特許異議申立
2021-700769
酸性液状食品及びその製造方法
- 審判番号
- 2021-700769
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-104713
- 登録番号
- 6833091
- 請求日
- 2021年08月04日
- 審決日
- 2023年01月30日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キユーピー株式会社
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】砂山 麗
- 【権利者】キユーピー醸造株式会社
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】砂山 麗
- 【異議申立人】中嶋 美奈子
- 【異議申立人】小澤 浩子
- 【異議申立人】高橋 麻衣子
- 【異議申立人代理人】高橋 洋平
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 冨永 保
- 審判官 関 美祝
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8
- データ出所
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事件の表示
特許第6833091号発明「酸性液状食品及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6833091号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9、10、11について訂正することを認める。
特許第6833091号の請求項1、2及び4~11に係る特許を維持する。
特許第6833091号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6833091号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年6月17日の出願であって、令和3年2月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項について、令和3年8月4日に特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下「申立人A」という。)により、同年同月13日に特許異議申立人 小澤 浩子(以下「申立人B」という。)により、及び同年同月18日に特許異議申立人 高橋 麻衣子(以下「申立人C」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は次のとおりである。
令和3年12月20日付け:取消理由通知
令和4年 2月22日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 3月28日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知
同年 4月27日 :意見書の提出(申立人A)
同年 同月 同日 :意見書の提出(申立人C)
同年 同月28日 :意見書の提出(申立人B)
同年 6月30日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 9月 5日 :意見書の提出(特許権者)
第2 訂正の適否
1 請求の趣旨
令和4年2月22日付けの訂正請求書による訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正(以下「本件訂正」という。)することを求めるものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項1~6のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品。」
と記載されているのを、
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」
と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4~8も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1~3のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と記載されているのを、
「請求項1又は2のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と訂正する。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と記載されているのを、
「請求項1,2,4のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と訂正する。
ウ 訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と記載されているのを、
「請求項2,4,5のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と訂正する。
エ 訂正事項3-4
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と記載されているのを、
「請求項1,2,4~6のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と訂正する。
オ 訂正事項3-5
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の酸性液状食品の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項1,2,4~7のいずれか一項に記載の酸性液状食品の製造方法であって、」
と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の酸性液状食品。」
と記載されているうちの請求項1を引用するものについて、
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品。」
と独立形式に書き換えて、新たに請求項9とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「20℃でのブリックスが35以上70以下であることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と記載されているうちの請求項1を引用するものについて、
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが35以上70以下であることを特徴とする、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」
と独立形式に書き換えるとともに訂正して、新たに請求項10とする。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「20℃でのブリックスが35以上70以下であることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の酸性液状食品。」
と記載されているうちの請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化塑澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが40以上70以下であることを特徴とする、
酸性液状食品。」
と独立形式に書き換えるとともに訂正して、新たに請求項11とする。
なお、本件訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~11に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
また、請求項9~11についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることが求められている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1の酸性液状食品について、加熱糊化型澱粉1質量部に対するガム類の含有量について、0.03質量部以上であったものを、0.05質量部以上0.25質量部以下と特定するとともに、トレハロースを含有するものを除くと特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、ガム類の含有量については、本件特許明細書【0027】の「酸性液状食品中のガム類の含有量は、加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上であり、また、好ましくは0.25質量部以下であり、より好ましくは0.20質量部以下である。」との記載に基づくものであり、トレハロースを含有するものを除くことについては、取消理由で通知した引用文献1に記載された発明を除くものであって、新たな技術的事項を導入するものでもないから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4~8についての訂正事項1に係る訂正についても、同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものあり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3-1~3-5は、いずれも引用する請求項から、請求項3又は請求項1及び3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものあり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1を引用する訂正前の請求項3について、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項1を引用する請求項3について、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項1を引用する訂正前の請求項6について、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、酸性液状食品について、トレハロースを含有するものを除くと特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、トレハロースを含有するものを除くことは、取消理由で通知した引用文献1に記載された発明を除くものであって、新たな技術的事項を導入するものでもないから、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項1を引用する請求項3を引用する訂正前の請求項6について、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、酸性液状食品について、20℃でのブリックスが35以上70以下であったものを、20℃でのブリックスが40以上70以下と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、ブリックスの範囲は、本件特許明細書【0021】の「酸性液状食品のブリックスは、20℃において、30以上であり、好ましくは35以上であり、より好ましくは40以上であり、さらに好ましくは45以上であり、また、好ましくは70以下であり、より好ましくは65以下であり、さらに好ましくは60以下である。」の記載に基づくものであるから、訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(7)申立人Aの主張について
申立人Aは、令和4年4月27日付け意見書において、本件訂正は認められないとして、概要、次のことを主張する。
ア 訂正後の請求項1~8について
訂正事項1は、「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」という訂正事項を含むものであるところ、この訂正は、引用文献1に記載された発明(調味組成物)を超える「トレハロースを含有しない、調味組成物以外の、酸性液状食品」という技術的事項を除外するものであるし、このような技術的事項は、本件特許明細書に記載されておらず、当該分野の技術常識に照らして自明な事項でもないから、新たな技術的事項を追加するものである。
イ 訂正後の請求項9~11について
請求項9~11を追加する訂正は、請求項を増加する訂正にあたるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書に記載されるいずれの事項を目的とする訂正でもない。
しかしながら、上記アについては、上記(1)で述べたとおりであって、「トレハロースを含有しない、調味組成物以外の、酸性液状食品」が除かれているとしても、そのことにより新たな技術的事項が導入されるものでもない。
また、上記イについては、上記(4)~(6)で述べたとおりであって、請求項間の引用関係を解消した結果、請求項が増加したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号を目的とするものである。
したがって、申立人Aの上記主張は、いずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9、10、11について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、2及び4~11に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び4~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
以下、本件特許の請求項1、2及び4~11に係る発明を、請求項順にそれぞれ、「本件特許発明1」などといい、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。
「【請求項1】
少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。
【請求項2】
前記ガム類の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性液状食品。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
糖類をさらに含む、
請求項1又は2のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項5】
20℃での粘度が3,000mPa・s以上70,000mPa・s以下であることを特徴とする、
請求項1,2,4のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項6】
20℃でのブリックスが35以上70以下であることを特徴とする、
請求項2,4,5のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項7】
pHが3.5以上5.0以下であることを特徴とする、
請求項1,2,4~6のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項8】
請求項1,2,4~7のいずれか一項に記載の酸性液状食品の製造方法であって、
水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を、前記加熱糊化型澱粉が未糊化の状態で混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱して、前記加熱糊化型澱粉を糊化させて、増粘させる工程と、
を含む、酸性液状食品の製造方法。
【請求項9】
少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品。
【請求項10】
少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが35以上70以下であることを特徴とする、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。
【請求項11】
少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化塑澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが40以上70以下であることを特徴とする、
酸性液状食品。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
(1)申立人Aについて
申立人Aは、訂正前の請求項1~8に係る発明の特許について、証拠方法として甲第1号証~甲第6号証を提出し、概要、次の申立理由A1~A6を主張している。
ア 申立理由A1(甲第1号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由A1-1(新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4、5及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由A1-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 申立理由A2(甲第2号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由A2-1(新規性)
本件特許の請求項1~4及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由A2-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第2号証に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 申立理由A3(甲第3号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由A3-1(新規性)
本件特許の請求項1、2、4及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由A3-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第3号証に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 申立理由A4(甲第4号証を主たる引用例とする申立理由)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第4号証に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
オ 申立理由A5(甲第5号証を主たる引用例とする申立理由)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第5号証に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
カ 申立理由A6(甲第6号証を主たる引用例とする申立理由)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第6号証に記載された発明並びに甲第1、4及び5号証に記載された技術的事項及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
キ 証拠方法
申立人Aが提出した甲第1号証~甲第6号証について、以下それぞれ順に、「甲A1」~「甲A6」という。
甲A1:特開2005-160377号公報
甲A2:特開2018-196331号公報
甲A3:特開2006-42739号公報
甲A4:特開2010-252664号公報
甲A5:特開2015-39323号公報
甲A6:特開2002-219号公報
(2)申立人Bについて
申立人Bは、訂正前の請求項1~8に係る発明の特許について、証拠方法として甲第1号証~甲第20号証を提出し、概要、次の申立理由B1~B8を主張している。
ア 申立理由B1(甲第1号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由B1-1(新規性)
本件特許の請求項1、2及び4~8に係る発明は、甲第3、9及び20号証に記載の技術常識を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び4~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由B1-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第3、9及び20号証に記載の技術常識を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 申立理由B2(甲第2号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由B2-1(新規性)
本件特許の請求項1~6及び8に係る発明は、甲第3、9、10、14及び17号証に記載の技術常識並びに甲第1及び5~8号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~6及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由B2-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第3、9、10、14及び17号証に記載の技術常識並びに甲第1及び5~8号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 申立理由B3(甲第3号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由B3-1(新規性)
本件特許の請求項1、2、4~6及び8に係る発明は、甲第3、10及び20号証に記載の技術常識並びに甲第1及び5~8号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4~6及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由B3-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第3、10及び20号証に記載の技術常識並びに甲第1及び5~8号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 申立理由B4(甲第4号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由B4-1(新規性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第11及び15号証に記載された事項、甲第3、10及び20号証に記載の技術常識並びに甲第1、2、5~8及び19号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由B4-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第11及び15号証に記載された事項、甲第3、10及び20号証に記載の技術常識並びに甲第1、2、5~8及び19号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
オ 申立理由B5(甲第5号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由B5-1(新規性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第12~13及び16号証に記載された事項、甲第3及び20号証に記載の技術常識並びに甲第2、8及び19号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由B5-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第12~13及び16号証に記載された事項、甲第3及び20号証に記載の技術常識並びに甲第2、8及び19号証に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
カ 申立理由B6(甲第6号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由B6-1(新規性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第9及び17号証に記載の技術常識を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由B6-2(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第9及び17号証に記載の技術常識を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
キ 申立理由B7(甲第7号証を主たる引用例とする申立理由)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第18号証に記載された事項及び甲第2、8、17及び19号証に記載に記載の周知技術を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ク 申立理由B8(サポート要件)
(ア)本件特許発明1~8は、冷水膨潤型澱粉を配合(併用)する態様を包含しているため、
(イ)本件特許発明1~8は、加熱糊化型澱粉が天然澱粉を包含しているため、及び
(ウ)本件特許発明1、2及び4~8は、比較例7を包含しているため、
本件特許発明1~8は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ケ 証拠方法
申立人Bが提出した甲第1号証~甲第20号証について、以下それぞれ順に、「甲B1」~「甲B20」という。
甲B1:特開2002-209547号公報
甲B2:特開平11-32719号公報
甲B3:特開2006-280317号公報
甲B4:特開平10-113145号公報
甲B5:国際公開第2013/084848号
甲B6:特開2017-131126号公報
甲B7:特開平4-121160号公報
甲B8:特開2015-39323号公報
甲B9:社団法人日本食品工業学会編,「新版・食品工業総合事典」,株
式会社光琳,平成5年4月30日,p.1121-1122
甲B10:福場博保,小林彰夫編,「調味料・香辛料の事典」,株式会社
朝倉書店,1991年7月15日,p.217-223,29
7-307,320-331
甲B11:特開2010-4790号公報
甲B12:特開2007-153739号公報
甲B13:特開2016-3219号公報
甲B14:特開平10-191926号公報
甲B15:「分析試験成績書」,一般財団法人 日本食品分析センター,
2021年7月6日,「検体名 特開平10-113145_
実9」及び「検体名 特開平10-113145_実9 水相
」
甲B16:「分析試験成績書」,一般財団法人 日本食品分析センター,
2021年7月6日,「検体名 WO2013/084848
_表4」,「検体名 WO2013/084848_表4 水
相」,「検体名 WO2013/084848_表8」及び「
検体名 WO2013/084848_表8 水相」
甲B17:中村愛美ほか5名,“「とろみ」指標食材の物性解析:Lin
e Spread Test法による「とろみ」の分類の適応
と限界”,日摂食嚥下リハ会誌,2012年,16巻2号,p
.155-157[online],インターネット<URL
:https://www.jstage.jst.go.j
p/article/jsdr/16/2/16_155/_
article/-char/ja/>
甲B18:“増粘安定剤 パーマフロー 株式会社光洋商会”,[onl
ine],株式会社キタマ,[出力日2021年7月17日]
,インターネット<URL:https://www.kit
ama.co.jp/oishisa-kensaku/pr
oduct-page.php?id=3546>
甲B19:特開2012-170353号公報
甲B20:特開2018-174798号公報
(3)申立人Cについて
申立人Cは、訂正前の請求項1~8に係る発明の特許について、証拠方法として甲第1号証~甲第14号証を提出し、概要、次の申立理由C1~C4を主張している。
