特許異議申立
2021-700834
消臭性布帛、これを備えた接着芯地、消臭性布帛の製造方法
- 審判番号
- 2021-700834
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-044407
- 登録番号
- 6838670
- 請求日
- 2021年08月25日
- 審決日
- 2022年09月06日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東紡績株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】▲高▼口 誠
- 【異議申立人】高橋 和秀
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1651.537-YAA(D06M) / P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6838670号発明「消臭性布帛、これを備えた接着芯地、消臭性布帛の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6838670号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。
特許第6838670号の請求項1、2、4~9に係る特許を維持する。
特許第6838670号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6838670号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成27年10月6日に出願された特願2015-198653号の一部を令和2年3月13日に新たな特許出願(特願2020-44407号)としたものであって、令和3年2月16日にその特許権の設定登録がされ、令和3年3月3日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯の概要は、次のとおりである。
令和3年 8月25日 :特許異議申立人高橋和秀(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 2月25日付け:取消理由通知書
令和4年 4月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 6月10日 :申立人による意見書の提出
令和4年 6月24日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年 7月27日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
令和4年7月27日提出の手続補正書による補正後の訂正請求書により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記消臭性粒子は、無機系粒子であり、」を、
「消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であり、
前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmであり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項1に記載された「30.0(質量%)≦A≦90.0(質量%)・・・(1)
5.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)・・・(2)」を、
「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)
20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)・・・(2)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~7も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項2に記載された「34.5(質量%)≦A≦80.9(質量%)・・・(3)
5.0(g/m2)≦B≦61.6(g/m2)・・・(4)」を、
「34.5(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(3)
20.0(g/m2)≦B≦61.6(g/m2)・・・(4)」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項3を削除する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項4に記載された「請求項1~3の何れか一項記載の」を、
「請求項1又は2記載の」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項5に記載された「請求項1~4の何れか一項記載の」を、
「請求項1,2及び4記載の」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1~5の何れか一項記載の」を、
「請求項1,2,4及び5記載の」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項7に記載された「請求項1~6の何れか一項記載の」を、
「請求項1,2,4,5及び6記載の」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項8に記載された「30.0(質量%)≦A≦90.0(質量%)・・・(1)
5.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)・・・(2)」を、
「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)
20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)・・・(2)」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9も同様に訂正する。)。
(10)訂正事項10
本件訂正前の請求項8に記載された「前記消臭性粒子は、無機系粒子である、」を、
「前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子である、」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあり、本件訂正前の請求項8、9は、請求項9が、本件訂正前の請求項8の記載を引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~7〕、〔8、9〕について請求されたものである。
3 本件訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「樹脂」、「消臭性粒子」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0029】、【0030】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「樹脂に対する消臭性粒子の含有率A」、「布帛に付着させる消臭性粒子の単位面積あたりの付着量B」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、本件特許の明細書の【0061】、【0065】、【0066】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項2の「樹脂に対する消臭性粒子の含有率A」、「布帛に付着させる消臭性粒子の単位面積あたりの付着量B」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、本件特許の明細書の【0061】、【0065】、【0066】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5~8について
訂正事項5~8は、それぞれ本件訂正前の請求項4~7について、訂正事項4によって請求項3が削除されたことに伴い、削除された請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5~8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項8の「樹脂に対する消臭性粒子の含有率A」、「布帛に付着させる消臭性粒子の単位面積あたりの付着量B」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項9は、本件特許の明細書の【0061】、【0065】、【0066】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項9は、本件訂正前の請求項8に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(10)訂正事項10について
訂正事項10は、本件訂正前の請求項8の「樹脂」、「消臭性粒子」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項10は、本件特許の明細書の【0029】、【0030】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項10は、本件訂正前の請求項8に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正の請求が認められたことから、本件特許の請求項1、2、4~9に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1、2、4~9を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材としての布帛と、
