2021-700612
貫通電極基板および半導体装置
- 審判番号
- 2021-700612
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-129161外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6809511
- 請求日
- 2021年07月02日
- 審決日
- 2022年02月08日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
- 【異議申立人】飯田 進
- 分類
- P1652.113-YAA(H01L) / P1652.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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特許第6809511号の請求項1ないし11に係る発明についての出願は、平成28年9月5日の出願である特願2016-172606号の一部を平成30年5月17日に新たな特許出願とした、特願2018-95168号の一部を平成30年7月6日に新たな特許出願としたものであって、令和2年12月14日にその特許権が設定登録され、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年11月19日の訂正請求の趣旨は、特許第6809511号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、8.0°以上である条件を満たす」と記載されているのを、「前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上であり、前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3ないし9、11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が4.0°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-4.0°以下である条件を満たす」と記載されているのを、「前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下であり、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3ないし9、11も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に「前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の貫通電極基板。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、8.0°以上である条件を満たし、前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する、貫通電極基板。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の貫通電極基板。」と記載されているのを、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有する貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が4.0°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-4.0°以下である条件を満たし、前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する、貫通電極基板。」とする新たな請求項12に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の貫通電極基板と、前記貫通電極基板の前記導電体と電気的に接続された半導体回路基板と、を有する半導体装置。」と記載されているのを、請求項10を引用しないものとして、「請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の貫通電極基板と、前記貫通電極基板の前記導電体と電気的に接続された半導体回路基板と、を有する半導体装置。」に訂正する。
(6)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、3ないし11は、請求項3ないし11が、訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、請求項1、3ないし11は一群の請求項を構成する。
また、本件訂正前の請求項2ないし11は、請求項3ないし11が、訂正の対象となる請求項2を直接又は間接的に引用しているものであるから、請求項2ないし11は一群の請求項を構成する。
そして、これら一群の請求項は、共通する請求項3ないし11を有するから、請求項1ないし11は一群の請求項であり、それに対応する訂正後の請求項1ないし12は一群の請求項である。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-12〕に対して請求されたものである。
(7)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項10、12については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「貫通孔」が満たす「条件」について、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、8.0°以上」から、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上であり、前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる」と、「貫通孔」が満たす「条件」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
明細書の段落【0052】の表3には、形状「A1」について、傾斜角度合計値TSAが29.23°で、評価結果が良好であること、及び、形状「A2」について、傾斜角度合計値TSAが11.71°で、評価結果が良好であることが記載されている。
そうすると、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、8.0°以上」から、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上」である条件は、明細書に記載されているといえる。
そして、図11には、形状「A1」についての深さFdと傾斜角度TAとの関係が示されており、これによると、43.75%(175μm)、56.25%(225μm)、81.25%(325μm)(「%」と「μm」の関係は【0044】参照)の距離の位置における貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなることが読み取れる。また、図12には、形状「A2」についての深さFdと傾斜角度TAとの関係が示されており、これによると、43.75%(175μm)、56.25%(225μm)、81.25%(325μm)の距離の位置における貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなることが読み取れる。
したがって、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる」条件は、明細書又は図面に記載されているといえる。
よって、訂正事項1は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項1は上述のとおり、訂正前の請求項1に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)独立特許要件
