165℃以下のポリアミド樹脂は、上記(1)~(3)のアミド樹脂のアミド単位形成モノマーとして例示したものを2種類以上併用することにより、容易に得ることができる。これらの中で好ましいものはPA6/12共重合体、PA66/12共重合体、PA6/66/610共重合体、PA6/66/12共重合体、PA6/66/610/12共重合体、及び主として重合脂肪酸とジアミンとの反応よって得られるダイマー酸ポリアミド樹脂であり、特に好ましいのは、ダイマー酸ポリアミド樹脂である。ダイマー酸ポリアミド樹脂は、一般的にホットメルト接着剤として用いられることからもわかるように、非晶性ポリアミド樹脂であり、非常に接着性に富んでいるので、本発明において最も好適に用いられる。 ・・・ 【0045】上記実施形態において用いられる変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、エポキシ基、1級又は2級アミノ基などの反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系樹脂が含まれる。ここで、「変性ポリオレフィン系樹脂」には、オレフィン成分以外の反応性官能基を有する共重合成分を含むポリオレフィン系樹脂共重合体、及び、オレフィン成分のみからなるポリオレフィン樹脂又はオレフィン以外の共重合成分を含むポリオレフィン系樹脂共重合体を変性処理したポリマーの双方が含まれる。前記変性ポリオレフィン系樹脂は、種類の異なる複数の反応性基を有していてもよい。好ましい反応性官能基は、カルボキシル基、酸無水物基及びエポキシ基である。前記変性ポリオレフィン系樹脂は、これらの反応性官能基のいずれかを有する単量体を共重合成分として用いることによって、又はポリオレフィン系樹脂を酸化などの変性処理することによって得られる。前記変性ポリオレフィン系樹脂の基本となる未変性ポリオレフィン系樹脂としては、α-オレフィンの単独又は共重合体(ランダム、ブロック、又はグラフト共重合体)、前記α-オレフィンと共重合性単量体との共重合体(ランダム、ブロック、又はグラフト共重合体)などが例示でき、前記共重合性単量体としては、共役ジエン成分、非共役ジエン成分、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル(酢酸ビニルなど)の他、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体(スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-t-ブチルスチレンなど)、ビニルエーテル(ビニルメチルエーテルなど)などが例示できる。 【0046】前記反応性官能基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシル基を有する単量体[例えば、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、カルボキシル基又は酸無水物基を有する単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、プロピロール酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、ケイ皮酸などの芳香族不飽和モノカルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸、マレイン酸モノエステル(マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチルなどのマレイン酸モノエステルやこれらに対応するフマル酸モノエステル)などの不飽和ジカルボン酸モノエステルなど]、スルホン酸基を有する単量体[例えば、スチレンスルホン酸など]、エポキシ基を有する単量体[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなど]、アミノ基を有する単量体[例えば、ビニルアミン、アリルアミン、アミノスチレンなど]などが例示できる。 【0047】前記変性ポリオレフィン系樹脂としては、カルボキシル基、酸無水物基又はエポキシ基を有する単量体で変性された変性ポリエチレン系樹脂、変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。より具体的には、低密度、中密度又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの変性ポリエチレン系樹脂;ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体などの変性ポリプロピレン系樹脂;などが好ましい。変性ポリオレフィン系樹脂において、変性基はポリオレフィン系樹脂の末端又は高分子鎖中の適当な部位に結合していてもよい。 【0048】前記変性ポリオレフィン系樹脂の変性量の好ましい範囲は、基本となるポリオレフィン系樹脂に対して、0.01~10重量%であるのが好ましく、0.1~5重量%程度であるのがより好ましい。変性ポリオレフィン系樹脂の平均分子量は特に限定されず、一般的には、平均分子量5,000~100,000程度が好ましく、5,000~50,000程度が好ましい。 【0049】本実施の形態において、前記変性ポリオレフィン系樹脂としては、上記した様に、一般的な変性ポリオレフィン系樹脂を使用することができるが、その効果が最も顕著に現れるのは、比較的密度が高く、溶融粘度の高い変性ポリオレフィン系樹脂においてである。このような変性ポリオレフィン系樹脂は、一般的に結晶化度が高く、流動性も劣るため、熱板溶着法等により、前記ポリアミド樹脂等を含まないポリアセタール系樹脂の成形体と接着しようとしても全く接着しないが、本実施の形態では高い接着力で接着した複合成形体が得られる。特に、前記変性ポリオレフィン系樹脂として、JIS K7112法に基づいて測定された常温における密度が0.90以上、さらには0.93以上であり、JIS 7210法に基づき、シリンダー温度190℃、負荷荷重2160gという条件にて測定したメルトフローレート(MFR)が2.0以下、さらには1.0以下の樹脂を用いた場合にも、高い接着力を賦与することができる。具体的には、ポリオレフィンメーカー各社から市販されているブロー成形用の接着性ポリオレフィン系樹脂[例えば、三菱化学(株)製接着性ポリオレフィン(商品名:モディック)、三井化学(株)製接着性ポリオレフィン(商品名:アドマー)、もしくは日本ポリオレフィン(株)製接着性ポリオレフィン(商品名:アドテックス)等のブロー成形用ブレード]を例示することができる。」 (4)甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 (甲4a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリキシリレンアジパミド55~97重量%およびヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびε-カプロラクタムとが重縮合した共重合ポリアミド45~3重量%からなるポリアミド樹脂100重量部に対し、充填材1~100重量部を含有させてなり、該充填材がタルクであることを特徴とするレーザー溶着接合性に優れた、レーザー溶着接合用ポリアミド系成形材料。 ・・・」 (甲4b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、溶着接合性に優れたポリアミド系成形材料に関する。さらに詳しくは、特に、レーザー光照射で溶着接合させる成形部品用に好適なレーザー溶着接合性に優れたポリアミド系成形材料に関する。 ・・・ 【0003】 ポリアミド樹脂の場合、レーザー溶着法においても溶着接合強度が不足することがあり、接合強度をより高くするため種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、溶着接合部材としてナイロン66やナイロン6等の結晶性ポリアミド樹脂にポリヘキサメチレンイソフタラミド(NY6I)の非晶性ポリアミド樹脂を少量配合し、溶着接合強度を高める方法が提案されている。 また、特許文献2には、溶着接合部材としてナイロン11やナイロン12等の比較的低温で溶融する結晶性ポリアミド樹脂に結晶化促進材として高融点のナイロン6やナイロン66等の高結晶性ポリアミド樹脂を少量配合してレーザー溶着工程で溶融時の体積膨張による圧力で接合部の溶着接合強度を高めることが提案されている。」 (5)甲第5号証に記載された事項 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。 (甲5a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)結晶性ポリアミド樹脂20~60質量%、(B)半芳香族非晶性ポリアミド樹脂5~30質量%、(C)ビニル芳香族化合物の重合体のブロックと、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、および/又はイソプレンとブタジエンの共重合体からなるブロックとからなるブロック共重合体および/又はその水素添加物5~35質量%、および(D)ポリアミド樹脂と反応性のある官能基を有するポリオレフィン系樹脂5~35質量%を含有する全樹脂成分の合計量100質量部に対し、(E)無機充填材を0~200質量部含有してなるポリアミド系樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1のポリアミド系樹脂組成物からなる成形体に(F)ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを熱接着したことを特徴とする複合成形体。 