特許異議申立
2024-700428
橋梁の構築方法
- 審判番号
- 2024-700428
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-223432
- 登録番号
- 7373982
- 請求日
- 2024年05月07日
- 審決日
- 2024年07月11日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】鹿島建設株式会社
- 【権利者代理人】小川 護晃
- 【権利者代理人】関谷 充司
- 【権利者代理人】奥山 尚一
- 【権利者代理人】中村 綾子
- 【権利者代理人】森本 聡二
- 【権利者代理人】田中 祐
- 【権利者代理人】徳本 浩一
- 【異議申立人】榊原 令子
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 蔵野 いづみ
- 審判官 太田 恒明
- 分類
- P1651.121-Y (E01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7373982号発明「橋梁の構築方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7373982号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7373982号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和元年12月11日の出願であって、令和5年10月26日に特許権の設定登録がされ、同年11月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~8に係る特許に対し、令和6年5月7日に特許異議申立人榊原令子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、符号A等は当審で付した。以下、符号A等が付された事項を「特定事項A」等という。
「【請求項1】
A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B 複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
C1 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D1 移動可能な床版運搬台車が前記レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、及び、
E 設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
F 前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、
G 橋梁の構築方法。
【請求項2】
A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B 複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
C2 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版架設機移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D2 移動可能な床版架設機が前記レール上を移動しつつ、新たな前記床版を設置すること、及び、
E 設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
F 前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、
G 橋梁の構築方法。
【請求項3】
A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B 複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
C3 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D11 移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
D21 前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、及び、
E 設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
F1 前記敷設された前記第1レール及び前記第2レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、
G 橋梁の構築方法。
【請求項4】
A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B 複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
C3 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D11 移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
D21 前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、及び、
E 設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
F2 前記敷設された前記第1レールが前記隙間の上にある状態で、かつ、前記隙間の上から前記第2レールが撤去された状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、
G 橋梁の構築方法。
【請求項5】
一対の前記第1レールが一対の前記第2レール間に配置される、請求項3又は請求項4に記載の橋梁の構築方法。
【請求項6】
前記新たな前記床版は、最新に設置された前記床版の隣に設置されるものであり、
前記床版架設機により、前記新たな前記床版上に新たな前記枕木を設置し、
前記新たな前記枕木に新たな前記第1レールを支持させる、
請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の橋梁の構築方法。
【請求項7】
前記新たな前記床版は、最新に設置された前記床版の隣に設置されるものであり、