ア 申立理由C1(甲第1号証を主たる引用例とする申立理由)
(ア)申立理由C1-1(新規性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第2号証に記載された事項を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)申立理由C1-2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第2号証に記載された事項を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第3又は4号証に記載された事項あるいは甲第11~14号証に示される周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 申立理由C2(甲第5号証を主たる引用例とする申立理由)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第5号証に記載された発明及び甲第3又は4号証に記載された事項あるいは甲第11~14号証に示される周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 申立理由C3(甲第6号証を主たる引用例とする申立理由)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第7~10号証に記載された事項を参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第6号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 申立理由C4(サポート要件)
本件特許発明1~8は、粘度の数値限定について、実施例には数値限定の数値が示されていないため、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
オ 証拠方法
申立人Cが提出した甲第1号証~甲第14号証について、以下それぞれ順に、「甲C1」~「甲C14」という。
甲C1:特開平10-113145号公報
甲C2:「試験成績証明書 No.VYA02126 01号」,一般財
団法人 食品環境検査協会 横浜事業所,2021年7月5日,
「品名 特開平10-113145 実施例9」
甲C3:特開2004-236531号公報
甲C4:特開2012-170353号公報
甲C5:特開2003-169624号公報
甲C6:“パン工房 てりやきソース&マヨ”,[online],更新
日2020年3月3日,キユーピー株式会社,[出力日2021
年7月30日],インターネット<URL:https://w
ww.kewpie.co.jp/products/prod
uct/spread/pan_koubou/4901577
080319/>
甲C7:“キユーピーアヲハタニュース 塗って焼くだけで簡単に総菜パ
ンが楽しめる「パン工房」から「てりやきソース&マヨ」を新発
売 併せて全品をリニューアル”,[online],2021
年1月21日,キユーピー株式会社,[出力日2021年8月2
日],インターネット<URL:https://www.ke
wpie.com/newsrelease/2020/162
1/>
甲C8:「試験成績証明書 No.VYA02125 01号」,一般財
団法人 食品環境検査協会 横浜事業所,2021年7月5日,
「品名 てりやきソース&マヨ」
甲C9:「試験成績証明書 No.VYA02125 02号」,一般財
団法人 食品環境検査協会 横浜事業所,2021年7月5日,
「品名 てりやきソース&マヨ」
甲C10:“パン工房 てりやきソース&マヨのレシピ7件”,[onl
ine],キユーピー株式会社,[出力日2021年7月31
日],インターネット<URL:https://www.k
ewpie.co.jp/recipes/products
/bread/spread/pan_koubou/490
1577080319/>
甲C11:特開2007-185187号公報
甲C12:“キャラメルソースのOEM・PB委託加工製造工場「森田フ
ードシステム」に潜入!「カラメルの技術」と「開発ノウハウ
」で菓子メーカーの商品開発をバックアップ!”,[onli
ne],2019年4月30日,[出力日2021年6月21
日],インターネット<URL:https://media
.crowdfood.jp/demo/?p=3904>
甲C13:特開2007-289168号公報
甲C14:特開2012-135292号公報
なお、甲A5と甲B8、甲B4と甲C1、甲B19と甲C4とは、それぞれ同じ文献である。
2 当審合議体が通知した取消理由
本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審合議体が令和3年12月20日付けで特許権者らに通知した取消理由の要旨は以下の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)であり、本件訂正後の請求項9に係る特許に対して、令和4年6月30日付けで特許権者らに通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、本件訂正後の請求項9に係る発明が訂正前の請求項1を引用する請求項3に係る発明と同一であるため、先にした取消理由通知における請求項3についての取消理由と同旨である。
また、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)は、申立理由B1(甲B1を主たる引用例とする申立理由)及び申立理由B3(甲B3を主たる引用例とする申立理由)と同旨である。
(1)理由1(新規性)
本件特許の請求項1、2及び4~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1、2及び4~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:特開2002-209547号公報(甲B1)
引用文献2:特開2006-280317号公報(甲B3)
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人A~Cが申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
1 甲号証に記載された事項
なお、以下の下線は、当審合議体で追加した。また、甲号証の記載は全て全角にして転記する。本決定全体についても同様である。
また、証拠に記載された事項を示す場合は、(甲A1a)などと示す。
(1)甲A1の記載事項
(甲A1a)「【請求項1】
フラワーペースト類10~90重量%と油脂組成物90~10重量%を混合し、比重を0.96~1.35とすることを特徴とするクリーム組成物の製造方法。
【請求項2】
上記油脂組成物が、ショートニング、マーガリン及びファットスプレッドの中から選ばれた1種又は2種以上である請求項1記載のクリーム組成物。
・・・
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの方法によって得られたクリーム組成物。」
(甲A1b)「【0001】
本発明は、ベーカリー製品のフィリング用、トッピング用、サンド用として好適に用いられるクリーム組成物及びその製造方法に関する。
・・・
【0007】
従って、本発明の目的は、食感が適度に重く、しっかりとしたボディー感があるにもかかわらず、口溶けがよく、風味良好であり、コク味、耐熱保型性が良好であるクリーム組成物の製造方法を提供することにある。」
(甲A1c)「【0016】
また、澱粉としては、コーン、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ、小麦、米、もち米等由来の澱粉が挙げられ、必要に応じて、エステル化、リン酸架橋、α化、熱処理等の化学的、物理的処理を施したものを使用することができ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。澱粉の添加量は、フラワーペースト類の全組成中、好ましくは2~10重量%、更に好ましくは4~8重量%である。2重量%よりも少ないとクリーム組成物の粘度が低下しやすいため、保型性が低下しやすく、10重量%よりも多いとクリーム組成物の口溶けが悪くなりやすい。」
(甲A1d)「【0031】
本発明では、このようにして得られたフラワーペースト類のpHが好ましくは4~7、更に好ましくは5~6となるように調整して製造する。4よりも低いと酸味が強くなりやすいので好ましくなく、7よりも高いとソルビン酸やそのカリウム塩のような酸性領域で効果をあらわす保存料を使用した場合の、保存効果が低減しやすいので好ましくない。」
(甲A1e)「【0044】
〔実施例4〕
油脂組成物として、次のようなファットスプレッドを使用した。パーム硬化油25重量%と大豆硬化油16重量%と大豆油9重量%とを混合し、これにレシチン0.1重量%、ショ糖脂肪酸エステル1重量%、香料0.1重量%を添加し、油相とする。一方、水10重量%、砂糖異性化液糖(糖分75重量%、水分25重量%)24.6重量%、ココアパウダー(糖分40重量%)10重量%、茶抽出物を主剤とする日持ち向上製剤1重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.2重量%、脱脂粉乳(糖分53重量%、水分3.8重量%)1.5重量%、デンプン(水分13重量%)1.5重量%を混合し水相とする。この油相と水相とを混合、乳化し、急冷可塑化して比重1.00であるファットスプレッドを得た。このファットスプレッドの水相中の糖濃度は58.6重量%であり、SFCは10℃で45、30℃で15であった。
フラワーペースト類は、次のような配合、方法で製造した。パーム油3重量%にカカオマス6重量%、ソルビタン脂肪酸エステル1重量%、キサンタンガム0.2重量%を添加し、油相とする。水40重量%、デンプン(水分13重量%)6重量%、ソルビン酸カリウム0.1重量%、水あめ(糖分70重量%、水分30重量%)34.8重量%、小麦粉3重量%、脱脂粉乳(糖分53重量%、水分3.8重量%)5重量%、香料0.2重量%、色素液0.7重量%を混合し水相とする。この油相と水相とを混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、25℃まで冷却し比重1.15であるフラワーペースト類を得た。このときの水相中の糖濃度は34.4重量%であり、フラワーペースト類のpHは5.5、ビスコステスター(リオン(株)製、2号ローター使用)で粘度を測定したところ、10~30℃において30~90Pa・sであった。
そして、予め製造しておいたファットスプレッドを25℃に調温し、これを25℃まで冷却したフラワーペースト類に、ポンプを用いて注入し、ブレンダーを用いて連続的に攪拌、混合後、連続真空脱気装置(宇野沢組鉄工所製)により、6kPaの圧力下で脱気し、比重が1.15のクリーム組成物を得た。このとき混合比率は、フラワーペースト類85重量%及びファットスプレッド15重量%とした。得られたクリーム組成物は、官能試験、及び耐熱保型性試験を行った。その結果を表1に記した。
(2)甲A2の記載事項
(甲A2a)「【請求項1】
加工澱粉を0.5質量%以上10質量%以下含み、
ゼラチンを0.5質量%以上4質量%以下含み、
酸性多糖類を0.08質量%以上1質量%以下含む、食品組成物。
・・・
【請求項9】
前記食品組成物は、デザート、フィリング、惣菜、ソース、ジャムまたは菓子に用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の食品組成物。」
(甲A2b)「【0002】
従来から糊状になるという澱粉の性質を利用することにより、もちのような粘りおよび弾力を食品に付与することが試みられてきた。・・・
・・・
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、もっちり感および口どけのよさを付与した食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、もっちり感、口どけのよさなどの食感が、粘りのある伸び、適度な硬さ(後述するゲル破断強度)および形状を維持する性質(以下、「保形性」とも記す)を食品が有する場合に得られることを知見した。この知見に基づき、上述した伸び、硬さおよび保形性を有する食品組成物に到達し、本発明を完成させた。」
(甲A2c)「【0027】
<作用>
酸性多糖類は、詳細なメカニズムは不明であるが、上記カルボキシル基などの置換基に基づくマイナスの電荷を有し、このマイナスの電荷が食品組成物中において、ゼラチンのアミノ基に基づくプラスの電荷と電気的反応を起こすと考えられる。これにより、食品組成物中のゼラチンのゲルが、その連続性が壊されて不連続化し、脆くなることによって適度な硬さ(後述するゲル破断強度)、およびこれに基づく口どけ感が得られるものと推定される。【0028】
(ゲル破断強度比:Is/If)
本発明に係る食品組成物において、1.5質量%の上記ゼラチンからなる第1ゲルの5℃でのゲル破断強度をIfとし、1.5質量%の上記ゼラチンと0.3質量%の上記酸性多糖類とからなる第2ゲルの5℃でのゲル破断強度をIsとする場合、Is/Ifは、0.65~0.9となることが好ましい。すなわち第2ゲルは、そのゲル破断強度が第1ゲルよりも弱い値を示すため、より脆いゲルであることが理解される。食品組成物において、このようなゲル破断強度比(Is/If)を有する場合、詳細なメカニズムは不明であるが、食品組成物中のゼラチンのゲルはその連続性が壊されて不連続化し、脆くなることにより、適度な硬さが付与され、およびこれに基づく口どけ感が付与されることとなると考えられる。」
(甲A2d)「【0052】
[実施例1]
<試料11の調製>
まず、試料全体に占める割合が3質量%となる加工澱粉としてのタピオカ由来のヒドロキシプロピル澱粉(商品名:「いかるが100」、王子コーンスターチ株式会社製)、試料全体に占める割合が1.2質量%となるゼリー強度150のアルカリ処理ゼラチン(商品名:「NC」、新田ゼラチン株式会社製)、試料全体に占める割合が0.3質量%となる酸性多糖類としてのペクチン(市販品)を準備した。これらを混合することにより混合物を得た後、水を加えて80℃で10分間、撹拌加熱することにより、上記混合物が溶解した混合溶液を得た。さらに、この混合溶液を断面が底辺よりも上辺が長い台形であって、上方が開放した略円柱状容器(底面φ4.4cm、開放天面φ6cm、容量90ml)に60g充填し、5℃で一晩(16時間)冷却することにより、試料11の食品組成物を調製した。
【0053】
<試料12の調製>
試料全体に占める割合が30質量%となる砂糖を上記混合物に添加したこと以外について、試料11と同じ方法により、試料12の食品組成物を調製した。
・・・
【0115】
[実施例6]
・・・
【0118】
<試料63の調製>
酸性多糖類をキサンタンガム(市販品)に代えたこと以外については、試料12と同じ方法により試料63の食品組成物を調製した。
・・・
【0123】
【表8】
[図:0001397154000001.jpg]
」
(3)甲A3の記載事項
(甲A3a)「【請求項1】
カスタードクリーム、フラワーペースト、フィリング、ホワイトソース、半固体状ドレッシングおよびデザート用ソースなどのペースト状食品において、小粒子澱粉を原料とする、特定範囲の架橋エーテル化または、架橋エステル化加工澱粉を含有することを特徴とするペースト状食品。」
(甲A3b)「【0001】
・・・また、その澱粉質原料として、小粒子澱粉で特定範囲の架橋エーテル化または、架橋エステル化加工澱粉を使用した、いわゆるぼそつきやもたつきがなく、滑らかで、口溶けの良い優れた食感を有する耐熱性および冷凍・冷蔵保存時の食感持続性の高いペースト状食品に関する。
・・・
【0009】
発明が解決しようとする課題はいわゆるぼそつきやもたつきがなく、滑らかで、口溶けの良い優れた食感を有する、耐熱性および冷凍・冷蔵保存時の食感持続性の高いペースト状食品を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ペースト状食品中に米澱粉に代表される小粒子澱粉を原料とする、特定範囲の架橋エーテル化または、架橋エステル化を施した加工澱粉を特定量含有させることにより、上記課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。」
(甲A3c)「【実施例4】
【0031】
表1の各試料澱粉を用い、下記の表2処方1配合により、フラワーペーストを製造した。即ち、試料澱粉、上白糖、水飴、脱脂粉乳、キサンタンガム、モノグリセライド、クエン酸、ソルビン酸を水に溶解または分散しながら、60℃まで加温し、TKホモミキサー(特殊機化工業製)9000rpmにて撹拌下、予め加温溶解したマーガリンを添加し、10分間乳化した。この乳化液を鍋に移し、ガス直火にてヘラで撹拌しながら5分間加熱した。この後、約70℃まで冷却後、内容物を容器に詰め、蓋をして、室温まで放冷して、試料番号毎の加工澱粉を用いたフラワーペースト試料をそれぞれ製造した。得られたフラワーペースト試料の評価を下記に示す基準により判定した。また、その結果を表3に示す。
・・・
【0036】
【表2】
[図:0001397154000002.jpg]
」
(4)甲A4の記載事項
(甲A4a)「【請求項1】
フラワーペースト類10~50質量%と油脂組成物50~90質量%を混合し、比重を0.5未満とすることを特徴とするクリーム組成物の製造方法。
・・・
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって得られたクリーム組成物。」
(甲A4b)「【0006】
従って、本発明の目的は、食感が軽く、口溶けが良好でありながら、濃厚な風味やコク味を有するクリーム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、フラワーペースト類に油脂組成物を混合する際に、フラワーペースト類と油脂組成物の混合比を特定範囲内とし、且つ、比重を特定値未満とすることにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。」
(甲A4c)「【0029】
本発明では、このようにして得られたフラワーペースト類のpHが好ましくは4~7、更に好ましくは5~6となるように調整して製造する。4よりも低いと酸味が強くなりやすいので好ましくなく、7よりも高いとソルビン酸やそのカリウム塩のような酸性領域で効果をあらわす保存料を使用した場合の、保存効果が低減しやすいので好ましくない。」
(甲A4d)「【0040】
〔実施例1〕
油脂組成物として、次のようなファットスプレッドを使用した。パーム油45質量%、レシチン0.5質量%、ショ糖脂肪酸エステル0.5質量%、香料0.1質量%を混合し油相とする。一方、水5質量%、水あめ(糖分70質量%、水分30質量%)45質量%、グリシンを主剤とする日持ち向上製剤1.4質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1量%、脱脂粉乳(糖分53質量%、水分3.8質量%)1質量%、デンプン(水分13質量%)1.4質量%を混合し水相とする。この油相と水相とを混合、乳化し、急冷可塑化して比重1.00であるファットスプレッドを得た。
このファットスプレッドの水相中の糖濃度は63.1質量%であり、SFCは10℃で40、30℃で15であった。
【0041】
フラワーペースト類は、次のような配合、方法で製造した。パーム油5質量%にソルビタン脂肪酸エステル0.5質量%とキサンタンガム0.2質量%を添加し、油相とする。水45質量%、デンプン(水分13質量%)8質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖異性化液糖(糖分75質量%、水分25質量%)35質量%、小麦粉3質量%、脱脂粉乳(糖分53質量%、水分3.8質量%)1.1質量%、乾燥全卵(糖分4.1質量%、水分3.2質量%)2質量%、香料0.1質量%を混合し水相とする。この油相と水相とを混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、22℃まで冷却し比重1.15であるフラワーペースト類を得た。このときの水相中の糖濃度は32.9質量%であり、フラワーペースト類のpHは5.5であり、ビスコステスター(リオン(株)製、2号ローター使用)で粘度を測定したところ、10~30℃において20~50Pa・sであった。
【0042】
そして、予め製造しておいたファットスプレッドを20℃に調温し、これを22℃まで冷却したフラワーペースト類に、ポンプを用いて注入し、ブレンダーを用いて攪拌、混合し、窒素ガスを注入し、比重が0.43のクリーム組成物を得た。このとき混合比率は、フラワーペースト類30質量%及びファットスプレッド70質量%とした。
得られたクリーム組成物は、食感が軽く、口溶けが良好でありながら、濃厚な風味やコク味を有するものであった。」
(5)甲A5(甲B8)の記載事項
(甲A5a)「【請求項1】
増粘剤を含み、糖度(Bx)が55以下、粘度が10,000mPa・s以上である調味ソース。
・・・
【請求項3】
pHが3.0以上、4.5以下である請求項1又は請求項2記載の調味ソース。」
(甲A5b)「【0026】
増粘剤は、調味ソースに粘性を付与するものである。増粘剤の例としては、澱粉を挙げることができる。尚、増粘剤は、調味ソースに加えて粘性を付与するものであれば、これに限定されるものではない。
【0027】
澱粉としては、生澱粉のほか、各種加工澱粉やこれらをα化したα化澱粉が挙げられる。
【0028】
澱粉の含有量は、必要とする粘度によって異なるため、用途によって含有量を適宜変える必要がある。例えば、パンの上に載せる調味ソースであれば、液だれなどを防止する目的も考えると10,000mPa・s以上の粘度が必要であることから1~20重量%程度、より好ましくは3.0~20重量%の澱粉が含まれていることが望ましい。
・・・
【0030】
また、調味ソースには、ゲルもしくはゲルに近い物性にするために、寒天を添加してもよい。寒天の含有量としては、0.05~3重量%の範囲が好ましい。」
(甲A5c)「【0035】
上述の調味ソースは、pH3.0~4.5であることが好ましい。調味ソースは、糖度(Bx)を55以下に抑えて水分含有量を多くしているため、糖類を用いることなく保存性を向上させるためである。pH3.0未満とすると、酸味が強くなりすぎて好ましくない。pH4.5を超えると、塩分濃度や糖度を高くしないと保存が困難になってしまう。」
(6)甲A6の記載事項
(甲A6a)「【請求項1】 増粘剤として化工澱粉・増粘多糖類・ゼラチンを使用し、糖度を45~55%に調整することにより、ゼラチンによるゲル構造に冷凍耐性を付与した液体調味料組成。」
(甲A6b)「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、液体調味料を生肉・生魚などの肉汁の流出し易い食品素材へ、からめることで使用する半加工食品を開発する場合において冷解凍時に素材からの肉汁の流出を防止すると同時に、液体調味料の流れ落ちの問題を解決し、商品価値を高める液体調味料組成に関するものである。
・・・
【0006】 すなわち、本発明は、からめる工程では比較的滑らかで作業性が良く、冷凍・解凍による粘度の低下を起こさず、解凍した時には高粘度に変化し、肉汁の流出と調味料の流れ落ちを防止できる粘性を持った液体調味料組成物を調整することを目的とする。」
(甲A6c)「【0008】 本発明における加工澱粉とは、天然澱粉をリン酸で架橋し、変性エーテル、エステル置換した澱粉誘導体であり、冷凍での経時変化による澱粉の老化を起こしにくくいため、冷凍・解凍した時の粘度低下もほとんど無い。この化工澱粉を液体調味料に2~5%添加し増粘させる。
【0009】 本発明における増粘多糖類とは、キサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、カラギーナンなどであるが、これに限定するものではなく、これら増粘多糖類を澱粉により増粘させた液体調味料の安定剤として0.05~0.5%添加する。
・・・
【0011】 化工澱粉・増粘多糖類・ゼラチンは、醤油・味醂・糖類などを配合した液体調味料に良く溶解させ、95℃まで加熱膨潤させる。」
(7)甲B1の記載事項
(甲B1a)「【請求項1】 増粘剤、澱粉およびトレハロースを含有する調味組成物。
【請求項2】 増粘剤が、ガム類または多糖類である、請求項1記載の調味組成物。
【請求項3】 澱粉が、天然澱粉または化工澱粉である、請求項1記載の調味組成物。
【請求項4】 粘度が4000~20000cpである、請求項1記載の調味組成物。
【請求項5】 弁当の副食(おかず)や惣菜を調味するためのものである、請求項1記載の調味組成物。」
(甲B1b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、増粘剤、澱粉およびトレハロースを含有する新規な調味組成物に関するものであり、例えば、コロッケ、から揚げ、ステーキ、野菜炒め、ソーセージ、エビチリ、パスタ、卵料理、ゆで野菜などの弁当の副食(おかず)や惣菜等に非常によく絡み付き、照りとつやが長時間維持し、しかも具材から出るドリップもある程度吸収できる調味組成物に関するものである。」
(甲B1c)「【0005】
【発明の実施の形態】本発明の調味組成物は、少なくとも増粘剤、澱粉およびトレハロースを含有するものである。本発明で使用可能な増粘剤としては、ガム類または多糖類を挙げることができる。より具体的にガム類としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、グア-ガム、カラヤガム等を例示することができ、多糖類としては、カラギーナン、カードラン、ペクチン、プルラン、コンニャクマンナン、寒天、ゼラチン、水溶性大豆多糖類等を例示することができる。このような増粘剤のうち、ガム類、特にキサンタンガム等を好適なものとして例示することができる。
【0006】次に、本発明で使用可能な澱粉としては、天然澱粉または化工澱粉を挙げることができ、化工澱粉が好適である。より具体的に、天然澱粉としては、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉等を例示することができ、化工澱粉としては、上記天然澱粉をヒドキシプロピル、エピクロルヒドリン、リン酸、アジピン酸、酢酸等により置換及び/または架橋された澱粉を例示することができる。
【0007】トレハロースとしては、トレハロースを含有するものであればよく、具体的には、無水トレハロース、トレハロース含水結晶、トレハロース含有糖混合物シラップなどを用いることができる。これら各成分の使用量は、特に制限されるものではないが、たとえば、増粘剤としては0.04~0.5重量%、澱粉としては1.5~6.0重量%、トレハロースとしては0.4~10重量%の範囲から適宜選定することができる。」
(甲B1d)「【0009】本発明の調味組成物の調製は、特に制限されるものでなく、たとえば、全ての原料を攪拌混合し、所定温度(たとえば、100℃以下)まで加熱し、増粘することで本発明の調味組成物を調製することができる。また、水、醤油、味醂などの液体原料を初めに全て混合し、これを高速攪拌機、高速ニーダーなどの混合機で均一分散する。次に、この混合液に、砂糖、食塩、うま味調味料などの粉体原料とガム類、澱粉類およびトレハロースを加え、通常の攪拌を行いながら所定温度(たとえば、100℃以下)まで、加熱し、増粘して本発明の調味組成物とすればよい。」
(甲B1e)「【0010】このようにして調製した本発明の調味組成物は、典型的には以下の物性を有する液状またはペースト状の組成物である。
(1)pH:3.5~6.0(pHメータで測定)
(2)粘度:4000~20000cp(B型粘度計を用い、25℃,30rpmの条件にてNo.4のローターを使用して測定)
(3) 糖度:20~65%(糖用屈折計にて測定)」
(甲B1f)「【0012】実施例
醤油 50ml
砂糖 170g
トマトペースト 100g
トマトケチャップ 200g
化工でんぷん 32g
キサンタンガム 1g
トレハロース 50g
香辛料 2g
酢 75ml
食塩 30g
水 残り
合計 1000ml
上記の原料を配合し、85℃で殺菌後、冷却し、壜詰めして調味料製品とした。調製した調味組成物の分析値は以下の通りである。
(1)pH:3.83
(2)粘度:11000cp
(3)糖度:35.0%」
(甲B1g)「【0018】
【発明の効果】本発明の調味組成物は、増粘剤、澱粉およびトレハロースを必須の成分として調製されたものであり、これらの3成分を併用することで、具材を調味するだけでなく、(1)具材から流れ落ちることなく、具材によく絡み付き、(2)照りやつやも長時間維持し、(3)具材から出るドリップもある程度吸収でき、しかもこれらがバランス良く機能する従来の調味組成物にない特長を有するするものである。このような調味組成物は、弁当や給食のおかず又は惣菜のように、様々な食材あるいは具材の調味に適している。」
