特許異議申立
2021-700942
エレベータ
- 審判番号
- 2021-700942
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-136482
- 登録番号
- 6856160
- 請求日
- 2021年10月01日
- 審決日
- 2021年12月24日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】フジテック株式会社
- 【権利者代理人】浅野 哲平
- 【権利者代理人】福屋 好泰
- 【権利者代理人】森 優
- 【権利者代理人】三宅 紘子
- 【異議申立人】足立 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 田村 嘉章
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-Y (B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6856160号発明「エレベータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6856160号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6856160号の請求項1及び2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年8月12日に出願され、令和3年3月22日にその特許権の設定登録がされ、令和3年4月7日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1及び2に係る特許に対して、令和3年10月1日に特許異議申立人足立幸子(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第6856160号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件発明1は、次のとおりである。なお、本件発明2は、本件発明1を更に減縮したものである。
[本件発明1]
「乗りかごに設けられたかご扉の戸開操作を非接触で操作可能に構成されたエレベータであって、
前記かご扉の戸開操作を行うために遮光を検知する非接触式センサと、
前記非接触式センサの遮光検知に基づいて前記かご扉を戸開させる戸開モードを実行するとともに、前記戸開モードの実行中に前記非接触式センサが遮光を検知している状態から遮光を検知しない非検知状態に変化しても前記変化のタイミングから所定時間が経過するまで前記戸開モードを実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記変化のタイミングから前記所定時間内に前記非接触式センサが遮光を検知することを条件に前記所定時間経過後も前記戸開モードを延長し、前記変化のタイミングから前記所定時間内に前記非接触式センサが遮光を検知しないことを条件に前記かご扉を戸閉させる戸閉モードを実行する、
エレベータ。」
第3 申立理由の概要
令和3年10月1日の特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2013-124166号公報
甲第2号証:実願平1-109044号(実開平3-105177号)の マイクロフィルム
甲第3号証:特開平5-270777号公報
甲第4号証:特開平6-32569号公報
甲第5号証:特開2003-335465号公報
第4 甲各号証に記載の事項及び発明
1 甲第1号証・甲1発明(下線は当審で付した。以下同様。)
甲第1号証には、次の事項が記載されている。
(1) 「【0015】
図1~図3に、エレベータ10を示す。
エレベータ10は、昇降路内において、乗りかご11が各階床に設置された乗場の間を昇降する昇降機構部と、その動作を制御する制御装置30とで構成されている。昇降路は、建造物内等に鉛直方向に貫通して設けられた乗りかご11の通路である。昇降路の上には、例えば、乗りかご11を昇降させる巻き上げ機や制御装置30が配置された機械室が設けられる。
【0016】
乗りかご11は、利用者が乗り込むことのできる室内スペースを有し、巻き上げ機の駆動により昇降路内を昇降する。乗りかご11には、乗降口を開閉するかごドア12、かごドア12を開閉するドア開閉装置などが設けられている。また、本実施形態では、乗りかご11内に監視カメラ13が設けられている。
【0017】
