特許異議申立
2021-700898
水中油型乳化組成物
- 審判番号
- 2021-700898
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-187209
- 登録番号
- 6903410
- 請求日
- 2021年09月16日
- 審決日
- 2022年12月07日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】浜 俊彦
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 阪野 誠司
- 審判官 田中 耕一郎
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6903410号発明「水中油型乳化組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6903410号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第6903410号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6903410号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年9月26日(優先権主張 平成27年10月30日)に出願され、令和3年6月25日にその特許権の設定登録がされ、同年7月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月16日に特許異議申立人 浜 俊彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 3月 8日付け 取消理由通知
同年 5月13日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月31日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 6月17日 意見書の提出(申立人)
同年 7月12日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 9月 2日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月15日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、令和4年5月13日になされた訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、令和4年9月15日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、申立人による意見の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年9月2日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、「特許第6903410号の特許請求の範囲を本請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1からなるものである。
<訂正事項1>
訂正前の請求項1の「(但し、下記の組成物を除く:
キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物;及び
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物)」との記載を、「(但し、下記の組成物を除く:
キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物;
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物であって、下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子を含む水中油型乳化組成物:
【化1】
[図:0001395181000001.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000002.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。);及び
皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膚形成剤および清涼剤を含有する皮膚化粧料。)」に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。)。
(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)
なお、訂正前の請求項2及び3は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1によって、訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものであるので、本件訂正は一群の請求項について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項1では、対象とする水中油型乳化組成物から、以下のa~c(以下、それぞれ「外用剤a」、「組成物b」及び「組成物c」という。)を、いわゆる「除くクレーム」により除外していた。
a 「キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤」
b 「ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物」
c 「ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物」
これに対して、上記訂正事項1に係る訂正は、令和4年3月8日付けで通知した取消理由(新規性欠如、進歩性欠如)及び同年7月12日付けで通知した取消理由(進歩性欠如)に対応して、甲第1号証(以下「甲1」という。また、甲第○号証を同様に「甲○」という。)及び甲2に記載された事項である、以下のd及びe(以下、それぞれ「組成物d」及び「化粧料e」という。)を、「除くクレーム」により、訂正前の請求項1に係る発明から更に除外するものである。それゆえ、上記訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新たな技術事項を導入するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
d 「低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物であって、下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子を含む水中油型乳化組成物:
【化1】
[図:0001395181000003.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000004.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)」
e 「皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膚形成剤および清涼剤を含有する皮膚化粧料」
3 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、本件訂正に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正後の請求項1~3に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」という。また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物
(但し、下記の組成物を除く:
キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物;
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物であって、下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子を含む水中油型乳化組成物:
【化1】
[図:0001395181000005.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000006.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。);及び
皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膚形成剤および清涼剤を含有する皮膚化粧料。)。
【請求項2】
さらにジクロフェナクまたはその塩を含有する、請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
水中油型乳化皮膚外用剤である請求項1または2に記載する水中油型乳化組成物。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人が、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る特許に対して申し立てていた特許異議の申立理由は、概略、以下の(1)~(3)のとおりであって、申立人は、特許異議申立書に添付して、証拠方法として、下記(4)の甲1~甲12を提出した。
(1)申立理由1(新規性欠如)
本件発明1及び3は、甲1、甲2又は甲3に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1~3は、主引例である甲1、甲2又は甲3に記載された発明、及び副引例である甲4~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件違反、サポート要件違反)
本件発明1~3は、以下のア~ウの点で、発明の詳細な説明に記載したものでなく、発明の詳細な説明において当業者が実施できる程度に記載されていないから、特許法36条6項1号及び同条4項1号に規定される要件を満たしていない。それゆえ、請求項1~3に係る特許は同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 本件発明では、分散相にあたる「油」は特定されておらず、本件発明に係る「水中油型乳化組成物」を特定するために必要と認められる発明特定事項の全てが特許請求の範囲に記載されているとは理解できないし、そのような発明は実施できない。また、乳化状態をとり得ない実施例以外の組成物について、乳化が安定化されたかどうかを判断できない。
