特許異議申立
2021-700241
噴出器
- 審判番号
- 2021-700241
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-180824
- 登録番号
- 6751633
- 請求日
- 2021年03月05日
- 審決日
- 2022年08月02日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ライオン株式会社
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【権利者代理人】川越 雄一郎
- 【権利者代理人】加藤 広之
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】高橋 詔男
- 【権利者代理人】鈴木 三義
- 【異議申立人】勝部 淳子
- 【異議申立人代理人】樺澤 聡
- 【異議申立人代理人】山田 哲也
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 石田 智樹
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D) / P1651.55 -YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6751633号発明「噴出器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6751633号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第6751633号の請求項1、3~6に係る特許を維持する。
特許第6751633号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6751633号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年9月15日の出願であって、令和2年8月19日にその特許権の設定登録がされ、令和2年9年9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 3月 5日 :特許異議申立人勝部淳子(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年 6月11日付け:取消理由通知書
令和3年 8月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 9月27日 :申立人による意見書の提出
令和3年12月21日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年 2月 2日 :特許権者による意見書の提出
令和4年 3月18日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 5月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和4年 7月11日 :申立人による意見書の提出
なお、上記令和3年8月13日提出の訂正請求書による訂正の請求は、本件訂正請求がされたから、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
前記ディスペンサーは、
トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、
前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、
前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から延びる第2延長線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、 前記接続辺は、前記側辺の端部と前記下辺の端部とを結ぶ直線よりも外側に位置し、
前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられている、
噴出器。」を、
「液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
前記ディスペンサーは、
トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、
前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、
前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、
前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられ、
前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している、
噴出器。」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3に記載された
「前記接続辺は、前記装着キャップの位置よりも前記ノズル部側に位置している、
請求項1または2に記載の噴出器。」を、
「前記接続辺は、前記装着キャップよりも前記ノズル部側に位置している、請求項1に記載の噴出器。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~6も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に記載された「請求項1から3のいずれか一項」を、「請求項1、3のいずれか一項」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5に記載された「請求項1から4のいずれか一項」を、「請求項1、3、4のいずれか一項」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1から5のいずれか一項」を、「請求項1、3,4、5のいずれか一項」に訂正する。
(7)訂正事項7
本件訂正前の明細書の【0008】に記載された
「本発明の一形態に係る噴出器は、 液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、前記ディスペンサーは、トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から延びる第2延長線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、前記接続辺は、前記側辺の端部と前記下辺の端部とを結ぶ直線よりも外側に位置し、前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられている。」を、
