特許異議申立
2021-700450
パーキング装置
- 審判番号
- 2021-700450
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-033788
- 登録番号
- 6852698
- 請求日
- 2021年05月12日
- 審決日
- 2022年01月12日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】トヨタ自動車株式会社
- 【異議申立人】鈴木 満
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 段 吉享
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-Y (B60T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6852698号発明「パーキング装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6852698号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6852698号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、2018年(平成30年) 2月27日の出願であって、令和 3年 3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年 3月31日に特許掲載公報が発行された。その後、同年 5月12日に特許異議申立人鈴木満(以下、「申立人」という。)から本件特許の請求項1に係る特許について特許異議の申立てがあったものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
車軸と直結したパーキングギヤと、
支点ピンに回転可能に支持され、前記パーキングギヤの歯溝と噛み合い可能な爪部が設けられたパーキングポールと、
を備えたパーキング装置であって、
前記支点ピンは、一端部がハウジングに設けられたハウジングボス部に保持されており、他端部がケースに設けられたケースボス部に保持されており、
前記支点ピンの前記パーキングポールと前記ハウジングとの間の部分に装着され、一端部が前記ハウジングボス部に取り付けられ、他端部が前記パーキングポールに取り付けられたトーションスプリングを備えており、
前記ハウジングボス部の径は、前記支点ピンの径よりも大きいことを特徴とするパーキング装置。」
第3 特許異議の申立ての理由及び証拠方法
1.特許異議の申立ての理由
申立人は、証拠として甲第1号証及び甲第2号証を提出し、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
2.証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下に示す甲第1号証~甲第2号証である。
甲第1号証:特許第3306217号公報
甲第2号証:特開2003-185018号公報
第4 甲各号証の記載事項
1.甲第1号証に記載された事項及び甲1発明
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されていると認められる(下線は、当審において付与した。以下同様。)。
ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無段変速機のパーキング機構に関するものである。」
イ「【0006】
【実施例】図1及び図2に、本発明の実施例の基本的な配置を示す。また、図3にコントロールケーブルの部分の詳細を示し、図4にパーキング機構の詳細を示す。図2に示すように、無段変速機のエンジンと同軸の第1軸10上に、流体伝動装置12、前後進切換装置14、Vベルト式無段変速機構の駆動プーリ16が配置されている。第1軸10と平行な第2軸18上に、駆動プーリ16とVベルト20を介して連結される従動プーリ22が配置されている。第2軸18の右端には出力ギア24が配置されており、これに隣接して従動プーリ22側にパーキングギア26が設けられている。第2軸18と平行な第3軸27上に、アイドラギア28及びファイナルドライブギア30が設けられている。第3軸27と平行な第4軸32上に、差動機構33が設けられている。なお、上記各部材は、ケーシング34、これのエンジン側に配置されるハウジング60、及びこれとは反対側に配置されるサイドカバー62によって区画される空間内に収容される。・・・マニアルシャフト38のケーシング34内部側の部分にアクチュエータ42が設けられている。アクチュエータ42は、ケーシング34にピン44によって揺動可能に設けられたパーキングポール46の一端に接触している。パーキングポール46の他端に設けられた歯は、アクチュエータ42がマニアルシャフト38と共に回転したとき、ピン44を支点として揺動し、パーキングギア26とかみ合い可能である。・・・」
ウ「【図1】
[図:0001382387000001.jpg]
」
エ「【図2】
[図:0001382387000002.jpg]
」
オ「【図4】
[図:0001382387000003.jpg]
」
カ 摘記事項イの段落【0006】の「パーキングポール46の他端に設けられた歯は、アクチュエータ42がマニアルシャフト38と共に回転したとき、ピン44を支点として揺動し、パーキングギア26とかみ合い可能である。」との記載及び摘記事項ウの【図1】から、歯が設けられたパーキングポール46とかみ合い可能な歯溝がパーキングギア26に設けられているものと認められる。
キ 摘記事項イの段落【0006】の「上記各部材は、ケーシング34、これのエンジン側に配置されるハウジング60、及びこれとは反対側に配置されるサイドカバー62によって区画される空間内に収容される。」との記載及び摘記事項エの【図2】から、パーキングギア26は、ケーシング34とハウジング60との略境界部分に配置されていると認められる。
