特許異議申立
2023-700788
艶消物品
- 審判番号
- 2023-700788
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-055911
- 登録番号
- 7215514
- 請求日
- 2023年07月31日
- 審決日
- 2024年08月02日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】飯田 進
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 神山 茂樹
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7215514号発明「艶消物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7215514号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7215514号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7215514号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和3年3月29日に出願され、令和5年1月23日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年1月31日発行)がされ、その後、その特許について、令和5年7月31日に特許異議申立人飯田進(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和5年11月14日付けで取消理由が通知され、令和6年1月10日に特許権者から意見書の提出がされ、令和6年2月14日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和6年4月15日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、この本件訂正請求について、令和6年6月12日に申立人より意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所に当審が付したものである。
(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記艶消層は、前記艶消物品の表面に配置され、
前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である」と記載されるのを、
「前記艶消層は、前記艶消物品の表面に配置され、
前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下であり、
前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~11も同様に訂正する。)
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項2~11は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
2.訂正の適否
訂正事項は、請求項1の艶消物品の艶消層側の60°グロス値を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0078】には、「例えば60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うものとする。」と、また【0080】には、「前記艶消層側の60°グロス値として5.0以下、更には4.0以下、3.6以下、3.2以下、2.5以下と極めて優れた艶消効果の視認性を発現し得るものである。」と記載されているから、訂正事項は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正後の請求項〔1~11〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
艶消物品であって、
前記艶消物品は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、
前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成され、
前記凸部及び前記凹部は、前記凹凸形状における高さ分布の中間値を基準とし、前記中間値を超える高さの領域を凸部、前記中間値以下の高さの領域を凹部、としたものであり、
前記艶消物品は、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、
前記艶消層は、前記艶消物品の表面に配置され、
前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下であり、
前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である、艶消物品。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、平均粒子径が前記表面シワ層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤を含有する、請求項1に記載の艶消物品。
【請求項3】
前記シワ形成安定剤の含有量が、前記樹脂組成物に含まれる樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下である、請求項2に記載の艶消物品。
【請求項4】
前記艶消層が、前記艶消層の厚さの100%超及び30μm超のいずれか小さい方を下限とする平均粒子径を有する艶消剤を含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の艶消物品。
【請求項5】
前記艶消層が、全面にわたって設けられる請求項1~4のいずれか1項に記載の艶消物品。
【請求項6】
前記樹脂が、電離放射線硬化性樹脂である請求項1~5のいずれか1項に記載の艶消物品。
【請求項7】
更に基材を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の艶消物品。
【請求項8】
前記凹凸形状が、前記艶消層の前記基材とは反対側の面に存在する請求項7に記載の艶消物品。
【請求項9】
前記基材と前記艶消層との間に装飾層を有する請求項7又は8に記載の艶消物品。
【請求項10】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂が、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の艶消物品。
【請求項11】
前記重合性モノマー及び前記重合性オリゴマーの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量が、5質量部以上45質量部以下である請求項10に記載の艶消物品。」
第4 取消理由(決定の予告)について
1.取消理由(決定の予告)の概要