【請求項3】 熱接着する方法が一体成形による熱融着であることを特徴とする請求項2記載の複合成形体。」 (甲5b)「【技術分野】 【0001】 本発明は優れた強度、剛性および耐衝撃性を有するポリアミド成形品の表面に柔軟なポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを一体成形により熱融着した複合成形体に関する。特に強度、剛性およびグリップ性、パッキンシール特性を保持したまま、高度な減衰特性を発現させたポリアミド系樹脂とポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる複合成形体に関するものである。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は従来技術の問題点を解決するためになされたもので、ポリアミド系樹脂と柔軟性のあるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーという全く種類の異なる硬質材と柔軟材の組み合わせで、熱接着性が優れ、かつ大幅に改良された減衰特性を持つ複合成形体を安価に製造することを課題とするものである。」 (甲5c)「【0009】 本発明に用いる(B)半芳香族非晶性ポリアミド樹脂とは、分子中にアミド結合(-CONH-)を有し、且つ融点(JIS K7121に準拠して求めた融解ピーク温度)が存在せずガラス移転点のみが存在するものであり、数平均分子量が7,000~30,000のものが好ましく用いられる。具体的には、ナイロン6T/ナイロン66共重合体、ナイロン6T/ナイロン6I共重合体、ナイロンTMD-T/ナイロン6共重合体等が挙げられ、本発明においてはナイロン6T/ナイロン6I共重合体等が好ましく、さらに種々ナイロン共重合体とのブレンド物が好ましい。 【0010】 本発明に用いる(B)半芳香族非晶性ポリアミド樹脂の配合量は、全樹脂成分に対して5~30質量%である。好ましくは5~20質量%である。配合量が30質量%以上では接着性の改良効果が少なく、高温で使用する場合の耐熱機械特性を悪くしてしまう。配合量が5質量%以下であると熱接着性の改良効果が低い。」 (甲5d)「【0014】 本発明に用いる(D)ポリアミド樹脂と反応性のある官能基を有するポリオレフィン系樹脂におけるポリオレフィン系樹脂としては、種々のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン-1、4-メチルペンテン-1等のポリオレフィン系汎用樹脂、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン-1共重合体、エチレン/オクテン-1共重合体、エチレン/ヘキセン-1共重合体、エチレン/4メチルペンテン-1共重合物、エチレン/環状オレフィン共重合体等のエチレン系共重合体、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/ブテン-1共重合体等のプロピレン共重合体等を挙げることができる。またこれらの単独樹脂であっても2種類以上のブレンド物であってもよい。 【0015】 また、前記(D)成分におけるポリオレフィン系樹脂は、(A)成分および(B)成分のポリアミド樹脂との相溶性を向上させるために、ポリアミド樹脂と反応する官能基を有する。ポリアミド樹脂と反応する官能基は、例えば、具体的にはカルボン酸基、無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基、イソシアネート基等が例示される。これらの中でも無水物基が最も反応性が高く、特に好ましい。 【0016】 本発明に用いる(D)ポリアミド樹脂と反応性のある官能基を有するポリオレフィン系樹脂は(F)成分であるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとの熱接着性を向上のためと、(C)成分である(C)ビニル芳香族化合物の重合体のブロックと、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、および/又はイソプレンとブタジエンの共重合体からなるブロックとからなるブロック共重合体又はその水素添加物の(A)成分および(B)成分への分散性を向上させるため、に配合される。(D)ポリアミド樹脂と反応性のある官能基を有するポリオレフィン系樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂組成物の全樹脂成分に対し5~35質量%である。好ましくは10~30質量%である。5質量%未満ではポリアミド系樹脂組成物からなる成形体とポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとの熱接着強度が弱くなり、かつ(C)成分の分散改良効果が低くなる。35質量%より多い場合はポリアミド系樹脂組成物中の分率が高くなりすぎ、強度、剛性を低下させるため好ましくない。 前記(D)ポリアミド樹脂と反応性のある官能基を有するポリオレフィン系樹脂を製造する方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂と酸無水物等の官能基をもつ化合物および有機過酸化物を混合し、押出機等で溶融混練することで製造できるが、それに限定されるものではない。」 (6)甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 (甲6a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)デカンテレフタルアミド単位50~98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位50~2モル%からなる半芳香族ポリアミド樹脂(A)70~25質量%、脂環族基を有し芳香族基を有さない非晶性ポリアミド樹脂(B)1~20質量%、ポリアミドと反応しうる官能基を有するポリオレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)0.5~10質量%、繊維状強化材(D)20~60質量%及びテルペンフェノール系樹脂(E)を0.5~5質量%含有し、かつ、下記(イ)の特性を満足することを特徴とする強化ポリアミド樹脂組成物。 (イ)半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点+35℃での溶融粘度が、せん断速度12.2sec-1において3000~5000Pa・sで、かつせん断速度1216sec-1において100~450Pa・sである。 【請求項2】 半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、(a)デカンテレフタルアミド単位75~98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位25~2モル%からなる請求項1に記載の強化ポリアミド樹脂組成物。 【請求項3】 繊維状強化材(D)が、長径/短径の比が1.5~10の扁平断面を有する扁平断面ガラス繊維である請求項1又は2に記載の強化ポリアミド樹脂組成物。 【請求項4】 脂環族基を有し芳香族基を有さない非晶性ポリアミド樹脂(B)が、炭素原子12~18個の脂肪族ジカルボン酸とビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン、ビス(3-アミノ-シクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノ-シクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)プロパンから選択された脂環族ジアミンとの重縮合により形成された非晶性ポリアミド樹脂である請求項1~3のいずれかに記載の強化ポリアミド樹脂組成物。」 (甲6b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、低吸水性の特定の半芳香族ポリアミド樹脂に対してガラス繊維を配合した強化ポリアミド樹脂組成物に関する。詳しくは、低吸水性で機械的強度、靭性等の物性に優れ、薄肉成形時のバリ発生量が小さく、薄肉軽量化電化製品、例えば携帯電話、携帯用の音楽を聞く製品、携帯用の映像を見る製品および携帯用パソコン等の筐体用材料に好適な強化ポリアミド樹脂組成物及びそれを用いた成形品に関するものである。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 機械的強度及び靭性等の物性に優れ、低吸水性で吸水寸法変化、吸水による曲げ弾性率変化が少ないのみならず、高流動性でありながら、薄肉成形時のバリ発生量が小さく、携帯電話、携帯用の音楽を聞く製品、携帯用の映像を見る製品および携帯用パソコン等の薄肉軽量化電化製品の筐体用に好適な成形材料を提供することである。 ・・・ 【発明の効果】 【0011】 本発明の樹脂組成物は、優れた機械物性、靭性、低ソリ性、薄肉成形性を有し、しかも薄肉成形品のバリ発生量が少なく、吸水による寸法変化が小さい。これらの性能を備えるために、機械特性と共に軽量性、組み付け性や機構性が重視される携帯用電化製品、例えば、例えば携帯電話、携帯用の音楽を聞く製品、携帯用の映像を見る製品および携帯用パソコン等の筐体用材料として好適である。」 (甲6c)「【0013】 以下に本発明を具体的に説明する。 本発明では、携帯およびパソコン等の筐体材の薄肉成形品に必要な性能、特に成形性、低バリ性、低吸水寸法変化、低温衝撃性を実現するために結晶性の半芳香族ポリアミド樹脂を使用している。本発明における結晶性の半芳香族ポリアミド樹脂(A)としては分子中に酸アミド結合(-CONH?)を有し、かつ芳香族環(ベンゼン環)を有する半芳香族ポリアミド樹脂で、結晶融点を有するものである。 具体的には、a)デカンジアミンとテレフタル酸との等量モル塩から得られる構成単位50~98モル%、及び(b)11-アミノウンデカン酸又は、12-アミノドデカン酸、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムのうち1種もしくは混合物から得られる構成単位50~2モル%からなるポリアミド樹脂である。本発明における半芳香族ポリアミド樹脂は、(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸の等量モル塩から得られる構成単位、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%まで含有することができる。」 (甲6d)「【0018】 本発明のポリアミド樹脂組成物においては、成形品の外観を良くし、低バリ性、低ヒケ性を付与するために、脂環族基を有し芳香族基を有さない非晶性ポリアミド樹脂(B)を配合することができる。本発明における非晶性とは、JIS K7121に準じて昇温速度20℃/分でDSC測定した場合に、明確な融点ピークを示さないものである。 本発明における脂環族基を有し芳香族基を有さない非晶性ポリアミド樹脂(B)を構成するモノマーの具体例としては、ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン(PACMと略記することがある)、ビス(3-アミノ-シクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノ-シクロヘキシル)メタン(MACMと略記することがある)、2,2-ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)プロパン、イソホロンジアミン、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム類、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3-アミノシクロヘキシル-4-アミノシクロヘキシルメタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジンなどのジアミン類が挙げられ、また、ジカルボン酸類としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸(12と略記することがある)、トリデカン二酸、テトラデカン二酸(14と略記することがある)など、炭素原子数4~36の直鎖状または分岐鎖を有する脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。好ましくはドデカン二酸、テトラデカン二酸であり、より好ましくはテトラデカン二酸である。 【0019】 上記モノマーの組み合わせとしては、ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン(PACM)、ビス(3-アミノ-シクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノ-シクロヘキシル)メタン(MACM)、2,2-ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)プロパンなどの脂環族ジアミンと、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸などの直鎖状ジカルボン酸との組み合わせが溶融流動特性の点で好ましい。 また、MACMとドデカン二酸、MACMとテトラデカン二酸の組み合わせが、吸水率が低く、吸水寸法変化が小さい点で好ましい。中でも、MACM14は、成形温度を300℃以下で成形でき、金型温度を100℃でも薄肉成形性とバリ発生抑制性が優れ、強度、剛性、耐衝撃性、靭性に優れた成形品が得られやすい点で好ましい。 【0020】 本発明に用いる非晶性ポリアミド樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、下記に記載の方法で測定した数平均分子量が、3000~40000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が3000より小さいと機械的強度が低下し、逆に40000より大きいと分子量が高くなりすぎて成形性が悪くなるので好ましくない。 また、非晶性ポリアミド樹脂(B)の配合量は、本発明における半芳香族ポリアミド樹脂(A)70~25質量%に対して、1~20質量%である。(B)の配合量は、3~15質量%が好ましく、5~12質量%がより好ましい。上記配合量未満だと、(B)成分の効果が出ず、上記配合量を超えると、半芳香族ポリアミド樹脂の特性が発現されにくくなる傾向がある。(A)を100質量部としたとき、(B)の配合量は、2~40質量部が好ましい。」 (甲6e)「【0021】 本発明のポリアミド樹脂組成物においては、更に低バリ性を付与するために、ポリアミドと反応しうる官能基を有するポリオレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を配合する。 ・・・ 【0026】 ポリアミドと反応しうる官能基を有する樹脂(C)の配合量は、本発明における半芳香族ポリアミド樹脂(A)70~25質量%に対して、0.5~10質量%である。(C)の配合量は、1~8質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。全ポリアミド樹脂100質量部としたとき、(C)の配合量は、1~20質量部が好ましく、より好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは、2~9質量部である。 樹脂(C)の配合量は、少なすぎるとバリ抑制の改良効果が小さく、多すぎると熱間剛性が低下して金型からの突き出し時に変形したり、粘度が高くなりすぎて成形性を逆に損なう場合があり、好ましくない。」 (甲6f)「【0027】 本発明で用いる繊維状強化材(D)としては、強度や剛性および耐熱性等の物性を最も効果的に改良するものであり、具体的にはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ジルコニヤ繊維等の繊維状のもの、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等のウイスカー類、針状ワラストナイト、ミルドフィバー等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 ・・・ ガラス繊維としては、繊維長1~20mm程度に切断されたチョップドストランド状ものもが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。ガラス繊維の断面形状としては、低ソリ性にするために、非円形断面のガラス繊維が好ましい。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円系、略長円系、略繭形系であるものをも含み、偏平度が1.5~8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1~20μm、長径2~100μm程度である。繊維状強化材(D)の配合量は、本発明における半芳香族ポリアミド樹脂(A)70~25質量%に対して、20~60質量%である。(D)の配合量は、25~60質量%が好ましく、30~55質量%がより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(A)を100質量部としたとき、20~150質量部を添加することが好ましい。」 (甲6g)「【0028】 本発明に用いるテルペンフェノール系樹脂は、特に本発明に用いる非晶性ポリアミド樹脂と相溶して非晶性ポリアミド樹脂の見かけのガラス転移温度を下げることができ、かつ溶融流動性を高めることができるため、テルペンフェノール系樹脂を配合しない場合に比べて成形温度や金型温度を下げても充填性に問題が出難いため、冷却時間の短縮が可能となったり、成形条件幅を広く取ることができる。特に、MACM14との組み合わせは、見かけのガラス転移温度低下が大きく好ましい。」 (甲6h)「【実施例】 【0038】 次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 (1)実施例、比較例で使用した原材料 〔ポリアミド10T11の合成(A-1)〕 デカメチレンジアミン8.26kg、テレフタル酸7.97kg、11-アミノウンデカン酸6.43kg、触媒としてジ亜リン酸ナトリウム9g、末端調整剤として酢酸40gおよびイオン交換水17.52kgを50リットルのオートクレーブに仕込み、常圧から0.05MPaまでN2で加圧し、放圧させ、常圧に戻した。この操作を3回行い、N2置換を行った後、攪拌下135℃、0.3MPaにて均一溶解させた。その後、溶解液を送液ポンプにより、連続的に供給し、加熱配管で240℃まで昇温させ、1時間、熱を加えた。その後、加圧反応缶に反応混合物が供給され、290℃に加熱され、缶内圧を3MPaで維持するように、水の一部を留出させ、低次縮合物を得た。その後、この低次縮合物を、溶融状態を維持したまま直接二軸押出し機(スクリュー径37mm、L/D=60)に供給し、樹脂温度を330℃、3箇所のベントから水を抜きながら溶融下で重縮合を進め、共重合ポリアミドを得た。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=60/40(モル比)の組成で融点250℃、相対粘度2.6、ガラス転移温度75℃であった。 【0039】 〔ポリアミド10T11の合成(A-2)〕 デカメチレンジアミンの量を11.01kgに変更し、テレフタル酸の量を10.62kgに変更し、11-アミノウンデカン酸の量を3.22kgに変更した以外は合成例(A-1)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=80/20(モル比)の組成で融点289℃、相対粘度2.6、ガラス転移温度93℃であった。 〔ポリアミド10T11の合成(A-3)〕 デカメチレンジアミンの量を12.38kgに変更し、テレフタル酸の量を11.95kgに変更し、11-アミノウンデカン酸の量を1.61kgに変更した以外は合成例(A-1)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=90/10(モル比)の組成で融点302℃、相対粘度2.8、ガラス転移温度104℃であった。 【0040】 〔その他の結晶性ポリアミド樹脂〕 ポリアミド6 :東洋紡ポリアミドT-800、相対粘度2.5 ポリアミド66:東レ社製、CM3007、Tg49℃、相対粘度2.5 【0041】 〔非晶性ポリアミド樹脂(B)〕 MACM・14:アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200 MACM・12:EMS社製TR-90、Tg155℃、数平均分子量13300 6T6I:6T/6I=33/67モル%:EMS社製グリボリーG21、Tg125℃、数平均分子量15100 【0042】 数平均分子量は、次の様に求めた。 各試料を2mg秤量し、4mlのHFIP/トリフルオロ酢酸ナトリウム10mMに溶解させた。0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、得られた試料溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析を次の条件で行った。 装置:TOSOH HLC-8220GPC カラム:TSKgel SuperHM-H×2、TSKgel SuperH2000 流速:0.25ml/分、濃度:0.05%、温度:40℃、検出器:RI 分子量換算は標準ポリメチルメタクリレート換算で計算した。 分子量は、1000以下のものは、オリゴマーとして除いて計算した。 【0043】 〔オレフィン系樹脂(C)〕 マレイン酸変性ポリエチレン(MAH-PE)、三井化学社製、タフマーMH-502 0を使用した。 〔繊維状強化材(D)〕 扁平断面ガラス繊維、 日東紡(株)製 3PA810S(長径/短径の比=4) 丸断面ガラス繊維、 日本電気ガラス社製 T-275H 〔テルペンフェノール系樹脂(E)〕 ヤスハラケミカル社製、YSポリスターS145 【0044】 (2)特性及び物性値の測定法 (イ)融点: DSC測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を使用し、窒素気流下で20℃/分の昇温速度で昇温時の吸熱ピークのピークトップ温度を求めた。 【0045】 (ロ)溶融粘度: キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)、製品名キャピログラフ1B)を使用した。 キャピラリー形状:穴の直径1.0mm、長さ30mm せん断速度:12.2sec-1(1.0mm/分) せん断速度:1216sec-1(100.0mm/分) 測定温度:DSCにて測定した融点より約35℃高い温度にて測定 評価法: ○:せん断速度12.2sec-1において3000~5000Pa・sで、かつせん断速度1216sec-1において100~450Pa・sを満足。 ×:上記を満足しない。 【0046】 (ハ)バリ評価法: 図1に示した携帯電話モデル金型による成形品のバリの発生しやすいゲート付近部(観察部(1))と最終充填部付近(観察部(2))の2箇所をHIROX社製マイクロスコープ KH-7700を用いて発生したバリの長さ(μm)を測定した。 観察部(1):◎:50μm未満、○:50以上70μm未満、△:70以上100μm未満、×:100μm以上 観察部(2):◎:10μm未満、○:10以上20μm未満、△:20以上30μm未満、×:30μm以上 【0047】 (ニ)吸水率及び吸水寸法変化: 実施例、比較例の組成物で100×100×2mm(フィルムゲート)の平板を成形(シリンダー温度:ポリアミドの融点+40℃、金型温度120℃)し、95%RH平衡吸水時の寸法増加率で評価した。吸水処理は、95%相対湿度の高温槽中で80℃にて加速吸水処理した。 ◎:0.1%未満、 ○:0.1~0.3%未満、 ×:0.3%以上 【0048】 (ト)ソリ評価法: 平面ソリ:100×100×2mm(フィルムゲート)の平板成形品を常盤の上に固定し、9地点の高さを3次元測定機で測定し、その平均値から平面ソリ変形量を評価した。評価に用いた成形品の成形は、シリンダー温度は各評価用材料をDSCにて測定した融点より40℃高い温度に設定し、金型温度は120℃とし、射出時間6秒、冷却時間10秒として成形した。 ◎:ソリ量が、3mmより小さい ○:ソリ量が、3mm以上、4mm以下 ×:ソリ量が、4.0mmより大きい 【0049】 なお、機械物性、せん断粘度、各種成形や測定用いたポリアミド樹脂組成物は、水分の混入による変動を防止するために、水分率を0.08%以下となる様に乾燥して用いた。水分率の測定は、カールフィッシャー式水分率系、三菱化学社製、CA-100型を用いて、200℃にて水分率を測定した。 【0050】 実施例1~6、比較例1~3 評価サンプルの製造は表1、2に示した割合で各原料を計測し、ガラス繊維を除く他の原料をタンブラーで混合した後、L/D=32の二軸押出機のホッパーに投入した。ガラス繊維は二軸押出機の第二ベント口から計量しながら投入した。二軸押出機の混錬温度は230℃~320℃である。得られた繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットは射出成形機で各種の評価用試料を成形した。射出成形機の成形条件は、特に記載していない項目の評価には、シリンダー温度245~320℃、金型温度は80℃~145℃で、適宜各水準のベース樹脂に適切な条件に設定して成形した。 評価結果は表1、表2に示した。 【0051】 【表1】 [図:0001389391000007.jpg] ・・・ 【0053】 本発明の特許請求項を満足した実施例1~6は何れも、吸水特性においては、RH95%という非常に高い湿度環境での平衡吸水時であっても、寸法変化が極めて小さい。また、高い流動性を示すのにかかわらず、バリ発生量が少なく薄肉成形品の成形に良好な性能 を発現している。しかも、低ソリ性でもあるため、携帯用軽量化電化製品の筐体材料として利用可能である。 【0054】 比較例1、2であるポリアミド6およびポリアミド66樹脂は、RH95%での平衡吸水時には曲げ弾性率が大幅に低下すると共に、寸法変化が大きい。比較例3の芳香族環を有する非晶性ポリアミドを配合した場合は、本発明における特定の半芳香族ポリアミドとの相溶性が悪く、相分離が発生してストランドの引取が困難であったので評価を中止した。 【産業上の利用可能性】 【0055】 本発明の強化ポリアミド樹脂組成物は、優れた機械的強度、薄肉成形時のバリ発生量が小さく、吸水寸法変化、吸水による曲げ弾性率変化が少なく、低ソリ性にも優れたポリアミド樹脂組成物であり、薄肉軽量化電化製品、例えば携帯電話、携帯用の音楽を聞く製品、携帯用の映像を見る製品および携帯用パソコン等の筐体用材料などに利用可能である。」 (7)参考資料1に記載された事項 参考資料1には、以下の事項が記載されている。 (参1a)「 [図:0001389391000008.jpg] 」 第6 当審の判断 特許異議の申立ての審理対象である請求項1~10のうち、上記「第2 本件訂正の内容」及び「第3 特許請求の範囲の記載」で示したとおり、請求項1、4は、本件訂正により削除されているので、請求項1、4についての申立てを却下する。 当審は、当審が通知した取消理由A及び申立人がした申立理由1~3によっては、いずれも、本件発明2~3、5~10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 取消理由について (1)取消理由A(実施可能要件)について ア 取消理由A(実施可能要件)の概要 取消理由A(実施可能要件)の概要は、以下のとおりである。 (a)本件発明1は、「ポリアミド樹脂組成物」について「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下であること」(以下「組成物の飽和吸湿率」という。)を発明特定事項としており、この「組成物の飽和吸湿率」の発明特定事項は、 当該技術分野において汎用とされる物性であるとはいえない。 本件明細書において、本件発明1の特定の「組成物の飽和吸湿率」を有する「ポリアミド組成物」の製造に関して指針となる記載は、(本d)の【0034】の「非晶性ポリアミド(B)」の「飽和吸水率」に関するものしかなく、(本g)の実施例・比較例をみると、比較例8及び比較例9は、段落【0034】となる記載された「非晶性ポリアミド(B)」を用いたものであるにもかかわらず、本件発明1の「組成物の飽和吸湿率」を満足しないものとなっており、さらに、「半芳香族ポリアミド(A)」や「繊維状充填材」にも影響されるものとなっている。そして、本件明細書には、「半芳香族ポリアミド(A)」や「繊維状充填材」と本件発明1の特定の「組成物の飽和吸湿率」を有する「ポリアミド組成物」の製造に関する記載もなく、本件発明1の特定の「組成物の飽和吸湿率」を有する「ポリアミド組成物」の製造についての技術常識もあるとはいえない。 そうすると、結局のところ、本件発明1の特定の「組成物の飽和吸湿率」を有する「ポリアミド組成物」を得るには、本件発明1の他の発明特定事項を満たす「組成物」を調整した後に、1つ1つの「組成物」について本件明細書の(本g)の段落【0049】に記載された測定方法に従って「組成物の飽和吸湿率」を測定するほかなく、しかも、その測定方法は相当程度の時間を要し、煩雑なものであり、当業者に過度の試行錯誤を課すものであるといえる。 (b)本件発明4は、本件発明1を引用するものであり、「ポリアミド樹脂組成物」における「非晶性ポリアミド(B)の、温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が3.0質量%以下であること」(以下「非晶性ポリアミド(B)」の「飽和吸湿率」という。)を発明特定事項とするものである。そして、この「非晶性ポリアミド(B)」の「飽和吸湿率」は汎用の物性値ではない。 本件発明4の「非晶性ポリアミド(B)」について、本件明細書の(本c)には「本発明の樹脂組成物を構成する非晶性ポリアミド(B)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定される融解熱量が1cal/g以下のポリアミドである」と定義されており、非常に広範かつ多様な「ポリアミド」を含み得るものとなっている。 一方、本件発明4の特定の「飽和吸湿率」を有する「非晶性ポリアミド(B)」については、(本c)に特定の「飽和吸湿率」を有することの意義や具体的な製品の例示については記載されているものの、本件明細書には、上記の定義に当てはまる「非晶性ポリアミド(B)」から、特定の「飽和吸湿率」を有するものの化学構造的な特徴や汎用の物性値との関連について一切記載されていないし、本件発明4の特定の「飽和吸湿率」を有する「非晶性ポリアミド(B)」の製造や選定に関する技術常識もあるとはいえない。 したがって、本件発明4の特定の「飽和吸湿率」を有する「非晶性ポリアミド(B)」を得るためには、上記定義に当てはまる非常に広範かつ多様な「ポリアミド」について、1つ1つ、本件明細書の(本g)の段落【0046】に記載された測定方法に従って測定するほかなく、その測定方法は、相当程度の時間を要し煩雑なものであり、当業者に過度の試行錯誤を課すものであるといえる。 イ 判断 (ア)特許法第36条第4項第1号について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下、この観点に立って検討する。 (イ)判断 本件訂正により、本件訂正前の本件発明1及び本件発明4が削除され、本件発明2及び本件発明2を直接的又は間接的に引用する本件発明3、5~10のみとなったので、まず、本件発明2について検討する。 a 上記ア(b)の取消理由について 本件訂正により、本件訂正前の本件発明4は削除されるとともに、本件訂正前の本件発明2は、本件訂正前の本件発明1において、「半芳香族ポリアミド(A)」について、「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」するとの発明特定事項を有するものであったが、本件訂正により、さらに、「非晶性ポリアミド(B)」について「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」であるとの特定がなされ、さらに、「繊維状充填材(C)」について「ワラストナイトまたはガラス繊維」であるとの特定がなされた。 まず、本件訂正により、本件訂正前の請求項4は削除されたことから、上記ア(b)の理由は解消されたといえる。 b 上記ア(a)の取消理由について 本件訂正後の本件発明2(以下、単に「本件発明2」という。)は、本件訂正により「非晶性ポリアミド(B)」について「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」であると特定されるとともに、「半芳香族ポリアミド(A)」について、「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」する、さらに、「繊維状充填材(C)」について「ワラストナイトまたはガラス繊維」であるとの発明特定事項を有するものとなり、本件明細書の(本g)の実施例をみると、本件発明2の特定の「組成物の飽和吸湿率」以外の発明特定事項を満たす実施例1~13は、全て当該特定の「組成物の飽和吸湿率」の発明特定事項を満たすものとなっている。 一方、「非晶性ポリアミド(B)」の「飽和吸湿率」との発明特定事項を満たさない比較例6~9についてみると、比較例6は「非晶性ポリアミド(B)」の「飽和吸湿率」を満たさない「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」とは異なる「非晶性ポリアミド(B)」を用いたものであり、比較例7は「半芳香族ポリアミド(A)」と「非晶性ポリアミド(B)」の質量比(A/B)が「90/10~70/30」の範囲を満たさないものであり、比較例8は「半芳香族ポリアミド(A)」として「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」するものを用いないものであり、比較例9は「繊維状充填材(C)」を用いないものである。 そうすると、本件発明2について、実施例1~13、比較例6~9のデータをみれば、当該特定の「組成物の飽和吸湿率」以外の発明特定事項を満たす「ポリアミド樹脂組成物」であれば、本件訂正後の本件発明2に当該特定の「組成物の飽和吸湿率」を有する「組成物」を当業者は過度の試行錯誤なく得られると理解できるといえ、上記(ア)(a)の理由も解消されたといえる。 また、本件発明2を直接的又は間接的に引用する本件発明3、5~10についても同様である。 ウ 小括 以上のとおり、取消理由Aは、本件訂正により解消されたといえるから、理由がない。 2 特許異議申立書に記載された申立理由について 以下、申立理由1~3について、順に検討する。 なお、申立理由2及び申立理由3-3は、いずれも甲第6号証を主引用文献とする理由であるから、以下「(2)申立理由2、3-3について」で併せて検討を行う。 (1)申立理由1(実施可能要件、サポート要件)について ア 申立理由1(実施可能要件、サポート要件)の概要 申立理由1(実施可能要件、サポート要件)の概要は、以下のとおりである。 (a)本件発明の課題は、本件明細書の段落【0005】の記載からみて、「機械的特性」、「寸法安定性」、「吸湿条件下のリフロー耐熱性」及び「接着性」の4つの特性の達成が上げられている。本件訂正前の本件発明1には、「非晶性ポリアミド(B)」について単に「非晶性ポリアミド(B)」と規定されるのみであるが、「非晶性ポリアミド(B)」の定義は極めて広く、様々な化学構造のポリアミドを包含しうるものであり、これらの様々なポリアミドの全てが「接着性」を向上させる効果を有するとは到底認められない。本件明細書によってサポートされているのは、実施例でも使用して「接着性」の効果を実証している二種類の市販品のみであり、これら以外の多種多様なものについては、本件明細書によって何らサポートされておらず、当業者が本件明細書や技術常識に基づいてその効果を予測しうるものではない。本件訂正前の本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の本件発明2~10も同様である。 (b)本件訂正前の本件発明1には、「樹脂組成物の飽和吸湿率」の上限値が規定されているが、その制御手段として本件明細書に開示されているのは、本件発明4で規定されている「非晶性ポリアミド(B)」の「飽和吸湿率」、及び本件発明2で規定されている特定の「半芳香族ポリアミド(A)」の使用という二つの手段にすぎない。これらの二つの手段以外に、どのような手段を採用すれば「樹脂組成物の飽和吸湿率」を好適に制御することができるのかは、たとえ当業者であっても全く予測できない。