乗りかご11は、さらに、かご内操作盤20を備える。かご内操作盤20は、行き先階を登録する行き先階操作部21、かごドア12を開閉操作するドア開閉操作部22、乗りかご11の移動方向等を表示するインジケータ27、及び外部との連絡手段であるインターホン28などを有する。かご内操作盤20は、制御装置30に接続されており、その操作信号は制御装置30に送信される。
【0018】
かご内操作盤20に搭載されたかご内操作部である行き先階操作部21及びドア開閉操作部22は、いずれも非接触式操作部である。非接触式操作部は、操作部に手を触れることなく、例えば、その近傍に手をかざすことで操作可能な操作部である。本実施形態では、非接触式操作部として、赤外線を用いる光電センサ23を例示する。但し、非接触式操作部は、これに限定されず、例えば、静電容量センサとしてもよい。
【0019】
図2に例示する行き先階操作部21の各々は、光電センサ23と、表示部26とを有する非接触式操作部である。表示部26は、正面視略四角形状を呈し、その中央部に階を示す数字が形成されている。また、表示部26の裏側には、LED等の照明が内蔵されており、表示部26の周縁部は、行き先登録がなされたときに点灯する。
【0020】
表示部26は、例えば、押し込み式のボタンとしても機能する。つまり、図2に例示する行き先階操作部21は、その近傍に手をかざすことで操作可能であり、且つ表示部26を押して操作することも可能である。なお、ドア開閉操作部22は、サイズがやや大きい点を除き、行き先階操作部21と同様の構成を有する。
【0021】
光電センサ23は、一対の投光器24及び受光器25を含んで構成されている。光電センサ23は、投光器24から出た赤外線が対となる受光器25に入射する、又は投光器24から対となる受光器25に入射していた赤外線が遮断される、即ち、受光器25に赤外線が入射しなくなることにより操作信号を出力する。なお、検出感度等の観点から前者の
方式が好ましい。一対の投光器24及び受光器25は、表示部26の周囲に配置されることが好適であり、例えば、表示部26の周縁部のうち左右両側の上下方向中央部に配置される。」
(2) 「【0023】
図4及び図5は、それぞれ、図3に示すかご内操作盤20を上方(矢印Aの方向)から見た図、側方(矢印Bの方向)から見た図である。
投光器24は、例えば、表示部26から所定距離離れた前方を赤外線が通過し、且つ受光器25と反対方向には赤外線が広がらないように、赤外線を出射することが好適である。所定距離としては、例えば、表示部26の前方10mm程度が好ましい。また、上下方向に対する赤外線の広がりは、例えば、表示部26の前方10mmの位置において、表示部26の上下方向長さの範囲内であることが好ましい。
【0024】
光電センサ23は、投光器24と受光器25との間において、表示部26の前方10mm~30mm程度の範囲で、指100等の対象物を検知可能な設定とすることが好ましい。光電センサ23により検知される対象物は、赤外線を反射する物であれば特に限定されないが、以下では指100を例示する。図4及び図5では、指100の検知範囲Zを網目ハッチングで示している。光電センサ23では、検知範囲Zに指100がある場合に、投光器24から出射された赤外線が指100にあたって反射し、受光器25に入射するように構成されている。このような構成は、投光器24、受光器25の向きや配置などを調整することにより実現できる。例えば、検知範囲Zから外れた位置で指100に赤外線があたる場合には、受光器25は、当該反射光が入射しないように受光方向が調整される。
【0025】
制御装置30は、乗場呼び操作部及びかご内操作盤20の操作信号に対応する制御を実行する。制御装置30は、例えば、行き先階操作部21の操作により出力される操作信号を取得し、当該操作信号に基づいて行き先階登録を行なう。なお、巻き上げ機は、当該行き先階登録や乗場呼び登録に応じて乗りかご11を移動させる。また、ドア開閉操作部22の操作により出力される操作信号を取得し、ドア開閉装置に指令を与えてかごドア12を開扉又は閉扉させる。」
(3) 「【0028】
時間判定手段31は、非接触式操作部である行き先階操作部21及びドア開閉操作部22の操作により出力される操作信号が閾値時間以上継続したときに、当該操作信号に対応する制御を実行する。閾値時間は、エレベータ10の使用状況等に応じて任意に設定できるが、例えば、0.2秒~2秒程度が好適である。時間判定手段31は、行き先階操作部21の操作信号を閾値時間以上継続して取得したときに、対応する行き先階の登録を行なう。また、ドア開閉操作部22の操作信号を閾値時間以上継続して取得したときに、ドア開閉装置に対してドアの開扉又は閉扉指令を与える。なお、時間判定手段31は、行き先階操作部21の操作に限定して時間判定を実行してもよい。
【0029】