本件特許の請求項1~11に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証~甲第6号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献>
甲第1号証:韓国公開特許第10-2020-0025050号公報
甲第2号証:特開2012-213923号公報
甲第3号証:特開2017-43106号公報
甲第4号証:特開2011-73207号公報
甲第5号証:特開2014-69507号公報
甲第6号証:特開2021-829号公報
(以下、甲第1号証を「甲1」といい、他も同様にいう。)
2.判断
(1)引用文献の記載事項等
ア 甲1
甲1(なお、日本語訳は甲1添付の翻訳文による。)の[0001]の記載から、甲1の発明が解決しようとする課題は、「ノンスリップ性に優れた床材およびその製造方法」であるといえる。また、甲1の[0023]には、「ノンスリップ性に優れるだけでなく60°グロス・メーター(60 Gloss- Meter)基準に有意に低い表面光沢を具現できるので、審美的効果が優れた利点がある。」ことも記載されており、甲1の[0056]には、「具体的に、前記床材は、光沢計 (Gloss Meter)を用いた60°光沢度(グロス60°条件)を測定し、表面光沢度が5未満であり、より具体的には、上限が4.5以下、4以下、3.5以下、3以下、2.5以下又は2.3以下であり、下限が0.1超、0.5超、1超、又は 1.1超又は2又はそれ以上であり得る。」と記載されている。
更に、甲1の[0060]、[0072]及び[0073]の記載から、床材は基材層及び硬化層を備えており、基材層上に塗布されたアクリル樹脂組成物に光を照射し、照射された光によって発生したエキシマ(excimer)が塗布されたアクリル樹脂組成物及び/またはこれの硬化物表面を収縮させることによって、「しわ」が形成されているといえる。
加えて、甲1の[0060]の記載、[図2]から、硬化層は、床材の表面に配置されているといえる。
そうすると、甲1(特に、[請求項7]、[請求項11]、[請求項12]、[0001]、[0006]、[0009]、[0011]~[0012]、[0023]、[0032]、[0047]~[0048]、[0052]、[0056]、[0059]~[0060]、[0072]、[0073]、[0102]、[0125]、[0133]、[図2]等)の記載を総合すると、甲1には、次の「甲1発明」が記載されていると認められる。
「床材であって、
前記床材は、アクリル樹脂組成物の硬化物により構成される硬化層を有し、
前記硬化層は、前記床材の表面に配置され、
前記硬化層側の60°光沢度(グロス60°条件)が5未満であり、
表面に、アクリル樹脂組成物の硬化物を収縮させることによって形成されたしわを有する、床材。」
イ 甲2
甲2には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、表面の保護、装飾等を目的として、木質板、プラスチック板等の表面に貼着して用いられている。そして、これによって得られた化粧板は、各種の建材、家具等に使用されている。
【0003】
従来の化粧シートは、表面が一般に滑らかである。そのため、フローリング、階段等の床材用として使用した場合に、人が歩くと滑りやすく、転倒のおそれがある。
【0004】
そこで、化粧シートに表面の防滑性を付与する目的で、熱可塑性ポリマーを表面に散在露出させた床材が提案されている(特許文献1)。また、表面保護層に特殊なフィラーを添加したり、化粧シートの表面にエンボス加工を施すことにより防滑性を付与した床材が知られている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の床材(化粧板)を、軽量物、例えば犬、猫等のペットに対して使用した場合、防滑性に劣るという問題がある。
【0007】
また、表面保護層にフィラーが添加された化粧シートやエンボス加工を施した化粧シートは、使用すると前記フィラー表面が削れてしまうなど、特定の表面凹凸形状が消失し、防滑性が徐々に低下するという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、対象が軽量物においても防滑性に優れる化粧シートであって、防滑性の低下が抑制された化粧シートを提供することを主な目的とする。」
「【0011】
以下、本発明の化粧シート及び化粧板について詳細に説明する。
本発明の化粧シートは、表面保護層を最表面に有する化粧シートであって、
(1)前記表面保護層のマルテンス硬さが30~170N/mm2であり、(2)前記表面保護層は凹凸を有し、かつ当該凹凸の平均間隔Smが180μm~500μmであり、
(3)前記表面保護層の最大高さRzが20~60μm
である。本発明の化粧シートが上記特徴を有することによって、対象が軽量物においても防滑性に優れ、かつ防滑性の低下が抑制されている。」
「【0042】
(表面保護層)
本発明の化粧シートは、最表面にマルテンス硬さ(硬度)が30~170N/mm2である表面保護層を有する。当該表面保護層の好ましいマルテンス硬さは、60~150N/mm2である。マルテンス硬さが上記範囲内であれば、対象が軽量物においても防滑性に優れ、防滑性の低下が抑制されている。特に、後述する特定の表面凹凸形状が消失した後においても、防滑性を保持することができる。
・・・
【0045】
また、本発明の化粧シートは、その表面に特定の凹凸形状を有する。
【0046】
当該凹凸の平均間隔(Sm)は、180μm~500μmであり、Smが上記範囲内であれば、対象が重量物又は軽量物に拘わらず、防滑性に優れる。好ましいSmの範囲は250~350μmである。
【0047】
上記Smは、表面保護層の凹凸の間隔を示す指標であり、上記表面保護層の粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、さらに上記した和の平均値を表したものである。Smが小さいと、表面の目が細かい(凹凸が密の状態である)。
【0048】
また、表面保護層の最大高さ(Rz)は、20~60μmである。好ましくは20~53μmであり、より好ましくは20~50μmである。Rzが20を下回る場合は、対象が軽量物である場合の防滑性が劣り、Rzが60を超える場合は耐傷性が劣る。
・・・
【0059】
表面保護層は、耐擦傷性等の観点から、電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であることが好ましい。電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線、電子線等を照射することにより、架橋及び硬化する樹脂を指す。
【0060】
電離放射線硬化型樹脂としては、公知のもの又は市販品を使用することができる。具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用いる。
【0061】
前記のプレポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルメタアクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ウレタンメタアクリレート、ポリオールメタアクリレート、メラミンメタアクリレート等のメタアクリレート類、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開2007-118596に則ったウレタンアクリレートオリゴマーを用いてもよい。」