前記布帛における少なくとも一方の面に付着され、消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であり、
前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmであり、
前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき、
前記樹脂には、式(1)を満たす消臭性粒子が含有されており、
前記布帛には、式(2)を満たすように、前記樹脂が付着されている、消臭性布帛。
30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)
20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)・・・(2)
【請求項2】
前記樹脂には、式(3)を満たす消臭性粒子が含有されており、
前記布帛には、式(4)を満たすように、前記樹脂が付着されている、請求項1記載の消臭性布帛。
34.5(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(3)
20.0(g/m2)≦B≦61.6(g/m2)・・・(4)」
「【請求項4】
前記ドット状の樹脂のドット径は、50.0μm~2000μmである、請求項1又は2記載の消臭性布帛。
【請求項5】
前記布帛に対する前記ドット状の樹脂の面積占有率は、0.0500%~85.0%である、請求項1,2及び4の何れか一項記載の消臭性布帛。
【請求項6】
前記布帛は、織布である、請求項1,2,4及び5の何れか一項記載の消臭性布帛。
【請求項7】
請求項1,2,4,5及び6の何れか一項記載の消臭性布帛と、
前記消臭性布帛の一方の面に設けられた接着樹脂と、
を備える、接着芯地。
【請求項8】
基材としての布帛と、前記布帛における少なくとも一方の面に付着させる樹脂と、前記樹脂に含有させる消臭性粒子と、を準備する準備工程と、
式(1)を満たすように、前記樹脂に前記消臭性粒子を含有させる含有工程と、
前記消臭性粒子が含有された前記樹脂を、式(2)を満たすように、前記布帛における少なくとも一方の面にドット状に付着させる付着工程と、を含み、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子である、消臭性布帛の製造方法。
30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)
20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)・・・(2)
ただし、前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとする。
【請求項9】
前記付着工程は、スクリーン捺染により行われる、請求項8記載の製造方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和4年2月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本件特許の明細書の記載からは、実施例1~2、4~6、8~10に係る消臭性布帛以外の本件発明が、本件発明が解決しようとする課題を解決できるとは理解できないから、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものでない。
(2)取消理由2(新規性)
本件特許の請求項1~5、8、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(3)取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2002-46200号公報(以下「甲1」という。)
甲第4号証:特開2007-119938号公報(以下「甲4」という。)
2 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)について
ア 発明の詳細な説明の記載
本件発明が解決しようとする課題に関して、本件特許の発明の詳細な説明には、「本発明の目的は、消臭性能に優れると共に付与した消臭性能を持続させることが可能な消臭性布帛、及び、消臭性能及び消臭性能の持続性に優れる消臭性布帛を効率的に製造することができる消臭性布帛の製造方法を提供することにある。」(【0006】)と記載されている。
上記課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【0029】
樹脂部20を形成する樹脂R1には、消臭性粒子、及びバインダ樹脂が含まれている。バインダ樹脂には、熱可塑性樹脂と、熱及び紫外線で硬化する硬化性樹脂と、が含まれるが、熱により架橋する熱硬化性樹脂がより好ましい。好ましいバインダ樹脂としては、・・・耐水性が良好、かつ、安価に入手が可能という観点ではアクリル系樹脂が特に好ましい。・・・
【0030】
消臭性粒子R2の例には、消臭性能を有する有機系粒子、又は、無機系粒子が含まれ、消臭性能及び安全性が良好なことから、無機系粒子が好ましい。無機系粒子の例には、金属粒子、金属酸化物粒子、及び複合金属酸化物粒子が含まれ、例えば、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、及びこれらの複合粒子を用いることができる。・・・」
「【0032】
ここで、樹脂部20を形成する樹脂R1に対する消臭性粒子R2の含有率をA、布帛10に付着させる消臭性粒子R2の単位面積あたりの付着量をBとする。樹脂部20を形成する樹脂R1には、式(1)を満たす消臭性粒子R2が含有されており、布帛10には、式(2)及び(3)を満たすように、樹脂部20が付着されている。
25.0(質量%)≦A≦90.0(質量%)・・・(1)
0.500(g/m2)≦B≦150(g/m2)・・・(2)
6.00≦B/(1-A/100)2≦800・・・(3)」
「【0043】
樹脂部20を形成する樹脂R1における消臭性粒子R2の含有率が高いほど、樹脂表面から露出する消臭性粒子R2の量が増大するため、消臭性能を発揮しやすくなる。この傾向は、樹脂部20の形状をドット状に形成し、樹脂部20の表面積を増大させることで特に顕著となる。一方で、樹脂部20を形成する樹脂R1における消臭性粒子R2の含有率の高い場合には、消臭性粒子R2を布帛10に付着させるための樹脂(バインダ樹脂)量が少なくなり、耐洗濯性などが低下する。すなわち、付与した消臭性能の持続性が低下する傾向がある。」
「【0046】
実施例1~10及び比較例1~8において使用した消臭性粒子含有樹脂ペーストは、全て下記組成物を用いた。
バインダ樹脂:水系アクリル樹脂エマルション 固形分40重量%
消臭性粒子:酸化亜鉛および酸化ケイ素からなる複合物(ラサ工業株式会社製 KD211-G;レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置より算出された体積平均粒子径(D50)3~5μm) 固形分100重量%
増粘剤:ポリアクリルアミド系増粘剤 固形分100重量%
【0047】
(実施例1)
下記に示す組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数38.6個/25.4mm、ドット径280μm、ドット面積占有率14.2%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は5.00g/m2であった。なお、消臭性粒子の付着量は、以下に示す乾燥重量を意味する。
【0048】
バインダ樹脂:70.2重量%(乾燥時:64.2重量%)
消臭性粒子:14.1重量%(乾燥時:34.5重量%(=含有率A))
増粘剤:0.60重量%(乾燥時:1.30重量%)
水:14.1重量%(乾燥時:0重量%)
【0049】
ドット数は、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製 VHX-600)を用いて、ドット状に捺染された消臭性粒子含有樹脂ペーストを上面から観察し、その個数を数えることで測定することができる。
【0050】
ドット径は、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製 VHX-600)を用いて、ドット状に捺染された消臭性粒子含有樹脂ペーストを上面から観察し、マイクロスコープに内蔵の面積計算ソフトを用いてドット毎の面積を測定し、その面積を円とした場合の直径として表すことができる。
【0051】
ドット面積占有率は、消臭性布帛上の単位面積に占めるドット面積の割合であり、下記の式にて算出される。
ドット面積占有率=ドット面積/単位面積
ドット面積及び単位面積は、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製 VHX-600)を用いて、ドット状に捺染された消臭剤ペーストを上面から観察し、マイクロスコープに内蔵の面積計算ソフトを用いて計測した。
【0052】
乾燥重量は、乾燥され、消臭性粒子を含む樹脂が付着された状態の消臭性布帛中に存在する消臭性粒子の重量であり、下記の式で算出される。
乾燥重量=[消臭性布帛の重量(g/m2)-消臭性粒子含有樹脂ペースト付与前の布帛(ポリエステル織物)の重量(g/m2)]×[(消臭性粒子添加量×消臭性粒子の固形分率)/(各使用薬剤(消臭性粒子、バインダ樹脂、増粘剤)添加量×各使用薬剤の固形分率の和)]
【0053】
