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特許異議申立

2026-700344

歯科診療用立体視撮像装置及び歯科診療用立体視観察システム

審判番号
2026-700344
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2025-014294
登録番号
7791613
請求日
2026年04月21日
審決日
2026年08月04日
公報発行日
2026年09月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社吉田製作所
  • 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】松本 征二
審判長/審判官
  • 審判長 伊藤 隆夫
  • 審判官 中元 淳二
  • 審判官 宮下 誠
分類
P1652.161-Y (H04N) / P1652.4 -Y (H04N) / P1652.536-Y (H04N) / P1652.537-Y (H04N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第39条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第44条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7791613号発明「歯科診療用立体視撮像装置及び歯科診療用立体視観察システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7791613号の請求項1、2、4、8、10、12及び13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7791613号(以下、「本件特許」という。)の請求項1から15に係る特許についての出願は、令和7年1月30日に出願され、令和7年12月16日にその特許権の設定登録がされ、令和7年12月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年4月21日に特許異議申立人 松本 征二により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1から15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」から「本件発明15」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1から15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1、2、4、8、10、12及び13に付したA1からE1等は説明のために当審合議体で付したものであり、以下、対応する構成要件を「構成要件A1」から「構成要件E1」等という。 「 【請求項1】 A1 左右に分割された撮像領域を有する撮像部と、 B1 左右の前記撮像領域と被写体とのなす輻輳角を設定する輻輳角設定部と、 C1 前記撮像部によって撮像された画像を制御する表示制御部と、 を備え、 D1 前記輻輳角設定部は、当該輻輳角設定部からの距離300mm~1000mmに位置する前記被写体に対して、前記輻輳角を0°よりも大きく5°以下に設定する E1 ことを特徴とする歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項2】 A2 前記被写体は、歯牙の根管である B2 ことを特徴とする請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項3】 前記輻輳角設定部は、ミラー及びプリズムの少なくとも一方を用いた光学系である ことを特徴とする請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項4】 A4 前記被写体までの距離を測定する距離測定部を備え、 B4 前記表示制御部は、前記距離及び前記輻輳角に基づいて、左右の前記画像を配置する C4 ことを特徴とする請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項5】 前記表示制御部は、配置された左右の前記画像を、一の表示装置へ出力する ことを特徴とする請求項3に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項6】 前記表示制御部は、配置された左右の前記画像を、左右の前記画像に対応する左右の表示装置へそれぞれ出力する ことを特徴とする請求項3に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項7】 前記被写体までの距離を測定する距離測定部と、 前記輻輳角設定部によって設定された前記輻輳角を変更する輻輳角変更部と、 前記輻輳角変更部を制御する輻輳角制御部と、 を備え、 前記輻輳角制御部は、前記距離に基づいて前記輻輳角を設定するように前記輻輳角変更部を制御する ことを特徴とする請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項8】 A8 前記距離測定部は、オートフォーカス機能を用いて前記距離を測定する B8 ことを特徴とする請求項4又は請求項7に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項9】 前記距離測定部は、前記被写体までの距離を測定する距離センサである ことを特徴とする請求項4又は請求項7に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項10】 A10 前記表示制御部は、左右の前記画像の表示倍率を変更可能である B10 ことを特徴とする請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項11】 前記輻輳角設定部は、左右それぞれに、 前記被写体からの光を左右外方へ反射する第一の反射面と、 前記第一の反射面によって反射された光を光軸方向における前記撮像部の方向へ反射する第二の反射面と、 前記第二の反射面によって反射された光を左右内方へ反射する第三の反射面と、 前記第三の反射面によって反射された光を光軸方向へ反射し、前記撮像部へ入射させる第四の反射面と、 を備えることを特徴とする請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。 【請求項12】 A12 請求項1又は請求項2に記載の歯科診療用立体視撮像装置と、 B12 前記歯科診療用立体視撮像装置で撮像された画像を表示する歯科診療用立体視表示装置と、 C12 を備えることを特徴とする歯科診療用立体視観察システム。 【請求項13】 A13 前記歯科診療用立体視表示装置は、 B13 前記表示制御部によって出力された、左右の前記撮像領域に対応する左右の前記画像をそれぞれ左右の表示領域に表示する一の表示装置と、 C13 前記表示装置における左右の前記表示領域の中心に対応して設けられており、左右の前記表示領域の中心に対して集光可能な左右の第一視線誘導部と、 D13 を備えることを特徴とする請求項12に記載の歯科診療用立体視観察システム。 【請求項14】 前記歯科診療用立体視表示装置は、 前記左右の第一視線誘導部と前記表示装置における左右の前記表示領域との間に設けられており、左右の前記第一視線誘導部によって集光された光を左右の前記表示領域の中心に対してそれぞれ誘導可能な第二視線誘導部を備える ことを特徴とする請求項13に記載の歯科診療用立体視観察システム。 【請求項15】 前記歯科診療用立体視表示装置によって表示される前記画像の輻輳角は、前記輻輳角設定部によって設定された前記輻輳角と等しい ことを特徴とする請求項12に記載の歯科診療用立体視観察システム。」 第3 特許異議申立書に記載された申立理由 特許異議申立書に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。 