「【0094】
化粧シートの製造方法
本発明の化粧シートは、少なくとも上記した表面保護層を最表面に有することにより得られる。例えば、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性熱可塑性樹脂層及びプライマー層を積層した後、最表面に表面保護層を形成することにより得られる。
【0095】
また、化粧シートにエンボス加工を施す場合は、表面保護層を形成した後でもよいし、表面保護層を形成する前でもよい。例えば、具体的な態様として、1)基材シート上に絵柄模様層、透明性熱可塑性樹脂層及びプライマー層を順に形成した後、表面保護層を形成し、最後にエンボス加工を施してもよい。また、別の具体的態様として、2)基材シート上に絵柄模様層、透明性熱可塑性樹脂層及びプライマー層を順に形成した後、エンボス加工を施し、最後に表面保護層を形成してもよい。また、さらに別の具体的態様として、3)基材シート上に絵柄模様層、透明性熱可塑性樹脂層を順に形成し、次いでエンボス加工を施した後、プライマー層を設け、最後に表面保護層を形成してもよい。エンボス加工により、表面保護層のSm、Rz、Rzjis、静摩擦係数及び動摩擦係数を調整する場合は、表面保護層を形成した後にエンボスを施すことが好ましい。
【0096】
エンボス加工は、公知のエンボス版を使用し、例えば、シート温度120℃~160℃、10~40kg/cm2の圧力にて化粧シートの絵柄印刷面側に凹凸パターンを転写すればよい。」
ウ 甲3
甲3は、甲2の特許出願(特願2011-81111号)の分割出願に係る公開公報であり、甲2と同様の記載がある。
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「床材」について、甲1には、「本発明に係る床材は、硬化層表面に形成された放射状溝の構造を介して表面に入射される光の散乱を誘導することで硬化層に艶消剤をごく少量を含むか、又は場合によっては含まなくても、顕著に低い光沢を具現することができる。具体的に、前記床材は、光沢計(Gloss Meter)を用いた60°光沢度(グロス60°条件)を測定し、表面光沢度が5未満であり、・・・」([0056])との記載がある。これに対し、本件特許明細書等には「上記艶消物品の製造方法は、とりわけ、前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下という艶消物品を製造する場合に好適な製造方法となり得る。・・・、しかも60°グロス値が5.0以下の艶消(低艶、低光沢)の表面を実現し得る点において、従来公知の艶消化粧材、艶消化粧シート等の艶消物品の製造方法とは一線を画するものである。」(【0120】)との記載があり、また「そして種々の用途、例えば、・・・床等の建築物の内装用部材」(【0147】)と化粧部材の用途が例示されているから、甲1発明の「床材」は、本件発明1と同様、床に低光沢艶消がなされているといえ、本件発明1の「艶消物品」に相当する。
また、前記相当事項に係る説明から、甲1発明の「アクリル樹脂組成物」、「硬化物」及び「硬化層」は、本件発明1の「樹脂組成物」、「硬化物」及び「艶消層」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「60°光沢度(グロス60°条件)」は、本件発明の「60°グロス値」に相当するから、甲1発明の「前記硬化層側の60°光沢度(グロス60°条件)が5未満であ」ることは、本件発明の「前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下であり、」に相当する。
更に、甲1発明の「表面に」「しわを有」している態様と、本件発明1の「表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成され、前記凸部及び前記凹部は、前記凹凸形状における高さ分布の中間値を基準とし、前記中間値を超える高さの領域を凸部、前記中間値以下の高さの領域を凹部、としたものであ」る態様とは、「表面にシワを有し」ている態様の限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「艶消物品であって、
前記艶消物品は、表面にシワを有し、
前記艶消物品は、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、
前記艶消層は、前記床材の表面に配置され、
前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下である、艶消物品。」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
「表面にシワを有し」ている態様に関して、本件発明1は、「表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成され、前記凸部及び前記凹部は、前記凹凸形状における高さ分布の中間値を基準とし、前記中間値を超える高さの領域を凸部、前記中間値以下の高さの領域を凹部、としたものであ」るのに対して、甲1発明は、不規則なシワによる凹凸形状を有しているか、また、そのような凸部及び凹部が形成されているか特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1の「艶消層」は、「マルテンス硬度が200N/mm2以下である」のに対して、甲1発明の「硬化層」は、そのような硬度が特定されていない点。
イ 事案に鑑み、相違点2より検討する。
(ア)甲1発明の床材は、硬化層のアクリル樹脂組成物の硬化物を収縮させることによって形成される「しわ」を表面に有し、この「しわ」により、耐汚染性、ノンスリップ性及び低い表面光沢が具現されるものである。
(イ)一方、甲2は、ウレタンアクリレートオリゴマー等の電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を硬化させるものであり、マルテンス硬さが30~170N/mm2とするものであるが、硬化させる際、甲1発明のような「しわ」ができるとは記載されていない。
(ウ)そのため、「しわ」の形成を指向する甲1発明に、「しわ」の形成について記載のない甲2の技術的事項を適用する動機付けは存在しない。
甲3についても同様である。
また、他の提出された証拠には、マルテンス硬さについて記載されていない。
(エ)また、本件発明は「前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下である」ことを特定するものであるが、【0038】には、「艶消層のマルテンス硬度は、小さければ小さいほど、60°グロス値を低減させることが可能であり、」と記載されており、「マルテンス硬度」と「60°グロス値」とは相互に関連するものであるから、「60°グロス値」が好適な数値範囲となっている甲1発明において「60°グロス値」に影響を及ぼすとされる「マルテンス硬度」を変更しようとはしないことは明らかである。
