特許異議申立
2021-700337
動画像復号装置及び動画像符号化装置
- 審判番号
- 2021-700337
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-082932
- 登録番号
- 6768110
- 請求日
- 2021年04月13日
- 審決日
- 2023年06月19日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ザイレン・ホールディング・エス.アー.
- 【権利者代理人】弁理士法人山王内外特許事務所
- 【異議申立人】ユニファイド パテンツ エルエルシー
- 【異議申立人代理人】鮫島 正洋
- 【異議申立人代理人】竹本 如洋
- 【異議申立人代理人】高橋 正憲
- 審判長/審判官
- 審判長 國分 直樹
- 審判官 川崎 優
- 審判官 樫本 剛
- 分類
- P1651.537-ZB (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6768110号発明「動画像復号装置及び動画像符号化装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6768110号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6768110号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)7月21日(優先権主張 2010年9月30日、2011年3月8日)を国際出願日とする特願2012-536149号の一部を平成26年2月20日に出願した特願2014-030566号の一部を平成28年12月27日に出願した特願2016-252746号の一部を平成30年2月2日に出願した特願2018-017247号の一部を平成31年4月24日に特願2019-082932号として出願したものであって、令和2年9月24日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和2年10月14日)がされた。
その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和3年 4月13日 :特許異議申立人(以下、「申立人」という)ユニファイド パテンツ エルエルシーにより請求項1、2に対して特許異議の申立て
同年 8月20日付け:取消理由通知書
同年11月 9日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和4年 1月26日 :申立人による意見書の提出
同年 2月18日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 4月13日 :特許権者による意見書の提出
同年 5月13日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月24日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
(以下、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
同年11月 2日 :申立人による意見書の提出
令和5年 3月10日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 4月27日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同年 5月 2日 :特許権者による手続補正書の提出
(以下、この補正を「本件補正」という。)
同年 5月 8日付け:却下理由通知書
同年 5月17日 :特許権者による弁明書の提出
同年 5月29日付け:手続却下の決定
なお、令和3年11月9日提出の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、令和5年4月27日提出の訂正請求書に関する手続は、令和5年5月8日付け却下理由通知書に記載した理由で、令和5年5月29日付け手続却下の決定によって却下された。
第2 本件補正の適否について
本件訂正は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、令和4年6月24日に提出された訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。
また、本件補正は、令和5年3月10日付け訂正拒絶理由通知に対して、本件訂正に係る訂正請求書、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲、訂正明細書について補正することを求めるものである。
そこで、まず本件訂正及び本件補正の内容を示し、次に本件補正が上記訂正請求書の要旨を変更するものか否かを検討する。
1 本件訂正の内容
本件訂正は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「上記動き補償予測部は、上記インデックス情報に基づいて、」を、「上記動き補償予測手段を構成する動き補償予測部は、上記インデックス情報に基づいて、」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に記載の「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」を、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための制御情報」に訂正するとともに、請求項1に記載の「上記動きベクトル候補の数はスライス単位で変更可能である、」と、それに続く「ことを特徴とする動画像復号装置」との間に、「ただし、上記制御情報について、空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルの数とを足した合計が不変となる場合を除く、」を追加するように訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に記載の「上記動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」を、「上記動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための制御情報」に訂正するとともに、請求項2に記載の「上記動きベクトル候補の数は上記制御情報に基づきスライス単位で変更可能である、」と、それに続く「ことを特徴とする動画像符号化装置」との間に、「ただし、上記制御情報について、空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルの数とを足した合計が不変となる場合を除く、」を追加するように訂正する。
エ 訂正事項4
明細書の段落[0012]に記載の「動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、」を、「動き補償予測手段を構成する動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、」に訂正する。
オ 訂正事項5
明細書の[0012]に記載の「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」を、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための制御情報」に訂正する。
カ 訂正事項6
明細書の[0013]に記載の「動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、」を、「動き補償予測手段を構成する動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、」に訂正する。
キ 訂正事項7
明細書の[0013]に記載の「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」を、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための制御情報」に訂正する。
2 本件補正の内容
本件補正は、上記本件訂正に係る訂正事項を以下の「(2)訂正事項」のとおり補正するものである。
「(2)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「動き補償予測手段」との記載を、「動き補償予測部」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「…動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測部と、を備え、」の後ろに、「上記制御情報は、閾値Thであり、差分二乗和を示すSSEが前記閾値Th以下である動きベクトルが、上記動きベクトル候補として選択され、」との構成要件を追加して、訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2において、「上記動きベクトル候補の数を変更するための制御情報とを含むビットストリームを生成する可変長符号化部と、を備え、」の後ろに、「上記制御情報は、閾値Thであり、差分二乗和を示すSSEが前記閾値Th以下である動きベクトルが、上記動きベクトル候補として選択され、」との構成要件を追加して、訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲に係る訂正事項1及び訂正事項2にともない、明細書の[0012]について、以下のように訂正する。
「 この発明に係る動画像復号装置は、最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データ、符号化ブロックに係わる符号化モード及び動きベクトルを指定するための符号化ブロックに係わるインデックス情報、および当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報が含まれるビットストリームに多重化されている符号化データに可変長復号処理を行う可変長復号部と、インデックス情報に基づいて、1以上の動きベクトル候補の中から動きベクトルを選択し、選択された動きベクトルを用いて符号化ブロックに対し、動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測部と、を備え、制御情報は、閾値Thであり、差分二乗和を示すSSEが前記閾値Th以下である動きベクトルが、動きベクトル候補として選択され、動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックの動きベクトル候補から得られる空間動きベクトル、または符号化ブロックが参照可能な復号済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルを選択し、動き補償予測部は、制御情報に基づいて、符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックから得られる空間動きベクトル、および符号化ブロックが参照可能な復号化済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルの少なくともいずれかを含む動きベクトル候補のリストを用意し、動きベクトル候補は所定の順番でリスト化され、動きベクトル候補の数はスライス単位で変更可能であることを特徴とするものである。」
