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特許異議申立

2025-700988

積層構造体、半導体装置及び積層構造体の製造方法

審判番号
2025-700988
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-517200
登録番号
7663680
請求日
2025年10月14日
審決日
2025年12月16日
公報発行日
2026年01月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】信越化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】好宮 幹夫
  • 【権利者代理人】小林 俊弘
  • 【権利者代理人】大塚 徹
  • 【異議申立人】西郷 新
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 市川 篤
  • 審判官 河本 充雄
分類
P1651.121-Y (C30B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7663680号発明「積層構造体、半導体装置及び積層構造体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7663680号の請求項1~17に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7663680号の請求項1~17に係る特許(以下、「本件特許」ともいう。)についての出願は、2022年(令和4年)3月30日(優先権主張 令和3年4月28日)を国際出願とする出願であって、令和7年4月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~17に係る特許に対し、同年10月14日に特許異議申立人 西郷 新(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明17」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 積層構造体であって、下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下であり、前記下地基板の直径が50mm以上であり、前記下地基板のTTVが30μm以下であることを特徴とする積層構造体。 【請求項2】 前記結晶性酸化物膜は単結晶または一軸配向した膜であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。 【請求項3】 前記下地基板の厚さが100~5000μmのものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層構造体。 【請求項4】 前記結晶性酸化物膜の膜厚が1~100μmのものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層構造体。 【請求項5】 前記下地基板が単結晶のものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層構造体。 【請求項6】 前記下地基板がサファイア基板、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板のいずれかのものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層構造体。 【請求項7】 前記積層構造体の結晶性酸化物膜を有する面と反対側の面の表面粗さRaが0.5μm以下のものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の積層構造体。 【請求項8】 前記積層構造体の結晶性酸化物膜を有する面と反対側の面のうねりWaが50μm以下のものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層構造体。 【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の積層構造体を含むものであることを特徴とする半導体装置。 【請求項10】 積層構造体の製造方法であって、 ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、 前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、 前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、 前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程と を含み、 前記下地基板として直径が50mm以上、TTVが30μm以下のものを用いることを特徴とする積層構造体の製造方法。 【請求項11】 前記下地基板として厚さが100~5000μmのものを用いることを特徴とする請求項10に記載の積層構造体の製造方法。 【請求項12】 前記下地基板として単結晶のものを用いることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の積層構造体の製造方法。 【請求項13】 前記下地基板としてサファイア基板、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板のいずれかのものを用いることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。 【請求項14】 前記下地基板の成膜面と反対側の面の表面粗さRaを0.5μm以下とすることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。 【請求項15】 前記下地基板の成膜面と反対側の面のうねりWaを50μm以下とすることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。 【請求項16】 前記成膜工程においては、前記下地基板はステージに載置されており、前記ステージにおける前記下地基板との接触面の表面粗さRaを0.5μm以下とすることを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。 【請求項17】 前記成膜工程においては、前記下地基板はステージに載置されており、前記ステージにおける前記下地基板との接触面のうねりWaを50μm以下とすることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第5号証(以下、「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 申立理由1(進歩性) 本件発明1~17は、甲1~甲5に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [証拠方法] 甲1:Minh-Tan Ha et al.、“Understanding Thickness Uniformity of Ga2O3 Thin Films Grown by Mist Chemical Vapor Deposition”、ECS Journal of Solid State Science and Technology、8(7)、2019年、Q3206ページ~Q3212ページ 甲2:Masaya Oda et al.、“Schottky barrier diodes of corundum-structured gallium oxide showing on-resistance of 0.1mΩ・cm2 grown by MIST EPITAXY○R”(当審注:Rに○を付した文字は「○R」と表記する。以下、同様である。)、Applied Physics Express、9、021101、2016年、021101-1ページ~021101-3ページ 甲3:Kyoung-Ho Kim et al.、“Growth of 2-Inch α-Ga2O3 Epilayers via Rear-Flow-Controlled Mist Chemical Vapor Deposition”、ECS Journal of Solid State Science and Technology、8(7)、2019年、Q3165ページ~Q3170ページ 甲4:特開2015-39033号公報 甲5:特開2020-113774号公報 第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 1 甲1(Minh-Tan Ha et al.