前記床版架設機により、前記新たな前記床版上に新たな前記枕木を設置し、
前記新たな前記枕木に新たな前記第2レールを支持させる、
請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の橋梁の構築方法。
【請求項8】
前記床版を新設床版とし、
前記橋梁において、既設床版の撤去を行った後に、前記新設床版の設置を行う、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の橋梁の構築方法。」
第3 特許異議申立理由及び証拠方法
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。
(1) 申立理由1(申立理由1~5はいずれも進歩性欠如)
本件発明1は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2
本件発明2は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3) 申立理由3
本件発明3は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4) 申立理由4
本件発明4は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(5) 申立理由5
本件発明5~8は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項5~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1) 甲第1号証:特開2005-307684号公報
(2) 甲第2号証:特開2017-101529号公報
(3) 甲第3号証:特開2018-204286号公報
(4) 甲第4号証:特開2012-82622号公報
(5) 甲第5号証:特開2010-37727号公報
(6) 甲第6号証:特開2018-104972号公報
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。
3 証拠に記載された事項
(1) 甲1について
ア 甲1の記載
甲1には以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【0034】
図1から理解されるように、既に立設された橋脚、橋台35(図7参照)上に橋軸方向へ向かって延出する鋼製の主桁5、5が架設されている。
【0035】
しかして、この主桁5、5上に複数枚のプレキャストコンクリート床板2が敷設されて橋梁が形成される。
【0036】
本発明はこのプレキャストコンクリート床板2の敷設に際し、プレキャストコンクリート床板2を供給する方向から順次敷設するタイプのプレキャストコンクリート床板の敷設装置である(従来例を示す図7参照)。
【0037】
本発明でのプレキャストコンクリート床板2は図1などに示すように略長方形状をなしており、このようなプレキャストコンクリート床板2を前記の主桁5、5上に並べて敷設する。
【0038】
ここで、符号1はプレキャストコンクリート床板2を敷設する敷設装置39及びプレキャストコンクリート床板2の運搬台車3用のレール4を支持する枕木であり、既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上に設けられる。」
「【0073】
符号3は自走式の運搬台車であり、該運搬台車3によりプレキャストコンクリート床板2を、橋台背後の積み替えヤードから、架設クレーン直後まで運搬することとなる。」
「【0075】
次に、プレキャストコンクリート床板2用の敷設装置である架設クレーンなどを用いた概略の架設方法について説明する。
・・・
【0077】
a)まず、橋脚、橋台35構築後に、鋼製の主桁5、5が架設される。
【0078】
b)橋脚、橋台35の背後に、床板架設用クレーン41及びプレキャストコンクリート床板運搬台車用のレール4を敷設する。
【0079】
c)床板架設用クレーン41及びプレキャストコンクリート床板運搬台車3を組み立てて、上記レール4上に設置する。
【0080】
d)工場制作したプレキャストコンクリート床板2を、現場まで運搬し、運搬台車3に積み替える。
【0081】
e)床板架設用クレーン41で、最初のプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に配置する。
【0082】
f)床板架設クレーン用レール4を前方に盛替え、かつプレキャストコンクリート床板運搬台車用のレール4を前方に継ぎ足す(例えば各プレキャストコンクリート床板1枚分)。
【0083】
g)床板架設クレーンを床板1枚分前方に移動する。
【0084】
h)2枚目のプレキャストコンクリート床板2を、敷設現場まで運搬し、運搬台車3に積み替える。
【0085】
i)床板架設用クレーン41で、2枚目のプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に配置する。
【0086】
j)床板架設クレーン用レールを前方に盛替え、プレキャストコンクリート床板運搬台車用のレールを前方に継ぎ足す(各プレキャストコンクリート床板1枚分)。
【0087】
k)床板架設クレーンを床板1枚分前方に移動する。
【0088】
m)同様の手順ですべてのプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に順次敷き並べる。
【0089】
n)プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化する。
【0090】
o)鋼製の主桁5上フランジとプレキャストコンクリート床板の間の空隙及びスタッドジベル部にモルタル等を注入し、鋼製の主桁5とプレキャストコンクリート床板2を一体化させる。」
「【図2】
[図:0001413376000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「プレキャストコンクリート床板2を供給する方向から順次主桁5、5上に並べて敷設するタイプのプレキャストコンクリート床板の敷設装置である架設クレーンなどを用いた橋梁の架設方法(【0035】~【0037】、【0075】)であって、
まず、橋脚、橋台35構築後に、橋軸方向へ向かって延出する鋼製の主桁5、5が架設され(【0034】、【0077】)、
橋脚、橋台35の背後に、床板架設用クレーン41及びプレキャストコンクリート床板運搬台車用のレール4を敷設し(【0078】)、