また、各使用薬剤の添加量及び/又は固形分率などが不明な場合には、消臭性粒子を含む樹脂が付着された状態の消臭性布帛中に存在する消臭性粒子の重量は、消臭性粒子を分離することで測定することができる。例えば、消臭性粒子が無機系粒子であり、布帛が合成繊維等で形成された可燃性布帛の場合には、消臭性布帛を燃焼することなどで消臭性粒子を分離することができる。
【0054】
消臭性布帛に付着された、消臭性粒子を含む樹脂に対する消臭性粒子の含有率は、下記の式で算出される。
消臭性粒子含有率=(消臭性粒子添加量×消臭性粒子の固形分率)/(各使用薬剤(消臭性粒子、バインダ樹脂、増粘剤)添加量×各使用薬剤の固形分率の和)
【0055】
また、各使用薬剤の添加量及び/又は固形分率などが不明な場合には、消臭性布帛に付着された、消臭性粒子を含む樹脂に対する消臭性粒子の含有率は、消臭性布帛に付着された、消臭性粒子を含む樹脂の重量を測定し、消臭性粒子の乾燥重量を前述の方法で測定することで、(消臭性粒子の重量)/(消臭性粒子を含む樹脂の重量)により算出することができる。消臭性布帛に付着された、消臭性粒子を含む樹脂の重量は、布帛を溶解などで消臭性粒子を含む樹脂を分離することにより測定することができる。例えば、布帛がポリエステルの場合、濃硫酸に溶解することで、消臭性粒子を含む樹脂を分離することができる。
【0056】
(実施例2)
実施例1と同様の組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数46.2個/25.4mm、ドット径500μm、ドット面積占有率64.9%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、10.0g/m2であった。
【0057】
(実施例3)
下記に示す組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数9.80個/25.4mm、ドット径200μm、ドット面積占有率0.460%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は1.50g/m2であった。なお、消臭性粒子の付着量は、以下に示す乾燥重量を意味する。
【0058】
バインダ樹脂:46.5重量%(乾燥時:38.8重量%)
消臭性粒子:29.0重量%(乾燥時:60.5重量%(=含有率A))
増粘剤:0.30重量%(乾燥時:0.70重量%)
水:24.3重量%(乾燥時:0重量%)
【0059】
(実施例4)
実施例3と同様の組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数65.2個/25.4mm、ドット径100μm、ドット面積占有率5.18%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、5.00g/m2であった。
【0060】
(実施例5)
実施例3と同様の組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数9.40個/25.4mm、ドット径1000μm、ドット面積占有率10.8%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、10.0g/m2であった。
【0061】
(実施例6)
実施例3と同様の組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数14.4個/25.4mm、ドット径1300μm、ドット面積占有率42.6%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は20.0g/m2であった。
【0062】
(実施例7)
下記に示す組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数12.6個/25.4mm、ドット径90.0μm、ドット面積占有率0.16%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、1.00g/m2であった。
【0063】
バインダ樹脂:20.0重量%(乾燥時:18.4重量%)
消臭性粒子:35.2重量%(乾燥時:80.9重量%(=含有率A))
増粘剤:0.30重量%(乾燥時:0.70重量%)
水:44.5重量%(乾燥時:0重量%)
【0064】
(実施例8)
実施例7と同様の組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数86.2個/25.4mm、ドット径280μm、ドット面積占有率70.8%)した。次に、120℃で3分間乾燥し消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、26.0g/m2であった。
【0065】
(実施例9)
下記に示す組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付105g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数35.0個/25.4mm、ドット径500μm、ドット面積占有率37.2%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、61.6g/m2であった。
【0066】
バインダ樹脂:52.8重量%(乾燥時:37.5重量%)
消臭性粒子:35.0重量%(乾燥時:62.1重量%(=含有率A))
増粘剤:0.20重量%(乾燥時:0.40重量%)
水:12.0重量%(乾燥時:0重量%)
【0067】
(実施例10)
実施例3と同様の組成の消臭性粒子含有樹脂ペーストを準備し、ポリエステル織物(目付41.3g/m2)に消臭性粒子含有樹脂ペーストをドットの模様状にスクリーン捺染(ドット数10.0個/25.4mm、ドット径2100μm、ドット面積占有率53.7%)した。次に、120℃で3分間乾燥させて消臭性布帛を得た。このとき、消臭性粒子の付着量(付着量B)は、16.1g/m2であった。」
「【0083】
実施例1~10及び比較例1~8の消臭性布帛について評価した結果を図2及び図3に示す。なお、図2及び図3に示す、(1)消臭性能、(2)消臭性能の持続性、(3)風合い及び(4)ドット加工性の各欄に記載の数値及び記号は、それぞれ以下の通りである。
(1)消臭性能
図2及び図3に示す数値は、消臭量(ppm)を示している。
(2)消臭性能の持続性
×:消臭性能の持続性がない
○:消臭性能の持続性がある
(3)風合い
◎:特に柔らかい
〇:柔らかい
△:ふつう
×:硬い
(4)ドット加工性
〇:問題なくドット加工が可能
×:ドット加工が不能
【0084】
実施例1~10の消臭性布帛は、アンモニアガスに対し、いずれも70ppm以上の消臭量であった。つまり、優れた消臭性能を発揮したといえる。また、実施例1~10の消臭性布帛は、洗濯による消臭性能の低下も見られず、消臭性性能の優れた持続性を発揮した。更に、実施例1~9の消臭性布帛は、風合いも硬くなかった。一方、実施例10は風合いが硬かった。ここで、ドット径が2000μm以下の場合、風合いが硬くなく、ドット径が1200μm以下、且つドット面積占有率が35.0%以下の場合は、風合いがより柔らかく、ドット径が450μm以下、且つドット面積占有率が25.0%以下の場合は、特に柔らかかった。」
「【図2】
[図:0001392005000001.jpg]
」
イ 判断
上記アの記載によると、上記課題を解決するための手段は、樹脂が、アクリル系樹脂を含有し(【0029】、【0046】~【0067】、【0083】、【0084】、【図2】)、消臭性粒子が、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であり(【0030】、【0046】、【0061】、【0065】、【0066】、【0083】、【0084】、【図2】)、樹脂に対する消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき、樹脂には、式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を満たす消臭性粒子が含有されており、布帛には、式(2)「20(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を満たすように、前記樹脂が付着されている(【0032】、【0043】、【0057】、【0061】、【0065】、【0066】、【0083】、【0084】、【図2】)ことである。
そして、本件発明は、いずれも、これらの構成要件を包含するものであるから、本件発明は、上記課題を解決するものであるといえる。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和4年6月10日提出の意見書(3 意見の内容(1)サポート要件について)において、本件発明1に挙げられた消臭性粒子について、(ア)消臭メカニズムが「酸化亜鉛および酸化ケイ素からなる複合物」と異なる消臭性粒子にまで適用可能であると認識できず、また、(イ)消臭性粒子によって密度が異なり、質量に基づく式(2)を満たしても、課題を解決できるとは理解できない旨を述べている。
しかしながら、酸化亜鉛及び酸化ケイ素以外の銀粒子及び酸化チタン粒子は、消臭性を備えることが周知の材料であり、それらを消臭性粒子として含有することで、消臭性が向上することは当業者であれば認識できることである。また、発明の詳細な説明の【0043】に、「樹脂に対する消臭性粒子の含有率(A)」が「高いほど、樹脂表面から露出する消臭性粒子R2の量が増大するため、消臭性能を発揮しやすくな」り、一方で、同含有率(A)が「高い場合には、消臭性粒子R2を布帛10に付着させるための樹脂(バインダ樹脂)量が少なくなり、耐洗濯性などが低下する。すなわち、付与した消臭性能の持続性が低下する傾向がある」と記載され、消臭性粒子によって密度が異なっても、消臭性粒子の含有率が多ければ消臭性が増す一方、樹脂の割合が減って持続性が低下する傾向があることは理解できるから、本件発明1の構成を備えることで、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものといえる。