、“Understanding Thickness Uniformity of Ga2O3 Thin Films Grown by Mist Chemical Vapor Deposition”、ECS Journal of Solid State Science and Technology、8(7)、2019年、Q3206ページ~Q3212ページ) (1)甲1には以下の記載がある。なお、甲1の記載は、当審の訳文で示す(下線は当審が付した。以下、同様である。)。 ア 「酸化ガリウム(Ga2O3)研究の近年の進展は、ハイパワーエレクトロニクス、紫外線(UV)フォトディテクター、ガスセンサー、及びハイブリッド発光体といった広範な半導体応用における、この材料の大きな可能性への関心を高めています。」(Q3206ページ左欄1行~4行) イ 「実験とシミュレーションに関する記述 ホットウォール式ミストCVDは、水平石英管を用いて実施した。石英管の供給口と排出口は、図1に示すように、それぞれミスト発生器と換気ファンに接続されており、石英管の直径と長さはそれぞれ10cmと100cmである。ヒーターは長さ40cmで、供給口から15cmの距離に設置されている。基板サセプタは、石英管内に45゜の角度で設置されている。排出口と供給口の直径は2cmであり、排出口は石英管の中央に位置しているが、供給口の位置は調整可能である。原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させたもので、濃度は0.05Mである。安定剤として少量のHClを溶液に添加した。溶液は室温に保たれ、2.4MHzの周波数の超音波振動子によって霧状にされた。キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが供給口から排出口へと流れる。ミストの流量は、換気ファンの排気量を変更することで調整される。炉と石英管の界面の温度は、熱電対による監視を通じて500℃で一定に保たれた。成長時間は各実験で1時間とした。成長したエピ層の微細構造を決定するためにX線回折(XRD)測定が行われ、膜厚は光学式プロフィロメトリーによって測定された。成長したエピ層の形態と粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)によって評価された。」(Q3206ページ右欄下から3行~Q3207ページ左欄22行) ウ 「 [図:0001431183000001.jpg] 」(Q3207ページ左欄) エ 「結果と考察 成長させたGa2O3エピ層の微細構造。-一般的な2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に典型的に成長させたエピ層を、それぞれ図2a及び2bに示す。成長した層はほぼ透明であり、その厚さは約数百ナノメートルであるため、肉眼で膜厚分布を判断することはできない。その膜のXRDスペクトルを図2cに示す。2θ=20.18゜と2θ=41.36゜に、α-A12O3サファイア基板の(-201)面と(006)面に対応する2つのピークが見られる。」(Q3207ページ右欄下から9行~Q3209ページ左欄1行) オ 「AFMによって評価された粗さによると、図6に示されるように、低流量で成長させたエピ層(平均RMS値0.80nm~1.94nm)は、高流量で成長させたエピ層(平均RMS値2.29nm~3.67nm)よりも滑らかな形態を持つ。中央の供給口位置かつ高流量の場合、基板表面でのミストの乱流が原因で、粗さは他のケースよりも著しく高くなる。低い供給口位置かつ低流量で成長した層の表面形態が、最高の平滑性を示した(RMS=0.80nm)。 結論 α-Ga2O3薄膜は、単純な構成のミストCVD装置によって良好に成長させられた。XRDの結果、成長した層はα-Ga2O3単結晶であることが確認された。基板表面の温度分布と速度場を理解するために、数値シミュレーションを実施した。シミュレーションと実験結果によって確認されたように、平均温度、温度分布、流量、流れの方向、及び供給口の位置は、成長したα-Ga2O3層の均一性に強く影響を与える。均一性の度合いは、基板表面の温度勾配に反比例し、それはさらに流量に影響される。供給口の位置と流量を調整することによって、流れの方向を変えることができ、これを利用して膜厚の均一性を改善することができる。最終的に、成長した層の高い均一性を得るために提案される構成は、反応器の底部近くに低い位置の供給口を設け、ミストの流量を低くすることである。」(Q3211ページ左欄下から5行~Q3212ページ左欄5行) カ 「 [図:0001431183000002.jpg] 」(Q3211ページ) (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)のエには、「成長させたGa2O3エピ層の微細構造。-一般的な2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に典型的に成長させたエピ層」と記載されており、2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に成長させたGa2O3エピ層は積層構造であるといえるから、甲1には、2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に成長させたGa2O3エピ層とを有する積層構造及びその製造方法が記載されているといえる。 イ 上記(1)のオには、「AFMによって評価された粗さによると、図6に示されるように、低流量で成長させたエピ層(平均RMS値0.80nm~1.94nm)」と記載されているから、上記Ga2O3エピ層の表面の平均RMSは0.8nm~1.94nmである。 また、同オには、「XRDの結果、成長した層はα-Ga2O3単結晶であることが確認された」と記載されているから、上記Ga2O3エピ層は単結晶であるといえる。 ウ 上記(1)イには、「ホットウォール式ミストCVDは、水平石英管を用いて実施した。石英管の供給口と排出口は、図1に示すように、それぞれミスト発生器と換気ファンに接続されており、石英管の直径と長さはそれぞれ10cmと100cmである。ヒーターは長さ40cmで、供給口から15cmの距離に設置されている。基板サセプタは、石英管内に45゜の角度で設置されている。排出口と供給口の直径は2cmであり、排出口は石英管の中央に位置しているが、供給口の位置は調整可能である。原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させたもので、濃度は0.05Mである。安定剤として少量のHClを溶液に添加した。溶液は室温に保たれ、2.4MHzの周波数の超音波振動子によって霧状にされた。キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが供給口から排出口へと流れる。ミストの流量は、換気ファンの排気量を変更することで調整される。炉と石英管の界面の温度は、熱電対による監視を通じて500℃で一定に保たれた。成長時間は各実験で1時間とした。成長したエピ層の微細構造・・・」と記載されているから、ホットウォール式ミストCVDは、水平石英管、ミスト発生器、換気ファン、ヒーター、基板サセプタを有し、基板サセプタは、水平石英管内に設置され、水平石英管の供給口と排出口は、それぞれミスト発生器と換気ファンに接続されており、ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させた原料溶液を、超音波振動子によって霧状にし、キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが水平石英管の供給口から排出口へと流れ、炉と石英管の界面の温度は、500℃で一定に保たれることによって、Ga2O3エピ層が成長されるといえる。 また、上記(1)ウの図1から、ミスト発生器と石英管の供給口、供給管の排出口と換気ファンとは、それぞれ管によって接続されていることが見て取れる。 そうすると、上記アにおける、2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に成長させたGa2O3エピ層とを有する積層構造の製造方法は、水平石英管、ミスト発生器、換気ファン、ヒーター、水平石英管内に設置された基板サセプタを有し、水平石英管の供給口と排出口は、それぞれミスト発生器と換気ファンに管によって接続されているホットウォール式ミストCVDを用いて、 ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させた原料溶液を、超音波振動子によって霧状にし、キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが水平石英管の供給口から排出口へと流れ、炉と石英管の界面の温度は、500℃で一定に保たれることによって、Ga2O3エピ層が成長されるものであるといえる。 