(8)甲B2の記載事項
(甲B2a)「【請求項1】 キサンタンガム、とうもろこしでんぷん、化工でんぷんの3種の粘稠剤並びに少糖類を組み合わせ、高糖度(BX 45~65)、塩分濃度3.0~8.0%を満たす条件下で80~95℃、10~20分間の加熱を行うことで、未膨潤のものを残すよう構成したことを特徴とする高粘性を有する調味液の製造方法。
【請求項2】 下記の原料を用いて、第1工程ないし第4工程から構成されていることを特徴とする高粘性を有する調味液の製造方法。
醤油18.0、酒類10.0、食塩4.4、スクロース18.0、マルトース15.0、デキストリン7.0、キサンタンガム0.1~0.2、とうもろこしでんぷん1.0~2.0、化工でんぷん1.0~2.0、調味料(アミノ酸等)2.0、香辛料1.0、肉エキス1.0、着色料1.8、香料0.3。
第1工程~キサンタンガムを一部の酒類に分散すると共に、とうもろこしでんぷん、化工でんぷんを原料水に分散する。
第2工程~醤油、食塩、糖類を混合した後、第1工程で得た分散したキサンタンガム、とうもろこしでんぷん、化工でんぷんを順次加える。
第3工程~加熱を開始し、65℃を経過後、残りの酒類、調味料、香辛料、肉エキス、着色料、香料を加える。
第4工程~80~95℃で10~20分間加熱保持する。」
(甲B2b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べたものにあっては、下記のような問題点を有していた。
A.従来の高粘性の調味液は、具材の表面の状態やドリップにより希釈され、具材表面から滑り落ち、安定した絡み付きを保持していられなかった。
B.高粘性であるために、糊感やべとつき感が生じ、官能的に悪影響を与えた。
本発明は、テリツヤ,着色,香りの付与性は、従来通り保ったままの高粘性の物性で、安定した絡み付きを維持でき、さらに糊感やべとつき感のない官能的に優れた調味液を提供することにより、上述した問題点を解決しようとするものである。
・・・
【0005】
【発明の実施の形態】・・・発明者は、澱粉類を高糖度、一定濃度の食塩存在下で加熱(80~95℃,10~20分間)することで、未膨潤のものを残すことができ、これにより具材から出るドリップを吸収できることを見出した。・・・さらに、上記の高糖度条件を少糖類を用いて調整することで生じる物性は、テリツヤのある見栄えの良い、従来の糊感やべとつき感のない高粘性であるにもかかわらず滑らかな物性、かつサラッとした口触りの官能的に優れた調味液を得ることができた。」
(9)甲B3の記載事項
(甲B3a)「【請求項1】
0.3~1.0重量%のキサンタンガム及び0.05~1.0重量%のネイティブジェランガムを含有し、キサンタンガムとネイティブジェランガムの含有比が6:1~1:1であることを特徴とする粘度が4000cp以上の高粘性調味液。」
(甲B3b)「【0005】
以上のように、滑らかな食感を有し、かつ高粘性で、容器内壁に付着して残りにくい調味液は未だ報告されていない。そこで、本発明は、調味液自体の組成を改良することにより、容器内壁に付着して残存する割合が少ない、pseudo plastic flowの高い調味液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく検討を重ね、その過程において、調味液を作製する際に使用される増粘剤に着目し、増粘剤の改良もしくは2種類以上併用することにより、調味液の粘性を変えることで、目的を達成できるのではとの仮説を立て検証した。その結果、従来得ることができなかった、滑らかな食感の高粘性調味液が、容器内に残りにくくなることについての確かな確信を得た。
調味液を作製する際に粘度を付けるためには、通常増粘剤が使用される。このような増粘剤として、一般的には、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガムなどがあり、これらの増粘剤と共に加工澱粉を併用させることが多い。」
(甲B3c)「【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において高粘性調味液とは、一般的に「たれ」、「ソース」、「あんかけ」等と呼ばれる、粘度が4000cpから20000cp程度のもの、及び「半固体状ドレッシング」や「乳化液状ドレッシング」、「タルタルソース」と呼ばれる、粘度が4000cpから30000cp程度の乳化物を示す。言い換えれば、pseudo plastic flowが高い調味液を意味する。ここで、pseudo plastic flowとは、擬塑性流動のことであり、ずり速度の増加に伴い見かけの粘度が減少する流動のことを指す。」
(甲B3d)「【0017】
本発明の高粘性調味液の原材料は、水、醤油、食用油脂、糖、塩、その他調味料などである。また、粘度を高める目的で、必要に応じて馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉等の澱粉類、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン等の増粘剤、ゲル化剤を適宜選択して加えることがある。これらの原材料の種類、使用量及び混合方法については制限がなく、使用目的などを考慮して適宜決定すればよい。」
(甲B3e)「【実施例】
【0019】
以下に、本発明を実施例等により詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
(1)実施例1~4、比較例1~4・・・
・・・
【0021】
・・・なお、粘度はB型粘度計(形式:BM、東機産業株式会社)を用い、回転数30rpm、温度20℃の条件で測定した。・・・
・・・
【0034】
(4)実施例11~13(乳化しない澱粉入り調味液での効果の検証)
表8の組成物の原材料をすべて混合、攪拌し、90℃まで加熱して所定粘度の5種類の調味液を作製した。これらの調味液を冷却後、それぞれボトルタイプのポリエチレンテレフタレート製容器に充填した。
上記(1)の実施例等と同様に粘度を測定し、また調味液の容器内壁への残存率を算出した。結果を表9に示す。
【0035】
【表8】
[図:0001397154000003.jpg]
【0036】
【表9】
[図:0001397154000004.jpg]
」
(10)甲B4(甲C1)の記載事項
(甲B4a)「【請求項1】 風味成分を含有してなるO/W型乳化組成物であって、食用油脂を10~50重量%含有し、HLBが各々7以上のグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、酵素分解レシチンまたはHLBが5以上のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種以上を0.03~0.3重量%含有してなり、粘度が1000~7000センチポイズ/20℃であり、平均油滴粒子径が30μm以下のものである前記乳化組成物からなることを特徴とする炒め物用調味料。
・・・
【請求項3】 カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、タマリンドシードガム、グアーガム、トラガントガム、カロブビーンガム、ジェランガムおよび澱粉類からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有してなる請求項1または2に記載の炒め物用調味料。
【請求項4】 キサンタンガムと、ペクチンまたは澱粉類とを含有してなる請求項1または2に記載の炒め物用調味料。」
(甲B4b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は炒め物調理に好適な調味料に関するものである。より詳しくは、炒め物調理の工程を簡略化でき、調理時の作業性を改善し、良好な品質の炒め物料理を与える調味料に係わる。」
(甲B4c)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】・・・すなわち本発明の目的は、食品素材と共に中華鍋またはフライパン等に入れて加熱しながら混ぜるだけの簡略化された工程で炒め物調理を仕上げることができ、かつ該調理時に油脂や水分の飛び跳ねが少なく、食品素材や調味料の焦げつきが少なく、また素材からの水分の滲出が少なく、素材に充分な水分が残り、かつ炒め物料理の仕上がりが水っぽくなることを抑制できる炒め物用調味料を提供することにある。」
(甲B4d)「【0023】
【実施例】
実施例1~9、比較例1~5
本願発明の炒め物調味料および比較のための調味料を、表1、表2および表3に示した処方および乳化条件により調製した。なお、調味料の乳化処理はTKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて行った。・・・
【0024】調製した調味料の粘度、平均油滴粒子径を測定した値を表1、表2および表3に示した。なお、粘度はBM型粘度計を用いローターNo.3、12rpmの条件で5回転目の値を測定し、油滴粒子径は顕微鏡を用いて観察して求めた。
・・・
【0026】
【表2】
[図:0001397154000005.jpg]
・・・
【0028】・・・
注7)松谷化学工業(株)パインエース1」
(11)甲B5の記載事項
(甲B5a)「[請求項1] 架橋デンプン、オクテニルコハク酸処理デンプン、及び増粘多糖類を含有することを特徴とする乳化液状調味料。
[請求項2] 乳化液状調味料の全体量に対して、0.3~2.2質量%の前記架橋デンプン、0.5~2.5質量%の前記オクテニルコハク酸処理デンプン、及び0.2~0.6質量%の前記増粘多糖類を含有することを特徴とする請求項1に記載の乳化液状調味料。
[請求項3] 前記架橋デンプンが、アセチル化アジピン酸架橋デンプンであり、かつ、前記オクテニルコハク酸処理デンプンが、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の乳化液状調味料。
[請求項4] 前記増粘多糖類としてキサンタンガムを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化液状調味料。
[請求項5] 前記増粘多糖類としてタマリンドシードガムを含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の乳化液状調味料。」
(甲B5b)「[0004] 離水を防止する方法として、乳化液状調味料中に増粘多糖類を配合して、乳化粒子の分散性を安定させる方法が知られている。しかし、乳化液状調味料中の増粘多糖類の配合量が多い場合、セット(乳化液状調味料の流動性がなくなり、ゲル状になる現象)が生じる可能性がある。
・・・
[0010] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、乳化液状調味料中の成分として、架橋デンプン、オクテニルコハク酸処理デンプン、及び、増粘多糖類を乳化液状調味料に配合することで、低カロリー及び低コレステロールの乳化液状調味料の離水、分離及びセットを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(甲B5c)「[0048] [実施例1~14、比較例1~3;コールスロードレッシングの製造-I]
アセチル化アジピン酸架橋デンプン(製品名;コルフロ67、日本エヌエスシー株式会社製)、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(製品名;エマルスター500、松谷化学工業株式会社製)、キサンタンガム(製品名;エコーガムGM、CPケルコ社製)、タマリンドシードガム(製品名;グリロイド3S、株式会社シキボウ堺製)、果糖ぶどう糖液糖、及び水を、表1及び2記載の配合量でプロペラ撹拌機付きの加温可能な容器に投入し、100rpmで撹拌しながら品温が90℃になるまで加熱した。
次いで、品温を90℃に保持しながら原料を溶解させ、残りの原料(キャノーラ油以外)を投入し、さらに5分間撹拌し、品温が20℃になるまで冷却した。次いで、これに少量ずつキャノーラ油を投入しながら、卓上ホモミキサーで6500rpm、10分の条件で乳化を行い、コールスロードレッシングを製造した。
[0049] なお、表1及び2中、「合計(1)」は、キサンタンガム及びタマリンドシードガムの組成の合計を指す。「合計(2)」は、コールスロードレッシングの製造に使用した全ての原料組成の合計を指す。
また、以下、表中の「%」は「質量%」を示す。
・・・
[0053] (粘度の評価)
各ドレッシングを、24時間、20℃の温度で保温し、BM型粘度計を使用して粘度を測定した。なお、ローターNo.3を使用して12rpmで回転させ、5回転時の値を粘度とした。・・・
・・・粘度が1000~7000mPa・sである・・・
・・・
[0065] [実施例16;コーンドレッシングの製造-I]
表4記載の原料を使用して、上記コールスロードレッシングと同様の方法によってコーンドレッシングを製造した。なお、還元水飴は果糖ぶどう糖液糖とともに投入した。また、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、及びキサンタンガムについては、上記コールスロードレッシングの製造において使用した原料と同様の原料を使用した。
・・・
[0067] [表4]
[図:0001397154000006.jpg]
・・・
[0081] [実施例27;コーンドレッシングの製造-II]
表8記載の原料を使用して、上記コールスロードレッシングと同様の方法によってコーンドレッシングを製造した。なお、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、及びキサンタンガムについては、上記コールスロードレッシングの製造において使用した原料と同様の原料を使用した。
・・・
[0083] [表8]
[図:0001397154000007.jpg]
」
(12)甲B6の記載事項
(甲B6a)「【請求項1】
糖度55以下、
pHが4.0以下の焼成用ジャムであって、
増粘安定剤として、脱アシルジェランガム及び/又はタマリンドシードガムとLMペクチン及び/又は加工澱粉とを含有し、
下記の(a)~(e)の手順で測定された値が100~130である、
焼成用ジャム。
(a)濾紙の中央に直径35mmで高さ5mmの円環状のリングを置く。
(b)撹拌した前記焼成用ジャムをリングにすりきりいっぱいまで入れ、リングを外す。
(c)(b)の前記焼成用ジャムを200℃で10分間焼成する。
(d)焼成後の前記焼成用ジャムの長さの最小値と最大値を測定し、その平均値を焼成後の直径(mm)とする。
(e)下記の式により、焼成前の直径を100%とした時の焼成後の広がりを求める。
(式)焼成後の広がり=(焼成後の直径/35)×100
【請求項2】
請求項1に記載の焼成用ジャムであって、
さらに、増粘安定剤として、カラギーナン及び/又はグアーガムを含有する、
焼成用ジャム。」
(甲B6b)「【0012】
<焼成用ジャム:糖度>
本発明の焼成用ジャムの糖度は、55以下である。これにより、低糖度であり、より果実感の強いジャムを提供することができる。また、ジャムのカロリー及び糖分を抑え、健康志向のジャムを提供することもできる。
ここで、「糖度」は、JIS K7142に規定されている方法で測定された屈折率を、国際砂糖分析統一委員会(ICUMSA)の「規格・基準SPS-3、屈折率測定と屈折率表」により換算した数値である。
・・・
【0024】
<本実施形態の作用効果>
以上、本発明の焼成用ジャムにおいては、A及びB(及びC)の複数の増粘安定剤の混合によって、焼成によっては保形性を維持し、かつ口に含むと容易に壊れ、原料の香気成分を揮発させるような独自のゲル構造を形成することができる。これにより、焼成用ジャムにおいて、高い焼成耐性と、高い香り立ちとを両立させることができる。
一般に、増粘安定剤を多量に用いることにより、強固なゲル構造を有するジャムを製造することは可能である。しかしながら、強固なゲル構造は、当然ながら口に含んだ場合もゲル構造が壊れにくい。ジャムの香気成分はゲル構造が壊れるときに揮発しやすいため、ゲル構造が強固であると、ジャム特有の香り立ちや果実感を感じさせることは難しい。
そこで、本発明者らは、検討を重ねた結果、上述のようなA及びB(及びC)の増粘安定剤の組み合わせによって、焼成耐性及び保水性、並びに口の中における壊れやすさを兼ね備えたゲル構造を形成できることを見出した。
さらに、本発明の焼成用ジャムは、糖度55以下で、pHが4.0以下であることにより、糖分の配合量を抑え、原料そのものの風味や果実感を高めることができる。これにより、香り立ちをより高めることができる。」
(甲B6c)「【0026】
[実施例及び比較例に係るジャムの製造]
(実施例1)
実施例1として、以下の表1の原料から、焼成用イチゴジャムを製造した。また、増粘安定剤は、表2の丸印で示すものを、製造後同表に記載の配合量(%)となるように添加した。カルシウム塩も、表2に示すものを、製造後同表に記載の配合量(%)となるように添加した。
【0027】
【表1】
原料 配合量(%)
イチゴ果肉 25
砂糖 46
クエン酸ナトリウム 0.45
クエン酸 0.35
リン酸三カルシウム 表2記載
増粘安定剤A,B,C 表2記載
水 残余
合計 100%
【0028】
【表2】
[図:0001397154000008.jpg]
(*1)加工澱粉:ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉
(*2)LMペクチン:シトラスペクチン
・・・
【0032】
(実施例4~6)
増粘安定剤の配合を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に焼成用イチゴジャムを製造した。
得られた焼成用イチゴジャムの糖度は、いずれも50(表2参照)、pHは3.5~4.0であった。」
(13)甲B7の記載事項
(甲B7a)「(1)化工澱粉とキサンタンガム,ローカストビーンガム,ジェランガム,タマリンド種子ガム又はグアガムの一種以上とを併用することを特徴とするレトルト済酸性調味料及び酸性調味料を用いたレトルト済加工食品。」(1ページ左欄5~9行)
(甲B7b)「本発明はレトルト処理を受け、さらに長期間保存しても粘度低下のないレトルト済酸性調味料及び酸性調味料を用いたレトルト済加工食品に関する。」(1ページ左欄16~19行)
(甲B7c)「本発明において酸性調味料とは,トマトソース,デミグラスソース,チリソース,ドレッシングソース,甘酢あんかけ,酢味噌などトマトを主材とした調味料や酢或いはかんきつ果汁を加えた調味料、その他これらに類するものであって、pH3~5程度のものをいう。」(2ページ左下欄15~20行)
(甲B7d)「実施例1~4及び比較例1~3
表-1及び表-2の配合に従い、中華なべにごま油30gを熱し、みじん切りにしたにんにく,ねぎ,しょうがをいため、油通ししたエビを加える。これに予めトマトケチャップ,砂糖,食塩,酒,豆板醤,化工澱粉及び安定剤を水に溶き、85℃に加熱して均一に混合した調味液を合わせ、煮立たせる。得られたエビのチリソース煮をそれぞれ100gずつパウチに封入し、120℃20分間のレトルト処理を施した。
評価法としては、B型粘度計にてレトルト前,レトルト後及び40℃で2ヶ月間保存後の粘度(20℃)を測定し、それぞれ相対値(粘度指数)で表した。・・・
表-1 エビチリソース煮の配合
[図:0001397154000009.jpg]
表-2 澱粉等配合量(対調味液部 %)
[図:0001397154000010.jpg]
*ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ
(A.E.STALEY MANUFACTURING Co.,USA)
・・・
レトルト後の粘度(cp)
粘度指数: レトルト後= ――――――――――――
レトルト前の粘度(cp)
・・・
実施例5~8及び比較例4~6
表-4及び表-5の配合に従い、2cm位の角切りにした豚肉に醤油,酒,しょうが汁をかけ、30分間放置したのち、軽く油通しする(残った液体は湯(タン)(スープストック)に混ぜて用いる)。中華なべに油8gを入れ加熱し、玉ねぎ,タケノコ,ニンジン,椎茸を炒める。さらに先の豚肉と予め醤油,砂糖,化学調味料,酢,化工澱粉及び安定剤を湯(タン)(スープストック)に溶き、85℃に加熱して均一に混合した調味液を加え煮立たせる。
得られた酢豚を180gずつパウチに封入し、120℃30分間のレトルト処理を施した。
評価法としては、B型粘度計(20℃)にて殺菌前,殺菌後及び40℃で2ヵ月間保存後の粘度を測定し、それぞれ相対値(粘度指数)で表した。・・・
表-4 酢豚の配合
[図:0001397154000011.jpg]
表-5 澱粉等配合量(対調味液部 %)
[図:0001397154000012.jpg]
」(2ページ右下欄12行~5ページ上欄表-5)
(14)甲B9の記載事項
(甲B9a)「ぶりっくす〔ブリックス) Brix 果実など食品の汁液,ペースト中の水溶性固形物含量の百分率をブリックス%で表示し,原料や製品の糖度の検査によく利用される。ブリックス(Bx)の測定には屈折糖度計が用いられる。これは,屈折計のプリズム面の一面に付着させた蔗糖水溶液の濃度が,プリズムを通過する光の屈折率に,一定温度で比例することを利用して,20℃での糖度目盛りを付した屈折計で,糖が可溶性固形物(soluble solid)の大半を占める食品では,この測定で糖含量を推定できる。レモンのように糖より酸含量がはるかに多い食品では,このBxによる測定で糖濃度を推測することはできない。温度によって測定値がずれるのでブリックスの温度補正が必要である。<邨田卓夫>
[図:0001397154000013.jpg]
」(1121~1122ページ、「ぶりっくす」の項)
(15)甲B10の記載事項
(甲B10a)「
[図:0001397154000014.jpg]
」(219ページ表5.20)
(甲B10b)「
[図:0001397154000015.jpg]
」(299ページ表9.8及び301ページ表9.13)
(16)甲B14の記載事項
(甲B14a)「【請求項1】 HLB値6.2以下の乳化剤を0.01~0.3重量%並びに食用油を2~20重量%含有することを特徴とする粘度3000cp以上の高粘性調味液。」
(17)甲B15の記載事項
(甲B15a)「
[図:0001397154000016.jpg]
」
(18)甲B16の記載事項
(甲B16a)「
[図:0001397154000017.jpg]
」
(甲B16b)「
[図:0001397154000018.jpg]
」
(19)甲B17の記載事項
(甲B17a)「指標食材には,ポタージュ(粉:味の素(株),・・・ストロベリージャム(アヲハタ(株))を使用した.・・・それぞれの食材を摂食する時の温度を想定し,ポタージュは45℃,ヨーグルトは5℃,それ以外は20℃に設定して,食材の物性測定を行った.」(156ページ右欄30~40行)
(甲B17b)「
[図:0001397154000019.jpg]
」(157ページ表1)
(20)甲B20の記載事項
(甲B20a)「【0077】
・・・B型粘度計として、東機産業社製の「B-II」を用い、下記記載の温度および回転度で、測定値に対応した温度に調整した調味料をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて測定値に対応した回転数で粘度を測定し、下記の各特性値を得た。特に指定のない場合、粘度の単位はmPa・sである。
η6(20℃):20℃、6rpmで測定された粘度。
η30(20℃):20℃、30rpmで測定された粘度。
η60(20℃):20℃、60rpmで測定された粘度。
η60(70℃):70℃、60rpmで測定された粘度。
・・・
【0082】
・・・
【表12】
[図:0001397154000020.jpg]
」
(21)甲C2の記載事項
(甲C2a)「
[図:0001397154000021.jpg]
」
(22)甲C3の記載事項
(甲C3a)「【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ない、種々の調味液の組成、BRIX糖度、加熱殺菌条件等について検討した結果、澱粉を高濃度で含む調味液を高BRIX糖度条件に調整し、かつ特定の温度帯で加熱殺菌処理することにより、澱粉の糊化を抑制することができ、しかも調味液が低粘性に保たれること、並びに該調味液があんかけ料理用として良好な風味を有しており、また保存性が高いことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
・・・
【0008】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るあんかけ用調味液は、濃縮タイプのものであり、使用時に通常は2~20重量倍に希釈される。
・・・
【0011】
・・・本発明では、食塩濃度は3~20重量%、好ましくは5~15重量%であり、調味液のBRIX糖度40以上70以下、好適には45~65であることを特徴とする。
ここで、BRIX糖度が40未満であると、澱粉の糊化の抑制効果が不十分であり、70を超えると、調味液に含まれる水分量が少なくなるため、調味液構成原料を溶解させることが難しくなる。」
(23)甲C4(甲B19)の記載事項
(甲C4a)「【0007】
そこで本発明は、調味対象の食品の上に戴置可能な物性を備えた調味料であって、野菜のシャキシャキとした食感を得ることが可能な調味料を提供することを第一の課題とする。
・・・
【0016】
なお、本発明に係る調味料においては、Bx(ブリックス)を35.0~80.0°の範囲となるよう、他の原料を適宜選択することが好ましい(請求項6)。これは、乾燥野菜には低粘度の液体に混合すると水分を吸収して膨潤し粘着性が高まるためダマになったり液上部に浮いてしまい均一拡散が困難な性質を有するところ、高いBx(ブリックス)とすることにより乾燥野菜の膨潤する速度が抑制されるため、かかる不都合が生じず均一拡散が容易になるためである。」
(24)甲C5の記載事項
(甲C5a)「【請求項1】 2~4.5重量%の架橋澱粉、0.1~1重量%のキサンタンガム及び0.1~1重量%の高メトキシルペクチンを含有してなり、pH3~4で、粘度が2000~20000mPa・sであることを特徴とする、酸性粘性調味液。」
(甲C5b)「【0006】一方、酸性の調味液に粘性を与えて、かつその粘性を安定に維持させる方法については、従来から種々の検討がなされており、例えば特開平4-121160号公報には、酸性(pH3~5)の調味液に化工澱粉と、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム又はタマリンド種子ガムの1種以上とを併用添加する方法が開示されている。しかし、このような方法によって本発明のようなpH4以下の強い酸性の調味液を調製した場合でも、調製直後は目的とする付着性や垂れ流れにくさは達成できるものの、調製後の流通期間を考慮した長期間に渡って、その粘性を安定的に維持することは難しいことが判明した。
・・・
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、化工澱粉の中でも特に架橋澱粉を使用し、かつキサンタンガムを併用した上で、さらにペクチンの中でも特に高メトキシルペクチンを含有させることにより、酸性の強い調味液においても、充分な付着性と垂れ流れにくさを達成し、かつその粘性を長期間に渡り安定に維持できることを見出し、この知見に基いて本発明を完成するに至った。」
(甲C5c)「【0014】本発明の酸性粘性調味液においては、2~4.5重量%の架橋澱粉を含有していることが必要である。ここで架橋澱粉とは、架橋化処理を施された澱粉を指す。・・・架橋澱粉の内で最も本発明に適したものとしては、ワキシーコーンスターチを原料として、ヒドロキシプロピルエーテル化とアジピン酸架橋化を組み合わせた化工処理によって製造されたヒドロキシプロピル化アジピン酸架橋澱粉が挙げられる。」
(甲C5d)「【0024】〔試験1〕架橋澱粉濃度の決定
・・・なお、ここで用いたスダチ果汁はスダチ果実を圧搾した搾汁を冷凍保存したものであり、解凍後使用した。また、クエン酸は無水クエン酸を使用し、醤油及び砂糖はそれぞれ市販の濃口醤油及び上白糖を使用した。
【0025】・・・なお、架橋澱粉としては松谷化学製ファリネックスW50(ヒドロキシプロピル化アジピン酸架橋澱粉)を用い、またキサンタンガムとしては大日本製薬社製モナートガムGSを用いた。・・・
・・・
【0027】・・・なお、粘度は東京計器B型粘度計を用い、20℃、30rpmの条件で測定した。・・・
・・・
【0040】実施例1(ユズ風味調味液の製造)