エ 小括
よって、本件発明1、2、4~9は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
ア 甲1の記載事項
甲1には次の事項が記載されている。
「【請求項1】 繊維シート状基材の少なくとも一方の面に点状のバインダー層を有し、該バインダー層の表層部に機能性粒子が固定されていることを特徴とする機能性繊維シート状物。」
「【0005】これに対して、機能性粒子の微粉末をバインダーに含有させてドット加工する方法も提案されている(特開平5-330004号)。この方法によれば上記の繊維シート状物が有する風合等の問題は解決されるが、繊維シート状基材に塗布された機能性粒子の大部分はそれを固定するためのバインダー内に被覆された状態で固定され、実際にバインダー表層に露出して機能を発現する機能性粒子は極少数であり、更に、表層に露出している極少数の機能性粒子もバインダーが乾燥する際に形成された薄膜で覆われているため、例えば、光触媒や吸着剤として作用する機能性粒子は分解あるいは吸着させるべき分子と直接接触できないため、その機能が十分発揮されないという問題がある。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の如き従来の問題点を解決するものであり、研磨剤、吸着剤、抗菌剤、光触媒等の機能を果たす機能性粒子を、繊維シート状基材の風合、吸水性、吸湿性、透湿性、保温性、嵩高性等の特性変化を最小限にとどめて固定させると同時に、機能性粒子の大部分をバインダーに覆われることなく露出させることにより、その固定量を必要最小限にすることができる機能性繊維シート状物を提供することを目的とする。」
「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明の機能性粒子を固定する繊維シート状基材は、従来用いられているものと異なるものではなく、天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維、無機繊維およびこれらの混合よりなる織物、編物、不織布等を用いることができる。・・・」
「【0016】また、バインダー層における「点状」とは、繊維シート状基材表面上に不連続な多数の点または小区域から形成される模様であり、各点の形状(例えば、円形、楕円形、または正方形、長方形や六角形等の多角形)や大きさ、あるいは相互間の間隔や密度等任意に変化させることができる。一般にはバインダー層を形成する点(ドット)の個々の大きさは、好ましくは0.005~10mm2、より好ましくは0.005~0.5mm2であり、その総面積は、好ましくは基材の1~50%、より好ましくは1~15%を占める。・・・バインダーの付着量は上記面積を満たす範囲であれば特に制限を受けるものではないが、0.05g/m2~10.0g/m2の範囲で用いられる。0.05g/m2以上において機能を付与するに十分な機能性粒子を容易に固定することができ、また10.0g/m2以下において表面のざらつき感を与えることなく、繊維シート状基材が元来有している風合、吸水性、吸湿性、透湿性、保温性、嵩高性等の特性変化を抑えることができ、好ましい。」
「【0018】また、ここでいう機能とは、一般に機能加工において用いられる研磨機能、吸着機能、抗菌機能、消臭機能、光触媒機能等を言い、視覚的表面効果を付与するための着色機能を有する染顔料や、他物質との接着を目的とする接着機能のためのホットメルト等の接着剤は含まれない。このような機能性粒子としては、研磨剤として使用されるアルミナ、光触媒機能を有するフッ素樹脂、シリコーン樹脂あるいはヒドロキシアパタイト等の分解を受け難い物質でマスクされた光触媒含有物、吸着に基づく消臭・抗菌機能および遠赤外保温機能等を有する炭酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、カオリンクレー、珪藻土、タルク、ベントナイト、シリカ、活性アルミナ、ジルコニア、モンモリナイト、セピオライト、ヒドロキシアパタイト等の無機セラミックス、消臭剤として機能するL-アスコルビン酸鉄配合体、燐酸ジルコニウム、珪酸亜鉛、酸化澱粉、ジメチルアミノポリブテンスルホン酸ソーダ等、防かび、防虫、抗菌等の機能を有する2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシフェニルエーテル、2-(4-チアゾル)-ベンツイミダゾール、5-メチル-2-イソプロピル-1-フェノール、樟脳、ナフタリン、安息香酸およびその誘導体、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム塩等、抗酸化機能としてカテキン、キトサン、EMセラミックス等の天然由来の紛状物、マイナスイオン(いやし効果)発生機能としてトルマリンに代表される各種セラミックス等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは各分野で通常用いられるものを用いることができるが、加工性、汎用性、安全性等の点で無機機能材が好ましい。また、これらの機能性粒子は単独で使用しても混合して使用してもよい。
【0019】また、上記記載の機能性粒子はバインダー層に埋没することなく、マイクロスコープにより得た画像のコンピュータ画像解析による露出度が好ましくは50%以上、より好ましくは60%~95%である。露出度が50%以上において、機能性粒子の機能が十分に発揮され、多量の機能性粒子を固定する必要もなく、そのためにバインダーの使用量を多くしたり、あるいはバインダー層を形成する点(ドット)の個々の大きさを大きくする等の必要もなく、好ましい。その結果繊維シート状基材が元来有している風合、吸水性、吸湿性、透湿性、保温性、嵩高性等の特性変化を抑えることができる。また露出度があまり大きすぎると一部の機能性粒子は他の機能性粒子の上に重なった状態となり脱落を生じる等の問題があり耐久性の点から好ましくない。
【0020】マイクロスコープで得た画像から機能性粒子の露出度を求めるには、バインダー表層部を光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡などにより適度な大きさに拡大撮影して得られた画像を、コンピュータにより画像解析して、機能性粒子の露出した部分の総面積と点状バインダー部分の総面積との比から算出して求めることができる。具体的な一例としては、バインダーだけを着色させる染料を用いて着色し、これを光学顕微鏡で100倍に拡大して撮影した画像を、米国国立衛生研究所版画像解析ソフト「NIHImage」を用いて画像解析し、点状バインダー部分の総面積(S)を求める。次いで点状バインダー部分内の機能性粒子の露出により着色していない部分の面積(W)を求める。こうして得られた面積(S)、(W)から下記式1を用いて算出することができる。
【0021】
露出度(%)=W/S×100(式1)」
「【0030】実施例1
ロータリースクリーンを使用し、1.5Dtexのポリエステルのみからなる厚さ0.45mm、目付65g/m2のスパンレース不織布に対してMFT12~14℃のアクリル酸エステルからなるエマルジョンの粘度を10000cpsに調整して得たアクリルペーストをドット状に転写した。その直後の湿潤状態のドット状に置かれたペースト上にシリコーン系ポリマーでマスクされたTiO2光触媒粉末(粒径の中央値22μm)をロータリスキャッター法により散布し、余分な光触媒粉末をバキューム法で除去した後、強制熱風乾燥機中でドット状ペーストを140℃で30秒乾燥固化させて光触媒が固定されたスパンレース不織布を得た。このときのドットの大きさは0.3mm2で、その合計面積は不織布表面全体に対して8%であり、バインダーの付着量は3.1g/m2、光触媒の固定量は、TiO2ベースで1.1g/m2であった。
【0031】比較例1
実施例1で用いたアクリルペーストに同じく実施例1で用いた光触媒を固形分比が30%となるように混合して得られたスラリーを増粘して光触媒一体化ペーストを作成した。このペーストを実施例1で用いたスパンレース不織布に実施例1と同様にドット状に塗布、実施例1と同様に乾燥してアクリルペーストと光触媒が一体化したスパンレース不織布を得た。このときのドットの大きさは0.5mm2で、その合計面積は不織布表面全体に対して10%であり、バインダーの付着量は5.2g/m2、光触媒の固定量は、TiO2ベースで3.8g/m2であった。」
「【0033】実施例2
1.5Dtexのポリエステルと1.5Dtexのレーヨンを重量比で50:50で混綿して得た厚さ0.32mm、目付38g/m2のスパンレース不織布に、実施例1と同様にアクリルペーストをドット状に塗布した後、粒径の中央値が5μmのヒドロキシアパタイトを実施例1と同様に散布して、ドットの大きさは0.5mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して10%であり、バインダーの付着量は4.9g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は5.6g/m2のスパンレース不織布を得た。
【0034】比較例2
実施例2と同じスパンレース不織布に、実施例1と同様にヒドロキシアパタイトの固形分比が50%となるようにアクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したペーストを作成し、実施例1と同様にしてアクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したスパンレース不織布を得た。このときのドットの大きさは0.8mm2で、その合計面積は不織布表面全体に対して14%であり、バインダーの付着量は7.3g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は、9.7g/m2であった。」