1 申立理由 (1)取消理由1(特許法第29条の2、同法第113条第2号) 本件発明1、2、4、8、10、12及び13は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた甲第1号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一である。そのため、本件特許発明1、2、4、8、10、12及び13は、特許法第29条の2及び特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。 (2)取消理由2(特許法第39条第1項、同法第113条第2号) 本件発明1は、その出願日前に出願された甲第2号証に係る発明と同一である。そのため、本件特許発明1は、特許法第39条第1項及び特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。 (3)取消理由3(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号) 本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。そのため、本件特許発明1は、特許法第36条第6項第1号及び特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (4)取消理由4(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号) 本件発明1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。そのため、本件特許発明1は、特許法第36条第6項第2号及び特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (5)取消理由5(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。そのため、本件発明1は、特許法第36条第4項第1号及び特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 2 証拠方法 (1)甲第1号証:特開2026-32598号公報 (2)甲第2号証:特開2026-65728号公報 (3)甲第3号証:特開2024-104033号公報 (4)甲第4号証:登録実用新案公報第3234524号 (5)甲第5号証:特開2002-202460号公報 (6)甲第6号証:特開2024-3644号公報 (7)甲第7号証:特開2020-39808号公報 (8)甲第8号証:特開2018-175722号公報 (9)甲第9号証:特開平8-136814号公報 第4 証拠について 1 甲第1号証について 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は強調のため当審合議体が付与した。以下同様。) (1)「 【0005】 光学式のステレオマイクロスコープが用いられる場合、観察者は、レンズを通して直接に有りのままの診療部位を観察することができる。ところが、3Dデジタルマイクロスコープが用いられる場合、観察者は、レンズを通して直接に診療部位を観察するのではなく、診療部位を撮像することによって得られた画像を観察する。このため、3Dデジタルマイクロスコープには、レンズを通して直接に診療部位を観察しているかのように、画像を自然な感じで立体視させるための工夫が必要とされる。しかしながら、このような工夫が施された診療用マイクロスコープは見当たらない。 【0006】 本開示の目的は、観察対象の画像を自然な感じで観察者に立体視させることが可能な診療用マイクロスコープを提供することである。」 (2)「 【0011】 <全体構成> 図1は、本実施の形態に関わるマイクロスコープ10、およびマイクロスコープ10を用いたシステムの構成例を示す模式図である。図1を用いて、本実施の形態に関わるマイクロスコープ10が適用されるシステム例を説明する。マイクロスコープ10は、診療の用途に用いられる診療用マイクロスコープである。ここでは、診療の一例として、歯科診療を挙げる。しかしながら、本開示に関わるマイクロスコープ10は、歯科診療以外にも、外科および皮膚科などの他の診療科における診療にも適用可能である。 【0012】 図1には、マイクロスコープ10と、チェアユニット20とを含むシステム例が示されている。マイクロスコープ10とチェアユニット20とは、CAN(Controller Area Network)によって通信可能に接続されている。マイクロスコープ10は、ポール301に回動自在に取り付けられたアーム302に支持されている。マイクロスコープ10は、デジタル式ステレオマイクロスコープである。マイクロスコープ10は、被写体を3次元撮影し、被写体の画像を観察者に立体視させる機能を有する。なお、アーム302は、天井または壁から延びる支持部材に取り付けられていてもよい。 【0013】 マイクロスコープ10は、一対の対物ユニット12と、一対の接眼ユニット13と、一対のハンドル102と、筐体101とを含む。図1において、マイクロスコープ10は、一対の対物ユニット12、一対の接眼ユニット13、および一対のハンドル102のうち、一方の対物ユニット12、一方の接眼ユニット13、および一方のハンドル102のみが見える角度から図示されている。このため、図1には、他方の対物ユニット12、他方の接眼ユニット13、および他方のハンドル102は表れていない。筐体101は、アーム302の先端に取り付けられている。筐体101は、一対の対物ユニット12と、一対の接眼ユニット13とを収納する。一対のハンドル102は、筐体101に設けられている。 【0014】 対物ユニット12は対物レンズ1210等の対物光学系を含み、接眼ユニットは接眼レンズ1310等の接眼光学系を含む。対物ユニット12のうち、対物レンズ1210を含む部分は、筐体101から張り出しており、被写体に向けられる。接眼ユニット13のうち、接眼レンズ1310を含む部分は、筐体101から張り出しており、観察者の瞳に向けられる。 【0015】 マイクロスコープ10は、一対の対物ユニット12によって捉えられた一対の被写体像を撮像し、立体視のための一対の画像を生成する。一対の対物ユニット12は、撮影装置(カメラ)として機能する。観察者は、一対の画像を一対の接眼ユニット13を介して両眼で観察する。このとき、観察者には、被写体の立体像が提供される。 【0016】 観察者は、たとえば、術者である。被写体は、たとえば、患者である。歯科診療中において、被写体は患者の口腔である。口腔は、歯、歯周組織、舌、および唾液腺を含む。術者は、口腔を観察するために、ハンドル102を持ってマイクロスコープ10を移動させ、観察する範囲を微調節する。」 (3)「 【0024】 一対の観察ユニット11の各々は、対物ユニット12と、接眼ユニット13とを備える。以下では、観察ユニット11aに設けられる対物ユニット12を「対物ユニット12a」と称し、観察ユニット11bに設けられる対物ユニット12を「対物ユニット12b」と称する。同様に、以下では、観察ユニット11aに設けられる接眼ユニット13を「接眼ユニット13a」と称し、観察ユニット11bに設けられる接眼ユニット13を「接眼ユニット13b」と称する。 【0025】 すなわち、「対物ユニット12」は、「対物ユニット12a,12b」の総称であり、「接眼ユニット13」は、「接眼ユニット13a,13b」の総称である。 【0026】 対物ユニット12は、対物光学系121と撮像素子122とを含む。接眼ユニット13は、接眼光学系131と表示素子132とを含む。以下では、対物ユニット12aに設けられる対物光学系121を「対物光学系121a」と称し、対物ユニット12bに設けられる対物光学系121を「対物光学系121b」と称し、対物ユニット12aに設けられる撮像素子122を「撮像素子122a」と称し、対物ユニット12bに設けられる撮像素子122を「撮像素子122b」と称する。 【0027】 すなわち、「対物光学系121」は、「対物光学系121a,121b」の総称であり、「撮像素子122」は、「撮像素子122a,122b」の総称である。 