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特許異議申立

2021-700815

ゴム用組成物及びその用途

審判番号
2021-700815
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-512207
登録番号
6833675
請求日
2021年08月20日
審決日
2022年06月30日
公報発行日
2022年07月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】昭和電工株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人SSINPAT
  • 【権利者代理人】大家 邦久
  • 【権利者代理人】林 篤史
  • 【異議申立人】西郷 新
審判長/審判官
  • 審判長 細井 龍史
  • 審判官 佐藤 健史
  • 審判官 土橋 敬介
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6833675号発明「ゴム用組成物及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6833675号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6833675号(請求項の数7。以下、「本件特許」という。)は、2016年(平成28年)1月18日(優先権主張:平成27年4月16日(JP)日本国)を国際出願日とする出願(特願2017-512207号)に係るものであって、令和3年2月5日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年2月24日である。)。 その後、令和3年8月20日に、本件特許の請求項1~7に係る特許に対して、特許異議申立人である西郷新(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議申立て以降の手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年12月27日付け 取消理由通知書 令和4年 3月 7日 意見書(特許権者) 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 ・甲第1号証 国際公開第2013/129676号 ・甲第2号証 特開2007-106994号公報 ・甲第3号証 特表2009-517563号公報 ・甲第4号証 国際公開第2015/006808号及び抄訳文 ・甲第5号証 特開2007-177091号公報 ・甲第6号証 国際公開第03/033254号 ・甲第7号証 中出伸一著、ラテックスアレルギー、日本ゴム協会誌、一般社団法人日本ゴム協会発行、第82巻 第10号(2009)、第430~435頁 ・甲第8号証 国際公開第2012/137663号 ・甲第9号証 特表平11-502889号公報 ・甲第10号証 国際公開第2014/129547号 以下、「甲第1号証」~「甲第10号証」を「甲1」~「甲10」という。 第2 特許請求の範囲の記載 特許第6833675号の特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の請求項1~7に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~7に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、明細書及び特許請求の範囲を「本件明細書等」という。) 「【請求項1】 クロロプレン系重合体ラテックス(A)、金属酸化物(B)、酸化防止剤(C)、界面活性剤(D)及びpH調整剤(E)を含み、加硫促進剤を含まない組成物であって、前記(A)に含まれるクロロプレン系重合体中のテトラハイドロフラン不溶分量が50~85質量%であり、前記(A)の固形分100質量部に対して、(B)を1~10質量部、(C)を0.1~5質量部、(D)を0.1~10質量部、(E)を0.01~5質量部の割合で含み、 前記クロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれる重合体が、単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とのみからなる共重合体のみであって、単量体の割合が前記2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と前記2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)との合計100質量%に対して、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)76~93質量%及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)24~7質量%であるゴム用組成物。 【請求項2】 クロロプレン系重合体ラテックス(A)、金属酸化物(B)、酸化防止剤(C)、界面活性剤(D)及びpH調整剤(E)からなる組成物である請求項1に記載のゴム用組成物。 【請求項3】 請求項1または2に記載のゴム用組成物を用いて得られる成形物。 【請求項4】 300%弾性率(モデュラス)が0.5~1.2MPa、引張強度が17MPa以上、引張破断伸びが800%以上、変形率が20%以下である請求項3に記載の成形物。 【請求項5】 請求項1または2に記載のゴム用組成物を用いて得られるゴム製浸漬製品。 【請求項6】 前記ゴム製浸漬製品が手袋である請求項5に記載のゴム製浸漬製品。 【請求項7】 前記手袋が医療用使い捨て手袋である請求項6に記載のゴム製浸漬製品。」 第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 取消理由通知の概要 当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)取消理由1 本件の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において、頒布された甲1又は甲2に記載された発明並びに甲1、甲2及び甲9に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件の請求項1~7に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 特許異議申立理由の概要 申立人が特許異議申立書でした申立の理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)申立理由1 本件の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に頒布された甲1又は甲2に記載された発明及び甲1~甲10に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件の請求項1~7に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2 本件の特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件の請求項1~7に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 内容の概要は、「第4 2(5)」で示すとおりである。 第4 当審の判断 当審は、当審が通知した取消理由1並びに申立人がした申立理由1及び2によっては、いずれも、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 なお、取消理由1と申立理由1とは、同じ甲1又は甲2を主引用例とする理由なので、以下では併せて検討する。 