エ 以上によれば、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。 「2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に成長させたGa2O3エピ層とを有する積層構造であって、 上記Ga2O3エピ層の表面の平均RMSは0.8nm~1.94nmであり、 上記Ga2O3エピ層は単結晶である積層構造。」(以下、「甲1物発明」という。) 「2インチc面サファイア基板と、そのサファイア基板上に成長させたGa2O3エピ層とを有する積層構造の製造方法であって、 水平石英管、ミスト発生器、換気ファン、ヒーター、基板サセプタを有し、基板サセプタは、水平石英管内に設置され、水平石英管の供給口と排出口は、それぞれミスト発生器と換気ファンに管によって接続されているホットウォール式ミストCVDを用いて、 ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させた原料溶液を、超音波振動子によって霧状にし、キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが供給口から排出口へと流れ、炉と石英管の界面の温度は、500℃で一定に保たれることによって、Ga2O3エピ層が成長される、積層構造の製造方法。」(以下、「甲1方法発明」 2 甲2(Masaya Oda et al.、“Schottky barrier diodes of corundum-structured gallium oxide showing on-resistance of 0.1mΩ・cm2 grown by MIST EPITAXY○R”、Applied Physics Express、9、021101、2016年、021101-1ページ~021101-3ページ) (1)甲2には、以下の記載がある。なお、甲2の記載は、当審の訳文で示す。 ア 「ワイドバンドギャップ半導体のショットキーバリアダイオード(SBD)は、インバー夕回路向けのパワーエレクトロニクスにおけるキーデバイスであり、その著しい性能向上は、特に炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といったワイドバンドギャップ半導体の科学技術の発展に支えられてきた。一方で、酸化ガリウム(Ga2O3)デバイスへの関心が高まっている。なぜなら、Ga2O3のバンドギャップエネルギー(約5eV)はSiCやGaNよりもはるかに大きく、潜在的により高い動作電圧及び/又はより低いオン抵抗につながるからである。Ga2O3基板とホモエピタキシャル層を用いたGa2O3SBDに関する広範な研究が行われてきた。 Ga2O3は5つの相(α、β、γ、ε、δ)をとり、斜方晶βガリア構造(β相)が最も安定な結晶構造である。Ga2O3基板はβ相をとる。一方、サファイア(α-A12O3)基板上にミスト化学気相成長法(CVD)を用いることで、高品質な三角コランダム構造のα-Ga2O3が成長できることが報告されている。安価なサファイア基板とミストCVD成長技術を用いれば、低コストでGa2O3デバイスを作製できる可能性がある。ミストCVDによる単結晶半導体成長技術は京都大学で開発された。この技術では、安全で安価な金属化合物の水溶液やアルコール溶液を超音波霧化し、生成した小さなミスト粒子(直径数μm程度)をキャリアガスによって反応室に移動させ、そこで基板を加熱する。有機金属源を使用することなく、金属元素をミスト粒子中に供給することができる。その後、水、アルコール、酸素ガスなどの酸素源で熱分解反応を行う。 当初の技術では、ガリウム源としてガリウム(III)アセチルアセトナート[Ga(acac)3]の水溶液が使用されてきたが、恐らくガリウム源に由来する炭素の取り込みが深刻な問題となっていた。我々は、システムと成長手順を改良し、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウムのような炭素を含まないハロゲン化ガリウム源を使用できるMIST EPITAXY○Rに技術を変更した。また、不純物の混入に細心の注意を払った結果、二次イオン質量分析法(SIMS)で明らかになったように、残留不純物濃度が著しく低くなった。表1は、SIMS分析の結果を検出限界とともにまとめたものである。水素を除くほとんどの不純物は検出限界以下であり、MIST EPITAXY○Rがドーピングや高性能デバイスに適していることを示している。X線回折測定による(0006)面回折のロッキングカーブの半値全幅は、4インチのサファイア基板上で通常50秒角(arcsec)以下であった。図1に示すように、原子間力顕微鏡(AFM)で調べた表面モルフォロジーは優れており、1単層の段差とフラットテラス構造で構成されていた。」(021101-1ページ左欄1行~右欄7行) イ 「 [図:0001431183000003.jpg] 」(021101-1ページ右欄) (2)甲2に記載された発明 ア 上記(1)アには、「サファイア(α-A12O3)基板上にミスト化学気相成長法(CVD)を用いることで、高品質な三角コランダム構造のα-Ga2O3が成長できる」、「我々は、システムと成長手順を改良し、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウムのような炭素を含まないハロゲン化ガリウム源を使用できるMIST EPITAXY○Rに技術を変更した」と記載されているから、甲2には、サファイア(α-A12O3)基板と、サファイア(α-A12O3)基板上に成長したα-Ga2O3は積層構造であるといえるから、甲2には、サファイア(α-A12O3)基板と、サファイア(α-A12O3)基板上に成長したα-Ga2O3とを有する積層構造及びその製造方法が記載されているといえる。 イ 上記(1)アには、「X線回折測定による(0006)面回折のロッキングカーブの半値全幅は、4インチのサファイア基板上で通常50秒角(arcsec)以下であった。図1に示すように、原子間力顕微鏡(AFM)で調べた表面モルフォロジーは優れており、1単層の段差とフラットテラス構造で構成されていた」と記載され、上記(1)イには、「図1 AFMで観察したα-Ga2O3の表面形態」、「RMS=0.56nm」と記載されているから、4インチのサファイア基板上のα-Ga2O3の表面のRMSは0.56nmであるといえる。 ウ 上記(1)アには、「サファイア(α-A12O3)基板上にミスト化学気相成長法(CVD)を用いることで、高品質な三角コランダム構造のα-Ga2O3が成長できることが報告されている。安価なサファイア基板とミストCVD成長技術を用いれば、低コストでGa2O3デバイスを作製できる可能性がある。ミストCVDによる単結晶半導体成長技術は京都大学で開発された。この技術では、安全で安価な金属化合物の水溶液やアルコール溶液を超音波霧化し、生成した小さなミスト粒子(直径数μm程度)をキャリアガスによって反応室に移動させ、そこで基板を加熱する。有機金属源を使用することなく、金属元素をミスト粒子中に供給することができる。その後、水、アルコール、酸素ガスなどの酸素源で熱分解反応を行う。 当初の技術では、ガリウム源としてガリウム(III)アセチルアセトナート[Ga(acac)3]の水溶液が使用されてきたが、おそらくガリウム源に由来する炭素の取り込みが深刻な問題となっていた。我々は、システムと成長手順を改良し、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウムのような炭素を含まないハロゲン化ガリウム源を使用できるMIST EPITAXY○Rに技術を変更した。」と記載されているから、ミストCVD成長技術は、金属化合物の水溶液を超音波霧化し、生成した小さなミスト粒子をキャリアガスによって反応室に移動させ、そこで基板を加熱し、その後、水、アルコール、酸素ガスなどの酸素源で熱分解反応を行うものであり、炭素を含まないハロゲン化ガリウム源を使用できるMIST EPITAXY○Rに技術を変更して、サファイア(α-A12O3)基板上にα-Ga2O3を成長しているといえる。 そうすると、上記アにおける、サファイア(α-A12O3)基板と、サファイア(α-A12O3)基板上に成長したα-Ga2O3とを有する積層構造の製造方法は、炭素を含まないハロゲン化ガリウム源の水溶液を超音波霧化し、生成した小さなミスト粒子をキャリアガスによって反応室に移動させ、そこで基板を加熱し、その後、水、アルコール、酸素ガスなどの酸素源で熱分解反応を行うことによって、α-Ga2O3が成長されるものであるといえる。 エ 以上によれば、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。 