【0028】 同様に、以下では、接眼ユニット13aに設けられる接眼光学系131を「接眼光学系131a」と称し、接眼ユニット13bに設けられる接眼光学系131を「接眼光学系131b」と称し、接眼ユニット13aに設けられる表示素子132を「表示素子132a」と称し、接眼ユニット13bに設けられる表示素子132を「表示素子132b」と称する。 【0029】 すなわち、「接眼光学系131」は、「接眼光学系131a,131b」の総称であり、「表示素子132」は、「表示素子132a,132b」の総称である。表示素子132は、撮像素子122により取得される画像を表示する。接眼光学系131は、表示素子132からの映像光を観察者に導く。 【0030】 撮像素子122は、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像素子122の撮像領域の形状は、たとえば、正方形である。なお、撮像素子122の撮像領域の形状は、正方形でなくてもよく、たとえば、正方形以外の長方形であってもよい。表示素子132は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)などのフラットパネルディスプレイを構成する。撮像素子122は、対物光学系121を介して形成される被写体像を撮像する。 【0031】 <立体視の原理> 図3は、マイクロスコープ10による立体視の原理を説明するための模式図である。図3を用いて、マイクロスコープ10による立体視の原理を説明する。 【0032】 図3に示されるように、一対の対物ユニット12a,12bは、対物レンズ1210,1210の中心を通る光軸の交点において、輻輳角が形成されるように配置される。光軸の交点には、被写体が位置する。図3には、被写体の一例として、患者の口腔が示されている。一対の撮像素子122a,122bは、対物レンズ1210によって捉えられた被写体像を撮像し、画像信号を制御装置14に出力する。撮像素子122aによって取得された画像と、撮像素子122bによって取得された画像とでは、輻輳角に応じた位置ズレが生じている。この位置ズレが「視差」に相当する。 【0033】 制御装置14は、撮像素子122aにおいて取得された画像を表示素子132a(図2参照)に表示し、撮像素子122bにおいて取得された画像を表示素子132b(図2参照)に表示する。これにより、表示素子132a,132bには、視差を生じさせる一対の画像が表示される。観察者は、図2に示される一対の接眼ユニット13a,13bを介して、一対の画像を観察する。これにより、観察者は、被写体を立体視することができる。」 (4)「 【0041】 <接眼ユニットの構成> 図5は、接眼ユニット13の構成を示す図である。図5に示されるように、接眼ユニット13は、表示素子132と、接眼光学系131とを備える。接眼光学系131は、接眼レンズ1310と、フィールドレンズ1311とを含む。観察者は、接眼レンズ1310を覗いて表示素子132に表示された映像を観察する。接眼ユニット13には、表示素子132に表示された画像の映像を観察者の瞳に導くための光路OP3が形成されている。 【0042】 光路OP3には、接眼レンズ1310およびフィールドレンズ1311が配置されている。フィールドレンズ1311は、表示素子132と接眼レンズ1310との間に配置されている。このように、接眼光学系131は、表示素子132から観察者に映像光を導く光路OR3の方向に並べて配置される複数のレンズを含む。フィールドレンズ1311と接眼レンズ1310とが組み合わせられることによって、収差が補正される。 【0043】 仮に、接眼レンズ1310を1つだけ光路OR3に配置した場合、接眼レンズ1310は、いわば「虫眼鏡」のように機能する。この場合、視野の中央では映像に歪みがほぼ生じないが、視野の周辺では、収差の影響を受けて映像が歪んだり映像がぼやけたりする。そこで、本実施の形態では、視野の全体において歪みの少ない映像を観察者に提供できるようにするために、光路OR3に複数のレンズを配置している。なお、図5では、複数のレンズの一例として、2枚のレンズを示した。しかしながら、3枚以上のレンズを光路OR3に配置してもよい。 【0044】 表示素子132は、映像を表示するための画面を構成する。画面の中央からの映像光は、フィールドレンズ1311の中心および接眼レンズ1310の中心を通り、観察者の瞳に届く、画面の端からの映像光は、フィールドレンズ1311で屈折した後、接眼レンズ1310を介して観察者の瞳に届く。観察者は、映像が映し出されるスクリーンが視野角θvの範囲に広がっているように感じる。 【0045】 フィールドレンズ1311は、接眼レンズ1310のサイズを小さくすることにも貢献する。表示素子132と接眼レンズ1310との間にフィールドレンズ1311を配置しない場合、画面の端から端までの映像光を入射させることができるように、接眼レンズ1310のサイズを大きくする必要がある。しかしながら、表示素子132と接眼レンズ1310との間にフィールドレンズ1311を配置することによって、光軸を接眼レンズ1310の中心に向かう方向に曲げることができる。その結果、接眼レンズ1310の直径を小さくすることができる。 【0046】 <接眼ユニット13に関する設計値> 接眼ユニット13に関する設計値について説明する。図5に示されるように、接眼ユニット13のアイポイントAPは、10mm(ミリメートル)以上であり、接眼ユニット13における接眼光学系の視野角θvは35度(degree)以上60度以下であり、接眼レンズ1310の直径は60mm以下であり、表示素子132の画素数は2000以上4000以下である。なお、画素数の設計値は、水平画素数を対象とする設計値であってもよく垂直画素数を対象とする画素数であってもよい。たとえば、視野を正円形に設計した場合、水平画素数と垂直画素数とは同じである。視野を正円形に設計するためには、設計者は、正方形の撮像領域を有する撮像素子122を採用する必要がある。なお、正方形以外の長方形の撮像領域を有する撮像素子122が採用される場合、視野は、垂直幅を直径とする円である。」 (5)「 【0057】 図8は、主光線角度θrを説明するための概念図である。接眼光学系131においては、表示素子132の画面から観察者の瞳に向かう複数の光束が生じる。図8には、複数の光束の一例として、光束Lf1~Lf3が示されている。光束の中央に生じる光線は、「主光線」と称される。図8には、主光線Cf1~Cf3が示されている。 【0058】 主光線角度θrは、表示素子132の画面の法線と主光線との成す角である。本実施の形態に関わるマイクロスコープ10の主光線角度θrは、1度以内の値である。以下、主光線角度θrを1度以内の値に設計している理由を説明する。 【0059】 マイクロスコープ10は、表示素子132から接眼レンズ1310までの距離を観察者の視力に応じて変更することによって、視度を調整する。たとえば、制御装置14(図2参照)は、観察者の操作に応じて、表示素子132を光路ORの方向に水平移動させる。主光線角度θrが大きい場合、視度調整の前後で、観察者が視認できる画面の範囲が変化する。換言すると、主光線角度θrが大きい場合、視度調整の前後で、接眼光学系131の倍率が変化する。」 (6)「 【0062】 <対物ユニット12に関する設計値> 図9は、対物ユニット12から被写体までのワーキングディスタンスWDを説明するための図である。図9には、被写体の一例として、患者の口腔が示されている。図9に示されるように、対物光学系121aと対物光学系121bとは、対物光学系121aの光軸と対物光学系121bの光軸とによって輻輳角θcが形成されるように配置されている。 【0063】 対物光学系121のワーキングディスタンスWDは、250mm以上450mm以下であり、対物光学系121の輻輳角θcは4度(degree)以上8度以下であり、一対の対物光学系121,121の距離Dsは25mmである。ワーキングディスタンスWDは、対物光学系121から被写体までの距離である。より厳密に言えば、ワーキングディスタンスWDは、対物レンズ1210における被写体側のレンズ面から被写体までの距離である。 【0064】 一般的なマイクロスコープでは、ワーキングディスタンスは数mm程度である。一般的な光学式ステレオマイクロスコープの場合であっても、ワーキングディスタンスは50mm程度である。