3 補正の適否についての当審の判断
3-1 はじめに
本件補正は、本件訂正の訂正事項1ないし7について、以下の補正を行うものと解される。
(1)本件訂正の訂正事項1を削除した上で、上記2の「(2)訂正事項」の「ア 訂正事項1」のとおり、「動き補償予測手段」との記載を、「動き補償予測部」に訂正する訂正事項を新たに追加する補正。
(2)本件訂正の訂正事項2を削除した上で、上記2の「(2)訂正事項」の「ア 訂正事項1」のとおり訂正した特許請求の範囲の請求項1において、
さらに、上記2の「(2)訂正事項」の「イ 訂正事項2」のとおり、「…動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測部と、を備え、」の後ろに、「上記制御情報は、閾値Thであり、差分二乗和を示すSSEが前記閾値Th以下である動きベクトルが、上記動きベクトル候補として選択され、」との構成要件を追加する訂正事項を新たに追加する補正。
(3)本件訂正の訂正事項3を削除した上で、上記2の「(2)訂正事項」の「ウ 訂正事項3」のとおり、特許請求の範囲の請求項2において、「可変長符号化部と、を備え」の後ろに、「上記制御情報は、閾値Thであり、差分二乗和を示すSSEが前記閾値Th以下である動きベクトルが、上記動きベクトル候補として選択され、」との構成要件を追加する訂正事項を新たに追加する補正。
(4)本件訂正の訂正事項4、5を削除した上で、上記2「(2)訂正事項」の「エ 訂正事項4」のとおり、明細書の[0012]の「動き補償予測手段手段とを、備え、」との記載を「動き補償予測部と、を備え、」に訂正するとともに、その後ろに「制御情報は、閾値Thであり、差分二乗和を示すSSEが前記閾値Th以下である動きベクトルが、動きベクトル候補として選択され、」との構成要件を追加する訂正事項を新たに追加する補正。
(5)本件訂正事項6、7を削除する補正。
3-2 補正の適否について
上記3-1の(1)及び(4)の補正事項は、本件訂正の訂正事項1ないし7を全て削除した上で、当該訂正事項1ないし7とは異なる内容の訂正事項1ないし4を新たに追加するものであるから、本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。
3-3 小括
以上のとおり、本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項に適合しないから、本件補正は採用しない。
第3 本件訂正の適否
上記第2の3のとおり、本件補正は採用しないことから、本件訂正の内容は、上記第2の1のとおりである。
1 一群の請求項について
訂正前の請求項1及び2はそれぞれ独立した請求項であり、かつ、それらを引用する請求項は存在しない。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的についての検討
訂正事項2は、訂正前の「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」における「動きベクトル候補の数」、すなわち、制御情報によって変更される「動きベクトル候補の数」について、「空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方」であることを特定するともに、当該制御情報について、「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合を除く」ことを特定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかどうかについての検討
(ア)はじめに
上記(1)で説示したとおり、訂正事項2は、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」における「動きベクトル候補の数」、すなわち、制御情報によって変更される「動きベクトル候補の数」について、「空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方」であることを特定するともに、当該制御情報について、「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合を除く」ことを特定するものであるから、それらの特定事項が本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載されたものであるか否かについて以下で検討する。
(イ)本件特許の明細書の記載
動きベクトル候補を示すリストを示すリスト情報を伝送することに関連し、特にリストが変更された場合に変更後のリストを示すリスト情報を伝送することについて、可変長符号化を行う動画像符号化装置に関して、本件特許明細書の【0012】~【0013】、【0015】~【0027】、【0182】、【0184】及び【0200】~【0207】には以下の記載がある。(ここで、以下の下線は合議体が付したものである。本件特許明細書の【0012】【0013】に付されていた下線は付していないことに留意されたい。)
「【0012】
この発明に係る動画像復号装置は、最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データ、符号化ブロックに係わる符号化モード及び動きベクトルを指定するための符号化ブロックに係わるインデックス情報、および当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報が含まれるビットストリームに多重化されている符号化データに可変長復号処理を行う可変長復号部と、インデックス情報に基づいて、1以上の動きベクトル候補の中から動きベクトルを選択し、選択された動きベクトルを用いて符号化ブロックに対し、動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測手段と、を備え、動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックの動きベクトル候補から得られる空間動きベクトル、または符号化ブロックが参照可能な復号済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルを選択し、動き補償予測部は、制御情報に基づいて、符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックから得られる空間動きベクトル、および符号化ブロックが参照可能な復号化済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルの少なくともいずれかを含む動きベクトル候補のリストを用意し、動きベクトル候補は所定の順番でリスト化され、動きベクトル候補の数はスライス単位で変更可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データ、符号化ブロックに係わる符号化モード及び動きベクトルを指定するための符号化ブロックに係わるインデックス情報、および当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報が含まれるビットストリームに多重化されている符号化データに可変長復号処理を行う可変長復号部と、インデックス情報に基づいて、1以上の動きベクトル候補の中から動きベクトルを選択し、選択された動きベクトルを用いて符号化ブロックに対し、動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測手段と、を備え、動き補償予測部は、インデックス情報に基づいて、符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックの動きベクトル候補から得られる空間動きベクトル、または符号化ブロックが参照可能な復号済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルを選択し、動き補償予測部は、制御情報に基づいて、符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックから得られる空間動きベクトル、および符号化ブロックが参照可能な復号化済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルの少なくともいずれかを含む動きベクトル候補のリストを用意し、動きベクトル候補は所定の順番でリスト化され、動きベクトル候補の数はスライス単位で変更可能であるので、符号化ブロック単位に最適な符号化モードを選択して動画像の復号化処理を行うことが可能となる。」
「【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
この実施の形態1では、映像の各フレーム画像を入力し、近接フレーム間で動き補償予測を実施することで得られる予測差分信号に対して直交変換や量子化による圧縮処理を実施した後に可変長符号化を行ってビットストリームを生成する動画像符号化装置と、その動画像符号化装置から出力されたビットストリームを復号する動画像復号装置について説明する。
(中略)
【0027】
可変長符号化部13は変換・量子化部7から出力された圧縮データと、符号化制御部1から出力された符号化モード及び予測差分符号化パラメータと、イントラ予測部4から出力されたイントラ予測パラメータ又は動き補償予測部5から出力されたインター予測パラメータを可変長符号化して、その圧縮データ、符号化モード、予測差分符号化パラメータ、イントラ予測パラメータ/インター予測パラメータの符号化データが多重化されているビットストリームを生成する処理を実施する。なお、可変長符号化部13は可変長符号化手段を構成している。」
「【0200】
実施の形態7.
