2021-700376
複合材の製造方法および複合材
- 審判番号
- 2021-700376
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-096233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6790023
- 請求日
- 2021年04月23日
- 審決日
- 2022年11月10日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱重工業株式会社
- 【権利者代理人】藤田 考晴
- 【権利者代理人】三苫 貴織
- 【権利者代理人】川上 美紀
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1652.113-YAA(B29C) / P1652.121-YAA(B29C) / P1652.537-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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特許第6790023号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成30年5月18日を出願日とする特許出願であって、令和2年11月6日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して、令和3年4月23日に特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(令和4年9月12日受付の名称変更届により、弁理士法人 朝日奈特許事務所に変更。以下、「特許異議申立人」という。)により、請求項6を対象として特許異議の申立てがされた。
特許異議の申立て以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年 7月16日付け 取消理由通知書
同 年 9月21日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同 年 同月27日付け 手続補正指令書(方式)
同 年11月 5日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
令和4年 2月 3日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同 年 4月18日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同 年 5月11日 手続補正書
同 年 7月 4日 通知書
そして、上記通知書に対し特許異議申立人からは何ら応答がなかった。
なお、令和3年9月21日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年4月18日に提出され、同年5月11日に手続補正(下線を削除するものであり、要旨を変更しないものと認める。)がされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。(下線は、訂正箇所について当審が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲における請求項6を、
「 複数の繊維強化基材が積層されてなる積層体と、前記積層体に充填された硬化後のマトリックス樹脂と、前記繊維強化基材の面内方向とは異なる方向を向き、隣接する前記繊維強化基材間にわたり存在する複数の短繊維(炭素繊維を除く)と、を備え、前記マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂とその硬化剤からなる複合材。」
と訂正する。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の【0016】の記載を、
「 本発明は、複数の繊維強化基材が積層されてなる積層体と、前記積層体 に充填された硬化後のマトリックス樹脂と、前記繊維強化基材の面内方向 とは異なる方向を向き、隣接する前記繊維強化基材間にわたり存在する複 数の短繊維(炭素繊維を除く)と、を備え、前記マトリックス樹脂は、熱 硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂とその硬化剤からなる複合材を提供する 。」
と訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項6の訂正について
訂正事項1による請求項6の訂正は、請求項6における「短繊維」から「炭素繊維」を除くものである。
したがって、訂正事項による請求項6の訂正は、「短繊維」を減縮するもの、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項6の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)明細書の訂正について
訂正事項2による明細書の訂正は、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2による明細書の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の請求項6に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1による請求項6についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