1 取消理由1及び申立理由1について (1)甲1及び甲2の記載事項並びに記載された発明について ア 甲1 甲1には、甲1の請求項1~8や段落[0017]~[0051]の記載によれば、(第1の実施形態)として、請求項1に記載された析出率が5~40%のポリクロロプレンラテックスが記載され、同じく甲1の請求項6~7や段落[0052]~[0065]の記載によれば、(第2の実施形態)として、請求項6に記載されたポリクロロプレンラテックス組成物が記載され、同じく甲1の請求項8や段落[0066]~[0069]の記載によれば、(第3の実施形態)として、請求項6に記載されたポリクロロプレンラテックス組成物を浸漬成形して得た請求項8に記載された成形品が記載されている。 そして、段落[0070]以降には、実施例として、(第1の実施形態)~(第3の実施形態)の具体例が記載されている。 ここでは、上記第2の実施形態として、特に、その具体例である実施例1で製造されたポリクロロプレンラテックス(固形分濃度が60質量%)に対し、段落[0077]に記載された添加剤を配合した手袋製造時の不良率を調べるためのポリクロロプレンラテックス組成物に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「酸化亜鉛:3質量部、硫黄:0.6質量部、酸化防止剤:1.2質量部、ラウリル硫酸ナトリウム:0.24質量部に対して、ポリクロロプレンラテックス(固形分濃度が60質量%):100質量部を混合したポリクロロプレンラテックス組成物であって、ポリクロロプレンラテックスの単量体がクロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとからなり、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合量が10質量%であるポリクロロプレンラテックス組成物」(以下「甲1発明」という。) イ 甲2 甲2には、甲2の請求項1~12や段落【0009】~【0017】、【0026】~【0029】の記載によれば、請求項1に記載されたテトラハイドロフラン不溶分量が35~85質量%のポリクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法及びラテックスが記載され、同じく甲2の請求項5及び6や段落【0018】~【0025】の記載によれば、請求項5に記載された加硫ゴム組成物が記載され、同じく甲2の請求項12には、請求項5に記載された加硫ゴム組成物を成形して得られた手袋が記載されている。 そして、段落【0032】以降には、実施例として、これらの具体例が記載され、同【0036】には、加硫物性を測定するためのクロロプレン系重合体ラテックス配合物が以下のように記載され、 [図:0001386141000001.jpg] 同【0047】には、実施例1として、クロロプレン重合体のポリマーラテックスが、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとから製造されることが記載され、同【0049】の表2は以下のように記載され、 [図:0001386141000002.jpg] 実施例1として、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合分率が13.8質量%で、テトラハイドロフラン不溶分量が51質量%であること、及び、実施例4として、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合分率が12.6質量%で、テトラハイドロフラン不溶分量が82質量%であることが記載されている。 また、同【0050】には、実施例7として実施例1のラテックス配合物を手袋に成形したことが記載されている。 そうすると、実施例1に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「クロロプレン系重合体ラテックス:100質量部、界面活性剤:計3質量部、酸化亜鉛:5質量部、フェノール系酸化防止剤:2質量部、硫黄:0.5質量部、促進剤:3質量部、グリシン:0.5質量部を混合したクロロプレン系重合体ラテックス配合物であって、クロロプレン系重合体ラテックス中のテトラハイドロフラン不溶分量が51質量%であり、クロロプレン系重合体ラテックスの単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとからなり、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合分率が13.8質量%であるクロロプレン系重合体ラテックス配合物」(以下「甲2発明A」という。) また、実施例4に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「クロロプレン系重合体ラテックス:100質量部、界面活性剤:計3質量部、酸化亜鉛:5質量部、フェノール系酸化防止剤:2質量部、硫黄:0.5質量部、促進剤:3質量部、グリシン:0.5質量部を混合したクロロプレン系重合体ラテックス配合物であって、クロロプレン系重合体ラテックス中のテトラハイドロフラン不溶分量が82質量%であり、クロロプレン系重合体ラテックスの単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとからなり、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合分率が12.6質量%であるクロロプレン系重合体ラテックス配合物」(以下「甲2発明B」という。) (2)甲3~甲10の記載事項について ア 甲3 甲3には以下の事項が記載されている。 (甲3a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 袖口領域及び統合された手袋領域を有する手に優しいゴム手袋物品であって、前記手袋は乳化された手に優しい混合物の乾式コーティングを含んでなり、前記混合物は少なくとも1の水溶性湿潤モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の水溶性潤滑剤、及び少なくとも1の水溶性界面活性剤を含んでなり、前記水不溶性被覆モイスチャは微細かつ実質的に均一に前記混合物中に分散され、これにより前記乾式コーディングは前記水不溶性モイスチャを保持し、前記手に優しいコーティングは皮膚から発生する湿気で活性化して装着者の皮膚に移動され、前記手袋物品は、適宜、幅が約0.5cmから約10cmまでの範囲の布地粘着性袖口領域、及び/又は、約10nmから約500nmまでの表面粗さを有するテクスチャ形成された内部表面を含む内部手袋領域を含んでなる、ゴム手袋物品。 ・・・ 【請求項32】 前記ゴムは合成ゴムである、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。 ・・・ 【請求項34】 前記合成ゴムはポリクロロプレンである、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。 【請求項35】 前記合成ゴムはクロロプレン及びジクロロブタジエンの共重合体である、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。」 (甲3b)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、皮膚接触面において手に優しいコーティングを有するゴム手袋物品及びその製作方法に関する。 ・・・ 【0007】 これらの特性を別としても、特に手袋着用が1-2時間の期間である医用手袋においては、手袋又はその表面がユーザの手に優しいことは必須である。手袋はバリアであるため、皮膚で発生した湿気はユーザの皮膚と手袋のラテックスバリア層の間に閉じ込められる。手袋のラテックスバリア層は、一般用界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム、一般用凝固剤である硝酸カルシウム等の皮膚刺激物、又は加硫促進剤及びラテックス蛋白等のアレルゲン、皮膚刺激やアレルギー反応を生じうる他のゴム処理化学薬品を、ほとんど又は全く含んではならない。