上記実施の形態6では、動画像符号化装置の符号化制御部1及び動画像復号装置の動き補償予測部54が、予め、選択可能な動きベクトルを示すリストを保持しているものを示したが、動画像符号化装置の可変長符号化部13が、そのリストを示すリスト情報を可変長符号化し、そのリスト情報の符号化データを、例えば、スライスヘッダに多重して、動画像復号装置側に伝送するようにしてもよい。
この場合、動画像復号装置の可変長復号部51は、スライスヘッダに多重されている符号化データからリスト情報を可変長復号して、そのリスト情報が示すリストを動き補償予測部54のダイレクトベクトル生成部65に出力することになる。
(中略)
【0202】
動画像符号化装置の符号化制御部1は、上記実施の形態6と同様に、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズに応じて、選択可能な1以上の動きベクトルを決定するが、動きベクトルを決定する際に参照するリストが変更されているか否かを確認し、リストが前回と同じであれば(図44のステップST41)、前回とリストが同じである旨を動画像復号装置側に通知するため、変更フラグを“オフ”に設定する(ステップST42)。
可変長符号化部13は、符号化制御部1が変更フラグを“オフ”に設定すると、“オフ”の変更フラグを符号化して、その符号化データを動画像復号装置側に伝送する(ステップST43)。
【0203】
符号化制御部1は、前回とリストが異なる場合(ステップST41)、前回とリストが異なる旨を動画像復号装置側に通知するため、変更フラグを“オン”に設定する(ステップST44)。
可変長符号化部13は、符号化制御部1が変更フラグを“オン”に設定すると、“オン”の変更フラグと変更後のリストを示すリスト情報を符号化して、その符号化データを動画像復号装置側に伝送する(ステップST45)。
図46はリスト内の「temporal」が選択可から選択不可に変更されているために、“オン”の変更フラグと変更後のリストを示すリスト情報を符号化している例を示している。
【0204】
動画像復号装置の可変長復号部51は、符号化データから変更フラグを復号し(図45のステップST51)、その変更フラグが“オフ”であれば(ステップST52)、“オフ”の変更フラグを動き補償予測部54に出力する。
動き補償予測部54は、可変長復号部51から“オフ”の変更フラグを受けると、前回とリストが同じであると認識し、現在保持しているリストを参照対象に設定する(ステップST53)。
したがって、動き補償予測部54は、現在保持しているリストを参照して、今回復号を行うパーティションのブロックサイズに対応する1以上の動きベクトルを決定する。
【0205】
動画像復号装置の可変長復号部51は、変更フラグが“オン”であれば(ステップST52)、符号化データからリスト情報を復号し、“オン”の変更フラグとリスト情報を動き補償予測部54に出力する(ステップST54)。
動き補償予測部54は、可変長復号部51から“オン”の変更フラグとリスト情報を受けると、前回とリストが異なると認識し、そのリスト情報にしたがって現在保持しているリストを変更して、変更後のリストを参照対象に設定する(ステップST55)。
したがって、動き補償予測部54は、変更後のリストを参照して、今回復号を行うパーティションのブロックサイズに対応する1以上の動きベクトルを決定する。
図47は変更フラグが“オン”であるため、現在保持しているリストを変更している例を示している。
(中略)
【0207】
この実施の形態7では、リストが示す選択可能な動きベクトルの一部が変更された場合でも、変更後のリストの全体を示すリスト情報を符号化する例を示したが、図48に示すように、ブロックサイズ毎に変更フラグを用意し、選択可能な動きベクトルが変更されたブロックサイズの変更フラグを“オン”にして、当該ブロックサイズに係るリスト情報だけを符号化するようにしてもよい。
図48の例では、ブロックサイズが「64」と「8」における動きベクトルは変更されていないため、変更フラグは“オフ”であり、当該ブロックサイズに係るリスト情報は符号化されない。
一方、ブロックサイズが「32」と「16」における動きベクトルは変更されているため、変更フラグは“オン”であり、当該ブロックサイズに係るリスト情報は符号化されている。
なお、いずれかのブロックサイズの変更フラグが“オン”である場合に限り、ブロックサイズ単位の変更フラグを符号化するようにして、いずれのブロックサイズの変更フラグも“オフ”である場合には、リスト単位の変更フラグ(“オフ”の変更フラグ)だけを符号化するようにしてもよい。
また、リスト単位の変更フラグを用いずに、ブロックサイズ単位の変更フラグだけを符号化するようにしてもよい。」
また、本件図面の図46~図48には、以下の記載がある。
「【図46】
[図:0001416424000001.jpg]
【図47】
[図:0001416424000002.jpg]
【図48】
[図:0001416424000003.jpg]
」
次に、本件特許明細書【0101】~【0103】、【0129】~【0131】、【0154】、【0183】~【0184】には、選択候補となる動きベクトル及び動きベクトル候補数について、以下の記載がある。
「【0101】
(中略)
例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。
(中略)
【0103】
(中略)
一般的にブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられる。そのため、例えば、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すことで、符号化効率を落とさずに処理量を減らすことができる。」
「【0129】
(中略)
例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。
(中略)
【0131】
(中略)
一般的にブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられる。そのため、例えば、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すことで、符号化効率を落とさずに処理量を減らすことができる。」
「【0154】
(中略)
例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。」
「【0183】
上述したように、選択可能な1以上の動きベクトルは、例えば、パーティションのブロックサイズ毎に一意に決定することができるが、図40に示すように、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズが大きい場合、周囲のブロックとの相関が高く、逆にパーティションのブロックサイズが小さい場合、周囲のブロックとの相関が低い。
したがって、パーティションのブロックサイズが小さい程、選択可能な動きベクトルの候補数を減らすことができる。
【0184】
そこで、符号化制御部1は、図41に示すように、予め、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズ毎に、選択可能な1以上の動きベクトルをリスト化している。
図41から明らかなように、パーティションのブロックサイズが小さい程、選択可能な動きベクトルの候補数を減らしており、例えば、ブロックサイズが「64」のパーティションでは、選択可能な動きベクトルの個数が「4」であるが、ブロックサイズが「8」のパーティションでは、選択可能な動きベクトルの個数が「2」である。」
(ウ)(イ)の記載から、本件特許明細書の「変更フラグ」に関して、以下の技術事項が記載されているものといえる。
・ビットストリームに含まれる情報で、動きベクトルに関するものとして、選択可能な動きベクトル、すなわち、動きベクトル候補、を示すリストや変更フラグがあること(【0015】、【0027】、【0200】、【0203】、【0205】)
・変更フラグは、動きベクトル候補を示すリストを変更するための制御情報であるということができること(【0203】、【0205】、【0207】)
・変更フラグによって、動きベクトル候補が変更される場合に、動きベクトル候補の数が変更される場合があること(図46~図48)
・時間動きベクトル候補はtemporal1つしか存在しないため、時間動きベクトル候補だけが変更される場合は、必ず動きベクトル候補の数が変更されること(図46、図47)
一方、本件特許明細書の「変更フラグ」に関して、動きベクトル候補が変更される場合に関して、空間動きベクトル候補はMV_A、MV_B、MV_C、medianの4つがあるため、各々が候補に加わる、または候補から外れることにより、空間動きベクトル候補だけが変更される場合には、空間動きベクトル候補の数は変更される場合と変更されない場合があるといえる。また、空間動きベクトル候補だけが変更される場合、空間動きベクトル候補の数が必ず変更される旨の記載や示唆は見当たらない。
したがって、以下のことは記載されておらず、示唆も見当たらない。
・空間動きベクトル候補だけが変更される場合、必ず動きベクトル候補の数が変更されること
また、以下のことも記載されておらず、示唆も見当たらない。
・空間動きベクトル候補と時間動きベクトル候補の両者が変わる場合、必ず動きベクトル候補の数が変更されること