強度判定手段32は、行き先階操作部21及びドア開閉操作部22の操作により出力される操作信号の信号強度が閾値強度以上である場合に、当該操作信号に対応する制御を実行する。強度判定手段32は、操作信号を閾値時間以上継続して取得したときに、さらに当該操作信号の信号強度と閾値強度とを比較して制御の実行条件を限定する。信号強度は、例えば、検知範囲Zの中心から外れるほど小さくなる傾向にあり、これにより、指100が目的としない検知範囲Zの端を通るような場合に発生する誤操作を防止する。」
そこで、上記記載事項を総合し、本件の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「乗りかご11に設けられたかごドア12の開扉を非接触で操作可能に構成されたエレベータ10であって、
前記かごドア12の開扉をするために赤外線の遮断を検知する光電センサ23と、
前記光電センサ23の赤外線の遮断検知に基づいて前記かごドア12の開扉をする制御装置30と、
を備える、
エレベータ10。」
2 甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(1) 「本考案は、エレベータの戸開き時間延長装置に関する。」(明細書第2頁第5ないし6行)
(2) 「まず、かご内の戸開延長釦1が操作されると、戸開延長装置3に対して、戸開延長指令aが出力される。この信号により戸開延長装置3は、自動戸閉じを阻止する様に動作し、タイマ4に対して、戸開延長中信号bを出力し、又、点滅器6に対して応答灯点灯許可信号gを出力する。
戸開延長中信号bにより、タイマ4は、戸開き状態の継続時間の計測を開始する。タイマ4の計測時間が所定値、例えば、3分に達すると、タイマ4が付勢し、戸開延長装置3に対して、タイマ時限満了信号dを出力する。この信号により、戸開延長装置3は、戸開延長動作を終了する。
(明細書第4頁第6ないし17行)
(3) 「又、戸開延長中に再度、戸開延長釦が操作された場合には、戸開延長装置3は、タイマ4に対して、タイマリセット信号cを出力し、点滅間隔の初期化を行う。」
(明細書第5頁第8ないし11行)
そこで、上記記載事項を総合すると、甲第2号証には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「かご内の戸開延長釦1が操作されると、タイマ4は戸開き状態の継続時間の計測を開始し、計測時間が所定値に達する所定時間まで前記戸開き状態とする戸開延長装置3を備え、
前記戸開延長装置3は、戸開延長中に再度、戸開延長釦1が操作された場合には、タイマ4をリセットして戸開き状態の継続時間の計測を開始する、
エレベータ。」
3 甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(1) 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、エレベータ制御装置に関し、特に戸開延長機能を備えたエレベータの運行を制御するエレベータ制御装置に関する。」
(2) 「【0013】図1および図2は請求項1の発明のエレベータ制御装置の一実施例を示している。図において、1は戸開延長ボタン、2は戸閉ボタン、3は図2に示すようにエレベータかご4内とエレベータ停止階のホール5のドア付近に人や荷物などの感知対象物が存在することを感知する赤外線センサのような感知センサ、6は戸開延長中表示ランプ、7は通常の戸開ボタンであり、これらのボタン操作により戸開延長機能を制御する戸開延長シーケンス制御部8、およびドア開閉を制御するドア開閉制御部9が備えられている。」
(3) 「【0016】かごがドアゾーン内に停止している場合、戸開延長ボタン1が押されたかどうかチェックし(ステップS2)、押された場合には、その戸開延長信号がドア開閉制御部9に与えられ、戸開延長タイマをリセットし(ステップS3)、戸開指令および戸開延長中表示ランプ6をセットし、約3分間だけ戸開時間が延長される(ステップS4)。
【0017】そして、戸開延長タイマがタイムオーバーするか(ステップS5)、戸閉ボタン2が押されるか(ステップS6)、感知センサ3が感知動作しないまま一定時間、例えば30秒間が経過したかどうか判断し(ステップS7,S8)、そのいずれかが成立すれば戸開指令および戸開延長中表示ランプ点灯指令をクリアして戸開延長処理を終了する(ステップS10)。
【0018】一方、戸開延長機能が動作している間に感知センサ3が働けば、センサタイマがリセットされ(ステップS7,S9)、戸開延長ボタンが強制的に再度オンとなり、戸開延長機能が更新される(ステップS11)。さらに、戸開延長中に戸開延長ボタン1が再び押された場合にも、戸開延長機能が更新されることになる(ステップS11)。」
