特許異議申立
2021-700696
バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
- 審判番号
- 2021-700696
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-103205
- 登録番号
- 6818261
- 請求日
- 2021年07月19日
- 審決日
- 2023年05月23日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】土田 裕介
- 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
- 【異議申立人代理人】黒木 義樹
- 【異議申立人代理人】吉住 和之
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.121-ZDA(B32B) / P1651.113-ZDA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第44条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6818261号発明「バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6818261号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6、8、10について訂正することを認める。
特許第6818261号の請求項3、8に係る特許を維持する。
特許第6818261号の請求項5、10に係る特許を取り消す。
特許第6818261号の請求項1、2、4、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6818261号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成25年1月9日に出願された特願2013-2029号(以下「第1出願」という。)の一部を平成28年11月8日に新たな特許出願(特願2016-218129号、以下「第2出願」という。)とし、さらにその一部を平成30年9月19日に新たな特許出願(特願2018-175258号、以下「第3出願」という。)とし、さらにその一部を令和2年6月15日に新たな特許出願(特願2020-103205号)としたものであって、令和3年1月5日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 7月19日 :特許異議申立人土田裕介(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年12月24日付け:取消理由通知書
令和4年 3月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 5月20日 :申立人による意見書の提出
令和4年 8月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年10月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和4年12月 6日 :申立人による意見書の提出
令和5年 1月18日付け:訂正拒絶理由通知書
令和5年 2月24日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和4年3月7日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
令和5年2月24日提出の手続補正書による補正は、補正前の訂正事項1、2、4、6を、特許請求の範囲の請求項1、2、4、6を削除するものとし、補正前の訂正事項7、9を削除するものであるから、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
そうすると、令和5年2月24日に提出された手続補正書により補正された本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3に記載された
「前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなる、請求項1又は2に記載の包装製品用積層体。」のうち、請求項1を引用するものを独立形式に改め、
「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層をさらに有してなり、
前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)。」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5に記載された
「前記バリア層が金属箔からなる、請求項2に記載の包装製品用積層体。」を独立形式に改め、
「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物を含み金属箔からなるバリア層をさらに有してなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く)。」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項6に記載された
「請求項1~5のいずれか一項に記載の包装製品用積層体を備える、包装製品。」のうち、請求項3を引用することにより、間接的に請求項1を引用するものを独立形式に改め、
「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層をさらに有してなり、
前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)を備える、包装製品。」に訂正し、新たに請求項8とする。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項6に記載された
「請求項1~5のいずれか一項に記載の包装製品用積層体を備える、包装製品。」のうち、請求項5を引用することにより、間接的に請求項1を引用するものを独立形式に改め、
「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物を含み金属箔からなるバリア層をさらに有してなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く)を備える、包装製品。」に訂正し、新たに請求項10とする。
2 一群の請求項、及び別の訂正単位とする求め
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項について請求されている。
(2)別の訂正単位とする求め
本件訂正後の請求項2~10について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1、2、4、6について
訂正事項1、2、4、6は、それぞれ本件訂正前の請求項1、2、4、6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項3について、独立形式に改め、さらに、「包装製品用積層体」について、「無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層をさらに有してなり」との構成を追加し、「但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く」とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)バリア層に係る構成を追加する点について
訂正事項3におけるバリア層に係る構成を追加する点は、本件特許の明細書の【0103】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(イ)「但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く」とする点について