イ 甲8の比較例1として記載された、本件発明1と同じ構成を有する「皮膚外用乳化製剤」が乳化安定性に劣ることが実験により確認されており、本件発明に係る「水中油型乳化組成物」を特定するために必要と認められる発明特定事項の全てが特許請求の範囲に記載されているとは理解できないし、本件発明が、乳化安定性に係る本件発明の課題を達成できるものとして認識できない。また、実施例以外の乳化安定性に劣る本件発明に係る組成物について、乳化を安定化させるために過度な実験を要する。
ウ 乳化の安定化を評価している実施例/比較例を対比すると、無水エタノールの含有量は10重量%又は20重量%のみである。甲6の記載から、乳化を不安定にさせる原因である「低級アルコール」の含有量が20重量%を超える場合においても、乳化安定化が達成できると認識することは困難である。そうすると、本件発明は、その技術範囲の全体において、本件特許出願の課題を解決できるとして一般化できるものとはいえないし、また本件明細書の記載は、本件発明を当業者が実施できる程度に十分かつ明確に記載したものとはいえない。
(4) 証拠方法(甲号証)
甲1 特開2014-70032号公報
甲2 特開2000-239139号公報
甲3 特開2013-147486号公報
甲4 特開昭59-76013号公報
甲5 特表2012-505909号公報
甲6 特開昭59-89621号公報
甲7 「新版 界面活性剤ブック」、平成3年1月20日 2版、工学図書株式会社発行、226~245頁
甲8 特開平11-255640号公報
甲9 Chemical Book「カルボマー940」(https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB72130355.htm)
甲10 化粧品成分オンライン「カルボマーとは・・・成分効果と毒性を解説」(https://cosmetic-ingredients.org/stabilizing/%e3%82%ab%e3%83%ab%e3%83%9c%e3%83%9e%e3%83%bc%e3%81 %ae%e6%88%90%e5%88%86%e5%8a%b9%e6%9e%9c%e3%81%a8%e6%af%92%e6%80%a7/)(公開日:2016年8月5日、検索日:2021年9月3日)
甲11 CELLA COSMETICS成分辞典「カルボマー」(https://ce11a.jp/ingredient/detail.php?p_id=1361)(検索日:2021年9月3日)
甲12 化粧品・原料データベース「Carbopol(R) 934 Polymer」(https://www.iwasedatabase.jp/s/db-ingredients/a0N2u0000005kZZEAY/carbopol-934-polymer?language=ja)(検索日:2021年9月3日)
2 令和4年3月8日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和4年3月8日付け取消理由通知で通知した取消理由は、上記1の特許異議の申立理由1及び2の甲1又は甲2に基づく新規性欠如及び進歩性欠如を理由とするものであり、概略は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
なお、上記第2の2のとおり、本件訂正により、甲1及び甲2にそれぞれ記載された事項である「組成物d」及び「化粧料e」が除外されたため、取消理由1及び取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は解消された。
(1)取消理由1(新規性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1又は甲2に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、同許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1又は甲2に記載された発明及び本件優先日当時の周知技術(甲4~6)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)引用文献(甲号証)
甲1 特開2014-70032号公報
甲2 特開2000-239139号公報
甲4 特開昭59-76013号公報
甲5 特表2012-505909号公報
甲6 特開昭59-89621号公報
3 令和4年7月12日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和4年5月13日提出の訂正請求書により訂正された請求項1~3に係る特許に対して、当審合議体が同年7月12日付け取消理由通知(決定の予告)「以下「取消理由通知(決定の予告)」という。」で通知した取消理由2-2(進歩性欠如)は、上記2の取消理由2(進歩性欠如)の甲2に基づくものであり、概略、以下のとおりである。
(1)取消理由2-2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の周知技術(甲4~6)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)引用文献(甲号証)
甲2 特開2000-239139号公報
甲4 特開昭59-76013号公報
甲5 特表2012-505909号公報
甲6 特開昭59-89621号公報
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由2-2についての判断
1 甲2に記載された事項及び甲2記載の発明
(1)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。
甲2a 「【請求項1】 皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膜形成剤および清涼剤を含有することを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項2】 低級アルコールが、エタノール及び/又はイソプロピルアルコールである請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】 球状粉末が、平均粒径1~50μmの球状粉末である請求項1または請求項2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】 皮膜形成剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリンおよびトリメチルシロキシケイ酸からなる群から選ばれた一種または二種以上である請求項1、2または3記載の皮膚化粧料。
【請求項5】 清涼剤が、メントール、メントール誘導体、カンファー、カンファー誘導体および精油からなる群から選ばれた一種または二種以上である請求項1、2、3または4記載の皮膚化粧料。
【請求項6】 球状粉末の含有量が皮膚化粧料全量中0.1~10重量%であり、皮膜形成剤の含有量が皮膚化粧料全量中0.01~5重量%であり、清涼剤の配合量が皮膚化粧料全量中0.001~3重量%である請求項1、2、3、4または5記載の皮膚化粧料。」
甲2b 「【0016】本発明に用いる低級アルコールは、使用性調整剤、防腐助剤として化粧料において汎用されている。本発明においては、好ましくは清涼感を付与するのに効果的なエタノールおよび/またはイソプロピルアルコールが用いられる。
・・・
【0019】本発明に用いる清涼剤としては、具体的には、メントール、乳酸メンチル等のメントール誘導体、カンファー、カンファー誘導体、精油類等が好適に用いられる。これらの清涼剤は一種または二種以上が選択され用いられる。精油は清涼感を持つものが好ましく、例えば、成分としてメントール類、カンファー類を含有するものが好ましい。精油の具体例としては、ユーカリ油、ハッカ油等が挙げられる。
【0020】本発明における低級アルコールの配合量は、10重量%以上が必須であり、好ましくは15重量%以上である。配合量が10重量%未満では塗布時の清涼感、ひきしめ感、はり感が十分得られない。上限は本発明の効果の点では特に限定されないが、製造のしやすさの点を考慮すれば、60重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、40重量%以下である。
・・・
【0023】本発明における清涼剤の配合量は、好ましくは0.001~3.0重量%であり、さらに好ましくは0.01~1.5重量%である。配合量が0.001重量%未満では清涼感、ひきしめ感、はり感が十分でなく、これらの持続性も十分でない。また、配合量が3.0重量%を超えてもより一層の効果の増強は期待できない。
【0024】本発明の皮膚化粧料には、上記構成成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ一般的に化粧料に配合される各種成分を配合し、剤形に応じて常法により製造することができる。配合可能成分としては、例えば、油性成分、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然および合成高分子、水溶性および油溶性高分子、紫外線吸収剤、血行促進剤、各種抽出液、無機および有機顔料、無機および有機粘土鉱物、金属石鹸処理またはシリコーン類で処理された無機および有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、その他の薬剤等が挙げられる。」
甲2c 「【0030】
「実施例5 O/W乳化タイプ 乳液」
(1)エチルアルコール 15.0 重量%
(2)グリセリン 3.0
(3)PEG 1500 2.0
(4)カルボキシビニルポリマー 0.4
(5)トリエタノールアミン 0.8
(6)ステアリン酸 2.0
(7)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2.0
(8)セタノール 1.5
(9)流動パラフィン 5.0
(10)ジメチルポリシロキサン 5.0
(11)エデト酸3ナトリウム 0.05
(12)球状セルロース(平均粒径 20μm) 3.0
(13)ポリビニルアルコール 1.0
(14)メントール 0.3
(15)エチルパラベン 0.1
(16)香料 0.1
(17)イオン交換水 残余
常法により乳化組成物を調製した。得られた乳化組成物は、塗布時および塗布後の清涼感、肌のひきしめ感・はり感に優れ、かつ、べたつかず、さらにこれらの効果が持続する優れたO/W乳化タイプ乳液であった。」
(2)甲2記載の発明
甲2の請求項1に記載の皮膚化粧料(甲2a)に係る発明の実施の態様である、実施例5の記載(甲2c)からみて、甲2には、
「以下の組成を有する
(1)エチルアルコール 15.0 重量%
(2)グリセリン 3.0
(3)PEG 1500 2.0
(4)カルボキシビニルポリマー 0.4
(5)トリエタノールアミン 0.8
(6)ステアリン酸 2.0
(7)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2.0
(8)セタノール 1.5