「本発明の一形態に係る噴出器は、 液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、前記ディスペンサーは、トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方へ延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺のノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられ、前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している。」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の明細書の【0009】を削除する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあり、請求項1の記載の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1のうち、「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から延びる第2延長線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、 前記接続辺は、前記側辺の端部と前記下辺の端部とを結ぶ直線よりも外側に位置し、」とあるのを、「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、」とした点は、本件訂正前の請求項1の「第1延長線」と「第2延長線」とによって囲まれた「領域」がどの部分であるのかが明確でなく、「側辺の端部」及び「下辺の端部」の記載について、「側辺」及び「下辺」がそれぞれ有する2つの「端部」のいずれの「端部」を特定しようとするものであるのかが不明であり、また、「接続辺」が位置する、「前記側辺の端部と前記下辺の端部とを結ぶ直線よりも外側」の記載について、「直線」のいずれ側が「外側」であるのかが不明であったものを、「第1延長線」、「第2延長線」、「接続辺」が存在する「領域」、「側辺」の「端部」、「下辺」の「端部」を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1のうち、「前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している」とした点は、「接続辺」と「ノズル部に対向する側辺」の交点の位置を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0013】、【0022】~【0024】、【0030】及び本件特許の図面の【図3】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3のうち、「前記装着キャップの位置よりも前記ノズル部側」とあるのを、「前記装着キャップよりも前記ノズル部側」とした点は、本件訂正前の請求項3の「接続辺」に関して、「前記装着キャップの位置よりも前記ノズル部側に位置している」の意味が不明であったものを、「接続辺」と、「装着キャップ」及び「ノズル部」との位置関係を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3のうち「請求項1または2に記載の噴出器」を「請求項1に記載の噴出器」とした点は、訂正事項2によって請求項2が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正により削除された請求項2を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3は、本件特許の明細書の【0024】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4~6について
訂正事項4~6は、本件訂正前の請求項4~6について、訂正事項2によって請求項2が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正により削除された請求項2を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4~6は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(5)訂正事項7、8について
訂正事項7、8は、それぞれ訂正事項1、2の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
また、訂正事項7、8は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項〔1~6〕の全てについて行うものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、3~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1、3~6を「本件発明」と総称することもある。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
前記ディスペンサーは、
トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、
前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、
前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、
前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられ、
前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している、
噴出器。」
「【請求項3】
前記接続辺は、前記装着キャップよりも前記ノズル部側に位置している、請求項1に記載の噴出器。
【請求項4】
前記接続辺は、外側に凸状に湾曲した辺である、
請求項1、3のいずれか一項に記載の噴出器。
【請求項5】
前記液体組成物の噴出定量が2ccである、
請求項1、3、4のいずれか一項に記載の噴出器。
【請求項6】
前記接続辺は、前記側辺の端部から前記下辺の端部にかけて、段差や屈曲点を設けず滑らかな曲線を描いている、
請求項1、3,4、5のいずれか1項に記載の噴出器。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和4年3月18日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性)
本件特許は、請求項1~6に係る発明が次の点で明確でないため、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1の「側面図において、前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から延びる第2延長線とによって囲まれた領域内に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、前記接続辺は、前記接続辺の両端部を結ぶ直線よりも外側に凸状に全部が位置し」の記載は、「側面図」である【図3】の記載で代用されていることによって、「第1延長線」、「第2延長線」、「接続辺」、「外側」、「凸状」が多義的に解される。
(2)取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)取消理由3(新規性、進歩性)
本件特許の請求項1、3、4、6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