このように、一般的なマイクロスコープのワーキングディスタンスは短い。しかし、診療用マイクロスコープの場合、観察者は、診療箇所をマイクロスコープで拡大しつつ、診療箇所に診療器具(エアータービン等)を挿入する必要がある。観察者の操作性を考慮すると、診療用マイクロスコープの場合にはワーキングディスタンスWDを長くすることが好ましい。そこで、本実施の形態では、ワーキングディスタンスWDを250mm以上450mm以下に設計している。 【0065】 ワーキングディスタンスWDを250mm以上とする場合、対物レンズ1210の直径は、25mm程度となる。コンパクト化の観点からすると、対物レンズ1210の直径を小さくことが望ましいが、直径を小さくするとF値(絞り値)が小さくなる。その結果、光学系の照度が非常に低くなる。このため、本実施の形態では、対物レンズ1210の直径を25mm程度としている。 【0066】 対物レンズ1210の直径が25mm程度のとき、対物光学系121(121a)と対物光学系121(121b)との距離Dsは、撮像機能を考慮すると、最低限25mm以上とする必要がある。なお、一対の対物光学系121の各々に設けられる対物レンズ1210間の距離を「距離Ds」として定義してもよい。 【0067】 ワーキングディスタンスWDを250mmにし、対物レンズ1210の直径を25mmにした場合、輻輳角θcは約5.7度となる。距離Dsを長くすれば輻輳角θcは大きくなる。たとえば、ワーキングディスタンスWDを250mmにし、距離Dsを35mmとしたとき、輻輳角θcは約8度になる。対物レンズ1210の直径の観点からすると、輻輳角θc約5.7°以上とすることが望ましい。なお、ワーキングディスタンスWDは、250mm以上であればよく、たとえば、450mmを超過してもよい。 【0068】 図10は、輻輳角θcとフォーカス調整範囲との関係を説明するための図である。図11は、輻輳角θcとフォーカス調整範囲との関係を示すグラフである。図10に示されるように、フォーカス距離に応じて、対物光学系121a,121bが捉える撮像範囲1220a,1220bにずれが生じる。図10に示される「Center」ラインの部分が撮像範囲1220aおよび撮像範囲1220bの双方に含まれる場合、マイクロスコープ10は、立体視のための一対の画像を取得できる。 【0069】 図11は、ワーキングディスタンスWSを350mmに設定し、対物レンズ1210の倍率を33倍に設定したときに得られるグラフである。グラフに示されるように、輻輳角θcを小さくするほど、より広いフォーカス範囲を確保できることがわかる。実用性を考慮して、輻輳角θcを4度以上8度以下とすることが望ましい。」 (7)「【図1】 [図:0001439249000001.jpg] 」 (8)「【図2】 [図:0001439249000002.jpg] 」 (9)「【図3】 [図:0001439249000003.jpg] 」 (10)「【図5】 [図:0001439249000004.jpg] 」 (11)「【図8】 [図:0001439249000005.jpg] 」 (12)「【図9】 [図:0001439249000006.jpg] 」 (13)「【図10】 [図:0001439249000007.jpg] 」 (14)「【図11】 [図:0001439249000008.jpg] 」 上記(1)ないし(14)から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、「1a」から「1e」は説明のために当審合議体で付したものであり、以下、対応する発明特定事項を「構成1a」から「構成1e」という。また、各発明特定事項の末尾の丸括弧内の墨付き括弧は、発明の詳細な説明の段落番号、図面の番号または請求項の番号を示す。以下同様。) <甲1発明> 「 1a 対物ユニット12aに設けられる撮像素子122を「撮像素子122a」と称し、対物ユニット12bに設けられる撮像素子122を「撮像素子122b」と称し、「撮像素子122」は、「撮像素子122a,122b」の総称であり、撮像素子122は、対物光学系121を介して形成される被写体像を撮像し、撮像素子122の撮像領域の形状は、正方形または正方形以外の長方形であり、(【0026】、【0027】、【0030】) 1b 一対の対物ユニット12a,12bは、対物レンズ1210,1210の中心を通る光軸の交点において、輻輳角が形成されるように配置され、光軸の交点には、被写体が位置し、一対の撮像素子122a,122bは、対物レンズ1210によって捉えられた被写体像を撮像し、撮像素子122aによって取得された画像と、撮像素子122bによって取得された画像とでは、輻輳角に応じた位置ズレが生じ、この位置ズレが「視差」に相当し、(【0032】) 1c 制御装置14は、撮像素子122aにおいて取得された画像を表示素子132aに表示し、撮像素子122bにおいて取得された画像を表示素子132bに表示し、(【0033】) 1d 対物光学系121のワーキングディスタンスWDは、250mm以上450mm以下であり、対物光学系121の輻輳角θcは4度(degree)以上8度以下であり、ワーキングディスタンスWDは、対物レンズ1210における被写体側のレンズ面から被写体までの距離である、(【0063】) 1e 歯科診療の用途に用いられる、被写体を3次元撮影し、被写体の画像を観察者に立体視させる機能を有するマイクロスコープ10。(【0011】、【0012】)」 2 甲第2号証について 甲第2号証には、特許請求の範囲として以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 撮像素子と光学系を含み、撮影した被写体の一対の画像を出力する撮像部と、 前記撮像部によって撮像された前記一対の画像を制御する表示制御部と、 を備え、 前記一対の画像と前記被写体とのなす輻輳角は、前記撮像部からの距離が450mm以下に位置する前記被写体に対して、0°よりも大きく8°以下に設定される、歯科診療用立体視撮像装置。」 「【請求項3】 前記一対の画像と被写体とのなす輻輳角を設定する輻輳角設定部をさらに備える、請求項1に記載の歯科診療用立体視撮像装置。」 したがって、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、「2a」から「2e」は説明のために当審合議体で付したものであり、以下、対応する発明特定事項を「構成2a」から「構成2e」という。) <甲2発明> 「 2a 撮像素子と光学系を含み、撮影した被写体の一対の画像を出力する撮像部と、(【請求項1】) 2b 前記一対の画像と被写体とのなす輻輳角を設定する輻輳角設定部と、(【請求項3】) 2c 前記撮像部によって撮像された前記一対の画像を制御する表示制御部と、(【請求項1】) を備え、 2d 前記一対の画像と前記被写体とのなす輻輳角は、前記撮像部からの距離が450mm以下に位置する前記被写体に対して、0°よりも大きく8°以下に設定される、(【請求項1】) 2e 歯科診療用立体視撮像装置。(【請求項1】、【請求項3】)」 3 甲第3号証から甲第9号証について (1)甲第3号証には、 「 【0002】 近年、歯科医療分野では、根管治療などの際に、顕微鏡を用いて歯牙を観察して治療することが行われている。特開2003-052718号公報(特許文献1)には、顕微鏡付の診療台が記載されている。顕微鏡付の診療台では、診療台の近傍に配置された支持アームに顕微鏡が支持されており、術者が顕微鏡で歯牙を観察しながら精密な診療を行うことができる。」及び 「 【0028】 測距センサ15は、診療台220に載置されている患者と顕微鏡100との距離を測定するセンサである。測距センサ15は、たとえば、患者にレーザ光を照射する発光素子と、患者で反射したレーザ光を受ける受光素子を有するレーザ測距センサである。測距センサ15は、レーザ測距センサに限られず、超音波測距センサ、マイクロ波測距センサであってもよい。なお、測距センサ15は、一例であって患者と顕微鏡100との距離を測定する機能を有する測距手段であればよく、たとえばステレオカメラで患者と顕微鏡100との距離を測定したり、アーム301の角度から患者と顕微鏡100との距離を特定したり、アーム301の角度、基台221の位置および背板シート223の位置から患者と顕微鏡100との距離を特定したりしてもよい。」 