訂正事項3のうち、「包装製品用積層体」から「前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く」とする点は、「包装製品用積層体」から「バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの」及び「金属箔からなる層を有するもの」を除外するものであって、当該除外によって請求項3に係る発明の技術的課題に何らかの影響が及ぶものではないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
(ウ)小括
訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の適否
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項3に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項2を引用する請求項5について、独立形式に改め、さらに、「包装製品用積層体」について、「但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く」とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、「包装製品用積層体」から「バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの」及び「医薬品包装用途に用いられるもの」を除外するものであって、当該除外によって請求項5に係る発明の技術的課題に何らかの影響が及ぶものではないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の適否
訂正事項5は、本件訂正前の請求項2を引用する請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項7について
訂正事項7は、上記(2)と同様の理由により、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項8について
訂正事項8は、上記(3)と同様の理由により、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6、8、10について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項3、5、8、10に係る発明(以下「本件発明3」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項3、5、8、10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項3、5、8、10の記載は、次のとおりである。
【請求項3】
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層をさらに有してなり、
前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)。
【請求項5】
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物を含み金属箔からなるバリア層をさらに有してなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く)。
【請求項8】
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層をさらに有してなり、
前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)を備える、包装製品。
【請求項10】
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物を含み金属箔からなるバリア層をさらに有してなり、
前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、
ポリエチレン層が最外層を構成していない、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く)を備える、包装製品。
第4 取消理由の概要
当審において、請求項1~12に係る特許に対して、令和4年8月9日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~12に係る発明は、下記甲6に記載された発明、下記甲4に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧> 以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。
甲1:特開2012-167172号公報
甲2:特開2012-251006号公報(周知技術を示す文献)
甲3:特開2012-250350号公報(周知技術を示す文献)
甲4:特開2012-96410号公報(周知技術を示す文献)
甲5:特開2012-250488号公報(周知技術を示す文献)
甲6:杉原正泰編、「医薬品の包装設計」、第1版、株式会社南山堂、1984年(昭和59年)10月20日、p.370~375
引用文献7:特開平8-143452号公報(申立人が令和4年5月20日に提出した意見書に添付した参考資料1。以下単に「参考資料1」等という。)
引用文献8:特開平9-29898号公報(参考資料2)
引用文献9:特開2012-250488号公報(参考資料3)
引用文献10:特開平8-25594号公報(参考資料4)
引用文献11:特開平9-150490号公報(参考資料5)
引用文献12:特開平10-166523号公報(参考資料6)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載、引用発明及び記載事項
(1)甲6
甲6には、次の記載がある。
「ピロー包装には,表13-1のような包材が使用されており,特に防湿性や酸化防止を必要とする場合には,アルミ箔を使用した包材が使われ,必要に応じて乾燥剤や脱酸素材を入れることもある.」(371ページ1~3行)
また、甲6の表13-1には、「構成」欄に「PET/PE/Al/PE」と記載され、「厚さ(μm)」欄に構成材料の厚さが9~40μm程度であることが記載されているから、各構成材料は層をなしているといえる。そして、構成材料の略号について、「PE:ポリエチレン」、「Al:アルミ箔」、「PET:ポリエステル」と記載されており、PETとAlの間のPEを第1のポリエチレン、もう一方のPEを第2のポリエチレンと称すると、ポリエステル、第1のポリエチレン、アルミ箔、第2のポリエチレンの順で有しているといえる。そして、ポリエチレン及びポリエステルが樹脂層であり、アルミ箔が層をなしていることは明らかである。
また、「ピロー包装とは,ロールから繰り出される1枚のフラットな原反フィルムで被包装物を巻くように包みながら,長手方向の両端を合わせつつヒートシールし,これと直交する方向にパックの前・後端をシールしてカットする包装形式である.」(370ページ8~11行)の記載から、第2のポリエチレン樹脂層又はポリエステル樹脂層をヒートシールすることが記載されているといえる。
以上から、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」、「甲6発明の2」という。)が記載されている。
(甲6発明)
「ポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層と、ポリエチレンを含んでなるポリエチレン樹脂組成物からなる第1のポリエチレン樹脂層と、防湿性や酸化防止のためのアルミ箔からなる層、第2のポリエチレン樹脂層と、をこの順に有してなる、ピロー包装用積層体。」
(甲6発明の2)
「ポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層と、ポリエチレンを含んでなるポリエチレン樹脂組成物からなる第1のポリエチレン樹脂層と、防湿性や酸化防止のためのアルミ箔からなる層と、第2のポリエチレン樹脂層と、をこの順に有してなるピロー包装用積層体が使用された、ピロー包装。」
(2)甲2
甲2には、次の記載がある。
「【0035】
ポリオレフィン
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。」
「【0038】
上記のポリオレフィンが、ポリエチレンであることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。」
「【0053】
樹脂組成物
本発明において、樹脂組成物は、上記のポリオレフィンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。」
「【0064】
用途
本発明による樹脂フィルムは、容器や袋等の包装製品、化粧シートやトレー等のシート成形品、積層フィルム、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、蓋材、およびラミネートチューブ等の各種用途に好適に使用することができ、特に、包装製品およびシート成形品が好ましい。」
「【0079】
実施例4
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm3、MFR:2.7g/10分)を320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。」
「【0089】
(10)シール開始温度
上記の実施例4~7および比較例2で得られた樹脂フィルムを、厚さ幅15mm、長さ200mmに切り出し、シール温度は90~150℃、シール圧力は30N/cm2、シール時間は1秒でヒートシールして、シールが開始される温度(℃)を特定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0090】
【表2】
[図:0001402724000001.jpg]
」
(3)甲3
甲3には、次の記載がある。
「【0038】
ポリオレフィン
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。」
「【0041】
上記のポリオレフィンが、ポリエチレンであることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。」
「【0056】
樹脂組成物
本発明において、樹脂組成物は、上記のポリオレフィンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン複層樹脂フィルムを実現できる。」
「【0081】
用途
本発明による複層樹脂フィルムは、容器や袋等の包装製品、化粧シートやトレー等のシート成形品、積層フィルム、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、蓋材、およびラミネートチューブ等の各種用途に好適に使用することができ、特に、包装製品およびシート成形品が好ましい。」
「【0095】
第2の樹脂層(シール層)用樹脂フィルム
参考例4
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm3、MFR:2.7g/10分)を320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。」
「【0108】
実施例1
第1の樹脂層(コア層)用の樹脂として参考例1で用いた樹脂組成物(バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm3、MFR:20g/10分)を用いた。一方、第2の樹脂層(シール層)用樹脂として参考例4で用いた樹脂組成物(バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm3、MFR:2.7g/10分)を用いた。これらの樹脂組成物を、アンカーコート剤を介してそれぞれ290℃、320℃の樹脂温度で、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に、共押し(コア層:15μm、シール層:5μm)にて押出して、コーティングし、ポリエチレン複層樹脂フィルムを得た。得られた複層樹脂フィルム全体のバイオマス度は93%であった。」
(4)甲5
甲5には、次の記載がある。
「【0002】
一般に、紙容器は、紙基材層とシーラント層とを有する包装材料からなる。これらのシーラント層としては、熱可塑性樹脂が用いられ、特にラミネート加工性及びヒートシール性に優れる点から、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(LDPE、密度0.910~0.925g/cm3)等が使用されている。」
「【0005】
また、シーラント層としてポリエステル系樹脂を使用するケースもある(特許文献1)。しかしながら、ポリエステル系樹脂は、ヒートシール性が悪く、製函時にシール不良が発生し易いため、これよりなるシーラント層を有する紙容器は、内容物が漏れる等の欠点を有する。」
(5)参考資料7
申立人が令和4年12月6日に提出した意見書に添付された参考資料7((社)日本包装技術協会、「包装材料の実際知識(第2版)」、東洋経済新報社、昭和63年8月18日)には、次の記載がある。
「
[図:0001402724000002.jpg]
」(216ページの表6.12)
(6)参考資料11
申立人が令和4年12月6日に提出した意見書に添付された参考資料11(特開平11-314661号公報)には、次の記載がある。
「【0127】本発明のピロー包装用フィルム10は、特に、食品包装用途および医薬品包装用途に好適であり、その中でも特に、惣菜、食肉(畜肉)加工品、水産加工品、菓子・スナック等の加工食品をピロー包装する用途に好適である。」
2 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲6発明とを対比する。
ポリエステルがジオール単位とジカルボン酸単位とからなることは技術常識であるから、甲6発明の「ポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層」と本件発明3の「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層」とは、「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層」の限りで一致する。
ポリエチレンが樹脂材料からなるポリオレフィンであることは技術常識であるから、甲6発明の「ポリエチレンを含んでなるポリエチレン樹脂組成物からなる第1のポリエチレン樹脂層」と本件発明3の「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層」とは、「ポリエチレンを含んでなるポリオレフィン樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂層」の限りで一致し、同様に、「第2のポリエチレン樹脂層」と「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層」とは、「樹脂材料からなるポリオレフィン樹脂層」の限りで一致する。
甲6発明の「防湿性や酸化防止のためのアルミ箔からなる層」と本件発明3の「無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層」とは、「バリア層」の限りで一致する。
甲6発明は、「第1のポリエチレン樹脂層」と「第2のポリエチレン樹脂層」との間に「防湿性や酸化防止のためのアルミ箔からなる層」を有していることから、甲6発明の「ピロー包装用積層体」と本件発明3の「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)」とは、「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するものを除く)」の限りで一致する。