甲第1号証:意匠登録第1529426号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特表2008-543544号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2013-1455号公報(以下「甲3」という。)
2 当審の判断
(1)取消理由1(明確性)について
上記訂正事項1に係る訂正によって、「第1延長線」、「第2延長線」、「接続辺」が存在する「領域」、「側辺」の「端部」、「下辺」の「端部」、「接続辺」が特定されたことで、上記1(1)で指摘した点は明確となった。
よって、本件発明1、3~6は明確である。
(2)取消理由2(甲1に記載された発明を主引用発明とする進歩性)について
ア 引用文献の記載事項
甲1の【正面図】に、当審で補足を加えた図(以下「補足正面図」という。)
は次のとおりである。
[図:0001390540000001.jpg]
補足正面図から、甲1には、次の事項が記載されているものと認められる。
「側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを繋ぐ接続辺は、その上部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも外側に凸状に、その下部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも内側に凹状に位置すること。」
上記の認定事項、及び技術常識を参酌すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
ディスペンサーは、
トリガー操作部と、トリガー操作部の操作に応じて容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
噴出器本体に外装されるシュラウドと、
噴出器本体を容器に装着するための装着キャップと、を備え、
シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを繋ぐ接続辺は、その上部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも外側に凸状に、その下部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも内側に凹状に位置し、
トリガー操作部は、側辺の端部からシュラウドの外部に露出して設けられている、
噴出器。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを繋ぐ接続辺は、その上部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも外側に凸状に、その下部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも内側に凹状に位置」することと、本件発明1の「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在」することとは、「側壁におけるノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、装着キャップに対向する下辺からノズル部方向へ延びる第2延長線と、側辺の下方の端部と下辺のノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、側辺と下辺とを繋ぐ接続辺の上部が存在」する限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
前記ディスペンサーは、
トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、
前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、
前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺の上部が存在し、
前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられ、
噴出器。」
[相違点1]
「側壁におけるノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、装着キャップに対向する下辺からノズル部方向へ延びる第2延長線と、側辺の下方の端部と下辺のノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、側辺と下辺とを繋ぐ接続辺の上部が存在」することに関して、本件発明1は、「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在」するのに対して、甲1発明は、「側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを繋ぐ接続辺は、その上部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも外側に凸状に、その下部が、側辺の下端部と下辺のノズル部側端部とを結ぶ直線よりも内側に凹状に位置」する点。
[相違点2]
本件発明1は「前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している」のに対して、甲1発明はそのような構成ではない点。
(イ)判断
相違点1について検討する。
甲1には、側壁におけるノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、装着キャップに対向する下辺からノズル部方向へ延びる第2延長線と、側辺の下方の端部と下辺のノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、側辺と下辺とを繋ぐ接続辺が存在するようにすることの記載はないし、それを示唆する記載もない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同じ理由により、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由3(甲3に記載された発明を主引用発明とする新規性、進歩性)について
ア 引用文献の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0002】
従来から、ボトルにスプレーボディ部が装着されたスプレー装置が知られている。このようなスプレー装置には、ボトル内に収容された液体を最後まで使い切るための手段が設けられている。例えば特許文献1では、図8に示すように、ボトル110内の液体112をスプレーボディ部114まで吸い上げる吸引パイプ116の形状について、液体112を吸い込む吸引口118がボトル110の隅部120に配置されるように吸引パイプ116を屈曲させている。ボトル内の液体が減ってくると、図9に示すように、スプレー装置100を前傾させて隅部120に液体112を溜めることで、溜まった液体112を吸引口118から吸引パイプ116に吸い込ませることができる。したがって、液体112を最後まで使い切ることが可能となる。」
「【0014】