・・・」 イ 甲4 甲4には以下の事項が記載されている。 以下、甲4の記載事項を訳文で示す。訳文は、申立人が提出した抄訳文に基づいて当審が作成した。 (甲4a)「エラストマーフィルム形成組成物、およびエラストマーフィルムから作製された物品 分野 本発明は、手袋などの浸漬品を製造する際に使用されるエラストマーフィルム形成組成物、ならびにエラストマーフィルムおよび手袋を形成するための方法に関する。」(第1頁第1~6行) (甲4b)「加硫促進剤は、架橋剤の1つのサブクラスであり、硫黄を放出するかまたは硫黄含有化合物と作用して、エラストマー形成ポリマーの硫黄ベースの共有結合性架橋を促進する。一般に、加硫促進剤は、硬化(加硫)時間を短縮するか、硬化時間を少なくするか、または組成物中で使用することが必要な架橋剤の量を減少させることから、有利でありうる。しかし、否定的側面として、加硫促進剤は、紅斑、小水疱、丘疹、そう痒、疱疹、および/または痴皮形成を含む症状を伴うアレルギー性接触皮膚炎などのアレルギー反応を生じさせる場合がある。」(第21頁第20~27行) (甲4c)「請求項 1 (a)カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジェン、および (b)1つまたは複数の架橋剤 を含む、エラストマーフィルム形成組成物。」(第70頁第1~4行) ウ 甲5 甲5には以下の事項が記載されている。 (甲5a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 乾燥して得られるフィルムのメチルエチルケトン不溶分含有量が50~90重量%で、かつ、該不溶分のメチルエチルケトン膨潤度が3~15である、ディップ成形用の酸変性ニトリルゴムラテックス。」 (甲5b)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、ディップ成形用ラテックス、これを含んでなるディップ成形用組成物及びディップ成形品に関し、さらに詳しくは、硫黄等による臭気やかゆみの発生がなく、耐有機溶剤性に優れたディップ成形品を与えるディップ成形用ラテックス、これを含んでなるディップ成形用組成物、及びディップ成形品に関する。 【背景技術】 【0002】 ゴム手袋は、家事、食品関連産業、精密工業、医療など幅広い用途で使用されている。なかでも、引張強度が高く、耐油性に優れるゴム手袋として、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)のカルボキシ変性体のラテックスに、硫黄および加硫促進剤を配合してなる組成物を用いたディップ成形による成形品が多用されている。しかしながら、このディップ成形品は、硫黄による臭気があり、長時間ゴム手袋をはめて作業すると硫黄、加硫促進剤等に起因するかゆみ、かぶれなどを皮膚に起こす場合がある。 ・・・」 (甲5c)「【0029】 本発明のディップ成形用組成物は、加硫剤を含有しなくても良い。従って基本的には硫黄及び加硫促進剤を含まないので、得られるディップ成形品は従来のような硫黄臭を発せず、また、硫黄や加硫促進剤が原因となる皮膚のかゆみやかぶれを生じさせない。」 エ 甲6 甲6には以下の事項が記載されている。 (甲6a)「明細書 積層体および該積層体からなる医療用具 技術分野 本発明は、少なくとも表層(I)およびその隣接層(II)からなる積層体において、表層 (I)および隣接層(II)が特定の共重合体からなる積層体及ぴ該積層体からなる医療用具に関する。」(第1頁第1~6行) (甲6b)「また、架橋剤、架橋促進剤などを含有する場合には毒性が問題となるので、特に医療用チューブや医療用具は架橋剤、架橋促進剤等を含有しないのが望ましい。」(第5頁第8~10行) (甲6c)「また、架橋剤及び架橋助剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物、モノ及びジスルフィド、金属キレート、レドックス開始剤、イオウ、イオウ化合物、加硫促進剤、フェノール系樹脂、架橋触媒、キノンオキシム類、酸化鉛類などが挙げられる。・・・」(第15頁第11~15行) (甲6d)「なお、表層(I)の架橋の程度は「ゲル分率」を指標として評価することができる。 架橋前にはテトラヒドロフランやトルエンなどの溶剤に完全に溶解していた重合体が、架橋後には架橋の程度に応じて不溶となる。ゲル分率は、架橋後の重合体を特定の溶剤に浸漬した際の不溶部分の重合体の重量を該溶剤に浸漬する前の重量で除した値の百分率(%)として求められる。本発明においては、耐摩耗性などの性能がより優れた積層体が得られることから、表層(I)を構成する共重合体(I)のゲル分率としては60%以上が好ましく、70%以上がよりこのましい。」(第23頁第2~10行) オ 甲7 甲7には以下の事項が記載されている。 (甲7a)「天然ゴム製品では,従来から加硫促進剤や老化防止剤など加工に用いられる薬品が原因の接触皮膚炎が知られていた.これはラテックスアレルギーではなく,化学薬品で感作されることによって起こる湿疹であり,特異性IgEを産生しない遅発型アレルギー反応である.天然ゴム製品だけではなく,他の合成ゴム製品でも起こる病気である.」(第430頁右欄第4~9行) カ 甲8 甲8には以下の事項が記載されている。 (甲8a)「明細書 ポリクロロプレンラテックス、ゴム組成物及び浸漬成形品 技術分野 [0001] 本発明は、ポリクロロプレンラテックス、ゴム組成物及び浸漬成形品に関する。より詳しくは、浸漬成形に使用されるポリクロロプレンラテックス及びゴム組成物、並びにこれらを用いた浸漬成形品に関する。」(第1頁第1~7行) (甲8b)「[0018] 本実施形態のポリクロロプレンラテックスに含有されるクロロプレン共重合体は、浸漬成形品の強度向上及び浸漬成形する際の収縮抑制の観点から、ゲル含有量が30~95質量%であることが好ましい。例えば、クロロプレン共重合体のゲル含有量が30質量%未満の場合、ラテックス粒子中の重合体の架橋密度が低いため、浸漬成形した成形品を加硫しても、架橋密度が十分に高くならないことがある。そうすると、加硫後の浸漬成形品のモジュラス(伸長応力)が低くなり、十分な強度が得られないこととなる。 [0019] また、クロロプレン共重合体のゲル含有量が95質量%を超えると、ラテックス粒子中の重合体の架橋密度が高くなり過ぎる。この場合、浸漬成形した成形品を加硫したときに、元来のラテックス粒子中の重合体の架橋密度とラテックス粒子間の架橋密度との差が大きくなり、架橋密度が低いラテックス粒子間に変形時の応力が集中し、破断伸びや破断強度などの力学特性が低下することがある。なお、クロロプレン共重合体のゲル含有量は、40~85質量%であることがより好ましく、これにより、力学的特性に優れた浸漬成形品を製造することができる。 [0020] なお、クロロプレン共重合体のゲル含有量は、以下の方法で求めることができる。先ず、ポリクロロプレンラテックスを凍結乾燥し、その質量A(g)を測定する。次に、得られた乾燥物を、23℃の温度条件下で20時間かけて、トルエンに溶解し、0.6質量%の濃度に調整する。それを、遠心分離機により固液分離した後、200メッシュの金網を用いてその不溶分を分離する。分離した不溶分を、風乾した後、110℃の雰囲気下で1時間乾燥して、その質量B(g)を測定する。そして、下記数式1によりゲル含有量を算出する。 [0021][数1] ゲル含有量(%)=(B/A)×100」 (甲8c)「[0040] 本実施形態のポリクロロプレンラテックスは、重合後に、コロイド安定性やその他の特性を維持又は向上させるために、pH調整剤、凍結安定剤、乳化安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤及び防腐剤などを、本願発明の効果を阻害しない範囲で任意に配合することができる。」 (甲8d)「実施例 [0057] 以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。