一方、(イ)の記載から、本件特許明細書等の動きベクトル候補の選択、および動きベクトル候補の数が変更される場合について、
・パンするような映像では時間ベクトルの候補が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えること、ブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられ、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すこと、(【0101】、【0103】、【0129】、【0131】、【0154】)
・符号化ブロックであるパーティションの大きさが大きい場合、周囲のブロックとの相関が高く、逆にパーティションのブロックサイズが小さい場合、周囲のブロックとの相関が低いことから、パーティションのブロックサイズが小さい程、選択可能な動きベクトルの候補数を減らすことができること、(【0183】、【0184】)
ことがいえるから、以下の技術事項が示唆されているといえる。
・動きベクトル候補が変更される場合に、時間ベクトルが増えて空間ベクトルが減ることがあり、増えた数と減った数が同じ場合には、動きベクトル候補の数は変わらないことがあり得ること
さらに、本件特許明細書の「変更フラグ」に関して、以下のことは記載されておらず、示唆も見当たらない。
・変更フラグから「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合」を除くこと、あるいは、
・変更フラグによって動きベクトル侯補を変更する際に、「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合を除」くこと、あるいは、
・「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合」に、変更フラグをビットストリームに含めないこと
以上を総合すると、本件特許明細書には、「変更フラグ」が「インデックス情報に基づき選択される動きベクトル侯補の数を変更するための制御情報」であるということは、記載も示唆もされていない。
(エ)また、本件特許請求の範囲の記載に関して、
・本件特許の特許請求の範囲(すなわち、訂正前の特許請求の範囲)の請求項1には「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報が含まれるビットストリーム」と記載され、請求項2には「上記動きベクトル候補の数を変更するための制御情報とを含むビットストリーム」と記載されており、この点に関して、本件特許明細書の【0012】、【0013】にも同様の記載がなされていること、がいえるものの、
上記(イ)の記載からは、
・上記制御情報が、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための」ものであることについて、明示的な記載はなく、
・さらに、上記制御情報について、「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合を除く」ものであることについて、記載も示唆もされていない。
(オ)加えて、上記(イ)以外の本件特許明細書等の他の記載を見ても、本件特許請求の範囲における、制御情報によって変更される「動きベクトル候補の数」について、「空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方」であることや、制御情報について、「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルとの数とを足した合計が不変となる場合を除く」ことは、記載も示唆もされていない。
(カ)特許権者の主張について
訂正事項2に関して、「動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための」「制御情報」について、特許権者は令和4年6月24日付け訂正請求書の第10頁第17行から第11頁第8行において、以下のように説明している。
「出願当初明細書の[0101]等には、「例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では空間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。」と記載されている。前半の「時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする」という記載は、動きベクトル候補の数のうち時間動きベクトルの数を変更する(減らす)態様及び効果についての記載である。後半の「カメラが固定な映像では空間ベクトルの効果が大きいため候補に加える」という記載は、動きベクトル候補の数のうち空間ベクトルの数を変更する(増やす)態様及び効果についての記載である。
出願当初明細書の[0103]等には、「一般的にブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられる。そのため、例えば、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すことで、符号化効率を落とさずに処理量を減らすことができる。」と記載されている。この記載は、動きベクトル候補を変更する具体的な態様として動きベクトル候補の数を減らすこと、及び、動きベクトル候補の数を減らす効果として処理量が減ること、を示している。」
しかしながら、上記の説明は、「制御情報」が「動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための」ものであることを裏付けるわけではない。
また、上記(ウ)のとおり、「変更フラグ」について、空間動きベクトル候補だけが変更される場合、必ず動きベクトル候補の数が変更されることを示すわけではないし、空間動きベクトル候補と時間動きベクトル候補の両者が変わる場合、必ず動きベクトル候補の数が変更されることを示すわけでもない。
そうすると、本件特許明細書等には、「制御情報」が「動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための」ものであることを裏付ける記載は見当たらない。
さらに、本件特許明細書等には、「動きベクトル候補の数のうち空間動きベクトルの数及び時間動きベクトルの数のうち少なくとも一方を変更するための」「制御情報」について、当該「制御情報」に関連する上記変更フラグを「ビットストリームに多重化」することを、所定の条件を満たす場合に行うという技術的事項を裏付ける記載がそもそも見当たらず、その一例としての「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルの数とを足した合計が不変となる場合を除」いた場合に行うという技術的事項を裏付ける記載も見当たらない。
そうすると、本件特許明細書等には、「空間動きベクトルの増減と時間動きベクトルの増減とにより空間動きベクトルの数と時間動きベクトルの数とを足した合計が不変となる場合を除」いた場合にはビットストリームに含まれるような「制御情報」は記載されていない。
さらに、特許権者は令和5年4月27日付け意見書の(3)から(5)において、本件補正によって、本件訂正における訂正事項の補正が認められることを前提として、当該補正後の訂正事項の内容に基づき、取消理由が解消された旨を主張している。
しかしながら、上記第2のとおり、本件補正は訂正請求書の要旨を変更するものであり、採用しないことから、上記意見書の主張はその根拠を欠くものであり、採用できない。
(キ)まとめ
以上(ア)から(カ)を総合すると、訂正事項2は、当業者にとって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえる。
(3)小括
以上のことから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合しない。
3 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2と同様の訂正を訂正前の特許請求の範囲の請求項2に対して行うものであって、上記2の(2)で説示した理由と同様の理由で、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合しない。
4 訂正事項5、7について
訂正事項5、7は、上記2の(2)で説示した理由と同様の理由で、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合しない。
5 むすび
以上のとおり、本件訂正における訂正事項2、3、5、7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、その余の訂正事項について検討するまでもなく、本件訂正は認められない。
第4 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1、2」という。また、本件発明1、2を総称して「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(符号A1~D1、A2~D2は合議体が付した。以下、「構成A1」~「構成D2」等という。)
(本件発明1)
【請求項1】
A1-1 最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データ、