本実施形態に係るスプレー装置の側面図を図1に例示する。図1には、ボトル14を下にした正立状態のスプレー装置10が例示されている。なお、以下の説明においては、ボトル14の底面30を載置面としてスプレー装置10を水平面に置いた状態を正立状態とする。また、当該水平面に対する垂直方向をZ軸方向と定め、図1の紙面においてZ軸に直交する軸をX軸とし、さらにZ軸及びX軸に直交する紙面の奥行き方向をY軸とする。
【0015】
図2に、スプレー装置10のX-Z断面図を例示する。スプレー装置10は、スプレーボディ部12、ボトル14及び噴射ノズル部22を含んで構成される。
【0016】
ボトル14は、噴射される液体28を収容する容器である。液体28は、例えば、殺菌剤、殺虫剤、液体洗剤や衣料用糊剤等とすることができる。ボトル14の内壁は、これらの液体28に侵されないような材料から構成することが好適である。
・・・
【0018】
スプレーボディ部12は、吸引パイプ16、加圧部18、送液管20、スプレーカバー26及び固定キャップ27を含んで構成される。加圧部18は垂直管60を含む。また、吸引パイプ16、垂直管60及び送液管20によって吸引口50から吐出口71まで延伸する吸引管74が構成される。加圧部18の操作によって吸引口50から液体28が吸い上げられ、吐出口71から噴射ノズル部22に向かって液体28が吐出される。」
「【0020】
図3に、スプレーボディ部12周辺の拡大断面図を例示する。固定キャップ27は、スプレーボディ部12をボトル14に装着するために設けられる。例えば固定キャップ27には加圧部18のフランジ44が挿入されており、このフランジ44の抜けを防止する断面鉤状の保持部42が形成されている。また、固定キャップ27には固定部40が設けられている。例えば、固定部40及びボトル14の被固定部38にはねじ溝等の固定手段が設けられており、非固定部38に対して固定部40を固定(例えばねじ回し)することでスプレーボディ部12をボトル14に装着可能としている。
【0021】
加圧部18は、レバー52、ピストン54、シリンダー56、ばね58、垂直管60、ボール62及びバルブ64を含んで構成される。加圧部18は、レバー52の操作によって吸引管74を介してボトル14内の液体28を吐出させる。レバー52は、支持部66によって回転可能に支持される。使用者がレバー52を引くことによってレバー52が支持部66を中心に回転し、これによりピストン54が押し込まれる。押し込まれることによってピストン54はシリンダー56内の容積を減少させる。これによりバルブ64が押し上げられて垂直管60内の液体28が吐出口71から吐出される。一方でボール62は押し下げられてボール止め72に着座して垂直管60を塞ぐ。これにより垂直管60から吸引パイプ16への液体の逆流が防止される。」
「【0023】
また、スプレーカバー26は加圧部18の少なくとも一部を覆うカバーである。スプレーカバー26には支持面67を設けることが好適である。支持面67は、垂直管60を挟んでレバー52に対向した位置に設けられ、固定キャップ27よりもX軸方向に張り出して形成されている。スプレー装置10を持つ際に支持面67を手に引っ掛けるように持つことでスプレー装置10の落下を防ぐことができる。
【0024】
さらに、スプレーカバー26には、噴射ガイド面69を設けることが好適である。噴射ガイド面69は、スプレー装置10を正立状態にしたときのスプレーカバー26のZ軸方向の上端面に設けられる。噴射ガイド面69は、スプレーカバー26の上端面にX軸方向に沿った方向を示す形状を設けることによって構成される。噴射ガイド面69は、使用者が噴射を行う際に噴射方向を案内するために設けられ、使用者が噴射ガイド面69を視認することによって、噴射ガイド面69に沿った方向に液体28が噴射されるであろうと認識することを可能とする。」
「【0026】
また、送液管20は垂直管60に接続され、加圧部18により加圧された液体を噴射ノズル部22に送り込む。また、送液管20は噴射ガイド面69の延伸方向に対して非平行に延伸することが好適である。
・・・
【0028】
さらに、噴射ノズル部22は、接続部68において送液管20の延伸方向L1に沿った回転軸周りに送液管20に対して相対的に回転可能となっている。後述するように、接続部68を回転させることで液体の噴射方向を変えることが可能となる。」
「【図1】
[図:0001390540000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001390540000003.jpg]
」
「【図8】
[図:0001390540000004.jpg]
」
【0023】、【0024】及び図3、8の記載から、スプレーカバー26の上端面と支持面67との間には、上端面69の両側に一対の側壁が設けられていることが理解される。
図8から、レバー52は、側辺の端部からスプレーカバー26の外部に露出して設けられていることが理解される。
甲3の【図8】は、甲3の【図1】~【図6】に示された実施形態の「従来技術」として示されたものであるから、実施形態と従来技術とで共通する点については実施形態の記載を採用しつつ、「従来技術」に着目すると、甲3の上記記載事項及び認定事項から、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「液体112を収容するボトル110とボトルに装着されるスプレーボディ部114及び噴射ノズル部22とを備えるスプレー装置100において、
スプレーボディ部114は、加圧部18、送液管20、スプレーカバー26及び固定キャップ27を含んで構成され、
加圧部18は、レバー52を含んで構成され、
噴射ノズル22は、送液管20に装着され、使用者がレバー52を引くことによって、加圧部18により加圧された液体が送り込まれて液体を噴射し、
スプレーカバー26は加圧部18の少なくとも一部を覆い、
固定キャップ27は、スプレーボディ部114をボトル110に装着し、
スプレーカバー26は、上端面69と、上端面69の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
レバー52は、側辺の端部からスプレーカバー26の外部に露出して設けられている、
スプレー装置100。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「ボトル110」は本件発明1の「容器」に相当し、以下同様に、「スプレー装置100」は「噴出器」に、「レバー52」は「トリガー操作部」に、「スプレーカバー26」は「シュラウド」に、「固定キャップ27」は「装着キャップ」に相当する。
甲3発明における「噴射ノズル部22」は、「スプレーボディ部114」に含まれる「送液管20」に装着されることで一体的になるから、甲3発明の「スプレーボディ部114及び噴射ノズル部22」は、本件発明1の「ディスペンサー」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
前記ディスペンサーは、
トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、
前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、
前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられた、
噴出器。」
[相違点3]
本件発明1は「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在」するのに対して、甲3発明はそのような構成ではない点。