以上のことから、本件発明3と甲6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層と、
ポリエチレンを含んでなるポリオレフィン樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂層と、
樹脂材料からなるポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
バリア層をさらに有してなる、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するものを除く)。」
[相違点1-1]
「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層」に関して、本件発明3は「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層」であるのに対して、甲6発明は「ポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層」である点。
[相違点1-2]
「ポリエチレンを含んでなるポリオレフィン樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂層」に関して、本件発明3は「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層」であるのに対して、甲6発明は「ポリエチレンを含んでなるポリエチレン樹脂組成物からなる第1のポリエチレン樹脂層」である点。
[相違点1-3]
「樹脂材料からなるポリオレフィン樹脂層」に関して、本件発明3は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層」であるのに対して、甲6発明は「第2のポリエチレン樹脂層」である点。
[相違点1-4]
「バリア層」に関して、本件発明3は「無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層」であるのに対して、甲6発明は「防湿性や酸化防止のためのアルミ箔からなる層」である点。
[相違点1-5]
本件発明3は「前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでな」るのに対して、甲6発明は「第1のポリエチレン樹脂層」がそのようなものであるか不明である点。
[相違点1-6]
本件発明3は「前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、ポリエチレン層が最外層を構成していない」のに対して、甲6発明はその最内層及び最外層について特定されていない点。
[相違点1-7]
「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するものを除く)」に関して、本件発明3は「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)」であるのに対して、甲6発明は「ピロー包装用積層体」である点。
(2)判断
事案に鑑み相違点1-4について検討する。
甲6発明は、ポリエステル樹脂層、第1のポリエチレン樹脂層、アルミ箔からなる層、第2のポリエチレン樹脂層の順に積層したピロー包装用積層体であって、アルミ箔からなる層を「無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層」に換える動機付けはない。
アルミ箔からなる層を、本件発明3のように「無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層」に換える場合、蒸着膜は、蒸着膜を蒸着する基材が必要なところ、隣接する第1のポリエチレン樹脂層と第2のポリエチレン樹脂層は、甲6発明において、第2のポリエチレン樹脂層はピロー包装を形成するためのシーラント層として、第1のポリエチレン樹脂層はポリエステル樹脂層とアルミ箔からなる層をラミネートするための層として、それぞれ機能するものと理解され、いずれもラミネート時やシール時に溶融することが想定されるため、機械的強度があり、加熱時に形状が変化しないことが期待される基材として適切とはいえない。そのため、第1のポリエチレン樹脂層や第2のポリエチレン樹脂層に蒸着することに動機付けはない。
そうすると、アルミ箔からなる層に隣接する層が、第1のポリエチレン樹脂層と第2のポリエチレン樹脂層の甲6発明においては、アルミ箔からなる層を「無機物および/または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア層」に換えて、相違点1-4に係る本件発明3の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、当業者が甲6発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件発明8について
本件発明8は、本件発明3に係る包装製品用積層体を備える包装製品であるから、本件発明3と甲6発明の2とは、少なくとも上記相違点1-1~1-7と同じ点で相違し、上記2(2)で説示したとおりである。
したがって、本件発明8は、当業者が甲6発明の2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲6発明を対比する。
甲6発明の「ピロー包装用積層体」と本件発明5の「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く)」とは、「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するものを除く)」の限りで一致し、その他の事項の対比は、上記2(1)の対比と同様である。
そうすると、本件発明5と甲6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層と、
ポリエチレンを含んでなるポリオレフィン樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂層と、
樹脂材料からなるポリオレフィン樹脂層と、
をこの順に有し、かつ、
無機物を含み金属箔からなるバリア層をさらに有してなる、包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するものを除く)。」
[相違点2-1]
「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層」に関して、本件発明5は「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層」であるのに対して、甲6発明は「ポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物からなる、ポリエステル樹脂層」である点。
[相違点2-2]
「ポリエチレンを含んでなるポリオレフィン樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂層」に関して、本件発明5は「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層」であるのに対して、甲6発明は「ポリエチレンを含んでなるポリエチレン樹脂組成物からなる第1のポリエチレン樹脂層」である点。
[相違点2-3]
「樹脂材料からなるポリオレフィン樹脂層」に関して、本件発明5は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層」であるのに対して、甲6発明は「第2のポリエチレン樹脂層」である点。
[相違点2-4]
本件発明5は「前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層が最内層を構成しており、ポリエチレン層が最外層を構成していない」のに対して、甲6発明は最内層及び最外層について特定されていない点。