(9)流動パラフィン 5.0
(10)ジメチルポリシロキサン 5.0
(11)エデト酸3ナトリウム 0.05
(12)球状セルロース(平均粒径 20μm) 3.0
(13)ポリビニルアルコール 1.0
(14)メントール 0.3
(15)エチルパラベン 0.1
(16)香料 0.1
(17)イオン交換水 残余
O/W乳化タイプ乳液」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める(下線は、合議体による。)。
2 甲4~6に記載された事項
(1)甲4に記載された事項
甲4には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。
甲4a 「1. 有効成分のジクロフエナツクナトリウムを、媒体としての水、低級アルカノール類およびグリコール類、ゲル化剤としてのカルボキシビニル重合体および中和剤としての弱塩基性物質で製剤化してなることを特徴とする外用ゲル製剤。」(特許請求の範囲)
甲4b 「上記のような状況において、この発明の発明者はすぐれた消炎鎮痛作用を有するジクロフエナツクナトリウムの外用剤を研究した結果この発明をなすにいたつたもので、有効成分のジクロフエナツクナトリウムを、媒体としての水、低級アルカノール類およびグリコール類、ゲル化剤としてのカルボキシビニル重合体および中和剤としての弱塩基性物質で製剤化してなることを特徴とする外用ゲル製剤を提供するものである。この発明の外用ゲル製剤は、経皮吸収による優れた消炎鎮痛効果を有するとともに安定性に優れ使用感の良好な製剤である。」(2頁右上欄6~17行)
(2)甲5に記載された事項
甲5には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。
甲5a 「【請求項1】
局所的に投与可能なビヒクルに、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤、および少なくとも1種の感覚剤、および任意選択により自己温熱系を含む、これを必要としている患者において疼痛または炎症を軽減するための局所医薬組成物。
【請求項2】
局 所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤が、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を含む、請求項1に記載の組成物。」
(3)甲6に記載された事項
甲6には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。
甲6a 「(1) 約5~約7.5のpHを有し;約10~約50重量%の水溶性で揮発性の炭素原子数2~4の低級アルカノール、約1~約20重量%の共溶媒、約40~約80重量%の水、約3~約15重量%の場合により自ら乳化する脂質もしくは脂質混合物、脂質相が自ら乳化しない場合には場合により約0.5~約5重量%の乳化剤を、さらに、約0.5~約2重量%のゲル化剤、活性成分として少くとも一の酸性基を有する約0.1~約10重量%の非ステロイド系、抗炎症活性化合物、及び要すれば非本質的な成分を含有することを特徴とする、水中油型の乳剤を基調とし、活性成分として1以上の酸性基を有する非ステロイド系抗炎症活性化合物を含有している新規でほぼ中性の局所的に投与し得る薬剤組成物。
・・・
(13) 1以上の酸性基を有する非ステロイド系抗炎症作用化合物がジクロフエナツク又はその塩である特許請求の範囲第1項~第11項のいずれかに記載の薬剤組成物。」(特許請求の範囲)
甲6b 「一般的な経験則によれば、水溶性低級アルコールを本願で開示された濃度でo/w型乳剤に混和すると、エマルジョンの破壊が起るはずであるが、安定した形でかかる薬学的製剤の製造が初めて成功したということは、非常に驚くべきことである。というのは、乳化剤が部分的に溶解する結果、乳剤を安定化させる乳化剤膜が弱くなると思われたからである。」(3頁左下欄9~16行)
3 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
本件特許明細書には、本件発明1の「低級アルコール」としてエタノール等が(【0015】)、「多価アルコール」としてグリセリン等が(【0033】)、「増粘剤」としてカルボキシビニルポリマー等が(【0028】)、「モノテルペン」としてメントール等が挙げられている(【0026】)。
そうしてみれば、甲2発明の「エチルアルコール」(エタノールともいう。)、「メントール」、「グリセリン」及び「カルボキシビニルポリマー」は、それぞれ、本件発明1の「低級アルコール」、「モノテルペン」、「多価アルコール」及び「増粘剤」に相当する。また、本件発明1の水中油型乳化組成物は乳液の形態を有するものであるから、甲2発明の「O/W乳化タイプ乳液」は、本件発明1の「ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物」に相当する。さらに、甲2発明において、「エチルアルコール」の配合量である15.0重量%は、本件発明1の「低級アルコール」の配合量の「3~30重量%」の範囲に含まれる。
そして、本件発明1は、水中油型乳化組成物の成分として、低級アルコール、モノテルペン、増粘剤及び多価アルコール以外の成分や、低級アルコール以外の成分の含有量については規定されていないから、甲2発明が上記以外の成分を含有する点は、本件発明1との相違点にはならない。
したがって、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物。」
<相違点1>
本件発明1においては、「(但し、下記の組成物を除く:
キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物;及び
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物;
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物であって、下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子を含む水中油型乳化組成物:
【化1】
[図:0001395181000007.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000008.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。);及び
皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膚形成剤および清涼剤を含有する皮膚化粧料。)」と規定されているのに対し、甲2発明においてはかかる規定がない点。
(2)相違点1についての判断
本件発明1は、上記第2の3で述べたように、「低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物」から、「除くクレーム」により、外用剤a、組成物b~d及び化粧料eを除外したものである。甲2発明は、これらの除外されたもののうち、化粧料eに該当するから(化粧料eは、甲2の請求項1に記載の皮膚化粧料(甲2a)に該当し、甲2発明はその実施態様である。)、相違点1は実質的な相違点といえる。
そして、甲2の記載や甲4~6の記載(皮膚外用剤において、消炎剤や抗炎症剤としてジクロフェナクを配合すること)を参酌しても、甲2発明は、化粧料e、すなわち、甲2の請求項1に記載の皮膚化粧料自体であるから、甲2発明から化粧料eを除くことは、論理的に意味をなさないもので、これを動機付けるような記載や示唆は見当たらないし、外用剤a及び組成物b~dを除くことを動機付けるような記載や示唆も見当たらない。
また、甲2発明から、例えば、「球状粉末」である「(12)球状セルロース(平均粒径 20μm)」を含まない組成に改変したものは組成物eではないから、この改変したものは本件発明1となり得るが、甲2の請求項1に記載の皮膚化粧料における課題を解決するための必須成分である「球状粉末」は、甲2発明において一体不可分なものであるから、甲2発明からこれを含まない組成とするような改変をする動機付けはない。
したがって、本件発明1は、甲2発明並びに甲2及び甲4~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
4 本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1の水中油型乳化組成物について、「さらにジクロフェナクまたはその塩を含有する」と特定するものである。また、本件発明3は、本件発明1又は2の水中油型乳化組成物について、「水中油型乳化皮膚外用剤である」と特定するものである。
本件発明2及び3と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。
相違点1については、上記3で述べたように、甲2の記載や甲4~6の記載を参酌しても、当業者がそのような構成を採ることの動機付けが見当たらないから、本件発明2及び3は、甲2発明並びに甲2及び甲4~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
5 小括
以上のとおり、本件発明1~3は、特許法29条2項に違反してされたものであるとはいえないので、本件請求項1~3に係る特許は同法113条2号の規定により取り消されるべきものではなく、取消理由2-2は理由がない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知(決定の予告)で採用した特許異議の申立理由は、上記第4の1の申立理由のうち、申立理由2の甲2に基づく進歩性欠如を理由とするものであり、以下の申立理由については採用していない。
1 申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)
2 申立理由1(甲2に基づく新規性欠如)
3 申立理由1及び2(甲3に基づく新規性・進歩性欠如)
4 申立理由3(実施可能要件違反、サポート要件違反)
以下に、これらの採用しなかった申立理由についての当審合議体の判断を述べる。
1 申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。
甲1a 「【請求項1】
(a)下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子、(b)内相としての油性成分、(c)外相としての水性成分、とを含む水中油型乳化組成物であって、前記(a)のポリマーソーム粒子が、前記(b)成分より形成される内相と前記(c)成分より形成される外相との界面に存在する、ことを特徴とする水中油型乳化組成物。
【化1】
[図:0001395181000009.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000010.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)」