以下の表5に示したような組成で各原料を配合し、均一攪拌後、90℃で加熱殺菌後、55℃で300ml容のプラスチック容器に熱詰充填し、ユズ風味を有する酸性粘性調味液を調製した。なお、砂糖、ユズ果汁、食塩、架橋澱粉、クエン酸、HMペクチンなどは、これまでの試験1~3で用いられたと同様のものを使用し、昆布だし、醸造酢、魚介エキスについては業務用市販品を用いた。得られた調味液は、pHが3.5であり、その粘度は4520mPa・sであって、寿司ネタに塗って調味した際に、ユズ風味を強く有し、また付着性が良く、美味しい調味が可能であった。また、この容器詰めの酸性粘性調味液は、5ヶ月の室温保存後も、殆ど粘度が低下せず、安定な品質であることが確認された。
【0041】
【表5】
[図:0001397154000022.jpg]
」
(25)甲C6の記載事項
(甲C6a)「
[図:0001397154000023.jpg]
」
(26)甲C7の記載事項
(甲C7a)「
[図:0001397154000024.jpg]
」
(27)甲C8の記載事項
(甲C8a)「
[図:0001397154000025.jpg]
」
(28)甲C9の記載事項
(甲C9a)「
[図:0001397154000026.jpg]
」
(29)甲C10の記載事項
(甲C10a)「
[図:0001397154000027.jpg]
」
(30)甲C11の記載事項
(甲C11a)「【0003】
・・・ゼリーは経時的な離水が問題となるが、これら低カロリーのゼリーは糖度(ブリックス)が低めに設定されるため、更に離水が生じやすくなる傾向にあった。
・・・
【0014】
更に本発明では、糖度(ブリックス)が通常のゼリーより低く設定されているため、離水が生じやすくなるが、イオタカラギナン及び/又はネイティブ型ジェランガムを含有することにより離水を抑制することができる。」
(31)甲C12の記載事項
(甲C12a)「
[図:0001397154000028.jpg]
」
(32)甲C13の記載事項
(甲C13a)「【0026】
(酸性ゲル状食品の製造方法)
本発明の酸性ゲル状食品は、糖溶液に、ゲル化剤を添加し、ゲル化剤溶液を調製するゲル化剤溶液調製工程(a)と、該ゲル化剤溶液に、ゲル状食品に必要な他の原料を混合溶解してゲル状食品原料溶液とするゲル状食品原料溶液調製工程(b)と、該ゲル状食品原料溶液を冷却固化して、ゲル化させるゲル化工程(c)によって製造される。
・・・
【0032】
また、ゲル化剤は、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びグルコマンナンから選ばれた2種以上を用いる。・・・なかでも、グルコマンナンを含む組み合わせは、得られるゲル状食品の離水を少なくできることからより好ましい。
(33)甲C14の記載事項
(甲C14a)「【0006】
また特許文献2には、外観上の透明性を保ったまま、素材へ絡み易く、かつ長期的に離水を抑えることができるゲル状調味液として、調味料成分を含み、常温で破断応力が2000~70000Pa及び破断歪率が10~50%であり、離水率が0.05~2%であることを特徴とするゲル状調味液が開示されている。そして、特許文献2には、上記ゲル状調味液が、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム及びιタイプのカラギーナンを含むゲル化剤を含有することが記載されている。」
2 取消理由について
(1)甲B1を主引用例とする理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
なお、本件訂正前の請求項8は、理由1(新規性)の対象ではないが、新規性についても併せて判断した。
ア 甲B1に記載された発明
甲B1は、増粘剤、澱粉及びトレハロースを含有する調味組成物に関する技術を開示するものであり(甲B1a)、その具体例を示した実施例からみて(甲B1f)、次の「甲B1発明」が記載されていると認める。
甲B1発明:
「醤油50ml、砂糖170g、トマトペースト100g、トマトケチャップ200g、化工でんぷん32g、キサンタンガム1g、トレハロース50g、香辛料2g、酢75ml、食塩30g、水を合計で1000mlとなる量で配合した調味組成物であって、pH:3.83、粘度:11000cp、糖度:35.0%である調味組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B1発明とを対比する。
a 甲B1には、甲B1発明の「化工でんぷん」は、天然澱粉をヒドロキシプロピルなどにより置換及び/又は架橋された澱粉が挙げられることが示され(甲B1c)、調味組成物の調製方法として、原料を撹拌混合し、100℃以下の温度まで加熱して増粘することが記載されているから(甲B1d)、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当する。
そして、その含有量は、調味料組成物全体の約3.2重量%(32g÷1000ml)である。
b 甲B1発明の「キサンタンガム」は、ガム類であり(甲B1c)、「化工でんぷん32g」に対して「キサンタンガム1g」であるから、「キサンタンガム」の含有量は、「化工でんぷん」1質量部に対して換算すると、約0.031質量部である。
c 甲B1発明の「調味組成物」は、pHが3.83であり、液状又はペースト状の組成物であるから(甲B1e)、本件特許発明1の「酸性液状食品」に相当する。
そして、甲B1発明の「調味組成物」が、水、化工でんぷん、キサンタンガム以外の原料を含むことは、本件特許発明1の「酸性液状食品」が、少なくともこれらを含む酸性液状食品であり、また、本件特許明細書の【0032】に、「本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。」と記載されていることから、本件特許発明1に包含され、相違点とはならない。
d したがって、両発明は、次の一致点及び相違点B1-1-1~B1-1-3を有する。
なお、質量と重量は等価とみなし得ることは技術常識である。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品。」である点。
相違点B1-1-1:
本件特許発明1は、「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下」であると特定しているのに対し、
甲B1発明は、「化工でんぷん32g」に対して「キサンタンガム1g」を含有するから、「キサンタンガム」の含有量が、「化工でんぷん」1質量部に対して約0.031質量部である点。
相違点B1-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B1発明の「調味組成物」は、「粘度:11000cp、糖度:35.0%」である点。
相違点B1-1-3:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「但し、トレハロースを含有するものを除く」と特定しているのに対し、
甲B1発明の「調味組成物」は、「トレハロース」を含む点。
e 相違点の検討
(a)相違点B1-1-1について
甲B1は、増粘剤、澱粉及びトレハロースを含有する、弁当のおかずや惣菜などに非常によく絡み付き、照りとつやが長時間維持し、しかも具材から出るドリップもある程度吸収できる調味組成物に関し(甲B1b)、それぞれの含有量について、増粘剤0.04~0.5重量%、澱粉1.5~6.0重量%及びトレハロース0.4~10重量%の範囲から適宜選定できることや(甲B1c)、粘度が4000~20000cpであることが記載されている(甲B1e)。
しかしながら、甲B1には、上記の惣菜などとの絡み付き、照りとつやの長時間の維持及びドリップのある程度の吸収を得るために、増粘剤、澱粉及びトレハロースの含有量、特に澱粉に対する増粘剤の量を調整するという具体的な技術的思想は記載されていない。
そうすると、甲B1発明について、調味組成物の粘度を4000~20000cpの範囲で変更するとしても、含まれる成分のうち、特にキサンタンガム(増粘剤)と化工でんぷん(澱粉)のみについて着目した上で、キサンタンガムの含有量が、加工でんぷん1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下となるように、配合量を変更する動機付けはない。
したがって、相違点B1-1-1は、当業者が容易になし得たものではない。
(b)相違点B1-1-2について
甲B1には、粘度、糖度の測定について、それぞれ、「B型粘度計を用い、25℃,30rpmの条件にてNo.4のローターを使用して測定」、「糖用屈折計にて測定」と記載されている(甲B1e)。
粘度について、本件特許明細書【0020】に「酸性液状食品の粘度は、BL形粘度計を使用し、品温20℃、回転数6rpmの条件で、粘度が1,000mPa・s未満の場合:ローターNo.1、1,000mPa・s以上5,000mPa・s未満の場合:ローターNo.2、5,000mPa・s以上20,000mPa・s未満の場合:ローターNo.3、20,000mPa・s以上100,000mPa・s未満の場合:ローターNo.4を使用し、測定開始後3分後の示度により算出した値である。」と記載されているから、本件特許発明1の20℃での粘度は、少なくとも、BL形粘度計を使用し、品温20℃、回転数6rpmの条件で測定した場合の値が示されているといえるので、両者の測定条件は異なっている。
しかしながら、甲B1発明の粘度は、本件特許明細書に記載された上記測定条件よりも高い温度及び速い回転速度で測定した値である上、本件特許発明1で特定される2,500mPa・sより4倍を超えるかなり大きい11,000mPa・sであるから、上記測定条件で測定すれば2,500mPa・s以上であると解するのが自然である。
なお、1cp=1mPa・sであることは、技術常識である。
また、甲B1発明の糖度は、糖用屈折計で測定しているから、20℃でのブリックスに相当するといえ(甲B9a)、20℃でのブリックスが35.0、すなわち30以上であるといえる。
したがって、相違点B1-1-2は、実質的な相違点ではない。
(c)相違点B1-1-3について
甲B1に、増粘剤、澱粉及びトレハロースという3成分を併用することで、具材を調味するだけでなく、(1)具材から流れ落ちることなく、具材によく絡み付き、(2)照りやつやも長時間維持し、(3)具材から出るドリップもある程度吸収でき、しかもこれらがバランス良く機能する従来の調味組成物にない特長を有する調味組成物であることが記載されているとおり(甲B1g)、トレハロースは甲B1発明の調味組成物における必須の成分であるから、甲B1発明からトレハロースを除く動機付けがあるとはいえない。
したがって、相違点B1-1-3は、当業者が容易になし得たものではない。
f 小括
以上のとおり、本件特許発明1と甲B1発明とは、相違点B1-1-1及びB1-1-3で相違するから、本件特許発明1は、甲B1に記載された発明ではない。
また、相違点B1-1-1及びB1-1-3は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明1は、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)eで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲B1に記載された発明ではなく、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)本件特許発明9について
a 上記(ア)a~cで検討したことを踏まえて、本件特許発明9と甲B1発明とを対比すると、両発明は、次の一致点及び相違点B1-9-1及びB1-9-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品。」である点。
相違点B1-9-1:
本件特許発明9は、「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下」であると特定しているのに対し、
甲B1発明は、「化工でんぷん32g」に対して「キサンタンガム1g」を含有するから、「キサンタンガム」の含有量が、「化工でんぷん」1質量部に対して約0.031質量部である点。
相違点B1-9-2:
本件特許発明9の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B1発明の「調味組成物」は、「粘度:11000cp、糖度:35.0%」である点。
b 相違点の検討
上記相違点B1-9-1及びB1-9-2は、それぞれ上記(ア)dの相違点B1-1-1及びB1-1-2と同様の相違点であるから、上記(ア)e(a)及び(b)で検討したのと同様の理由により、相違点B1-9-2は、実質的な相違点ではないが、相違点B1-9-1は、当業者が容易になし得たものではない。
c 小括
以上のとおり、本件特許発明9と甲B1発明とは、相違点B1-9-1で相違するから、本件特許発明9は、甲B1に記載された発明ではない。
また、相違点B1-9-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明9は、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)本件特許発明10について
a 上記(ア)a~cで検討したことを踏まえて、本件特許発明10と甲B1発明とを対比すると、両発明は、次の一致点及び相違点B1-10-1及びB1-10-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品。」である点。
相違点B1-10-1:
本件特許発明10の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが35以上70以下である」と特定しているのに対し、
甲B1発明の「調味組成物」は、「粘度:11000cp、糖度:35.0%」である点。
相違点B1-10-2:
本件特許発明10の「酸性液状食品」は、「但し、トレハロースを含有するものを除く」と特定しているのに対し、
甲B1発明の「調味組成物」は、「トレハロース」を含む点。
b 相違点の検討
上記相違点B1-10-1及びB1-10-2は、それぞれ上記(ア)dの相違点B1-1-2及びB1-1-3と同様の相違点であるから、上記(ア)e(b)及び(c)で検討したのと同様の理由により、相違点B1-10-1は、実質的な相違点ではないが、相違点B1-10-2は、当業者が容易になし得たものではない。
c 小括
以上のとおり、本件特許発明10と甲B1発明とは、相違点B1-10-2で相違するから、本件特許発明10は、甲B1に記載された発明ではない。
また、相違点B1-10-2は、当業者が容易なし得たものともいえないから、本件特許発明10は、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ)本件特許発明11について
a 上記(ア)a~cで検討したことを踏まえて、本件特許発明11と甲B1発明とを対比すると、両発明は、次の一致点及び相違点B1-11-1及びB1-11-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品。」である点。
相違点B1-11-1:
本件特許発明11は、「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下」であると特定しているのに対し、
甲B1発明は、「化工でんぷん32g」に対して「キサンタンガム1g」を含有するから、「キサンタンガム」の含有量が、「化工でんぷん」1質量部に対して約0.031質量部である点。
相違点B1-11-2:
本件特許発明11の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが40以上70以下である」と特定しているのに対し、
甲B1発明の「調味組成物」は、「粘度:11000cp、糖度:35.0%」である点。
b 相違点の検討
(a)相違点B1-11-1について
上記相違点B1-11-1は、上記(ア)dの相違点B1-1-1と同様の相違点であるから、上記(ア)e(a)で検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
(b)相違点B1-11-2について
上記相違点B1-11-2は、上記(ア)dの相違点B1-1-2と同様の相違点であるところ、上記(ア)e(b)で検討したのと同様の理由により、甲B1発明は、20℃での粘度が2,500mPa・s以上であると解するのが自然であり、20℃でのブリックスが35.0であるといえるから、粘度については実質的な相違点ではないといえる。
そこで、ブリックスについて検討する。
甲B1には、調味組成物の典型的な物性に関して、糖用屈折計で測定した糖度が、20~65%であることが記載されている(甲B1e)。
しかしながら、甲B1には、惣菜などとの絡み付き、照りとつやの長時間の維持及びドリップのある程度の吸収を得るために、糖度を調整するという具体的な技術的思想は記載されていない。
そうすると、甲B1発明について、調味組成物の糖度について着目して、20℃でのブリックスを40以上70以下となるように、配合されている成分の量を変更する動機付けはない。
したがって、相違点B1-11-2は、当業者が容易になし得たものではない。
c 小括
以上のとおり、本件特許発明11と甲B1発明とは、相違点B1-11-1及びB1-11-2で相違するから、本件特許発明11は、甲B1に記載された発明ではない。
また、相違点B1-11-1及びB1-11-2は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明11は、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、甲B1を主引用例とする理由1(新規性)及び理由2(進歩性)は、理由がない。
(2)甲B3を主引用例とする理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
なお、本件訂正前の請求項6及び7は、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)の対象ではないが、これらの請求項に係る発明についても併せて判断した。
ア 甲B3に記載された発明
甲B3は、0.3~1.0重量%のキサンタンガム及び0.05~1.0重量%のネイティブジェランガムを含有し、キサンタンガムとネイティブジェランガムの含有比が6:1~1:1である粘度が4000cp以上の高粘性調味液に関する技術を開示するものであり(甲B3a)、その具体例を示した実施例11及び12からみて(甲B3e)、次の「甲B3発明A」及び「甲B3発明B」が記載されていると認める。
甲B3発明A:
「水33.8重量%、液糖45重量%、澱粉0.5重量%、醤油20重量%、キサンタンガム0.5重量%及びネイティブジェランガム0.2重量%を含み、合計で100重量%であって、粘度が7500cPである、高粘性調味液。」
甲B3発明B:
「水33.5重量%、液糖45重量%、澱粉0.5重量%、醤油20重量%、キサンタンガム0.5重量%及びネイティブジェランガム0.5重量%を含み、合計で100重量%であって、粘度が8000cPである、高粘性調味液。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B3発明A及び甲B3発明Bとを対比する。
a 甲B3発明A及び甲B3発明Bの「澱粉」は、甲B3に、高粘性調味液の原材料として、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉等の澱粉類が記載されており(甲B3d)、原材料を全て混合、攪拌し、90℃まで加熱して所定の粘度の調味液を作製することが記載されているから(甲B3e)、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当する。
そして、その含有量は、いずれも高粘性調味液全体の0.5重量%である。
b 甲B3発明A及び甲B3発明Bの「キサンタンガム」はガム類であり、その含有量は、いずれも「澱粉0.5重量%」に対して「キサンタンガム0.5重量%」であるから、「キサンタンガム」の含有量は、「澱粉」1重量部に対して換算すると、1.0重量部(0.5÷0.5)である。
c 甲B3発明A及び甲B3発明Bの「高粘性調味液」は、いずれも醤油を20重量%含むところ、醤油のpHは5程度であることも考慮すると(甲B10a)、その組成からみて酸性の調味料といえ、いずれもトレハロースを含有していないから、本件特許発明1の「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」に相当する。
そして、甲B3発明A及び甲B3発明Bの「高粘性調味液」が、水、澱粉、キサンタンガム以外の原料を含むことは、本件特許発明1の「酸性液状食品」が、少なくともこれらを含む酸性液状食品であり、また、本件特許明細書【0032】に、「本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。」と記載されていること、【0026】に、「(ガム類)・・・ガム類の中でも、キサンタンガム及びグアーガムの少なくとも1種を用いることで、酸性液状食品の長期保存後の離水を防止したり、粘度の低下を防止したりすることができる。」と記載されていることから、他のガム類の併用を排除していないと解されることから、本件特許発明1に包含され、相違点とはならない。
d したがって、本件特許発明1と甲B3発明A及び甲B3発明Bは、次の一致点及び相違点B3-1-1及びB3-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B3-1-1:
本件特許発明1は、「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下」であると特定しているのに対し、
甲B3発明A及び甲B3発明Bは、いずれも「澱粉0.5重量%」に対して「キサンタンガム0.5重量%」を含有するから、「キサンタンガム」の含有量が、「澱粉」1質量部に対して1.0質量部である点。
相違点B3-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B3発明A及び甲B3発明Bの「高粘性調味液」は、それぞれ「粘度が7500cP」及び「粘度が8000cP」であり、いずれもブリックスは不明である点。
e 相違点の検討
(a)相違点B3-1-1について
甲B3に記載された発明は、調味液を作製する際に使用される増粘剤に着目して、2種類以上を併用すること、具体的には、キサンタンガム及びネイティブジェランガムを併用することにより、滑らかな食感であるとともに、容器内に残りにくい高粘性調味液としたものであり、澱粉については増粘剤と共に併用させることが多いと記載されている程度のものである(甲B3b)。
そうすると、甲B3発明A及び甲B3発明Bについて、澱粉が配合されているとしても、2種類の増粘剤のうち、特にキサンタンガムに着目した上で、その含有量が、澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下となるように、配合量を変更する動機付けはない。
したがって、相違点B3-1-1は、当業者が容易になし得たものではない。
(b)相違点B3-1-2について
甲B3には、粘度の測定について、「粘度はB型粘度計(形式:BM、東機産業株式会社)を用い、回転数30rpm、温度20℃の条件で測定した」と記載されている(甲B3e)。
粘度について検討すると、上記(1)イ(ア)e(b)で述べたのと同様に、本件特許発明1の20℃での粘度は、少なくとも、BL形粘度計を使用し、品温20℃、回転数6rpmの条件で測定した場合の値が示されているといえるので、本件特許発明1と甲B3発明A及び甲B3発明Bの測定条件は異なっているが、甲B3発明A及び甲B3発明Bの粘度は、いずれも本件特許明細書に記載された測定条件よりも速い回転速度で測定した値である上、本件特許発明1で特定される2,500mPa・sよりかなり大きい75,00mPa・s及び8,000mPa・sであるから、上記測定条件で測定すれば2,500mPa・s以上であると解するのが自然である。
また、糖度について検討すると、本件特許明細書【0021】に、「酸性液状食品のブリックスの値は、1気圧、品温20℃とした時に、屈折計を用いて測定した値である。」と記載されており、甲B3発明A及び甲B3発明Bは、いずれも液糖を45重量%含有するので、高粘性調味液の20℃でのブリックスは少なくとも30以上であると解される。
したがって、相違点B3-1-2は、実質的な相違点ではない。
f 小括
以上のとおり、本件特許発明1と甲B3発明A及び甲B3発明Bとは、相違点B3-1-1で相違するから、本件特許発明1は、甲B3に記載された発明ではない。
また、相違点B3-1-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明1は、甲B3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)eで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲B3に記載された発明ではなく、甲B3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明1の「(但し、トレハロースを含有するものを除く)」との発明特定事項を削除したものに相当する。
そうすると、本件特許発明9と甲B3発明A及び甲B3発明Bとは、上記(ア)dの一致点並びに相違点B3-1-1及びB3-1-2と同様の一致点(「(但し、トレハロースを含有するものを除く)」を削除したもの)並びに相違点B3-9-1及びB3-9-2を有するといえるところ、上記(ア)e(a)及び(b)で検討したのと同様の理由により、相違点B3-9-2は、実質的な相違点ではないが、相違点B3-9-1は、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件特許発明9と甲B3発明A及び甲B3発明Bとは、相違点B3-9-1で相違するから、本件特許発明9は、甲B3に記載された発明ではなく、甲B3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)本件特許発明10について
a 上記(ア)a~cで検討したことを踏まえて、本件特許発明10と甲B3発明A及び甲B3発明Bとを対比すると、両発明は、次の一致点及び相違点B3-10-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B3-10-1:
本件特許発明10の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが35以上70以下である」と特定しているのに対し、
甲B3発明A及び甲B3発明Bの「高粘性調味液」は、それぞれ「粘度が7500cP」及び「粘度が8000cP」であり、いずれもブリックスは不明である点。
b 相違点の検討
相違点B3-10-1のうち、粘度については、上記(ア)e(b)で述べたとおり、実質的な相違点ではない。
そこで、ブリックスについて検討するに、甲B3発明A及び甲B3発明Bは、いずれも液糖を45重量%含有するので、高粘性調味液の20℃でのブリックスは少なくとも30以上であるとは解されるものの、その具体的な数値は不明である。
ブリックスは、食品中の水溶性固形分含量の百分率を表示するものであり、屈折糖度計により測定して得られる値であるから(甲B9a)、液糖、澱粉、醤油、キサンタンガム及びネイティブジェランガムを含有する甲B3発明A及び甲B3発明Bのブリックスの値は、実際に測定してみなければ不明といわざるを得ない。
そして、上記(ア)e(a)でも述べたとおり、甲B3は、調味液を作製する際に使用される増粘剤に着目して、キサンタンガム及びネイティブジェランガムを併用することにより、滑らかな食感であるとともに、容器内に残りにくい高粘性調味液としたものであり、そのような高粘性調味液とするために、ブリックスを特定の数値範囲に調整するという技術的思想は記載されていない。
そうすると、甲B3発明A及び甲B3発明Bについて、高粘性調味液のブリックスに着目して、その値が35以上70以下となるように、各成分の配合量を変更する動機付けはない。
したがって、相違点B3-10-1は、当業者が容易になし得たものではない。
c 小括
以上のとおり、本件特許発明10と甲B3発明A及び甲B3発明Bとは、相違点B3-10-1で相違するから、本件特許発明10は、甲B3に記載された発明ではない。
また、相違点B3-10-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明10は、甲B3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明9の「20℃でのブリックスが30以上」との発明特定事項について、「20℃でのブリックスが40以上70以下」と限定したものに相当する。