[相違点2-5]
「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するものを除く)」に関して、本件発明5は「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び医薬品包装用途に用いられるものを除く)」であるのに対して、甲6発明は「ピロー包装用積層体」である点。
(2)判断
ア 相違点2-1について
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物を用いて樹脂層を形成することは、例示するまでもなく周知技術である。
安価に大量に生産できる化石燃料由来の樹脂組成物に対し、バイオマス由来の樹脂組成物を使用する方がコストが増加することが明らかであるところ、包装製品用積層体における化石燃料の使用量を削減とそれに伴うコストの増加に鑑み、樹脂層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれとするかは、当業者が適宜決め得ることであり、甲6発明の「ポリエステル樹脂層」における「ポリエステルを主成分として含んでなるポリエステル樹脂組成物」を化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステル、を主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物とし、相違点2-1に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2-2について
包装製品用積層体において、化石燃料の使用量を削減することは、自明の課題であって、甲2の【0035】、【0038】、【0053】、【0064】、【0079】、【0089】、【0090】、甲3の【0038】、【0041】、【0056】、【0081】、【0095】、【0108】に示されるように、包装製品用積層体におけるポリオレフィン樹脂層として、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層は周知技術である。
包装製品用積層体における化石燃料の使用量を削減とそれに伴うコストの増加に鑑み、樹脂層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれとするかは、当業者が適宜決め得ることであり、甲6発明の「第1のポリエチレン樹脂層」における「ポリエチレンを含んでなるポリエチレン樹脂組成物」を、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるものとし、相違点2-2に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点2-3について
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料を用いて樹脂層を形成することは、例示するまでもなく周知技術である。
包装製品用積層体における化石燃料の使用量を削減とそれに伴うコストの増加に鑑み、樹脂層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれとするかは、当業者が適宜決め得ることであり、甲6発明の「第2のポリエチレン樹脂層」を化石燃料由来の原料を含む樹脂材料を用いて樹脂層とし、相違点2-3に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
エ 相違点2-4について
甲5の【0002】、【0005】に記載されるように、ポリエチレン樹脂がヒートシールにより高い密着強度を達成することができ、ヒートシール性が良好であるのに対して、ポリエステル系樹脂のヒートシール性が悪いことは技術常識である。
よって、甲6発明において、ヒートシール性等を考慮して、ポリエチレン樹脂層をヒートシール層とすることで、第2のポリエチレン樹脂層を最内層とし、ポリエステル樹脂層を最外層として、相違点2-4に係る本件発明5の構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
オ 相違点2-5について
参考資料7(上記1(5))、参考資料11(上記1(6))に示されるように、医薬品包装に用いられる複合材料の構成やフィルムをそれ以外の用途に用いることは特別なことではなく、甲6発明に係るピロー包装用積層体を、医薬品包装用途以外のものとして用いて、相違点2-5に係る本件発明5の構成とすることは、当業者によって容易になし得たことである。
カ 効果
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件発明5の奏する作用効果は、甲6発明及び周知技術から予測される程度のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。
キ 小括
したがって、本件発明5は、甲6発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件発明10について
本件発明10は、本件発明5に係る包装製品用積層体を備える包装製品であるから、本件発明5と甲6発明の2とは、上記相違点2-1~2-5と同じ点で相違し、その判断は、上記4(2)で説示したとおりである。
したがって、本件発明10は、甲6発明の2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった、特許異議申立理由の概要、及び本件発明3、8に関する当該理由に対する当審の判断は次のとおりである。
1 甲8又は甲9を主引例とする新規性、進歩性
(1)申立人1の主張の概要
本件特許の特許請求の範囲、明細書【0008】~【0010】の「ポリエステル樹脂層」が、「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層」であることについては、本件特許に係る第1出願、第2出願、第3出願の明細書のいずれにも記載された事項でない。
よって、本件特許は、適法に分割出願されたものではなく、その出願は、特許法第44条第2項の規定が適用されず、本件特許の出願日は、現実の出願日である令和2年6月15日である。
そのため、本件特許の請求項1~6に係る発明は、第3出願の公開公報(甲8(特開2019-10879号公報))、又は第3出願の令和元年12月18日に提出された手続補正書(甲9)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、又は甲8又は甲9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)当審の判断
ア 分割の適否について
(ア)第1出願の当初明細書等の記載事項
第1出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「第1出願当初明細書等」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体に関し、より詳細には、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステルを含んでなるバイオマスポリエステル樹脂層と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる、積層体に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン積層体の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたポリオレフィンのバイオマスポリオレフィン樹脂層を有する積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン樹脂の積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含むバイオマスポリエステル樹脂層と、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含むバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂層とポリオレフィン樹脂層を有する積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないバイオマス樹脂の積層体を提供することである。」