(オ)申立人は、甲1発明にマルテンス硬度についての周知技術1(甲2、甲3)を適用することは、当業者ならば容易に想到し得たことである旨(令和6年6月12日の意見書2~4頁)主張する。
しかし、上記したとおり、甲1発明の硬化層が、「しわ」の形成を指向するものであるから、「しわ」の形成について記載のない技術的事項が、たとえ周知技術であったとしても適用することはない。よって、申立人の上記主張は採用できない。
(カ)よって、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 以上より、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~11について
本件発明2~11は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるところ、上記(2)で述べたように、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~11も、甲1発明及び甲2、甲3記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1.申立理由
申立人は、取消理由(決定の予告)で採用した進歩性違反のほか、次の理由を申し立てている。
(1)実施可能要件違反
発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない(特許法第36条第4項第1号)。
(2)サポート要件違反
本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない(特許法第36条第6項第1号)。
2.実施可能要件及びサポート要件についての判断
(1)発明の詳細な説明の記載
ア 発明が解決しようとする課題
「【0006】
艶消効果(マット効果)により質感を向上させる手法としては、上記特許文献1のように艶消剤(matting agent、「マット剤」とも称される。)を用い、それ自体が有する光拡散効果により艶消効果を得る手法、上記特許文献2のようにエンボス加工を施すことで最表面に凹凸形状を形成する手法等が主に挙げられる。
【0007】
しかし、特許文献1のように艶消剤を用いる場合、艶消効果をより優れたものとするにはその使用量を増加させる必要があるが、その使用量が多くなるにつれて、艶消剤が塗膜から脱落し、かつ塗膜を傷つけることで耐擦傷性が低下し、また艶消剤の欠落による艶変化により傷が目立ちやすくなる、また艶消剤と樹脂との界面の微小な間隙に汚染物質が浸透する、さらに艶消剤自体に汚染物質が吸着することで耐汚染性が低下するなどの理由により、表面特性が低下する傾向にある。他方、表面特性の低下を抑制するために使用量を少なくすると艶消効果が低下する傾向にあり、表面特性と艶消効果とは二律相反の関係にある。そのため、艶消剤を用いたマット効果には限界がある。
また、特許文献2のようにエンボス加工を用いる場合、エンボスの版の作製は多大な手間がかかり容易なことではなく、さらに所望の柄ごとに版を作製する必要が生じる。そのため、顧客の需要の多様性に十分に対応しやすい手法であるとはいえない。
【0008】
また、物品の質感を艶消効果により向上させる手法として、(i)無機粒子をブラストすることにより表面を粗面化する手法、(ii)アルカリ処理液を用いた分解反応により表面を粗面化するケミカルエッチング、また(iii)ドラムプリンティングシステム・・・等による粗形状版を用いた印刷塗料の転写による手法等も挙げられる。しかし、(i)の手法では無機粒子をブラストすることで物品自体の物性の低下が生じてしまい、(ii)のケミカルエッチングでは、使用可能な樹脂材料の選定が必要となり制約が生じるため汎用性が低い。そして、(i)~(iii)に共通して、生産速度が遅く、歩留まりが多く、生産性に乏しいという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、艶消効果の視認性および質感に優れる艶消物品を、生産性高く提供することを課題とするものである。」
イ 発明を実施するための形態
「【0014】
[艶消物品]
本実施形態の艶消物品は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である、ことを特徴とする物品である。
【0015】
〔艶消層〕
艶消層は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される層である。表面に不規則なシワによる凹凸形状を有することで、艶消効果及び質感が発現する。この場合、優れた艶消効果及び質感を獲得するには、艶消物品の全面にわたり均一に艶消効果が発現し、部分的な艶のムラが低減される、安定的な艶消効果の視認性(以下、単に「安定的な艶消効果の視認性」といった表現、これに準ずる表現を用いる場合がある。)とともに、艶消物品の全面にわたりシワが安定して形成することによる面状態の均一性(「質感」とも称する。)を獲得することが肝要である。
本実施形態の艶消物品においては、艶消層が有するマルテンス硬度を200N/mm2以下という特定の範囲内とすることにより、艶消層の表面にシワが形成しやすくなり、優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものとなり得る。
・・・
【0019】
また、物品の質感を艶消効果により向上させる手法として、既述のように(i)無機粒子をブラストすることにより表面を粗面化する手法、(ii)ケミカルエッチング、また(iii)転写による手法等が挙げられるが、いずれも生産速度が遅く、歩留まりが多く、生産性に乏しいという問題もある。その点、本実施形態の艶消物品は、艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とするだけで、その表面の不規則なシワが形成し、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感が得られるため、生産性に極めて優れるものである。
・・・
【0021】
艶消物品は、その表面に不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する。このようなシワによる凹凸形状は、艶消層が所定のマルテンス硬度を有することで形成し、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感を発現することとなる。特に、艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する形態においては、当該シワにより艶消層に優れた艶消効果の視認性及び質感を発現させる上で好適である。
【0022】
また、不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。本明細書において、「線条の突起部」(以下、「線条突起部」とも称する。)とは、当該突起部の長さと幅との比(長さ/幅)が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であることを意味し、当該長さ及び幅の決定方法は後述の通りである。
本実施形態において、より好ましい不規則なシワは、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの、である。」
