2021-700208
シーラントフィルム、多層フィルム、および包装体
- 審判番号
- 2021-700208
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-079582外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6746879
- 請求日
- 2021年02月25日
- 審決日
- 2022年04月06日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
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特許第6746879号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成27年4月8日を出願日とする特許出願であって、令和2年8月11日にその特許権の設定登録(特許掲載公報同年8月26日発行)がされ、その後、その請求項1~7に係る特許について、令和3年2月25日に特許異議申立人早川いづみ(以下「申立人」という。)により本件の特許異議の申立てがされ、同年9月10日付けで取消理由が通知され、同年11月5日に特許権者から意見書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂を一種類以上含むシーラントフィルムであって、
前記樹脂が非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1のフィルムと、前記樹脂がグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第2のフィルムと、が積層されており、
最表層が前記第1のフィルムであるシーラントフィルム。
【請求項2】
0.2MPa、1秒間、150℃の条件でヒートシールした後のシール強度が2N/15mm以上である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
アンチブロッキング剤およびスリップ剤のうちいずれか1つ以上を含む、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
片面または両面にエンボス加工がされている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
医薬品用、医薬部外品用、または化粧品用の包装体に用いられる多層フィルムであって、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを備える、多層フィルム。
【請求項6】
当該多層フィルムの総厚が15μm以上である、請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項7】
医薬品用、医薬部外品用、または化粧品用の包装体であって、
請求項5または6に記載の多層フィルムを備え、
前記シーラントフィルム同士の一部を接着させることで形成される収容空間を有する、包装体。
第3 取消理由
令和3年9月10日付けで、当審が通知した取消理由は、以下のとおりである。なお、本件特許異議の申立てに係る全ての申立て理由が通知された。
・ (新規性)本件の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するので、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
・ (進歩性) 本件の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・ (サポート要件、明確性) 本件特許の請求項1~7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)又は第2号(明確性)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
・ (実施可能要件) 本件特許の請求項1~7に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・ 特開2015-54470号公報(本件特許異議申立書に添付された甲第1号証)
・ 特開平10-139869号公報(同甲第2号証)
・ 特開平4-28368号公報(同甲第3号証)
・ 特開平5-305699号公報(同甲第4号証)
・ 特開2013-202940号公報(同甲第5号証)
・ 国際公開第2014/171181号(同甲第6号証)
第4 当審の判断
1.実施可能要件、明確性、サポート要件について
(1)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号に規定された要件)
ア.当審で通知したこの点での取消理由は、次のとおりである。
(ア)本件特許では「非結晶ポリエチレンテレフタレート樹脂」として記載されている「ノバペックス GM700Z」が(【0077】)、甲6では、「結晶性ポリエステル」として記載されている(【請求項2】、【0037】)。本件特許の「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」は、「結晶性ポリエステル」を包含するものであることが明らかであるが、「非晶質」と「結晶性」は互いに排他する意味であるから、その意味が不明であり、当業者が本件特許発明を実施することができない。