(イ)判断
第1出願当初明細書等に記載された発明が解決しようとする課題は、「従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂層とポリオレフィン樹脂層を有する積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないバイオマス樹脂の積層体を提供すること」(【0008】)であるところ、「ポリオレフィン樹脂層」が「バイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる」ものであれば、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂層とポリオレフィン樹脂層を有する積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないバイオマス樹脂の積層体を提供できることは明らかである。
また、樹脂層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれのものとしても、機能・作用に違いはない。
そうすると、本件特許の特許請求の範囲及び明細書の【0008】~【0010】に記載された、「ポリエステル樹脂層」を「化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層」とすることによって、新たな機能・作用を奏する等、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではないから、本件特許の当該記載は、第1出願当初明細書等の記載に対して新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、本件特許の請求項3、5、8、10及び明細書の【0008】~【0010】に記載された事項は、第1出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であり、同様に、第1出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内である。また、第1出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が本件特許の請求項3、5、8、10に係る発明とされたものでないことは明らかである。
したがって、本件特許に係る出願は、第1出願に対し分割要件の全てを満たす。
同様に、本件特許に係る出願は、第2出願及び第3出願に対し、分割要件の全てを満たす。
よって、本件特許に係る出願は、特許法第44条第1項の規定による特許出願であると認められる。
イ 小括
上記アのとおり、本件特許に係る出願は、特許法第44条第1項の規定による特許出願であると認められるから、甲8又は甲9に記載された発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明ではない。
2 甲1を主引例とする進歩性について
(1)甲1に記載された発明
甲1(【0041】、【0058】、【0061】、【図5】、【図6】)には、次の発明が記載されている。
「第1層用および第3層用樹脂組成物として、石油由来ポリエチレン系樹脂である三井化学C6LL-エボリューSP2020を溶融混練し、樹脂組成物を得、第2層用樹脂組成物として、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118を50重量部と、宇部丸善ポリエチレンLDPE-F120Nを50重量部とを溶融混練し、樹脂組成物を得、第1層:第2層:第3層の層比は1:2:1として、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、樹脂組成物をフィルムF4に成形し(【0041】、【0058】)、
外層に基材フィルム5としての二軸延伸ナイロンフィルム(ONy、東洋紡ハーデンN-1102)と、中間層に、片面にアルミニウム蒸着されたVMPET(金属蒸着フィルムであり、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウムを蒸着したもの)のアルミニウム蒸着面と積層し、さらにVMPETのポリエチレンテレフタレート面に2液硬化型のウレタン系接着剤を塗布して、フィルムF4のコロナ処理面を貼合して得た、3層構成の積層フィルム(【0061】)。」(以下「甲1発明」という。)
(2)対比
本件発明3と甲1発明とは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点3]
包装製品用積層体(但し、金属箔からなる層を有するものを除く)に関して、本件発明3は「包装製品用積層体(但し、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの、及び金属箔からなる層を有するものを除く)」のに対して、甲1発明は、「VMPETのポリエチレンテレフタレート面」に、「第1層用および第3層用樹脂組成物として、石油由来ポリエチレン系樹脂である三井化学C6LL-エボリューSP2020を溶融混練し、樹脂組成物を得、第2層用樹脂組成物として、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118を50重量部と、宇部丸善ポリエチレンLDPE-F120Nを50重量部とを溶融混練し、樹脂組成物を得、第1層:第2層:第3層の層比は1:2:1として、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、樹脂組成物」を成形した「フィルムF4」を貼合した「3層構成の積層フィルム」である点。
(3)判断
上記相違点3について検討する。
本件発明3は、「前記バイオマスポリオレフィン樹脂層と非バイオマスポリオレフィン樹脂層とが直接接している部分を有するもの」を除くものである。
一方、甲1には、植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物を含む層を中間層とし、外層および内層に石油由来ポリエチレン系樹脂を用いることで、既存の製造工程が有する特性でフィルムを製造するものである旨が記載されている(甲1の【0015】を参照)。
甲1発明において、中間層と、外層および内層との間に別の層を設けると、フィルムF4の特性が変化することは明らかであるところ、甲1の上記記載によると、甲1発明の「サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」を含む「樹脂組成物」からなる「中間層」と、「石油由来ポリエチレン系樹脂」からなる「外層および内層」とが、直接接している部分を有しないように別の層を設けてフィルムの特性を変化させるようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明3は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項3、8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項3、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項5、10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項1、2、4、6は、本件訂正により削除されたため、請求項1、2、4、6に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700696