と記載されている。 (2)甲第4号証には、 「【0002】 歯科用顕微装置とは、歯科診療用椅子と合わせて、例えば歯周再生治療、根管治療、虫歯治療、審美セラミック治療、口腔外科などを行なうために用いられているものである。」 と記載されている。 (3)甲第5号証には、 「【0002】 【従来の技術】 歯科診療又は治療或いは観察を行なう際に、歯科用実体顕微鏡を用いることが広く行なわれている。歯科用実体顕微鏡を用いて歯科診療や治療を行なう場合、被観察体は歯牙や根管である場合が多く、比較的大きな凹凸を有するのが一般的である。このため、鮮明な視野を確保するには適度な照度や被写界深度が必要となる。特に、狭い視野の範囲で高低差が生じているような場合、低い部位には高い部位からの影が影響を与えるため、可及的に影の発生を抑えるように構成することが必要となる。また医師が診療又は治療或いは観察を行なう場合、この医師は歯科用実体顕微鏡の接眼レンズを覗いた状態で行なうため、歯科用実体顕微鏡の下端側と被観察体である患部との間には充分な空間が必要となる。」 と記載されている。 (4)甲第6号証には、 「【0042】 <治療用器具> 図1Aに示す治療用器具10は、例えば、歯科診療に使用する歯科用治療器具であって、その種類等は、特に限定されない。治療用器具10は、例えば、プローブ、スケーラー、シリンジ、バキューム、超音波スケーラー等の歯科用診療器具や、根管治療用ファイル等の手用切削器具や、歯科用タービン、歯科用モータ、歯科用コントラアングル等の機械切削器具である。」 と記載されている。 (5)甲第7号証には、 「【0054】 ターゲットマーク投射位置73の中心部が口唇72の中央部と重畳した状態で、ターゲットマーカー370が送信したターゲットマーク投射位置73の口唇72から受信した反射光から測距回路380でカメラ25と口唇72との間の距離を測定する。測定した距離データをカメラ制御回路85に与える。カメラ制御回路85は、この距離データに基づいて絞り信号生成回路86とフォーカス・フォーカスロック設定信号生成回路841に適正な被写界深度のための絞り値を生成し、その絞り値に対応した被写界深度の範囲内にフォーカスをロックさせる(ピントを固定する)。」 と記載されている。 (6)甲第8号証には、 「【0020】 (6)前記(3)~(5)の何れかにおける前記枠状筐体23の一部に、前記患者の口腔とカメラ25との距離を計測するための距離センサー39を備えたことを特徴とする。」 と記載されている。 (7)甲第9号証には、要約において、 「【構成】本発明は、複数のレンズからなる光学系と、この光学系の少なくとも一部を移動させて光学系の焦点距離を調整可能な焦点距離可変手段と、を有する手術用顕微鏡焦準装置において、前記光学系の焦点距離の調整操作を検出して焦点距離を算出する検出手段と、前記焦点距離可変手段によるその焦点距離可変範囲のうちの一部範囲を選定するための範囲選定手段と、この範囲選定手段による焦点距離範囲で有効となる焦点距離可変操作を行う操作手段とを具備したものである。」と記載されており、また明細書において、 「【0014】 前記WD制御回路10は、フットスイッチ6から、前述の焦準操作用スイッチ6b、WD操作用スイッチ6cの操作したときの各信号を受け、さらに後述する比較演算回路14から、WD操作信号または停止信号を受け、前記対物レンズ駆動回路9にそれに応じた操作信号を供給し、後述する第1WD検出回路13へは、WD操作用信号を各々供給するように動作するOR回路等からなるロジック回路によって構成されている。前記第1WD検出回路13は、前記WD制御回路10からのWD操作信号と前記焦点距離可変対物レンズ機構1に設けられたエンコーダ12からの出力信号により、WD操作信号による焦点距離変化分を算出・積算し、焦点距離信号W1を検出する図示しないカウンタ回路と演算回路とから構成され、この検出した焦点距離信号W1を焦準範囲算出回路15へ供給するようになっている。また、第2WD検出回路20は、前記焦点距離可変対物レンズ機構1に設けられたエンコーダ12からの出力信号により、焦点距離Lを算出する図示しないカウンタ回路や演算回路で構成され、その検出した焦点距離信号W2を前記比較演算回路14へ供給する。」及び 「【0039】 前記観察光軸Qと平行(紙面に対して平行な面)には、例えばアクティブ方式の測距光学系が配置されている。前記測距光学系は、アクティブ方式のものとして次のように構成されている。図9中、211はその測距光学系の光軸上に設置された投影レンズ、212は投影レンズ211の焦点位置に配置された指標投影用光源であって、赤外光を発光するIR-LEDである。合焦状態において、術部Oは、そのIR-LED212と共役な位置にある。また、鏡体200には、焦点距離可変対物レンズ機構1を介して、IR-LED212で発し術部Oで反射した赤外光のみを透過させるフィルタ213が設けられ、その赤外光は、レンズ214で集光されて、そのレンズ214の後側焦点位置に設置されたCCD215に受光され、光電変換がなされる。この場合、合焦時には、IR-LED212による投影指標の像が、CCD215の中心位置に結像し、また、非合焦時には、CCD215の左右どちらか一方の位置に結像するようになっている。すなわち、IR-LED212の中心と、CCD215の中心とは光学的に一致するように配置されている。」 と記載されている。 第5 申立理由についての当審の判断 1 取消理由1(特許法第29条の2、同法第113条第2号)について (1)最初に、甲1発明が特許法第29条の2に規定される「他の特許出願」の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された発明に該当するか否か検討する。 甲第1号証に対応する出願である特願2024-135237号は、令和6年8月14日の特許出願であって令和8年2月27日に出願公開され、また出願日における願書に最初に添付された明細書及び図面には、上記「第4 証拠について」「1 甲第1号証について」(1)ないし(14)にて指摘した事項と同一の事項が記載されている。 したがって、甲1発明は、本件特許の出願日である令和7年1月30日前の特許出願であり、本件特許出願後に出願公開された発明であるといえる。 また、甲第1号証に対応する出願の発明者は「神▲崎▼ 陽介」であり、本件特許の発明者である「鈴木 龍志」、「山中 一記」、「本橋 和也」、「丸山 直輝」、「竹内 陽祐」と同一の者でなく、かつ、本件特許出願の時における甲第1号証に対応する出願の出願人は、「株式会社モリタ製作所」であり、本件特許の出願人である「株式会社吉田製作所」と同一の者ではない。 したがって、甲1発明の発明者が本件特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合に該当せず、また本件特許出願の時に本件特許出願人と甲1発明の特許出願の出願人とが同一の者である場合に該当しない。 (2)次に、本件発明1と甲1発明とが同一であるか否か検討する。 以下、本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 構成要件A1について 構成1aの「撮像素子122の撮像領域の形状は、正方形または正方形以外の長方形であり、」との記載から、「撮像素子122」は「撮像領域」を有するといえる。また、構成1aの「対物ユニット12aに設けられる撮像素子122を「撮像素子122a」と称し、対物ユニット12bに設けられる撮像素子122を「撮像素子122b」と称し、「撮像素子122」は、「撮像素子122a,122b」の総称であ」るとの記載を考慮すると、「撮像素子122a」及び「撮像素子122b」がそれぞれ「撮像領域」を有するといえる。 すると、構成1aの「撮像素子122a」及び「撮像素子122b」は、本件発明1の構成要件A1の「撮像部」に相当し、また本件発明1と甲1発明とは、「撮像領域を有する」点で共通する。 また、構成1bの「撮像素子122aによって取得された画像と、撮像素子122bによって取得された画像とでは、輻輳角に応じた位置ズレが生じ、この位置ズレが「視差」に相当し、」との記載において、「視差」とは両眼視差を意味していることは明らかである。