訂正前の請求項1ないし9、11について特許異議の申立がされているので、訂正前の請求項1、3ないし9、11に係る訂正事項1に関して、独立特許要件は課されてない。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載の「貫通孔」が満たす「条件」について、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が4.0°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-4.0°以下」から、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下であり、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる」と、「貫通孔」が満たす「条件」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
明細書の段落【0075】の表7には、形状「C1」について、傾斜角度合計値TSAが23.31°で、評価結果が良好であること、及び、形状「C2」について、傾斜角度合計値TSAが11.71°で、評価結果が良好であることが記載されている。
そうすると、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下」である条件は、明細書に記載されているといえる。
そして、図23には、形状「C1」についての深さFdと傾斜角度TAとの関係が示されており、これによると、18.75%(75μm)、43.75%(175μm)、56.25%(225μm)、81.25%(325μm)(「%」と「μm」の関係は【0073】、【0074】参照)の距離の位置における貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなることが読み取れる。また、図24には、形状「C2」についての深さFdと傾斜角度TAとの関係が示されており、これによると、18.75%(75μm)、43.75%(175μm)、56.25%(225μm)、81.25%(325μm)の距離の位置における貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなることが読み取れる。
したがって、「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる」条件は、明細書又は図面に記載されているといえる。
よって、訂正事項2は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項2は上述のとおり、訂正前の請求項2に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)独立特許要件
訂正前の請求項1ないし9、11について特許異議の申立がされているので、訂正前の請求項2ないし9、11に係る訂正事項2に関して、独立特許要件は課されてない。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項10が請求項1から請求項9いずれか一項の記載を引用するものであったのものを、請求項2ないし9の引用を削除し、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は上述のとおり、訂正前の請求項10に係る発明について、引用関係を解消すると共に引用請求項を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)独立特許要件
訂正後の請求項10は「前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、8.0°以上である条件を満たし、前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する」を発明特定事項として含むものである。
そして、当該発明特定事項は、特許異議の申立ての証拠として提出された甲第1号証ないし甲第6号証に記載されておらず、訂正後の請求項10に係る発明は、甲第1号証または甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、訂正後の請求項10に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項10が請求項1から請求項9いずれか一項の記載を引用するものであったのものを、請求項1、3ないし9の引用を削除し、請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し新たな請求項12とするものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は上述のとおり、訂正前の請求項10に係る発明について、引用関係を解消すると共に引用請求項を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)独立特許要件
訂正後の請求項12は「前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が4.0°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-4.0°以下である条件を満たし、前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する」を発明特定事項として含むものである。
そして、当該発明特定事項は、特許異議の申立ての証拠として提出された甲第1号証ないし甲第6号証に記載されておらず、訂正後の請求項12に係る発明は、甲第1号証または甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、訂正後の請求項12に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項11が請求項1から請求項10いずれか一項の記載を引用するものであったのものを、請求項10の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は上述のとおり、引用請求項を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)独立特許要件
訂正前の請求項1ないし9、11について特許異議の申立がされているので、訂正前の請求項11に係る訂正事項5に関して、独立特許要件は課されてない。
(2)小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。そして、特許権者から訂正後の請求項10、12について訂正が認められるときは、一群の他の請求項とは別途訂正することの求めがあった。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9、11〕、10、12について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下「本件発明1ないし12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、続きを表示(全46行)前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上であり、前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす、貫通電極基板。【請求項2】第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有する貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下であり、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす、貫通電極基板。【請求項3】前記絶縁領域は、絶縁体が充填された領域である、請求項1または請求項2に記載の貫通電極基板。【請求項4】前記絶縁体は、樹脂を含む、請求項3に記載の貫通電極基板。【請求項5】前記導電体は、第1金属層と第2金属層とを含み、前記第1金属層は、前記第2金属層と前記基板との間に配置され、前記第1面と前記第2面との双方において、少なくとも一部に前記第1金属層が配置されている、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の貫通電極基板。【請求項6】前記第1面と前記第2面とに配置された前記第1金属層の少なくとも一部は、前記貫通孔の内部に配置された前記第1金属層と接続されている、請求項5に記載の貫通電極基板。