また、訂正事項2による明細書の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認めるから、本件特許の請求項6に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、令和4年4月18日に提出され、同年5月11日に手続補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項6】複数の繊維強化基材が積層されてなる積層体と、前記積層体に充填された硬化後のマトリックス樹脂と、前記繊維強化基材の面内方向とは異なる方向を向き、隣接する前記繊維強化基材間にわたり存在する複数の短繊維(炭素繊維を除く)と、を備え、前記マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂とその硬化剤からなる複合材。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
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令和3年4月23日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を根拠とする新規性欠如)
本件発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
特許異議申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。
以下、甲第1号証を「甲1」という。
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が、令和4年2月3日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(甲1を根拠とする新規性欠如)
本件発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)
本件発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由2とおおむね同旨である。
3 新たな取消理由3(明確性)
本件特許の請求項6に係る特許は、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・本件発明は、「複合材」という物の発明であるところ、請求項6の「積層する際には前記繊維強化基材の前記面内方向に配置されている」との記載は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているものということができる。
ところで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
以上をふまえて本件について検討するに、本件発明について上記でいうところの不可能・非実際的事情が存在すると認めることができない。しかも、硬化後の複合材という物の発明において、上記記載が何を特定しているのか不明であるといえるのは上述のとおりである。
したがって、本件発明は明確でない。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、令和4年2月3日付けで通知した取消理由(決定の予告)にはいずれも理由がないと判断する。
1 取消理由1(甲1を根拠とする新規性欠如)、及び2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について
(1)甲1の記載事項等
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ア 甲1の記載事項
甲1には、「炭素繊維基材、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料」に関し、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下同様。)
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維基材、それを用いて形成されたプリプレグ、および、それらを用いて形成された炭素繊維強化複合材料に関する。更に詳しくは、優れた層間破壊靭性、優れた静的強度、および、優れた導電性の全てを備えた炭素繊維強化複合材料の形成に好適な炭素繊維基材、ならびに、プリプレグに関する。また、優れた層間破壊靭性、優れた静的強度、および、優れた導電性の全てを備えた炭素繊維強化複合材料に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、従来技術が有する問題点に鑑み、優れた層間破壊靭性、優れた静的強度、および、優れた導電性の全てを備えた炭素繊維強化複合材料の形成に好適な炭素繊維基材、ならびに、プリプレグを提供することを目的とする。更には、優れた層間破壊靭性、優れた静的強度、および、優れた導電性の全てを備えた炭素繊維強化複合材料を提供することを目的とする。」
・「【0053】
本発明の炭素繊維基材において用いられる炭素短繊維ウェブにおいては、一定範囲の繊維長、すなわち、2乃至12mmの平均繊維長を有する炭素短繊維が、単繊維レベルで分散した状態にある。この状態により、ウェブを形成している炭素短繊維が、効果的に、隣り合う連続炭素繊維層内に貫入する状態が形成されている。この状態により、層間に導電パスが形成されて、導電性が向上すると同時に、層間の単繊維が、互いにファイバーブリッジを効率よく形成し、高い層間破壊靭性をもたらしている。」
・「【0135】