すると、「撮像素子122aによって取得された画像」と「撮像素子122bによって取得された画像」とは、左目と右目で知覚する画像に対応するものといえるから、構成1aの「撮像素子122a」の「撮像領域」と「撮像素子122b」の「撮像領域」とは、それぞれ左右の関係にあるといえる。 一方、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」の「分割」とは、一般的には「あるものをいくつかに分けること」を意味する。すると、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」とは、単に左右の撮像領域を意味するのではなく、ある撮像領域を、右の撮像領域と左の撮像領域に分けた場合の、左右の撮像領域のことを意味することから、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」は、構成1aの左右の関係にある撮像領域を含むとはいえない。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、本件発明1が「左右に分割された撮像領域」を有するのに対し、甲1発明は、「撮像素子122a」及び「撮像素子122b」がそれぞれ左右の関係にある「撮像領域」を有するものの、撮像領域が左右に「分割された」ものかどうか特定されていない点で相違する(以下、「相違点」という)。 イ 構成要件Bについて 構成1bの「一対の対物ユニット12a,12bは、対物レンズ1210,1210の中心を通る光軸の交点において、輻輳角が形成されるように配置され」るとの記載、及び「光軸の交点には、被写体が位置し」との記載から、「対物ユニット12a」の「対物レンズ1210」の中心を通る光軸と、「対物ユニット12b」の「対物レンズ1210」の中心を通る光軸との交点に位置する被写体において輻輳角が形成されるといえる。 また、上記アで説示したように、「撮像素子122a」及び「撮像素子122b」はそれぞれ「撮像領域」を有し、また構成1bの「一対の撮像素子122a,122bは、対物レンズ1210によって捉えられた被写体像を撮像」するとの記載から、撮像領域は「対物レンズ1210」によって捉えられた被写体像を撮像する領域ということができる。すると、「撮像素子122a」の「撮像領域」と「撮像素子122b」の「撮像領域」とは、「撮像素子122a」が被写体像を捉える「対物レンズ1210」の中心を通る光軸と、「撮像素子122b」が被写体像を捉える「対物レンズ1210」の中心を通る光軸との関係において、光軸の交点に位置する被写体と輻輳角を形成しているといえる。すると、本件発明1と甲1発明とは、「撮像領域と」「被写体とのなす輻輳角を設定する」点で共通するといえる。 更に上記アにおいて説示したように、甲1発明の「撮像素子122a」の「撮像領域」と「撮像素子122b」の「撮像領域」とは、それぞれ左右の関係にあるといえるから、本件発明1と甲1発明とは、構成要件B1の「左右の前記撮像領域との被写体とのなす輻輳角を設定する」点で共通する。 また、「撮像素子122a」が被写体像を捉える「対物レンズ1210」の中心を通る光軸と、「撮像素子122b」が被写体像を捉える「対物レンズ1210」の中心を通る光軸との関係において、光軸の交点に位置する被写体と輻輳角を形成していることから、各「対物レンズ1210」及びその配置は輻輳角を設定するためのものといえる。すると、構成1bの各「対物レンズ1210」及びその配置は構成B1の「輻輳角設定部」に相当する。 ウ 構成要件C1について 構成1cの「制御装置14は、撮像素子122aにおいて取得された画像を表示素子132aに表示し、撮像素子122bにおいて取得された画像を表示素子132bに表示し、」との記載から、制御装置14は撮像素子122a及び撮像素子122bにおいて取得された画像の表示を制御しているといえるから、構成1cの「制御装置14」は構成要件C1の「表示制御部」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、構成要件C1の「前記撮像部によって撮像された画像を制御する」点で共通する。 エ 構成要件D1について 構成1dの「ワーキングディスタンスWDは、対物レンズ1210における被写体側のレンズ面から被写体までの距離である」との記載から、「ワーキングディスタンスWD」は、「対物レンズ1210」から「被写体までの距離」といえる。 また、構成1dの「対物光学系121のワーキングディスタンスWDは、250mm以上450mm以下であり、」との記載を考慮すると、「被写体」は、「対物レンズ1210」から「250mm以上450mm以下」の距離に位置するといえる。 更に、構成1dの「対物光学系121の輻輳角θcは4度(degree)以上8度以下であり、」との記載から「被写体」は、「対物レンズ1210」から「250mm以上450mm以下」の距離に位置し、「輻輳角θcは4度(degree)以上8度以下であ」るように形成されるといえる。 ここで、上記イにおいて説示したように、構成1bの各「対物レンズ1210」及びその配置は構成B1の「輻輳角設定部」に相当することを考慮すると、本件発明1と甲1発明とは、「当該輻輳角設定部からの距離」「300mm~」「450mm以下」に「位置する前記被写体に対して、前記輻輳角を」「4度(degree)以上」「大きく5°以下に設定する」点で数値範囲が共通するから、構成1dは、構成要件Dの「前記輻輳角設定部は、当該輻輳角設定部からの距離300mm~1000mmに位置する前記被写体に対して、前記輻輳角を0°よりも大きく5°以下に設定する」ことに含まれる。 オ 構成要件E1について 構成1eによれば、甲1発明は「歯科診療の用途に用いられる、被写体を3次元撮影し、被写体の画像を観察者に立体視させる機能を有するマイクロスコープ10」であるから、甲1発明は歯科診療用の3次元画像を立体視させるマイクロスコープ10であるといえる。 そうすると、甲1発明と本件発明1とは「歯科診療用立体視撮像装置」である点で共通する。 すると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「 A1′左右の撮像領域を有する撮像部と、 B1 左右の前記撮像領域と被写体とのなす輻輳角を設定する輻輳角設定部と、 C1 前記撮像部によって撮像された画像を制御する表示制御部と、 を備え、 D1 前記輻輳角設定部は、当該輻輳角設定部からの距離300mm~1000mmに位置する前記被写体に対して、前記輻輳角を0°よりも大きく5°以下に設定する E1 ことを特徴とする歯科診療用立体視撮像装置。」 そして、本件発明1と甲1発明とは、次の点で相違する。 <相違点> 本件発明1の「撮像部」は「左右に分割された撮像領域」を有するのに対し、甲1発明は、「撮像素子122a」及び「撮像素子122b」がそれぞれ左右の関係にある「撮像領域」を有するものの、撮像領域が左右に「分割された」ものかどうか特定されていない点。 また、次に当該相違点が課題解決のための具体的手段における微差であるか否か検討する。 一つの撮像領域を左右に分割した撮像領域は、二つの撮像領域を設けてそれぞれ左右の撮像領域とすることに比べて、左の撮像領域と右の撮像領域とが分割の関係にあるために、それぞれ撮像領域を別々に独立して配置することができず、左右の撮像領域を隣り合わせに一緒にして配置しなければならないものといえる。 すると、左右の撮像領域を隣り合わせに一緒にして配置する制約から、撮像素子が被写体像を捉える各対物レンズ1210の中心を通る光軸の間隔をあまり大きく取ることができないから、左右の撮像領域と被写体との間の輻輳角の範囲についてあまり大きく取ることができず、輻輳角の設定に新たな制約が出てくることとなる。そうすると、課題解決のための具体的手段である輻輳角の設定の点から、微差であるとはいえないことは明らかである。 更に、一つの撮像領域を左右に分割した撮像領域を設けることは、一つの撮像領域を用意することで済むため、二つの撮像領域を用意してそれぞれ左右の撮像領域とすることに比べ、撮像部の部品の簡略化ができるという新たな効果を奏することは当業者にとって明らかである。 以上のことから、上記相違点は課題解決のための具体的手段としての微差であるということはできず、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であったとしても新たな効果を奏するものではないということはできない。 