甲1b 「【0153】
<フローラル系調合香料A>
(1)オレンジ油 5
(2)ジハイドロミルセノール 5
(3)リナロール 7
(4)酢酸リナリル 3
(5)酢酸ベンジル 5
(6)ローズ ベース 15
(7)ヘキシルシンナムアルデヒド 5
(8)メチル ヨノン ガンマ 5
(9)ガラクソライド 10
(10)エディオン 20
(11)リリアール 10
(12)その他香料 10 」
甲1c 「【0157】
[実施例4:日焼け止め乳液]
<処方>
成分 配合量(質量%)
(ポリマーソーム成分)
POB(15)POE(44)ジメチルダイマージオ
ールエーテル 0.95
オクタン酸オクチル 0.3
エタノール 5
(油性成分)
イソドデカン 8
ジメチルポリシロキサン*1 5
オクチルメトキシシンナメート 5
オクトクリレン 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニ
ルトリアジン 3
オキシベンゾン 1
フローラル系調合香料A 2
(水性成分)
1,3-ブチレングリコール 5
トリエタノールアミン 0.1
キサンタンガム 0.1
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))
コポリマー 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
トラネキサム酸 2
タルク 3
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
精製水 残余
<製造方法>
ポリマーソーム成分(POB(15)POE(44)ジメチルダイマージオールエーテル、エタノール、オクタン酸オクチル)を秤量・攪拌し、均一透明な混合液を得た。水性成分を十分に溶解させた水相を攪拌しながら当該混合液を滴下し、ポリマーソーム水分散液を得た。当該水分散液に別途混合・溶解させた油相成分を徐々に加え、ホモミキサーで均一になるまでせん断混合し、水中油型日焼け止め乳液を得た。 」
(2)甲1記載の発明
甲1の請求項1に記載の水中油型乳化組成物(甲1a)に係る発明の実施の態様である、実施例4(甲1c)及びフローラル系調合香料Aの組成に関する記載(甲1b)からみて、甲1には、
「下記の処方からなる水中油型日焼け止め乳液
<処方>
成分 配合量(質量%)
(ポリマーソーム成分)
POB(15)POE(44)ジメチルダイマージオ
ールエーテル 0.95
オクタン酸オクチル 0.3
エタノール 5
(油性成分)
イソドデカン 8
ジメチルポリシロキサン*1 5
オクチルメトキシシンナメート 5
オクトクリレン 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニ
ルトリアジン 3
オキシベンゾン 1
フローラル系調合香料A 2
(水性成分)
1,3-ブチレングリコール 5
トリエタノールアミン 0.1
キサンタンガム 0.1
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))
コポリマー 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
トラネキサム酸 2
タルク 3
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
精製水 残余
上記フローラル系調合香料Aは以下の組成を有する。
<フローラル系調合香料A>
(1)オレンジ油 5
(2)ジハイドロミルセノール 5
(3)リナロール 7
(4)酢酸リナリル 3
(5)酢酸ベンジル 5
(6)ローズ ベース 15
(7)ヘキシルシンナムアルデヒド 5
(8)メチル ヨノン ガンマ 5
(9)ガラクソライド 10
(10)エディオン 20
(11)リリアール 10
(12)その他香料 10 」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める(下線は、合議体による。)。
(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件特許明細書には、「多価アルコール」として1,3-ブチレングリコール等が(【0033】)、増粘剤としてカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム等が(【0028】)挙げられている。
そうしてみれば、甲1発明の「エタノール」及び「1,3-ブチレングリコール」は、それぞれ本件発明1の「低級アルコール」及び「多価アルコール」に相当し、甲1発明の「キサンタンガム」及び「カルボキシビニルポリマー」は、本件発明1の「増粘剤」に相当する。また、本件発明1の水中油型乳化組成物は乳液の形態を有するものであるから、甲1発明の「水中油型日焼け止め乳液」は、本件発明1の「ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物」に相当し、甲1発明において、「エタノール」の配合量である5質量%は、本件発明1の「低級アルコール」の配合量の「3~30重量%」の範囲に含まれる。さらに、甲1発明の「フローラル系調合香料A」は、本件発明1に含まれるモノテルペンとして例示されているリナロール(本件特許明細書の【0026】)を含有するものであるから、甲1発明は、本件発明1の「モノテルペン」を含有するものである。
そして、請求項1には、水中油型乳化組成物の成分として、低級アルコール、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコール以外の成分や、低級アルコール以外の成分の含有量については規定されていないから、甲1発明が上記以外の成分を含有する点は、本件発明1との相違点にはならない。
したがって、両者は、以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物。」
<相違点2>
本件発明1においては、「(但し、下記の組成物を除く:
キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物;及び
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物;
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物であって、下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子を含む水中油型乳化組成物:
【化1】
[図:0001395181000011.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000012.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。);及び
皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膚形成剤および清涼剤を含有する皮膚化粧料。)」と規定されているのに対し、甲1発明においてはかかる規定がない点。
(イ)上記相違点2について検討する。
甲1発明は、本件発明1において、「除くクレーム」により除外された外用剤a、組成物b~d及び化粧料eのうち、組成物dに該当するから、相違点2は実質的な相違点といえる。
そして、甲1の記載や甲4~6の記載(皮膚外用剤において、消炎剤や抗炎症剤としてジクロフェナクを配合すること)を参酌しても、甲1発明から、上記第5の3(2)のとおり、組成物dを除くことを動機付けるような記載や示唆は見当たらないし、外用剤a、組成物b及びc並びに化粧料eを除くことを動機付けるような記載や示唆も見当たらない。また、甲1発明の組成を改変しようとする動機もない。
したがって、本件発明1は、甲1発明並びに甲1及び甲4~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1の水中油型乳化組成物について、「さらにジクロフェナクまたはその塩を含有する」と特定するものである。また、本件発明3は、本件発明1又は2の水中油型乳化組成物について、「水中油型乳化皮膚外用剤である」と特定するものである。
本件発明2及び3と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点2で相違する。
そして、相違点2については、上記アで述べたように、甲1の記載や甲4~6の記載を参酌しても、当業者がそのような構成を採ることの動機付けが見当たらないから、本件発明2及び3は、甲1発明並びに甲1及び甲4~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
ウ したがって、申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)については、理由がない。
2 申立理由1(甲2に基づく新規性欠如)について
上記第5の3及び4で述べたように、本件発明1~3と甲2発明とは、相違点1で実質的に相違する。
したがって、申立理由1(甲2に基づく新規性欠如)については、理由がない。
3 申立理由1及び2(甲3に基づく新規性・進歩性欠如)について
(1)甲3に記載された事項
甲3には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。
甲3a 「【請求項1】
下記式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと、下記式(2)の疎水性モノマーと、下記式(3)の架橋性モノマーとを、下記(A)及び(B)の条件で重合して得られることを特徴とする共重合体からなるコロナ-コア型ミクロゲル乳化剤。
(A)前記ポリエチレンオキシドマクロモノマーの仕込みモル量/前記疎水性モノマーの仕込みモル量で表されるモル比が1:10~1:250であること。
(B)前記架橋性モノマーの仕込み量が、前記疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1~1.5質量%であること。
【化1】
[図:0001395181000013.jpg]
(1)
R1は炭素原子数1~3のアルキルを表し、nは8~200の数である。XはHまたはCH3を表す。
【化2】
[図:0001395181000014.jpg]
(2)
R2は炭素原子数1~3のアルキルを表し、R3は炭素原子数1~12のアルキルを表す。
【化3】
[図:0001395181000015.jpg]
(3)
R4とR5はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキルを表し、mは0~2の数である。
・・・
【請求項3】
請求項1又は2記載の(a)コロナ-コア型ミクロゲル乳化剤と、(b)油相成分と、(c)水相成分とを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項4】