そうすると、上記(ウ)で述べたとおり、本件特許発明9が、甲B3に記載された発明ではなく、甲B3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、それをさらに限定した本件特許発明11も、甲B3に記載された発明ではなく、甲B3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、甲B3を主引用例とする理由1(新規性)及び理由2(進歩性)は、理由がない。
(3)申立人の主張について
ア 令和4年4月27日付け意見書における申立人Aの主張について
(ア)申立人Aの主張の概要
a 甲B1には、比較例2として、トレハロースを含まない調味組成物の発明が記載されており、甲B1に記載された増粘剤及び澱粉の含有量並びに糖度の範囲内でそれぞれの数値を変更して、本件特許発明1、2、4~8及び10で特定される範囲程度にすることは、当業者が適宜なし得た事項であって、格別な効果を奏するものともいえない。
b 上記(1)アの甲B1発明について、甲B1に記載された増粘剤及び澱粉の含有量並びに糖度の範囲内でそれぞれの数値を変更して、本件特許発明9及び11で特定される範囲程度にすることは、当業者が適宜なし得た事項であって、格別な効果を奏するものともいえない。
(イ)主張の検討
a 上記(ア)aについて
比較例2から引用発明を認定しても、当業者であれば、甲B1に記載された技術的事項からは、トレハロースを含有させることが動機付けられるものであり、トレハロースを含有させることなく増粘剤及び澱粉の含有量やブリックスに着目して、本件特許発明1、2、4~8及び10の構成とすることが動機付けられるとはいえない。
b 上記(ア)bについて
上記(1)イ(ウ)b及び(オ)b(b)で相違点B1-9-1及びB1-11-2について述べたとおりであって、当業者が容易になし得たものとはいえない。
c まとめ
よって、効果について検討するまでもなく、申立人Aの上記主張はいずれも採用できない。
イ 令和4年4月28日付け意見書における申立人Bの主張について
(ア)申立人Bの主張の概要
a 甲B1には、比較例2として、トレハロースを含まない調味組成物の発明が記載されており、加熱糊化型澱粉に対するガム類の含有量は、甲B2及び甲B4~甲B7のとおり周知技術にすぎず、例えば甲B5や甲B7の実施例から当業者が容易に想到し得ることであり、20℃でのブリックスの数値は、甲B2~甲B6、甲B8及び甲B19のとおり周知技術にすぎないから、甲B1に記載された増粘剤及び澱粉の含有量並びに糖度の範囲内でそれぞれの数値を変更して、本件特許発明1、2、4~8及び10で特定される範囲程度にすることは、当業者が適宜なし得た事項であって、格別な効果を奏するものともいえない。
b 甲B1発明について、上記aと同様に、甲B1に記載された増粘剤及び澱粉の含有量並びに糖度の範囲内でそれぞれの数値を変更して、本件特許発明9及び11で特定される範囲程度にすることは、当業者が適宜なし得た事項であって、格別な効果を奏するものともいえない。
c 甲B3発明A及び甲B3発明Bについて、加熱糊化型澱粉に対するガム類の含有量は、長期保存後の離水及び粘度低下の防止という当然内在している課題も共通する、甲B1、甲B2、甲B5及び甲B7のとおり周知技術にすぎず、例えば甲B5や甲B7の実施例から当業者が容易に想到し得ることであり、20℃でのブリックスの数値は、甲B1~甲B2、甲B4~甲B6、甲B8及び甲B19のとおり周知技術にすぎず、当業者が容易になし得た事項であるから、本件特許発明1、2及び4~11で特定される範囲程度にすることは、当業者が容易に想到し得ることであって、格別な効果を奏するものともいえない。
特に、20℃でのブリックスの数値については、参考資料1(桜井芳人編,「総合食品事典(第六版)」,同文書店,平成2年4月26日第4刷発行,p.96)によれば、液糖のブリックスの最低値は64.7、最高値は77.0であり、甲B10によれば、醤油のブリックスの最低値は30.0、最高値は53.6であるから、甲B3発明A及び甲B3発明Bのブリックスは、67.4×0.45+30.2×0.20≒36.4+α~77.0×0.45+53.6×0.20≒45.4+α(αは澱粉、キサンタンガム、ネイティブジェランガム)といえる。
(イ)主張の検討
a 上記(ア)a及びbについて
上記ア(イ)で検討したとおりであり、周知技術に関する主張について検討しても、加熱糊化型澱粉に対するガム類の含有量の比率について計算すれば、本件特許発明1、2及び4~11と同程度のものであったものや、20℃でのブリックスの数値について、好ましいとして示されている数値や含有成分から推定される数値が、本件特許発明1、2及び4~11と同程度であるものが存在することを単に示したにすぎず、そのことよって、甲B1に記載の比較例2から認定される引用発明や甲B1発明について、本件特許発明1、2及び4~11の構成を備えるようにすることが動機付けられるとはいえない。
b 上記(ア)cについて
上記(2)イ(ア)e(a)及び(エ)bで、相違点B3-1-1及びB3-10-1について述べたとおりであって、当業者が容易になし得たものとはいえず、周知技術に関する主張については、上記aで述べたとおりである。
また、申立人Bは、甲B3発明A及び甲B3発明Bの20℃でのブリックスについて、参考資料1及び甲B10から、その上限値及び下限値を算出しているが、甲B3発明A及び甲B3発明Bの液糖及び醤油のブリックスが特定されたものではないし、澱粉、キサンタンガム及びネイティブジェランガムのブリックスについては全く不明であるから、実際の数値を明らかにしたものとはいえない。
c まとめ
よって、効果について検討するまでもなく、申立人Bの上記主張はいずれも採用できない。
ウ 令和4年4月27日付け意見書における申立人Cの主張について
(ア)申立人Cの主張の概要
a 甲B1発明について、甲B1に記載される「加工でんぷん」及び「キサンタンガム」は、液体調味料において粘度の調整や具材への絡み付きの調整をし、保水力を維持するものとして従前より慣用的に用いられているものであり、ガム類と加熱糊化型澱粉との含有量をそれぞれ調整することも、いずれか一方に対する他方の含有割合を調整することも文献を示すまでもなく慣用的に行われていることであるから、本件特許発明1、2及び4~11で特定される含有量及び比率にすることは、その目的に応じて当業者が適宜なし得た事項であり、本件特許明細書には、ガム類と加熱糊化型澱粉の比率に関する数値範囲について、顕著な効果を含めた技術的意義は示されておらず、格別な効果を奏するものともいえない。
また、トレハロースについても、本件特許明細書から、トレハロースを含有したものに比べて、含有しない場合に顕著な効果を奏することは何ら示されていないから、トレハロースを含有するものを除くことも、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、20℃でのブリックスについては、実質的な相違点でないか、本件特許明細書には、20℃でのブリックスに関する数値範囲について、顕著な効果を含めた技術的意義は示されておらず、格別な効果を奏するものともいえない上、寿司ネタなどの具材への付着性や離水を考慮した甲C5の試験区「F」における20℃でのブリックスが、一般財団法人 食品環境検査協会による試験成績証明書によれば46.1°Bxであって、本件特許発明11で特定する数値範囲に相当するから、本件特許発明1、2及び4~11で特定される20℃でのブリックスとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
b 甲B3発明A及び甲B3発明Bについて、甲B3に、粘度を付与するために増粘剤と共に加工澱粉を併用させることが多いことや、使用目的などを考慮して澱粉類と増粘剤などの種類、使用量を適宜選択して加えればよいことが記載されているから、本件特許発明1、2及び4~10で特定される含有量及び比率にすることは、当業者が適宜なし得た事項であり、本件特許明細書には、ガム類と加熱糊化型澱粉の比率に関する数値範囲について、顕著な効果を含めた技術的意義は示されておらず、格別な効果を奏するものともいえない。
また、20℃でのブリックスについては、上記aで述べたとおり、実質的な相違点でないか、本件特許発明1、2及び4~11で特定される20℃でのブリックスとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
c 本件特許発明1、2及び4~11は、上記a及びbのとおり、甲B1発明又は甲B3発明A及び甲B3発明Bのいずれからも当業者が容易に想到し得たものであるから、甲B1及び甲B3との組合せからも当業者が容易に想到し得たものである。
(イ)主張の検討
申立人Cの上記a及びbの主張はいずれも、各相違点について慣用的に行われている事項であるとか、適宜なし得た事項であるという一般的な指摘にすぎず、本件特許発明1、2及び4~11が顕著な効果を奏するものではないから、当業者が容易になし得たものであるというものに留まる。
また、上記cの主張も、上記a及びbの主張のとおりであることを前提にしたものにすぎない。
よって、申立人Cの上記主張はいずれも採用できない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)には、理由がない。
3 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
前記第2のとおり、訂正前の請求項3は削除されたため、請求項3を対象とする申立理由はいずれも理由がない。
したがって、本件特許発明1、2及び4~11を対象とする申立理由について以下検討する。
(1)申立理由B8(サポート要件)及び申立理由C4(サポート要件)について
ア 本件特許発明の解決しようとする課題
本件特許明細書の記載、特に【0006】の記載からみて、本件特許発明1、2及び4~11の解決しようとする課題は、「製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品及びその製造方法」を提供することにあると認める。
イ 判断
本件特許明細書【0002】の背景技術、【0005】~【0006】の発明が解決しようとする課題、【0007】の課題を解決するための手段及び【0016】の発明の効果には、パンや弁当、おにぎりなどの調味のため使用される液状食品は、調味した後、パンや米飯にすぐに染み込んでしまわないという機能性が求められているところ、酸性液状食品に澱粉を含有させて粘性を上げて染み込み難くするためには、冷水膨潤型澱粉では、製造工程の初期段階で増粘してしまい製造適性に劣り、加熱糊化型澱粉では、長期保存後の粘性を維持できなどの課題があったが、加熱糊化型澱粉と特定のガム類を一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することで、これらの課題を解決し、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつ、パンや米飯に染み込み難い液状食品を提供できることが記載されている。
そして、【0017】~【0035】の発明を実施するための形態、特に【0020】には、酸性液状食品の粘度に関して、染み込み難さと関連した好ましい粘度範囲及びその測定方法について、【0021】及び【0028】~【0029】には、酸性液状食品のブリックスに関して、長期保存後の離水、粘度低下の防止及び染み込み難さと関連した好ましい範囲、その測定方法、糖類を配合することで調節できることやその好ましい含有量について、【0023】~【0025】には、加熱糊化型澱粉に関して、酸性液状食品の製造適性と関連した冷水膨潤型澱粉との違いの説明、加熱糊化型澱粉の具体例及び製造適性と長期保存後の離水や粘度低下の防止と関連した好ましい含有量について、【0026】~【0027】には、ガム類に関して、長期保存後の離水防止や粘度低下の防止に関連して、キサンタンガム及びグアーガムの少なくとも1種を用いることとその好ましい含有量について、また、【0033】~【0035】には、酸性液状食品の製造方法に関して、製造適性に優れる製造方法について、それぞれ記載されている。
そして、【0036】~【0047】の実施例において、酸性液状食品の澱粉、ガム類の種類及び配合割合と製造方法が記載され、得られた酸性液状食品のブリックス、粘度の測定結果や離水、粘度低下、製造適性及び染み込み難さの評価の結果が記載されており、冷水膨潤型澱粉を用いたり、ガム類を含まないかローカストビーンガム用いたりした場合や、澱粉に対するガム類の割合、ブリックス又は粘度の範囲が好ましい範囲と外れる比較例に比べて、本件特許発明1、2及び4~11の特定事項を備える実施例が、優れた効果を奏することが具体的に示されている。
これらの一定の理論的説明の記載や実施例の記載を考慮すれば、本件特許発明1、2及び4~11の酸性液状食品及びその製造方法を採用することで、上記アの課題を解決できることが理解できる。
したがって、本件特許発明1、2及び4~11は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであるから、本件特許発明1、2及び4~11は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立理由B8(サポート要件)について
a 申立人Bの主張の概要
(a)本件特許明細書【0023】並びに比較例13及び14から理解できるとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明において冷水膨潤型澱粉を用いると課題を解決できないことが明記されているのに対し、加熱糊化型澱粉と併用する場合も含み、冷水膨潤型澱粉を含有する場合に課題を解決できることは一切記載されていないため、冷水膨潤型澱粉を含有する場合は、課題を解決できないことが明白であるのに、本件特許発明は、冷水膨潤型澱粉を含有する場合を包含している。
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
(b)本件特許明細書【0024】や【0037】には、本件特許発明においては加熱糊化型澱粉として加工澱粉を用いることが記載され、実施例でも加工澱粉を使用しているのに対し、加熱糊化型澱粉である天然澱粉を用いた場合にも課題を解決できることは一切記載されていないが、本件特許発明は、加熱糊化型澱粉として天然澱粉も包含している。
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
(c)比較例7は、キサンタンガム/澱粉=0.025であること以外は、訂正前の請求項1、2及び4~8の発明特定事項を満たしている。
そして、訂正前の請求項1の「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり」における「0.03」は、有効数字が1~2桁と考えられるため、「0.025~0.034」を意味するものと解するのが自然であるから、訂正前の請求項1、2及び4~8は、比較例7を包含しているといえるところ、比較例7は、離水と粘度低下の評価結果が×であり、課題を解決できないものである。
したがって、訂正前の請求項1、2及び4~8は、課題を解決できない発明を包含している。
b 主張の検討
(a)上記a(a)及び(b)について
本件特許明細書には、上記イで述べたとおり、冷水膨潤型澱粉ではなく、加熱糊化型澱粉とキサンタンガム及び/又はグアーガムを一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって課題を解決できることが説明されている。
そして、澱粉として冷水膨潤型澱粉を用いることや加熱糊化型澱粉と併用して用いることは記載されていないから、当業者であれば、本件特許発明の酸性液状食品に冷水膨潤型澱粉が含まれるとは理解しないし、仮に、冷水膨潤型澱粉を用いるとしても、課題を解決できる範囲内の量で用いることを理解するといえる。
また、加熱糊化型澱粉としては、加工澱粉を用いることが説明されているのだから、当業者であれば、本件特許発明の酸性液状食品の加熱糊化型澱粉は、加工澱粉であると理解できる上、冷水膨潤型澱粉と比較した説明から、天然澱粉でも課題を解決できると理解するといえる。
(b)上記a(c)について
本件特許発明1、2、4~9及び11は、ガム類の含有量が、加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下と特定されているところ、比較例7を包含しないことは明らかである。
また、本件特許発明10は、ガム類の含有量が、加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上と特定されているが、この値が0.025質量部である比較例7は、比較例として示されているのだから、本件特許発明10にも包含されていないことは明らかである。
(c)まとめ
よって、申立人Bの上記主張はいずれも採用できない。
(イ)申立理由C4(サポート要件)について
a 申立人Cの主張の概要
本件特許発明は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上」であるか、「20℃での粘度が3,000mPa・s以上70,000mPa・s以下」であることが特定されている。
それに対し、実施例には、20℃での粘度が「2,500mPa・s」、「3,000mPa・s」又は「70,000mPa・s」である酸性液状食品は記載されていないから、本件特許発明は、課題が解決できることを当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている。
b 主張の検討
上記イで述べたとおり、本件特許明細書【0020】に、酸性液状食品の粘度に関して、染み込み難さと関連した好ましい粘度範囲について記載されている。
また、実施例においても、実施例1の「2,805mPa・s」から実施例14の「59,200mPa・s」の範囲にわたり、課題を解決できることが示され、一方、「2,500mPa・s」より小さい比較例1の「980mPa・s」や「70,000mPa・s」より大きい比較例11の「87,300mPa・s」では、課題を解決できないことが示されている。
そして、特許請求の範囲で特定されている数値範囲について、上限値や下限値の実施例が存在しないという理由だけでは、サポート要件を満たさないということにはならない。
c まとめ
よって、申立人Cの上記主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B8(サポート要件)及び申立理由C4(サポート要件)は、いずれも理由がない。
(2)申立理由A1(甲A1を主たる引用例とする申立理由)について
申立理由A1-1(新規性)は、訂正前の請求項1、2、4、5及び8を対象とする理由であるところ、本件特許発明1、2、4、5及び8は、いずれも新規性について申し立てられていない訂正前の請求項3の発明特定事項を含むものとなったから、申立理由A1-1(新規性)には、理由がない。
そこで、訂正前の請求項1~8を対象とする申立理由A1-2(進歩性)について検討する。
ア 甲A1に記載された発明
甲A1の実施例4におけるフラワーペースト類の記載からみて(甲A1e)、甲A1には、次の「甲A1発明」が記載されていると認める。
甲A1発明:
「パーム油3重量%にカカオマス6重量%、ソルビタン脂肪酸エステル1重量%、キサンタンガム0.2重量%を添加した油相と、水40重量%、デンプン(水分13重量%)6重量%、ソルビン酸カリウム0.1重量%、水あめ(糖分70重量%、水分30重量%)34.8重量%、小麦粉3重量%、脱脂粉乳(糖分53重量%、水分3.8重量%)5重量%、香料0.2重量%、色素液0.7重量%を混合した水相とを混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、25℃まで冷却して得られる、比重1.15であるフラワーペースト類であって、水相中の糖濃度は34.4重量%であり、フラワーペースト類のpHは5.5、ビスコステスター(リオン(株)製、2号ローター使用)で測定した粘度が、10~30℃において30~90Pa・sである、フラワーペースト類。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲A1発明との対比
甲A1発明の「フラワーペースト類」は、水、デンプン、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まず、pHが5.5で、ペースト状といえるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、澱粉、及びガム類」を含む「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点A1-1-1及びA1-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点A1-1-1:
本件特許発明1は、澱粉が「加熱糊化型澱粉」であって、「前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下」であり、「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下」であると特定しているのに対し、
甲A1発明は、澱粉が「デンプン(水分13重量%)」であって、デンプンの含有量を換算すると、フラワーペースト類全体の5.22重量%(6重量%×0.87)であり、キサンタンガムの含有量について、デンプン1質量部に対する量を換算すると、約0.038質量部(0.2÷5.22)である点。
相違点A1-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲A1発明の「フラワーペースト類」は、「ビスコステスター(リオン(株)製、2号ローター使用)で測定した粘度が、10~30℃において30~90Pa・s(30,000~90,000mPa・s)」であり、「水相中の糖濃度は34.4重量%」である点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点A1-1-1について検討する。
甲A1には、デンプンに関して、天然澱粉やそのエステル化やアルファ化などの化学的、物理的処理を施したものが使用できることが記載されているが(甲A1c)、加熱糊化型澱粉に限定されることを理解できる記載はないから、甲A1発明の「デンプン(水分13重量%)」は、加熱糊化型澱粉であるかは不明である。
また、仮に、甲A1発明の「デンプン(水分13重量%)」が、加熱糊化型澱粉であるか、加熱糊化型澱粉を採用すること自体は容易であるとしても、フラワーペースト類全体に対する量において相違するし、キサンタンガムとの比率も相違する。
そして、甲A1は、フラワーペースト類に着目した技術的事項を開示するものではなく、ファットスプレッドなどの油脂組成物と混合し、比重を特定の範囲内としたクリーム組成物であって(甲A1a)、ベーカリー製品のフィリング用などとして好適に用いられ、食感が適度に重く、しっかりとしたボディー感があるにもかかわらず、口溶けがよく、風味良好であり、コク味、耐熱保型性が良好であるクリーム組成物に関する技術的事項を開示するものである(甲A1b)。
甲A1には、澱粉の添加量について、フラワーペースト類の全組成中、好ましくは4~8重量%であることは記載されているものの(甲A1c)、最終的にクリーム組成物を製造するための一成分であるフラワーペースト類である甲A1発明について着目した上で、含まれている成分のうちデンプン及びキサンタンガムについて、フラワーペースト類全体に対するデンプンの量と、デンプン1質量部に対するキサンタンガムの含有量を変更して、本件特許発明1で特定する範囲となるようにする動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲A1からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、相違点A1-1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲A1に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9は、本件特許発明1から「(但し、トレハロースを含有するものを除く。)」という発明特定事項が削除されたものに相当する。
本件特許発明10は、本件特許発明1について、加熱糊化型澱粉1質量部に対するガム類の含有量を、「0.05質量部以上0.2質量部以下」から「0.03質量部以上」に変更し、20℃でのブリックスを、「30以上」から「35以上70以下」に変更したものに相当する。
そして、本件特許発明11は、本件特許発明1について「(但し、トレハロースを含有するものを除く。)」という発明特定事項を削除し、20℃でのブリックスを、「30以上」から「40以上70以下」に変更したものに相当する。
したがって、本件特許発明9及び11と甲A1発明とは、上記(ア)aの相違点A1-1-1と同様の相違点を有し、この相違点は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
また、本件特許発明10と甲A1発明とは、上記(ア)aの相違点A1-1-1のうち、フラワーペースト類全体に対するデンプンの含有量において相違し、この相違点は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではなく、デンプン1質量部に対するキサンタンガムの質量部を0.03質量部以上としたままで、デンプンの含有量を本件特許発明10で特定する範囲となるように変更する動機付けもない。
よって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明9~11は、甲A1に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書及び令和4年4月27日付け意見書において、上記(ア)aの相違点A1-1-1に関連した事項として、食品に所望の粘度を付与するために、食品中の澱粉に対する増粘剤(ガム類)の量を最適化することは当業者が適宜なし得たことであり、格別の効果を奏されるとも認められない旨主張している。
しかしながら、甲A1及びその他の甲号証並びに当業者の技術常識を参酌しても、酸性液状食品について、所望の粘度を付与するために、澱粉と増粘剤を併用するとともに、澱粉に対する増粘剤の量を最適化することが動機付けられるところはないから、申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A1(甲A1を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(3)申立理由A2(甲A2を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲A2に記載された発明
甲A2の実施例6における試料63(甲A2d)からみて、甲A2には、次の「甲A2発明」が記載されていると認める。
甲A2発明:
「試料全体に占める割合が3質量%となる加工澱粉としてのタピオカ由来のヒドロキシプロピル澱粉(商品名:「いかるが100」、王子コーンスターチ株式会社製)、試料全体に占める割合が1.2質量%となるゼリー強度150のアルカリ処理ゼラチン(商品名:「NC」、新田ゼラチン株式会社製)、試料全体に占める割合が0.3質量%となる酸性多糖類としてのキサンタンガム(市販品)を混合することにより混合物を得た後、試料全体に占める割合が30質量%となる砂糖を上記混合物に添加し、水を加えて80℃で10分間、撹拌加熱することにより、上記混合物が溶解した混合溶液を得て、5℃で一晩(16時間)冷却することにより調製した、食品組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲A2発明との対比
甲A2発明の「ヒドロキシプロピル澱粉」は、本件特許明細書【0024】に「加熱糊化型澱粉としては、・・・ヒドロキシプロピル澱粉」と記載されていることから、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当し、その含有量は、食品組成物全体の3重量%である。
甲A2発明は、「試料全体に占める割合が3質量%となる加工澱粉としてのタピオカ由来のヒドロキシプロピル澱粉」と「試料全体に占める割合が0.3質量%となる酸性多糖類としてのキサンタンガム」を含むところ、キサンタンガムの含有量について、加工澱粉としてのタピオカ由来のヒドロキシプロピル澱粉1質量部に対する量を換算すると、0.1質量部(0.3÷3)である。
そして、甲A2発明の「食品組成物」は、水、ヒドロキシプロピル澱粉、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まないから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点A2-1-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点A2-1-1:
本件特許発明1は、「酸性液状食品」であって、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲A2発明は、「食品組成物」であって、20℃での粘度及びブリックスが不明な点。
b 相違点の検討
甲A2は、加工澱粉、ゼラチン及び酸性多糖類を含み、デザート、フィリング、惣菜、ソース、ジャム又は菓子に用いられる食品組成物であって(甲A2a)、粘りのある伸び、適度な硬さ(ゲル破断強度)及び保形性を有する、もっちり感及び口どけのよさを付与した食品組成物に関するものである(甲A2b)。
そして、加工澱粉及びゼラチンに加え、酸性多糖類を含むことにより、食品組成物中のゼラチンのゲルが脆くなることによって適度な硬さ(ゲル破断強度)及びこれに基づく口どけ感が得られるものと推定されることが記載されているが(甲A2c)、食品組成物が酸性であることや、液状であることの記載はなく、ましてや、20℃での粘度やブリックスに関する記載もないから、相違点A2-1-1は実質的な相違点である。
ここで、甲A2には、食品組成物の用途についてソースやジャムが挙げられているから、液状食品とすることは容易であり、甲A2発明は、酸性多糖類であるキサンタンガムを含むから、酸性の食品と推認することはできる。
しかしながら、甲A2には、目的とする粘りのある伸び、適度な硬さ、保形性や、もっちり感及び口どけのよさに関して、食品組成物中のゼラチンのゲルの破断強度が関連することについての記載はあるものの、粘度及びブリックスが関連するという記載はなく、当業者の技術常識ともいえないから、甲A2発明について、酸性液状食品であって、20℃での粘度やブリックスが本件特許発明1で特定される範囲となるようにする動機付けがあるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲A2からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1と甲A2発明とは、相違点A2-1-1で相違するから、本件特許発明1は、甲A2に記載された発明ではない。
また、相違点A2-1-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明1は、甲A2に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2~4、6及び8は、甲A2に記載された発明ではなく、本件特許発明2及び4~8は、甲A2に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲A2発明とは、上記(ア)aの相違点A2-1-1と同様に、酸性液状食品、20℃での粘度及びブリックスで相違する。
したがって、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲A2に記載された発明ではなく、甲A2に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書及び令和4年4月27日付け意見書において、上記(ア)aの相違点A2-1-1に関連した事項として、甲A2発明の澱粉及びガム類並びに糖類の含有量が本件特許明細書の実施例5及び11と同等であることを根拠に、甲A2発明の20℃での粘度及びブリックスも、本件特許発明1と同等である旨主張している。
しかしながら、甲A2発明は、澱粉、ガム類及び糖類以外の成分も含むものであり、特に、上記(ア)bでも述べたとおり、さらにゼラチンを含み、そのゲル破断強度を調整したものといえるから、20℃での粘度及びブリックスが本件特許発明1、2及び4~11と同等であるとはいえず、申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A2(甲A2を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(4)申立理由A3(甲A3を主たる引用例とする申立理由)について
申立理由A3-1(新規性)は、訂正前の請求項1、2、4及び8を対象とする理由であるところ、本件特許発明1、2、4及び8は、いずれも新規性について申し立てられていない訂正前の請求項3の発明特定事項を含むものとなったから、申立理由A3-1(新規性)には、理由がない。
そこで、訂正前の請求項1~8を対象とする申立理由A3-2(進歩性)について検討する。
ア 甲A3に記載された発明
甲A3の実施例4における処方4のフラワーペーストからみて(甲A3c)、甲A3には、次の「甲A3発明」が記載されていると認める。
甲A3発明:
「小麦粉50部、コーンスターチ30部、上白糖150部、水飴100部、脱脂粉乳60部、キサンタンガム1部、モノグリセライド2部、クエン酸0.5部、ソルビン酸0.5部を仕上がり量が1000部となる水に溶解又は分散しながら、60℃まで加温し、TKホモミキサー(特殊機化工業製)9000rpmにて撹拌下、予め加温溶解したマーガリン110部を添加し、10分間乳化し、ガス直火にてヘラで撹拌しながら5分間加熱した後、約70℃まで冷却後、室温まで放冷して製造した、フラワーペースト。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲A3発明との対比
甲A3発明の「コーンスターチ」は、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」と、「澱粉」である点で一致し、その含有量は、フラワーペースト全体の3重量%(30÷1000)である。
甲A3発明は、「コーンスターチ30部」と「キサンタンガム1部」を含むところ、キサンタンガムの含有量について、コーンスターチ1質量部に対する量を換算すると、0.1質量部(0.3÷3)である。
そして、甲A3発明の「フラワーペースト」は、水、コーンスターチ、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まず、ペースト状といえるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、澱粉、及びガム類」を含む「液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点A3-1-1及びA3-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、澱粉、及びガム類を含む、液状食品であって、
前記澱粉の含有量が、前記液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点A3-1-1:
本件特許発明1は、澱粉が「加熱糊化型澱粉」であり、液状食品が「酸性液状食品」であって、「前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下」であると特定しているのに対し、
甲A3発明は、澱粉が「コーンスターチ」であり、液状食品が「フラワーペースト」であって、「コーンスターチ」の含有量が、「フラワーペースト」の仕上がり量1000部に対し30部である点。
相違点A3-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲A3発明の「フラワーペースト」は、20℃での粘度及びブリックスが不明な点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点A3-1-2について検討する。
甲A3は、小粒子澱粉を原料とする、特定範囲の架橋エーテル化又は架橋エステル化加工澱粉を含有するフラワーペーストなどのペースト状食品に関し(甲A3a)、ぼそつきやもたつきがなく、滑らかで、口溶けの良い優れた食感を有する、耐熱性及び冷凍・冷蔵保存時の食感持続性の高いペースト状食品に関するものである(甲A3b)。
そして、甲A3発明を認定した処方4は、その他の処方1~3と異なり、試料澱粉にかえて加工澱粉ではないコーンスターチを含むものであることから理解できるとおり、対照処方である。
甲A3には、20℃での粘度やブリックスに関する記載はなく、対照処方である甲A3発明について、ぼそつきやもたつきがなく、滑らかで、口溶けの良い優れた食感を有する、耐熱性及び冷凍・冷蔵保存時の食感持続性の高いペースト状食品とするために、コーンスターチにかえて甲A3記載の所定の加工澱粉を用いるのではなく、20℃での粘度やブリックスを調整して、本件特許発明1で特定する範囲となるようにする動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲A3からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、相違点A3-1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A3に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲A3に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲A3発明とは、上記(ア)aの相違点A3-1-2と同様に、20℃での粘度及びブリックスで相違し、この相違点は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲A3に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書及び令和4年4月27日付け意見書において、上記(ア)aの相違点A3-1-2に関連した事項として、上記(3)イ(エ)と同様の旨主張している。
しかしながら、甲A3発明は、澱粉、ガム類及び糖類以外の成分も含むものであるから、20℃での粘度及びブリックスが本件特許発明1、2及び4~11と同等であるとはいえず、申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A3(甲A3を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(5)申立理由A4(甲A4を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲A4に記載された発明
甲A4の実施例1におけるフラワーペースト類の記載からみて(甲A4d)、甲A4には、次の「甲A4発明」が記載されていると認める。
甲A4発明:
「パーム油5質量%にソルビタン脂肪酸エステル0.5質量%とキサンタンガム0.2質量%を添加し油相とし、水45質量%、デンプン(水分13質量%)8質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖異性化液糖(糖分75質量%、水分25質量%)35質量%、小麦粉3質量%、脱脂粉乳(糖分53質量%、水分3.8質量%)1.1質量%、乾燥全卵(糖分4.1質量%、水分3.2質量%)2質量%、香料0.1質量%を混合し水相とし、この油相と水相とを混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、22℃まで冷却して得られる、比重1.15であるフラワーペースト類であって、水相中の糖濃度は32.9質量%であり、フラワーペースト類のpHは5.5であり、ビスコステスター(リオン(株)製、2号ローター使用)で粘度を測定したところ、10~30℃において20~50Pa・sである、フラワーペースト類。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲A4発明との対比
甲A4発明の「フラワーペースト類」は、水、デンプン、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まず、pHが5.5で、ペースト状といえるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、澱粉、及びガム類」を含む「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点A4-1-1及びA4-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点A4-1-1:
本件特許発明1は、澱粉が「加熱糊化型澱粉」であって、「前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下」であり、「前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下」であると特定しているのに対し、
甲A4発明は、澱粉が「デンプン(水分13重量%)」であって、デンプンの含有量を換算すると、フラワーペースト類全体の6.96重量%(8重量%×0.87)であり、キサンタンガムの含有量について、デンプン1質量部に対する量を換算すると、約0.029質量部(0.2÷6.96)である点。
相違点A4-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲A1発明の「フラワーペースト類」は、「ビスコステスター(リオン(株)製、2号ローター使用)で粘度を測定したところ、10~30℃において20~50Pa・s(20,000~50,000mPa・s)」であり、「水相中の糖濃度は32.9重量%」である点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点A4-1-1について検討する。
甲A4は、上記(2)で検討した甲A1と同様に、フラワーペースト類に着目した技術的事項を開示するものではなく、油脂組成物と混合し、比重を特定の数値以下としたクリーム組成物に関するものであり(甲A4a)、相違点A4-1-1は、上記(2)イ(ア)aの相違点A1-1-1と同様の相違点である。
c まとめ
よって、相違点A4-1-2について検討するまでもなく、上記(2)イ(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1は、甲A4に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~11について
本件特許発明2及び4~11についても、上記(2)イ(イ)及び(ウ)で検討したのと同様の理由により、甲A4に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書において、上記(ア)aの相違点A4-1-1に関連した事項として、甲A4に、澱粉やキサンタンガムなどの安定剤、それぞれの好ましい含有量として示される範囲内で適宜調整することは容易である旨主張している。
しかしながら、上記(2)イ(ア)bで述べたとおり、当業者が容易になし得たものとはいえず、申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A4(甲A4を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(6)申立理由A5(甲A5を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲A5に記載された発明
甲A5の請求項1及び3からみて(甲A5a)、甲A5には、次の「甲A5発明」が記載されていると認める。
甲A5発明:
「増粘剤を含み、糖度(Bx)が55以下、粘度が10,000mPa・s以上であり、pHが3.0以上、4.5以下である、調味ソース。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲A5発明との対比
甲A5発明の「調味ソース」は、pHが3.0以上、4.5であるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」に相当する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点A5-1-1及びA5-1-2を有する。
一致点:
「酸性液状食品。」である点。
相違点A5-1-1:
本件特許発明1は、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガム」である「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」と特定しているのに対し、
甲A5発明は、「増粘剤」を含む「調味ソース」である点。
相違点A5-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲A5発明の「調味ソース」は、「糖度(Bx)が55以下、粘度が10,000mPa・s以上」であるが、測定温度は特定されていない点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点A5-1-1について検討する。
甲A5には、増粘剤として加工澱粉が例示され、その含有量は1~20重量%程度であることが記載され、調味ソースに、ゲル又はゲルに近い物性にするため、寒天を添加してもよく、その含有量は0.05~3重量%の範囲が好ましいことが記載されている(甲A5b)。
しかしながら、甲A5には、増粘剤として特に加熱糊化型澱粉を選択し、ゲル又はゲルに近い物性にするため、寒天ではなく、例示すらされていないキサンタンガム及び/又はグアーガムを選択し、それらの含有量や比率を本件特許発明1で特定する範囲となるようにし、かつ、トレハロースを含有しないものと特定する動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲A5からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、相違点A5-1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A5に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲A5に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲A5発明とは、加熱糊化型澱粉1質量部に対するガム類の含有量の具体的数値については異なるものの、上記(ア)aの相違点A5-1-1と同様の相違点を有し、この相違点は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲A5に記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書において、上記(ア)aの相違点A5-1-1に関連した事項として、甲A5に記載の寒天にかえてガム類などの増粘多糖類を使用し、調味ソースの焼き込み耐性などを保つために、適切な範囲に調整することは容易である旨主張している。
しかしながら、上記イ(ア)bで述べたとおり、当業者が容易になし得たものとはいえず、申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A5(甲A5を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(7)申立理由A6(甲A6を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲A6に記載された発明
甲A6の請求項1からみて(甲A6a)、甲A6には、次の「甲A6発明」が記載されていると認める。
甲A6発明:
「増粘剤として化工澱粉・増粘多糖類・ゼラチンを使用し、糖度を45~55%に調整することにより、ゼラチンによるゲル構造に冷凍耐性を付与した液体調味料。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲A6発明との対比
甲A6発明の「化工澱粉」、「増粘多糖類」及び「液体調味料」は、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」、「キサンタンガム及び/又はグアーガム」である「ガム類」及び「酸性液状食品」と、それぞれ「澱粉」、「多糖類」及び「液状食品」である点で共通する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点A6-1-1及びA6-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、澱粉、及び多糖類を含む、液状食品。」である点。
相違点A6-1-1:
本件特許発明1は、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガム」である「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」と特定しているのに対し、
甲A6発明は、「増粘剤として化工澱粉・増粘多糖類・ゼラチン」を含む「液体調味料」である点。
相違点A6-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲A6発明の「液体調味料」は、「糖度を45~55%に調整」するものであるが、測定温度は特定されておらず、20℃での粘度も不明な点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点A6-1-1について検討する。
甲A6には、加工澱粉・増粘多糖類・ゼラチンを含む液体調味料を95℃まで加熱膨潤させることが記載されているから(甲A6c)、甲A6発明の加工澱粉は、加熱糊化型澱粉といえる。そして、加工澱粉を液体調味料に2~5%添加し増粘させること、増粘多糖類としてキサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、カラギーナンなどが例示され、これらを澱粉により増粘させた液体調味料の安定剤として0.05~0.5%添加することも記載されている(甲A6c)。
しかしながら、甲A6には、増粘多糖類として、キサンタンガム及び/又はグアーガムを選択することの記載はなく、加工澱粉、増粘多糖類それぞれの液体調味料に対する添加量は記載されているものの、加工澱粉を基準とする増粘多糖類の添加量に関する記載はない。
そして、甲A6は、生肉・生魚などに用い、からめる工程では比較的滑らかで作業性が良く、冷凍・解凍による粘度の低下を起こさず、解凍した時には高粘度に変化し、肉汁の流出と調味料の流れ落ちを防止できる粘性を持った液体調味料に関するものであり(甲A6b)、加工澱粉及び増粘多糖類に加えてゼラチンも使用し、糖度を45~55%に調整することにより、ゼラチンによるゲル構造に冷凍耐性を付与したものである(甲A6a)。
そうすると、甲A1、甲A4及び甲A5に記載されるように((甲A1d)、(甲A4c)及び(甲A5c))、食品の保存性を向上させるためにそのpHを酸性域に調整することは、当業者が通常行うことであるとしても、冷凍耐性を備えたままで、酸性の調味料とすることが、当業者が容易になし得たことともいえない。
したがって、甲A6発明について、液体調味料を酸性の調味料とし、増粘多糖類をキサンタンガム及び/又はグアーガムに特定するとともに、加工澱粉の含有量と加工澱粉1質量部に対するキサンタンガム及び/又はグアーガムの含有量を特定し、トレハロースを含まないものとすることが動機付けられるところはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲A6からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、相違点A6-1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A6に記載された発明並びに甲A1、甲A4、甲A5及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲A6に記載された発明並びに甲A1、甲A4、甲A5及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、加熱糊化型澱粉1質量部に対するガム類の含有量の具体的数値については異なるものの、甲A6発明とは、上記(ア)aの相違点A6-1-1と同様の相違点を有し、この相違点は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲A6に記載された発明並びに甲A1、甲A4、甲A5及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書において、上記(ア)aの相違点A6-1-1に関連した事項として、食品の保存性を向上させるためにそのpHを酸性域に調整することは、甲A1、甲A4及び甲A5にも記載されているとおり、当業者が通常行うことである旨主張している。
しかしながら、仮に、甲A6発明の液体調味料を酸性の調味料とすることは容易であるとしても、そのことによって、加工澱粉の含有量、増粘多糖類の種類及び加工澱粉に対する含有量を特定することとが容易となるものではないから、申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A6(甲A6を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(8)申立理由B2(甲B2を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲B2に記載された発明
甲B2の請求項2の製造方法により得られる調味液として(甲B2a)、甲B2には、次の「甲B2発明」が記載されていると認める。
甲B2発明:
「下記の原料を用いて得られる、高粘性を有する調味液。
醤油18.0、酒類10.0、食塩4.4、スクロース18.0、マルトース15.0、デキストリン7.0、キサンタンガム0.1~0.2、とうもろこしでんぷん1.0~2.0、化工でんぷん1.0~2.0、調味料(アミノ酸等)2.0、香辛料1.0、肉エキス1.0、着色料1.8、香料0.3及び合計100.0となる量の原料水。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲B2発明との対比
甲B2発明の「化工でんぷん」は、甲B2の請求項1の記載から、加熱を行うことで膨潤するものと理解できるから、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当し、その含有量は、高粘性を有する調味液全体の1.0~2.0重量%である。
甲B2発明は、「化工でんぷん1.0~2.0」と「キサンタンガム0.1~0.2」を含むところ、キサンタンガムの含有量について、化工でんぷん1質量部に対する量を換算すると、0.05~0.2質量部(0.1~0.2÷1.0~2.0)である。
そして、甲B2発明の「高粘性を有する調味液」は、水、化工でんぷん、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まないから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点B2-1-1及びB2-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B2-1-1:
本件特許発明1は、液状食品が「酸性液状食品」であって、「前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下」であると特定しているのに対し、
甲B2発明は、液状食品が「高粘性を有する調味液」であって、「化工でんぷん」の含有量が「高粘性を有する調味液」に1.0~2.0である点。
相違点B2-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B2発明の「高粘性を有する調味液」は、20℃での粘度及びブリックスが不明な点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点B2-1-2について検討する。
甲B2には、高粘性を有する調味液の製造方法について、高糖度(Bx45~65)、塩分濃度3.0~8.0%を満たす条件下で80~95℃、10~20分間の加熱を行うことで、未膨潤のものを残すよう構成したことが記載されているが(甲B2a)、得られた調味液が酸性であることや、調味液の糖度やその測定条件については記載されていない。
ここで、甲B2発明は、醤油18.0及び酒類10.0含むところ、醤油のpHは4.7~5.0程度であり(甲B10a)、酒類のpHは3.2~4.4程度であり(甲B10b)、甲B1及び甲B5~甲B8(甲A5)のとおり((甲B1f)、(甲B5c)、(甲B6c)、(甲B7d)及び(甲A5a))、酸性調味液は周知技術であるから、酸性調味料であると推認される。また、「高糖度(Bx45~65)」と記載されているから、甲B9の記載も参酌すれば(甲B9a)、20℃でのブリックスが45~65を意味し、得られた高粘性を有する調味液も同様な数値であると推認される。
しかしながら、甲B2には、高粘性を有する調味液の粘度については、高粘性としか記載されていないから、20℃での粘度は不明である。