「【0038】
(マルテンス硬度)
本実施形態の艶消物品において、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下であることを要する。マルテンス硬度が200N/mm2を超えると、艶消層の表面の不規則なシワが形成しにくくなるため、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られない。
艶消層のマルテンス硬度は、小さければ小さいほど、60°グロス値を低減させることが可能であり、好ましくは190N/mm2以下、より好ましくは180N/mm2以下、更に好ましくは175N/mm2以下、より更に好ましくは160N/mm2以下、特に好ましくは140N/mm2以下であり、最も好ましくは50N/mm2以下である。また下限については特に制限はなく、艶消層に要求される機械的強度、艶消層を構成する樹脂自体の特性から、通常1N/mm2以上である。艶消層のマルテンス硬度が上記範囲内であると、艶消層の表面の不規則なシワが形成しやすくなるため、より優れた艶消効果の視認性及び質感が得られる。
【0039】
また、艶消層のマルテンス硬度の調整方法については、後述するが、艶消層形成用の樹脂組成物における樹脂の種類、含有量、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤の種類及び含有量等により調整可能である。」
「【0057】
(樹脂)
艶消層を形成する樹脂としては、硬化することにより硬化物となり艶消層を構成する樹脂であり、また艶消層のマルテンス硬度を上記の所定範囲内とし得る樹脂であればよい。
このような樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。艶消層は、艶消物品の最表面に設けられ得る層であるため、シワを形成しやすい樹脂であることの他、艶消物品として使用性向上の観点から、耐擦傷性、耐汚染性、耐候性等の表面特性、また加工特性を発現しやすい樹脂であることが好ましく、電離放射線硬化性樹脂はこれらの観点から好ましい樹脂である。特に艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する場合には、本実施形態の艶消物品は、例えば上記のシワ形成安定剤のような粒子を用いる場合であっても、その使用量が極めて少ないため、その表面特性として、艶消層を形成する樹脂の性能がより直接的に発揮されることとなる。
【0058】
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
【0059】
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられ、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を安定させて、艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができ、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを用いることが好ましい。
【0060】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリレート系モノマーは、電離放射線硬化性官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、電離放射線硬化性樹脂を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、いずれを用いることもできる。
【0061】
重合性モノマーは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができ、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることが好ましい。
【0062】
二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いる場合、単官能モノマーと多官能モノマーとの組合せ、二種以上の多官能モノマーの組合せが好ましく、多官能モノマーと多官能モノマーとの組合せがより好ましい。
多官能モノマーを用いる場合、官能基数は2以上が好ましく、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
・・・
【0064】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。・・・
・・・
【0066】
艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
・・・
【0068】
重合性オリゴマーの官能基数は、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0069】
また、これと同様の観点から、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1,000以上7,500以下が好ましく、1,500以上6,500以下がより好ましく、1,750以上5,000以下がさらに好ましく、1,900以上4,000以下がよりさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
・・・
【0071】
艶消層を形成する樹脂は、既述のように上記重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも一方を含むことが好ましく、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを含むことがより好ましく、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも一方であることが更に好ましく、重合性モノマー及び重合性オリゴマーであることが特に好ましい。艶消層のマルテンス硬度の調整がしやすく、またシワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくなる。
重合性モノマー及び重合性オリゴマーを採用する場合、重合性モノマーと重合性オリゴマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、より更に好ましくは25質量部以上であり、上限として好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは35質量部以下である。重合性オリゴマーの含有量が上記範囲内であると、艶消層のマルテンス硬度が調整しやすく、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくすることができ、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させることもできる。」
「【0117】
〔艶消物品の製造方法〕
艶消物品は、既述のように、艶消層の単一層による層構成を有する場合、また少なくとも基材を含む層構成を有する場合がある。以下、艶消物品の製造方法について、単一層の場合、基材及びその他の層を有する場合、分けて説明する。