請求項3記載の水中油型乳化組成物において、(b)油相成分として香料を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。」
甲3b 「【0049】
さらに、本発明の(b)油相成分として香料を用いることで、香りの持続性に優れた水中油型乳化組成物を得ることができる。本発明に用いる香料としては、動物又は植物より得られる天然香料と、化学的合成手段によって製造される合成香料、及びそれらの混合物である調合香料が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、目的とする製品に応じて、これら香料の任意の一種または二種以上を用いることができる。香料成分としては、具体的には、アセチベノール、アニスアルデヒド、アネトール、アミルアセテート、アミルサリシレート、アリルアミルグリコレート、アリルカプロエート、アルデヒドC6~20、アンブレットライド、アンブレットリド、アンブロキサン、イオノン、イソイースーパー、オイゲノール、オウランチオール、ガラクソリド、カローン、クマリン、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、サンダロア、サンタロール、サンデラ、シクラメンアルデヒド、シス-3-ヘキセニルアセテート、シス-3-ヘキセノール、シトラール、シトロネリルアセテート、シトロネロール、シネオール、ジハイドロミルセノール、ジャスモラクトン、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、スチラリルアセテート、セドリルアセテート、セドロール、ダマスコン、ダマセノン、デカラクトン、テルピニルアセテート、テルピネオール、トナリッド、トナリド、トリプラール、ネロール、バクダノール、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルアルコール、ヘキシルサリシレート、ベチベリルアセテート、ヘディオン、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ベルトフィックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ペンタリッド、ペンタリド、ボルニルアセテート、マイオール、ムスクケトン、メチルアンスラニレート、メチルジヒドロジャスモネート、ヤラヤラ、ライムオキサイド、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズオキサイド、ロジノール、アンジェリカオイル、アニスオイル、アルモアゼオイル、バジルオイル、ベイオイル、ベルガモットオイル、カラムスオイル、カンファーオイル、カナンガオイル、カルダモンオイル、カッシアオイル、セダーウッドオイル、セロリオイル、カモミールオイル、シナモンオイル、クローブオイル、コリアンダーオイル、クミンオイル、ディルオイル、エレミオイル、エストラゴンオイル、ユーカリオイル、フェンネルオイル、フェヌグリークオイル、ガルバナムオイル、ゼラニウムオイル、ジンジャーオイル、グレープフルーツオイル、ガヤックウッドオイル、ヒバオイル、ヒノキオイル、ジュニパーベリーオイル、ラバンジンオイル、ラベンダーオイル、レモンオイル、ライムオイル、マンダリンオイル、ジラムオイル、モミザオイル、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ミルオイル、ミルトルオイル、ナツメグオイル、オークモスオイル、オリバナムオイル、オポポナックスオイル、オレンジオイル、パセリオイル、パチュリオイル、ペッパーオイル、ペリラオイル、プチグレンオイル、ネロリオイル、オレンジフラワーオイル、ピメントオイル、オールスパイスオイル、パインオイル、ローズオイル、ローズマリーオイル、クラリセージオイル、セージオイル、サンダルウッドオイル、スチラックスオイル、タジェオイル、タイムオイル、チュベローズオイル、バレリアンオイル、ベチバーオイル、バイオレットリーフオイル、ウィンターグリーンオイル、ワームウッドオイル、イランイランオイル、ユズオイル、カッシーアブソリュート、ジュネアブソリュート、ヒヤシンスアブソリュート、インモルテルアブソリュート、ジャスミンアブソリュート、ジョンキルアブソリュート、ナルシスアブソリュート、ローズアブソリュート、バイオレットリーフアブソリュート、ベンゾインから選ばれる一種または二種以上を用いることができる。」
甲3c 「【0086】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。・・・配合量は特に断りのない限り、質量%で表す。
・・・
【0127】
以下に本発明の水中油型乳化組成物を配合した各種化粧料の処方例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の処方例によって得られた化粧料は、いずれも乳化安定性が高く、皮膚刺激性が低く、使用感触に優れたものであった。なお、実施例中のミクロゲル配合量は純分換算した値である。
・・・
【0131】
(実施例4:日焼け止め乳液)
製造例6のミクロゲル 1.2
イソドデカン 8
オクタン酸オクチル 5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
オクトクリレン 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニル
トリアジン 3
オキシベンゾン 1
エタノール 5
1,3-ブチレングリコール 5
トリエタノールアミン 0.1
キサンタンガム 0.1
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))
コポリマー 0.1
カルボマー 0.1
トラネキサム酸 2
タルク 3
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
精製水 残量
香料 適量 」
(2)甲3記載の発明
甲3の請求項3又は4記載の水中油型乳化組成物(甲3a)に係る発明の実施の態様である実施例4(甲3c)からみて、甲3には、
「以下の処方からなる日焼け止め乳液。
製造例6のミクロゲル 1.2(質量%)
イソドデカン 8
オクタン酸オクチル 5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
オクトクリレン 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニル
トリアジン 3
オキシベンゾン 1
エタノール 5
1,3-ブチレングリコール 5
トリエタノールアミン 0.1
キサンタンガム 0.1
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))
コポリマー 0.1
カルボマー 0.1
トラネキサム酸 2
タルク 3
フェノキシエタノール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
精製水 残量
香料 適量 」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める(下線は、合議体による。)。
(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲3発明とを対比する。
本件特許明細書には、本件発明1の「低級アルコール」としてエタノール等が(【0015】)、「多価アルコール」として1,3-ブチレングリコール等が(【0033】)、「増粘剤」としてキサンタンガム、カルボキシビニルポリマー等が挙げられている(【0028】)。
そうしてみれば、甲3発明の「エタノール」及び「1,3-ブチレングリコール」は、それぞれ本件発明1の「低級アルコール」及び「多価アルコール」に相当し、甲3発明の「キサンタンガム」及び「カルボマー」は、本件発明1の「増粘剤」に相当する(甲10及び甲11を参照。甲10及び甲11には、「カルボマー」が「カルボキシビニルポリマー」であることが記載されている。)。また、本件発明1の水中油型乳化組成物は乳液の形態を有するものであり、水中油型乳化組成物である甲3発明の「日焼け止め乳液」は、本件発明1の「ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物」に相当し、甲3発明において、「エタノール」の配合量である5質量%は、本件発明1の「低級アルコール」の配合量の「3~30重量%」の範囲に含まれる。
そして、本件発明1は、水中油型乳化組成物の成分として、低級アルコール、モノテルペン、増粘剤及び多価アルコール以外の成分や、低級アルコール以外の成分の含有量については規定されていないから、甲3発明が上記以外の成分を含有する点は、本件発明1との相違点にはならない。
したがって、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「低級アルコールを3~30重量%、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物。」
<相違点3>
本件発明1の水中油型乳化組成物は、モノテルペンを含有するのに対し、甲3発明は、香料を含有する点。
<相違点4>
本件発明1においては、「(但し、下記の組成物を除く:
キサンチン誘導体と、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピルおよびジネオペンタン酸アルキレンポリグリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の油分とを含む皮膚外用剤;
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、水、及びカルボマーを含有するナノゲル組成物;及び
ジクロフェナクナトリウム、エタノール、メントール、ポリソルベート80,グリセロール、大豆油、サリチル酸メチル、及び水を含有するナノエマルジョン組成物;
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物であって、下記一般式(1)または(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム粒子を含む水中油型乳化組成物:
【化1】
[図:0001395181000016.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。mは前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、lおよびnは前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦l+n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。)
【化2】
[図:0001395181000017.jpg]