以下に記載する実施例、および、比較例において使用した材料は、次の通りである。
(1)炭素繊維CF1:
炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T700S-12K、東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:4900MPa)。
・・・
【0137】
・・・
(4)エポキシ樹脂ER1:
ニーダー中に、“エピクロン(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:173、DIC(株)製)を50質量部、 “jER(登録商標)”1007(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:1975、三菱化学(株)製)を30質量部、“エピクロン(登録商標)”HP7200L (ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:250、DIC(株)製)を20質量部、および、ビニレックK(ポリビニルホルマール、チッソ(株)製)を2質量部加え、混練しつつ、160℃の温度まで昇温し、160℃の温度で、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。
【0138】
次いで、混練しつつ、温度を60℃まで降温させた後、硬化剤として、DICY7T(ジシアンジアミド、三菱化学(株)製)4質量部、および、硬化促進剤として、DCMU99(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、保土ヶ谷化学社製)3質量部を加え、混練し、エポキシ樹脂ER1を得た。
(5)樹脂フィルムRF1、および、樹脂フィルムRF2:
上記のエポキシ樹脂ER1を、リバースロールコーターを使用し、離型紙上に塗布し、単位面積当たりの重量が38g/m2である樹脂フィルムRF1と、単位面積当たりの重量が20g/m2である樹脂フィルムRF2とを作製した。
(6)一方向プリプレグシートPS1:
上記の炭素繊維CF1を、単位面積当たりの重量が150g/m2になるようにシート状に一方向に配列させ、炭素繊維シートを用意した。用意した炭素繊維シートの一方の面と他方の面のそれぞれに、上記の樹脂フィルムRF1を重ね、加熱加圧して、樹脂フィルムRF1を形成しているエポキシ樹脂を、炭素繊維シートに含浸させ、繊維体積含有率57%の、一方向プリプレグシートPS1を作製した。この一方向プリプレグシートPS1は、連続した炭素繊維(炭素繊維CF1)からなる連続炭素繊維層と、そこに含浸されたエポキシ樹脂ER1から形成されていて、炭素短繊維ウェブの層が存在しないプリプレグシートである。
(7)炭素短繊維ウェブSFW:
上記の炭素繊維CF1を、カートリッジカッターで、所定の長さにカットし、チョップド炭素繊維(炭素短繊維)を作製した。水と界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名)、ナカライテクス(株)製)からなる界面活性剤の濃度が0.1質量%の分散液を作製した。この分散液と上記のチョップド炭素繊維とから、図1に示す炭素短繊維ウェブの製造装置を用いて炭素短繊維ウェブSFWを作製した。
【0139】
図1において、炭素短繊維ウェブ製造装置1は、分散槽2、抄紙槽3、メッシュコンベア4、および、搬出コンベア5から構成されている。分散槽2は、その上部に、チョップド炭素繊維(炭素短繊維)CCFを分散槽2に供給するためのチョップド炭素繊維供給開口21を有する。分散槽2の上部には、分散媒体供給管22が取り付けられ、分散槽2の下部には、分散液排出管23が取り付けられている。分散槽2の内部には、撹拌機24が設けられている。分散液排出管23には、開閉コック25が設けられている。
【0140】
分散液排出管23の下流端は、抄紙槽3に開口されている。抄紙槽3の下面は、メッシュコンベア4の上面に開口している。メッシュコンベア4の抄紙槽3とは反対側の面は、吸引装置41に向け、開口されている。搬出コンベア5は、メッシュコンベア4により搬出されるウェブを、受け取り、それを搬出する関係に、メッシュコンベア4に対して設けられている。
【0141】
炭素短繊維ウェブSFWを、炭素短繊維ウェブ製造装置1を用いて製造するに当たり、分散槽2として、直径1000mmの円筒形の容器を用いた。分散槽2と抄紙槽3とを接続する分散液排出管23には、水平から30°の角度Θで傾斜して真直ぐに延びる輸送部23aを設けた。抄紙槽3の底部に設けられているメッシュコンベア4は、幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアとした。炭素短繊維の抄紙に当り、分散液中のチョップド炭素繊維(炭素短繊維)CCFの濃度を調整することで、得られる炭素短繊維ウェブSFWにおける炭素短繊維の単位面積当たりの重量を調整した。
【0142】
抄紙して得られた炭素短繊維シート51に対し、バインダーとして、所定の濃度のポリビニルアルコール水溶液(クラレポバール、(株)クラレ製)を、滴下することにより、少量付着させ、140℃の温度の乾燥炉で1時間乾燥し、炭素短繊維ウェブSFWを製造した。
(8)プリプレグシートPS2:
上記の一方向プリプレグシートPS1の上に、上記の炭素短繊維ウェブSFWを配置し、60℃の温度に加温して、双方を圧着し、一方向プリプレグシートPS1の上に炭素短繊維ウェブSFWが配置されたプリプレグシートPS2を製造した。
・・・
【0143】
上に用意した材料を用いて、次に記載の実施例、ならびに、比較例において、炭素短繊維ウェブ、プリプレグ、および、炭素繊維強化複合材料を作製した。それぞれの特性を評価した結果は、表1乃至4に示される。」