「【0036】実施例3
実施例2のヒドロキシアパタイトの代わりに粒径の中央値が1μmの活性アルミナを用いて実施例2と同様に加工し、ドットの大きさ0.4mm2で、その合計面積は不織布表面全体に対して15%、バインダーの付着量は8.6g/m2、活性アルミナの固定量10.3g/m2のスパンレース不織布を得た。
【0037】比較例3
比較例2のヒドロキシアパタイトの代わりに粒径の中央値が1μmの活性アルミナを用いて、アクリルペーストに対する固形分比を50%として比較例2と同様に加工し、ドットの大きさは0.5mm2で、その合計面積は不織布表面全体に対して13%であり、バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量18.0g/m2のスパンレース不織布を得た。」
甲1には、特に、実施例2に着目すると、次の「甲1発明1」が記載されている。
「《甲1発明1》
繊維シート状基材としてのスパンレース不織布に、アクリルペーストをドット状に塗布した後、粒径の中央値が5μmのヒドロキシアパタイトを散布して、ドット状ペーストを乾燥固化させて得られたヒドロキシアパタイトが固定されたスパンレース不織布であって、ドットの大きさは0.5mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して10%であり、バインダーの付着量は4.9g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は5.6g/m2のヒドロキシアパタイトが固定されたスパンレース不織布。」
甲1には、特に、実施例3に着目すると、次の「甲1発明2」が記載されている。
「《甲1発明2》
繊維シート状基材としてのスパンレース不織布に、アクリルペーストをドット状に塗布した後、粒径の中央値が1μmの活性アルミナを散布して、ドット状ペーストを乾燥固化させて得られた活性アルミナが固定されたスパンレース不織布であって、ドットの大きさは0.4mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して15%であり、バインダーの付着量は8.6g/m2、活性アルミナの固定量は10.3g/m2の活性アルミナが固定されたスパンレース不織布。」
甲1には、特に、比較例2に着目すると、次の「甲1発明3」及び「甲1方法発明3」が記載されている。
「《甲1発明3》
ロータリースクリーンを使用し、繊維シート状基材としてのスパンレース不織布に、ヒドロキシアパタイトの固形分比が50%となるようにアクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したペーストをドット状に塗布した後、ドット状ペーストを乾燥固化させて得られたアクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したスパンレース不織布であって、ドットの大きさは0.8mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して14%であり、バインダーの付着量は7.3g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は9.7g/m2のアクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したスパンレース不織布。」
「《甲1方法発明3》
ロータリースクリーンを使用し、繊維シート状基材としてのスパンレース不織布に、ヒドロキシアパタイトの固形分比が50%となるようにアクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したペーストをドット状に塗布した後、ドット状ペーストを乾燥固化させる、アクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したスパンレース不織布の製造方法であって、
ドットの大きさは0.8mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して14%であり、バインダーの付着量は7.3g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は9.7g/m2である、アクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したスパンレース不織布の製造方法。」
甲1には、特に、比較例3に着目すると、次の「甲1発明4」及び「甲1方法発明4」が記載されている。
「《甲1発明4》
ロータリースクリーンを使用し、繊維シート状基材としてのスパンレース不織布に、粒径の中央値が1μmの活性アルミナの固形分比が50%となるようにアクリルペーストと活性アルミナが一体化したペーストをドット状に塗布した後、ドット状ペーストを乾燥固化させて得られたアクリルペーストと活性アルミナが一体化したスパンレース不織布であって、ドットの大きさは0.5mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して13%であり、バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量は18.0g/m2のアクリルペーストと活性アルミナが一体化したスパンレース不織布。」
「《甲1方法発明4》
ロータリースクリーンを使用し、繊維シート状基材としてのスパンレース不織布に、粒径の中央値が1μmの活性アルミナの固形分比が50%となるようにアクリルペーストと活性アルミナが一体化したペーストをドット状に塗布した後、ドット状ペーストを乾燥固化させる、アクリルペーストと活性アルミナが一体化したスパンレース不織布の製造方法であって、
ドットの大きさは0.5mm2で、その合計面積が不織布表面全体に対して13%であり、バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量は18.0g/m2のアクリルペーストと活性アルミナが一体化したスパンレース不織布の製造方法。」
イ 本件発明1について
(ア)甲1発明1に基づく理由
a 対比
甲1発明1の「繊維シート状基材としてのスパンレース不織布」は本件発明1の「基材としての布帛」に相当する。
甲1発明1の「ヒドロキシアパタイト」は、消臭機能を有している(甲1の【0018】)から、本件発明1の「無機系粒子」である「消臭性粒子」に相当し、甲1発明1の「ヒドロキシアパタイトが固定されたスパンレース不織布」は本件発明1の「消臭性布帛」に相当する。
甲1発明1の「アクリルペーストをドット状に塗布した後」、「乾燥固化」されて「ヒドロキシアパタイトが固定」された「ドット状ペースト」は本件発明1の「アクリル系樹脂を含有」する「ドット状の樹脂」に相当する。
甲1発明1の「ヒドロキシアパタイト」が「粒径の中央値が5μm」であることは、本件発明1の「前記体積平均粒子径前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmであ」ることに相当する。
甲1発明1における「バインダーの付着量は4.9g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は5.6g/m2」であることは、バインダーに対するヒドロキシアパタイトの含有率が53.3質量%と計算されるから、本件発明1における「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」としたとき、「前記樹脂」には、「式(1)」「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されて」いることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「基材としての布帛と、
前記布帛における少なくとも一方の面に付着され、消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmであり、
前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をAとしたとき、
前記樹脂には、式(1)を満たす消臭性粒子が含有されている、消臭性布帛。
30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)」
[相違点1-1]
本件発明1は、「前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であ」るのに対して、甲1発明1は、「ヒドロキシアパタイト」である点。
[相違点1-2]
本件発明1は「前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき」、「前記布帛には」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記樹脂が付着されている」のに対して、甲1発明1は、「ヒドロキシアパタイトの固定量は5.6g/m2」である点。
b 新規性についての判断
事案に鑑み、まず相違点1-2について検討するに、相違点1-2は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明1ではない。
c 進歩性についての判断
相違点1-2についてさらに検討する。