そこで、上記記載事項及び図示内容を総合すると、甲第3号証には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「戸開延長ボタン1が押された場合、戸開延長タイマがタイムオーバーするまで戸開時間が延長されるエレベータ制御装置を備え、
前記エレベータ制御装置は、戸開延長中に戸開延長ボタン1が再び押された場合にも戸開延長機能が更新され、エレベータかご4内とエレベータ停止階のホール5のドア付近に人や荷物などの感知対象物が存在することを感知する感知センサ3が感知動作しないまま一定時間が経過するか戸開延長タイマがタイムオーバーすると戸開延長処理を終了する、
エレベータ。」
4 甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が記載されている。
(1) 「【0010】図1はこの発明の一実施例のシステム構成図、図2はエレベータかご内の操作盤の外観図である。エレベータの運行サービスの全体を制御する制御装置1は、ホールからのホール呼び(図示せず)やエレベータかご2内に設置されている操作盤3に設けられている行き先階釦4の操作に応答して巻き上げモータ5を駆動制御してかご2の運転を行なう。つり合い重り6はかご2と重量バランスをとり、かご2の昇降駆動力を小さなもので済ませるためのものである。
【0011】かご内操作盤3には、行き先階釦4と共に、戸開釦7、戸閉釦8が設けられており、この戸開釦7を操作することによって、エレベータ停止時に閉まりかけたエレベータドアを再度開かせることができ、戸閉釦8を操作することによって、開いているエレベータドアをすぐに閉じさせることができる。」
(2) 「【0017】そして、戸開時間延長操作を行なう場合には、図3(b)に示すように、戸開釦7を一定時間、例えば2秒以内に連続して2回以上操作することにより、戸開操作スイッチ部7aからディジタル入力部DIにその操作信号が入力され、CPUがこの操作信号から戸開時間延長指令が入力されたと判断し、ディジタル出力部DOに戸開時間の延長指令、例えば3分間延長指令を与え、ディジタル出力部DOは登録ランプ7bに点灯信号を出力して登録ランプ7bを点灯させると共に、ドアモータ10を駆動して戸開延長時間が経過するまで、例えば3分間、戸開状態を維持する。この戸開時間の延長はRAM内のドアタイマを3分にセットすることにより、3分間カウントダウンする間は戸開するようにプログラムすることによって実現する。
(3) 【0019】以上の動作を、図4のフローチャートに基づいてさらに説明すると、この戸開時間延長動作は、制御装置1内のROMに格納するプログラムによって実現するのであるが、次のようになる。まずRSはリピートスタートポイントであり、各サイクルごとにこのプログラムを実行することを示している。そこでまず、戸開釦7が押されたかどうかチェックし(STEP1)、戸開延長中か否かをチェックし(STEP2)、通常であり、1回目の操作であれば戸開出力を5秒程度出力し(STEP3)、もし2回目であれば、戸開時間延長するために3分間タイマをセットし(STEP4)、戸開登録釦7bを点灯し(STEP5)、戸開出力DTを出力してドアモータ10に戸開動作させる(STEP6)。
(4) 「【0024】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、エレベータかご内の操作盤に設けられている戸開釦を1度操作することによって通常の戸開操作をし、一定時間内に連続して操作することによって戸開時間延長指令を与え、戸開時間を所定時間だけ延長するようにしているため、従来のように別途に戸開時間延長釦を設けなくても、通常の標準の操作盤に設けられている戸開釦を操作して戸開時間延長指令が入力でき、コストの低廉化が図れる。」
(5) 「【図3】(b)
[図:0001384214000001.jpg]
」
(6) 「【図4】
[図:0001384214000002.jpg]
」
そこで、上記記載事項及び図示内容を総合すると、甲第4号証には次の技術的事項が記載されていると認められる。」
「戸開時間延長操作を行なう場合には、エレベータ停止時に閉まりかけたエレベータドアを再度開かせることができる戸開釦7を一定時間、例えば2秒以内に連続して2回以上操作することにより戸開時間の延長指令を与え、戸開延長時間が経過するまで戸開状態を維持する制御装置1を備える、
戸開時間延長釦を設けなくても、戸開釦7を操作して戸開時間延長指令が入力できるエレベータ。」
5 甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が記載されている。