したがって、本件発明1と甲1発明とは同一とはいえない。 (3)したがって上記(2)によれば、本件発明1は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた甲第1号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。 したがって、本件発明1は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。 (4)本件発明2、4、8、10、12及び13は、本件発明1の請求項1の記載を直接的または間接的に引用するものであって、引用する請求項1の発明特定事項を全て含み、更に発明特定事項を付加するものである。 したがって、上記(2)にて示した理由と同様の理由により、本件発明2、4、8、10、12及び13は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。 (5)以上のことから、上記(1)から(4)によれば、本件発明1、2、4、8、10、12及び13は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由(同法第113条第2号)は、存在しない。 2 取消理由2(特許法第39条第1項、同法第113条第2号)について (1)甲第2号証に対応する出願(特願2026-12746号)は、特許法第44条第2項の規定に基づき、本件特許の出願日(令和7年1月30日)より前の令和6年8月14日に出願したものとみなされるものである。 そこで本件発明1について、甲2発明が特許法第39条第1項に規定される同一の発明であるか否かについて以下検討する。 事案に鑑み、先ず構成要件A1について検討する。 本件発明1と甲2発明とを対比すると、構成要件A1において、本件発明1が「左右に分割された撮像領域」を有する「撮像部」を有するのに対し、甲2発明は、構成2aにあるように「撮像素子と光学系を含み、撮影した被写体の一対の画像を出力する撮像部」を有することから、本件発明1と甲2発明とは「撮像部」を有する点で共通する。 一方、本件発明1は、「撮像部」が「左右に分割された撮像領域」を有するのに対し、甲2発明は、「撮像部」が「被写体の一対の画像を出力する」が、「左右に分割された撮像領域」を有することが特定されていない点で相違する。 また、甲第2号証に対応する出願は、甲第1号証に対応する出願の特許法第44条第2項の規定に基づく分割出願である。そうすると、上記1(2)で説示したことと同様であり、当該相違点が、課題解決のための具体的手段における微差ということはできない。 以上のことから、構成要件B1、C1及びD1について論及するまでもなく、本件発明1と甲2発明とは同一ではない。 (2)したがって、上記(1)から、本件発明1は出願日前の甲第2号証に係る発明である甲2発明と同一であるとはいえず、本件発明1は特許法第39条第1項の規定に違反してなされたものではない。 よって、本件発明1は、特許法第39条第1項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由(同法第113条第2号)は、存在しない。 3 取消理由3(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号)について (1)申立人は取消理由3として、本件発明1の構成要件A1の「左右に分割された撮像領域を有する撮像部」が、「左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子による構成」を含むことから、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する旨を主張している。 この点について、本件発明1の構成要件A1の「左右に分割された撮像領域を有する撮像部」に対応して、本件特許の発明の詳細な説明には以下の記載がある。 「 【0027】 <撮像部> 撮像部21は、制御基板21aと、撮像素子21bと、光学系21cと、光学系駆動部21dと、を備える。」 「 【0029】 ≪撮像素子≫ 撮像素子21bは、被写体4からの光を結像し、結像された光を電気信号(デジタル信号)に変換するとともに、変換された電気信号を制御基板21aへ出力する。撮像素子21bは、左右に分割された撮像領域を有する。ここで、左右に分割された撮像領域とは、平面状の撮像素子21bを左右方向中間部で区画して左の撮像領域と右の撮像領域とに分けることを指し、左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子を指すものではない。左右の撮像領域は、それぞれ、輻輳角設定部10の左右の光学系11に対応するように設定されている。」 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の【0027】及び【0029】には、「撮像部21は、」「左右に分割された撮像領域を有する」「撮像素子21b」「を備える」ことが記載されているといえるから、構成要件A1は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。 また、「第5 申立理由についての当審の判断」「1 取消理由1(特許法第29条の2、同法第113条第2号)について」(2)アにおいて説示したように、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」の「分割」とは、一般的には「あるものをいくつかに分けること」を意味する。すると、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」とは、単に左右の撮像領域を意味するのではなく、ある撮像領域を、右の撮像領域と左の撮像領域に分けた場合の、左右の撮像領域のことを意味する。よって、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」は、「左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子」との構成を、文言上含むとはいえない。 更に、上記発明の詳細な説明の【0029】に「左右に分割された撮像領域とは、・・・左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子を指すものではない。」と記載されているように、発明の詳細な説明からしても、構成要件A1の「左右に分割された撮像領域」は、「左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子」との構成を含むとはいえない。 (2)また、申立人は取消理由3として、本件発明1の構成要件D1の「当該輻輳角設定部からの距離」が、「ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点」から被写体4までの距離以外の距離を文言上含むことから、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件発明1は特許法第36条第6項第1号の規定に違反する旨主張している。 この点について、本件発明1の構成要件D1の「当該輻輳角設定部からの距離300mm~1000mmに位置する前記被写体」に対応して、本件特許の発明の詳細な説明には以下の記載がある。 「 【0050】 前記輻輳角設定部10は、当該輻輳角設定部10からの距離(ワーキングディスタンスL)300mm~1000mmに位置する前記被写体4に対して、前記輻輳角θを0°よりも大きく5°以下に設定する。 したがって、立体視撮像装置2Aは、歯牙の根管内等といった小さい被写体4の細い孔部4a内をさらに好適に撮像することができる。」 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の【0050】には、「輻輳角設定部10からの距離」「300mm~1000mmに位置する」「被写体」が記載されているといえるから、構成要件D1は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。 