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、Zはダイマージオールから水酸基を除いた残基であり、これらの付加形態はブロック状である。a1およびa2は前記オキシアルキレン基の平均付加モル数、b1およびb2は前記オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦a1+a2≦150、1≦b1+b2≦150である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10~99質量%である。R1,R2は、同一もしくは異なっていてもよい炭素数1~4の炭化水素基である。);及び
皮膚化粧料全量中10~60重量%の低級アルコール、球状粉末、皮膚形成剤および清涼剤を含有する皮膚化粧料。)」と規定されているのに対し、甲3発明においてはかかる規定がない点。
(イ)相違点3について検討する。
甲3には、(b)油相成分として香料を用いることができることが記載され(甲3c)、香料成分としては、ゲラニオール、シトラール等のモノテルペンが例示されている(甲3c)。
しかしながら、甲3には、香料として、モノテルペン以外の化合物も例示されており、甲3発明の「香料」は、本願発明1の「モノテルペン」に相当しないから、相違点3は実質的な相違点といえる。
そして、甲3の記載や甲4~6の記載(皮膚外用剤において、消炎剤や抗炎症剤としてジクロフェナクを配合すること)を参酌しても、甲3において香料として列挙されている化合物の中から、特に、モノテルペンであるゲラニオール、シトラール等を選択することを動機付けるような記載や示唆は見当たらない。また、本件発明1は、モノテルペンを含有する水中油型乳化組成物とすることにより、エタノール等の低級アルコールを含有しながらも乳化安定性の低下を有意に抑制するという効果を奏するところ(本件特許明細書の【0007】及び【0012】)、そのような効果は、甲3の記載や甲4~6の記載をみても、当業者が予測し得ない。
したがって、相違点4を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明並びに甲2及び甲4~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1の水中油型乳化組成物について、「さらにジクロフェナクまたはその塩を含有する」と特定するものである。また、本件発明3は、本件発明1又は2の水中油型乳化組成物について、「水中油型乳化皮膚外用剤である」と特定するものである。
本件発明2及び3と甲3発明とを対比すると、少なくとも上記相違点3及び4で相違する。
相違点3については、上記アで述べたように、甲3の記載や甲4~6の記載を参酌しても、当業者がそのような構成を採ることの動機付けが見当たらないから、本件発明2及び3は、甲3発明並びに甲3~6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
ウ したがって、申立理由1及び2(甲3に基づく新規性・進歩性欠如)については、理由がない。
4 申立理由3(実施可能要件違反、サポート要件違反)について
(1)実施可能要件違反について
ア 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。ここで、物の発明については、発明の詳細な説明の記載が、当該記載及び出願時の技術常識に照らし、当業者が発明に係る物を、製造でき、かつ、使用できる程度の記載であれば、実施可能要件を満足するといえる。
以下検討する。
イ 本件特許明細書には、以下の記載がある(下線は、当審合議体によるものもある。)。
a 特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
低級アルコールを3~30重量%、モノテルペン、増粘剤、及び多価アルコールを含有する、ローション、クリーム、または乳液の形態を有する水中油型乳化組成物(・・・)。」
b 発明が解決しようとする課題について
「【0007】
本発明の主な目的は、低級アルコールを含有しながらも乳化が安定化された水中油型乳化組成物を提供することである。また本発明は、低級アルコールを含有しながらも乳化が安定化された水中油型乳化皮膚外用剤、特に消炎鎮痛作用を有する皮膚外用剤を提供することである。」
c 課題を解決する手段について
「【0008】
本発明者らは、低級アルコールの配合で乳化が不安定になる水中油型乳化組成物について、モノテルペン及び増粘剤を配合することにより、当該乳化性を安定化することができ、低級アルコールを比較的多量に配合しても長期保存後の乳化安定性が確保され、分離が有意に抑制された水中油型乳化組成物が得られることを見出した。」
d 発明の効果について
「【0012】
本発明によれば、水中油型乳化組成物の低級アルコール配合による乳化安定性の低下を有意に抑制し、改善することができる。その結果、低級アルコールを3重量%以上や5重量%以上、特に10重量%以上と、比較的多量に含有しながらも長期保存後の乳化安定性が確保された水中油型乳化組成物を提供することができる。また、ジクロフェナクまたはその塩を含有させることで乳化安定性がより向上し、かつジクロフェナクまたはその塩の消炎鎮痛効果と低級アルコールの揮発による冷却効果を兼ね備えた治療効果及び使用感の高い水中油型乳化型の皮膚外用剤を提供することができる。」
e 発明を実施するための形態について
「【0013】
(1)水中油型乳化組成物
以下、本発明の水中油型乳化組成物について詳述する。
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物は、低級アルコールを含有する水中油系乳化組成物であって、さらにモノテルペン及び増粘剤を含有することを特徴とする。
【0015】
(低級アルコール)
本発明において、「低級アルコール」とは、1~4個の炭素原子を有する1価のアルコールを意味する。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノールが挙げられる。好ましくはエタノール及びイソプロパノールであり、より好ましくはエタノールである。
【0016】
本発明の水中油型乳化組成物における低級アルコールの含有割合(総量)は、制限されないものの、揮発による冷却効果を付与する観点、並びに低級アルコール配合による乳化安定性の低下、それに対するジクロフェナク類及び増粘剤配合による乳化安定化という観点から、下限値として3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上を挙げることができる。より具体的には3~30重量%程度、好ましくは5~25重量%程度、より好ましくは10~25重量%程度が挙げられる。
【0017】
本発明の水中油型乳化組成物は、水中油型乳化組成物とするために、その基本的な構成成分として水、油性成分、及び界面活性剤を含有している。
・・・
【0020】
(油性成分)
本発明において、油性成分(油相)は、本発明の乳化組成物の油相を構成する成分である。例えば、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等で通常使用される油性成分を広く用いることができる。かかる油性成分として、制限されないものの、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油等の植物油;ラード、魚油、スクワラン、蜜蝋等の動物油;流動パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等の鉱物油;大豆レシチン等のレシチン誘導体;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル等の脂肪酸エステル類;ジメチルシリコーン、環状シリコーン等のシリコーン類;オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸類;エチニルエストラジオール等のホルモン類;ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油等の精油類;シリコンオイル;及びワックス類等が挙げられる。
【0021】
また、他の油性成分としては、高級アルコールが挙げられる。高級アルコールとしては、炭素数6以上の脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0022】
油性成分は、1種単独で使用してもよいし、任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。油性成分としては、水中油型乳化組成物の流動性確保の観点から、常温(25℃)で液状のものが好ましい。また、上記油性成分のなかでも、優れた熱安定性、流動性を持つ乳化組成物が調製できるという点から、好ましくは植物油、動物油、鉱物油、及び脂肪酸エステルであり、より好ましくは動物油、鉱物油、及び脂肪酸エステルである。特に鉱物油として流動パラフィンを単独、または他の油性成分(植物油、動物油、鉱物油、脂肪酸エステル)と組み合わせて配合することが好ましい。更に、これらの油性成分(植物油、動物油、鉱物油、脂肪酸エステル)とともに、上記高級アルコールを配合することが好ましい。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物における油性成分の含有量は、制限されないものの、例えば、水中油型乳化組成物に含まれる水100重量部に対して1~60重量部程度、好ましくは5~50重量部程度が挙げられる。
【0024】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等で通常使用されるものであれば特に限定されないが、熱安定性及び流動性の観点から、好ましくはノニオン性の界面活性剤である。ノニオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POE)付加タイプの界面活性剤が好適であり、例えば、POE(10~50モル)フィトステロールエーテル、POE(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10~50モル)2~オクチルドデシルエーテル、POE(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)オレイルエーテル、POE(10~50モル)ベヘニルエーテル、POE(10~50モル)セチルエーテル、POE(5~30モル)ポリオキシプロピレン(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)ポリオキシプロピレン(2~30モル)セチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウム等);POE(20~60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10~30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20~100)硬化ヒマシ油、POE(20~100)POE・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の水中油型乳化組成物における界面活性剤の含有量は、制限されないものの、例えば、水中油型乳化組成物に含まれる油性成分100重量部に対して10~100重量部程度、好ましくは20~70重量部程度が挙げられる。