(イ)フィルムの結晶の状態はフィルムを構成するポリエステル樹脂が受ける溶融時や冷却固化時の熱履歴によって大きく変化することは技術常識であるところ、本件特許の【0077】~【0080】に記載された「ノバペックス GM700Z」を用いてフィルム整膜時の溶融押出して、冷却固化するまでの熱履歴について一切記載されていないため、本件特許発明を実施することができない。
イ.そこで検討する。
本件特許の明細書の記載をみると、「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」について「さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂(A-PET)が好ましい。非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることにより、非吸着性とヒートシール性を両立することができる。」との説明があり(段落【0040】)、また、「品番:ノバペックス GM700Z」について「A-PET樹脂(三菱化学株式会社製、品番:ノバペックス GM700Z、ガラス転移温度:70℃、SP値:13)」(段落【0077】等)と説明されている。
ポリエステルテレフタレートについて、“非晶質”のものといえば、“A-PET”や“PET-G”が想起されるところ、本件特許の明細書における説明からは、本件特許発明1における「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」には、この“A-PET”が含まれているものと理解するのが相当である。
ウ.そうすると、本件特許発明1を実施するにあたり、「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」として、A-PETに該当する樹脂から、溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下であるポリエチレンテレフタレートの樹脂を選べばよいと理解できるから、本件特許の実施例において、「品番:ノバペックス GM700Z」を例示しているからといって、本件特許発明1を実施する上で支障が生じるというものではない。
(2)明確性(特許法第36条第6項第2号に規定された要件)
ア.当審で通知したこの点での取消理由は、次のものであった。
本件特許発明1の「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」とそれ以外のポリエチレンテレフタレートをどのように区別するのか請求項に記載されておらず、不明確である。【0036】、【0037】には結晶化度の下限値及び上限値が記載されているが、どの数値範囲の結晶化度のものを非晶質と定義しているのか否かが、明確ではない。
イ.そこで検討する。本件特許発明1の「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」について他の定義的な説明を伴わなくても、当業者であれば、例えば、透明度等により、用いる非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂が「非晶質」であることは明確に理解することができる。したがって、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を与えるほど明確でないとまではいえない。
(3)サポート要件(特許法第36条第6項第1号に規定された要件)
ア.当審で通知したこの点での取消理由は、次のものであった。
本件特許発明1の要件に「グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂」があるが、本件特許には、実施例として、「品番:SKY GREEN S2008」が記載されているのみである。甲2及び甲4の実施例及び比較例について、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂同士においても、その特性は、グリコール成分の種類及び含有量により大きく変化するのであるから、全てのグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の全ての含有量の範囲のものにおいて、本件特許発明の課題を解決するものであるとはいえない。
イ.そこで検討する。
(ア)本件特許発明の解決しようとする課題は、「ポリアクリロニトリル系樹脂を用いることなく、有効成分などの吸着を抑えることができるシーラントフィルム、およびこれを用いた多層フィルム、包装体を提供すること」(本件特許明細書、【0006】)である。
(イ)この課題の解決は、本件特許の明細書によれば、「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂を一種類以上含むシーラントフィルムであって、前記樹脂が非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂をを含む第1のフィルムと、前記樹脂がグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第2のフィルムと、が積層されており、最表層が前記第1のフィルムであるシーラントフィルム」(本件特許明細書、【0007】)により成されるものである。
(ウ)本件特許発明1は、その解決手段を備えるものであるから、本件特許発明1は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものである。