「4インチのサファイア(α-A12O3)基板と、サファイア(α-A12O3)基板上に成長したα-Ga2O3とを有する積層構造であって、 α-Ga2O3の表面のRMSは0.56である積層構造。」(以下、「甲2物発明」という。) 「4インチのサファイア(α-A12O3)基板と、サファイア(α-A12O3)基板上に成長したα-Ga2O3とを有する積層構造の製造方法であって、 炭素を含まないハロゲン化ガリウム源の水溶液を超音波霧化し、生成した小さなミスト粒子をキャリアガスによって反応室に移動させ、そこで基板を加熱し、その後、水、アルコール、酸素ガスなどの酸素源で熱分解反応を行うことによって、α-Ga2O3が成長される、積層構造の製造方法。」(以下、「甲2方法発明」という。) 3 甲3(Kyoung-Ho Kim et al.、“Growth of 2-Inch α-Ga2O3 Epilayers via Rear-Flow-Controlled Mist Chemical Vapor Deposition”、ECS Journal of Solid State Science and Technology、8(7)、2019年、Q3165ページ~Q3170ページ) (1)甲3には、以下の記載がある。なお、甲3の記載は、当審の訳文で示す。 ア 「2インチα-Ga2O3エピ層の成長に対する、背面フロー制御ミスト化学気相成長法(ミストCVD)の有効性を調査した。数値シミュレーションにより、低い流速が、渦を発生させることなく成長界面上で上昇流を誘起するのに適していることが示された。流速0.08m/sの条件下で、c面サファイア基板上にα-Ga2O3エピ層を良好に成長させた。このエピ層は高品質であり、(0006)面と(104)面の反射における半値全幅はそれぞれ42arcsecと1993arcsecであった。背面フロー制御ミストCVDは、長時間の成長に有効であることが実証された。膜厚は、成長時間とともに適切に増加した。同時に、コランダムα相の結晶としての特徴が明確になった。提案するミストCVDシステムは、Ga2O3エピ層成長のためのコスト削減ソリューションを提供するだけでなく、大面積にわたるGa2O3エピ層の均一性を維持する上でも有効である。」(Q3165ページ要約) イ 「背面フロー制御ミストCVDシステムの簡単な概略図を図1に示す。これは、供給ユニット、反応ユニット及び排出ユニットの3つの機能ユニットから構成される。ミストCVD装置の供給部では、2.4MHzの超音波振動子により溶液温度28-30℃で霧化粒子すなわちミストを発生させる。外部キャリアガスラインの代わりに、空気供給ギャップが溶液タンク内に設定される。反応ユニットは、従来のホットウォールミストCVDシステムと同様である。それぞれ100mmおよび1mの直径および長さを有する水平石英管は、抵抗加熱器によって囲まれる。2インチの基板を45°の傾斜角でサセプタ上に載せる。排出ユニットにおいて、出口バルブは、流れの速度を調節するように設定される。60Wの出力及び80mmの直径を有するファンを換気ラインに設置し、それによって、供給口における大気圧と比較して、排出口において比較的低い圧力を生成した。したがって、ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって石英管内に移送される。成長条件を表Iに詳細に列挙する。原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製した。少量のHClを添加して溶解を促進し、溶液濃度を0.05Mに調整した。 400℃の成長温度および1、2、および4時間の成長時間をc面Al2O3基板上で実施した。成長した膜の構造的特性を、電界放射型走査電子顕微鏡法(FESEM)および原子間力顕微鏡法(AFM)によって特徴付けた。膜の結晶構造は、CuKα1線(λ=1.54056Å)を用いたX線回折(XRD)によって分析し、膜厚は光学薄膜分析装置を用いて測定した。光透過率は、紫外(UV)-可視(VIS)分光光度計を用いて測定した。」(Q3165ページ右欄下から10行~Q3166ページ左欄18行) ウ 「 [図:0001431183000004.jpg] 」(Q3166ページ) エ 「表面粗さをより詳細に調べるために、図7a~7cに示すようにAFM像を取得した。成長時間が1、2、4時間の場合において、RMS粗さの値はそれぞれ1.30、2.91、2.10nmであった。SEMで観察された表面形態からも明らかなように、成長時間1時間のサンプルは滑らかな表面を特徴とし、成長時間が長くなるにつれて三次元的な島が大きくなった。4時間サンプルのRMS粗さが2時間サンプルに比べて減少したのは、島の一部が合体したことによる可能性がある。本研究におけるRMS粗さは、文献で以前に報告された値に匹敵するものである。」(Q3168左欄3行~12行) (2)甲3に記載された発明 ア 上記(1)アには、「2インチα-Ga2O3エピ層の成長に対する、背面フロー制御ミスト化学気相成長法(ミストCVD)の有効性を調査した」、「c面サファイア基板上にα-Ga2O3エピ層を良好に成長させた」と記載されており、2インチα-Ga2O3エピ層が成長されたc面サファイア基板も2インチであるといえ、また、c面サファイア基板と、c面サファイア基板上に成長させたα-Ga2O3エピ層は積層構造であるといえるから、甲3には、2インチc面サファイア基板と、c面サファイア基板上に成長させたα-Ga2O3エピ層とを有する積層構造及びその製造方法が記載されているといえる。 イ 上記(1)エには、「表面粗さをより詳細に調べるために、図7a~7cに示すようにAFM像を取得した。成長時間が1、2、4時間の場合において、RMS粗さの値はそれぞれ1.30、2.91、2.10nmであった」と記載されているから、上記α-Ga2O3エピ層の表面のRMSは、1.30~2.10nmであるといえる。 ウ 上記(1)イには、「背面フロー制御ミストCVDシステムの簡単な概略図を図1に示す。これは、供給ユニット、反応ユニット及び排出ユニットの3つの機能ユニットから構成される。ミストCVD装置の供給ユニットでは、2.4MHzの超音波振動子により溶液温度28-30℃で霧化粒子すなわちミストを発生させる。・・・それぞれ100mmおよび1mの直径および長さを有する水平石英管は、抵抗加熱器によって囲まれる。2インチの基板を45°の傾斜角でサセプタ上に載せる。・・・したがって、ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって石英管内に移送される。成長条件を表Iに詳細に列挙する。原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製した。」と記載されているから、背面フロー制御ミストCVDシステムは、供給ユニット、反応ユニット及び排出ユニットの3つの機能ユニットから構成され、供給ユニットでは、ミストを発生させ、水平石英管は、抵抗加熱器によって囲まれ、ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって水平石英管内に移送され、原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製されるといえる。 また、上記(1)ウの図1から、供給ユニットの溶液タンクと、反応ユニットの石英管は、管によって接続され、基板は石英管に設置されることが見て取れる。 そうすると、上記アにおける、2インチc面サファイア基板と、c面サファイア基板上に成長させたα-Ga2O3エピ層とを有する積層構造の製造方法は、供給ユニット、反応ユニット及び排出ユニットの3つの機能ユニットから構成され、供給ユニットの溶液タンクと、反応ユニットの水平石英管は、管によって接続され、水平石英管は、抵抗加熱器によって囲まれ、c面サファイア基板は水平石英管に設置される背面フロー制御ミストCVDシステムを用いて、 供給ユニットでは、ミストを発生させ、ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって水平石英管内に移送され、原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製されるものであるといえる。 エ 以上から、甲3には、以下の発明が記載されているといえる。 「2インチc面サファイア基板と、c面サファイア基板上に成長させたα-Ga2O3エピ層とを有する積層構造であって、 上記α-Ga2O3エピ層の表面のRMSは、1.30~2.10nmである積層構造。」(以下、「甲3物発明」という。) 