【請求項7】前記基板は、ガラス基板である、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の貫通電極基板。【請求項8】前記導電体は、前記基板上に配置された第1金属層および前記第1金属層上に配置された第2金属層を含む、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の貫通電極基板。【請求項9】前記貫通孔のアスペクト比は4以上である、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の貫通電極基板。【請求項10】第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、8.0°以上である条件を満たし、前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する、貫通電極基板。【請求項11】請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の貫通電極基板と、前記貫通電極基板の前記導電体と電気的に接続された半導体回路基板と、を有する半導体装置。【請求項12】第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有する貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が4.0°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-4.0°以下である条件を満たし、前記貫通孔は、孔内部において径がさらに極大値を有する、貫通電極基板。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし9、11に係る特許に対して、当審が令和3年9月14日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(1)甲第1号証を主引例とした場合
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項1ないし4、7、9、11
・引用文献等 甲第1号証
●理由2(進歩性)について
・請求項5、6、8
・引用文献等 甲第1号証、甲第5号証、甲第6号証
(2)甲第2号証を主引例とした場合
●理由2(進歩性)について
・請求項1ないし9、11
・引用文献等 甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証
(3)甲第3号証を主引例とした場合
●理由2(進歩性)について
・請求項1、3ないし9、11
・引用文献等 甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証
(4)甲第5号証を主引例とした場合
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項1、3ないし9、11
・引用文献等 甲第5号証
<引用文献一覧>
2 引用文献の記載事項、引用発明
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(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
「【0019】図1は、貫通孔100を有する基板1(コア基板1)に配線120を形成した配線基板の一部分の断面図である。図2は貫通孔100を有する基板1と多層配線層3と応力緩和するための絶縁層5(応力緩和層5)等を有する多層配線基板6の一部分を示す断面図である。図3は、多層配線基板を用いた電子装置として、多層配線基板6に半導体装置9(以下、半導体素子、半導体チップということもある)等を実装したマルチチップモジュールの一部分を示す断面図である。なお、図3は図12のa-a’の断面図を示す。図4は、そのマルチチップモジュールを実装基板(ユーザ基板)10に実装した様子を示す断面図である。図5は、マルチチップモジュールの一例の斜視図である。」
「【0033】加工条件にもよるが、サンドブラストにより貫通孔100を形成すると、図1にも示すように、一方の開口端と他方の開口端とで貫通孔100の径が異なること多い。すなわち、フォトエッチング法またはレーザ加工では、径がほぼ一定の貫通孔101(スルーホール)が形成されやすいのに対して、サンドブラストでは、サンドブラストが開始された基板の表面(加工開始面)からもう一方の基板の表面(加工終了面)に向って、貫通孔100の径の大きさは徐々に小さくなる。」
「【0035】図6はサンドブラストによって形成された貫通孔100と、フォトエッチング法によって形成された貫通孔101を示したものである。サンドブラストにより形成された貫通孔100の壁面の極表面には、加工原理そのものに由来する微小の凹凸が存在するため、貫通孔100の内壁面上の配線は強い密着強度が得られる。また、サンドブラストの加工条件を適宜選択して、スパッタにより貫通孔100の内面に給電膜が形成され易くなるように壁面のテーパ角を調節することも容易である。この結果として、給電膜の形成後に貫通孔100の内面にめっき配線を精密に形成できる。なお、テーパの角度を調節するには、加工が進むにつれてサンドブラストに用いる粒子の粒径を変化させたり、風圧を調整するなどの方法がある。【0036】なお、図32に示すように、両面からサンドブランドを行うことにより絶縁基板の中央から外部に向って貫通孔の径が広がっていく形状としてもよい。この場合、一方から貫通孔を開口する場合に比べ、貫通孔形成までの時間が短縮されるため、開口端での貫通孔の径は小さくすることができる。・・・」
「【0037】貫通孔100の2次側開口径は、100から1000umであり、絶縁基板1の厚みに対して1/10倍から10倍程度となることが望ましい。2次側開口径が絶縁基板1の厚みの約10倍を越えると、絶縁基板1のその部分における機械的強度、例えば抗折強度が保てないからである。逆に、2次側開口径が絶縁基板1の厚みの約1/10より小さくなると、1次側にまで貫通する孔を形成するためには、ほぼ90度、少なくとも88度のテーパ角が必要となるので、貫通孔壁面への配線形成が困難になりやすい。また、加工粉体が孔の奥にまで到達しにくくなり、その結果としてサンドブラスト加工の速度が遅くなるからである。」
「【0041】図1乃至図4では、絶縁基板1の両面において電気的接続を可能とする貫通孔100の内面には、導電性材料(配線101)が存在している。例えば銅配線101は、貫通孔100の内面にスパッタ等により給電膜、例えばCr/Cuを形成し、その後電気めっきにより形成する。なお、銅配線101が形成された後に、絶縁性の材料を充填してもよい。また、絶縁基板1の両面間の電気的接続を取る方法として、貫通孔100の内面に配線を形成する以外に、ペースト印刷等により貫通孔100を導電性材料で充填する、又ははんだ材料を溶融させて流し込むようにしてもよい。適切に選択した導電性材料を絶縁基板1に充填した場合は、貫通孔100を有する絶縁基板1の強度を高めることもできる。」
[図:0001384141000001.jpg]
図6より、基板1の厚みは0.5mmで、2次側開口径は0.26mmで、1次側開口径は0.1mmであることが見て取れる。
イ 甲1発明1
図6記載の貫通孔に着目すると、上記記載より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた甲第1号証の記載箇所を示す。以下同様。)。
「貫通孔100を有する基板1に配線120を形成した配線基板であって(【0019】)、基板の表面からもう一方の基板の表面に向って、貫通孔100の径の大きさは徐々に小さくなり(【0033】)、貫通孔100の内面に、スパッタによりCr/Cuを形成し、その後電気めっきにより形成された銅配線101が存在し、銅配線101が形成された後に、絶縁性の材料を充填したものであり(【0041】)、基板1の厚みは0.5mmで、2次側開口径は0.26mmで、1次側開口径は0.1mmである(図6)、配線基板。」
ウ 甲1発明2
段落【0036】に、両面からサンドブラストを行うことにより絶縁基板の中央から外部に向って貫通孔の径が広がっていく形状としてもよいと記載されているので、図6の貫通孔の作成を、両面からサンドブラストを行うと、貫通孔の形状は、基板1の厚みが0.5mmで、2次側開口径が0.26mmで、中央部の径が0.18mmで、1次側開口径が0.26mmとなる。