本件訂正前の本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の本件発明3、5~10も同様である。 (c)本件発明の課題のうち、「吸湿条件下のリフロー耐熱性」については、本件明細書の段落【0034】によれば、この「樹脂組成物の飽和吸湿率」は、「吸湿条件下でのリフロー耐熱性」の達成手段に相当するものであるとされているが、「樹脂組成物の飽和吸湿率」が「吸湿条件下でのリフロー耐熱性」の達成手段であるとは到底技術的に認められない。そうすると、本件訂正前の本件発明1は、本件訂正前の本件発明の課題を解決する手段が十分に規定されていない。本件訂正前の本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の本件発明2~10も同様である。 上記(a)~(c)の理由のうち、(b)については実施可能要件に関するものとして、(a)及び(c)についてはサポート要件に関するものとして、以下に検討する。 イ 実施可能要件についての判断 上記ア(b)の理由は、上記「1 取消理由について」「(1)取消理由A(実施可能要件)について」「ア 取消理由A(実施可能要件)の概要」の(a)の理由と同旨である。 そして、本件訂正後の本件発明2、3、5~10については、上記「1 取消理由について」「(1)取消理由A(実施可能要件)について」「イ 判断」で検討したとおり、本件明細書の実施例及び比較例のデータを参考にすれば、当業者は過度の試行錯誤なく実施できると理解できる。 ウ サポート要件についての判断 (ア)特許法第36条第6項第1号について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点から検討する。 (イ)判断 a 本件発明の課題について 本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0005】の記載からみて、「機械的特性、寸法安定性、吸湿条件下でのリフロー耐熱性に優れつつ、接着性にも優れるポリアミド樹脂組成物を提供すること」であるといえる。 b 判断 上記「1 取消理由について」「(1)取消理由A(実施可能要件)について」「イ 判断」で述べたとおり、本件訂正前の本件発明1及び本件発明4が削除され、本件発明2及び本件発明2を直接的又は間接的に引用する本件発明3、5~10のみとなった。そして、訂正後の本件発明2においては、本件訂正前の本件発明1の発明特定事項に加えて、「半芳香族ポリアミド(A)」について、「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」するとの発明特定事項を有し、さらに、本件訂正により、「非晶性ポリアミド(B)」について「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」であるとの特定がなされ、さらに、「繊維状充填材(C)」について「ワラストナイトまたはガラス繊維」であるとの特定がなされた。 そして、本件訂正後の本件発明2の発明特定事項を満たす(本g)の実施例1~13の「ポリアミド樹脂組成物」は、「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」である「非晶性ポリアミド(B)」を含まない比較例1~6、「半芳香族ポリアミド(A)」と「非晶性ポリアミド(B)」の配合比の発明特定事項を満たさない比較例7、「半芳香族ポリアミド(A)」が「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」するものでない比較例8、「繊維状充填材(C)」を含まないか又は配合量が発明特定事項を満たさない比較例9~13とは異なり、本件発明の課題である「機械的特性」(曲げ強度、曲げ弾性率)、「寸法安定性」(吸湿寸法変化率)、「吸湿条件下のリフロー耐熱性」(ブリスター発生枚数)及び「接着性」(接着強度)の4つの特性をいずれも一定以上に達成していることが確認できる。 そうすると、本件訂正後の本件発明2の発明特定事項を満たすものであれば、当業者は、本件発明の上記「密着性」及び「吸湿条件下のリフロー耐熱性」を含む上記課題を解決できることを認識できるといえる。 したがって、上記ア(a)及び(c)についても、理由がない。 エ 申立理由1(実施可能要件、サポート要件)のまとめ 以上のとおり、申立理由1は、理由がない。 (2)申立理由2、3-3(新規性、進歩性)について ア 甲第6号証に記載された発明 甲第6号証の(甲6h)の段落【0038】、【0041】~【0043】、【0050】~【0051】の表1の実施例2に着目すると、 「デカメチレンジアミン8.26kg、テレフタル酸7.97kg、11-アミノウンデカン酸6.43kg、触媒としてジ亜リン酸ナトリウム9g、末端調整剤として酢酸40gおよびイオン交換水17.52kgを50リットルのオートクレーブに仕込み、常圧から0.05MPaまでN2で加圧し、放圧させ、常圧に戻し、この操作を3回行い、N2置換を行った後、攪拌下135℃、0.3MPaにて均一溶解させ、その後、溶解液を送液ポンプにより、連続的に供給し、加熱配管で240℃まで昇温させ、1時間、熱を加え、その後、加圧反応缶に反応混合物が供給され、290℃に加熱され、缶内圧を3MPaで維持するように、水の一部を留出させ、低次縮合物を得て、その後、この低次縮合物を、溶融状態を維持したまま直接二軸押出し機(スクリュー径37mm、L/D=60)に供給し、樹脂温度を330℃、3箇所のベントから水を抜きながら溶融下で重縮合を進め、ポリアミド10T11(A-1)を得て、 ポリアミド10T11(A-1) 38質量% MACM・14(アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200) 7質量% オレフィン系樹脂(C)(マレイン酸変性ポリエチレン(MAH-PE)、三井化学社製、タフマーMH-502) 2.5質量% テルペンフェノール系樹脂(E)(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターS145) 2.5質量% をタンブラーで混合した後、L/D=32の二軸押出機のホッパーに投入し、 扁平断面ガラス繊維(D)(日東紡(株)製 3PA810S(長径/短径の比=4) 50質量%を二軸押出機の第二ベント口から計量しながら投入して得た、 繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と甲6発明とを対比する。 甲6発明の「ポリアミド10T11(A-1)」は、「芳香族ジカルボン酸成分」として「テレフタル酸」のみを用い、「脂肪族ジアミン」として「炭素数8以上の脂肪族ジアミン」である「デカメチレンジアミン」のみを用いて重縮合を行ったポリアミドであるから、本件発明2の「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」する「半芳香族ポリアミド(A)」に相当するといえる。 甲6発明の「MACM・14(アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200)」は、甲第6号証の(甲6d)の段落【0018】~【0019】の記載からみて、「非晶性ポリアミド樹脂(B)」であり、本件発明2の「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」である「非晶性ポリアミド(B)」と、「非晶性ポリアミド(B)」である限りにおいて一致する。 そして、甲6発明の「ポリアミド10T11(A-1)」と「MACM・14(アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200)」の質量比は、84.4:15.6(=38:7)であるから、本件発明2と同様に、「半芳香族ポリアミド(A)」と「非晶性ポリアミド(B)」の質量比(A/B)が「90/10~70/30」の範囲内であるといえる。 甲6発明の「扁平断面ガラス繊維(D)(日東紡(株)製 3PA810S(長径/短径の比=4))」は、本件発明2の「ガラス繊維」である「繊維状充填材(C)」に相当する。 そして、甲6発明の「扁平断面ガラス繊維(D)(日東紡(株)製 3PA810S(長径/短径の比=4))」は、「ポリアミド10T11(A-1)」と「MACM・14(アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200)」の「合計100質量部」に対して、111質量部(=50/(38+7))含んでいる。 そうすると、本件発明2と甲6発明とは、 「半芳香族ポリアミド(A)と、非晶性ポリアミド(B)と、繊維状充填材(C)とを含有する樹脂組成物であって、 半芳香族ポリアミド(A)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有し、 繊維状充填材(C)が、ワラストナイトまたはガラス繊維であり、 (A)と(B)の質量比(A/B)が、90/10~70/30である、 ポリアミド樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:「非晶性ポリアミド(B)」について、本件発明2では「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」であるのに対し、甲6発明では「MACM・14(アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200)」である点。 