(エ)本件特許の明細書の記載の限りでは、SKY GREEN S2008を採用することによる特有の効果は見当たらず、SKY GREEN S2008以外の「グリコール変性ポリエチレンテレフタレート」でも同様の効果がもたらされるものと推認できる。
そうすると、本件特許発明1は、そのグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂が「品番:SKY GREEN S2008」に限定されなくても、所与の課題を解決できるものと理解できる。
(4)以上からすると、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合するものであり、また、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものである。
したがって、本件特許発明1~7に係る特許は、いずれも、特許法第113条第4号に該当しない。
2.新規性・進歩性について
(1)各甲号証の記載事項等
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ア.甲第1号証(なお、以下、甲第1号証等を「甲1」等という。)
(ア)甲1には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】少なくとも、ベース樹脂層と、シール層とからなる非吸着性シーラントフィルムであって、該ベース樹脂層は、ホモポリエチレンテレフタレートからなる層であり、該シール層は、ガラス転移点が70~90℃である非晶性の共重合ポリエステルからなり、該ベース樹脂層上に押出コーティングにより積層される層であることを特徴とする、上記非吸着性シーラントフィルム。」
「【技術分野】【0001】本発明は、化成品、医薬品、食品等の内容物に含有される有効成分の吸着量が低減された非吸着性のシーラントフィルムに関し、より詳細には、内容物中の有効成分の含有量を高く維持することができ、且つ、高いシール強度を示し、さらに、成膜が容易であるシーラントフィルムに関する。【背景技術】【0002】従来、包装袋や蓋材等の包装材の最内層には、高いシール強度を示すポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMA等のコポリマー樹脂からなるシーラント層が設けられている。これらの樹脂は、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができるが、種々の有機化合物を吸着し易いことが知られている。したがって、これらの樹脂からなるシーラント層を最内層、すなわち内容物と接する層として有する包装材は、有機化合物を有効成分として含む化成品、医薬品、食品等の包装には不適であり、あらかじめ内容物中に有効成分を多めに含ませる等の対策が必要である。【0003】そこで、良好なシール強度を有しながら、有効成分を吸着しにくいシーラント層の開発がなされている。代表的には、アクリロニトリル系樹脂からなる非吸着性シーラント層を最内層とする包装材が使用されている(特許文献1)。しかしながら、アクリロニトリル系樹脂は、良好なシール強度が得られず、また高価であるため、より好ましい非吸着性シーラントの開発が求められている。」
「【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明は、上記の問題点を解決し、優れた非吸着性及びシール強度を示し、さらに、成膜が容易であるシーラントフィルムを提供することを目的とする。」
「【0020】<2>ベース樹脂層本発明の非吸着性シーラントフィルムのベース樹脂層は、ホモPETからなる。これにより、共重合ポリエステルからなるシール層との層間接着強度が高まる。本発明において、ホモPETは、テレフタル酸とエチレングリコールとを、エステル交換法、直接エステル化法等の任意の方法により重縮合してなる結晶性PETであり、慣用の添加剤や不可避的に混入する不純物等を除いては、他の共重合成分を積極的には含まないものである。」
「【0030】本発明において、ガラス転移点が70~90℃である非晶性ポリエステルを用いることにより、100~200℃、より好ましくは120~160℃でのヒートシールによって、優れたシール強度及びヒートシール性が発揮される。ガラス転移点がこの範囲を外れると、低温シール性が損なわれるか、または十分なシール強度が得られないため好ましくない。【0031】上記の要件を満たす、ガラス転移点が70~90℃である非晶性の共重合ポリエステルは、商業的にも入手可能であり、本発明において好適に用いられるものとしては、バイロン(R)(東洋紡(株)製)、Eastar PETG(EASTMAN CHEMICAL(株)製)等が挙げられる。続きを表示(全17行)【0032】ここで、シール層は、1~10質量%の量で、より好ましくは3~5質量%の量でアンチブロッキング剤を含有してもよい。この量でアンチブロッキング剤を含むことにより、シール強度、非吸着性及びベース樹脂層との層間接着強度を損なうことなく、フィルムの滑り性を改善することができる。・・・・・【0035】<4>非吸着性シーラントフィルムの製造本発明の非吸着性シーラントフィルムは、ベース樹脂層を形成するホモPETからなる樹脂フィルム上に、シール層を形成する上記共重合PETを押出コーティングすることにより製造される。押出温度は、共重合PETの種類に応じて当業者が適宜に選択でき、例えば、200~280℃の広範囲の温度域であってよい。【0036】ホモPETからなる樹脂フィルム上に上記共重合PETを押出コーティングすることにより、高い非吸着性及びシール強度が発揮される。ここで、ベース樹脂層の層厚は、10~30μm、より好ましくは10~20μmである。10μmより薄いと基材としての強度不足であり、また30μmより厚いとシーラントフィルムとして固く、コストも高くなるため好ましくない。【0037】また、シール層の層厚は、15~60μm、より好ましくは20~50μmである。15μmより薄いと安定性が悪く、シール強度が弱くなり、また60μmより厚いとシーラントフィルムとして固く、コストも高くなるため好ましくない。ベース樹脂層上にシール層を押出コーティングする前に、ベース樹脂層の積層面を表面処理してもよい。」