【0118】
まず、単一層の場合は、以下の方法により艶消物品を製造することができる。
離型性支持体の離型層を有する面に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち上記の樹脂、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤、その他添加剤を含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線等の電離放射線を照射して硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
離型層を有する離型性支持体は、艶消物品を使用する際に剥離すればよい。
【0119】
次に、基材及びその他の層を有する場合は、以下の方法により艶消物品を製造することができる。
艶消物品は、例えば基材の一方の主面側に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち上記の樹脂、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤、その他添加剤を含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線等の電離放射線を照射して前記塗布層を硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
・・・
【0121】
このような製造方法により、艶消物品を容易に得ることが可能となる。艶消層の60°グロス値が5.0以下という艶消物品を製造する場合、艶消層の形成にあたり、既述のように、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線を、艶消層を形成するシワ形成安定剤を含む艶消形成用の樹脂組成物に照射する。これにより、当該艶消層の少なくとも一方の表面に、シワを形成させやすくなり、艶消物品(艶消層)に優れた艶消効果の視認性及び質感を付与しやすくなる。
【0122】
このような低波長(短波長)の紫外線を、艶消層形成用の樹脂組成物に照射する場合、艶消層の少なくとも一方の表面においてシワが形成し艶消効果の視認性及び質感が発現しやすくなる機構についての詳細は不明であるが、以下の機構によるものと推察される。
【0123】
艶消層形成用の樹脂組成物を所定の厚さで塗布した塗布物に低波長(短波長)の紫外線を照射すると、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることで、シワが形成するものと考えられる。このように、シワの形成は、低波長(短波長)の紫外線の照射により、艶消層形成用の樹脂組成物の表面からの一定の厚み方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
【0124】
後述する実施例と比較例との対比より、マルテンス硬度が200N/mm2より大きい場合に、シワの形成による艶消効果の視認性及び質感が得られていないことから、当該シワの形成による優れた艶消効果の視認性及び質感の発現は、低波長(短波長)の紫外線による表面部分のみの硬化だけでは説明できない。すなわち、艶消物品がシワを有することで艶消効果の視認性を発現するには、マルテンス硬度が200N/mm2以下であることが必要不可欠である。また、マルテンス硬度が200N/mm2よりも大きい場合にシワの形成により優れた艶消効果の視認性が得られていないことを考慮すると、シワ形成安定剤は、マルテンス硬度が200N/mm2以下である場合に、シワ形成のきっかけとなる核のような機能を発現し、当該核を中心に、上記樹脂組成物の表面部分の樹脂が集まりシワの凸部(突起部)と、凸部(突起部)の形成とともに凹部が形成し、結果としてシワの形成が促進するものと考えられる。そして、このようにして形成したシワは、その形状に起因する光拡散効果により優れた艶消物品に艶消効果の視認性とともに、質感をも付与しやすいものになると考えられる。」
「【0127】
(照射処理について)
本製造方法における艶消層形成工程では、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行うことが好ましい。
(1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
上記(1)の照射処理に続いて、上記(2)の照射処理を行うことにより、上記(1)の照射処理によりシワが保持された樹脂組成物の硬化状態を更に進行させることができるため、表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。」
ウ 測定方法
「【0149】
(評価方法:60°グロス値)
実施例及び比較例で得られた物品について、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、K 5600-4-7:1999に準拠して60°鏡面光沢度を測定した。
【0150】
(質感(面状態の均一性)の評価)
実施例及び比較例で得られた物品について、任意の成人20人に表面の質感(面状態の均一性)について評価させて、以下の基準で評価した。
A:18人以上が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
B:15人以上17人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
C:14人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。【0151】
(マルテンス硬度の測定)
各実施例及び比較例で得られた物品の艶消層について、マルテンス硬度を以下の方法により測定した。
超微小硬度計(微小硬さ試験機、「ピコデンターHM-500」、フィッシャー・インスツルメント社製)を用いて、室温(23℃)において、荷重を加速速度0.15mN/20sで連続的に増加させながら最大荷重3.0mNまで加圧し、ピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(艶消層の面)に押し込んだ。押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を測定し、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm2)を計算し、試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより、マルテンス硬度を算出した。クリープ時間は5秒とした。
任意の10箇所について、上記の測定を行い算出されたマルテンス硬度の平均値を、実施例及び比較例の物品の艶消層のマルテンス硬度とした。」
エ 実施例と比較例
「【0152】
