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特許異議申立

2021-700507

透明プラスチック基材及びプラスチックレンズ

審判番号
2021-700507
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-539442
登録番号
6791546
請求日
2021年05月25日
審決日
2022年04月21日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
  • 【権利者代理人】大谷 保
  • 【異議申立人】安藤 宏
審判長/審判官
  • 審判長 細井 龍史
  • 審判官 近野 光知
  • 審判官 土橋 敬介
分類
P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
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事件の表示

特許第6791546号発明「透明プラスチック基材及びプラスチックレンズ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6791546号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6791546号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)9月29日(優先権主張 平成25年9月30日、日本)にされた出願に係る特許であって、令和2年11月9日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年11月25日である。)。その後、令和3年5月25日に、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、特許異議申立人である安藤宏(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。特許異議の申立て後の手続は、以下のとおりである。 令和3年 9月30日付け取消理由通知書 同年12月16日 応対記録 同年12月24日 意見書(特許権者) 第2 本件発明 本件特許の請求項1~6に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1~6に係る発明を、順に「本件発明1」等という。)。 「【請求項1】 2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールを、透明プラスチック基材を形成する樹脂成分100質量部に対して0.40~2.00質量部含み、透明プラスチック基材を形成する樹脂成分が、エピスルフィド樹脂であり、偏光層を有しておらず、波長410nmの光のカット率が50%以上である透明プラスチック基材。 【請求項2】 前記樹脂成分が、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-ブチルチオグリコレートを反応させてなるエピスルフィド樹脂である、請求項1に記載の透明プラスチック基材。 【請求項3】 380~500nmの波長域の光線カット率が35%以上である請求項1又は2に記載の透明プラスチック基材。 【請求項4】 波長410nmの光のカット率が60%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の透明プラスチック基材。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の透明プラスチック基材を有するプラスチックレンズ。 【請求項6】 請求項1~4のいずれか一項に記載の透明プラスチック基材を有する眼鏡用プラスチックレンズ。」 第3 申立ての理由と当審が通知した取消理由 1 特許異議申立書に記載した申立理由 申立人は、本件発明1~6は下記(1)及び(2)のとおりの理由があるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであると主張し、証拠方法として、下記(3)の甲第1号証~甲第3号証を提出した。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性) 本件発明1~6は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(甲第3号証を主引用文献とする進歩性) 本件発明1~6は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)証拠方法 甲第1号証:特開2001-164110号公報 甲第2号証:特開2005-292240号公報 甲第3号証:特開2008-101190号公報 (以下、甲第1~3号証を、順に、「甲1」等という。) 2 当審が取消理由通知で通知した理由 ・取消理由(進歩性) 本件発明1~6は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 特許権者が令和3年12月24日提出の意見書とともに提出した証拠 乙第1号証:HOYA株式会社ビジョンケア部門量産技術グループの上坂昌久が令和3年12月14日に作成した甲1の実施例5の再現追試実験の実験成績証明書 (以下、乙第1号証を「乙1」という。) 第4 当審の判断 当審は、以下に述べるとおり、当審が通知した取消理由、並びに申立人が申立てた申立理由1及び2のいずれによっても、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。甲1を主引用文献とする申立理由1は取消理由と同旨であるから、これらを併せて検討する。 1 甲1を主引用文献とする取消理由及び申立理由1について (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 甲1には、請求項1、4、6及び7、【0001】、【0008】、【0017】(「最も好ましい化合物としては、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド」)、【0023】(「2-(3-tertブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール…商品名「Tinuvin 326」)、【0024】(「エピスルフィド系化合物総重量に対する紫外線吸収剤の比が0.15~2.0質量%の範囲内であり…該組成物を重合させて得られる樹脂の2mm厚平板における400nmでの分光透過率が15%以下」)、【0029】、【0032】、【0046】~【0048】、【0052】及び表1の記載がある。 具体的に、請求項1には、分子内に式(1)で示される構造を1個以上有するエピスルフィド系化合物の少なくとも1種と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有し、エピスルフィド系化合物の総重量に対して0.15~2.0質量%の範囲内で含有する重合性組成物が記載され、請求項6を引用する請求項7には、請求項1に記載の重合性組成物を重合させて得られるエピスルフィド系樹脂が2mm厚平板における400nmでの分光透過率が15%以下であることが記載されている。 そして、実施例5には、上記エピスルフィド樹脂の具体例として、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド100gに、4,8or4,7or5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン5.0gと、紫外線吸収剤である2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール1.0gを混合して溶解した後、硬化触媒としてN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン0.1gを添加し混合後、減圧下0.2時間脱泡し、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入し、このモールドを30℃から120℃まで徐々に昇温し、24時間で重合を行い、得られた樹脂成形体を離型したこと、及び上記成形体は、400nmでの透過率が3.5%であったことが記載されている。 