床板架設用クレーン41及びプレキャストコンクリート床板運搬台車3を組み立てて、上記レール4上に設置し(【0079】)、
工場制作したプレキャストコンクリート床板2を、現場まで運搬し、運搬台車3に積み替え(【0080】)、
自走式の該運搬台車3によりプレキャストコンクリート床板2を、橋台背後の積み替えヤードから、架設クレーン直後まで運搬し(【0073】)、
床板架設用クレーン41で、最初のプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に配置し(【0081】)、
床板架設クレーン用レール4を前方に盛替え、かつプレキャストコンクリート床板運搬台車用のレール4を前方に継ぎ足し(【0082】)、
ここで、プレキャストコンクリート床板2を敷設する敷設装置39及びプレキャストコンクリート床板2の運搬台車3用のレール4を、既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上に設けられる枕木1に支持し(【0038】)、
床板架設クレーンを床板1枚分前方に移動し(【0083】)、
2枚目のプレキャストコンクリート床板2を、敷設現場まで運搬し、運搬台車3に積み替え(【0084】)、
床板架設用クレーン41で、2枚目のプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に配置し(【0085】)、
床板架設クレーン用レールを前方に盛替え、プレキャストコンクリート床板運搬台車用のレールを前方に継ぎ足し(【0086】)、
床板架設クレーンを床板1枚分前方に移動し(【0087】)、
同様の手順ですべてのプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に順次敷き並べ(【0088】)、
プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化し(【0089】)、
鋼製の主桁5上フランジとプレキャストコンクリート床板の間の空隙及びスタッドジベル部にモルタル等を注入し、鋼製の主桁5とプレキャストコンクリート床板2を一体化させる(【0090】)、
橋梁の架設方法(【0035】、【0075】)。」
(2) 甲2について
甲2には以下の記載がある。
「【0051】
<ステップ2>インバートコンクリート打設
図16は、ステップ2として、インバートコンクリートを打設する工程を示す図である。
後続台車及びセグメント台車を同一の横断方向(幅方向)に設置した一体の枕木で受けつつ、その下方に図示のようにインバートコンクリートを打設する。インバートコンクリートが硬化した後、Pca支柱位置にあるレールを枕木で受ける必要がある場合には、Pca支柱で分断される横断方向(幅方向)に一体でない枕木を、インバートとの間にキャンバーを介してインバートより反力を取るような形で設置すればよい(図17の右下図、参照)。」
「
[図:0001413376000002.jpg]
」
(3) 甲3について
甲3には以下の記載がある。
「【0060】
以上、本実施形態に係る型枠10について説明したが、本実施形態に係る型枠10は、プレキャスト床版100の下面100Aと鋼主桁102の上フランジ102Aの上面との間に充填材を充填する際に用いる型枠であり、橋軸方向(鋼主桁102の長手方向)に隣り合うプレキャスト床版100同士の間隙100Bにコンクリートを打設する際には別の型枠を用いる。橋軸方向(鋼主桁102の長手方向)に隣り合うプレキャスト床版100同士の間隙100Bにコンクリートを打設する際に用いる別の型枠については、後述する「(2)本発明の実施形態に係る型枠を用いた工事の一例の作業フロー」の説明の中で言及する。」
「【0070】
以降のステップS12~S15は、橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版100同士の間の間隙100Bをコンクリートで充填して、橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版100同士を橋軸方向に一体化させる床版間詰め工(ステップS15)を行うための工程であり、本実施形態に係る型枠10とは直接的には関係しない工程であるが、ステップS1~S11の工程とステップS12~S15の工程とは、通常は一連の工事の中で行う工程であるので、ステップS12~S15の工程についても以下簡単に説明する。」
(4) 甲4について
甲4には以下の記載がある。
「【0045】
図4(c)の状態で、継手部2を補強する補強鉄筋7を配置し、空間部201の底面と両側面に型枠8を設置する(図4(d))。このとき、空間部201の底面に設置する型枠8は、プレキャスト床版1の本体101の下面に設けられたインサートアンカー103を利用して固定することもできるし、型枠支保工を用いて設置してもよい。型枠8の設置後、図4(e)に示すように継手部2の空間部201内に間詰めコンクリートを打設し、所定期間養生を行った後に型枠8を脱型する。なお、空間部201内に打設する間詰めコンクリートは、プレキャスト床版1の本体101コンクリートと同等(又はそれ以上)の強度を有するコンクリートが望ましいが、これに限らず、状況に応じて適切な強度のコンクリートとすることもできるし、あるいはコンクリートに代えてモルタルや他の注入材とすることもできる。」
(5) 甲5について
甲5には以下の記載がある。
「【0018】
次に本発明の実施の形態を図1~図7に示した実施例に基づいて説明する。図1~図3は、本発明に係る装置の全体の構成を簡略化して示している。図において符号20は鋼桁であり、21は床版用プレキャストPC板22を仮置きして架設された既設床版である。この既設床版21上に、橋軸方向に向けて搬送台車用レール23,23が敷設され、その外側にこれと並行配置に架設機用レール24,24が敷設されている。
【0019】
搬送台車用レール23,23上には、3台を一組とした床版用プレキャストPC板搬送用台車25,26,26が走行可能に載せられている。この各台車は、床版用プレキャストPC板22を橋軸方向に向けた状態で搭載して移動できるようにしているものであり、3台の内の中央には旋回台付台車25、その前後側に端部支持用台車26,26が配置されている。
・・・
【0022】