[相違点4]
本件発明1は「前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している」のに対して、甲3発明はそのようなものであるか不明である点。
(イ)新規性についての判断
相違点3は噴出器の形状についての実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3発明ではない。
(ウ)進歩性についての判断
相違点3についてさらに検討する。
甲3には、側壁におけるノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、装着キャップに対向する下辺からノズル部方向へ延びる第2延長線と、側辺の下方の端部と下辺のノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、側辺と下辺とを繋ぐ接続辺が存在するようにすることの記載はないし、それを示唆する記載もない。
したがって、甲3発明において、相違点3に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~6について
本件発明3、4、6は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同じ理由により、甲3発明ではない。
また、本件発明3~6は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ(ウ)で検討したのと同じ理由により、当業者が甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
(1)申立人の主張
本件特許は、請求項1~6に係る発明が次の点で明確でないため、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
ア 請求項1の「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺」の記載が不明確である。
イ 請求項2の「前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも前記容器側に位置している」の記載が不明確である。
ウ 請求項2の「前記ノズル部の下端よりも前記容器側に位置」の記載が不明確である。
エ 請求項3の「前記接続辺は、前記装着キャップの位置よりも前記ノズル部側に位置している」の記載が不明確である。
オ 請求項1の「前記装着キャップに対向する下辺」の記載が不明確である。
カ 請求項1の「上壁の両側に設けられた一対の側壁と」の記載が不明確である。
キ 請求項1の「前記接続辺は、前記側辺の端部と前記下辺の端部とを結ぶ直線よりも外側に位置し」の記載が不明確である。
(2)当審の判断
ア 上記(1)アについて
「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺」の記載自体の意味は明確である。
また、本件の図面の【図3】を参照すると、「側辺13c」は「ノズル部20」に対向しており、上記記載は発明の詳細な説明の記載とも整合している。
イ 上記(1)イ、ウについて
上記訂正事項2により請求項2が削除されたから、対象となる請求項が存在しないものとなった。
ウ 上記(1)エ、キについて
上記(1)エについては上記訂正事項3により、上記(1)キについては上記訂正事項1により、それぞれ明瞭となった。
エ 上記(1)オについて
「前記装着キャップに対向する下辺」の記載自体の意味は明確である。
また、本件の図面の【図3】を参照すると、「下辺13d」は「装着キャップ8」に対向しており、上記記載は発明の詳細な説明の記載とも整合している。
オ 上記(1)カについて
「上壁の両側に設けられた一対の側壁と」の記載自体の意味は明確である。
また、本件の明細書には「図3、図4及び図5に示すように、シュラウド13は、・・・上壁13aの短手方向両側からそれぞれ垂下する側壁13b,13bと、・・・を有している。」(【0022】)と記載されていること、及び図面の【図3】~【図5】を参照すると、一対の「側壁13b」が「上壁13a」の両側に設けられていることから、上記記載は発明の詳細な説明の記載とも整合している。
カ 小括
よって、本件発明1、3~6は明確である。
2 特許法第29条第1項第3号(新規性)、同条第2項(進歩性)について
(1)申立人の主張
ア 甲1に基づく理由
本件特許の請求項1~4、6に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ 甲2に基づく理由
本件特許の請求項1~4、6に係る発明は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)当審の判断
ア 甲1に基づく理由について
上記第4の2(2)イ(イ)で示したとおり、本件発明1と甲1発明の相違点1は実質的な相違点であるため、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
同様に、本件発明3、4、6は、甲1に記載された発明ではない。
イ 甲2に基づく理由について
(ア)引用文献の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項44】
持続時間が延長された非エアゾール型の機械式噴霧器アセンブリであって、
ボトルと、
前記ボトルに連結されており、かつ、第1の末端と前記第2の末端とを有するスプレーヘッドと、
前記第1の末端に取り付けられているノズルおよび引き金と、
前記スプレーヘッドの内側に取り付けられており、かつ、前記第2の末端に面する流体入口/出口を有する流体シリンダと、
前記引き金によって操作可能であり、かつ、入口と出口を有する出口弁と、
前記流体入口/出口に連結されており、かつ、前記スプレーヘッドの前記第1の末端に向かって延び、かつ、前記出口弁の前記入口に連結されている第1のチューブと、
前記弁の前記出口と前記ノズルとに連結されている第2のチューブと、
を備える噴霧器アセンブリ。」
「【0001】
本発明は一般的に非エアゾール型噴霧器に関する。さらに特に、本発明は持続時間が延長された機械式噴霧器に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的が、持続時間が延長された非エアゾール型の機械式噴霧器を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的が、流体容器内に収容されていない持続時間が延長された非エアゾール型の機械式噴霧器を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的が、容器を表面上に置くことなしにプライミングされることが可能な持続時間が延長された非エアゾール型の機械式噴霧器を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的が、その噴霧器がプライミングされる時にその噴霧器から延びるピストン棒を持たない持続時間が延長された非エアゾール型の機械式噴霧器を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的が、単純な噴霧弁構成を有する持続時間が延長された非エアゾール型の機械式噴霧器を提供することである。」