・・・ [0062][ゲル含有量] ポリクロロプレンラテックスを凍結乾燥し、その質量A(g)を測定した。次に、得られた乾燥物を、23℃の温度条件下で20時間かけて、トルエンに溶解し、0.6質量%の濃度に調整した。それを、遠心分離機により固液分離した後、200メッシュの金網を用いてその不溶分を分離した。分離した不溶分を、風乾した後、110℃の雰囲気下で1時間乾燥して、その質量B(g)を測定した。そして、上記数式1からトルエン不溶分量を算出した。 ・・・ [0073] [図:0001386141000003.jpg] [0074] [図:0001386141000004.jpg] 」 キ 甲9 甲9には以下の事項が記載されている。 (甲9a)「ポリクロロプレンの組成物 発明の背景 本発明は、ポリクロロプレンの組成物に関する。より明確には、本発明は、ポリウレタンおよびポリオレフィンのような発泡重合体材料を不織板、熱可塑性オレフィン、布地、およびポリウレタンを含む支持体に接着させるのに用いられる水性接着剤中の使用に特に適したポリクロロプレンの組成物に関する。」(第4頁第2~7行) (甲9b)「本発明の他の重要な特徴は、接着剤のクロロプレンのホモポリマー成分のゲル含有量に関するものである。「ゲル含有量」という用語は、ポリマーに関連して用いられる場合は、有機溶剤(一般的にベンゼン、トルエン、またはテトラヒドロフラン)中に不溶のポリマーの量を指す。ポリマーの分子量が増加すると、架橋、ゲル化部分が生成する地点に到達する。ゲル測定は、それゆえ、架橋されたものの含有量のゲージである。本発明のクロロプレンのホモポリマーは、5~70重量%のゲル含有量を持つ。15~35%のゲル含有量を持つポリマーが好ましい。5%より低いゲル含有量を持つポリマーが用いられる場合、耐高温性は妥協され、一方、70%より高いゲル含有量を持つポリマーが用いられる場合、ポリマーを配合された接着剤の結合粘着力および開放時間は減少する。」(第6頁第14~23行) (甲9c)「ポリマーのゲル含有量は、重合および単離条件に関する因子の数によって変化する。例えば、生成するゲルの量は、重合温度および/または単量体転化が増加するにつれて増加し、一方、生成するゲルの量は、重合化混合物中の変性剤(すなわち連鎖移動剤)の濃度の増加に伴い減少する傾向がある。クロロプレンのホモポリマー成分のゲル含有量は、このように重合中に、重合温度、存在する連鎖移動剤の量、および単量体転化パーセントを調整することにより制御することができる。」(第7頁第10~16行) ク 甲10 甲10には以下の事項が記載されている。 (甲10a)「明細書 発明の名称: ディップ成形用ラテックス、ディップ成形用組成物およびディップ成形体 技術分野 [0001] 本発明は、ディップ成形用カルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックス、ディップ成形用組成物およびディップ成形体に関する。」(第1頁第1~6行) (甲10b)「[0004] 本発明は、引張強度が優れたディップ成形体を与えることができるディップ成形用ラテックスを提供することを目的とする。また、本発明は、このラテックスを用いて得られるディップ成形用組成物およびディップ成形体を提供することも目的とする。 [0005] 本発明者らは、上記課題を解決鋭意研究した結果、合成イソプレン重合体にカルボキシル基を有する単量体を水相中でグラフト重合して得られるカルボキシ変性合成イソプレン重合体のラテックス(以下、「カルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックス」という。)であって、特定の界面活性剤を含有し、当該カルボキシ変性合成イソプレン重合体のテトラヒドロフラン不溶解分が特定量以上であるラテックスを、ディップ成形用途に用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。」 (甲10c) 「[0038] カルボキシ変性合成イソプレン重合体 本発明のディップ成形用カルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックスを構成するカルボキシ変性合成イソプレン重合体は、上記の合成イソプレン重合体にカルボキシル基を有する単量体を水相中でグラフト重合して得られる。 [0039] カルボキシ変性合成イソプレン重合体のテトラヒドロフラン不溶解分は30重量%以上であることが必要であり、好ましくは60重量%以上である。テトラヒドロフラン不溶解分が少な過ぎると、ディップ成形体の引張強度が低くなる。」 (甲10d)「請求の範囲 [請求項1] 合成イソプレン重合体にカルボキシル基を有する単量体を水相中でグラフト重合して得られるカルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックスであって、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含有し、前記カルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックスを構成するカルボキシ変性合成イソプレン重合体のテトラヒドロフラン不溶解分が30重量%以上である、ディップ成形用カルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックス。 ・・・ [請求項5] 前記カルボキシ変性合成イソプレン重合体のテトラヒドロフラン不溶解分が60重量%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のディップ成形用カルボキシ変性合成イソプレン重合体ラテックス。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1のうち、「加硫促進剤を含まない」という発明特定事項の解釈について 本件発明1は、「加硫促進剤を含まない」という発明特定事項を有する。ここでは、対比・判断をする前に、具体的には、「加硫促進剤」に硫黄が含まれるか否かについて、最終的には、本件発明1のゴム用組成物に硫黄が含まれるか否かについて検討する。 (ア)本件明細書の記載 本件明細書の段落【0026】には、「加硫促進剤」について「本発明では、IV型アレルギーの原因となる加硫促進剤を使用しない。」と記載され、「従来からクロロプレン系重合体ラテックスの加硫に一般に用いられている加硫促進剤は、チウラム系、ジチオカーバメート系、チオウレア系、グアニジン系の加硫促進剤である。」と記載され、具体的な加硫促進剤の例示がされた後に、「本発明ではこれらの加硫促進剤は一切使用しない。」と記載されており、本件発明における「加硫促進剤」は「チウラム系、ジチオカーバメート系、チオウレア系、グアニジン系の加硫促進剤」に限られると解釈することもできる。一方、「一般に用いられている加硫促進剤は、」という前提の記載があることからみて、他の加硫促進剤の場合を含む余地があるとも解釈することができる。 (イ)技術常識としての甲1及び甲2の記載 a 甲1 甲1の請求項6には、ポリクロロプレンラテックス組成物が記載され、甲1の段落[0053]には、ポリクロロプレンラテックス組成物として「硫黄や加硫促進剤が添加されていないため」と記載があり、この記載からすると、「硫黄」は「加硫促進剤」とは定義上、異なるものとして扱われていたものと解することができる。一方、同[0061]には、「硫黄を配合することにより、ポリクロロプレンラテックスの加硫を促進させることができる。」と記載され、同[0062]には、「硫黄の配合量は、・・・0.1~3質量部が好ましい・・・0.1質量部未満の場合、加硫促進効果が十分に得られない。」と記載され、これらの記載からすると、「硫黄」は「加硫促進剤」としての機能を有する配合物であるとも解することができる。 b 甲2 甲2の請求項5には、「加硫促進剤」を含み、さらに「硫黄」を含む加硫ゴム組成物が記載され、この記載からすると、「硫黄」は「加硫促進剤」とは定義上、異なるものとして扱われていたものと解することができる。一方、甲2の【0022】には、「加硫促進剤だけで加硫が不十分な場合に、硫黄を併用するのが通常である。