(1) 「【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、コストをかけずに戸開釦を目立つように構成し、問題を解消しようとするものである。本発明の要点は、次のとおりである。即ち、エレベータのかごが任意の階床に到着した時、戸開完了と同時に戸開釦を点灯し、乗客に戸開釦の位置を案内する。その後、戸開時限を満了すれば(或いは戸閉釦が操作されれば)戸閉するが、戸閉完了時点で消灯する。そして、戸閉完了した時点で、次にサービスする階床がない場合(即ち、かご呼びや乗場呼びが存在しない場合)では、戸閉完了後所定時間の間、点灯を維持するか、又は点滅させて、かごから出遅れた乗客の閉じ込めを防ぐ。」
(2) 「【0012】そして、ステップ3において、乗客により戸閉釦20が操作されれば、戸閉指令が発せられ、又戸閉釦20が操作されなくても所定の時間が経過すれば、自動的に戸閉指令が発せられる。この戸閉動作中に万一、エレベータに乗込んでくる人をかご内の乗客が見つければ、ステップ4において本発明のよく目立つ戸開釦10を直ぐに見つけてこの戸開釦10を押すことになる。この場合は、戸開釦10を消灯するとともに、戸開指令を発して戸開動作が行なわれることになる。この際に、間違って戸閉釦20の方を乗客が操作することはほとんど起り得ないはずである。」
そこで、上記記載事項を総合すると、甲第5号証には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「戸閉釦20が操作されれば、戸閉指令が発せられ、又戸閉釦20が操作されなくても所定の時間が経過すれば、自動的に戸閉指令が発せられる、
戸開釦を目立つように戸開完了と同時に戸開釦を点灯し戸閉完了時点で消灯するエレベータ。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「乗りかご11」は、本件発明1の「乗りかご」に相当し、以下同様に、
「かごドア12」は「かご扉」に、
「開扉」は「戸開操作」に、
「エレベータ10」は「エレベータ」に、
「かごドア12の開扉をするために」は「かご扉の戸開操作を行うために」に、
「赤外線の遮断」は「遮光」に、
「光電センサ23」は「非接触式センサ」に、
「かごドア12の開扉をする」ことは「かご扉を戸開させる」ことに、
それぞれ相当する。
そして、本件発明1の「非接触式センサの遮光検知に基づいて前記かご扉を戸開させる戸開モードを実行するとともに、前記戸開モードの実行中に前記非接触式センサが遮光を検知している状態から遮光を検知しない非検知状態に変化しても前記変化のタイミングから所定時間が経過するまで前記戸開モードを実行する制御部」であって、「前記制御部は、前記変化のタイミングから前記所定時間内に前記非接触式センサが遮光を検知することを条件に前記所定時間経過後も前記戸開モードを延長し、前記変化のタイミングから前記所定時間内に前記非接触式センサが遮光を検知しないことを条件に前記かご扉を戸閉させる戸閉モードを実行する」ことと甲1発明の「光電センサ23の赤外線の遮断検知に基づいて前記かごドア12の開扉をする制御装置30」とは、「非接触式センサの遮光検知に基づいて前記かご扉を戸開させる制御部」の限りにおいて一致する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「乗りかごに設けられたかご扉の戸開操作を非接触で操作可能に構成されたエレベータであって、
前記かご扉の戸開操作を行うために遮光を検知する非接触式センサと、
前記非接触式センサの遮光検知に基づいて前記かご扉を戸開させる制御部と、
を備える、
エレベータ。」
[相違点]
「非接触式センサの遮光検知に基づいて前記かご扉を戸開させる制御部」に関し、本件発明1は「非接触式センサの遮光検知に基づいて前記かご扉を戸開させる戸開モードを実行するとともに、前記戸開モードの実行中に前記非接触式センサが遮光を検知している状態から遮光を検知しない非検知状態に変化しても前記変化のタイミングから所定時間が経過するまで前記戸開モードを実行する制御部」であって、「前記制御部は、前記変化のタイミングから前記所定時間内に前記非接触式センサが遮光を検知することを条件に前記所定時間経過後も前記戸開モードを延長し、前記変化のタイミングから前記所定時間内に前記非接触式センサが遮光を検知しないことを条件に前記かご扉を戸閉させる戸閉モードを実行する」のに対し、甲1発明は「光電センサ23の赤外線の遮断検知に基づいて前記かごドア12の開扉をする制御装置30」である点。
(2) 判断
上記相違点について検討する。