「【0020】
ボトル12は、下部タンク区域30と、成人の手によって把持されるように寸法決定されている上部ネック32とを有する。このネック32は、噴霧器10のカップリング24の下方に隠されているねじ山付きのカップリングを有する。このカップリングの背後において、ボトルは、噴霧器10上の荷重支持面26に突き当たる荷重支持面34を有する。図示されているように、荷重支持面34は、噴霧器上の平らな表面に突き当たるようにカップリング24の背後に隆起する、ステム(stem)35上のプラトーである。このステム35と荷重支持面34が概ね半円形であり、かつ、レバー28の後方移動中に垂直の荷重を支持するのに十分な厚さを有することが好ましい。しかし、噴霧器の荷重支持面が下方の延長部分の底部にあり、かつ、ボトル上の荷重支持面がその下の平らな表面であることが可能であることが理解されるだろう。ボトル12の別の特徴が、引き金22と噴霧器のカップリング24との下方にかつこれらの間に配置されている指乗せ(finger rest)36である。使用時には、ユーザが、引き金を引くために人差し指を使用すると同時に、ネック32を中指と薬指と小指とで把持する。指乗せ36は、このユーザの中指がネックからずり上がって引き金22の経路の中に入ることを防止する。」
「【0023】
上述の説明から、当業者は、どのように噴霧器が動作するかを理解し、すなわち、噴霧器が次のように動作することを理解するだろう。噴霧ポンプは、引張りハンドル28を(その旋回軸線を中心として)噴霧器の前部から後部に向かって移動させることによって充填される。このことが、ケーブル50がアキュムレータ40の外に引き出されて、ばね46に逆らってピストン42を流体入口/出口52から引き離し、および、アキュムレータ40とホース56、58との中に真空を生じさせる。ホース56が逆止め弁アセンブリ60、62、64に連結されているので、このホース56はボール62が上昇することを引き起こし、その弁を開き、流体がボトルからホース56の中に入ってアキュムレータ40の中に入ることを可能にする。ホース56の末端が弁シリンダ66a内のフレア形ピストンによって遮断されているので、ホース56内の真空は何の作用もしない。ハンドル28が釈放されるか、または、そのハンドルが動ける限り遠くまで(ケーブル50の長さと、溝18の長さとによって制限されている)後退移動させられて釈放される時には、ばね46は、アキュムレータ40内のピストン42に逆らう力を及ぼし、その中の流体とホース56内の流体とを圧縮し、このことがボール62が落下することを引き起こし、ボトル内への流体経路を封止する。アキュムレータ40からの流体が、加圧された状態で、マニホルド54の中を通してホース58の中に送り込まれるが、ピストンがシリンダ66aを遮断するので、さらに遠くには進まない。引き金22が絞られる時には、シリンダ66a内のピストンが移動させられ、このことがシリンダ内を流体が流れることを可能にする。アキュムレータ内の加圧された流体は、ホース58の中を通り、シリンダ66aの中を通り、ホース70の中を通って、ノズルアダプタ72内に入り、および、ノズル20の中を通って外に出る。流体がアキュムレータから放出される時には、流体のすべてがアキュムレータから排出されて、ばねと引張りハンドルとがその初期位置に向かって移動するまで、ばねがピストンをマニホルドに向かって押し進める。噴霧器が噴霧している時には、シリンダ66b内のピストンが移動させられ、このことが、空気がボトル内に入って、アキュムレータ内に先行して吸い込まれていた流体に取って代わることを可能にする。」
「【0036】
図17から図24は、噴霧器610とボトル612との第7の実施形態を示す。この実施形態は第5および第6の実施形態と類似しており、および、同様の要素が同様の照合番号(それぞれに200と100だけ番号が増分されている)で示されている。噴霧器610は、概して、左の半シェル614と右の半シェル616とを有する長円形の本体を含む。この半シェルの各々は、上部ベーン614a、616aと下部ウイング614b、616bとを有する。図21と図22とに最も適切に見てとれるように、半シェルの少なくとも1つ(例えば、シェル616)は、側方窓616cを有する。2つのベーン614a、616bは互いに接合して、図21と図22とに最も適切に見てとれるように、本体の前部から後部の手前の箇所に延びる溝618を画定する。本体の前部は、調整可能なノズル620を備えており、および、本体の底部は、引き金622と、ボトルカップリング624と、荷重支持面626とを備えている。引張りレバー628がウイング614b、616bの上方に取り付けられている。レバー628は、2つの脚部628a、628bと横部材628cとを有する、概ね逆U字形の形状である。横部材628cは、上方に延びるハンドル628dと、溝618内で係合しかつ跨る下方に延びるラダー(図示されていない)とを画定する。脚部628a、628bの末端は、ねじ629a、629bによって係合されている穴628f、628g(図18)を有する。これらのねじは、左半シェル614と右半シェル616との中の穴614d、616dと係合し、および、レバー628の旋回軸線を画定する。この旋回軸線が、ボトルカップリング624の垂直軸線に接近して位置合わせされているか、または、この垂直軸線に整合させられていることが好ましい。
【0037】
図17に最も適切に見てとれるように、ボトル612は、下部タンク区域630と、成人の手によって把持されるように寸法決定されている上部ネック632とを有する。このネック632は、噴霧器610のカップリング624の下方に隠されているねじ山付きのカップリングを有する。このカップリングの背後において、ボトルは、噴霧器610上の荷重支持面626に突き当たる荷重支持面634を有する。図示されているように、荷重支持面634は、ねじ山付きのカップリングから下がったネック632上のプラトーである。図17と図21と図22とに最も適切に見てとれるように、荷重支持面634は、共に回転止め構造を形成する噴霧器610上の類似の表面631に係合する垂直の平らな表面633に隣接している。
【0038】
次に図18から図20を参照すると、噴霧器610の内側の機構が詳細に示されている。この噴霧器は、アキュムレータ640(ピストンシリンダ)と、ピストン642と、ピストン保持器644と、付勢ばね646と、引張りケーブル650とを含む。半シェル614、616は、組み合わされた時に、ばね646に突き当たるスロット付きの保持器壁648を形成する。これらの構成要素は、引張りケーブル650をスロット付き保持器壁648とばね646との中を通して保持器644に延ばすことによって組み合わせられている。ケーブル650の一方の末端が、ピストン642に連結されている保持器644に取り付けられている。ピストン642は、保持器644とこの後に続くケーブル650と共にアキュムレータ640の中に挿入される。ばね646は、保持器644の背後でアキュムレータ640の中に挿入され、および、このアキュムレータはスロット付き保持器壁648によって閉じられる。ケーブル650の自由端部が壁648内のスロットの中を通って延びて、引張りレバー628に取り付けられる。アキュムレータ640の前方の末端には、マニホルド654がエルボ(elbow)656を介して取り付けられている流体入口/出口652が存在する。マニホルド654は、ガスケット655によってボトルのカップリング624に連結されている。入口チューブ656は、ボール逆止め弁アセンブリ660、662を介してマニホルド654に連結されている。