【0026】
(モノテルペン)
本発明で用いることができるモノテルペンとしては、特に制限されないが、リモネン、ピネン、カンフル等のモノテルペン系炭化水素;シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、メントール、テルピネオール、ボルネオール等のモノテルペン系アルコール;シトロネラール、シトラール、サフラナール等のモノテルペン系アルデヒド;メントン、カルボメントン、ヨノン等のモノテルペン系ケトン等が挙げられる。好ましくはモノテルペン系アルコールであり、より好ましくはメントールである。これらのモノテルペンは、d-,l-,dl-体のいずれでもよい。これらは1種単独で使用してもよいし、任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物におけるモノテルペンの含有量は、制限されないものの、例えば0.5~10重量%程度、好ましくは1~6重量%程度が挙げられる。
【0028】
(増粘剤)
本発明の水中油型乳化組成物は、前述する低級アルコール、水、油性成分、界面活性剤、及びモノテルペンに加えて、さらに増粘剤を含有することを特徴とする。本発明で使用できる増粘剤としては、特に制限されないが、ヒプロメロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム等が挙げられる。好ましくはカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルセルロースであり、より好ましくはカルボキシビニルポリマー及びキサンタンガムである。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよいし、任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物における増粘剤の含有割合(総量)は、制限されないものの、例えば0.05~5重量%程度、好ましくは0.1~3重量%程度が挙げられる。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物には、前述する低級アルコール、水、油性成分、界面活性剤、モノテルペン、及び増粘剤に加えて、さらにジクロフェナク又はその塩及び多価アルコールの少なくとも1種を配合することができる。
【0031】
(ジクロフェナク又はその塩)
ジクロフェナクはアリール酢酸系、具体的にはフェニル酢酸系の消炎鎮痛性化合物である。ここでジクロフェナクの塩としては、好ましくは薬学的に許容される塩を挙げることができる。薬学的に許容される塩としては、例えば、ジクロフェナクのナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩;またはリチウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物にジクロフェナク又はその塩を配合する場合、その配合割合(総量)は、制限されないものの、例えば0.1~5重量%程度、好ましくは0.5~3重量%程度、より好ましくは0.5~1.5重量%程度が挙げられる。
【0033】
(多価アルコール)
本発明で用いることができる多価アルコールには、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、へキシレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。ジクロフェナクまたはその塩に対する溶解性(相溶性)の観点から、好ましくはプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン及びソルビトールである。これらは1種単独で使用してもよいし、任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明の水中油型乳化組成物に多価アルコールを配合する場合、その配合割合(総量)は、制限されないものの、例えば1~30重量%程度、好ましくは2~25重量%程度が挙げられる。
【0035】
(その他の成分)
本発明の水中油型乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して配合できる。例えば、液剤及び半固形剤等の調製に一般的に使用される安定化剤、防腐剤、緩衝剤、pH調整剤、香料等の各種添加剤を挙げることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
・・・
【0041】
本発明の水中油型乳化組成物を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、以下のようにして製造できる。水相(水性成分:水、増粘剤、必要に応じてその他の水溶性成分[例えば、低級アルコール、多価アルコール等]を混合)と油相(油性成分:界面活性剤、モノテルペン、必要に応じてその他の油溶性成分を混合)を加熱しながらホモジナイザー等の混合機を用いて混合して乳化物を調製した後に、必要に応じてジクロフェナク又はその塩を溶解した低級アルコールを加えることで本発明の水中油型乳化組成物を調製することができる。なお、上記の加熱温度としては制限されないものの、通常50~90℃、好ましくは65~85℃を例示することができる。」
f 実施例について
「【実施例】
【0048】
以下、本発明を実験例及び実施例に基づいて説明する。但し、当該実験例及び実施例は、本発明の一例であり、本発明はこれらの実験例や実施例に制限されるものではない。
【0049】
実験例1
表1に示す処方の液状~半固形状の水中油型乳化クリーム剤(参考例1、実施例1~13、比較例1~6)を調製した。具体的には、表1に記載する処方に従って油相及び水相(但し、ジクロフェナクナトリウム及び無水エタノールを除く)をそれぞれ調製し、これらを80℃で混合して水中油型の乳化物を調製した。その後、実施例4及び6~13並びに比較例5については、無水エタノールに溶解したジクロフェナクナトリウムを徐々に加えて完全に均一に混合し調製した。得られた液状~半固形状の乳化物を約20ml容量の蓋付きスクリュー管(スクリュー管No.5(27×55mm)、株式会社マルエム製)に18ml充填し、50℃の恒温槽内(暗所)及び60℃の恒温槽内(暗所)のそれぞれの条件下に1週間静置保管した。
【0050】
1週間後、室温に戻して、乳化物の性状を目視で確認し、下記の基準に基づいて、保存安定性(50℃1週間保存、60℃1週間保存)を評価した。
【0051】
[評価基準]
◎:全く分離が認められない
○:ほとんど分離が認められない
△:やや分離が認められる
×:明らかに分離(水相が全体の1/4以上)が認められる。
【0052】
結果を、処方とともに表1に示す。
【0053】
【表1】
[図:0001395181000018.jpg]
【0054】
エタノールを含有しない乳化物(参考例1)はいずれの保管条件下でも分離せず安定であったが、これにエタノールを配合することで乳化が不安定になり分離が生じることが確認された(比較例3)。かかるエタノール配合による乳化不安定性は、比較例3の処方を基準として、モノテルペン及び多価アルコールの除去(比較例1)、モノテルペンの除去(比較例2)、モノテルペンの除去及びエタノール配合量の減少(比較例4)、並びにモノテルペンの除去及びジクロフェナクNaの配合(比較例5)によっても、改善しなかった。またモノテルペン及び多価アルコールを除去し、代わりに増粘剤を配合すると、やや改善は認められるものの十分ではなかった(比較例6)。これに対して、増粘剤とモノテルペンを配合することでいずれの保存条件でも分離せず、乳化が安定化されることが確認された(実施例1~3)。また増粘剤とモノテルペンに加えて多価アルコール及び/又はジクロフェナクNaを配合することで、特に多価アルコールとジクロフェナクNaの両方を配合することで、より一層乳化が安定化し、比較的苛酷な条件で保管した場合でも分離が抑制されることが確認された(実施例4~13、特に実施例6~13)。これらのことから、エタノール等の低級アルコールを含有する液状~半固形状の水中油型乳化クリーム剤(実施例1~13)は、増粘剤とモノテルペンを配合することで乳化が安定化され、長期間の保管によっても分離しないことが確認できた。また、ジクロフェナクNaを含有する水中油型乳化クリーム剤を肩に塗布したところ、いずれも冷涼感と肩こりの痛み緩和効果(消炎鎮痛効果)を有することが確認できた。
【0055】
実験例2
表2に示す処方の水中油型乳化クリーム剤(実施例14~24)を調製した。具体的には、水相と油相をそれぞれ調製し、これらを80℃で混合して水中油系の乳化物を得た後に、フェルビナク又はジクロフェナクナトリウムを溶解した低級アルコール(無水エタノールまたはイソプロパノール)を徐々に加えて完全に均一に混合した。得られた乳化物に水酸化カリウム溶液を適量加えてpH7~8に調整した後に、精製水を加えて最終的に全量を100重量%とした。得られた液状~半固形状の水中油型乳化クリーム剤を50ml容量のポリエチレン容器に充填し、4℃の恒温槽内(暗所)に保管した。
【0056】
【表2】
[図:0001395181000019.jpg]
【0057】
上記のクリーム剤は、1ヶ月の保存後も分離が見られず乳化が安定していた(評価:◎)。また、肩に塗布したところ、冷涼感と肩こりの痛み緩和効果(消炎鎮痛効果)を有することが確認できた。」
ウ 上記記載a~fによれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明である水中油型乳化組成物が含有する成分である「低級アルコール」、「モノテルペン」、「増粘剤」及び「多価アルコール」について説明され(記載eの【0015】、【0026】、【0028】及び【0033】)、水中油型乳化組成物の製造する方法について、例えば、「水相(水性成分:水、増粘剤、必要に応じてその他の水溶性成分[例えば、低級アルコール、多価アルコール等]を混合)と油相(油性成分:界面活性剤、モノテルペン、必要に応じてその他の油溶性成分を混合)」を加熱しながら混合して乳化物を調製した後に、低級アルコールを加えることによって調製できることが記載されている(記載eの【0041】)。また、油性成分について、「医薬品、医薬部外品、及び化粧品等で通常使用される油性成分を広く用いること」ができ、「他の油性成分としては、高級アルコールが挙げられる」ことが記載され(記載eの【0020】及び【0021】)、実施例において、表1及び表2で示される処方の水中油型乳化クリーム剤が実際に製造され、長期保管によっても乳化が安定し、肩に塗布したところ、冷涼感と肩こりの痛み緩和効果(消炎鎮痛効果)を有することが確認できたことが示されている(記載f)。
そうしてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当該記載及び出願時の技術常識に照らし、当業者が本件発明に係る水中油型乳化組成物を、製造でき、かつ、使用できることを認識し得る程度の記載であるといえるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明について、当業者が実施可能な程度に、明確かつ十分に記載されているといえる。
エ 申立人は、上記第4の1(3)ア~ウの主張をするので、以下に検討する。
(ア)主張アについて
分散相にあたる「油」については、上記ウで述べたように、「油性成分」として説明されており、「特定されていない」とはいえない。また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の水中油型乳化組成物を製造することができるように記載され、実施例においては、得られた水中油型乳化組成物の乳化安定性を確認しているのであるから、本件発明は実施できるし、得られた水中油型乳化組成物の乳化が安定されたかどうかを判断できる。
よって、主張アは受け入れられない。
(イ)主張イについて
主張イにおいて請求人が参照する甲8には、以下の記載がある(下線は、合議体による。)。
甲8a 「【0021】
【実施例】次に本発明の皮膚外用乳化製剤の実施例、比較例および試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、これらはなんら本発明を限定するものではない。なお、以下の例において「%」は特に断わらない限り「重量%」を示し、組成の表中の数値も重量%を示す。
【0022】実施例1、比較例1
次の表1に記載した処方および後記する方法で皮膚外用乳化製剤を調製し、その使用性および安定性を後記する方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0023】(1)製法
・・・
【0024】[2](合議体注:○に2)比較例1の製法
精製水に尿素、濃グリセリン、カルボキシビニルポリマー、水酸化ナトリウム、エタノールを順次加えて70℃に加熱溶解して水相を調製した。また、ジフェンヒドラミン、リドカイン、L-メントール、グリチルレチン酸、酢酸トコフェロール、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、白色ワセリン、スクワランを順次加えて70℃に加熱溶解して油相を調製した。油相を水相に添加し、ホモミクサーで乳化を行い、水中油型型(合議体注:ママ)エマルションを調製した。引き続き70℃からホモミクサー処理(7,000rpm)しながら撹拌冷却を行って比較例1の皮膚外用乳化製剤を得た。
・・・
【0026】[2](合議体注:○に2)安定性評価
安定性に関しては、[1] (合議体注:○に1)50℃、1ヵ月および[2](合議体注:○に2)40℃、湿度75%、3ヵ月において次の基準で評価を行った。
(安定性の評価基準)
○:いずれの場合も分離、沈殿が認められない。
△:いずれかにわずかに分離、沈殿が認められる。
×:いずれかに分離沈殿が認められる。
【0027】
【表1】
──────────────────────────────────
配合成分 実施例1 比較例1
──────────────────────────────────
尿素 10.0 10.0
ジフェヒドラミン 1.0 1.0
リドカイン 2.0 2.0
L-メントール 0.5 0.5
グリチルレチン酸 0.3 0.3
酢酸トコフェロール 0.1 0.1
セタノール 0.7 -
グリセリンモノステアリン酸エステル 1.6 -
モノステアリン酸POE(40) 1.0 -
モノオレイン酸POE(20)ソルビタン - 1.0
硬化油 2.0 -
白色ワセリン - 2.0
スクワラン 8.0 2.0
トリイソオクタン酸グリセリン(TIO) 5.0 -
メチルポリシロキサン(6cs) 2.0 -
(シリコンKF-96A-6)
濃グリセリン 15.0 5.0
1,3-ブチレングリコール 3.0 -
カルボキシビニルポリマー 0.3 0.3
水酸化ナトリウム 適量 適量
エタノール - 10.0
精製水 残余 残余
──────────────────────────────────
【0028】
【表2】
[図:0001395181000020.jpg]
【0029】表2の結果からわかるように、本発明に係る皮膚外用乳化製剤は、比較例1と比較して明らかにべたつきを抑えた使用性であり、安定性もよいことが認められた。」
上記甲8aによれば、甲8の比較例1は、本件発明1の「低級アルコール」に相当する「エタノール」を10.0重量%、本件発明1の「モノテルペン」、「増粘剤」及び「多価アルコール」にそれぞれ相当する、「L-メントール」、「カルボキシビニルポリマー」及び「濃グリセリン」を含有する水中油型エマルションである皮膚外用乳化製剤であり、安定性評価が「△」、すなわち、「50℃、1ヵ月」又は「40℃、湿度75%、3ヵ月」の条件下で、「いずれかにわずかに分離、沈殿が認められる。」というものである。
ここで、甲8の比較例1は、「ローション、クリーム、または乳液の形態を有する」かどうか明らかでないものの、本件発明1の水中油型乳化組成物と同じ組成を有するものである。
しかしながら、本件発明の安定性評価は、「50℃の恒温槽内(暗所)及び60℃の恒温槽内(暗所)のそれぞれの条件下に1週間静置保管」(実施例1)又は「4℃の恒温槽内(暗所)に保管」(実施例2)の条件下で行っており、甲8の比較例1のように、1ヵ月又は3ヵ月の長期間、保管後の安定性を評価するものではないし、温度や湿度の条件も異なっている。そうしてみれば、甲8の記載から、甲8の比較例1と本件発明との乳化安定性の優劣は比較できず、甲8の比較例1が本件発明1と比べて乳化安定性に劣るとはいえない。
それゆえ、主張イは、その前提に誤りがあるから、受け入れられない。
(ウ)主張ウについて
主張ウにおいて請求人が参照する甲6には、「一般的な経験則によれば、水溶性低級アルコールを本願で開示された濃度でo/w型乳剤に混和すると、エマルジョンの破壊が起るはずであるが、安定した形でかかる薬学的製剤の製造が初めて成功したということは、非常に驚くべきことである。というのは、乳化剤が部分的に溶解する結果、乳剤を安定化させる乳化剤膜が弱くなると思われたからである。」との記載(甲6b(甲6の記載は、第5の2(3)を参照))はあるものの、甲6の特許請求の範囲に記載された発明は、「約10~約50質量%」の「低級アルカノール」(低級アルコール)を含む水中油型の乳剤を基調とする薬剤組成物であり(甲6a)、低級アルコールの含有量が20重量%を超えることもあることを考えると、申立人が参照する上記甲6bの記載は、一般論を述べたものに過ぎず、甲6からは、組成物の組成によっては、低級アルコールの含有量は20重量%を超えることを許容する場合があることが読み取れる。そして、本件発明においては、モノテルペン、増粘剤及び多価アルコールを水中油型乳化組成物に含有させることにより、低級アルコール配合による乳化安定性の低下を抑制できることを見いだしたものであり、上記甲6に記載された発明と同様に、含有される組成により、低級アルコールの含有量が20重量%を超えることが許容できる場合と考えられるから、申立人の参照する甲6bの一般論の記載を根拠に20重量%の低級アルコールを含有できないとはいえない。
また、本件特許明細書の実施例には、低級アルコールを25重量%含有する例も示されており(実施例16及び21(記載fの表2))、「乳化の安定化を評価している実施例/比較例を対比すると、無水エタノールの含有量は10重量%又は20重量%のみである」ことを前提とする主張ウには誤りがある。
よって、「「低級アルコール」の含有量が20重量%を超える場合においても、乳化安定化が達成できると認識することは困難である」との主張ウは受け入れられない。
(2)サポート要件違反について
ア 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、検討する。
イ 本件発明の課題は、本件特許明細書の記載(記載b)から、「低級アルコールを含有しながらも乳化が安定化された水中油型乳化組成物を提供すること」と認められる。
ウ 上記(1)ウで述べたように、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明のである水中油型乳化組成物が含有する成分である「低級アルコール」、「モノテルペン」、「増粘剤」及び「多価アルコール」について説明され(記載eの【0015】、【0026】、【0028】及び【0033】)、水中油型乳化組成物の製造する方法について、例えば、「水相(水性成分:水、増粘剤、必要に応じてその他の水溶性成分[例えば、低級アルコール、多価アルコール等]を混合)と油相(油性成分:界面活性剤、モノテルペン、必要に応じてその他の油溶性成分を混合)」を加熱しながら混合して乳化物を調製した後に、低級アルコールを加えることによって調製できることが記載されている(記載eの【0041】)。また、油性成分について、「医薬品、医薬部外品、及び化粧品等で通常使用される油性成分を広く用いること」ができ、「他の油性成分としては、高級アルコールが挙げられる」ことが記載され(記載eの【0020】及び【0021】)、実施例において、表1及び表2で示される処方の水中油型乳化クリーム剤が実際に製造され、長期保管によっても乳化が安定し、肩に塗布したところ、冷涼感と肩こりの痛み緩和効果(消炎鎮痛効果)を有することが確認できたことが示されている(記載f)。
そうしてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、上記イの課題を解決するための手段が記載され、実施例で実際に得られた水中油型乳化組成物が乳化安定化されたことも示されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえ、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。
エ 申立人は、上記第4の1(3)ア~ウの主張をするが、上記(1)エで述べた理由と同様の理由で、主張ア~ウは採用できない。
(3)小括
以上のとおり、申立理由3(実施可能要件違反、サポート要件違反)については、理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、令和4年3月8日付け取消理由通知で通知した取消理由、同年7月12日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由、及び特許異議申立理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。そして、ほかに本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700898