ク 摘記事項イの段落【0006】の「パーキングポール46の他端に設けられた歯は、アクチュエータ42がマニアルシャフト38と共に回転したとき、ピン44を支点として揺動し、パーキングギア26とかみ合い可能である。」との記載及び摘記事項ウの【図1】から、パーキングギア26とパーキングポール46とは略同一平面上に配置されていると認められる。
ケ 認定事項キ、ク及び摘記事項オの【図4】から、パーキングポール46の支点であるピン44は、一端部がケーシング34に保持されており、他端部がハウジング60に保持されていると認められる。
コ 摘記事項オの【図4】から、ピン44のパーキングポール46とケーシング34との間の部分に装着され、一端部がケーシング34に取り付けられ、他端部がパーキングポール46に取り付けられたトーションスプリングが看取できる。
(2)甲1発明
(1)の上記ア~オの摘記事項及び上記カ~コの認定事項から、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
【甲1発明】
「第2軸18に設けられたパーキングギア26と、
ピン44によって揺動可能に設けられ、前記パーキングギア26の歯溝とかみ合い可能な歯が設けられたパーキングポール46と、
を備えた無段変速機のパーキング機構であって、
前記ピン44は、一端部がケーシング34に保持されており、他端部がハウジング60に保持されており、
前記ピン44の前記パーキングポール46と前記ケーシング34との間の部分に装着され、一端部が前記ケーシング34に取り付けられ、他端部が前記パーキングポール46に取り付けられたトーションスプリングを備えている無段変速機のパーキング機構。」
2.甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されていると認められる。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクチュエータ、特に、自動変速機のギアセレクタを駆動するためのアクチュエータに関する。また、本発明は、パーキング装置、特に、変速機の出力軸に設けられたパーキングギアをロックするパーキング装置に関する。」
イ「【0021】また、パーキング機構2は、図2に示すように、パーキングギア15と、パーキングポール16と、固定部材17とを有している。パーキングギア15は、自動変速機の出力シャフトにスプライン結合されており、外周部には複数の歯が形成されている。パーキングポール16は、一方向に長い部材であり、パーキングギア15の下方に設けられ、基端側がピン18により回転自在に装着されている。パーキングポール16の先端(自由端)側には、長手方向と交差する方向の一方側(図2において上方)に突出する係止部16aと、他方側(図2において下方)に突出する当接部16bとを有している。係止部16aはパーキングギア15の外周歯に噛み合い可能であり、当接部16bはパーキングカム12の外周カム面に当接している。なお、パーキングポール16の先端部上面には、ねじりバネ19が先端部を下方に押圧するように設けられており、これにより、振動によりパーキングポール16の係止部16aがパーキングギア15に接触するのを防止している。また、固定部材17はパーキングカム12の下方に固定して設けられ、パーキングカム12を支持している。」
ウ「【0030】次にパーキング位置へのセレクト動作について詳細に説明する。セレクトレバー5がP位置に回転させられると、パーキングロッド11がパーキングポール16の方向(図1において左方)に移動する。このパーキングロッド11の移動によってコイルスプリング13が縮められ、これによりパーキングカム12が同様にパーキングポール16の方向に押される。パーキングカム12の上面にはパーキングポール16の先端が当接しているので、パーキングカム12が移動すれば、パーキングポール16との当接部が小径部から大径部に移行することになり、パーキングポール16の先端は上方に押し上げられようとする。すなわち、パーキングポール16は図2においてピン18の回りに反時計回りに回動しようとする。」
エ「【0032】一方、パーキングギア15が回転し、パーキングギア15の外周歯とパーキングポール16の係止部16aとが噛み合い可能な状態になると、すなわちパーキングギア15の歯部がない凹部にパーキングポール16の係止部16aが対応するような位置関係になると、パーキングポール16の上方への回動が許容されるので、パーキングカム12が移動し、パーキングポール16が上方へ回動する。このようにしてパーキングポール16の係止部16aがパーキングギア15の歯に噛み合い、パーキング状態がロックされる。」
オ「【図1】
[図:0001382387000004.jpg]
」
カ「【図2】
[図:0001382387000005.jpg]
」
第5 当審の判断
1.対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
パーキング装置が自動車の駐車中に車輪が動かないように車輪に連動する回転軸をロックするものであることは技術常識であることを勘案すると、本件発明の「車軸」は、車輪に連動する回転軸を意味すると認められる。そして、甲1発明の「第2軸18」は、無段変速機構の出力ギア24が設けられた軸であり車輪に連動する回転軸の1つであるため、甲1発明の「第2軸18」は、本件発明の「車軸」に相当し、甲1発明の「パーキングギア26」は、本件発明の「パーキングギヤ」に相当し、甲1発明の「第2軸18に設けられたパーキングギア26」は、本件発明の「車軸と直結したパーキングギヤ」に相当する。
甲1発明の「ピン44」は、本件発明の「支点ピン」に相当し、甲1発明の「パーキングポール46」は、本件発明の「パーキングポール」に相当し、甲1発明の「歯」は、本件発明の「爪部」に相当し、甲1発明の「ピン44によって揺動可能に設けられ、前記パーキングギア26の歯溝とかみ合い可能な歯が設けられたパーキングポール46」は、本件発明の「支点ピンに回転可能に支持され、前記パーキングギヤの歯溝と噛み合い可能な爪部が設けられたパーキングポール」に相当する。
甲1発明の「無段変速機のパーキング機構」は、本件発明の「パーキング装置」に相当する。