【0039】
2つの弁、すなわち、流体出口652内の一方の弁と、ボトル612のための空気入口として作用するマニホルド654内の他方の弁とが備えられている。出口弁はピストン676aとピストンアダプタ678aとを含む。このピストンは流体出口652内のシリンダ内の取り付けられており、および、引き金622に連結されているアダプタ678aに連結されている。この空気入口弁は、ばね674と、ピストン676bと、アダプタ678bとを含む。ばねとピストンはマニホルド654内のシリンダ内に取り付けられており、および、ピストンは、引き金622に連結されているアダプタ678bに連結されている。ばね674は、その弁を閉じ状態に付勢し、かつ、引き金を前方に偏倚させる。引き金が後方に引かれる時には、両方の弁が開かれて、流体がノズル620の中を通してアキュムレータ640から抜け出すことを可能にし、および、空気がボトル612の中に入ることを可能にする。第2の逆止め弁ボール665がマニホルド内に取り付けられており、および、噴霧器とボトルとが逆さにされる時に作動して、通気口の中を通る漏出を防止する働きをする。」
「【図17】
[図:0001390540000005.jpg]
」
「【図18】
[図:0001390540000006.jpg]
」
「【図19】
[図:0001390540000007.jpg]
」
「【図20】
[図:0001390540000008.jpg]
」
甲2の【図17】に、当審で補足を加えた図(以下「甲2図17補足図」という。)は次のとおりである。
「
[図:0001390540000009.jpg]
」
甲2図17補足図から、甲2には、次の事項が記載されているものと認められる。
「下部ウイング614bのノズル620に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、カップリング624に対向する下辺からノズル620方向へ延びる第2延長線と、側辺の下方の端部と下辺のノズル620側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、側辺と下辺とを繋ぐ接続辺が存在すること。」
甲2の上記記載事項及び上記認定事項から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ボトル612と、ボトル612に連結される噴霧器610とを備える噴霧器アセンブリにおいて、
噴霧器610は、左の半シェル614と右の半シェル616とを有する本体を含み、
この半シェルの各々は、上部ベーン614a、616aと下部ウイング614b、616bとを有し、
本体の前部はノズル620を備えており、
本体の底部は引き金622と、ボトルカップリング624とを備えており、
下部ウイング614bのノズル620に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、カップリング624に対向する下辺からノズル620方向へ延びる第2延長線と、側辺の下方の端部と下辺のノズル620側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、側辺と下辺とを繋ぐ接続辺が存在している、
噴霧器アセンブリ。」
(イ)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「ボトル610」は本件発明1の「容器」に相当し、以下同様に、「噴霧器610」は「ディスペンサー」に、「噴霧器アセンブリ」は「噴出器」に、「半シェル614、616」は「シュラウド」に、「上部ベーン614a、616a」は「上壁」に、「下部ウイング614b、616b」は「側壁」に、「ノズル620」は「ノズル部」に、「引き金622」は「トリガー操作部」に、「ボトルカップリング624」は「装着キャップ」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点3]
「液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、
前記ディスペンサーは、
トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、
前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、
前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、
前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、
前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在している、
噴出器。」
[相違点5]
本件発明1は「前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられ」ているのに対して、甲2発明は、「引き金622」が「本体の底部」に備えられている点。
[相違点6]
本件発明1は「前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している」のに対して、甲2発明はその点が不明である点。
b 新規性についての判断
相違点5は、本件発明1の「トリガー操作部」(甲2発明の「引き金622」に相当)の構成に関する実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明ではない。
c 進歩性についての判断
相違点5についてさらに検討する。
甲2における「引き金622」は、「流体出口652」内の「出口弁」に含まれる「アダプタ678a」に連結されている「ピストン676a」と、「マニホルド654」内の「空気入口弁」に含まれる「アダプタ678b」に連結されている「ピストン676b」とを駆動するためのものであり(甲2の【0039】)、また、ネックを中指と薬指と小指とで把持しつつ、人差し指を使用して引かれるものである(甲2の【0020】)から、「引き金622」は、「流体出口652」、「マニホルド654」、「ネック632」の近傍に設けられるものである。
そうすると、甲2発明において、「引き金622」が、側辺の端部から半シェルの外部に露出させることは、「流体出口652」、「マニホルド654」との関係で構造を複雑化させ、また、「ネック632」から遠くなることで操作性を悪くさせる変更であるから、甲2発明において、相違点5に係る事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件発明3~6について
本件発明3、4、6に係る発明は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(イ)bで検討したのと同じ理由により、甲2発明ではない。
また、本件発明3~6は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(イ)cで検討したのと同じ理由により、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)、同条第4項第1号(実施可能要件)について
(1)申立人の主張