そうすると、甲1には、実施例5に着目して、以下の発明が記載されているといえる。 「ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド100gに、4,8or4,7or5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン5.0gと、紫外線吸収剤である2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール1.0gを混合して溶解した後、硬化触媒としてN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン0.1gを添加し混合後、減圧下0.2時間脱泡し、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入し、このモールドを30℃から120℃まで徐々に昇温し、24時間で重合を行い、離型した成形体であって、400nmでの透過率が3.5%である前記成形体」(以下、「甲1発明」)という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド」を重合することによって得た成形体は、本件発明1の「エピスルフィド樹脂」に相当する。 本件発明1の「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の一種であるところ、甲1発明の「2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール」も、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の一種であるため、両者は「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」である限りで一致する。 甲1発明の「成形体」は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィドを重合したものであり、眼鏡用プラスチックレンズに用いるものであって透明であることは明らかであり、本件明細書の「透明とは、透き通っていて向こう側が視認できることをいう」(【0031】)との記載とも整合するものである。一方、本件発明1の「透明プラスチック基材」は、本件明細書の「本発明の透明プラスチック基材の製造方法としては・・・ベンゾトリアゾール化合物を・・・モノマーに添加混合した後、該モノマーを重合する方法が挙げられる」(【0026】)、「ベンゾトリアゾール化合物・・・を水に溶解又は分散させた液に、透明プラスチック基材を浸漬させ」(【0027】)、「透明プラスチック部材は・・・透明プラスチック基材と、機能層とを有する」(【0029】)等の記載を合わせてみると、透明プラスチックの硬化物であると解される。そうすると、甲1発明の「成形体」も透明プラスチックの硬化物であるから、本件発明1の「透明プラスチック基材」に相当する。 そして、甲1発明は、「ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド」100gに対して、紫外線吸収剤である「2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール」1.0gを含有するものであるから、本件発明1の「透明プラスチック基材を形成する樹脂成分100質量部に対して0.40~2.00質量部を含み」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、透明プラスチック基材を形成する樹脂成分100質量部に対して0.40~2.00質量部含み、透明プラスチック基材を形成する樹脂成分が、エピスルフィド樹脂である、透明プラスチック基材」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が、本件発明1では「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」であるのに対して、甲1発明では、「2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール」である点 相違点2:本件発明1は「偏光層を有しておらず」であるのに対して、甲1発明は偏光層を有するか不明である点 相違点3:本件発明1は、「波長410nmの光のカット率が50%以上である」のに対して、甲1発明は、「400nmでの透過率が3.5%である」点 イ 検討 事案に鑑みて、相違点1及び3を併せて検討する。 本件発明1の「透明プラスチック基材」は、上記(2)アで述べたように、樹脂の成形体であり、「波長410nmの光のカット率が50%以上」とは、素材自体の物性ではなく、成形体である「透明プラスチック基材」に固有の測定値であると解される。そして、本件発明1の具体例である実施例8では、肉厚1.6mmのプラスチックレンズを用いて上記カット率を測定している(【0034】、【0037】)。 一方、甲1発明の成形体は、「400nmでの透過率が3.5%」、すなわち、波長400nmの光のカット率が96.5%であるが、特許権者が提出した実験成績証明書である乙1には、甲1の【0048】及び【0052】に記載された手順と同様に、実施例5の重合性組成物を調合した後、重合を行って樹脂の成形体を得たこと、及び、2mm平板の上記樹脂における波長400nm及び410nmのカット率がそれぞれ93.4%及び45.2%であったことが示されている(乙1の「5.実験方法」)。なお、乙1に記載された実験及び評価の方法に不可解な点は見当たらない。乙1の実験結果によると、甲1発明における波長410nmのカット率は400nmのカット率よりも48ポイント以上低く、波長400nmのカット率と410nmのカット率が大きく異なることが示されているといえる。 また、本件明細書の比較例3は、エピスルフィド樹脂に、紫外線吸収剤として、U-5である「2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール」を用いたものであり、波長410nmのカット率が32%であるが(表1)、このU-5は、甲1発明の「2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール」と同じ化合物であり、乙1の実験結果と概ね整合するものである。 これらのことから、甲1発明は、本件発明1の「波長410nmの光のカット率が50%以上である」ことを満たすことは推認できない。 そして、甲1には、上記(1)で述べたとおり、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2-(3-tertブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(商品名「Tinuvin 326」)が例示され(【0023】)、これは本件発明1の「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」であるが、甲1には、その他にも種々のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示されており(【0020】~【0023】)、その中で、上記「Tinuvin 326」を用いる場合に、エピスルフィド系樹脂における波長410nmの光のカット率が50%となることは記載も示唆もされていない。また、甲1には、甲1発明の「2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール」と、上記「Tinuvin 326」)とが同列に扱われており、乙1の実験結果も参酌すると、上記「Tinuvin 326」を用いる場合に、エピスルフィド系樹脂における波長410nmの光のカット率が50%となることが推察されるとはいえない。 そうすると、甲1発明において、甲1の記載に基づいて、紫外線吸収剤である「2-(5-tertオクチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール」に代えて、「2-(3-tertブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(商品名「Tinuvin 326」)」、すなわち、本件発明1の「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」を採用し、波長410nmの光のカット率が50%以上であるものとすることが動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことでない。 