架設機用レール24,24上には架設機35が移動可能に載せられている。この架設機35は、レール24,24上を移動できる門型架台36を有している。この門型架台36は、天井横梁37aとその両端下に一体化させた脚37b,37bとによって門型に形成された一対の門型構37,37と、それらの天井横梁37a,37aの上に跨らせて固定した一対の縦梁38、38とによって構成されており、各脚37bの下端にはレール上に載荷される走行用車輪39それぞれ備えられている。」
(6) 甲6について
甲6には以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
従来、一般道や高速道路等の高架橋において、既設の床版が老朽化した場合は、当該床版を桁上から撤去して新たな床版を再構築する床版取替施工が行われる。この場合、新たな床版は、工場で製作されたコンクリート製のプレキャスト床版を橋軸方向に複数枚配列して設置することにより構築される(例えば、特許文献1参照。)。」
「【0017】
本実施形態の床版架設装置は、主桁2上に設置されているプレキャスト床版4上を橋軸方向に移動可能な装置本体10と、プレキャスト床版4を装置本体10まで搬送する搬送台車20とを備え、搬送台車20のプレキャスト床版4を専用の吊り部材30を介して装置本体10から吊り下げて所定の設置位置まで縦移動させる構造となっている。尚、「縦移動」とは橋軸方向への移動をいう。
【0018】
装置本体10は、橋軸方向に延びる左右一対のベース部材11と、各ベース部材11から上方に垂直に延びる第1のフレーム12と、各ベース部材11の後端側から前方に向かって斜め上方に延びる第2のフレーム13と、第1のフレーム12に取り付けられた吊り下げ手段としての第1の吊り下げ機構14と、第2のフレーム13に取り付けられた他の吊り下げ手段としての第2の吊り下げ機構15からなり、第1の吊り下げ機構14は装置本体10の橋軸方向中央側に配置され、第2の吊り下げ機構15は装置本体10の橋軸方向一端側に配置されている。また、装置本体10は、プレキャスト床版4上に設置される軌条16に沿って移動するようになっている。」
「【0024】
軌条16は、互いにプレキャスト床版4上の幅方向に間隔をおいて配置された一対のレール16aと、上面にレール16aが固定された一対の固定部材16bからなり、設置前のプレキャスト床版4上に予め搭載されている。レール16aはほぼプレキャスト床版4ごとの長さに形成され、プレキャスト床版4を主桁2上に設置するとレール16a同士及び固定部材16b同士が連続し、橋軸方向に延びる軌条16が形成されるようになっている。各固定部材16bは上フランジ16b-1及び下フランジ16b-2を有するH鋼からなり、板状の支持部材16cを介してプレキャスト床版4の上面に搭載されている。この場合、固定部材16bにはベース部材11の移動規制部材11bが係合しており、移動規制部材11bはL字状に屈曲した下端側を上フランジ16b-1に下方から係止することにより、上方への移動を規制されるようになっている。
【0025】
搬送台車20は、上面にプレキャスト床版4を載置可能な台車本体21を備え、プレキャスト床版4上に設置される軌条22に沿って移動するようになっている。
・・・
【0027】
軌条22は、装置本体10用の軌条16と同様、互いにプレキャスト床版4上の幅方向に間隔をおいて配置された一対のレール22aと、上面にレール22aが固定された一対の固定部材22bからなり、設置前のプレキャスト床版4上に予め搭載されている。レール22aはほぼプレキャスト床版4ごとの長さに形成され、プレキャスト床版4を主桁2上に設置するとレール22a同士及び固定部材22b同士が連続し、橋軸方向に延びる軌条22が形成されるようになっている。各固定部材22bは上フランジ22b-1及び下フランジ22b-2を有するH鋼からなり、板状の支持部材22cを介してプレキャスト床版4の上面に搭載されている。」
第4 当審の判断
1 申立理由1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A、Gについて
甲1発明の「橋軸方向へ向かって延出する」「主桁5、5」及び「プレキャストコンクリート床板2を供給する方向から順次」「並べて敷設する」ことは、本件発明1の「橋軸方向に延在する主桁」及び「プレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置すること」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明の「橋梁の架設方法」は、本件発明1の「橋梁を構築する方法」及び「橋梁の構築方法」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A、Gを備える。
イ 特定事項Bについて
本件発明1の特定事項Bと、甲1発明の「最初のプレキャストコンクリート床板2を」「配置し」、「2枚目のプレキャストコンクリート床板2を」「配置し」、「同様の手順ですべてのプレキャストコンクリート床板2を」「順次敷き並べ」ることは、「複数の前記床版を」「設置する」点で共通する。
ウ 特定事項C1について
甲1発明の「既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上」、「枕木1」、及び、「プレキャストコンクリート床板運搬台車用のレール4」は、本件発明1の「設置された複数の前記床版上」、「枕木」、及び、「床版運搬台車移動用のレール」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明は、「プレキャストコンクリート床板2の運搬台車3用のレール4を、既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上に設けられる枕木1に支持」するものであるところ、このことは、本件発明1の「設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項C1を備える。
エ 特定事項D1について
甲1発明の「プレキャストコンクリート床板運搬台車3を」「上記レール4上に設置し」、「自走式の該運搬台車3によりプレキャストコンクリート床板2を、橋台背後の積み替えヤードから、架設クレーン直後まで運搬」することは、本件発明1の「移動可能な床版運搬台車が前記レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項D1を備える。
オ 上記ア~エを踏まえると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B’複数の前記床版を設置すること、