A1-2 符号化ブロックに係わる符号化モード及び動きベクトルを指定するための符号化ブロックに係わるインデックス情報、
A1-3 および当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報
A1 が含まれるビットストリームに多重化されている符号化データに可変長復号処理を行う可変長復号部と、
B1-1 上記インデックス情報に基づいて、1以上の動きベクトル候補の中から動きベクトルを選択し、
B1 選択された動きベクトルを用いて上記符号化ブロックに対し、動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測手段と、を備え、
B1-2 上記動き補償予測部は、上記インデックス情報に基づいて、
B1-2-1 上記符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックの動きベクトル候補から得られる空間動きベクトル、
B1-2-2 または上記符号化ブロックが参照可能な復号済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトル
B1-2 を選択し、
B1-3 上記動き補償予測部は、上記制御情報に基づいて、
B1-3-1 上記符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックから得られる空間動きベクトル、
B1-3-2 および上記符号化ブロックが参照可能な復号化済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトル
B1-3 の少なくともいずれかを含む上記動きベクトル候補のリストを用意し、
C1-1 上記動きベクトル候補は所定の順番でリスト化され、
C1-2 上記動きベクトル候補の数はスライス単位で変更可能である、
D1 ことを特徴とする動画像復号装置。
(本件発明2)
【請求項2】
B2-1 符号化ブロックの周囲に位置する複数の符号化済みブロックから得られる空間動きベクトル、
B2-2 および上記符号化ブロックが参照可能な符号化済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルから動きベクトル候補を用意し、
B2 上記動きベクトル候補の中から選択された動きベクトルを用いて上記符号化ブロックに対し、動き補償予測処理を実施して予測画像を生成する動き補償予測部と、
A2-1 最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データと、
A2-2 選択された動きベクトル候補を示すインデックス情報と、
A2-3 上記動きベクトル候補の数を変更するための制御情報
A2 とを含むビットストリームを生成する可変長符号化部と、を備え、
B2-3 上記動き補償予測部は、上記空間動きベクトルまたは上記時間動きベクトルから上記動きベクトル候補のリストを用意し、
C2-1 上記動きベクトル候補は所定の順番でリスト化され、
C2-2 上記動きベクトル候補の数は上記制御情報に基づきスライス毎に変更可能である、
D2 ことを特徴とする動画像符号化装置。
第5 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし2に係る特許に対して、当審が令和4年5月13日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明または図面中には実質的に記載されておらず、また示唆もされていないこと、さらには、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1に記載の「制御情報」の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)を満たしておらず、また、本件発明1は明確でないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
また、本件特許2は、本件特許1同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、それぞれなされたものである。
よって、本件特許1及び本件特許2は、特許法第113条第4項の規定により取り消されるべきものである。
第6 当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1の具体的構成について
本件発明1の構成A1-1からA1-3を踏まえた構成A1は、「最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データ、符号化ブロックに係わる符号化モード及び動きベクトルを指定するための符号化ブロックに係わるインデックス情報、および当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル侯補の数を変更するための制御情報が含まれるビットストリームに多重化されている符号化データに可変長復号処理を行う可変長復号部」である。
また、本件発明1の構成B1-3、B1-3-1、B1-3-2を踏まえた構成B1は、「上記動き補償予測部は、上記制御情報に基づいて、上記符号化ブロックの周囲に位置する複数の復号済みブロックから得られる空間動きベクトル、および上記符号化ブロックが参照可能な復号化済みピクチャの動きベクトルから得られる時間動きベクトルの少なくともいずれかを含む上記動きベクトル候補のリストを用意」するものである。
(2)「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」の明細書中の裏付けについて
ア まず、上記構成A1の「動きベクトル候補の数を変更するための制御信号」という文言は、本件明細書には、特許請求の範囲の引き写しとしての【課題を解決するための手段】に関する【0012】、【発明の効果】に関する【0013】にしか存在せず、【発明を実施するための形態】には存在しない。
イ 次に、【発明を実施するための形態】について検討する。
(ア)本件特許明細書【0111】、【0139】には、動きベクトル候補の数に関連して、以下の記載がある。(下線は当審において付した。以下同様。)
「【0111】
上記実施の形態1のダイレクトモードでは、2本のベクトルを用いた予測を想定しているが、ベクトルの本数は3本以上であってもよい。
この場合、例えば、複数のベクトル候補のうち、閾値Th以下の評価値SADになる候補の全てを使用して予測画像を生成する方法が考えられる。また、参照画像リストもそのベクトル分保持している。
また、閾値Th以下の候補の全てを使用するのではなく、スライスヘッダなどに、予め使用する最大ベクトル数を定めておき、評価値の小さい候補から最大ベクトル数分用いて予測画像を生成するようにしてもよい。」
「【0139】
この実施の形態3では、2本のベクトルを用いた予測を想定しているが、ベクトルの本数は3本以上であってもよい。
この場合、例えば、複数のベクトル候補のうち、閾値Th以下の評価値SADになる候補の全てを使用して予測画像を生成する方法が考えられる。
また、閾値Th以下の候補の全てを使用するのではなく、スライスヘッダなどに、予め使用する最大ベクトル数を定めておき、評価値の小さい候補から最大ベクトル数分用いて予測画像を生成するようにしてもよい。」
(イ)次に、本件特許明細書【0101】~【0103】、【0129】~【0131】、【0154】~【0155】には、動きベクトル候補を示す情報の表現、選択候補となる動きベクトル、動きベクトル候補の切り替えについて、以下の記載がある。
「【0101】
上記実施の形態1では、特に言及していないが、ダイレクトベクトルの候補をスライス単位に決定するようにしてもよい。
どのベクトルを候補とするか示す情報はスライスヘッダに多重する。
例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。
【0102】
候補となるベクトルが多い方が、より原画像に近い予測画像を生成することができるが、エンコーダの処理量が増大するため、効果がないベクトルは予め候補からはずしておくなど、映像の局所性を考慮して決定することにより、処理量と符号化効率のバランスを図ることができる。
候補となるベクトルの切り替えは、例えば、ベクトル毎にオン/オフのフラグを設け、そのフラグがオンのベクトルのみを候補とする方法が考えられる。
選択候補となる動きベクトルは、スライスヘッダで切り替えてもよいし、シーケンスヘッダやピクチャヘッダなど、上位レイヤで切り替えてもよい。また、選択候補となるセットを一つ以上用意して、その候補セットのインデックスを符号化するようにしてもよい。
【0103】
また、マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えてもよい。マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えることで、局所性を持たせることができ、符号化効率改善の効果がある。
また、選択候補はパーティションブロックサイズ毎に一意に決定しておいてもよい。一般的にブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられる。そのため、例えば、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すことで、符号化効率を落とさずに処理量を減らすことができる。」