上述の両面からサンドブラストで形成した貫通孔に着目すると、上記記載より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されている。
「貫通孔100を有する基板1に配線120を形成した配線基板であって(【0019】)、絶縁基板の中央から外部に向って貫通孔の径が広がっていき(【0036】)、貫通孔100の内面に、スパッタによりCr/Cuを形成し、その後電気めっきにより形成された銅配線101が存在し、銅配線101が形成された後に、絶縁性の材料を充填したものであり(【0041】)、基板1の厚みは0.5mmで、2次側開口径は0.26mmで、中央部の径は0.18mmで、1次側開口径は0.26mmである(図6、【0036】)、配線基板。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、貫通電極付きガラス板、特に、レーザ加工を利用して形成された貫通孔を有するガラス板を用いて製造される貫通電極付きガラス板およびこのガラス板を用いた電子部品に関する。」
「【0008】本発明は、電子基板として適する貫通電極付きガラス板を製造する方法であって、貫通電極を精度よく、且つ高密度に形成できる方法の提供を目的とする。」
「【0100】このガラス板のレーザ入射面側を研削した後に鏡面研磨して、厚みを250μmとした。これにより有底孔は貫通孔となった。貫通孔は、レーザ入射面の開口径が15μm、反対側の表面の開口径が100μmの円錐台状の形状を有しており、その内周面は、テーパー状の面となっていた。【0101】引き続き、貫通孔を形成したガラス板と、あらかじめ電気回路を形成した4インチのシリコンウェハとを陽極接合した。この際、ガラス板の貫通孔の位置とシリコンウェハの電気回路の取り出し電極の位置とが一致するように調整した。陽極接合は、シリコンウェハの回路形成面とガラス板のレーザ入射面とを貼り合わせ、温度420℃、印加電圧800Vで行った。【0102】こうして得た接合ウェハのガラス面側の表面に、スパッタリング法によりニッケルを堆積してシード層とし、さらにガラスの貫通孔が充填されるように50μmの厚みで銅をメッキした。」
「【0116】エッチング後のガラス板の厚みは300μmであり、レーザ光を照射した位置には、両表面の開口径が80μm、ガラス板の厚みの中心付近の径が20μmの鼓状の貫通孔が形成されていた。【0117】このガラス板を用いて実施例1と同様に接合ウェハを作製した。得られた接合ウェハのガラス面側の表面に、無電解メッキ法によりニッケルを堆積してシード層とし、さらにガラスの貫通孔が充填されるように50μmの厚みで接合ウェハの全表面に電解銅メッキを行った。」
イ 甲2発明1
円錐台状の貫通孔(【0100】)に着目すると、上記記載より、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されている。
「貫通孔を有するガラス板を用いて製造される貫通電極付きガラス板であって(【0001】)、ガラス板の厚みが250μmであり、貫通孔は、レーザ入射面の開口径が15μm、反対側の表面の開口径が100μmの円錐台状の形状を有しており(【0100】)、貫通孔を形成したガラス板と、シリコンウェハとを陽極接合し(【0101】)、接合ウェハのガラス面側の表面に、スパッタリング法によりニッケルを堆積してシード層とし、さらにガラスの貫通孔が充填されるように50μmの厚みで銅をメッキした(【0102】)、貫通電極付きガラス板。」
ウ 甲2発明2
鼓状の貫通孔(【0116】)に着目すると、上記記載より、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されている。
「貫通孔を有するガラス板を用いて製造される貫通電極付きガラス板であって(【0001】)、ガラス板の厚みは300μmであり、貫通孔は、両表面の開口径が80μm、ガラス板の厚みの中心付近の径が20μmの鼓状であり(【0116】)、貫通孔を形成したガラス板と、シリコンウェハとを陽極接合し(【0101】)、接合ウェハのガラス面側の表面に、無電解メッキ法によりニッケルを堆積してシード層とし、さらにガラスの貫通孔が充填されるように50μmの厚みで電解銅メッキを行った(【0117】)、貫通電極付きガラス板。」
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
「【0006】しかし、集積回路の微細化・複雑化に伴い、TSVやTGVにおいて貫通孔のアスペクト比(孔径に対する孔の深さ)が大きくなると、貫通孔に充填される貫通電極の埋め込み性(膜の付き回り性)が悪くなり、貫通電極内部にボイドが形成されてしまう場合がある。貫通電極内部にボイドが形成されると、ボイドからの脱ガスによる素子や膜質の劣化、ボイドによる機械的強度の低下が問題となる。」
「【0033】図1は、本発明の実施形態1に係る貫通電極基板の概要を示す平面図である。また、図2は、本発明の実施形態1に係る貫通電極基板のA-B断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態1に係る貫通電極基板10は、第1面101及び第1面101とは反対側の第2面102を有し、第1面101と第2面102とを貫通する貫通孔120が設けられた基板100と、貫通孔120の内部に配置され、第1面101と第2面102とを接続する貫通電極110とを有する。【0034】図1において、貫通電極110は第1導電層111及び第2導電層112を含み、第1導電層111は基板100と第2導電層112の間に配置され、第2導電層112は貫通孔120を充填して配置される。また、第1導電層111は第2導電層112が基板100中に拡散することを抑制する材料であってもよい。ここで、第1面101と貫通孔120の第1側壁121とのなす角度131は91°以上100°以下である。ここで、角度131は、好ましくは91°以上95°以下であるとよい。また、角度131は、より好ましくは91.5°以上93.5°以下であるとよい。また、図1に示すように、第1面101における貫通孔120の第1孔径123は第2面102における貫通孔120の第2孔径124に比べて大きい。つまり、貫通孔120はテーパ形状である。また、貫通孔120の第2孔径124は基板100の厚さの1/2以下である。つまり、貫通孔120のアスペクト比は2以上である。」
イ 甲3発明
上記記載より、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「第1面101と第2面102とを貫通する貫通孔120が設けられた基板100と、貫通孔120の内部に配置された貫通電極110とを有する貫通電極基板10であって(【0033】)、貫通電極110は第1導電層111及び第2導電層112を含み、第1導電層111は基板100と第2導電層112の間に配置され、第2導電層112は貫通孔120を充填して配置され、第1面101と貫通孔120の第1側壁121とのなす角度131は91.5°以上93.5°以下であり、第1面101における貫通孔120の第1孔径123は第2面102における貫通孔120の第2孔径124に比べて大きく、貫通孔120はテーパ形状である(【0034】)、貫通電極基板10。」
(4)甲第5号証
ア 甲第5号証には、次の事項が記載されている。
「【0004】貫通孔内に空間を残しておくと、半導体チップの動作の信頼性を低下させる要因になる場合がある。そのため、特許文献1に開示されるように、例えば、電解めっき法を用いて、貫通孔の内部に導電層を充填する。しかしながら、貫通孔の内部に導電層を充填するには、多くの時間が必要であった。また、貫通孔の大きさ、または電解めっき法の条件によっては貫通孔内の導電層にボイドが発生し、貫通孔内に多くの空間が残存し、密閉性が低下する場合もあった。【0005】本発明は、貫通電極基板における貫通孔内の密閉性を高めることを目的とする。」
「【0023】貫通電極基板10は、貫通孔150が形成された半導体基板100において、半導体基板100の第1の面101側と第2の面102側とを、貫通孔150を介して電気的に接続するための導電層250が形成されている。貫通孔150は、半導体基板100の第1の面101から第2の面102を貫通するように形成された孔である。【0024】貫通孔150の内壁には、絶縁層250が形成されている。さらに、絶縁層250上には、導電層350が形成されている。貫通孔150内の残りの部分(導電層350より内側)には、絶縁性充填部材(以下、絶縁性樹脂450という)が充填されている。」