[実施例1]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:60μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(3官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):30質量部、単官能アクリレートモノマー:40質量部、2官能アクリレートモノマー:30質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m2(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:0.6W/cm2)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe2)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm2、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値、マルテンス硬度を測定した。測定結果を第1表に示す。また、質感の評価についても、第1表に示す。
【0153】
[実施例2~5]
実施例1において、艶消層形成用の樹脂組成物の組成を第1表に示される組成とした以外は、実施例1と同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及びマルテンス硬度、また質感の評価を、第1表に示す。
【0154】
[比較例1及び2]
実施例1において、艶消層形成用の樹脂組成物の組成を第1表に示される組成とした以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及びマルテンス硬度、また質感の評価を、第1表に示す。
【0155】
【表1】
[図:0001416454000001.jpg]
【0156】
第1表の結果から、本実施形態の艶消物品は、その艶消層側の60°グロス値が2.0以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れ、かつ質感にも優れた物品であることが確認された。また、実施例における艶消層のマルテンス硬度は200N/mm2以下であり、比較例のマルテンス硬度がいずれも200N/mm2より大きいことから、艶消効果の視認性及び質感とマルテンス硬度とには相関関係があることも確認された。すなわち、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下であることにより、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られていることが確認された。
【0157】
一方、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2よりも大きい比較例1の物品は、図10の光学顕微鏡画像に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、優れた艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり、質感に優れるものとはいえないものであった。また、比較例2の物品も、図11の光学顕微鏡画像に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2よりも大きく、60°グロス値も6.1と高いことから艶消効果は低く、また質感も低いものとなった。このことから、シワ形成安定剤を用いたとしても、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下でないと、シワ形成安定剤の使用効果は得られないことも分かった。」
(2)実施可能要件に係る申立理由について
ア 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすというためには、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。以下検討する。
イ 上記(1)イによれば、艶消物品は、「表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である」(【0014】)。
この凹凸形状は、「艶消層が所定のマルテンス硬度を有することで形成し、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感を発現することとなる。特に、艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する形態においては、当該シワにより艶消層に優れた艶消効果の視認性及び質感を発現させる上で好適である。」(【0021】)とされる。
艶消層のマルテンス硬度の調整方法については、「艶消層形成用の樹脂組成物における樹脂の種類、含有量、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤の種類及び含有量等により調整可能」(【0039】)とされる。
このうち、樹脂の種類については、「従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができ、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを用いることが好ましい。」(【0059】)とされる。
また、実施例の記載(上記(1)エ)において、艶消層の組成物と硬化条件が示されている。
ウ 当業者であれば、以下の発明の詳細な説明の記載にしたがい、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明の艶消物品を製造(実施)することができるものといえる。
(ア)実施例の記載(上記(1)エ)において、艶消層の組成物のうち、「単官能アクリレートモノマー」、「2官能アクリレートモノマー」、「4官能アクリレートモノマー」、「3官能ウレタンアクリレートオリゴマー」、「6官能ウレタンアクリレートオリゴマー」の含有量が記載されている。製造会社及び製品名が記載されていないが、官能基数が記載されており、この官能基数に合致する「アクリレートモノマー」及び「ウレタンアクリレートオリゴマー」を、各種樹脂の中から選択し入手することができる。
そして、艶消層のマルテンス硬度は、測定方法の記載(上記(1)ウ)にしたがい測定できるから、本件発明の艶消物品が製造できたか確認できる。
(イ)さらに、当業者であれば、実施例の組成物を参考に、重合性モノマー及び重合性オリゴマーに係るa~cの記載(上記(1)イ)をもとに適宜変更することもできる。
a 重合性モノマーとしては、「分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好まし」(【0060】)く、「艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることが好ましい。」(【0061】)とされ、「二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いる場合、単官能モノマーと多官能モノマーとの組合せ、二種以上の多官能モノマーの組合せが好ましく、多官能モノマーと多官能モノマーとの組合せがより好まし」く、「多官能モノマーを用いる場合、官能基数は2以上が好ましく、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である」(【0062】)。