C1 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D1 移動可能な床版運搬台車が前記レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
を含む、
G 橋梁の構築方法。」
[相違点1-1](特定事項B)
「複数の前記床版を」「設置する」際に、
本件発明1では、「前記床版間に隙間をあけ」るのに対し、
甲1発明では、プレキャストコンクリート床板2の間に隙間をあけているか否か不明である点。
[相違点1-2](特定事項E、F)
「橋梁の構築方法」が、
本件発明1では、「設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、を含み、前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う」のに対し、
甲1発明では、「すべてのプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に順次敷き並べ、プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」する点。
(2) 判断
事案に鑑み相違点1-2から検討する。
本件発明1は、「設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること」で、隣接する床版を固定するものであるのに対し、甲1発明は、「すべてのプレキャストコンクリート床板2を」「順次敷き並べ、プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」するものであり、両者は、橋軸方向に隣接する床版を一体化する工程が異なるものである。
そして、甲1には、「プレキャストコンクリート床板2」を「橋軸方向に一体化」する際に、「PC鋼材を挿入緊張」すること以外の工程について記載も示唆もない。
さらに、甲1発明は、「鋼製の主桁5上フランジとプレキャストコンクリート床板の間の空隙及びスタッドジベル部にモルタル等を注入し、鋼製の主桁5とプレキャストコンクリート床板2を一体化させる」ものではあるが、甲1には、隣接する「プレキャストコンクリート床板2」の間に「モルタル等を注入」することについて記載も示唆もない。
してみると、甲1発明において、「すべてのプレキャストコンクリート床板2を」「順次敷き並べ、プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」する工程を、「設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設する」工程に置換する動機があるとはいえない。
仮に、甲3、甲4に記載されるように、「隣り合うプレキャスト床版同士の間隙にコンクリートを打設することにより、隣接する床版を一体化する工程」が周知技術であり、甲1発明における「プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」する工程を、その周知技術に置換できたとしても、「前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う」という本件発明1の特定事項Fに係る構成に想到するものとはいえない。
したがって、甲1発明に、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではなく、また甲1発明に甲2に記載された技術事項、及び、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることも、当業者が容易になし得たことではない。
さらに、甲5及び甲6をみても、上記相違点1-2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
(3) 申立人の主張について
申立人は、上記相違点1-2に関し、申立書において以下の主張をしている。
「しかしながら、床版間の間詰めコンクリートを、レールを存置したまま打設するのか、それともレールを撤去して打設するのかは、適宜成し得る選択的事項に過ぎない。
例えば、甲第2号証の図16や段落0051等には、運搬台車である「セグメント台車」が移動するレール及び枕木を存置したまま、その下方のインバートコンクリートを打設する構成が開示されている。
また、運搬台車用のレールを撤去せずに存置することで、間詰めコンクリートを打設した後も引き続き運搬台車が利用できるとともに、レールの再設置の手間が省けることも、当業者からすれば極めて当然の効果に過ぎない。
なお、複数の床版を、隙間をあけて設置し、当該隙間に間詰めコンクリートを打設することは周知・慣用の技術であり、例えば、甲第3号証や甲第4号証がある。」(申立書27頁2~15行)
しかしながら、上記(2)において検討したとおり、甲1発明は、「PC鋼材」の「挿入緊張」により「プレキャストコンクリート床板2」を「橋軸方向に一体化」するものであり、その工程は、甲3や甲4に例示される周知技術と置換できるものではない。
そうすると、甲1発明において、「プレキャストコンクリート床板2」の上に「レール4」がある状態で「間詰めコンクリートを打設」するという技術思想にはなりえないものである。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
(4) 申立理由1についての結論
以上のことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由1はその理由がない。
2 申立理由2について
(1) 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A、Gについては、上記1(1)ア、及び、特定事項Bについては、上記1(1)イのとおりである。
イ 特定事項C2について
甲1発明の「既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上」、「枕木1」、及び、「プレキャストコンクリート床板の敷設装置である」「床板架設クレーン用レール4」は、本件発明2の「設置された複数の前記床版上」、「枕木」、及び、「床版架設機移動用のレール」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明は、「プレキャストコンクリート床板2を敷設する敷設装置39」「用のレール4を、既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上に設けられる枕木1に支持」するものであるところ、このことは、本件発明2の「設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版架設機移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明2の特定事項C2を備える。