「【0033】また、各図では、貫通孔150は貫通孔基板10の厚さ方向にストレートな形状を示しているが、これに限らず、テーパー形状などであってもよい。テーパー形状である場合には、第1の面101側の開口部が狭く、第2の面102側の開口部が広い形状であることが望ましい。すなわち、後述するように、感光性樹脂層が形成される場合、貫通孔150の開口が広い側からの形成を後に行った方が、貫通孔150内に感光性樹脂層を導入しやすいためである。テーパーの角度を断面視において第2の面102と貫通孔150の内壁とのなす角とすると、例えば、テーパーの角度は、91°~94°とすることが好ましい。」
「【0051】上述のようにして製造された貫通電極基板10は、貫通孔150の内壁に沿って形成された導電層350によって半導体基板100の第1の面101側と第2の面102側とを電気的に接続可能である。また、貫通孔150内部を上述のようにして絶縁性樹脂で充填することにより、電解めっき法により金属材料で充填するよりも製造工程を短縮することができ、また貫通孔150の内部においてボイドの発生を抑制することもできる。」
イ 甲5発明
上記記載より、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
「貫通孔150が形成された半導体基板100において、半導体基板100の第1の面101側と第2の面102側とを、貫通孔150を介して電気的に接続するための導電層350が形成されている貫通電極基板10であって(【0023】)、貫通孔150の内壁には、絶縁層250が形成され、さらに、絶縁層250上には、導電層350が形成され、導電層350より内側には、絶縁性樹脂450が充填されており(【0024】)、貫通孔150は、第1の面101側の開口部が狭く、第2の面102側の開口部が広いテーパー形状であり、テーパーの角度は、91°~94°である(【0033】)、貫通電極基板10。」
(5)甲第6号証
甲第6号証には、次の事項が記載されている。
「【0063】上記のようにして製造された貫通電極基板1は、貫通孔90の側壁に沿って形成された導電層(第1導電性密着層15、第2導電性密着層25、シード層35、導電層65)によって基板100の第1面101側と第2面102側とを電気的に接続することができる。また、貫通孔90内部を上記のようにして絶縁性樹脂で充填することにより、電解めっき法により金属材料で充填するよりも製造工程を短縮することができ、また貫通孔90の内部においてボイドの発生を抑制することもできる。」
3 対比、判断
(1)甲第1号証に記載された発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1を対比すると、次のことがいえる。
a 甲1発明1の「基板の表面からもう一方の基板の表面に向って、」「径の大きさは徐々に小さくな」る「貫通孔100」は、本件発明1の「孔内部において径が極小値を有しない貫通孔」に相当する。
したがって、甲1発明1の「貫通孔100を有する基板1」は、本件発明1の「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板」に相当する。
b 甲1発明1の「貫通孔100の内面」に「存在」する「Cr/Cu」及び「銅配線101」は、本件発明1の「前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体」に相当する。
c 甲1発明1は「貫通孔100の内面に」「銅配線101が形成された後に、絶縁性の材料を充填し」ているので、「絶縁性の材料」が「銅配線101」に囲まれている。このことは、本件発明1の「前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され」ていることに相当する。
d 甲1発明1の「貫通孔100」は、「基板1の厚みは0.5mmで、2次側開口径は0.26mmで、1次側開口径は0.1mm」であるから、内側面の傾斜角度は、atan{((0.26-0.1)/2)/0.5}=9.09°である。このことは、本件発明1の「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上であ」ることに含まれる。
但し、本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲1発明1はそのような特定がない点で相違する。
e 甲1発明1の「内面に、」「銅配線101が存在」する「貫通孔100を有する基板1に配線120を形成した配線基板」は、本件発明1の「貫通電極基板」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である、貫通電極基板。」
(相違点1)
本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲1発明1はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件発明1と甲1発明1は、上記のとおり相違点がある。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でない。
b 第29条2項について
上記相違点1について検討する。
貫通孔の壁面のテーパ角について、甲第1号証には、サンドブラストの加工条件を適宜選択して、スパッタにより貫通孔100の内面に給電膜が形成され易くなるように壁面のテーパ角を調節することが記載されているが(【0035】)、具体的なテーパ角は示されていない。また、「逆に、2次側開口径が絶縁基板1の厚みの約1/10より小さくなると、1次側にまで貫通する孔を形成するためには、ほぼ90度、少なくとも88度のテーパ角が必要となるので、貫通孔壁面への配線形成が困難になりやすい。」(【0037】)と、88度以上のテーパ角(本件発明1の「傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)」では、2°以下。)では、貫通孔壁面への配線形成が困難であることが示されているに過ぎず、基板の表面からもう一方の基板の表面に向かって、テーパ角を変化させる旨の記載は存在しない。
そうすると、甲1発明1において、テーパ角を調整して、基板の表面から43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における傾斜角度が順に小さくなるようにする動機はない。
また、甲1号証の段落【0035】には、サンドブラストにより形成された貫通孔100の壁面の極表面には、加工原理そのものに由来する微少の凸凹が存在することが記載されている。
そうすると、テーパ角を調整するにしても、壁面の表面の微少な凸凹は加工原理そのものに由来するものであるため精度よく調整することは困難で、基板の表面から43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における傾斜角度が順に小さくなるようにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、上記相違点1に係る構成は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明2を対比すると、次のことがいえる。
甲1発明2の「絶縁基板の中央から外部に向って」「径が広がってい」く「貫通孔」は、本件発明2の「孔内部において径が極小値を有する貫通孔」に相当する。
また、甲1発明2の「貫通孔100」は、「基板1の厚みは0.5mmで、2次側開口径は0.26mmで、中央部の径は0.18mmで、1次側開口径は0.26mmである」であるから、内側面の傾斜角度は9.09°である。このことは、本件発明2の「記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下であ」ることに含まれる。
但し、本件発明2は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲1発明2はそのような特定がない点で相違する。