硫黄の添加量はクロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対して0.1~3質量部が好ましい。0.1質量部未満では、促進効果が十分でなく、」と記載され、これらの記載からすると、「硫黄」は「加硫促進剤」としての機能を有する配合物であるとも解することができる。 (ウ)特許権者の主張 当審は、令和3年12月27日付け取消理由通知書において、特許権者に対して、本件発明1におけるゴム用組成物は、「硫黄」を含むことを許容するのか否か、ということについて審尋をしたところ、特許権者は、令和4年3月7日に提出した意見書において、「本件発明1におけるゴム用組成物は、「硫黄」を含むことを許容する。」という回答を行った。 (エ)本件発明1の「加硫促進剤」に「硫黄」が含まれるか否かの解釈 上記(ア)及び(イ)でみたように、加硫促進剤は、加硫を促進させる配合剤であることは明らかであるところ、本件明細書の記載及び技術常識を勘案しても、本件発明1の「加硫促進剤」に「硫黄」が含まれるか否かは判然としないが、本件発明においては、特許権者の主張を踏まえて、加硫促進剤には硫黄は含まれないと解釈し、本件発明1である「ゴム用組成物」には、硫黄を含むことを許容すると解釈する。 イ 本件発明1について (ア)甲1発明との対比・判断 a 対比 甲1発明の「ポリクロロプレンラテックス組成物」は、浸漬成形によりゴム手袋を製造するためのものであるから、これは、本件発明1の「ゴム用組成物」に相当する。 甲1発明の「ポリクロロプレンラテックス」は、「クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとからなり、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合量が10質量%であ」り、クロロプレンの共重合量は90質量%であることは明らかであるから、これは、本件発明1の「クロロプレン系重合体ラテックス(A)」であって、「クロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれる重合体が、単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とのみからなる共重合体のみであって、単量体の割合が前記2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と前記2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)との合計100質量%に対して、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)76~93質量%及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)24~7質量%である」に相当する。 甲1発明の「酸化亜鉛」、「酸化防止剤」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」はそれぞれ、本件発明1の「金属酸化物(B)」、「酸化防止剤(C)」及び「界面活性剤(D)」に相当する。 甲1発明の「ポリクロロプレンラテックス」は、固形分濃度が60質量%であるから、固形分は60(=100×0.6)質量部であるといえ、ポリクロロプレンラテックスの固形分量を100質量部とすると、「酸化亜鉛」、「酸化防止剤」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」の配合割合は、それぞれ、「5(=3×100/60)質量部」、「2(=1.2×100/60)質量部」及び「0.4(=0.24×100/60)質量部」と計算され、これらは、本件発明1の「(A)の固形分100質量部に対して」「(B)を1~10質量部」、「(C)を0.1~5質量部」及び「(D)を0.1~10質量部」に相当する。 そして、甲1発明は、加硫促進剤を含まないポリクロロプレンラテックス組成物である。 そうすると、甲1発明と本件発明1とは、以下の点において一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「クロロプレン系重合体ラテックス(A)、金属酸化物(B)、酸化防止剤(C)及び界面活性剤(D)を含み、加硫促進剤を含まない組成物であって、前記(A)の固形分100質量部に対して、(B)を1~10質量部、(C)を0.1~5質量部、(D)を0.1~10質量部の割合で含み、 前記クロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれる重合体が、単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とのみからなる共重合体のみであって、単量体の割合が前記2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と前記2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)との合計100質量%に対して、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)76~93質量%及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)24~7質量%であるゴム用組成物。」 <相違点1> 本件発明1では「クロロプレン系重合体中のテトラハイドロフラン不溶分量が50~85質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では明らかでない点 <相違点2> ゴム用組成物が、本件発明1では「pH調整剤(E)」を「クロロプレン系重合体ラテックス」「(A)の固形分100質量部に対して」「0.01~5質量部の割合で含む」のに対し、甲1発明ではpH調整剤(E)を含まない点 b 判断 (a)相違点1について i 特許権者の主張 特許権者は、令和4年3月7に提出した意見書において、概略、以下のように主張する。 甲1の実施例1と同様の方法でラテックスを調製し、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0033】に記載の方法に基づいて、テトラハイドロフラン(THF)不溶分量を測定し、その結果を以下の表Aに示した。 [図:0001386141000005.jpg] 確認試験では、得られたポリクロロプレンラテックスに含まれる固形分中のTHF不溶分量は38質量%であり、本件発明1で規定する範囲から外れていた。 ここで、確認試験の重合転化率についてみてみると、88%であり、甲1の実施例1の85%よりも大きな値であったが、一般に、THF不溶分量は重合転化率が大きいほど大きくなる傾向にあり、このことは、モノマーの使用割合は異なるが、表A中の参考実験1及び2のデータ(参考実験1:重合転化率は85%、THF不溶分量は43.5質量%であること、参考実験2:重合転化率は88%、THF不溶分量は44.5質量%であること)からも明らかであるから、甲1の実施例1(重合転化率=85%)のTHF不溶分量は、確認試験(重合転化率=88%)のTHF不溶分量(38質量%)よりも低いと考えられる。 よって、相違点1は実質的な相違点である。 ii 検討 特許権者が行った確認試験は、クロロプレンモノマー、2.3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及びn-ドデシルメルカプタンの使用量並びに重合温度が、甲1の実施例1と同じであるところ、重合転化率が88%であり、甲1の実施例1である85%と異なるから、甲1の実施例1の追試験とはいえないものであるが、THF不溶分量は38質量%と測定された。 この確認試験のTHF不溶分量から、甲1の実施例1におけるTHF不溶分量を推測するに、特許権者が行った参考実験1及び2を対比させた結果と、テトラハイドロフランの不溶ポリマーと量と同じ意味であると解釈される「ゲル含量」は、単量体の転化率が増加するにつれて増加するという技術常識(摘記(甲9c)で示した「生成するゲルの量は、・・・単量体転化が増加するにつれて増加し・・・」という記載を参照。)