甲1に記載された課題は、「研磨剤、吸着剤、抗菌剤、光触媒等の機能を果たす機能性粒子を、繊維シート状基材の風合、吸水性、吸湿性、透湿性、保温性、嵩高性等の特性変化を最小限にとどめて固定させると同時に、機能性粒子の大部分をバインダーに覆われることなく露出させることにより、その固定量を必要最小限にすることができる機能性繊維シート状物を提供すること」(甲1の【0006】)である。そして、甲1には、「バインダーの付着量は上記面積を満たす範囲であれば特に制限を受けるものではないが、0.05g/m2~10.0g/m2の範囲で用いられる。0.05g/m2以上において機能を付与するに十分な機能性粒子を容易に固定することができ、また10.0g/m2以下において表面のざらつき感を与えることなく、繊維シート状基材が元来有している風合、吸水性、吸湿性、透湿性、保温性、嵩高性等の特性変化を抑えることができ、好ましい。」(甲1の【0016】)と記載されている。
甲1において、ヒドロキシアパタイトの単位面積あたりの付着量を増やすことは、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることである。
バインダーの付着量を多くすることに関して、甲1の【0016】の記載を参照して、甲1発明1のバインダーの付着量「4.9g/m2」を「10.0g/m2」まで多くしても、甲1発明1のヒドロキシアパタイトの単位面積あたりの付着量は「11.4g/m2」(=5.6g/m2×10.0g/m2÷4.9g/m2)程度までにしかならない。
また、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくすることについて、甲1には、「露出度があまり大きすぎると一部の機能性粒子は他の機能性粒子の上に重なった状態となり脱落を生じる等の問題があり耐久性の点から好ましくない」(甲1【0019】)と記載されており、ヒドロキシアパタイトの露出度を大きくすることには阻害要因がある。
そうすると、甲1発明1のヒドロキシアパタイトの固定量を5.6g/m2から20.0(g/m2)以上にまで増やすことを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)甲1発明2に基づく理由
a 対比
甲1発明2における「バインダーの付着量は8.6g/m2、活性アルミナの固定量は10.3g/m2」であることは、バインダーに対する活性アルミナの含有率が54.4質量%と計算されるから、本件発明1における「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」としたとき、「前記樹脂」には、「式(1)」「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されて」いることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明2とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「基材としての布帛と、
前記布帛における少なくとも一方の面に付着され、消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmであり、
前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をAとしたとき、
前記樹脂には、式(1)を満たす消臭性粒子が含有されている、消臭性布帛。
30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)」
[相違点2-1]
本件発明1は、「前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であ」るのに対して、甲1発明2は、「活性アルミナ」である点。
[相違点2-2]
本件発明1は「前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき」、「前記布帛には」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記樹脂が付着されている」のに対して、甲1発明2は、「活性アルミナの固定量は10.3g/m2」である点。
b 新規性についての判断
事案に鑑み、まず相違点2-2について検討するに、相違点2-2は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明2ではない。
c 進歩性についての判断
相違点2-2についてさらに検討する。
甲1において、活性アルミナの単位面積あたりの付着量を増やすことは、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子である活性アルミナの露出度を大きくしたりすることである。
バインダーの付着量を多くすることに関して、甲1の【0016】の記載を参照して、甲1発明2のバインダーの付着量「8.6g/m2」を「10.0g/m2」まで多くしても、甲1発明2の活性アルミナの単位面積あたりの付着量は「12.0g/m2」(=10.3g/m2×10.0g/m2÷8.6g/m2)程度までにしかならない。
また、機能性粒子である活性アルミナの露出度を大きくすることについて、甲1には、「露出度があまり大きすぎると一部の機能性粒子は他の機能性粒子の上に重なった状態となり脱落を生じる等の問題があり耐久性の点から好ましくない」(甲1【0019】)と記載されており、活性アルミナの露出度を大きくすることには阻害要因がある。
そうすると、甲1発明2の活性アルミナの固定量を10.3g/m2から20.0(g/m2)以上にまで増やすことを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)甲1発明3に基づく理由
a 対比
甲1発明3における「バインダーの付着量は7.3g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は9.7g/m2」であることは、バインダーに対するヒドロキシアパタイトの含有率が57.1質量%と計算されるから、本件発明1における「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」としたとき、「前記樹脂」には、「式(1)」「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されて」いることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明3とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点3]
「基材としての布帛と、
前記布帛における少なくとも一方の面に付着され、消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をAとしたとき、
前記樹脂には、式(1)を満たす消臭性粒子が含有されている、消臭性布帛。
30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)」
[相違点3-1]
本件発明1は、「前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であ」るのに対して、甲1発明3は、「ヒドロキシアパタイト」である点。
[相違点3-2]
本件発明1は、「前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmであ」るのに対して、甲1発明3は、ヒドロキシアパタイトの体積平均粒子径が不明である点。
[相違点3-3]
本件発明1は「前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき」、「前記布帛には」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記樹脂が付着されている」のに対して、甲1発明3は、「ヒドロキシアパタイトの固定量は9.7g/m2」である点。
b 新規性についての判断
事案に鑑み、まず相違点3-3について検討するに、相違点3-3は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明3ではない。
c 進歩性についての判断
相違点3-3についてさらに検討する。
甲1において、ヒドロキシアパタイトの単位面積あたりの付着量を増やすことは、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることである。
しかしながら、甲1発明3は、甲1における従来例(甲1の【0005】)を比較例2として比較したものであり、甲1発明3において、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることについて、甲1には記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明3のヒドロキシアパタイトの固定量を9.7g/m2から20.0(g/m2)以上にまで増やすことを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)甲1発明4に基づく理由
a 対比
本件発明1と甲1発明4とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点4]
「基材としての布帛と、
前記布帛における少なくとも一方の面に付着され、消臭性粒子が含有されているドット状の樹脂と、を備え、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記消臭性粒子の体積平均粒子径は、0.4μm~8μmである、消臭性布帛」
[相違点4-1]
本件発明1は、「前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子であ」るのに対して、甲1発明4は、「活性アルミナ」である点。
[相違点4-2]