「2インチc面サファイア基板と、c面サファイア基板上に成長させたα-Ga2O3エピ層とを有する積層構造の製造方法であって、 供給ユニット、反応ユニット及び排出ユニットの3つの機能ユニットから構成され、供給ユニットの溶液タンクと、反応ユニットの水平石英管とは、管によって接続され、水平石英管は、抵抗加熱器によって囲まれ、c面サファイア基板は水平石英管に設置される背面フロー制御ミストCVDシステムを用いて、 供給ユニットでは、ミストを発生させ、ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって水平石英管内に移送され、原料溶液は、ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製される、積層構造の製造方法。」(以下、「甲3方法発明」という。) 4 甲4(特開2015-39033号公報) 甲4には、以下の記載がある。 (1)「【0003】 しかし、半導体の特性を持つ窒化物材料などのブール(boule)および基板の製造が多くの理由で困難であることが証明されてきている。したがって、異種基板材料上における半導体の特性を持つ窒化物材料のエピタキシャル成長は、現実味のある、これに代わるものと考えられている。SiC(炭化ケイ素)、Al2O3(サファイアまたはコランダム)およびMgAl2O4(スピネル)を含む基板は、よく知られた異種基板材料である。」 (2)「【0083】 上記に示した処理手順をサファイアウエハに受けさせた後、ウエハの寸法形状のキャラクタリゼーションを実施した。本明細書で示された手順に従って処理されたサファイアウエハの寸法形状と、研削よりもむしろ遊離砥粒スラリーを使用したラッピングによる従来の方法を使用して処理されたウエハとを比較することによって、比較データを作成した。比較データを以下の表5に示す。TTVおよび反りの単位はミクロンである。一方、nTTVおよびn反りの単位はミクロン/cm2であり、直径(d)および厚み(t)をインチおよびミクロンでそれぞれ示す。 【0084】 【表5】 [図:0001431183000005.jpg] 」 5 甲5(特開2020-113774号公報) 甲5には、以下の記載がある。 「【発明を実施するための形態】 【0012】 本発明の結晶性半導体膜は、コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性半導体膜であって、膜厚が1μm以上であれば特に限定されないが、本発明においては、前記膜厚が、2μm以上であるのが好ましく、3μm以上であるのがより好ましく、5μm以上であるのが最も好ましい。また、本発明においては、前記膜厚が、7.6μm以上であるのも好ましく、膜厚が7.6μm以上になると、結晶性半導体膜が自立できるようになる。また、本発明においては、膜厚が10μm以上であるのがより好ましく、膜厚が10μm以上の主成分が同じである多層膜(例えばn-型半導体層とn+型半導体層との積層体)であるのが、半導体特性がより向上するので最も好ましい。また、前記結晶性半導体膜の形状等は特に限定されず、四角形状であっても、円形状であっても、多角形状であってもよい。前記結晶性半導体膜の表面積は、特に限定されず、本発明においては、3mm角以上(9mm2以上)であるのが好ましく、5mm角以上(25mm2以上)であるのがより好ましく、直径50mm以上であるのが最も好ましい。本発明では、特定の条件下でミストCVD法を用いることによって、従来ではなしえなかった3mm角以上の前記結晶性半導体膜を容易に得ることができる。」 「【0018】 <下地基板> 下地基板は、上記の結晶性半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいが、前記下地基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。本発明においては、前記下地基板が、コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板、またはβ-ガリア構造を有する結晶物を主成分として含む基板であるのも好ましい。コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板は、基板中の組成比で、コランダム構造を有する結晶物を50%以上含むものであれば、特に限定されないが、本発明においては、70%以上含むものであるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。コランダム構造を有する結晶を主成分とする基板としては、例えば、サファイア基板(例:c面サファイア基板)や、α型酸化ガリウム基板などが挙げられる。β-ガリア構造を有する結晶物を主成分とする基板は、基板中の組成比で、β-ガリア構造を有する結晶物を50%以上含むものであれば、特に限定されないが、本発明においては、70%以上含むものであるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。β-ガリア構造を有する結晶物を主成分とする基板としては、例えばβ-Ga2O3基板、又はGa2O3とAl2O3とを含みAl2O3が0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。その他の下地基板の例としては、六方晶構造を有する基板(例:SiC基板、ZnO基板、GaN基板)などが挙げられる。六方晶構造を有する基板上には、直接または別の層(例:緩衝層等)を介して、前記結晶性半導体膜を形成するのが好ましい。下地基板の厚さは、本発明においては特に限定されないが、好ましくは、50~2000μmであり、より好ましくは200~800μmである。」 第5 取消理由1(進歩性)について 1 甲1に記載された発明を主引用発明とした場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1物発明とを対比する。 (ア)甲1物発明の「c面サファイア基板」、「Ga2O3エピ層」、「積層構造」は、本件発明1の「下地基板」、「酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜」、「積層構造体」にそれぞれ相当し、本件発明1と甲1物発明とは、「下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し」ている「積層構造体」である点で一致する。 (イ)甲1物発明の「平均RMS」は、本件発明1の「二乗平均平方根粗さ」に相当し、甲1物発明の「上記Ga2O3エピ層の表面の平均RMS」は、「0.8nm~1.94nm」であるから、0.2μm以下であるといえる。 そうすると、本件発明1と甲1物発明とは、「前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下」である点で一致する。 (ウ)甲1物発明の「2インチc面サファイア基板」の「2インチ」は、「c面サファイア基板」の直径であることは技術常識であり、「2インチ」は「50.8mm」であるから、「2インチc面サファイア基板」の直径は50mm以上であるといえる。 そうすると、本件発明1と甲1物発明とは、「前記下地基板の直径が50mm以上である」点で一致する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲1物発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「積層構造体であって、下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下であり、前記下地基板の直径が50mm以上である積層構造体。」 <相違点> 相違点1:本件発明1は、「前記下地基板のTTVが30μm以下である」のに対し、甲1物発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点1についての判断 (ア)甲1~甲3、甲5のいずれにも、サファイア基板のTTVについては記載も示唆もされていない。 (イ)甲1物発明は、「サファイア基板上に成長させたGa2O3エピ層とを有する」ものである。 一方、甲4の【0083】、【0084】【表5】(第4 4(2)参照)には、TTVが0.95ミクロンの直径2インチサファイアウエハ、TTVが1.7ミクロンの直径3インチサファイアウエハ、TTVが1.25ミクロンの直径4インチのサファイアウエハが記載されている。 また、甲4の【0003】(第4 4(1)参照)には、よく知られた異種基板材料であるAl2O3(サファイア)を含む基板上における窒化物材料のエピタキシャル成長について記載されているといえる。 そうすると、甲4には、TTVが0.95μm~1.7μmの直径2インチ~4インチのサファイアウエハ上に窒化物材料をエピタキシャル成長することが記載されているといえる。 