b 重合性オリゴマーとしては、「艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から」、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好まし」(【0066】)く、官能基数は「好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下」(【0068】)、重量平均分子量は「1,000以上7,500以下が好ましく、1,500以上6,500以下がより好ましく、1,750以上5,000以下がさらに好ましく、1,900以上4,000以下がよりさらに好ましい。」(【0069】)とされる。
c 照射処理については、「少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線を、艶消層を形成するシワ形成安定剤を含む艶消形成用の樹脂組成物に照射する。これにより、当該艶消層の少なくとも一方の表面に、シワを形成させやすくなり、艶消物品(艶消層)に優れた艶消効果の視認性及び質感を付与しやすくなる。」(【0121】)とされる。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、実施例1~5の「単官能アクリレートモノマー」、「2官能アクリレートモノマー」、「4官能アクリレートモノマー」、「3官能ウレタンアクリレートオリゴマー」、「6官能ウレタンアクリレートオリゴマー」について、具体的な材料は不明であり、当業者といえども、マルテンス硬度のパラメータ値を本件発明1に係る特定の範囲とするために採用すべき肝心の具体的な樹脂材料を特定することができず、実施可能要件違反が存在する旨主張する(特許異議申立書27~30頁)。
(イ)しかし、上記ウ(ア)で述べたように、発明の詳細な説明の実施例の記載に基づいて、「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「アクリレートモノマー」について、各種樹脂の中から該当する官能基数のものを選択し入手できる。
また、発明の詳細な説明に、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることで、艶消層のマルテンス硬度の調整がしやすくなる旨記載(【0061】)され、実施例及び比較例において、単官能モノマーの割合が大きい実施例1から、順次、単官能モノマーの割合を減らして4官能モノマーを加えた実施例2~5、比較例1、2とでは、マルテンス硬度が増加することが確認でき、当業者であれば、単官能モノマーと多官能モノマーの配合割合を調整することで、マルテンス硬度も調整できることが理解できるはずである。
(ウ)申立人は、実施例に記載された官能基数に合致するウレタンアクリレートオリゴマーとアクリレートモノマーであっても、本件発明を満足しない場合があることを示しておらず、官能基数が合致するものを選択しても、本件発明の化粧シートが製造できる場合とできない場合があり、製造できる場合を見つけるのが難しいことを主張するものではない。したがって、「多官能ウレタンアクリレートオリゴマー」と「多官能アクリレートモノマー」が実施例に特定して記載されていないことのみをもって、本件発明が実施できないとすることは根拠が乏しく、申立人の上記主張は採用できない。
オ 以上より、実施可能要件に係る申立理由には理由がない。
(3)サポート要件に係る申立理由について
ア 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
イ 本件発明の解決しようとする課題は、「艶消効果の視認性および質感に優れる艶消物品を、生産性高く提供すること」(上記(1)ア)である。
そして、発明の詳細な説明の記載によると、本件発明の艶消物品は、「表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である」(【0014】)。
また「艶消物品は、優れた艶消効果の視認性及び質感を有する物品であり、60°グロス値が5.0以下となる」(【0078】)ものである。
好ましいとされる不規則なシワは、「複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの」(【0022】)である。
さらに、実施例1~5、比較例1、2の結果より、「実施例における艶消層のマルテンス硬度は200N/mm2以下であり、比較例のマルテンス硬度がいずれも200N/mm2より大きいことから、艶消効果の視認性及び質感とマルテンス硬度とには相関関係があることも確認」でき、「艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下であることにより、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られていることが確認」(【0156】)できる。
そうすると、これらの構成を備える本件発明は、上記イの課題を解決すると認識できるものである。すなわち、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、次のa、bを主張する(特許異議申立書30~31頁)。
a 発明の詳細な説明は本件発明を実現するための具体的な技術手段を欠いており、請求項において発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。
b マルテンス硬度はISOで国際標準として規定されているものの、特殊なパラメータであって、当業者といえども、請求項に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるともいえない。
(イ)上記aの主張については、上記(2)エ(イ)で述べたように、「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「アクリレートモノマー」について、各種樹脂の中から該当する官能基数のものを選択し入手でき、また、実施例と比較例の結果から、単官能モノマーと多官能モノマーの配合割合を調整することで、マルテンス硬度も調整できることが理解できるから、申立人がいうような、発明の詳細な説明が本件発明を実現するための具体的な技術手段を欠いているため、請求項において発明の課題を解決するための手段が反映されていないということはない。
(ウ)また、上記bの主張についても、上記イで述べたように、発明の詳細な説明の記載(特に実施例、比較例の記載)から、艶消効果の視認性及び質感とマルテンス硬度とには相関関係があることも確認でき、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下であることにより、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られていることが確認できることから、本件発明の課題を解決できることが認識し得るといえる。
(エ)よって、申立人の上記主張は、いずれも採用できない。
エ 以上より、サポート要件に係る申立理由には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700788