本件発明1は「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」としたとき、「前記樹脂には」、式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されており」、「前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき」、「前記布帛には」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記樹脂が付着されている」のに対して、甲1発明4は、「バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量は18.0g/m2」である点。
b 新規性についての判断
事案に鑑み、まず相違点4-2について検討するに、相違点4-2は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明4ではない。
c 進歩性についての判断
相違点4-2についてさらに検討する。
甲1発明4における「バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量は18.0g/m2」であることは、バインダーに対する活性アルミナの含有率が69.0質量%と計算される、本件発明1における「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」の数値範囲「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」よりも大きい。
また、甲1において、活性アルミナの単位面積あたりの付着量を増やすことは、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子である活性アルミナの露出度を大きくしたりすることである。
しかしながら、甲1発明4は、甲1における従来例(甲1の【0005】)を比較例3として比較したものであり、甲1発明4において、機能性粒子である活性アルミナのバインダーに対する含有率を小さくした上で、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることについて、甲1には記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明4の機能性粒子である活性アルミナのバインダーに対する含有率を69.0質量%から62.1(質量%)以下にまで減らし、かつ、活性アルミナの固定量を18.0g/m2から20.0(g/m2)以上にまで増やすことを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明8について
(ア)甲1方法発明3に基づく理由
甲1方法発明3では、「スパンレース不織布」、「ヒドロキシアパタイト」及び「アクリルペースト」が用いられていることから、これらを準備する工程を含んでいることは自明である。
甲1方法発明3における「バインダーの付着量は7.3g/m2、ヒドロキシアパタイトの固定量は9.7g/m2」であることは、バインダーに対するヒドロキシアパタイトの含有率が57.1質量%と計算されるから、本件発明8における「前記樹脂」には、「式(1)」「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されて」いることに相当する。
甲1方法発明3の「ヒドロキシアパタイトの固形分比が50%となるようにアクリルペーストとヒドロキシアパタイト」を「一体化」して「ペースト」とすることは、本件発明8の「前記樹脂に前記消臭性粒子を含有させる含有工程」に相当する。
甲1方法発明3の「アクリルペーストとヒドロキシアパタイトが一体化したペーストをドット状に塗布」することは、本件発明8の「前記布帛における少なくとも一方の面にドット状に付着させる付着工程」に相当する。
そうすると、本件発明8と甲1方法発明3とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点5]
「基材としての布帛と、前記布帛における少なくとも一方の面に付着させる樹脂と、前記樹脂に含有させる消臭性粒子と、を準備する準備工程と、
式(1)を満たすように、前記樹脂に前記消臭性粒子を含有させる含有工程と、
前記消臭性粒子が含有された前記樹脂を、前記布帛における少なくとも一方の面にドット状に付着させる付着工程と、を含む、消臭性布帛の製造方法。
30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)・・・(1)
ただし、前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をAとする。」
[相違点5-1]
本件発明8は、「前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子である」のに対して、甲1方法発明3は、「ヒドロキシアパタイト」である点。
[相違点5-2]
本件発明8は、「付着工程」において、「前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をB」として、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たす」のに対して、甲1方法発明3は、「ヒドロキシアパタイトの固定量は9.7g/m2」である点。
b 新規性についての判断
事案に鑑み、まず相違点5-2について検討するに、相違点5-2は実質的な相違点であり、本件発明8は甲1方法発明3ではない。
c 進歩性についての判断
相違点5-2についてさらに検討する。
甲1において、ヒドロキシアパタイトの単位面積あたりの付着量を増やすことは、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることである。
しかしながら、甲1方法発明3は、甲1における従来例(甲1の【0005】)を比較例2として比較したものであり、甲1方法発明3において、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることについて、甲1には記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1方法発明3のヒドロキシアパタイトの固定量を9.7g/m2から20.0(g/m2)以上にまで増やすことを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1方法発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)甲1方法発明4に基づく理由
本件発明8と甲1方法発明4とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点6]
「基材としての布帛と、前記布帛における少なくとも一方の面に付着させる樹脂と、前記樹脂に含有させる消臭性粒子と、を準備する準備工程と、
前記樹脂に前記消臭性粒子を含有させる含有工程と、
前記消臭性粒子が含有された前記樹脂を、前記布帛における少なくとも一方の面にドット状に付着させる付着工程と、を含む、消臭性布帛の製造方法。」
[相違点6-1]
本件発明8は、「前記消臭性粒子は、銀粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、又はこれらの複合粒子である」のに対して、甲1方法発明4は、「活性アルミナ」である点。
[相違点6-2]
本件発明8は、「含有工程」において、「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」として、式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満た」し、「付着工程」において、「前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をB」として、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たす」のに対して、甲1方法発明4は、「バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量は18.0g/m2」である点。
b 新規性についての判断
事案に鑑み、まず相違点6-2について検討するに、相違点6-2は実質的な相違点であり、本件発明8は甲1方法発明4ではない。
c 進歩性についての判断
相違点6-2についてさらに検討する。
甲1方法発明4における「バインダーの付着量は8.1g/m2、活性アルミナの固定量は18.0g/m2」であることは、バインダーに対する活性アルミナの含有率が69.0質量%と計算される、本件発明8における「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA」の数値範囲「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」よりも大きい。
また、甲1において、活性アルミナの単位面積あたりの付着量を増やすことは、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子である活性アルミナの露出度を大きくしたりすることである。
しかしながら、甲1方法発明4は、甲1における従来例(甲1の【0005】)を比較例3として比較したものであり、甲1方法発明4において、機能性粒子である活性アルミナのバインダーに対する含有率を小さくした上で、バインダーの付着量を多くしたり、機能性粒子であるヒドロキシアパタイトの露出度を大きくしたりすることについて、甲1には記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1方法発明4の機能性粒子である活性アルミナのバインダーに対する含有率を69.0質量%から62.1(質量%)以下にまで減らし、かつ、活性アルミナの固定量を18.0g/m2から20.0(g/m2)以上にまで増やすことを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明2、4、5、9について