ウ 特定事項D2について
甲1発明の「床板架設用クレーン41」「を」「上記レール4上に設置し」、「床板架設クレーンを床板1枚分前方に移動し」、「床板架設用クレーウ41で、2枚目のプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に配置」することは、本件発明2の「移動可能な床版架設機が前記レール上を移動しつつ、新たな前記床版を設置すること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明2の特定事項D2を備える。
エ 上記ア~ウを踏まえると、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B’複数の前記床版を設置すること、
C2 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版架設機移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D2 移動可能な床版架設機が前記レール上を移動しつつ、新たな前記床版を設置すること、
を含む、
G 橋梁の構築方法。」
[相違点2-1](特定事項B)
「複数の前記床版を」「設置する」際に、
本件発明2では、「前記床版間に隙間をあけ」るのに対し、
甲1発明では、プレキャストコンクリート床板2の間に隙間をあけているか否か不明である点。
[相違点2-2](特定事項E、F)
「橋梁の構築方法」が、
本件発明2では、「設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、を含み、前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う」のに対し、
甲1発明では、「すべてのプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に順次敷き並べ、プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」する点。
(2) 判断
事案に鑑み相違点2-2から検討する。
相違点2-2は、上記1(1)オの相違点1-2と同様の相違点であるところ、相違点2-2についての判断は、上記1(2)に記載したことと同様である。
したがって、甲1発明に、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点2-2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではなく、また甲1発明に甲2に記載された技術事項、及び、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点2-2に係る本件発明2の構成とすることも、当業者が容易になし得たことではない。
さらに、甲5及び甲6をみても、上記相違点2-2に係る本件発明2の構成は記載も示唆もされていない。
(3) 申立人の主張について
申立人は、申立書28頁13~27行において上記1(3)と同様の主張をしているが、上記1(3)にて説示のとおり、申立人の主張は採用できない。
(4) 申立理由2についての結論
以上のことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由2はその理由がない。
3 申立理由3について
(1) 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A、Gについては、上記1(1)ア、及び、特定事項Bについては、上記1(1)イのとおりである。
イ 特定事項C3について
甲1発明の「既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上」、「枕木1」、「プレキャストコンクリート床板運搬台車用のレール4」及び、「プレキャストコンクリート床板の敷設装置である」「床板架設クレーン用レール4」は、本件発明3の「設置された複数の前記床版上」、「枕木」、床版運搬台車移動用の第1レール」及び、「床版架設機移動用の第2レール」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明は、「プレキャストコンクリート床板2を敷設する敷設装置39及びプレキャストコンクリート床板2の運搬台車3用のレール4を、既に敷設したプレキャストコンクリート床板2上に設けられる枕木1に支持」するものであるところ、このことは、本件発明3の「設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明3の特定事項C3を備える。
ウ 特定事項D11について
甲1発明の「プレキャストコンクリート床板運搬台車3を」「上記レール4上に設置し」、「自走式の該運搬台車3によりプレキャストコンクリート床板2を、橋台背後の積み替えヤードから、架設クレーン直後まで運搬」することは、本件発明3の「移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明3の特定事項D11を備える。
エ 特定事項D21について
甲1発明の「床板架設用クレーン41」「を」「上記レール4上に設置し」、「床板架設クレーンを床板1枚分前方に移動し」、「床板架設用クレーウ41で、2枚目のプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に配置」することは、本件発明3の「前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明3の特定事項D21を備える。
オ 上記ア~エを踏まえると、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B’複数の前記床版を設置すること、
C3 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D11 移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