を勘案すると、甲1の実施例1におけるTHF不溶分量は、確認試験の38質量%よりも小さい値であると推認される。よって相違点1は実質的な相違点であるといえる。 そこで、相違点1が容易に想到できたか否かについて検討すると、甲1には、ポリクロロプレンラテックスのTHF不溶分量に関する記載はなく、また、甲2には、ポリクロロプレンラテックスの製造方法が甲1発明と同じの場合にTHF不溶分量が甲1発明と同じことが記載されていないから、甲1発明において相違点1が本件発明1で特定される範囲とすることに動機づけがあるとはいえない。 さらに、甲2、甲6、甲8~甲10をみても、ポリクロロプレンラテックスを含むゴム組成物において、加硫促進剤を含まない場合にTHF不溶分量を調整し50~85質量%とすることで加硫ゴムの機械的特性を向上させることは記載されていないから、上記記載をみた当業者であっても、甲1発明において相違点1が本件発明1で特定される範囲であるとすることに動機づけがあるとはいえない。 そして、効果について検討すると、テトラハイドロフラン不溶分率が50~85質量%であるクロロプレン系重合体ラテックスを含み、加硫促進剤を含まない本件発明1は、テトラハイドロフラン不溶分率が本件発明1の特定を満足しないが加硫促進剤を含まない例(比較例1及び2)、テトラハイドロフラン不溶分率が本件発明1の特定を満足するが加硫促進剤を含む例(比較例3)、及びテトラハイドロフラン不溶分率が本件発明1の特定を満足しないし加硫促進剤を含む例(比較例4及び5)に比べて、引っ張り強度、柔軟性及び柔軟安定性に優れることが具体的なデータにより確認され、これらの効果は、甲1、甲2、甲6、甲8~甲10に記載されていない予測を超える顕著な効果であるということができる。 そうすると、本件発明1は当業者が容易に想到できたものとはいえない。 (イ)甲2発明A及びBとの対比・判断 ここでは、甲2発明Aと甲2発明Bとを併せて検討する。 a 対比 甲2発明A及びBの「クロロプレン系重合体ラテックス配合物」は、ゴム手袋を製造するためのものであるから、これは、本件発明1の「ゴム用組成物」に相当する。 甲2発明A及びBの「クロロプレン系重合体ラテックス」は、「クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン」とからなり、甲2発明Aでは、「2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合分率が13.8質量%」であり、クロロプレンの共重合分率は86.2質量%であることは明らかであり、また、甲2発明Bでは、「2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合分率が12.6質量%」であり、クロロプレンの含有量は87.4質量%であることは明らかであるから、これらは、本件発明1の「クロロプレン系重合体ラテックス(A)」であって、「クロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれる重合体が、単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とのみからなる共重合体のみであって、単量体の割合が前記2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と前記2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)との合計100質量%に対して、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)76~93質量%及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)24~7質量%である」に相当する。 「クロロプレン系重合体ラテックス中のテトラハイドロフラン不溶分量」は、甲2発明Aでは「51質量%」、甲2発明Bでは「82質量%」であるから、これらは、本件発明1の「(A)に含まれるクロロプレン系重合体中のテトラハイドロフラン不溶分量が50~85質量%」に相当する。 甲2発明A及びBの「酸化亜鉛」、「フェノール系酸化防止剤」及び「界面活性剤」はそれぞれ、本件発明1の「金属酸化物(B)」、「酸化防止剤(C)」及び「界面活性剤(D)」に相当する。 甲2発明A及びBの「グリシン」は、甲2の段落【0024】によれば、pH調整剤の具体例として記載されているから、本件発明1の「pH調整剤(E)」に相当する。 甲2発明A及びBに含まれる各成分の質量部は、甲2の段落【0036】の【表1】によれば乾燥質量部と記載されているから、甲2発明A及びBの「クロロプレン系重合体ラテックス:100質量部」、「酸化亜鉛:5質量部」、「フェノール系酸化防止剤:2質量部」、「界面活性剤:計3質量部」、「グリシン:0.5質量部」は、本件発明1の「(A)の固形分100質量部に対して」「(B)を1~10質量部」、「(C)を0.1~5質量部」、「(D)を0.1~10質量部」及び「(E)を0.01~5質量部」に相当する。 そうすると、甲2発明A及びBと本件発明1とは、以下の点において一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「クロロプレン系重合体ラテックス(A)、金属酸化物(B)、酸化防止剤(C)、界面活性剤(D)及びpH調整剤(E)を含み、前記(A)に含まれるクロロプレン系重合体中のテトラハイドロフラン不溶分量が50~85質量%であり、前記(A)の固形分100質量部に対して、(B)を1~10質量部、(C)を0.1~5質量部、(D)を0.1~10質量部、(E)を0.01~5質量部の割合で含み、 前記クロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれる重合体が、単量体が2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とのみからなる共重合体のみであって、単量体の割合が前記2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と前記2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)との合計100質量%に対して、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)76~93質量%及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)24~7質量%であるゴム用組成物。」 <相違点3> ゴム用組成物が、本件発明1では「加硫促進剤を含まない組成物」であるのに対し、甲2発明A及びBでは促進剤を3質量部含む点 b 判断 甲2には、段落【0006】によれば、柔軟性の経時安定性に優れたクロロプレン系重合体ラテックスを提供することを課題として、その請求項4に、概略、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)78~90質量%、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)22~10質量%からなる共重合体であり、重合体中のテトラハイドロフラン不溶分量が、35~85質量%であり、乾燥重合体の-10℃における硬度上昇で表される結晶化速度R(RはJIS K6301に基づいて-10℃で測定される初期(時間=0)硬度から5ポイント上昇するまでに要する時間)が、240時間以上であるクロロプレン系重合体ラテックスが記載され、また、請求項5には、上記クロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部とそれに対して、金属酸化物1~10質量部、加硫促進剤0.5~5質量部、硫黄0.1~3質量部、酸化防止剤0.1~5質量部、界面活性剤0.1~10質量部、pH調整剤0.01~5質量部を含むことを特徴とする加硫ゴム組成物が記載されている。 