・「【実施例1】
【0144】
炭素繊維CF1を用いて、平均繊維長3mm、単位面積当たりの重量が6g/m2の炭素短繊維ウェブSFWを作製した。表1に示す通り、炭素短繊維ウェブSFWにおける炭素短繊維は、単繊維形状で分散していた。炭素短繊維ウェブSFWは、スプリングバック特性を有していた。
【0145】
一方向プリプレグシートPS1の上に、得られた炭素短繊維ウェブSFWを配置して、プリプレグシートPS2を作製した。
【0146】
得られたプリプレグシートPS2を、連続した炭素繊維の配列方向を0度方向にして、13枚積層し、最上面に、一方向プリプレグシートPS1を積層して、層間に炭素短繊維ウェブSFWが配置された積層体を作製した。
【0147】
得られた積層体を、オートクレーブ中、0.6MPaの圧力下で、90℃の温度で30分加熱した後、135℃の温度で120分加熱して、樹脂を硬化させ、厚さ2mmの成形板を作製した。この成形板を、曲げおよび導電性の試験用の試験片とした。」
・「
[図:0001393974000001.jpg]
」
・「
[図:0001393974000002.jpg]
」
イ 甲1発明
甲1の、特に実施例1に関連する記載を整理すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「プリプレグシートPS1と炭素短繊維ウェブSFWとからなるプリプレグシートPS2であって、連続した炭素繊維(炭素繊維CF1)からなる連続炭素繊維層と、そこに含浸されたエポキシ樹脂ER1とから形成されていて、炭素短繊維ウェブの層が存在しない一方向プリプレグシートPS1の上に、炭素繊維CF1を用いて作製された、平均繊維長3mm、単位面積当たりの重量が6g/m2の炭素短繊維ウェブSFWを配置して、プリプレグシートPS2を作製し、これを連続した炭素繊維の配列方向を0度方向にして、13枚積層し、最上面に、一方向プリプレグシートPS1を積層して、層間に炭素短繊維ウェブSFWが配置された積層体を作製し、これをオートクレーブ中、0.6MPaの圧力下で、90℃の温度で30分加熱した後、135℃の温度で120分加熱して、樹脂を硬化させ作製した、厚さ2mmの成形板。」
(2)対比及び検討
ア 対比
甲1発明の「連続炭素繊維層」は、本件発明の「繊維強化基材」に相当し、甲1発明の連続炭素繊維層が、一方向プリプレグシートPS1の要素として複数積層されたものは、本件発明の「積層体」に相当する。
甲1発明の「連続炭素繊維層」に含浸された「エポキシ樹脂ER1」は、熱硬化性樹脂であるから、本件発明の「マトリックス樹脂」に相当し、甲1発明の「樹脂を硬化させ作製した、厚さ2mmの成形板」における、硬化させられた「樹脂」は、本件発明の「積層体に充填された硬化後のマトリックス樹脂」に相当する。
甲1発明の「炭素短繊維ウェブSFW」は、「繊維強化基材」に隣接するものであって、当然、複数の短繊維を含むものである。
上記要素の積層状態からみて、甲1発明の「成形板」は、本件発明の「複合材」に相当する。
そうすると、本件発明と甲1発明とは、
「複数の繊維強化基材が積層されてなる積層体と、前記積層体に充填された硬化後のマトリックス樹脂と、複数の短繊維と、を備え、前記マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂とその硬化剤からなる複合材。」
の点で一致し、以下の点(以下「相違点1」、「相違点2」という。)で、相違又は一応相違する。
<相違点1>
マトリックス樹脂硬化後の複合材における複数の短繊維の向きに関し、本件発明は、「前記繊維強化基材の面内方向とは異なる方向を向き、隣接する前記繊維強化基材間にわたり存在し」と特定されるのに対し、甲1発明は、そのようには特定されない点。
<相違点2>
短繊維に関し、本件発明は「(炭素繊維を除く。)」と特定されるのに対し、甲1発明は、短繊維が炭素短繊維である点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
短繊維の材料について、本件発明は炭素繊維を除くものであるのに対し、甲1発明は炭素短繊維からなるのであるから、相違点2は実質的な相違点である。
また、甲1には、短繊維を炭素短繊維以外のもの、すなわち、「炭素繊維を除く」ものとすることは記載も示唆もされていないから、甲1発明において、短繊維を「炭素繊維を除く」ものとする動機付けはない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲1に記載された発明ではなく、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 取消理由3(明確性)について
上記第5 3に記載のとおり、取消理由3は、請求項6の「積層する際には前記繊維強化基材の前記面内方向に配置されている」との記載に関するものである。
そして、上記記載は、令和3年9月21日にされた訂正請求において請求項6に付加されたものであるが、上記第1に記載のとおり、令和3年9月21日にされた訂正請求は取り下げられたものとみなされた。また、上記第3に記載のとおり、本件発明は上記記載を有さないものとなっている。
よって、取消理由3は解消した。
3 まとめ
よって、取消理由1ないし3には理由がない。
第7 むすび
したがって、令和4年2月3日付けで通知した取消理由(決定の予告)、及び、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項6に係る特許を取り消すべき理由もない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700376