甲1発明の「ケーシング34」は、本件発明の「ハウジング」に相当し、甲1発明の「ハウジング60」は、本件発明の「ケース」に相当し、甲1発明の「前記ピン44は、一端部がケーシング34に保持されており、他端部がハウジング60に保持されて」いることは、本件発明の「前記支点ピンは、一端部がハウジングに設けられたハウジングボス部に保持されており、他端部がケースに設けられたケースボス部に保持されて」いることとの関係において、「前記支点ピンは、一端部がハウジングに保持されており、他端部がケースに保持されて」いる限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「トーションスプリング」は、本件発明の「トーションスプリング」に相当するから、甲1発明の「前記ピン44の前記パーキングポール46と前記ケーシング34との間の部分に装着され、一端部が前記ケーシング34に取り付けられ、他端部が前記パーキングポール46に取り付けられたトーションスプリングを備えて」いることは、本件発明の「前記支点ピンの前記パーキングポールと前記ハウジングとの間の部分に装着され、一端部が前記ハウジングボス部に取り付けられ、他端部が前記パーキングポールに取り付けられたトーションスプリングを備えて」いることとの関係において、「前記支点ピンの前記パーキングポールと前記ハウジングとの間の部分に装着され、一端部が前記ハウジングに取り付けられ、他端部が前記パーキングポールに取り付けられたトーションスプリングを備えて」いる限りにおいて一致する。
以上のとおりであるから、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。
【一致点】
「車軸と直結したパーキングギヤと、
支点ピンに回転可能に支持され、前記パーキングギヤの歯溝と噛み合い可能な爪部が設けられたパーキングポールと、
を備えたパーキング装置であって、
前記支点ピンは、一端部がハウジングに保持されており、他端部がケースに保持されており、
前記支点ピンの前記パーキングポールと前記ハウジングとの間の部分に装着され、一端部が前記ハウジングに取り付けられ、他端部が前記パーキングポールに取り付けられたトーションスプリングを備えているパーキング装置。」
【相違点1】
「支点ピン」について、本件発明では、「一端部がハウジングに設けられたハウジングボス部に保持されており、他端部がケースに設けられたケースボス部に保持されて」いるのに対し、甲1発明では、「一端部がケーシング34に保持されており、他端部がハウジング60に保持されて」いる点。
【相違点2】
「トーションスプリング」について、本件発明では、「一端部が前記ハウジングボス部に取り付けられ」ているのに対し、甲1発明では、「一端部が前記ケーシング34に取り付けられ」ている点。
【相違点3】
本件発明では、「前記ハウジングボス部の径は、前記支点ピンの径よりも大きい」のに対し、甲1発明では、そのように構成されているとは特定されていない点。
2.判断
上記相違点1について検討する。
上記第4 2.(1)の摘記事項イの段落【0021】の「なお、パーキングポール16の先端部上面には、ねじりバネ19が先端部を下方に押圧するように設けられており、これにより、振動によりパーキングポール16の係止部16aがパーキングギア15に接触するのを防止している。」との記載、摘記事項オの【図1】及び摘記事項カの【図2】から、甲第2号証には、ねじりバネ19の一方の端部をパーキングポール16に取り付けることが記載されていると認められるが、ねじりバネ19の他方の端部がいずれの箇所に取り付けられているのかを看取することはできず、ねじりバネ19の他方の端部をハウジングのボス部に取り付けることが記載されているとまでは認定することはできない。
してみれば、甲1発明において、「一端部がケーシング34に保持されており、他端部がハウジング60に保持されて」いる構成に代えて、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、甲第2号証に記載された事項を参酌しても、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明は、上記相違点2及び3を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
申立人は、異議申立書において、甲第1号証には、「前記ピン44は、一端部がケーシング34に設けられた突出部に保持されており、他端部がハウジング60に設けられた別の突出部に保持されて」いる構成が記載されているものとし(第6頁第17行~第7頁第2行)、甲第1号証に記載された発明と本件発明との一致点として「前記支点ピンは、一端部がハウジングに設けられたハウジングボス部に保持されており、他端部がケースに設けられたケースボス部に保持されて」いる点を挙げている(第10頁第1~12行)。
しかしながら、上記第4 1.(1)の認定事項ケにて認定したように、甲第1号証には、ピン44の一端部がケーシング34に保持されており、ピン44の他端部がハウジング60に保持されていることが記載されていると認められるが、甲第1号証のピン44の一端部又は他端部がケーシング34又はハウジング60におけるボス部に取り付けられているのかを看取することはできず、甲第1号証に「前記支点ピンは、一端部がハウジングに設けられたハウジングボス部に保持されており、他端部がケースに設けられたケースボス部に保持されて」いることが記載されているとまでは認められない。
また、申立人は、異議申立書において、証拠として甲第2号証を挙げ、一般にトーションスプリングを用いる技術分野において、ボス部から延びる支持ピンに装着したトーションスプリングの端部を該ボス部に保持することは従来周知であると主張する(第10頁第22行~第11頁第2行)。
しかしながら、上述したように、甲第2号証には、ねじりバネ19の一方の端部をパーキングポール16に取り付けることが記載されていると認められるが、ねじりバネ19の他方の端部がいかなる箇所に取り付けられているのかを看取することはできず、ねじりバネ19の他方の端部をハウジングのボス部に取り付けることが記載されているとまでは認められない。
よって、申立人のかかる主張には理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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