そして、本件発明1と甲1発明1との対比を踏まえると、本件発明2と甲1発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有する貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下である、貫通電極基板。」
(相違点2)
本件発明2は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲1発明2はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件発明2と甲1発明2は、上記のとおり相違点がある。
よって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明でない。
b 第29条2項について
上記相違点2について検討する。
貫通孔の壁面のテーパ角について、甲第1号証には、サンドブラストの加工条件を適宜選択して、スパッタにより貫通孔100の内面に給電膜が形成され易くなるように壁面のテーパ角を調節することが記載されているが(【0035】)、具体的なテーパ角は示されていない。また、「逆に、2次側開口径が絶縁基板1の厚みの約1/10より小さくなると、1次側にまで貫通する孔を形成するためには、ほぼ90度、少なくとも88度のテーパ角が必要となるので、貫通孔壁面への配線形成が困難になりやすい。」(【0037】)と、88度以上のテーパ角(本件発明2の「傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)」では、2°以下。)では、貫通孔壁面への配線形成が困難であることが示されているに過ぎず、基板の表面からもう一方の基板の表面に向かって、テーパ角を変化させる旨の記載は存在しない。
そうすると、甲1発明2において、テーパ角を調整して、基板の表面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における傾斜角度が順に小さくなるようにする動機はない。
また、甲1号証の段落【0035】には、サンドブラストにより形成された貫通孔100の壁面の極表面には、加工原理そのものに由来する微少の凸凹が存在することが記載されている。
そうすると、テーパ角を調整するにしても、壁面の表面の微少な凸凹は加工原理そのものに由来するものであるため精度よく調整することは困難で、基板の表面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における傾斜角度が順に小さくなるようにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、上記相違点2に係る構成は、甲1発明2に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 本件発明3、4、7、9、11について
本件発明3、4、7、9、11は、本件発明1又は2に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1又は2と同様な理由により、甲第1号証に記載された発明でない。また、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 本件発明5、6、8について
本件発明5、6、8は、本件発明1又は2に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものである。そして、甲第5号証及び甲第6号証には、上記相違点1及び2に係る構成は記載されていない。
よって、本件発明5、6、8は、甲第1号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)甲第2号証に記載された発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明1を対比すると、次のことがいえる。
a 甲2発明1の「円錐台状の形状を有して」いる「貫通孔」は、本件発明1の「孔内部において径が極小値を有しない貫通孔」に相当する。
したがって、甲2発明1の「貫通孔を有するガラス板」は、本件発明1の「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板」に相当する。
b 甲2発明1の「貫通孔が充填されるように」「メッキした」「銅」は、本件発明1の「前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体」に相当する。
c 甲2発明1は「ガラス板の厚みが250μmであり、貫通孔は、レーザ入射面の開口径が15μm、反対側の表面の開口径が100μmの円錐台状の形状」であるから、内側面の傾斜角度は、atan{((100-15)/2)/250}=9.64°である。このことは、本件発明1の「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上であ」ることに含まれる。
但し、本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲2発明1はそのような特定がない点で相違する。
d 甲2発明1の「貫通電極付きガラス板」は、本件発明1の「貫通電極基板」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である、貫通電極基板。」
(相違点3)
本件発明1は「前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され」ているのに対して、甲2発明1はそのような特定がない点。
(相違点4)
本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲2発明1はそのような特定がない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
甲2発明1の課題は、貫通電極を精度よく、且つ高密度に形成することであり(【0008】)、本件発明1のように、貫通孔の内部に導電体を容易に形成することではない。よって、甲2発明1において「レーザ入射面の開口径が15μm、反対側の表面の開口径が100μmの円錐台状の形状」の「貫通孔」を、上記相違点4に係る構成とする動機はない。
また、甲第5号証及び甲第6号証には、上記相違点4に係る構成は記載されていない。
したがって、上記相違点4に係る構成は、甲2発明1、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明2を対比すると、次のことがいえる。
a 甲2発明2の「鼓状」の「貫通孔」は、本件発明2の「孔内部において径が極小値を有する貫通孔」に相当する。
したがって、甲2発明2の「貫通孔を有するガラス板」は、本件発明2の「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有する貫通孔を含む基板」に相当する。
b 甲2発明2の「貫通孔が充填されるように」「行った」「電解銅メッキ」は、本件発明1の「前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体」に相当する。
c 甲2発明2は「ガラス板の厚みは300μmであり、貫通孔は、両表面の開口径が80μm、ガラス板の厚みの中心付近の径が20μmの鼓状であり」であるから、内側面の傾斜角度は、atan{((80-20)/2)/(300/2)}=11.31°である。このことは、本件発明2の「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下である条件を満たす」ことに含まれる。
但し、本件発明2は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲1発明2はそのような特定がない点で相違する。
d 甲2発明2の「貫通電極付きガラス板」は、本件発明1の「貫通電極基板」に相当する。
したがって、本件発明2と甲2発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有する貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が11.71°以上、および前記第1面から56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度の合計値が-11.71°以下である、貫通電極基板。」
(相違点5)