D21 前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、
を含む、
G 橋梁の構築方法。」
[相違点3-1](特定事項B)
「複数の前記床版を」「設置する」際に、
本件発明3では、「前記床版間に隙間をあけ」るのに対し、
甲1発明では、プレキャストコンクリート床板2の間に隙間をあけているか否か不明である点。
[相違点3-2](特定事項E、F1)
「橋梁の構築方法」が、
本件発明3では、「設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、を含み、前記敷設された前記第1レール及び前記第2レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う」のに対し、
甲1発明では、「すべてのプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に順次敷き並べ、プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」する点。
(2) 判断
事案に鑑み相違点3-2から検討する。
相違点3-2は、上記1(1)オの相違点1-2と実質的に同様の相違点であるところ、相違点3-2についての判断は、上記1(2)に記載したことと同様である。
したがって、甲1発明に、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点3-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではなく、また甲1発明に甲2に記載された技術事項、及び、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点3-2に係る本件発明3の構成とすることも、当業者が容易になし得たことではない。
さらに、甲5及び甲6をみても、上記相違点3-2に係る本件発明3の構成は記載も示唆もされていない。
(3) 申立人の主張について
申立人は、申立書30頁1~15行において上記1(3)と同様の主張をしているが、上記1(3)にて説示のとおり、申立人の主張は採用できない。
(4) 申立理由3についての結論
以上のことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由3はその理由がない。
4 申立理由4について
(1) 対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A、Gについては、上記1(1)ア、特定事項Bについては、上記1(1)イ、特定事項C3については、上記3(1)イ、及び、特定事項D11及びD12については、上記3(1)ウ及びエのとおりである。
イ 上記アを踏まえると、本件発明4と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
B’複数の前記床版を設置すること、
C3 設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
D11 移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
D21 前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、
を含む、
G 橋梁の構築方法。」
[相違点4-1](特定事項B)
「複数の前記床版を」「設置する」際に、
本件発明4では、「前記床版間に隙間をあけ」るのに対し、
甲1発明では、プレキャストコンクリート床板2の間に隙間をあけているか否か不明である点。
[相違点4-2](特定事項E、F2)
「橋梁の構築方法」が、
本件発明4では、「設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、を含み、前記敷設された前記第1レールが前記隙間の上にある状態で、かつ、前記隙間の上から前記第2レールが撤去された状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う」のに対し、
甲1発明では、「すべてのプレキャストコンクリート床板2を運搬台車3から取り込み、鋼製の主桁5上に順次敷き並べ、プレキャストコンクリート床板2の中に、PC鋼材を挿入緊張し、橋軸方向に一体化」する点。
(2) 判断
事案に鑑み相違点4-2から検討する。
相違点4-2は、上記1(1)オの相違点1-2と実質的に同様の相違点であるところ、相違点4-2についての判断は、上記1(2)に記載したことと同様である。
したがって、甲1発明に、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点4-2に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではなく、また甲1発明に甲2に記載された技術事項、及び、甲3及び甲4に例示される周知技術を適用して上記相違点4-2に係る本件発明3の構成とすることも、当業者が容易になし得たことではない。
さらに、甲5及び甲6をみても、上記相違点4-2に係る本件発明3の構成は記載も示唆もされていない。
(3) 申立人の主張について
申立人は、申立書31頁10~28行において上記1(3)と同様の主張をしているが、上記1(3)にて説示のとおり、申立人の主張は採用できない。
(4) 申立理由4についての結論
以上のことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲第1号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)、又は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由4はその理由がない。
5 申立理由5~8について
本件発明5~7は、本件発明3又は本件発明4の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記3又は4と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明8は、本件発明1~4のいずれかの発明特定事項を全て含む発明であるから、上記1、2、3又は4と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由5~8はいずれもその理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700428