甲B3、甲B14及び甲B17には、調味液における高粘性が3000mPa・s以上であることや、とろみ食材における高粘度域が約8000mPa・s以上であることが示されているが((甲B3a)、(甲B14a)及び(甲B17a)~(甲B17b))、甲B2は、未膨潤のものを残すことで具材からでるドリップを吸収し、少糖類を用いて高糖度条件を調整することで、高粘性であるにもかかわらず滑らかな物性、サラッとした口触りの官能的に優れた調味液としたものであるから(甲B2b)、甲B2発明の高粘性を有する調味液の粘度について推認することはできないし、20℃での粘度について調節することを動機付けられるところもない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲B2からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1と甲B2発明とは、相違点B2-1-2で相違するから、本件特許発明1は、甲B2に記載された発明ではない。
また、相違点B2-1-2は、当業者が容易になし得たものとはいえないから、相違点B2-1-1について検討するまでもなく、甲B2に記載された発明並びに甲B3、甲B9、甲B10、甲B14及び甲B17に記載の技術常識や甲B1及び甲B5~甲B8に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2、4~6及び8は、甲B2に記載された発明ではなく、本件特許発明2及び4~8は、甲B2に記載された発明並びに甲B3、甲B9、甲B10、甲B14及び甲B17に記載の技術常識や甲B1及び甲B5~甲B8に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲B2発明とは、上記(ア)aの相違点B2-1-2と同様に、20℃での粘度及びブリックスで相違する。
したがって、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲B2に記載された発明ではなく、甲B2に記載された発明並びに甲B3、甲B9、甲B10、甲B14及び甲B17に記載の技術常識や甲B1及び甲B5~甲B8に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書において、上記(ア)aの相違点B2-1-2に関連した事項として、調味液における高粘性が3000~4000mPa・s以上であることや、とろみ食材における高粘度域が約8000mPa・s以上であることは、甲B3、甲B14及び甲B17から周知技術又は技術常識といえるため、甲B2の高粘性を有する調味液も、20℃での粘度が3000~4000mPa・s以上又は8000mPa・s以上であるか、仮にそうでなくても、嗜好や料理の種類などに合わせて適宜、粘性を高めることは設計的事項にすぎないか、当業者に容易想到である旨主張している。
しかしながら、上記(ア)bで述べたとおり、甲B2発明の高粘性を有する調味液は、未膨潤のものを残すよう構成したことに特徴を有するものであるから、粘度が周知技術又は技術常識のとおりということはできないし、仮に、粘度を調整することが容易であるとしても、本件特許発明1、2及び4~11で特定する範囲にすることを動機付けられるところはないから、申立人Bの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B2(甲B2を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(9)申立理由B4(甲B4を主たる引用例とする申立理由)及び
申立理由C1(甲C1を主たる引用例とする申立理由)について
甲B4と甲C1は、同一の特許文献のため、以下では、これらの記載事項をまとめて甲B4で代表して示して検討する。
ア 甲B4に記載された発明
甲B4の実施例9からみて(甲B4d)、甲B4には、次の「甲B4発明」が記載されていると認める。
甲B4発明:
「水21.80、砂糖15.00、味噌18.00、醤油5.00、豆板醤2.00、ゴマ油2.00、菜種サラダ油35.00、ソルビタン脂肪酸エステル0.10、キサンタンガム0.10及び澱粉類(松谷化学工業(株)パインエース1)1.00、計100.00からなり、粘度(センチポイズ/20℃)が6,000である、炒め物用調味料。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲B4発明との対比
甲B4発明の「澱粉類(松谷化学工業(株)パインエース1)」は、甲B11の【0026】に「水約100gで水溶きした加工澱粉(松谷化学製「パインエース#1」)(表1の量)を加えて湯煎にて加熱し、80℃達温から3分間維持して糊化させた」と記載されていることから理解されるとおり、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当するといえ、その含有量は、炒め物用調味料全体の1重量%である。
甲B4発明は、「澱粉類(松谷化学工業(株)パインエース1)1.00」と「キサンタンガム0.10」を含むので、キサンタンガムの含有量は、澱粉類1質量部に対して0.1質量部である。
そして、甲B4発明の「炒め物用調味料」は、水、加熱糊化型澱粉、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まないから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点B4-1-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B4-1-1:
本件特許発明1は、液状食品が「酸性液状食品」であって、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B4発明は、液状食品が「炒め物用調味料」であって、「粘度(センチポイズ/20℃)が6,000」であるが、20℃でのブリックスは不明な点。
b 相違点の検討
甲B4に「粘度はBM型粘度計を用いローターNo.3、12rpmの条件で5回転目の値を測定」(甲B4d)と記載されているから、甲B4発明の粘度は、本件特許明細書【0020】とは異なる条件で測定した場合の値であるものの、本件特許明細書に記載された条件よりも速い回転速度で測定した値である上、20℃での測定結果が本件特許発明1で特定される2,500mPa・sよりかなり大きい6,000mPa・sであるから、本件特許明細書に記載の条件で測定すれば、2,500mPa・s以上であると解するのが自然である(甲B3及び甲B20にも、擬塑性流動体である高粘性調味液は、剪断速度が大きくなると見かけの粘度が減少することが示されおり((甲B3c)及び(甲B20a))、技術常識であったといえる。)。
しかしながら、甲B4には、20℃でのブリックスに関する記載はなく、甲B2、甲B8(甲A5)及び甲B19(甲C4)にあるように((甲B2a)、(甲A5a)及び(甲C4a))、20℃でのブリックスが30以上の調味料が周知技術であるとしても、甲B4発明に含まれる成分の記載のみから、20℃でのブリックスが自明な値として定まるものでもないから、具体的な数値は不明といわざるを得ず、相違点B4-1-1は、実質的な相違点である。
そして、甲B4の炒め物用調味料は、食用油脂と脂肪酸エステルなどと、任意にキサンタンガムと、ペクチン又は澱粉類を含有し、粘度が1000~7000センチポイズ/20℃であり、平均油滴粒子径が30μm以下である、O/W型乳化組成物であって(甲B4a)、炒め物調理の工程を簡略化でき、調理時の作業性を改善し、良好な品質の炒め物料理を与える調味料に関するものである(甲B4b)。
このように、甲B4には、目的とする調味料とするため、粘度に関する条件は記載されているものの、調味料が酸性であることや、調味料のブリックスに関する記載はない。
ここで、甲B4発明は、醤油5.00を含むところ、醤油のpHは4.7~5.0程度であり(甲B10a)、甲B1及び甲B5~甲B8のとおり、酸性調味液は周知技術である。また、甲C3及び甲C4には、それぞれ液状調味料のブリックスが40以上70以下及び35.0~80.0であることが記載されており((甲C3a)及び(甲C4a))、甲C11~甲C14に示されるとおり((甲C11a)、(甲C12a)、(甲C13a)及び(甲C14a))、離水を抑制するためにブリックスを調整することやゲル化剤を使用することは周知技術又は技術常識であるともいえる。
しかしながら、甲B4発明について、粘度及び平均油滴粒子径の条件を満たすO/W型乳化組成物であることを維持した上で、酸性の調味液と特定するとともに、20℃でのブリックスに着目して、含まれる成分を調整するなどして、本件特許発明1で特定される範囲となるようにすることが動機付けられるところはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、キサンタンガム及び澱粉類とを必須の成分ともしない甲B4からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1と甲B4発明とは、相違点B4-1-1で相違するから、本件特許発明1は、甲B4に記載された発明ではない。
また、相違点B4-1-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明1は、甲B4に記載された発明並びに甲B3、甲B10及び甲B20に記載の技術常識や甲B1、甲B2、甲B5~甲B8及び甲B19に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲B4に記載された発明並びに甲C3又は甲C4に記載された事項あるいは甲C11~甲C14に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲B4に記載された発明ではなく、甲B4に記載された発明並びに甲B3、甲B10及び甲B20に記載の技術常識や甲B1、甲B2、甲B5~甲B8及び甲B19に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲B4に記載された発明並びに甲C3又は甲C4に記載された事項あるいは甲C11~甲C14に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲B4発明とは、上記(ア)aの相違点B4-1-1と同様に、酸性液状食品及び20℃でのブリックスで相違する。
したがって、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲B4に記載された発明ではなく、甲B4に記載された発明並びに甲B3、甲B10及び甲B20に記載の技術常識や甲B1、甲B2、甲B5~甲B8及び甲B19に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲B4に記載された発明並びに甲C3又は甲C4に記載された事項あるいは甲C11~甲C14に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)申立人の主張について
a 申立人Bの主張について
(a)上記(ア)aの相違点B4-1-1に関連した特許異議申立書における申立人Bの主張の概要
分析試験成績書(甲B15)には、甲B4発明のpHが5.0であり、本件特許明細書に記載の測定条件による20℃での粘度は15000mPa・sであり、20℃でのブリックスは43.9であったことが記載されている(甲B15a)。
また、甲B4の課題に水分の飛び跳ねがあるところ(甲B4c)、調味料の水分を調整するために、固形分濃度を調整することは設計事項にすぎないし、甲B2、甲B8及び甲B19にあるとおり、20℃でのブリックスが30以上の調味料は周知技術であるから、甲B4発明の調味料の20℃でのブリックスを30以上とすることは当業者に容易想到である。
(b)主張の検討
特許異議申立書には、甲B15に示される数値が、甲B4の実施例9に従って製造した炒め物用調味料のものであると記載されている。しかしながら、甲B4からは、配合成分(重量%)と、乳化条件として、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、回転数10,000rpm、撹拌時間30分及び常温で乳化処理を行ったことが理解できるものの(甲B4d)、具体的にどのような材料を用いたのか(砂糖、味噌、醤油、豆板醤、ゴマ油、菜種サラダ油及びキサンタンガムが市販品であるのかや、例えば味噌であれば赤味噌、白味噌などの種類は示されていない。)、材料をどのような順番で混合したのかなどの詳細な条件は不明であって理解できない。したがって、甲B15によって、甲B4の実施例9から認定した甲B4発明のpH、粘度及びブリックスが明らかにされたということはできない。
また、甲B4に水分の飛び跳ねに関する課題が記載されていても、甲B4発明とすることで課題を解決したものであるから、ことさらブリックスなどの固形分濃度に着目するとはいえないし、調味料におけるブリックスの周知技術が、甲B4発明について、20℃でのブリックスを本件特許発明1、2及び4~11で特定する範囲にすることを動機付けるものともいえない。
よって、申立人Bの上記主張は採用できない。
b 申立人Cの主張について
(a)上記(ア)aの相違点B4-1-1に関連した特許異議申立書における申立人Cの主張の概要
試験成績証明書(甲C2)には、甲B4発明のpHが4.9であり、20℃でのブリックスは43.2であったことが記載されている(甲C2a)。
また、食材に付着させて調味する液状の調味料という点で、甲B4と技術分野が共通する甲C3及び甲C4に、それぞれブリックスを40以上70以下とすることや(甲C3a)、35.0~80.0とすることが記載されていることから(甲C4a)、甲B4発明のブリックスを30以上とすることは容易であるし、甲C11~甲C14に示されるとおり、離水を抑制するためにブリックスを調整することやゲル化剤を使用することは周知技術又は技術常識であるから、本件特許発明1、2及び4~11は、甲B4発明にこれら周知技術又は技術常識を適用することにより当業者が容易に想到できることである。
(b)主張の検討
甲B4発明と甲C2との関係は、上記a(b)と述べたのと同様であり、甲B4発明のpH及びブリックスが明らかにされたということはできない。
また、甲C3は、澱粉を高濃度で含む濃縮タイプの調味液についてのブリックスに関し、甲C4は、乾燥野菜の膨潤速度を抑制するための調味液についてのブリックスに関するから、これらの記載から、甲B4発明のブリックスを調整することが動機付けられるとはいえないし、調味料におけるブリックスの周知技術が、甲B4発明について、20℃でのブリックスを本件特許発明1、2及び4~11で特定する範囲にすることを動機付けるものともいえない。
よって、申立人Cの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B4(甲4を主たる引用例とする申立理由)及び申立理由C1(甲C1を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(10)申立理由B5(甲B5を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲B5に記載された発明
甲B5の実施例16及び実施例27からみて(甲B5c)、甲B5には、次の「甲B5発明A」及び「甲B5発明B」が記載されていると認める。
甲B5発明A:
「アセチル化アジピン酸架橋デンプン(製品名;コルフロ67、日本エヌエスシー株式会社製)1.7質量%、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(製品名;エマルスター500、松谷化学工業株式会社製)2.0質量%、キサンタンガム0.2質量%、果糖ぶどう糖液糖(水分:24.5%)22.0質量%、サラダ油12.0質量%、穀物酢(水分:90%)8.0質量%、食塩5.0質量%、グルタミン酸ナトリウム0.8質量%、コーンペースト(水分:80%)5.0質量%、還元水飴(水分:30%)6.0質量%を含み、全体を100質量%に調整する水37.3質量%からなり、pHが4.0であり、粘度が2700mPa・sである、コーンドレッシング。」
甲B5発明B:
「アセチル化アジピン酸架橋デンプン(製品名;コルフロ67、日本エヌエスシー株式会社製)0.8質量%、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(製品名;エマルスター500、松谷化学工業株式会社製)1.5質量%、キサンタンガム0.45質量%、果糖ぶどう糖液糖(水分:24.5%)22.0質量%、サラダ油12.0質量%、穀物酢(水分:90%)8.0質量%、食塩5.0質量%、グルタミン酸ナトリウム0.8質量%、コーンペースト(水分:80%)5.0質量%、還元水飴(水分:30%)6.0質量%を含み、全体を100質量%に調整する水38.45質量%からなり、pHが3.8であり、粘度が5100mPa・sである、コーンドレッシング。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲B5発明A及び甲B5発明Bとの対比
甲B5発明A及び甲B5発明Bの「アセチル化アジピン酸架橋デンプン(製品名;コルフロ67、日本エヌエスシー株式会社製)」及び「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(製品名;エマルスター500、松谷化学工業株式会社製)」は、甲B12の【0028】に「加熱糊化型澱粉は(日本エヌエスシー社製 コルフロ67)を・・・用いた。」と記載され、甲B13の【0033】に「オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムとは、澱粉を無水オクテニルコハク酸でエステル化して得られる加工澱粉のナトリウム塩をいう。・・・通常、澱粉の懸濁液をアルカリ性下、無水オクテニルコハク酸物で処理して得ることができる。」、【0034】に「オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムは市販品として得ることもできる。例えば、・・・松谷化学工業(株)製「エマルスター500」・・・等が挙げられる。」と記載されていることから理解されるとおり、いずれも本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当するといえ、その含有量は、それぞれ、コーンドレッシング全体の3.7質量%(=1.7+2.0)及び2.3質量%(=0.8+1.5)である。
甲B5発明Aは、「アセチル化アジピン酸架橋デンプン1.7質量%」及び「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム2.0質量%」と「キサンタンガム0.2質量%」を含むところ、キサンタンガムの含有量について、澱粉1質量部に対する量を換算すると、約0.054質量部(=0.2÷3.7)であり、甲B5発明Bは、「アセチル化アジピン酸架橋デンプン0.8質量%」及び「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム1.5質量%」と「キサンタンガム0.45質量%」を含むところ、キサンタンガムの含有量について、澱粉1質量部に対する量を換算すると、約0.196質量部(=0.45÷2.3)である。
そして、甲B5発明A及び甲B5発明Bの「コーンドレッシング」は、いずれも、水、加熱糊化型澱粉、キサンタンガムを含み、トレハロースを含まず、それぞれ、pHが4.0及び3.8であるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である点で一致する。
よって、本件特許発明1と甲B5発明A及び甲B5発明Bとは、次の一致点及び相違点B5-1-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B5-1-1:
本件特許発明1は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B5発明A及び甲B5発明Bは、それぞれ「粘度が2700mPa・s」及び「粘度が5100mPa・s」であるが、測定温度が特定されておらず、20℃でのブリックスは不明な点。
b 相違点の検討
甲B5に「各ドレッシングを、24時間、20℃の温度で保温し、BM型粘度計を使用して粘度を測定した。なお、ローターNo.3を使用して12rpmで回転させ、5回転時の値を粘度とした。」(甲B5c)と記載されているから、甲B5発明A及び甲B5発明Bの粘度は、本件特許明細書【0020】とは異なる条件で測定した場合の値が示されているものの、温度条件は本件特許明細書に記載された条件と同じであり、本件特許明細書に記載された条件より速い回転速度で測定した値である上、本件特許発明1で特定される2,500mPa・sより大きい2700mPa・s又は5100mPa・sであるから、本件特許明細書に記載の条件で測定すれば、2,500mPa・s以上であると解するのが自然である(甲B3及び甲B20にも、擬塑性流動体である高粘性調味液は、剪断速度が大きくなると見かけの粘度が減少することが示されおり、技術常識であったといえる。)。
しかしながら、甲B5には、20℃でのブリックスに関する記載はなく、甲B2、甲B8及び甲B19にあるように、20℃でのブリックスが30以上の調味料が周知技術であるとしても、甲B5発明A及び甲B5発明Bに含まれる成分の記載のみから、20℃でのブリックスが自明な値として定まるものでもないから、具体的な数値は不明といわざるを得ず、相違点B5-1-1は、実質的な相違点である。
そして、甲B5は、乳化液状調味料の全体量に対して、0.3~2.2質量%の架橋デンプン、0.5~2.5質量%のオクテニルコハク酸処理デンプン、及び0.2~0.6質量%のキサンタンガムやタマリンドシードガムである増粘多糖類を含有する乳化液状調味料とすることで、低カロリー及び低コレステロールの乳化液状調味料の離水、分離及びセット(乳化液状調味料の流動性がなくなり、ゲル状になる現象)を抑制できるようにしたものであって((甲B5a)及び(甲B5b))、乳化液状調味料の20℃でのブリックスに関する記載はないから、甲B5発明A及び甲B5発明Bについて、低カロリー及び低コレステロールの乳化液状調味料であって、デンプン類及び増粘多糖類の含有量を維持した上で、20℃でのブリックスに着目して、含まれる成分を調整するなどして、本件特許発明1で特定される範囲となるようにすることが動機付けられるところはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、増粘多糖類としてタマリンドシードガムを用いてもよい甲B5からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1と甲B5発明A及び甲B5発明Bとは、相違点B5-1-1で相違するから、本件特許発明1は、甲B5に記載された発明ではない。
また、相違点B5-1-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明1は、甲B5に記載された発明並びに甲B3及び甲B20に記載の技術常識や甲B2、甲B8及び甲B19に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲B5に記載された発明ではなく、甲B5に記載された発明並びに甲B3及び甲B20に記載の技術常識や甲B2、甲B8及び甲B19に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲B5発明A及び甲B5発明Bとは、上記(ア)aの相違点B5-1-1と同様に、20℃でのブリックスで相違する。
したがって、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲B5に記載された発明ではなく、甲B5に記載された発明並びに甲B3及び甲B20に記載の技術常識や甲B2、甲B8及び甲B19に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書において、上記(ア)aの相違点B5-1-1に関連した事項として、分析試験成績書(甲B16)には、甲B5発明A及び甲B5発明Bの本件特許明細書に記載の測定条件による20℃での粘度は、それぞれ4400mPa・s及び8300mPa・sであり、20℃でのブリックスは、それぞれ36.4及び35.0であったことが記載されていること(甲B16a)、加えて令和4年4月28日付け意見書において、甲B5発明Aのブリックス値について計算すると、固形分の合計は、「アセチル化アジピン酸架橋デンプン1.7質量%」、「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム2.0質量%」、「キサンタンガム0.2質量%」、「果糖ぶどう糖液糖16.61質量%(22.0×0.755)」、「食塩5.0質量%」、「グルタミン酸ナトリウム0.8質量%」、「コーンペースト1.0質量%(5.0×0.20)」、「還元水飴4.2質量%(6.0×0.70)」から31.51であり、実測値(36.4)が計算値より大きくなることも技術常識であることを主張している。
しかしながら、甲B5発明A及び甲B5発明Bと甲B16との関係は、上記(9)イ(エ)a(b)で述べたのと同様であり、甲B5からは、果糖ブドウ糖液糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム、コーンペースト及び還元水飴については、具体的にどのような材料を用いたかの詳細は不明であって理解することができないから、甲B5発明A及び甲B5発明Bのブリックスが明らかにされたということはできない。
また、ある組成物に含有される比重も明らかではない個々の水溶性固形物の合計から計算される数値から、屈折計を使用して測定した20℃でのブリックスの数値が定まるという技術常識もない。
よって、申立人Bの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B5(甲B5を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(11)申立理由B6(甲B6を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲B6に記載された発明
甲B6の実施例6からみて(甲B6c)、甲B6には、次の「甲B6発明」が記載されていると認める。
甲B6発明:
「イチゴ果肉25質量%、砂糖46質量%、クエン酸ナトリウム0.45質量%、クエン酸0.35質量%、リン酸三カルシウム0.048質量%、脱アシルジェランガム0.10質量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉1.00質量%、LMペクチン1.00質量%、グアーガム0.10質量%、合計で100質量%となる量の水からなり、糖度が50であり、pHが3.5~4.0である、焼成用イチゴジャム。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲B6発明との対比
甲B6発明の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉」は、本件特許明細書【0024】に「加熱糊化型澱粉としては、・・・ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉」と記載されていることから、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当し、焼成用イチゴジャム全体の1.00質量%である。
甲B6発明は、「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉1.00質量%」と「グアーガム0.10質量%」を含むから、グアーガムの含有量は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉1質量部に対する量は、0.10質量部である。
そして、甲B6発明の「焼成用イチゴジャム」は、水、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、グアーガムを含み、トレハロースを含まず、pHが3.5~4.0であるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点B6-1-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B6-1-1:
本件特許発明1は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B6発明は、糖度が50であるが、測定温度は特定されておらず、20℃での粘度は不明な点。
b 相違点の検討