本件発明2は「前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され」ているのに対して、甲2発明2はそのような特定がない点。
(相違点6)
本件発明2は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から18.75%、43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲2発明2はそのような特定がない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点6について検討する。
甲2発明2の課題は、貫通電極を精度よく、且つ高密度に形成することであり(【0008】)、本件発明2のように、貫通孔の内部に導電体を容易に形成することではない。よって、甲2発明2において「両表面の開口径が80μm、ガラス板の厚みの中心付近の径が20μmの鼓状」の「貫通孔」を、上記相違点6に係る構成とする動機はない。
また、甲第5号証及び甲第6号証には、上記相違点6に係る構成は記載されていない。
したがって、上記相違点6に係る構成は、甲2発明2、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 本件発明3ないし9、11について
本件発明3ないし9、11は、本件発明1又は2に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1又は2と同様な理由により、甲第2号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)甲第3号証に記載された発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、次のことがいえる。
a 甲3発明の「第1面101における貫通孔120の第1孔径123は第2面102における貫通孔120の第2孔径124に比べて大きく、」「テーパ形状である」「貫通孔120」は、本件発明1の「孔内部において径が極小値を有しない貫通孔」に相当する。
したがって、甲3発明の「貫通孔120が設けられた基板100」は、本件発明1の「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板」に相当する。
b 甲3発明の「貫通孔120の内部に配置された貫通電極110」である「第1導電層111及び第2導電層112」は、本件発明1の「前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体」に相当する。
c 甲3発明は「第1面101と貫通孔120の第1側壁121とのなす角度131は91.5°以上93.5°以下であ」るから、内側面の傾斜角度は、1.5°以上3.5°以下である。このことは、本件発明1の「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である条件を満たす」ことに含まれる。
但し、本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲3発明はそのような特定がない点で相違する。
d 甲3発明の「貫通電極基板10」は、本件発明1の「貫通電極基板」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である、貫通電極基板。」
(相違点7)
本件発明1は「前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され」ているのに対して、甲3発明はそのような特定がない点。
(相違点8)
本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲3発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点8について検討する。
甲3発明の課題は、貫通電極内部にボイドが形成されてしまうのを防止するためであり(【0006】)、本件発明1のように、貫通孔の内部に導電体を容易に形成することではない。よって、甲3発明において「第1面101と貫通孔120の第1側壁121とのなす角度131は91.5°以上93.5°以下であ」る「貫通孔120」を、上記相違点8に係る構成とする動機はない。
また、甲第5号証及び甲第6号証には、上記相違点8に係る構成は記載されていない。
したがって、上記相違点8に係る構成は、甲3発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
イ 本件発明3ないし9、11について
本件発明3ないし9、11は、本件発明1に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様な理由により、甲第3号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)甲第5号証に記載された発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲5発明を対比すると、次のことがいえる。
a 甲5発明の「第1の面101側の開口部が狭く、第2の面102側の開口部が広いテーパー形状であ」る「貫通孔150」は、本件発明1の「孔内部において径が極小値を有しない貫通孔」に相当する。
したがって、甲5発明の「貫通孔150が形成された半導体基板100」は、本件発明1の「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板」に相当する。
b 甲5発明の「貫通孔150の内壁に」「形成され」た「導電層350」は、本件発明1の「前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体」に相当する。
c 甲5発明の「導電層350より内側には、絶縁性樹脂450が充填されて」いるこのことは、本件発明1の「前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され」ていることに相当する。
d 甲5発明の「貫通孔150」の「テーパーの角度は、91°~94°である」であるから、内側面の傾斜角度は1°~4°である。このことは、本件発明1の「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である条件を満たす」ことに含まれる。
但し、本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲5発明はそのような特定がない点で相違する。
e 甲5発明の「貫通電極基板10」は、本件発明1の「貫通電極基板」に相当する。
したがって、本件発明1と甲5発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である、貫通電極基板。」
(相違点9)
本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲5発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件発明1と甲5発明は、上記のとおり相違点がある。
よって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明でない。
b 第29条2項について
上記相違点9について検討する。
甲5発明の課題は、貫通孔内の導電層にボイドが発生することを防止して、貫通孔内の密閉性を高めることであり(【0004】、【0005】)、本件発明1のように、貫通孔の内部に導電体を容易に形成することではない。よって、甲5発明において「テーパーの角度は、91°~94°である」「貫通孔150」を、上記相違点9に係る構成とする動機はない。
したがって、上記相違点9に係る構成は、甲5発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
イ 本件発明3ないし9、11について
本件発明3ないし9、11は、本件発明1に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様な理由により、甲第5号証に記載された発明でない。また、甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(5) まとめ