相違点2:「繊維状充填材(C)」の「半芳香族ポリアミド(A)」と「非晶性ポリアミド(B)」の合計100質量部に対する含有量について、本件発明2では、「40~100質量部」であるのに対し、甲6発明では、「111質量部」である点。 相違点3:「ポリアミド樹脂組成物」について、甲2発明では、「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下」であるのに対し、甲6発明では、そのような「飽和吸湿率」は不明な点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点1、3について併せて検討する。 相違点1の「非晶性ポリアミド(B)」について、甲6発明の「MACM・14(アルケマ社製G350、Tg146℃、数平均分子量14200)」は、「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」ではなく、また、相違点3の「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率」についても甲6発明の当該「飽和吸湿率」は不明であるから、相違点1及び相違点3は実質的な相違点である。 したがって、本件発明2は、甲第6号証に記載された発明であるとはいえない。 次に、相違点1及び相違点3について、甲6発明及び甲第6号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたか否かを検討すると、(甲6b)の段落【0008】には課題として「低吸水性で吸水寸法変化、吸水による曲げ弾性率変化が少ない」ことに着目し、(甲6h)の実施例においても段落【0047】において、「100×100×2mm(フィルムゲート)の平板を成形(シリンダー温度:ポリアミドの融点+40℃、金型温度120℃)し、95%RH平衡吸水時の寸法増加率で評価」した「吸水率及び吸水寸法変化」を行っているものの、甲第6号証は、相違点3の「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率」に着目するものではない。 また、相違点1についても、甲第6号証には、「非晶性ポリアミド(B)」として「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を用いることを動機付ける記載はない。 そうすると、相違点1及び相違点3について、甲6発明及び甲第6号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、他の甲号証及び参考資料1をみても、甲6発明において、「非晶性ポリアミド(B)」として「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を用いること、さらに、「ポリアミド樹脂組成物」について「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下」とすることを動機づける記載はない。 (ウ)小括 したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第6号証に記載された発明であるとはいえない。また、甲第6号証に記載された発明及び他の甲号証及び参考資料1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 ウ 本件発明3、5~10について 本件発明3、5~10は、本件発明2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3、5~10は、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第6号証に記載された発明であるとはいえない。また、甲第6号証に記載された発明及び他の甲号証及び参考資料1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2、申立理由3-3によっても、本件発明2~3、5~10に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立理由3-1(進歩性)について ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の(甲1f)の段落【0052】、【0055】~【0059】【表1】の実施例1に着目すると、 「テレフタル酸4819.4g(29.01モル)、1,9-ジアミノノナンと2-メチル-1,8-ジアミノオクタンの混合物〔前者/後者=70/30(モル比)〕4772.4g(30.15モル)、安息香酸241.8g(1.98モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物9.8gおよび蒸留水2.5リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ窒素置換し、この混合物を100℃で30分間攪拌し、2時間かけてオートクレーブ内部の温度を220℃に昇温し、オートクレーブ内部の圧力は2MPaまで昇圧し、そのまま2時間反応を続けた後、230℃に昇温し、次いで2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させ、次に、30分間かけて圧力を1MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、極限粘度[η]が0.14dl/gのプレポリマーを得て、これを100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の粒径になるまで粉砕し、これを、230℃、13Pa(0.1mmHg)にて10時間固相重合し、融点が306℃、極限粘度[η]が0.78dl/gである白色のポリアミド(PA9T-1)を得て、 ポリアミド(PA9T-1) 64.0質量部 カーボンブラック(三菱化学株式会社製「#980B」) 1.0質量部 酸化防止剤(住友化学株式会社製「スミライザー GA-80」) 0.2質量部 離型剤(三井化学株式会社製「HI-WAX200P」) 0.3質量部 の成分を、プラスチック工学研究所製二軸押出機に、最上流部のホッパーより供給し、 強化材-1(キンセイマテック株式会社製ワラストナイト「SH1250」(平均長さ0.07mm)) 34.5質量部 をサイドフィーダーより供給して、溶融混練し、溶融混練されたポリアミド組成物をストランド状に押出し、冷却後切断して得た、ポリアミド組成物のペレット」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ポリアミド(PA9T-1)」は、「芳香族ジカルボン酸成分」として「テレフタル酸」のみを用い、「脂肪族ジアミン」として「炭素数8以上の脂肪族ジアミン」である「1,9-ジアミノノナンと2-メチル-1,8-ジアミノオクタンの混合物〔前者/後者=70/30(モル比)〕4772.4g(30.15モル)」のみを用いて重合を行ったポリアミドであるから、本件発明2の「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」する「半芳香族ポリアミド(A)」に相当するといえる。 甲1発明の「強化材-1(キンセイマテック株式会社製ワラストナイト「SH1250」(平均長さ0.07mm))」は、本件発明2の「ワラストナイト」である「繊維状充填材(C)」に相当する。 そして、甲1発明の「強化材-1(キンセイマテック株式会社製ワラストナイト「SH1250」(平均長さ0.07mm))」は、「ポリアミド(PA9T-1)」の100質量部に対して、53.9質量部(=34.5/64.0×100)含んでいる。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、 「半芳香族ポリアミド(A)と、繊維状充填材(C)とを含有する樹脂組成物であって、 半芳香族ポリアミド(A)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有し、 繊維状充填材(C)が、ワラストナイトまたはガラス繊維である、 ポリアミド樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点4:「ポリアミド樹脂組成物」の含有成分として、本件発明2では、「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」である「非晶性ポリアミド(B)」を、「半芳香族ポリアミド(A)」との質量比(A/B)で「90/10~70/30」含むのに対し、甲1発明では、「非晶性ポリアミド(B)」を含んでいない点。 相違点5:「繊維状充填材(C)」の「半芳香族ポリアミド(A)」と「非晶性ポリアミド(B)」の合計100質量部に対する含有量について、本件発明2では、「40~100質量部」であるのに対し、甲1発明では、「非晶性ポリアミド(B)」を含有せず、「繊維状充填材(C)」の「半芳香族ポリアミド(A)」100質量部に対する含有量が「53.9質量部」である点。 相違点6:「ポリアミド樹脂組成物」について、本件発明2では、「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下」であるのに対し、甲1発明では、そのような「飽和吸湿率」は不明な点。 (イ)判断 相違点4について以下に検討する。 甲第1号証には、上記摘記(特に、(甲1c)及び(甲1e)を参照)をみても「繊維強化ポリアミド樹脂組成物」に「非晶性ポリアミド(B)」を配合することは記載されておらず、ましてや、「非晶性ポリアミド(B)」として「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を配合することを動機づける記載はない。 また、甲第3~5号証には、「非晶性ポリアミド」を含む「樹脂組成物」が記載されているものの、甲第3号証は「ポリアミド樹脂組成物」ではなく「ポリアセタール系樹脂」を主成分とする組成物に関するものであるし、甲1発明は(甲1a)及び(甲1b)の記載からみて「カメラモジュールのバレルまたはホルダ」を用途するものであるのに対し、甲第4号証は「レーザー溶着用」の「成形材料」、甲第5号証は「ポリアミド成形品の表面に柔軟なポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを一体成形により熱融着した複合成形体に関する」ものであるから、甲第3~5号証をみても、甲1発明において、「非晶性ポリアミド(B)」を配合することを動機づける記載はないし、ましてや「非晶性ポリアミド(B)」である「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を配合することを動機づける記載はない。 同様に、甲第1、6号証についても、甲1発明において、「非晶性ポリアミド(B)」、さらには、「非晶性ポリアミド(B)」として「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を配合することを動機づける記載はない。 (ウ)小括 したがって、上記相違点5、6について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 ウ 本件発明3、5~10について 本件発明3、5~10は、本件発明2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3、5~10は、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3-1によっても、本件発明2~3、5~10に係る特許を取り消すことはできない。 (4)申立理由3-2(進歩性)について ア 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証の(甲2f)の段落【0043】~【0049】、【0056】~【0061】【表1】の実施例1に着目すると、 「ジカルボン成分としてTPA(テレフタル酸)粉末4560質量部、重合触媒としてSHP(次亜リン酸ナトリウム一水和物)9質量部、末端封鎖剤としてのSTA(ステアリン酸)490質量部を、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したDA(1,10-デカンジアミン)4950質量部を、33質量部/分の速度で、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)にTPA粉末に添加し反応物を得て(原料モノマーのモル比は、DA(1,10-デカンジアミン):TPA(テレフタル酸):STA(ステアリン酸)=49.6:47.4:3.0であった)、得られた反応物を、リボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合し半芳香族ポリアミド(A-1)を得て、 半芳香族ポリアミド(A-1)50質量部を、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)の主供給口に供給し、サイドフィーダーより 強化材(B-1)(ガラス繊維(日本電気硝子社製T-249H、繊維径10.5μm×繊維長3μm)) 50質量部 を供給し溶融混練をおこない、その後、ストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして得た、ポリアミド樹脂組成物ペレット」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「半芳香族ポリアミド(A-1)」は、「芳香族ジカルボン酸成分」として「テレフタル酸」のみを用い、「脂肪族ジアミン」として「炭素数8以上の脂肪族ジアミン」である「1,10-デカンジアミン」のみを用いて重合を行ったポリアミドであるから、本件発明2の「テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有」する「半芳香族ポリアミド(A)」に相当するといえる。 甲2発明の「強化材(B-1)(ガラス繊維(日本電気硝子社製T-249H、繊維径10.5μm×繊維長3μm))」は、本件発明2の「ガラス繊維」である「繊維状充填材(C)」に相当する。 そして、甲2発明の「強化材(B-1)(ガラス繊維(日本電気硝子社製T-249H、繊維径10.5μm×繊維長3μm))」は、「ポリアミド(PA9T-1)」の100質量部に対して、100質量部(=50/50×100)含んでいる。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、 「半芳香族ポリアミド(A)と、繊維状充填材(C)とを含有する樹脂組成物であって、 半芳香族ポリアミド(A)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分とを含有し、 繊維状充填材(C)が、ワラストナイトまたはガラス繊維である、 ポリアミド樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点7:「ポリアミド樹脂組成物」の含有成分として、本件発明2では、「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」である「非晶性ポリアミド(B)」を、「半芳香族ポリアミド(A)」との質量比(A/B)で「90/10~70/30」含むのに対し、甲2発明では、「非晶性ポリアミド(B)」を含んでいない点。 相違点8:「繊維状充填材(C)」の「半芳香族ポリアミド(A)」と「非晶性ポリアミド(B)」の合計100質量部に対する含有量について、本件発明2では、「40~100質量部」であるのに対し、甲2発明では、「非晶性ポリアミド(B)」を含有せず、「繊維状充填材(C)」の「半芳香族ポリアミド(A)」100質量部に対する含有量が「100質量部」である点。 相違点9:「ポリアミド樹脂組成物」について、本件発明2では、「温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間吸湿処理した場合の飽和吸湿率が2.5質量%以下」であるのに対し、甲2発明では、そのような「飽和吸湿率」は不明な点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点7について検討する。 甲第2号証には、上記摘記(甲2b)の段落【0005】には課題の1つとして「低吸水性であり、さらに、吸水した状態でリフロー処理した場合であっても外観が損なわれない」ことが言及されているものの、他の摘記(特に、(甲2c)及び(甲2e)を参照)をみても「繊維強化ポリアミド樹脂組成物」に「非晶性ポリアミド(B)」を配合することは記載されておらず、ましてや、「非晶性ポリアミド(B)」として「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を配合することを動機づける記載はない。 また、他の甲号証をみても、甲2発明において、「非晶性ポリアミド(B)」、さらには、「非晶性ポリアミド(B)」として「アルケマ社製リルサン(登録商標)クリアーG850またはリルサン(登録商標)クリアーG170」を配合することを動機づける記載はない。 (ウ)小括 したがって、上記相違点8、9について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 ウ 本件発明3、5~10について 本件発明3、5~10は、本件発明2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3、5~10は、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3-2によっても、本件発明2~3、5~10に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 特許第6854032号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6854032号の請求項1、4に係る特許に対する申立てを却下する。 当審が通知した取消理由Aおよび申立人がした申立理由1~3によっては、本件発明2-3、5-10に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明2-3、5-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700944

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