本件特許は、請求項1~6に係る発明が次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないため、特許法第36条第4項第1号に適合しないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
ア 請求項1の「前記接続辺は、前記側辺の端部と前記下辺の端部とを結ぶ直線よりも外側に位置し」の記載について、本件発明の作用効果は、最低でも請求項1~4を全て引用する請求項6の構成ではなければ奏することができないため、本件発明の課題を達成し得ない技術的事項が含まれており、また、本件特許明細書等の記載に基いて、当該構成を備える噴出器を実現することができない。
イ 請求項1の「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺」の記載について、「側壁の側辺」が「ノズル部に対向する」ことは実質的に不可能であるため、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、本件特許明細書等の記載に基いて、当該構成を備える噴出器を実現することができない。
ウ 請求項1の「上壁の両側に設けられた一対の側壁と」の記載について、発明の詳細な説明には上壁の長手方向両側に設けられた一対の側壁について記載も示唆もされておらず、また、本件特許明細書等の記載に基いて、当該構成を備える噴出器を実現することができない。
(2)当審の判断
ア 本件発明の解決しようとする課題について
本件発明が解決しようとする課題は、「トリガーの長さが従来より長いトリガーであっても引き圧を重く感じさせず、トリガーの操作性を改善することのできる噴出器を提供すること」(【0007】)である。
イ 本件発明の課題を解決するための手段
本件発明の課題を解決するための手段に関して、発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る噴出器は、 液体組成物を収容する容器と当該容器に装着されるディスペンサーとを備える噴出器において、前記ディスペンサーは、トリガー操作部と、前記トリガー操作部の操作に応じて前記容器内に収容された液体組成物を噴出するノズル部と、を有した噴出器本体と、前記噴出器本体に外装されるシュラウドと、前記噴出器本体を前記容器に装着するための装着キャップと、を備え、前記シュラウドは、上壁と、上壁の両側に設けられた一対の側壁と、を有し、前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方へ延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺のノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在し、前記トリガー操作部は、前記側辺の端部から前記シュラウドの外部に露出して設けられ、前記接続辺と前記ノズル部に対向する側辺との交点は、前記ノズル部の下端よりも下方に位置している。」
「【0026】
本実施形態の構成によれば、シュラウド13の接続辺13eが、従来のシュラウドの接続辺(図3中の破線で示す)の位置よりも外側に位置し、さらに外側へ湾曲した形状となっている。そのため、トリガー操作部14を握って噴出操作を行う際に、図6に示すように、手の位置が接続辺13eに倣って自ずと下方へ移動することとなり、ユーザーは、シュラウド13の接続辺13eと側辺13cとの交点Sから離れた位置を握ることになる。この場合、トリガー操作部14を握っている人差し指とその付け根との位置関係は、人差し指が親指よりも下方に位置し、自ずとトリガー操作部14の根元から離れた位置に人差し指がかかるようになる。
これにより、シュラウド13の形状によってユーザーの噴出器10のハンドリング位置を規制及び誘導することで、トリガー操作部14の引き圧を軽く感じさせることができ、トリガー操作性を改善することができる。」
ウ サポート要件についての判断
本件発明は、「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線と、前記側辺の下方の端部と前記下辺の前記ノズル部側の端部を結ぶ直線とによって囲まれた領域の内側に、前記側辺と前記下辺とを繋ぐ接続辺が存在」することを発明特定事項としており、上記イに示した発明の詳細な説明の記載を総合すると、当該発明特定事項により、本件発明の課題を解決するものであるといえる。
エ 実施可能要件についての判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0007】)、当該課題を解決するための手段(【0008】)、本件発明の効果(【0012】)、本件発明を実施するための形態(【0014】~【0030】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
オ 申立人の主張について
(ア)上記(1)アについて
上記ウに示したとおり、本件発明の発明特定事項により、本件発明の課題を解決するものであるから、申立人が主張する事項を特定することまで要しない。
(イ)上記(1)イについて
本件の図面の【図3】を参照すると、「側辺13c」は「ノズル部20」に対向しているといえる。
(ウ)上記(1)ウについて
請求項1の「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺から下方に延びる第1延長線と、前記装着キャップに対向する下辺から前記ノズル部方向へ延びる第2延長線」の記載から、「側壁」は「ノズル部に対向する側辺」と「装着キャップに対向する下辺」を有するものである。そうすると、本件発明の「側壁」は上壁の短手方向両側に設けられたものであって、申立人が主張するような「上壁の長手方向両側に設けられた」ものではない。
カ 小括
よって、本件発明1、3~6は、発明の詳細な説明に記載したものであり、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、3~6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
4 特許法第17条の2第3項(新規事項)について
(1)申立人の主張
本件特許は、令和2年2月3日提出の手続補正書による補正により追加された「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺」の構成が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)当審の判断
上記3(2)オ(イ)で示したとおり、本件の図面の【図3】を参照すると、「側辺13c」は「ノズル部20」に対向しているといえるため、請求項1の「前記側壁における前記ノズル部に対向する側辺」という事項は、当初明細書等に記載された事項である。
よって、令和2年2月3日提出の手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1、3~6に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3~6に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項2に係る特許は、本件訂正により削除されたため、申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700241