「【0129】
この実施の形態3では、ダイレクトベクトルの候補をスライス単位に決定するようにしてもよい。
どのベクトルを候補とするか示す情報はスライスヘッダに多重する。
例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。
【0130】
候補となるベクトルが多い方が、より原画像に近い予測画像を生成することができるが、エンコーダの処理量が増大するため、効果がないベクトルは予め候補からはずしておくなど、映像の局所性を考慮して決定することにより、処理量と符号化効率のバランスを図ることができる。
候補となるベクトルの切り替えは、例えば、ベクトル毎にオン/オフのフラグを設け、そのフラグがオンのベクトルのみを候補とする方法が考えられる。
選択候補となる動きベクトルは、スライスヘッダで切り替えてもよいし、シーケンスヘッダやピクチャヘッダなど、上位レイヤで切り替えてもよい。また、選択候補となるセットを一つ以上用意して、その候補セットのインデックスを符号化するようにしてもよい。
【0131】
また、マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えてもよい。マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えることで、局所性を持たせることができ、符号化効率改善の効果がある。
また、選択候補はパーティションブロックサイズ毎に一意に決定しておいてもよい。一般的にブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられる。そのため、例えば、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すことで、符号化効率を落とさずに処理量を減らすことができる。」
「【0154】
この実施の形態4では、選択可能な動きベクトルの候補が固定されているが、選択可能な動きベクトルの候補をスライス単位に決定するようにしてもよい。
どのベクトルを候補とするか示す情報はスライスヘッダに多重する。
例えば、時間ベクトルに関しては、パンするような映像では時間ベクトルの効果が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えるなどの方法が考えられる。
【0155】
候補となるベクトルが多い方が、より原画像に近い予測画像を生成することができるが、エンコーダの処理量が増大するため、効果がないベクトルは予め候補からはずしておくなど、映像の局所性を考慮して決定することにより、処理量と符号化効率のバランスを図ることができる。
候補となるベクトルの切り替えは、例えば、ベクトル毎にオン/オフのフラグを設け、そのフラグがオンのベクトルのみを候補とする方法が考えられる。
選択候補となる動きベクトルは、スライスヘッダで切り替えてもよいし、シーケンスヘッダやピクチャヘッダなど、上位レイヤで切り替えてもよい。また、選択候補となるセットを一つ以上用意して、その候補セットのインデックスを符号化するようにしてもよい。
また、マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えてもよい。マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えることで、局所性を持たせることができ、符号化効率の改善が図られる。」
(ウ)次に、本件特許明細書【0147】~【0150】には動きベクトル候補インデックスについて、以下の記載がある。
「【0147】
動き補償予測部5のダイレクトベクトル生成部26は、符号化モードm(Bn)がダイレクトモードである場合、符号化ブロックBnのパーティションPin毎に、ダイレクトベクトルを生成する。
即ち、ダイレクトベクトル生成部26は、図33に示すようなダイレクトベクトル候補インデックスを参照して、選択可能な1以上の動きベクトルの中から、予測画像の生成に適する動きベクトルを選択する。
図33の例では、5個の動きベクトルが選択可能な動きベクトルとして列挙されているが、空間予測では、「median」が一番多く選ばれるため、「median」にインデックス0が割り当てられている。
・・・
【0149】 ダイレクトベクトル生成部26は、コストRが最小の動きベクトルを選択すると、その動きベクトルをダイレクトベクトルとして動き補償処理部24に出力するとともに、その動きベクトルを示すインデックス情報を可変長符号化部13に出力する。
例えば、コストRが最小の動きベクトルとして「median」を選択していれば、インデックス0を可変長符号化部13に出力し、「MV_A」を選択していれば、インデックス1を可変長符号化部13に出力する。
可変長符号化部13は、ダイレクトベクトル生成部26からインデックス情報を受けると、圧縮データや符号化モード等を可変長符号化する際、そのインデックス情報をインター予測パラメータに含めて可変長符号化する。
【0150】
動き補償予測部54のダイレクトベクトル生成部65は、符号化モードm(Bn)がダイレクトモードである場合、符号化ブロックBnのパーティションPin毎に、ダイレクトベクトルを生成する。
即ち、ダイレクトベクトル生成部65は、図31のダイレクトベクトル生成部26と同じダイレクトベクトル候補インデックスを入力しており(例えば、図33のダイレクトベクトル候補インデックス)、切替スイッチ61からインデックス情報を含むインター予測パラメータを受けると、そのダイレクトベクトル候補インデックスから、そのインデックス情報が示す動きベクトルを読み出し、その動きベクトルをダイレクトベクトルとして動き補償処理部63に出力する。」
(エ)次に、本件特許明細書【0159】、【0164】には、動きベクトル候補の本数を示す情報について、以下の記載がある。
「【0159】
この実施の形態4では、選択可能な動きベクトルが5個用意されているダイレクトベクトル候補インデックスを示したが、6個以上の動きベクトルを候補ベクトルとして用意するようにしてもよいし、5個より少ない動きベクトルを候補ベクトルとして用意してもよい。
例えば、図17に示すように、時間ベクトルの近傍のベクトルや、図18に示すように、周囲のベクトルの重み付け加算が行われたベクトルを候補ベクトルとして加えてもよい。」
「【0164】
使用するベクトルの本数を示す情報はスライス単位など上位ヘッダに多重するようにしてもよい。ベクトルの本数が増えると、符号化効率は向上するが、処理量が増えるため、トレードオフの関係にある。
また、スライス単位ではなく、符号化ブロックやパーティションなどより細かい単位で設定するようにしてもよい。この場合、画像の局所性に応じて処理量と符号化効率のバランスを図ることができる。」
(オ)次に、本件特許明細書【0183】~【0184】、【0193】には、動きベクトル候補の選択について、以下の記載がある。
「【0183】
上述したように、選択可能な1以上の動きベクトルは、例えば、パーティションのブロックサイズ毎に一意に決定することができるが、図40に示すように、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズが大きい場合、周囲のブロックとの相関が高く、逆にパーティションのブロックサイズが小さい場合、周囲のブロックとの相関が低い。
したがって、パーティションのブロックサイズが小さい程、選択可能な動きベクトルの候補数を減らすことができる。
【0184】
そこで、符号化制御部1は、図41に示すように、予め、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズ毎に、選択可能な1以上の動きベクトルをリスト化している。
図41から明らかなように、パーティションのブロックサイズが小さい程、選択可能な動きベクトルの候補数を減らしており、例えば、ブロックサイズが「64」のパーティションでは、選択可能な動きベクトルの個数が「4」であるが、ブロックサイズが「8」のパーティションでは、選択可能な動きベクトルの個数が「2」である。」
「【0193】
また、この実施の形態6では、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズに応じて、選択可能な1以上の動きベクトルを決定するものを示したが、符号化ブロックの分割パターンに応じて、選択可能な1以上の動きベクトルを決定するようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
図43は符号化ブロックの分割パターン毎に、選択可能な1以上の動きベクトルを示すリストの説明図である。
例えば、符号化ブロックであるパーティションが、2partH1である場合、選択可能な1以上の動きベクトルとして、「MV_A」、「MV_B」、「MV_C」、「temporal」を定めているが、符号化ブロックであるパーティションが、2partH2である場合、左のブロックである2partH1とは動きが異なる可能性が高い。
そのため、2partH2が選択可能な1以上の動きベクトルの中から、左のブロックの動きベクトルである「MV_A」を削除して、「MV_B」、「MV_C」、「temporal」を定めている。」
(カ)次に、動きベクトル候補を示すリストを示すリスト情報を伝送することについて、特にリストが変更された場合に変更後のリストを示すリスト情報を伝送することについて、【0200】~【0208】には以下の記載がある。
「【0200】
実施の形態7.