甲B6には、糖度について、JIS K7142に規定されている方法で測定された屈折率を、国際砂糖分析統一委員会(ICUMSA)の「規格・基準SPS-3、屈折率測定と屈折率表」により換算した数値であると記載されているから(甲B6b)、本件特許明細書【0021】及び【0041】に記載の測定条件とは異なる条件で測定したものといえるから、20℃でのブリックスは不明である(なお、JIS K7142はプラスチック-屈折率の求め方に関する規格と解される。)。
仮に、「糖度」という記載から20℃でのブリックスを意味するとして(甲B9a)、「焼成用イチゴジャム」の20℃でのブリックスが50であると解しても、粘度についての記載はないから、粘度は不明であるし、甲B17から((甲B17a)及び(甲B17b))、ジャムの20℃における粘度が40000mPa・s程度であることが技術常識であるとしても、甲B6発明の「焼成用イチゴジャム」の20℃での粘度が明らかとなるものでもない。
その上、甲B6は、複数の増粘安定剤を混合することで、焼成によっては保形性を維持し、かつ口に含むと容易に壊れ、原料の香気成分を揮発させるような独自のゲル構造を形成したものであるから(甲B6b)、一般的なジャムの粘度と同等ということもできず、相違点B6-1-1は実質的な相違点である。
そして、甲B6は、増粘安定剤として、脱アシルジェランガム及び/又はタマリンドシードガムと、LMペクチン及び/又は加工澱粉とを含有するものであるが、加工澱粉でさえも必須の成分ではなく、グアーガムは含まれていなくてもよい成分である上、カラギーナンであってもよいとされる成分であるから(甲B6a)、たまたま加工澱粉とグアーガムの両成分が含まれている唯一の実施例である実施例6に着目して、20℃での粘度を本件特許発明1で特定する範囲とする動機付けがあるともいえない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、加工澱粉及びグアーガムを必須の成分ともしない甲B6からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1と甲B6発明とは、相違点B6-1-1で相違するから、本件特許発明1は、甲B6に記載された発明ではない。
また、相違点B6-1-1は、当業者が容易になし得たものともいえないから、本件特許発明1は、甲B6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件特許発明2及び4~7について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~7についても、甲B6に記載された発明ではなく、甲B6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲B6発明とは、上記(ア)aの相違点B6-1-1と同様に、20℃での粘度及びブリックスで相違する。
したがって、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲B6に記載された発明ではなく、甲B6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書において、甲B6発明の20℃での粘度及びブリックスについて、甲B9及び甲B17を根拠として、いずれも本件特許発明1の特定する範囲内である旨主張するが、上記(ア)bで検討したとおりであって、申立人Bの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2、4~7及び9~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B6(甲B6を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(12)申立理由B7(甲B7を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲B7に記載された発明
甲B7の実施例1、4、5及び8からみて(甲B7d)、甲B7には、次の「甲B7発明A」~「甲B7発明D」が記載されていると認める。
甲B7発明A:
「トマトケチャップ、砂糖、食塩、酒、豆板醤、パーマフロー(ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ)及びキサンタンガムを水に溶き、85℃に加熱して均一に混合した調味液部であって、パーマフローの配合量は調味液部に対して3%であり、キサンタンガムの配合量は調味液部に対して0.2%であり、調味液部のpHは3.94である、調味液部。」
甲B7発明B:
「トマトケチャップ、砂糖、食塩、酒、豆板醤、パーマフロー(ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ)及びグアガムを水に溶き、85℃に加熱して均一に混合した調味液部であって、パーマフローの配合量は調味液部に対して3%であり、グアガムの配合量は調味液部に対して0.2%であり、調味液部のpHは3.94である、調味液部。」
甲B7発明C:
「醤油、砂糖、グルタミン酸ソーダ、酢、パーマフロー(ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ)及びキサンタンガムを湯(タン)(スープストック)に溶き、85℃に加熱して均一に混合した調味液部であって、パーマフローの配合量は調味液部に対して4%であり、キサンタンガムの配合量は調味液部に対して0.3%であり、調味液部のpHは3.23である、調味液部。」
甲B7発明D:
「醤油、砂糖、グルタミン酸ソーダ、酢、パーマフロー(ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ)及びグアガムを湯(タン)(スープストック)に溶き、85℃に加熱して均一に混合した調味液部であって、パーマフローの配合量は調味液部に対して4%であり、グアガムの配合量は調味液部に対して0.3%であり、調味液部のpHは3.23である、調味液部。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲B7発明A~甲B7発明Dとの対比
甲B7発明A~甲B7発明Dの「パーマフロー(ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ)」は、本件特許明細書【0024】に「加熱糊化型澱粉としては、・・・ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉」と記載されていること、甲B18にも「増粘安定剤 パーマフロー 株式会社光洋商会」、「表示例 加工デンプン」「特徴 凍結・冷解凍耐性にすぐれた加熱増粘型高機能デンプン」及び「その他 ワキシーコーン加工デンプン テート&ライル社」と記載されていることから、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当し、その含有量は、調味液部に対して3重量%又は4重量%である。
甲B7発明A及び甲B7発明Bは、「パーマフローの配合量は調味液部に対して3%」であり、「キサンタンガムの配合量は調味液部に対して0.2%」又は「グアガムの配合量は調味液部に対して0.2%」であるところ、キサンタンガム又はグアガムの含有量について、パーマフロー1質量部に対する量を換算すると、約0.07質量部(0.2÷3)である。
また、甲B7発明C及び甲B7発明Dは、「パーマフローの配合量は調味液部に対して4%」であり、「キサンタンガムの配合量は調味液部に対して0.3%」又は「グアガムの配合量は調味液部に対して0.3%」であるところ、キサンタンガム又はグアガムの含有量について、パーマフロー1質量部に対する量を換算すると、0.075質量部(0.3÷4)である。
そして、甲B7発明A~甲B7発明Dの「調味液部」は、水、パーマフロー(ヒドロキシプロピル化されたリン酸架橋ワキシーコーンスターチ)、キサンタンガム又はグアガムを含み、トレハロースを含まず、pHは3.94又は3.23であるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、本件特許発明1と甲B7発明A~甲B7発明Dとは、次の一致点及び相違点B7-1-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点B7-1-1:
本件特許発明1は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲B7発明A~甲B7発明Dは、いずれも、20℃での粘度及びブリックスが不明な点。
b 相違点の検討
甲B7は、化工澱粉とキサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンド種子ガム又はグアガムの一種以上とを併用するレトルト済酸性調味料に関し(甲B7a)、レトルト処理を受け、さらに長期間保存しても粘度低下のないレトルト済酸性調味料に関する(甲B7b)。
しかしながら、甲B7には、粘度については、B型粘度計にて20℃での粘度を測定したことが記載され、レトルト前後の粘度の測定値の比である相対値(粘度指数)が記載されているだけで(甲B7d)、甲B7発明A~甲B7発明Dそれぞれのレトルト前の20℃での粘度の測定値の記載はないから、酸性調味料のレトルト前の粘度に着目したところはない。
また、甲B2、甲B8及び甲B19にあるように、20℃でのブリックスが30以上の調味料が周知技術であるとしても、甲B7発明A~甲B7発明Dに含まれる成分の記載のみから、20℃でのブリックスが自明な値として定まるものではなく、甲B7には、20℃でのブリックスに関する記載もない。
そして、甲B7には、酸性調味料として、トマトソースやドレッシングソースなどの記載があり(甲B7c)、甲B17に、とんかつソース、フレンチドレッシング、ケチャップ又はマヨネーズなどのB型粘度計ローター回転数6rpmでの粘度の測定値が、4800mPa・s~78900mP・s程度であることが示されているとしても((甲B17a)及び(甲B17b))、海老のチリソース煮や酢豚に用いる甲B7発明A~甲B7発明Dの調味料部の20℃での粘度が自明なものということにはならず、甲B7には、レトルト前や保存前の粘度の数値に関する記載もないから、20℃での粘度及びブリックスが本件特許発明1で特定される範囲となるようにする動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、キサンタンガムやグアガムを選択肢の一つとして記載する甲B7からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1は、甲B7に記載された発明並びに甲B2、甲B8、甲B17及び甲B19に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲B7に記載された発明並びに甲B2、甲B8、甲B17及び甲B19に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲B7発明とは、上記(ア)aの相違点B7-1-1と同様に、20℃での粘度及びブリックスで相違する。
したがって、本件特許発明9~11は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、甲B7に記載された発明並びに甲B2、甲B8、甲B17及び甲B19に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書において、甲B7発明A~甲B7発明Dは、配合成分及び配合量(配合比)の点で本件特許発明1と一致し、その製造方法においても違いがないから、20℃での粘度が本件特許発明1で特定する範囲となっている蓋然性が高いことや、甲B7発明A~甲B7発明Dに含まれる砂糖などから、20℃でのブリックスも本件特許発明1で特定する範囲となっている可能性があるし、そうでなくても甲B2、甲B8、甲B17及び甲B19のとおり、20℃での粘度が2500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である調味料は周知技術であるから、そのような調味料とすることは、当業者に容易想到である旨主張する。
しかしながら、甲B7発明A~甲B7発明Dに含まれる成分の一部が本件特許発明1などと重複することによって、20℃での粘度も一致する蓋然性が高いとはいえないし、含まれる成分から20℃でのブリックスが本件特許発明1で特定される範囲のものであるとはいえず、周知技術であることを根拠とする主張については、上記(ア)bで検討したとおりであって、申立人Bの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2、4~7及び9~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B7(甲B7を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(13)申立理由C2(甲C5を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲C5に記載された発明
甲C5の実施例1からみて(甲C5d)、甲C5には、次の「甲C5発明」が記載されていると認める。
甲C5発明:
「ユズ果汁9.1重量%、昆布だし1.0重量%、魚介エキス1.5重量%、食塩5.2重量%、砂糖5.0重量%、醸造酢8.2重量%、クエン酸0.1重量%、調味料(アミノ酸等)1.0重量%、架橋澱粉3.0重量%、キサンタンガム0.3重量%、HMペクチン0.8重量%及び合計100重量%となる量の水からなり、pHが3.5であり、粘度は4520mPa・sである、ユズ風味調味液。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲C5発明との対比
甲C5発明の「架橋澱粉」について、甲C5には、試験1~3で用いられたと同様のものを使用したこと、試験1では、松谷化学製ファリネックスW50(ヒドロキシプロピル化アジピン酸架橋澱粉)を用いたことが記載され(甲C5d)、ヒドロキシプロピルエーテル化とアジピン酸架橋化を組み合わせた化工処理によって製造されたヒドロキシプロピル化アジピン酸架橋澱粉が挙げられると記載されていることから(甲C5c)、本件特許発明1の「加熱糊化型澱粉」に相当し、その含有量は、ユズ風味調味液全体の3.0重量%である。
甲C5発明は、「架橋澱粉3.0重量%」と「キサンタンガム0.3重量%」を含むところ、キサンタンガムの含有量について、架橋澱粉1重量部に対する量を換算すると、0.1重量部(0.3÷3.0)である。
そして、甲C5発明の「ユズ風味調味液」は、水、架橋澱粉、キサンタンガムを含み、トレはローズを含まず、pHは3.5であるから、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類」を含む「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点C5-1-1を有する。
一致点:
「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムである、
酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点C5-1-1:
本件特許発明1は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲C5発明は、粘度が4520mPa・sであるが、測定温度が特定されておらず、20℃でのブリックスが不明な点。
b 相違点の検討
甲C5には、粘度について「粘度は東京計器B型粘度計を用い、20℃、30rpmの条件で測定した。」(甲C5d)と記載されているから、甲C5発明の粘度は、本件特許明細書【0020】とは異なる条件で測定した場合の値が示されているものの、温度条件は同じであり、本件特許明細書に記載された条件より速い回転速度で測定した値である上、本件特許発明1で特定される2,500mPa・sより大きい4520mPa・sであるから、本件特許明細書に記載の条件で測定すれば、2,500mPa・s以上であると解するのが自然である。
しかしながら、20℃でのブリックスについての記載はない。
そして、甲C5は、2~4.5重量%の架橋澱粉、0.1~1重量%のキサンタンガム及び0.1~1重量%の高メトキシルペクチンを含有し、pH3~4で、粘度が2000~20000mPa・sである、酸性粘性調味液に関し(甲C5a)、従来から酸性の調味液に粘性を与えて、かつその粘性を安定に維持させる方法として、加工澱粉とキサンタンガムを併用添加する方法が知られているが、pH4以下の強い酸性の調味液では、長期間に渡って、その粘性を安定的に維持することが困難であることから、化工澱粉の中でも特に架橋澱粉を使用し、かつキサンタンガムを併用した上で、さらにペクチンの中でも特に高メトキシルペクチンを含有させることにより、充分な付着性と垂れ流れにくさを達成し、かつその粘性を長期間に渡り安定に維持できるようにしたものである(甲C5b)。
そうすると、甲C3及び甲C4には、それぞれ液状調味料のブリックスが40以上70以下及び35.0~80.0であり、料理への付着性がよく、長期保存に適することや液だれを起こさない調味料であることが記載されており((甲C3a)及び(甲C4a))、甲C11~甲C14に示されるとおり、離水を抑制するためにブリックスを調整することやゲル化剤を使用することは周知技術又は技術常識であるともいえるが、甲C5においては、上記のとおり、架橋澱粉、キサンタンガムに加えて高メトキシルペクチンを併用することで、既に課題が解決されているといえ、20℃でのブリックスに着目して、本件特許発明1で特定する範囲とする動機付けられるところはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、さらに高メトキシルペクチンを必須の成分とする甲C5からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、本件特許発明1は、甲C5に記載された発明並びに甲C3又は甲C4に記載された事項あるいは甲C11~甲C14に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~8について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものであり、本件特許発明8は、本件特許発明1の酸性液状食品の製造方法に関するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~8についても、甲C5に記載された発明並びに甲C3又は甲C4に記載された事項あるいは甲C11~甲C14に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、甲C5発明とは、上記(ア)aの相違点C5-1-1と同様に、20℃での粘度で相違する。
したがって、本件特許発明9~11は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、甲C5に記載された発明並びに甲C3又は甲C4に記載された事項あるいは甲C11~甲C14に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Cの主張について
申立人Cは、特許異議申立書において、甲C5発明の20℃でのブリックスについて、甲C3又は甲C4に記載された事項を適用すること、あるいは甲C11~甲C14に示される技術常識を適用することで、当業者が容易に想到できるものである旨主張するが、上記(ア)bで検討したとおりであって、申立人Cの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2、4~7及び9~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由C2(甲C5を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
(14)申立理由C3(甲C6を主たる引用例とする申立理由)について
ア 甲C6に記載された発明
甲C6は、キユーピー株式会社の「パン工房 てりやきソース&マヨ」という商品に関する電子的技術情報であるところ、その原材料名の表示からみて(甲C6a)、甲C6には、次の「甲C6発明」が記載されていると認める。
甲C6発明:
「原材料名が、植物油脂(国内製造)、しょうゆ、砂糖、じゃがいも、醸造酢、蒸し鶏、米発酵調味料、乾燥たまねぎ、卵黄、清酒、粒状植物性たん白、ポーク・チキンエキス、しょうが、オニオンエキス、ラード、食塩、にんにく、乳たん白、酵母エキスパウダー、卵たん白加水分解物/増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)、調味料(アミノ酸等)、香料、乳酸カルシウム、甘味料(ステビア)、香辛料抽出物、酸味料、(一部に卵・乳成分・小麦・大豆・鶏肉・豚肉を含む)である、パン工房 てりやきソース&マヨ。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 本件特許発明1と甲C6発明との対比
醤油、醸造酢、清酒などに水分が含まれることは自明であるから、甲C6発明の「パン工房 てりやきソース&マヨ」は、水、でん粉、増粘多糖類を含み、トレハロースを含まず、スプレッドであるから(甲C6a)、本件特許発明1の「酸性液状食品」とは、「少なくとも、水、澱粉、及び多糖類」を含む「液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」である限りにおいて一致する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点C6-1-1及びC6-1-2を有する。
一致点:
「少なくとも、水、澱粉、及び多糖類を含む、液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)。」である点。
相違点C6-1-1:
本件特許発明1は、「少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であり、前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガム」である「酸性液状食品(但し、トレハロースを含有するものを除く)」と特定しているのに対し、
甲C6発明は、「しょうゆ」、「醸造酢」、「清酒」などと共に、「増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)」を含む「パン工房 てりやきソース&マヨ」である点。
相違点C6-1-2:
本件特許発明1の「酸性液状食品」は、「20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上である」と特定しているのに対し、
甲C6発明の「パン工房 てりやきソース&マヨ」は、20℃での粘度及び糖度が不明な点。
b 相違点の検討
事案に鑑み相違点C6-1-1について検討する。
甲C10に、パン工房 てりやきソース&マヨのレシピとして、パン及びおにぎりの米飯上に製品を載置した状態の「てりやきマヨトースト」や「てりやきマヨおにぎり」が紹介されており(甲C10a)、甲C5には、充分な付着性と垂れ流れにくさを達成し、かつその粘性を長期間に渡り安定に維持できる酸性粘性調味液が、架橋澱粉、キサンタンガムを含むことが記載されている(甲C5a)。
しかしながら、甲C6発明の「パン工房 てりやきソース&マヨ」は、酸性粘性調味液であるかは不明であるし、そのような特定もされていないから、甲C10のレシピがあるからといって、甲C5の記載から、甲C6発明の「パン工房 てりやきソース&マヨ」を「酸性液状食品」とし、「増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)」とのみ表示され、その含有量も不明な原材料について、加熱糊化型澱粉及びキサンタンガム及び/又はグアーガムであるガム類に特定するとともに、それらの含有量について、本件特許発明1で特定する範囲とすることが動機付けられるところはない。
そして、本件特許発明1は、澱粉として加熱糊化型澱粉を用い、ガム類としてキサンタンガム及び/又はグアーガムを用い、それら一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができるという、甲C6からは予測し得ない効果を奏するものである。
c まとめ
よって、相違点C6-1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲C6に記載された発明及び甲C5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2及び4~7について
本件特許発明2及び4~7は、それぞれ本件特許発明1を直接又は間接的に引用して、酸性液状食品についてさらに限定するものである。
そうすると、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む本件特許発明2及び4~7についても、甲C6に記載された発明及び甲C5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明9~11について
本件特許発明9~11は、本件特許発明1と、上記(2)イ(ウ)で述べたとおりの関係にあるところ、加熱糊化型澱粉1質量部に対するガム類の含有量の具体的数値については異なるものの、甲C6発明とは、上記(ア)aの相違点C6-1-1と同様の相違点を有し、この相違点は、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、上記(ア)bで検討したのと同様の理由により、本件特許発明9~11は、甲C6に記載された発明及び甲C5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立人Cの主張について
申立人Cは、特許異議申立書において、上記(ア)aの相違点C6-1-1及びC6-1-2に関連した事項として、試験成績証明書((甲C8)及び(甲C9))には、2021年6月8日に神奈川県内の小売店で販売されていたキユーピー株式会社製造販売「パン工房 てりやきソース&マヨ」に関する試験結果として、pH、20℃でのブリックス及び本件特許明細書に記載の測定条件による20℃での粘度が、それぞれ4.5、46.1及び53000mPa・sであったことが記載されていること((甲C8a)及び(甲C9a))、加えて、甲C7の「塗って焼くだけ簡単に惣菜パンが楽しめる「パン工房」から「てりやきソース&マヨ」を新発売 併せて全品をリニューアル」とする2020年1月21日のニュースリリース後に(甲C7a)、リニューアルの発表が見当たらないから、甲C8及び甲C9に示されている試験結果は、甲C6発明と物として同一の「パン工房 てりやきソース&マヨ」に関する結果である旨主張している。
しかしながら、製品の改変が行われる度に必ずリニューアルの発表が行われているかは不明であり、販売時期が異なる個々の製品が同一のものであるといえる技術常識もないから、リニューアルの発表が見当たらないというだけでは、甲C8及び甲C9に示されている試験結果が甲C6発明に関する結果であるとみなすことができることの証明にはならないから、本件特許の出願日後の製品について行われた試験結果を採用することはできない。
仮に、甲C8及び甲C9が、甲C6発明の試験結果であるとしても、甲C8及び甲C9には、甲C6発明の「増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)」の種類や含有量の記載はなく、甲C6発明について、甲C5に記載された事項を適用して、これらの種類や含有量を変更した場合には、甲C8及び甲C9に示される試験結果の値も変化すると解される。
よって、申立人Cの上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2、4~7及び9~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由C3(甲C6を主たる引用例とする申立理由)は、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立人A~Cが申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1、2及び4~11に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1、2及び4~11に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により請求項3に係る発明の特許は削除されたため、異議申立人A~Cの請求項3に係る発明の特許についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
したがって、請求項3に係る発明の特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700769