以上のことより、当該取消理由通知書に記載した取消理由により、本件発明1ないし9、11に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1、3ないし9、11に係る発明は、甲第4号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。
2 各号証の記載
(1)甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が記載されている。
ア 「背景技術このように孔が開けられた、例えば、ガラス、石英ガラス、合成樹脂またはセラミック材料の板は、特に、電界放射表示装置及び薄型電子表示装置に用いられ、これら金属化された孔は、蛍光物質が設けられたルミネッセントスクリーンに向かって移動する電子流とプラズマ表示装置内の電子流とを制御する電極として働く。このような板の表面はまた、前記電極を駆動する(アドレスする)ために用いられる幅狭の金属トラックも有する。このような表示装置において、これらの板は、制御板または選択板として用いられる。薄型電子表示装置は、少なくとも二つの選択板を有する。」(4頁8-16行)
イ 「以下に考慮されるべき各図において、層厚等の寸法は縮尺通りに書かれていない。第1A図において、参照番号1は、ガラス板の断面の一部を示している。この板は、27×44cmの寸法で、0.4mmの厚さを持つ。この板を酸化アルミニウムパウダーのジェットに曝すことにより、300μmの最大直径を持ち100μmの最小直径を持つ300、000個の円錐型の円孔3が該板内に形成される。これら孔が形成される方法は、前述のヨーロッパ特許出願公開第562670号公報に記載されている。いかなる小さな酸化アルミニウム粒子も除去するために、前記板は2%の肝の水溶液内に2分間浸される。この板は、次いで、水洗され、乾燥される。」(12頁6-13行)
ウ 「露光された前記ラッカーコーティングは、EAGLE(商標)REMOVER2009(Shipley社)内に前記板を浸すことにより除去され、この後、該板は、水洗される(第1F図参照)。ここで、前記ガラス板は、その壁にニッケル硼素層7’で被覆された銅層5’が設けられている孔を有している。前記板は、ニッケル硼素層7”で被覆された銅トラック5”を有している。前記板は、次いで、以下の組成、NiCl2.6H2O 26g/lホスフィン酸塩ナトリウム 24g/l乳酸 27g/lプロピオン酸 2.2g/l酢酸塩 0.002g/lNaOHをph=4.6までの無電解のニッケル蛍光物質の浴内に浸される。この浴の温度は95°Cである。ニッケル硼素層7’、7”の活性化なしに、500nmの厚さのニッケル蛍光物質の層23、25が、このニッケル硼素層上に堆積される(第1G図参照)。前記板は、次いで、水洗される。この段階において、前記ガラス板は、銅電極5’で被覆された孔を有している。この銅電極5’の表面及び銅トラック5”の表面には、耐食性のニッケル蛍光物質層23及び25が各々設けられている。」(14頁9-26行)
上記記載より、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「電界放射表示装置に用いられるガラス板であって(上記「ア」)、ガラス板は27×44cmの寸法で、0.4mmの厚さを持ち、300μmの最大直径を持ち100μmの最小直径を持つ300、000個の円錐型の円孔3が該板内に形成され(上記「イ」)、円孔3には、壁にニッケル硼素層7’で被覆された銅層5’が設けられ、ニッケル蛍光物質の層23、25が、ニッケル硼素層7’上に堆積され(上記「ウ」)、電界放射表示装置に用いられるガラス板。」
(2)甲第5号証
甲第5号証に記載された事項は、上記「第4 2 (4)」に記載したとおりである。
(3)甲第6号証
甲第6号証に記載された事項は、上記「第4 2 (5)」に記載したとおりである。
3 対比、判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明を対比すると、次のことがいえる。
a 甲4発明の「円錐型の円孔3」は、本件発明1の「孔内部において径が極小値を有しない貫通孔」に相当する。
したがって、甲4発明の「円錐型の円孔3が該板内に形成され」た「ガラス板」は、本件発明1の「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板」に相当する。
b 甲4発明の「円孔3」の「壁に」「設けられ」た「ニッケル硼素層7’」、「銅層5’」、「ニッケル蛍光物質の層23、25」は、本件発明1の「前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体」に相当する。
c 甲4発明の「円錐型の円孔3」は、「ガラス板は」「0.4mmの厚さを持ち、300μmの最大直径を持ち100μmの最小直径を持つ」のであるから、内側面の傾斜角度は、14.03°である。このことは、本件発明1の「前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上であ」ることに含まれる。
但し、本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲4発明はそのような特定がない点で相違する。
d 甲4発明の「電界放射表示装置に用いられるガラス板」と本件発明1の「貫通電極基板」とは、「基板」である点で共通する。
但し、本件発明1は「貫通電極基板」であるのに対して、甲4発明は「電界放射表示装置に用いられるガラス板」である点で相違する。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1面から第2面に対して貫通し孔内部において径が極小値を有しない貫通孔を含む基板と、前記貫通孔の内側面に沿って配置された導電体と、を備え、前記貫通孔は、前記第1面から前記第2面までの区間のうち前記第1面から6.25%、18.75%、31.25%、43.75%、56.25%、68.75%、81.25%、93.75%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度(前記第1面側が拡がる角度を正の傾斜角度とする)の合計値が、11.71°以上である、基板。」
(相違点A)
本件発明1は「前記貫通孔の内部には、前記導電体に囲まれた絶縁領域が配置され」ているのに対して、甲4発明はそのような特定がない点。
(相違点B)
本件発明1は「前記第1面から前記第2面までの区間のうち43.75%、56.25%、81.25%の距離の位置における前記貫通孔の中心軸に対する内側面の傾斜角度が順に小さくなる条件を満たす」のに対して、甲4発明はそのような特定がない点。
(相違点C)
本件発明1は「貫通電極基板」であるのに対して、甲4発明は「電界放射表示装置に用いられるガラス板」である点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
相違点Aについて
貫通電極基板において、貫通孔の内部に樹脂を充填することは周知である(例えば、甲第5号証(【0051】)、甲第6号証(【0063】)等参照)。
しかしながら、甲4発明の「ガラス板」は電界放射表示装置に用いられるものであり、当該「ガラス板」において、「円孔3」の内部に樹脂を充填して「ニッケル蛍光物質の層23、25」を樹脂で覆うことは、発光の妨げになるので想定できないことであり、甲4発明に上記周知技術を適用することは、当業者が容易になし得たことはいえない。
したがって、上記相違点Aに係る構成は、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)本件発明3ないし9、11について
本件発明3ないし9、11は、本件発明1に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様な理由により、甲第4号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
4 まとめ
したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1ないし9、11に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1ないし9、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700612