そして、甲2には、波長が400nm近辺までの紫外線の吸収性に優れるプラスチック眼鏡レンズ及びそれに用いる紫外線吸収剤の提供を課題とし、甲2における一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール化合物が記載されているが(請求項1、【0010】~【0017】)、本件発明1の「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」は記載されていないし、また、好適なプラスチック眼鏡レンズの性状として、波長405nmにおける光線透過率が50%以上であることが記載されているが(【0027】)、「波長410nmの光のカット率が50%以上」とすることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明において、紫外線吸収剤として「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」を採用し、「波長410nmの光のカット率が50%以上である」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことでない。 ウ 本件発明1の効果について 本件発明1は、「青色光のカット率が高い透明プラスチック基材」(【0006】)を提供できるという効果を奏するものであり、具体的には「波長410nmの光のカット率が50%以上である」ものである。 一方、甲1には、「樹脂の2mm厚平板における400nmでの分光透過率が15%以下」(【0024】)というレベルの紫外線吸収能の付与が可能であることが記載されるにとどまり、乙1の実験結果を参酌すると、上記イで述べたように、「波長410nmの光のカット率が50%以上である」ことを示すものではなく、甲2にも示されていない。 そうすると、本件発明の上記効果は、甲1及び甲2の記載から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 エ 小括 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(2)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~6は、甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 取消理由に採用しなかった申立理由2(甲3を主引用文献とする進歩性)について (1)甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明 甲3には、請求項1及び10(光学材料用樹脂組成物)、請求項12(光学材料)、【0001】(技術分野)、【0002】(従来技術)、【0006】(課題の解決手段)、【0017】(含有量)、【0023】(添加剤)、【0024】(酸化防止剤)の記載があり、請求項1を引用する請求項10をさらに引用する請求項12に着目すると、以下の発明が記載されている。 「(a)下記一般式(1)で表されるエピスルフィド化合物、(b)キシリレンジチオール化合物および(c)キシリレンジイソシアネート化合物を含有し、 前記(a)エピスルフィド化合物が、光学材料用樹脂組成物に対して40重量%~90重量%含まれる光学材料用樹脂組成物を硬化して得られる光学材料。 [図:0001384131000001.jpg] (1) (式中、mは0~4の整数、nは0~2の整数を示す。)」(以下、「甲3発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「一般式(1)で表されるエピスルフィド化合物」及び「光学材料」は、それぞれ、本件発明1の「エピスルフィド樹脂」及び「透明プラスチック基材」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「透明プラスチック基材を形成する樹脂成分を含み、透明プラスチック基材を形成する樹脂成分が、エピスルフィド樹脂である透明プラスチック基材。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点4:本件発明1が「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールを、透明プラスチック基材を形成する樹脂成分100質量部に対して0.40~2.00質量部含」むのに対して、甲3発明は、そのようなものであるのかが不明である点 相違点5:本件発明1は、「偏光層を有して」いないのに対して、甲3発明は、そのようなものであるのかが不明である点 相違点6:本件発明1は、「波長410nmの光のカット率が50%以上である」のに対して、甲3発明は、そのようなものであるのかが不明である点 イ 検討 事案に鑑みて、相違点4及び6を併せて検討する。 甲3には、(a)甲3における一般式(1)で表されるエピスルフィド化合物、(b)キシリレンジチオール化合物、(c)キシリレンジイソシアネート化合物を含有する光学材料用樹脂組成物に、紫外線吸収剤を0.000001~5重量%の量で添加することが記載され(【0024】)、紫外線吸収剤の具体例として、本件発明1の「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」を含む、種々のベンゾトリアゾール系化合物が例示されている。 また、甲3の実施例1では、上記光学材料樹脂組成物100重量部に対して、紫外線吸収剤である「2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール」0.5重量部を混合して重合硬化したレンズが記載されており、この紫外線吸収剤は、本件明細書の比較例3で用いられた「2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール」と同じ化合物であり、甲3の実施例1と本件明細書の比較例3とは、エピスルフィド樹脂に対する紫外線吸収剤の添加量が同程度であることから(本件明細書の比較例3では、エピスルフィド樹脂100質量部に対して0.40質量部の量で添加)、甲3の実施例1における波長410nmのカット率は、本件明細書の比較例3(波長410nmのカット率は32%)と同じく50%に満たないものであると推察される。 これらのことから、甲3には、紫外線吸収剤として「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」を用いることにより、「波長410nmの光のカット率が50%以上である」ものとすることは記載も示唆もされておらず、また、上記1(2)イで述べたように、甲2にも何ら記載も示唆もされていない。 そうすると、甲3発明において、「2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」を用いて、「波長410nmの光のカット率が50%以上である」とすることが動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、相違点5について検討するまでもなく、甲3に記載された発明、並びに、甲3及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたことではない。 (3)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(2)で述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明、並びに、甲3及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~6は、甲3に記載された発明、並びに、甲3及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由、並びに、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700507

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