上記実施の形態6では、動画像符号化装置の符号化制御部1及び動画像復号装置の動き補償予測部54が、予め、選択可能な動きベクトルを示すリストを保持しているものを示したが、動画像符号化装置の可変長符号化部13が、そのリストを示すリスト情報を可変長符号化し、そのリスト情報の符号化データを、例えば、スライスヘッダに多重して、動画像復号装置側に伝送するようにしてもよい。
この場合、動画像復号装置の可変長復号部51は、スライスヘッダに多重されている符号化データからリスト情報を可変長復号して、そのリスト情報が示すリストを動き補償予測部54のダイレクトベクトル生成部65に出力することになる。
【0201】
このように、リストを示すリスト情報をスライス単位(あるいは、シーケンスやピクチャ単位などでもよい)で動画像復号装置側に伝送するようにしてもよいが、符号化制御部1により保持されているリストが変更された場合にだけ、変更後のリストを示すリスト情報を動画像復号装置側に伝送するようにしてもよい。
以下、具体的に処理内容を説明する。
図44は動画像符号化装置におけるリスト情報の送信処理を示すフローチャートであり、図45は動画像復号装置におけるリスト情報の受信処理を示すフローチャートである。
【0202】
動画像符号化装置の符号化制御部1は、上記実施の形態6と同様に、符号化ブロックであるパーティションのブロックサイズに応じて、選択可能な1以上の動きベクトルを決定するが、動きベクトルを決定する際に参照するリストが変更されているか否かを確認し、リストが前回と同じであれば(図44のステップST41)、前回とリストが同じである旨を動画像復号装置側に通知するため、変更フラグを“オフ”に設定する(ステップST42)。
可変長符号化部13は、符号化制御部1が変更フラグを“オフ”に設定すると、“オフ”の変更フラグを符号化して、その符号化データを動画像復号装置側に伝送する(ステップST43)。
【0203】
符号化制御部1は、前回とリストが異なる場合(ステップST41)、前回とリストが異なる旨を動画像復号装置側に通知するため、変更フラグを“オン”に設定する(ステップST44)。
可変長符号化部13は、符号化制御部1が変更フラグを“オン”に設定すると、“オン”の変更フラグと変更後のリストを示すリスト情報を符号化して、その符号化データを動画像復号装置側に伝送する(ステップST45)。
図46はリスト内の「temporal」が選択可から選択不可に変更されているために、“オン”の変更フラグと変更後のリストを示すリスト情報を符号化している例を示している。
【0204】
動画像復号装置の可変長復号部51は、符号化データから変更フラグを復号し(図45のステップST51)、その変更フラグが“オフ”であれば(ステップST52)、“オフ”の変更フラグを動き補償予測部54に出力する。
動き補償予測部54は、可変長復号部51から“オフ”の変更フラグを受けると、前回とリストが同じであると認識し、現在保持しているリストを参照対象に設定する(ステップST53)。
したがって、動き補償予測部54は、現在保持しているリストを参照して、今回復号を行うパーティションのブロックサイズに対応する1以上の動きベクトルを決定する。
【0205】
動画像復号装置の可変長復号部51は、変更フラグが“オン”であれば(ステップST52)、符号化データからリスト情報を復号し、“オン”の変更フラグとリスト情報を動き補償予測部54に出力する(ステップST54)。
動き補償予測部54は、可変長復号部51から“オン”の変更フラグとリスト情報を受けると、前回とリストが異なると認識し、そのリスト情報にしたがって現在保持しているリストを変更して、変更後のリストを参照対象に設定する(ステップST55)。
したがって、動き補償予測部54は、変更後のリストを参照して、今回復号を行うパーティションのブロックサイズに対応する1以上の動きベクトルを決定する。
図47は変更フラグが“オン”であるため、現在保持しているリストを変更している例を示している。
【0206】
以上で明らかなように、この実施の形態7によれば、選択可能な1以上の動きベクトルを示すリストが変更された場合に限り、変更後のリストを示すリスト情報を符号化して符号化データを生成するように構成したので、符号量の大幅な増加を招くことなく、リストの変更を受け付ける機能を実装することができる効果を奏する。
【0207】
この実施の形態7では、リストが示す選択可能な動きベクトルの一部が変更された場合でも、変更後のリストの全体を示すリスト情報を符号化する例を示したが、図48に示すように、ブロックサイズ毎に変更フラグを用意し、選択可能な動きベクトルが変更されたブロックサイズの変更フラグを“オン”にして、当該ブロックサイズに係るリスト情報だけを符号化するようにしてもよい。
図48の例では、ブロックサイズが「64」と「8」における動きベクトルは変更されていないため、変更フラグは“オフ”であり、当該ブロックサイズに係るリスト情報は符号化されない。
一方、ブロックサイズが「32」と「16」における動きベクトルは変更されているため、変更フラグは“オン”であり、当該ブロックサイズに係るリスト情報は符号化されている。
なお、いずれかのブロックサイズの変更フラグが“オン”である場合に限り、ブロックサイズ単位の変更フラグを符号化するようにして、いずれのブロックサイズの変更フラグも“オフ”である場合には、リスト単位の変更フラグ(“オフ”の変更フラグ)だけを符号化するようにしてもよい。
また、リスト単位の変更フラグを用いずに、ブロックサイズ単位の変更フラグだけを符号化するようにしてもよい。
【0208】
ここでは、ブロックサイズ毎に、選択可能な動きベクトルを変更できる例を示したが、符号化ブロックの分割パターン毎に、選択可能な動きベクトルを変更できるようにしてもよい。」
(キ)図46~図48には、以下の記載がある。
「【図46】
[図:0001416424000004.jpg]
【図47】
[図:0001416424000005.jpg]
【図48】
[図:0001416424000006.jpg]
」
ウ 上記イの記載から、以下の事項は明細書の【発明を実施するための形態】に記載されており、発明の詳細な説明中に実質的に裏付けがあるといえる。
(ア)動きベクトル候補の数に関して、上記イ(ア)、イ(エ)から、
・予測画像を生成する場合、複数のベクトル候補のうち、所定の条件を満たす候補全て、または、スライスヘッダなどに予め使用する最大ベクトル数を定めておき、評価値の小さい候補から最大ベクトル数分用いること、(【0111】、【0139】)
・選択可能な動きベクトルが用意されているダイレクトベクトル候補インデックスとして、候補ベクトルの数は5個より少なくても、5個でも、6個以上でもよいこと、(【0159】)
がいえる。
(イ)動きベクトル候補を示す情報の表現、および動きベクトル候補の切り替えについて、上記イ(イ)から、
・ダイレクトベクトルの候補をスライス単位に決定し、どの動きベクトルを候補とするかを示す情報はスライスヘッダに多重すること、(【0101】、【0129】、【0154】)
・候補となるベクトルの切り替えは、ベクトル毎にオン/オフのフラグを設け、そのフラグがオンのベクトルのみを候補とすること、(【0102】、【0130】、【0155】)
・選択候補となる動きベクトルは、スライスヘッダで切り替えても、シーケンスヘッダやピクチャヘッダなど、上位レイヤや、マクロブロックや符号化ブロック毎に切り替えてもよく、パーティションブロックサイズ毎に一意に決定しておいてもよいこと、(【0102】、【0103】、【0130】、【0131】、【0155】)
・選択候補となる動きベクトルは、選択候補となるセットを一つ以上用意して、その候補セットのインデックスを符号化するようにしてもよいこと、(【0130】、【0155】)
がいえる。
(ウ)動きベクトル候補インデックスについて、上記イ(ウ)から、
・符号化ブロックのパーティション毎に候補インデックスを参照して、選択可能な1以上の動きベクトルの中から、予測画像の生成に適する動きベクトルを選択し、動きベクトルを示すインデックス情報を可変長符号化し、インデックス情報を受け取ると、ダイレクトベクトル候補インデックスから、そのインデックスが示す動きベクトルを読み出し、その動きベクトルをダイレクトベクトルとして出力する(【0147】、【0149】、【0150】)
ことがいえる。
(エ)動きベクトル候補の数を示す情報に関して、上記イ(エ)から、
・使用するベクトルの本数を示す情報はスライス単位など上位ヘッダに多重するようにしてもよい(【0164】)
ことがいえる
(オ)動きベクトル候補の選択、および動きベクトル候補の数が増減する場合に関して、上記イ(イ)、イ(オ)から、