本件発明1の「かご扉を戸開させる戸開モード」の「戸開モード」は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0028】に「戸開モードとは、かご扉22A,22Bを戸開方向に移動させるとともに同扉22A,22Bを戸開状態で保持するためのモードである。」と記載されてもいるように、その「かご扉を戸開方向に移動させる」ことを含むから、本件発明1の「非接触式センサ」が「遮光検知」することは、従来周知の例えば「戸開釦」を「押圧」することと同じ機能を含むといえる。そして、当該「戸開釦」と、戸開を延長するのであって「かご扉を戸開方向に移動させる」釦でない「戸開延長釦」とが技術的に異なるものであることは斯界における技術常識といえる。
そうすると、上記第4の2ないし5に記載したとおり、
甲第2号証には、
「かご内の戸開延長釦1が操作されると、タイマ4は戸開き状態の継続時間の計測を開始し、計測時間が所定値に達する所定時間まで前記戸開き状態とする戸開延長装置3を備え、
前記戸開延長装置3は、戸開延長中に再度、戸開延長釦1が操作された場合には、タイマ4をリセットして戸開き状態の継続時間の計測を開始する、
エレベータ。」に係る技術的事項が記載され、
甲第3号証には、
「戸開延長ボタン1が押された場合、戸開延長タイマがタイムオーバーするまで戸開時間が延長されるエレベータ制御装置を備え、
前記エレベータ制御装置は、戸開延長中に戸開延長ボタン1が再び押された場合にも戸開延長機能が更新され、エレベータかご4内とエレベータ停止階のホール5のドア付近に人や荷物などの感知対象物が存在することを感知する感知センサ3が感知動作しないまま一定時間が経過するか戸開延長タイマがタイムオーバーすると戸開延長処理を終了する、
エレベータ。」に係る技術的事項が記載され、
甲第4号証には、
「戸開時間延長操作を行なう場合には、エレベータ停止時に閉まりかけたエレベータドアを再度開かせることができる戸開釦7を一定時間、例えば2秒以内に連続して2回以上操作することにより戸開時間の延長指令を与え、戸開延長時間が経過するまで戸開状態を維持する制御装置1を備える、
戸開時間延長釦を設けなくても、戸開釦7を操作して戸開時間延長指令が入力できるエレベータ。」に係る技術的事項が記載され、
甲第5号証には、
「戸閉釦20が操作されれば、戸閉指令が発せられ、又戸閉釦20が操作されなくても所定の時間が経過すれば、自動的に戸閉指令が発せられる、
戸開釦を目立つように戸開完了と同時に戸開釦を点灯し戸閉完了時点で消灯するエレベータ。」に係る技術的事項が記載されているものの、
上記相違点に係る本件発明1の構成はいずれの甲各号証にも記載も示唆もされていない。
また、上記相違点に係る本件発明1の構成が本件特許に係る出願前において周知技術であったと解する証拠もない。
なお、異議申立人は「『かご扉の戸閉動作が行われている状態でなくとも、再度、戸開釦を操作することにより戸開延長する』ことは、上述の通り、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に開示されている事項である」(特許異議申立書第19頁下から第5ないし1行)旨主張するが、「戸開釦」でなく「戸開延長釦」に係る技術的事項が当該甲第2ないし4号証に開示されているのであって、上記のとおり両釦は技術的に異なるものであるから、この主張は採用できない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る本件発明1の構成により、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された、「本発明のエレベータによれば、非接触式センサが遮光を検知しなくなった第1の非検知タイミングから第1所定時間が経過した後にしか戸閉モードが開始されない。このため、非接触式センサが遮光を検知しなくなっても、その後、第1所定時間が経過するまでの間、戸開状態を継続させることができる。これにより、乗客がうっかり非接触式センサの検出領域外に手などの遮蔽物を移動させてしまった場合などでも第1所定時間が経過するまでの間は戸開操作を再度行うことなく乗りかごに乗降することができる。この結果、乗客が乗りかごに乗降するのに要する時間が不必要に長くなることを抑制できるためエレベータの運行効率の低下を抑制できる。」という効果を奏すると認められ、このような効果は、当業者といえども甲1発明並びに甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術的事項から予測できたものとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を更に減縮したものであり、甲1発明との間に少なくとも上記相違点を有するものである。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700942