本件発明2、4、5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであり、本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明8を限定するものであるから、いずれも甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明6、7について
本件発明6、7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立理由中、取消理由通知に採用しなかった申立理由は、以下のとおりである。
甲第2号証:特開2006-214029号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2001-162172号公報(以下「甲3」という。)
1 甲2を主引例とした進歩性についての理由(特許異議申立書の25ページ下から3行~31ページ16行)
(1)特許異議申立理由の概要
本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲2に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲2に記載された発明(特に、【0018】~【0022】の実施例Cに着目した発明。)とは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点7]
本件発明1は、「樹脂」が「消臭性粒子が含有されているドット状」であり、「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき」、「前記樹脂には」、式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されており、「前記布帛には」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記樹脂が付着されている」のに対して、甲2に記載された発明は、「樹脂組成物Cが、シリコンエマルジョン(SE1980(固形分))100、10μモナズ石粉体20、10μトルマリン粉体20、光触媒二酸化チタン20」であり、「樹脂組成物Cを、ロールコーターで、wet塗布量100g/m2塗布して得た」ものである点。
相違点7について検討するに、相違点7に係る本件発明1の構成は、甲1~4には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、甲2に記載された発明において、相違点7に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明8について
本件発明8と甲2に記載された発明(特に、【0018】~【0022】の実施例Cに着目した発明。)とは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点8]
本件発明8は、「含有工程」が式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たすように、前記樹脂に前記消臭性粒子を含有させ」る工程であり、「付着工程」が「前記消臭性粒子が含有された前記樹脂を」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記布帛における少なくとも一方の面にドット状に付着させ」る工程である」、「ただし、前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとする。」のに対して、甲2に記載された発明は、「シリコンエマルジョン(SE1980(固形分))100、10μモナズ石粉体20、10μトルマリン粉体20、光触媒二酸化チタン20を配合して樹脂組成物Cを得」て、「樹脂組成物Cを、ロールコーターで、wet塗布量100g/m2塗布し」た点。
相違点8について検討するに、相違点8に係る本件発明1の構成は、甲1~4には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、甲2に記載された発明において、相違点8に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明8は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2、4~7、9について
本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであり、本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明8を限定するものであるから、いずれも甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲3を主引例とした進歩性についての理由(特許異議申立書の31ページ17行~36ページ1行)
ア
(1)特許異議申立理由の概要
本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲3に記載された発明(特に、【0019】の実施例1に着目した発明。)とは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点9]
本件発明1は、「前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとしたとき」、「前記樹脂には」、式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たす消臭性粒子が含有されており、「前記布帛には」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記樹脂が付着されている」のに対して、甲3に記載された発明は、「光触媒組成物」が「TiO2(粒径0.5~5.0μm)100重量部に対して、銀粉末(粒径0.05~0.1μm)20重量部およびヒドロキシアパタイト(粒径0.01~0.08μm)10重量部を混合した混合粉末」であり、「アクリル樹脂(付着量15g/m2、ドット数330個/平方インチ)ペーストが粘着性を有する間に、光触媒組成物粉末をドット面に散布して、アクリル樹脂ペースト表面に付着(光触媒付着量5g/m2)させ」たものである点。
相違点9について検討するに、相違点9に係る本件発明1の構成は、甲1~4には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、甲3に記載された発明において、相違点9に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明8について
本件発明8と甲3に記載された発明(特に、【0019】の実施例1に着目した発明。)とは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点10]
本件発明8は、「含有工程」が式(1)「30.0(質量%)≦A≦62.1(質量%)」を「満たすように、前記樹脂に前記消臭性粒子を含有させ」る工程であり、「付着工程」が「前記消臭性粒子が含有された前記樹脂を」、式(2)「20.0(g/m2)≦B≦80.0(g/m2)」を「満たすように、前記布帛における少なくとも一方の面にドット状に付着させ」る工程である」、「ただし、前記樹脂に対する前記消臭性粒子の含有率をA、前記布帛に付着させる前記消臭性粒子の単位面積あたりの付着量をBとする。」のに対して、甲3に記載された発明は、「TiO2(粒径0.5~5.0μm)100重量部に対して、銀粉末(粒径0.05~0.1μm)20重量部およびヒドロキシアパタイト(粒径0.01~0.08μm)10重量部を混合して混合粉末である光触媒組成物を調整し」、「アクリル樹脂(付着量15g/m2、ドット数330個/平方インチ)ペーストが粘着性を有する間に、光触媒組成物粉末をドット面に散布して、アクリル樹脂ペースト表面に付着(光触媒付着量5g/m2)させ」たものである点。
相違点10について検討するに、相違点10に係る本件発明8の構成は、甲1~4には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、甲3に記載された発明において、相違点10に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明8は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2、4~7、9について
本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであり、本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明8を限定するものであるから、いずれも甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1、2、4~9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、2、4~9に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
本件特許の請求項3は、本件訂正により削除されたため、請求項3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700834