・パンするような映像では時間ベクトルの候補が低いため、選択候補から外すようにする一方、カメラが固定な映像では時間ベクトルの効果が大きいため候補に加えること、ブロックサイズが小さくなると空間的な相関が弱くなるため、メディアン予測で決定されるベクトルの予測精度が悪くなると考えられ、メディアン予測で決定される動きベクトルを候補から外すこと、(【0101】、【0103】、【0129】、【0131】、【0154】)
・符号化ブロックであるパーティションの大きさが大きい場合、周囲のブロックとの相関が高く、逆にパーティションのブロックサイズが小さい場合、周囲のブロックとの相関が低いことから、パーティションのブロックサイズが小さい程、選択可能な動きベクトルの候補数を減らすことができること、(【0183】、【0184】)
・符号化ブロックの分割パターンに応じて、選択可能な動きベクトルを決定し、例えば、2PartH2の動きベクトル候補として、2PartH1の動きベクトル候補から、左のブロックの動きベクトルを削除すること、(【0193】)
がいえる。
(カ)動きベクトル候補が変更された場合、動きベクトル候補が変更されたこと、および変更された動きベクトルを伝送することについて、上記イ(カ)から、
・選択可能な動きベクトルを示すリストを示すリスト情報を可変長符号化し、そのリスト情報の符号化データを、例えば、スライスヘッダに多重して、動画像復号装置側に伝送すること、動画像復号装置の可変長復号部51は、スライスヘッダに多重されている符号化データからリスト情報を可変長復号して、そのリスト情報が示すリストを出力すること、(【0200】)
・リストを示すリスト情報をスライス単位(あるいは、シーケンスやピクチャ単位などでもよい)で伝送するにあたり、リストが変更された場合にだけ、変更後のリストを示すリスト情報を伝送すること、(【0201】)
・前回とリストが異なる場合、前回とリストが異なる旨を動画像復号装置側に通知するため、変更フラグを“オン”に設定し、変更フラグを“オン”に設定すると、“オン”の変更フラグと変更後のリストを示すリスト情報を符号化して動画像復号装置側に伝送し、(【0203】)
・動画像復号装置は、変更フラグが“オン”であれば、符号化データからリスト情報を復号し、“オン”の変更フラグとリスト情報を出力し、“オン”の変更フラグとリスト情報を受けると、前回とリストが異なると認識し、そのリスト情報にしたがって現在保持しているリストを変更して、変更後のリストを参照対象に設定すること、(【0205】)
・これにより、変更後のリストを参照して、今回復号を行うパーティションのブロックサイズに対応する1以上の動きベクトルを決定すること、(【0205】)
・ブロックサイズ毎に変更フラグを用意し、選択可能な動きベクトルが変更されたブロックサイズの変更フラグを“オン”にして、当該ブロックサイズに係るリスト情報だけを符号化するようにしてもよいこと、(【0207】)
がいえる。
(キ)動きベクトル候補が変更される場合に、動きベクトル候補の数が変更される場合があることについて、さらに、上記イ(キ)の図46~図48から、
・現在保持しているリスト、または前回のリストに対して、変更フラグがオンになっている場合、変更後のリストに含まれるベクトル候補のon/offの欄において、値が1をとる欄の個数が変わっていること
が読み取れる。
エ 次に、本件特許1の「制御情報」の本件特許明細書中の裏付けについて検討する。
上記ウを総合すると、構成A1-2における「符号化ブロックに係わる」「動きベクトルを指定するための符号化ブロックに係わるインデックス情報」は上記ウ(ウ)に裏付けられているといえる。
そこで、構成A1-3のうち、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル侯補の数を変更するための制御情報」について検討する。
まず、動きベクトル候補の数がビットストリーム中に含まれることは、上記ウ(ア)、ウ(イ)、ウ(エ)に裏付けられているといえる。
次に、動きベクトル候補の数が変更されうることは、上記ウ(オ)、ウ(カ)に裏付けられているといえる。
また、当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補が変更される場合には、変更された選択可能な動きベクトルのリストとともに、変更フラグを送り、この変更フラグの値に基づいて変更された選択可能な動きベクトルのリストを復号すること、は上記ウ(イ)、ウ(カ)に裏付けられている。そうすると、この変更フラグは、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル侯補」「を変更するための制御情報」ということができる。
さらに、動きベクトル候補が変更される場合に、動きベクトル候補の数が変更される場合があることは、上記ウ(キ)に裏付けられているといえる。
しかしながら、上記ウ(ア)~ウ(キ)からは、動きベクトル候補が変更される場合には、必ず動きベクトル候補の数が変更されるということを裏付ける記載はない。
むしろ、上記ウ(オ)から、例えばカメラが固定な映像で、パーティションが小さい符号化ブロックでは、動きベクトル候補が変更されるが、時間ベクトルが増えて空間ベクトルが減ることで、総合的に動きベクトル候補の数は変わらないということがあり得ることが示唆されているといえる。
そうすると、「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補」「を変更するための制御情報」が、同時に「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル侯補の数を変更するための制御情報」でもあるということは読み取れない。
また、本件特許明細書中の【発明の実施をするための形態】の記載には、他に「動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」に関連する記載は見いだせない。
オ 以上のことから、構成A1-3の「当該インデックス情報に基づき選択される動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」は、本件特許明細書中の発明の詳細な説明または図面中には実質的に記載されているとはいえず、また示唆もされていない。
(3)「上記動き補償予測部」について
さらに、構成要件B1-2、B1-3において「上記動き補償予測部」という記載があるが、これより前に「動き補償予測手段」は存在するものの、「動き補償予測部」は存在せず、「上記」が何を受けているのかが不明であって、記載が明確でない。
(4)小括
上記(2)(3)から、本件特許1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明または図面中には実質的に記載されておらず、また示唆もされていないこと、さらには、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1に記載の「制御情報」の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)を満たしておらず、また、本件発明1は明確でないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
2 本件発明2について
本件発明2の構成要件A2-2~A2-3を踏まえた構成A2は、「最大ブロックサイズと階層数の上限値により入力画像を階層的に分割することで得られる符号化ブロックに係わる圧縮データと、選択された動きベクトル候補を示すインデックス情報と、上記動きベクトル候補の数を変更するための制御情報とを含むビットストリームを生成する可変長符号化部と、を備え」である。
ここで、上記「1 本件発明1について」の(2)と同様に、構成A2-3の「上記動きベクトル候補の数を変更するための制御情報」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明または図面中に実質的に記載されておらず、また、示唆もされていない。
従って、本件特許2は、本件特許1同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許1は特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、本件特許2は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、それぞれなされたものであり、特許法第113条第4項の規定により取り消されるべきものである。
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2021-700337