そして、同【0032】以降に記載された実施例においては、クロロプレン系重合体ラテックス100質量部に対して、界面活性剤として川口化学(株)製、Darvan SMOを1質量部、同じく界面活性剤として川口化学(株)製、Darvan WAQを2質量部、酸化亜鉛分散体として大崎工業(株)製、AZ-SWを5質量部、フェノール系酸化防止剤分散体として中京油脂(株)製、K-840(Wingstay L分散体)を2質量部、硫黄を0.5質量部、促進剤TP分散体として大内新興化学(株)製、ノクセラーTP(ジブチルチオカルバミン酸ナトリウム)を1質量部、促進剤TETD分散体として大内新興化学(株)製、ノクセラーTET(テトラエチルチウラムジスルフィド)を2質量部、グリシンを0.5質量部を配合したクロロプレン系重合体ラテックス配合物を作成し、加硫物性を測定したことが記載され、特に、柔軟性の経時安定性に優れることが具体的なデータと共に記載されている。 このように、甲2に記載された加硫ゴム組成物は、特定の物性を有するクロロプレン系重合体ラテックスに対して、請求項5に記載された金属酸化物、加硫促進剤、硫黄、酸化防止剤、界面活性剤及びpH調整剤をそれぞれ特定量含むことにより、甲2に記載された発明の課題である柔軟性の経時安定性に優れる加硫ゴムが得られるといえ、加硫促進剤はゴムの加硫の程度に関係する添加剤であり、ゴムの加硫の程度によりゴムの物性が大きく変化することは明らかである。そうすると、いくら甲1の段落[0053]に、ポリクロロプレンラテックス組成物に硫黄や加硫促進剤が添加されていないと、手袋の使用者へのアレルギー反応を抑えることができると記載されていても、また、甲3~甲7に、加硫促進剤がアレルギーの原因であることが示唆されていても、甲2に記載された発明の課題の解決を犠牲にしてまで、加硫ゴム組成物に含まれる加硫促進剤を除く動機づけがあるとはいえない。 そして、効果について検討すると、上記(ア)b(a)iiで述べたように、テトラハイドロフラン不溶分率が50~85質量%であるクロロプレン系重合体ラテックスを含み、加硫促進剤を含まない本件発明1は、特に、加硫促進剤を含む例(比較例3~5)に比べて、柔軟性及び柔軟安定性に優れることが具体的なデータにより確認され、これらの効果は、甲1~甲7に記載されていない予測を超える顕著な効果であるということができる。 よって、本件発明1は当業者が容易に想到できたものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1、甲2、甲6、甲8~甲10の記載事項に基づいて、また、甲2に記載された発明及び甲1~甲7に記載事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。 ウ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2~7は、上記「イ」で示した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲1、甲2、甲6、甲8~甲10の記載事項に基づいて、また、甲2に記載された発明及び甲1~甲7に記載事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由1によっては本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2について (1)特許法第36条第6項第1号の考え方について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 上記「第2」に記載したとおりである。 (3)本件発明の課題について 本件発明の課題は、本件明細書等の発明の詳細な説明の段落【0006】の記載からみて、IV型アレルギーの原因物質(アレルゲン)である加硫促進剤を使用せずに手術用手袋などの用途に適したクロロプレンゴム(CR)に架橋できるクロロプレン系重合体ラテックスを含むゴム用組成物を提供することであると認める。 (4)検討 a 本件明細書等の記載 本件明細書等の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。 (a)段落【0011】には、本発明ゴム用組成物を構成するクロロプレン系重合体ラテックスは、共重合単量体として、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とを含み、合計100質量%に対して2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)が7~24質量%の範囲で含み、重合温度(T)がT=25~45℃の範囲内で、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの質量%が、式(I)の範囲内にあり(式(1)の記載は省略する。)、かつクロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれるクロロプレン系重合体中のテトラハイドロフラン不溶分量が50~85質量%であり、テトラハイドロフラン不溶分量を上記の範囲にすることにより、加硫促進剤が含まれないことに伴う引張強さ等の機械物性不足を十分改善することができることが記載され、同【0013】には、クロロプレン系重合体ラテックス(A)は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)とを単量体として使用することが記載され、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)の分率は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)(A-1)及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(A-2)の合計100質量%に対して7~24質量%が好ましく、7質量%以上の場合に柔軟性の経時安定性の改良が良好となり24質量%以下の場合に重合体の結晶化が抑制され、柔軟性が良好となることが記載されている。 (b)同【0017】には、クロロプレン系重合体ラテックス中に含まれる重合体のテトラハイドロフラン不溶分量は、50~85質量%であることが記載され、50質量%未満では、引張強度が低くなったり、成形時に手型への粘着が激しくなり剥離が困難となったりするため好ましくないこと、85質量%より大きい場合には、重合体が脆くなり、柔軟性を始め、引張強さ、引張伸びが悪化することが記載されている。 (c)同【0022】には、金属酸化物(B)としては、特に制限はなく、酸化亜鉛、酸化鉛、四酸化三鉛等が挙げられ、特に酸化亜鉛が好ましいことが記載されている。また、添加量は、クロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対して1~10質量部が好ましいことが記載され、1質量部未満では、架橋速度が十分でなく、逆に10質量部を超えると架橋が速くなりすぎて、スコーチしやすくなること、また、重合体ラテックスの組成物のコロイド安定性も悪くなり、沈降などの問題が発生しやすくなることが記載されている。 (d)同【0023】には、酸化防止剤(C)については、極限の耐熱性を要求される場合には、耐熱性付与目的の酸化防止剤(耐熱老防)と耐オゾン酸化防止剤(オゾン老防)を用いることが必要であり、これらは併用することが好ましいことが記載され、具体的な化合物が記載されている。また、添加量は、クロロプレン系重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましいことが記載され、0.1質量部未満では、酸化防止効果が十分でなく、逆に5質量部を超えると、架橋を阻害したり、色調が悪化したりすることが記載されている。 (e)同【0024】には、界面活性剤(D)として使用する具体例が記載され、また、添加量は、クロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいことが記載され、0.1質量部未満では、コロイド安定化が不十分であり、10質量部を超えると発泡や製品外観にピンホールなどの欠陥を発生させやすくなることが記載されている。 (f)同【0025】には、pH調整剤(E)としては、コロイド安定性付与やフィルム厚み調整の目的で、アルカリやアミノ酸、酢酸などの弱酸が使用されることが記載され、具体的な化合物が記載されている。また、添加量は、クロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対して0.01~5質量部が好ましいことが記載され、pH調整剤の添加量が、0.01質量部未満ではコロイド安定化やフィルム厚み調整が不十分となり、逆に5質量部を超えると凝固が不十分となったり、配合物に凝集物が発生したりすることが記載されている。 (g)同【0031】以降に記載された実施例では、本件発明1の具体例である実施例1~5が、IV型アレルギーの原因物質(アレルゲン)である加硫促進剤を使用せずに、引っ張り強度、柔軟性及び柔軟安定性に優れるゴム用組成物であることが具体的なデータと共に記載されている。 b 判断 上記aで示した発明の詳細な説明に記載された一般的な記載を見た上で、具体的なデータと共に本件発明の課題が解決できた実施例に接した当業者であれば、本件発明1の全般にわたり本件発明の課題を解決できると認識できるということができ、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 (5)申立人の主張 ア 申立人は特許異議申立書にて、概略、以下の3点について主張する。 (ア)クロロプレン系重合体ラテックス(A)に含まれる重合体の、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン含有量について 本件発明1では、クロロプレン系重合体ラテックスに含まれる重合体の単量体のうち、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの割合は24~7質量%と特定されている。一方、発明の詳細な説明に記載の実施例1~5は、11.2~16.0質量%だけの具体例であり、実施例で示された範囲以外まで数値範囲を拡張ないし一般化できない。また、比較例1~5では9.5~12.6質量%の具体例であり、本件発明1で特定する範囲である。そうすると、本件発明1において、クロロプレン系重合体ラテックスに含まれる重合体の単量体のうち、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの割合を24~7質量%と特定する技術的意味は不明確であり、この数値範囲は何ら臨界的意義を有するものではなく、本件発明1で特定する数値範囲まで拡張ないし一般化できない(以下「主張(ア)」という。)。 (イ)ゴム用組成物の各成分の配合量について 本件発明1では、ゴム用組成物を構成する成分の配合割合は、クロロプレン系重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、金属酸化物(B)を1~10質量部、酸化防止剤(C)を0.1~5質量部、界面活性剤(D)を0.1~10質量部、pH調整剤(E)を0.01~5質量部と特定されている。一方、発明の詳細な説明に記載の実施例1~5は、1点の場合のみが記載されているだけであり、本件発明1で特定する数値範囲まで、拡張ないし一般化できない(以下「主張(イ)」という。)。 (ウ)ゴム用組成物の各成分の種類について 本件発明1では、ゴム用組成物を構成する成分について、金属酸化物(B)、酸化防止剤(C)、界面活性剤(D)、pH調整剤(E)と特定されている。一方、発明の詳細な説明に記載の実施例1~5は、上記したそれぞれの成分について、1種類又は2種類の成分を使用した場合が記載されているだけであり、本件発明1で特定する成分まで、拡張ないし一般化できない(以下「主張(ウ)」という。)。 イ 判断 (ア)主張(ア)について クロロプレン系重合体ラテックスに含まれる重合体の単量体のうち、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの割合については、確かに、申立人が述べるとおり、発明の詳細な説明に記載の実施例1~5は、11.2~16.0質量%だけの具体例であるが、上記(4)aで示した本件明細書等の発明の詳細な説明の段落【0011】には、7~24質量%が好ましく、7質量%以上の場合に柔軟性の経時安定性の改良が良好となり24質量%以下の場合に重合体の結晶化が抑制され、柔軟性が良好となることが記載されており、この記載を見た上で、実施例において、具体的なデータと共に本件発明の課題を解決できることが記載されていることに接した当業者であれば、本件発明1で特定される範囲についても、本件発明の課題を解決できると認識できる。 一方、申立人は、具体的な反証を挙げて主張しているわけでもない。 また、比較例1~5は、本件発明1のうち、クロロプレン系重合体ラテックスに含まれる重合体の単量体のうち、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの割合以外の発明特定事項を満足しない具体例であって、本件発明の課題を解決できないことを示す具体例であるから、クロロプレン系重合体ラテックスに含まれる重合体の単量体のうち、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの割合について、本件発明1で特定する数値範囲まで拡張ないし一般化できないことを示す具体例ではない。 よって、主張(ア)は採用できない。 (イ)主張(イ)について ゴム用組成物を構成する成分の配合割合については、確かに、申立人が述べるとおり、発明の詳細な説明に記載の実施例1~5は、クロロプレン系重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、金属酸化物(B)を5質量部、酸化防止剤(C)を2質量部、界面活性剤(D)を3質量部、pH調整剤(E)を0.5質量部配合する具体例であり、配合量に関しては1つの例であるが、上記(4)aで示した本件明細書等の発明の詳細な説明の段落【0022】~【0025】には、本件発明1で特定される配合割合であると種々の性質が好ましいことが記載されており、この記載を見た上で、実施例において、具体的なデータと共に本件発明の課題を解決できることが記載されていることに接した当業者であれば、本件発明1で特定される配合割合についても、本件発明の課題を解決できると認識できる。 一方、申立人は、具体的な反証を挙げて主張しているわけでもない。 よって、主張(イ)は採用できない。 (ウ)主張(ウ)について ゴム用組成物を構成する成分である、金属酸化物(B)、酸化防止剤(C)、界面活性剤(D)、pH調整剤(E)については、確かに、申立人が述べるとおり、発明の詳細な説明に記載の実施例1~5は、具体的に1種類又は2種類の成分を使用した場合が記載されているだけであるが、上記(4)aで示した本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】~【0025】には、本件発明1で特定されるゴム用組成物を構成する成分の具体例が記載されており、この記載を見た上で、実施例において、具体的なデータと共に本件発明の課題を解決できることが記載されていることに接した当業者であれば、本件発明1で特定されるゴム用組成物を構成する成分についても、本件発明の課題を解決できると認識できる。 一方、申立人は、具体的な反証を挙げて主張しているわけでもない。 よって、主張(ウ)は採用できない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2によっては本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700815

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