しかし、甲4には、サファイア基板上にGa2O3をエピタキシャル成長することは、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1物発明の「サファイア基板」として、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 (ウ)したがって、甲1物発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、甲1物発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を備える発明であるから、本件発明1と同様に、甲1物発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明10について ア 対比 本件発明10と甲1方法発明とを対比する。 (ア)甲1方法発明の「ミスト発生器」、「ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させた原料溶液」は、本件発明10の「ミスト化部」、「ガリウムを含む原料溶液」にそれぞれ相当する。 また、甲1方法発明において、「ミスト発生器」は、「ガリウムアセチルアセトナートGa(C5H7O2)3を脱イオン水に溶解させた原料溶液を、超音波振動子によって霧状」、すなわち、ミスト化してミストを発生させるものであるといえる。 そうすると、本件発明10と甲1方法発明とは、「ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程」を含んでいる点で一致する。 (イ)甲1方法発明において、「キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが水平石英管の供給口から排出口へと流れ」るものであるから、キャリアガスは、ミストを搬送するためのものであって、ミストが発生する「ミスト発生器」に供給されるものといえる。 そうすると、甲1方法発明の「キャリアガス」は、本件発明10の「前記ミストを搬送するためのキャリアガス」に相当し、本件発明10と甲1方法発明とは、「前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程」を含んでいる点で一致する。 (ウ)甲1方法発明において、「基板サセプタは、水平石英管内に設置され」るものであり、基板サセプタに基板が載置されることは技術常識であるから、「c面サファイア基板」は、「水平石英管」に設置されるものであり、また、「c面サファイア基板上に」「Ga2O3エピ層」が「成長」され、すなわち、成膜されるものであるから、「水平石英管」は、成膜室であるといえる。 そうすると、甲1方法発明の「水平石英管」、「2インチc面サファイア基板」は、本件発明10の「成膜室」、「下地基板」にそれぞれ相当する。 また、甲1方法発明において、「水平石英管の供給口」は、「ミスト発生器」に「管によって接続されて」いるから、当該「管」は、本件発明10の「前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管」に相当する。 そして、甲1方法発明において、「キャリアガスは乾燥空気であり、排気側の換気ファンが排出口に低圧を作り出すことで、ミストが水平石英管の供給口から排出口へと流れ」るものである。 以上から、甲1方法発明は、「ミスト発生器」と「水平石英管」とを接続する「管」を介して、「ミスト発生器」から「2インチc面サファイア基板」が設置された「水平石英管」へと、「ミスト」を「キャリアガス」により搬送しているといえる。 そうすると、甲1方法発明の「管」、「水平石英管」は、本件発明10の「供給管」、「成膜室」にそれぞれ相当し、本件発明10と甲1方法発明とは、「前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程」を含んでいる点で一致する。 (エ)上記(ウ)で検討したとおり、甲1方法発明は、「ミスト発生器」と「水平石英管」とを接続する「管」を介して、「ミスト発生器」から「2インチc面サファイア基板」が設置された「水平石英管」へと、「ミスト」を「キャリアガス」により搬送しているといえる。 そして甲1方法発明は、「ミストが水平石英管の供給口から排出口へと流れ、炉と石英管の界面の温度は、500℃で一定に保たれることによって、Ga2O3エピ層が成長される」から、「水平石英管」へと搬送された「ミスト」は熱処理されているといえ、それによって「2インチc面サファイア基板」上に「Ga2O3エピ層」の「成長」を行う、すなわち、成膜を行うものであるといえる。 そうすると、本件発明10と甲1方法発明とは、「前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程」を含んでいる点で一致する。 (オ)上記(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲1方法発明の「2インチc面サファイア基板」の直径は50mm以上である。 そうすると、本件発明10と甲1方法発明とは、「前記下地基板として直径が50mm以上のものを用いる」点で一致する。 (カ)甲1方法発明の「積層構造の製造方法」は、本件発明10の「積層構造体の製造方法」に相当する。 (キ)以上によれば、本件発明10と甲1方法発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「積層構造体の製造方法であって、 ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、 前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、 前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、 前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程と を含み、 前記下地基板として直径が50mm以上のものを用いる積層構造体の製造方法。」 <相違点> 相違点2:「下地基板」について、本件発明10は、「TTVが30μm以下のものを用いる」のに対し、甲1方法発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点2についての判断 (ア)甲1~甲3、甲5のいずれにも、サファイア基板のTTVについては記載も示唆もされていない。 (イ)上記(1)イ(イ)で検討したのと同様に、甲1方法発明の「サファイア基板」に、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 (ウ)したがって、甲1方法発明において、相違点2に係る本件発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明10は、甲1方法発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明11~17 本件発明11~17は、本件発明10の全ての構成を備える発明であるから、本件発明10と同様に、甲1方法発明に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 2 甲2に記載された発明を主引用発明とした場合 (1)本件発明1について ア 対比 (ア)甲2物発明の「4インチのサファイア(α-A12O3)基板」、「α-Ga2O3」、「積層構造」は、本件発明1の「下地基板」、「酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜」、「積層構造体」にそれぞれ相当し、本件発明1と甲2物発明とは、「下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し」ている「積層構造体」である点で一致する。 (イ)甲2物発明の「平均RMS」は、本件発明1の「二乗平均平方根粗さ」に相当し、甲2物発明の「α-Ga2O3の表面のRMS」は「0.56nm」であるから、0.2μm以下である。 そうすると、本件発明1と甲2物発明とは、「前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下」である点で一致する。 (ウ)甲2物発明の「4インチのサファイア(α-A12O3)基板」の「4インチ」は、「c面サファイア基板」の直径であることは技術常識であり、「4インチ」は「101.6mm」であるから、「4インチのサファイア(α-A12O3)基板」の直径は50mm以上である。 そうすると、本件発明1と甲2物発明とは、「前記下地基板の直径が50mm以上である」点で一致する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲2物発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「積層構造体であって、下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下であり、前記下地基板の直径が50mm以上である積層構造体。」 <相違点> 相違点3:本件発明1は、「前記下地基板のTTVが30μm以下である」のに対し、甲2物発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点3についての判断 (ア)甲1~甲3、甲5のいずれにも、サファイア基板のTTVについては記載も示唆もされていない。 (イ)上記1(1)イ(イ)で検討したのと同様に、甲2物発明の「サファイア(α-A12O3)基板」に、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 (ウ)したがって、甲2物発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、甲2物発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を備える発明であるから、本件発明1と同様に、甲2物発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明10について ア 対比 本件発明10と甲2方法発明とを対比する。 (ア)甲2方法発明の「炭素を含まないハロゲン化ガリウム源の水溶液」は、本件発明10の「ガリウムを含む原料溶液」に相当する。 そして、甲2方法発明は、「炭素を含まないハロゲン化ガリウム源の水溶液を超音波霧化し」て、「小さなミスト粒子」が「生成」しているから、「霧化」部、すなわち、ミスト化部において、「炭素を含まないハロゲン化ガリウム源の水溶液」をミスト化して「小さなミスト粒子」を発生させているといえる。 そうすると、甲2方法発明の「小さなミスト粒子」は、本件発明10の「ミスト」に相当し、本件発明10と甲2方法発明とは、「ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程」を含んでいる点で一致する。 (イ)甲2方法発明は、「生成した小さなミスト粒子をキャリアガスによって反応室に移動させ」ているから、「キャリアガス」は、「小さなミスト粒子」を「移動」すなわち「搬送」するためのものであるといえ、当該「キャリアガス」は、上記「霧化」部に供給されるものであるといえる。 そうすると、本件発明10と甲2方法発明とは、「前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程」を含んでいる点で一致する。 (ウ)甲2方法発明において、「サファイア(α-A12O3)基板上」への「α-Ga2O3」の「成長」すなわち成膜は、「反応室」で行われるものであるから、「サファイア(α-A12O3)基板」は、「反応室」に設けられ、「反応室」は、成膜室であるといえる。 そして、甲2方法発明は、「生成した小さなミスト粒子をキャリアガスによって反応室に移動させ」ているから、上記「霧化」部と「反応室」は、供給管によって接続されているといえ、「霧化」部から「サファイア(α-A12O3)基板」が設置された「反応室」へと、「小さなミスト粒子」を「キャリアガス」により搬送しているといえる。 そうすると、甲2方法発明の「反応室」は、本件発明10の「成膜室」に相当し、本件発明10と甲2方法発明とは、「前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程」を含んでいる点で一致する。 (エ)甲2方法発明は、「生成した小さなミスト粒子をキャリアガスによって反応室に移動させ、そこで基板を加熱し、その後、水、アルコール、酸素ガスなどの酸素源で熱分解反応を行うことによって、α-Ga2O3が成長される」ものであるから、「移動」すなわち「搬送」された「ミスト粒子」を熱処理して、「サファイア(α-A12O3)基板」上に「α-Ga2O3」の「成長」を行う、すなわち、成膜を行うものであるといえる。 そうすると、本件発明10と甲2方法発明とは、「前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程」を含んでいる点で一致する。 (オ)上記(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲2方法発明の「4インチのサファイア(α-A12O3)基板」の直径は50mm以上である。 そうすると、本件発明10と甲2方法発明とは、「前記下地基板として直径が50mm以上」「のものを用いる」点で一致する。 (カ)甲2方法発明の「積層構造の製造方法」は、本件発明10の「積層構造体の製造方法」に相当する。 (キ)以上によれば、本件発明10と甲2方法発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「積層構造体の製造方法であって、 ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、 前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、 前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、 前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程と を含み、 前記下地基板として直径が50mm以上のものを用いる積層構造体の製造方法。」 <相違点> 相違点4:「下地基板」について、本件発明10は、「TTVが30μm以下のものを用いる」のに対し、甲2方法発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点4についての判断 (ア)甲1~甲3、甲5のいずれにも、サファイア基板のTTVについては記載も示唆もされていない。 (イ)上記1(1)イ(イ)で検討したのと同様に、甲2方法発明の「サファイア(α-A12O3)基板」に、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 (ウ)したがって、甲2方法発明において、相違点4に係る本件発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明10は、甲2方法発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明11~17 本件発明11~17は、本件発明10の全ての構成を備える発明であるから、本件発明10と同様に、甲2方法発明に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 3 甲3に記載された発明を主引用発明とした場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3物発明とを対比する。 (ア)甲3物発明の「2インチc面サファイア基板」、「α-Ga2O3エピ層」、「積層構造」は、本件発明1の「下地基板」、「酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜」、「積層構造体」にそれぞれ相当し、本件発明1と甲3物発明とは「下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し」ている「積層構造体」である点で一致する。 (イ)甲3物発明の「RMS」は、本件発明1の「二乗平均平方根粗さ」に相当し、甲3物発明の「上記α-Ga2O3エピ層の表面のRMS」は、「1.30~2.10nm」であるから、0.2μm以下である。 そうすると、本件発明1と甲3物発明とは、「前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下」である点で一致する。 (ウ)甲3物発明の「2インチc面サファイア基板」の「2インチ」は、「c面サファイア基板」の直径であることは技術常識であり、「2インチ」は「50.8mm」であるから、「2インチc面サファイア基板」の直径は50mm以上である。 そうすると、本件発明1と甲3物発明とは、「前記下地基板の直径が50mm以上である」点で一致する。 (エ)甲3物発明の「積層構造」は、本件発明1の「積層構造体」に相当する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲3物発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「積層構造体であって、下地基板と、酸化ガリウムを主成分とする結晶性酸化物膜とを有し、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さが0.2μm以下であり、前記下地基板の直径が50mm以上である積層構造体。」 <相違点> 相違点5:本件発明1は、「前記下地基板のTTVが30μm以下である」のに対し、甲3物発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点5についての判断 (ア)甲1~甲3、甲5のいずれにも、サファイア基板のTTVについては記載も示唆もされていない。 (イ)上記1(1)イ(イ)で検討したのと同様に、甲3物発明の「c面サファイア基板」に、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 (ウ)したがって、甲3物発明において、相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、甲3物発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を備える発明であるから、本件発明1と同様に、甲3物発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明10について ア 対比 本件発明10と甲3方法発明とを対比する。 (ア)甲3方法発明において、「供給ユニット」は、「ミストを発生させ」るものであるから、本件発明10の「ミスト化部」に相当する。 また、甲3方法発明の「原料溶液」は、「ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製される」ものであるから、本件発明10の「ガリウムを含む原料溶液」に相当する。 そして、甲3方法発明は、「ガリウムアセチルアセトナートを脱イオン水に溶解することによって調製される」「原料溶液」をミスト化して「ミストを発生させ」ているといえる。 そうすると、本件発明10と甲3方法発明とは、「ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程」を含んでいる点で一致する。 (イ)甲3方法発明において、「ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって水平石英管内に移送され」るものであるから、「空気」は、「ミスト」を「移送」すなわち「搬送」するためのキャリアガスといえ、また、「空気」は、「反応ユニット」に供給されているといえる。 そうすると、甲3方法発明の「空気」は、本件発明10の「キャリアガス」に相当し、本件発明10と甲3方法発明とは、「前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程」を含んでいる点で一致する。 (ウ)甲3方法発明において、「c面サファイア基板は水平石英管に設置され」るものであり、また、「c面サファイア基板上」に「α-Ga2O3エピ層」が「成長」され、すなわち、成膜されるものであるから、「水平石英管」は、成膜室であるといえる。 また、甲3方法発明において、「供給ユニットの溶液タンクと、反応ユニットの水平石英管とは、管によって接続され」、「c面サファイア基板は水平石英管に設置され」「ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって水平石英管内に移送され」るものであるから、「供給ユニット」と「石英管」とを「接続」する「管」を介して、「供給ユニット」から、「基板」が「設置され」た「石英管」へと、「ミスト」を「空気」により「移送」すなわち「搬送」しているといえる。 そうすると、甲3方法発明の「管」、「水平石英管」は、本件発明10の「供給管」、「成膜室」にそれぞれ相当し、本件発明10と甲3方法発明とは、「前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程」を含んでいる点で一致する。 (エ)甲3方法発明において、「水平石英管は、抵抗加熱器によって囲まれ」ており、「ミストは、溶液タンク内のエアギャップから空気を引き出すことによって水平石英管内に移送され」ているから、搬送された「ミスト」は、「抵抗加熱器」によって熱処理されているといえ、それによって「c面サファイア基板」上に「α-Ga2O3エピ層」の「成長」を行う、すなわち、成膜を行うものであるといえる。 そうすると、本件発明10と甲3方法発明とは、「前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程」を含んでいる点で一致する。 (オ)上記(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲3方法発明の「2インチc面サファイア基板」の直径は50mm以上である。 そうすると、本件発明10と甲3方法発明とは、「前記下地基板として直径が50mm以上」「のものを用いる」点で一致する。 (カ)甲3方法発明の「積層構造の製造方法」は、本件発明10の「積層構造体の製造方法」に相当する。 (キ)以上によれば、本件発明10と甲3方法発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「積層構造体の製造方法であって、 ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、 前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、 前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から下地基板が設置された前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、 前記搬送されたミストを熱処理して前記下地基板上に成膜を行う成膜工程と を含み、 前記下地基板として直径が50mm以上のものを用いる積層構造体の製造方法。」 <相違点> 相違点6:「下地基板」について、本件発明10は、「TTVが30μm以下のものを用いる」のに対し、甲3方法発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点6についての判断 (ア)甲1~甲3、甲5のいずれにも、サファイア基板のTTVについては記載も示唆もされていない。 (イ)上記1(1)イ(イ)で検討したのと同様に、甲3方法発明の「c面サファイア基板」に、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 (ウ)したがって、甲3方法発明において、相違点6に係る本件発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明10は、甲3方法発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明11~17 本件発明11~17は、本件発明10の全ての構成を備える発明であるから、本件発明10と同様に、甲3方法発明に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 4 申立人の主張 (1)申立人は、特許異議申立書の27ページ下から9行~28ページ行、29ページ4行、29ページ最下行において、相違点1について、「TTV≦30μm」という構成は当業者の標準的な選択にすぎないといえ、例えば、甲4の【0053】、【0054】、【表5】の記載から、TTV≦30μmという仕様は、本件特許出願当時、高品質な基板における周知慣用技術であったといえ、仮に、TTV≦30μmという仕様が周知慣用技術でなかったとしても、甲4記載事項は、サファイア基板を用いた半導体装置であり、甲1物発明と技術分野が同一であることから、甲4発明を甲1物発明に適用することは、容易に想到し得るものであり、相違点3、相違点5についても上記で述べたとおりである旨主張している。 (2)そこで検討するに、上記1(1)イ(イ)で検討したとおり、甲4には、TTVが0.95μm~1.7μmの直径2インチ~4インチのサファイアウエハ上に窒化物材料をエピタキシャル成長することが記載されているといえる。 しかし、甲4の記載のみから、TTV≦30μmという仕様が、本件特許出願当時、高品質な基板における周知慣用技術であったとはいえない。 また、甲1~甲3のいずれにも、サファイア基板のTTVについては何ら記載も示唆もされていないから、甲1~甲3に記載された発明において、サファイア基板の表面が「TTV≦30μm」であるという構成は当業者の標準的な選択にすぎないとはいえない。 そして、上記1(1)イ(イ)、1(3)イ(イ)、2(1)イ(イ)、2(3)イ(イ)、3(1)イ(イ)、3(3)イ(イ)で検討したとおり、甲1~甲3に記載された発明のサファイア基板に、甲4に記載されているサファイアウエハを適用する動機付けはない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1(進歩性)には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700988

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