また、「ワーキングディスタンス」について、本件特許の発明の詳細な説明の【0021】には、「ワーキングディスタンスLは、ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点と被写体4との撮像装置20Aの光軸方向における距離である。」と記載されている。 更に、本件特許の発明の詳細な説明の【0013】に「本実施形態において、輻輳角θは、輻輳角設定部の光学部品のうち、最も被写体4側に配置されたもの(本実施形態では、後記するミラー12L,12R)と被写体4とのなす角度である。」と記載されており、ミラー12は最も被写体4側に配置されたものであるといえる。すると、「輻輳角設定部からの距離」とは、輻輳角設定部のうちで最も被写体に近い位置からの距離であるといえる。 加えて、「距離」の文言上の意味について、特に測定の基準点が定められていない場合、「距離」とは直線状に測ったときの最短距離を意味するのが一般的である。そうすると、「輻輳角設定部からの距離」とは、輻輳角設定部のうちで最も被写体に近い位置からの距離であるといえる。 したがって、以上の発明の詳細な説明の記載及び出願時の一般常識を考慮すると、本件発明1の「当該輻輳角設定部からの距離」とは、輻輳角設定部のうち最も被写体に近い点からの距離を意味していると当業者が理解でき、また発明の詳細な説明において開示された内容を不当に拡張ないし一般化しているものとはいえない。 (3)よって、上記(1)及び(2)に示した理由によれば、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由(同法第113条第4号)は、存在しない。 4 取消理由4(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号)について (1)申立人は取消理由4として、本件発明1の構成要件D1の「当該輻輳角設定部からの距離」について、輻輳角設定部を構成する複数の要素のうち、どの要素からの距離を指しているのか、また、どの要素のどの位置からの距離を指しているのか不明確であるから、本件発明1は特許法第36条第6項第2号の規定に違反する旨主張している。 この点につき、上記3(2)において説示したように、「距離」の文言上の意味について、特に測定の基準点が定められていない場合、「距離」とは直線状に測ったときの最短距離を意味するのが一般的である。 そうすると、本件発明1の「当該輻輳角設定部からの距離」とは、出願時の一般常識を考慮すると、輻輳角設定部のうち最も被写体に近い点からの距離を意味していることは明確である。 (2)したがって、上記(1)によれば本件発明1は明確でないとはいえない。 よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由(同法第113条第4号)は、存在しない。 5 取消理由5(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)について (1)申立人は取消理由5について、本件発明1の構成要件A1の「左右に分割された撮像領域を有する撮像部」は、「左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子による構成」を含み、発明の詳細な説明は「左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子による構成」を実施するために2つの撮像素子を配置する間隔等について記載されていないことから、当業者が実施可能であるとはいえない旨を主張している。 この点につき、上記3(1)にて説示したように、本件発明1の構成要件A1の「左右に分割された撮像領域を有する撮像部」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0027】及び【0029】に対応する記載がある。 また、上記発明の詳細な説明の【0029】に、「左右に分割された撮像領域とは、平面状の撮像素子21bを左右方向中間部で区画して左の撮像領域と右の撮像領域とに分けることを指し、左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子を指すものではない。」と記載されていることから、「左右に分割された撮像領域」とは、「平面状の撮像素子21bを左右方向中間部で区画して左の撮像領域と右の撮像領域とに分けること」を実施形態として含み、「左右に離間して並べられた2つの平面状の撮像素子」を実施形態として含むものではないことは明らかである。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が「左右に分割された撮像領域」を理解して、物の発明である本件発明1を作れるように記載されているといえる。 (2)また、申立人は取消理由5について、本件発明1の構成要件D1の「輻輳角設定部からの距離」は、「ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点」からの距離を文言上含むところ、「輻輳角設定部からの距離」が「ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点」からの距離である場合以外の具体的な構成が記載されていないことから、当業者が実施可能であるとはいえない旨を主張している。 この点につき、上記3(2)にて説示したように、本件発明1の構成要件D1の「輻輳角設定部からの距離」に対応して、本件特許の発明の詳細な説明の【0050】に「当該輻輳角設定部10からの距離(ワーキングディスタンスL)」と記載されており、また「ワーキングディスタンス」について、本件特許の発明の詳細な説明の【0021】には、「ワーキングディスタンスLは、ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点と被写体4との撮像装置20Aの光軸方向における距離である。」と記載されている。 すると、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が「当該輻輳角設定部10からの距離」について、「ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点と被写体4との撮像装置20Aの光軸方向における距離」として定めて、物の発明である本件発明1を作れるように記載されているといえる。 また、上記3(2)及び上記4(1)にて説示したように、本件発明1の「当該輻輳角設定部からの距離」とは、輻輳角設定部のうち最も被写体に近い点からの距離を意味していると当業者が理解できる。したがって、仮に発明の詳細な説明において、「当該輻輳角設定部10からの距離」が「ミラー12の反射面12aにおいて光5が反射する点と被写体4との撮像装置20Aの光軸方向における距離」以外の距離を含むものであったと解しても、「当該輻輳角設定部からの距離」とは、輻輳角設定部のうちで最も被写体に近い点からの距離を定めることを意味していることは明らかである。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が「当該輻輳角設定部からの距離」を理解して、物の発明である本件発明1を作れるように記載されているといえる。 (3)したがって、上記(1)及び(2)によれば本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。 よって、本件発明1は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由(同法第113条第4号)は、存在しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2、4、8、10、12及び13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4、8、10、12及び13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700344

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