「【0040】<6>包装袋上記の積層体を使用し、非吸着性シーラントフィルム層が最内層となるように製袋して、包装袋とすることができる。また、上記積層体を、非吸着性シーラントフィルム層を最内層とする蓋材として使用し、包装容器を製造することができる。・・・【0041】包装袋を製造するには、上記積層体を二つ折にするか、または積層体2枚を用意し、その非吸着性シーラントフィルム層の面を対向させて重ね合わせ、その周辺端部を、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋とする。」
「【0045】[実施例1](1)ベース樹脂層として2軸延伸ホモPETフィルム(ユニチカ(株)製PTM;厚さ12μm)を用意し、その一方の面上にポリウレタン系アンカーコート剤(三井化学(株)製タケラック/タケネート、A-3210/A-3075;配合比1/1)を版深20μmの斜線版を用いて塗工量0.4g/m2で塗布した。(2)次いで、このアンカーコート剤塗布面上に、シール層として非晶性PET(東洋紡(株)製SI-173;ガラス転移点78℃)を押出コーティングにより層厚30μmとなるように積層し、ベース樹脂層/アンカーコート剤層/シール層の層構成を有する本発明の非吸着性シーラントフィルムを製造した。(3)一方、2軸延伸PETフィルム(東洋紡績(株)製E5100;厚さ12μm)を用い、その一方の面上に接着剤(ロックペイント(株)製ロックボンドJ/アドロック、RU77T/H-7;配合比10/1)を、版深90μmの斜線版を用いて塗工量3.0g/m2で塗布し、厚さ7μmのアルミ箔(日本製箔(株)製 A1N30H-O)と貼り合せ、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させて、基材フィルムとした。(4)上記基材フィルムのアルミ箔を設けた面に接着剤を同様に塗布し、上記(2)で製造した本発明のシーラントフィルムを、シール層が最外層となるように貼り合せ、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させて、積層体を製造した。得られた積層体の層構成は以下のとおりであった:基材フィルム層(PETフィルム/接着剤層/アルミ箔)/接着剤層/ベース樹脂層/アンカーコート剤層/シール層」
「【0050】(3)シール強度試験実施例及び比較例のシーラントフィルムを、ベース樹脂層を外側にして重ね合せ、ヒートシーラー(テスター産業(株)製TP-701S HEAT SEAL TESTER)で、160℃で1秒間、圧力1kgf/cm2でヒートシールした。次いで、これを幅15mmの短冊状に切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて圧着されたシール部を引き剥がし、シール強度を測定した。このときの引張速度は300mm/分とした。以下の表に結果を示す。【0051】【表1】[図:0001384077000001.jpg]」
(イ)甲1発明
上記「(ア)」の記載事項、特に【請求項1】の記載に着目し、さらに段落【0031】で「ガラス転移点が70~90℃である非晶性の共重合ポリエステルは、商業的にも入手可能であり、本発明において好適に用いられるものとしては、バイロン(R)(東洋紡(株)製)、Eastar PETG(EASTMAN CHEMICAL(株)製)等が挙げられる。」と記載されていることも考慮すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベース樹脂層と、シール層とからなり、該ベース樹脂層は、ホモポリエチレンテレフタレートからなる層であり、該シール層は、Eastar PETG(EASTMAN CHEMICAL(株)製)等のガラス転移点が70~90℃である非晶性の共重合ポリエステルからなる、非吸着性シーラントフィルム。」
イ.甲2
(ア)甲2には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】 ジカルボン酸成分のうちの80モル%以上が芳香族ジカルボン酸であり、グリコール成分のうちのエチレングリコールが50~80モル%、ネオペンチルグリコールが3~20モル%、ジエチレングリコール5~35モル%であるシーラント用ポリエステル樹脂。【請求項2】 請求項1記載のポリエステル樹脂を使用したヒートシール可能な積層体。」
「【0001】【発明の属する技術】本発明は食品用の紙容器、プラスチック容器、袋、トレー容器の最内層シーラント、あるいはそれらに用いられる蓋等のシール材として使用されるヒートシール性、フレーバー性、耐衝撃性に優れたシーラント用ポリエステル樹脂に関する。」
「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、このポリオレフィン樹脂をシーラントとして用いると食品に直接接するために食品の香料を吸着したり、ポリオレフィン特有の樹脂臭が食品に移るといった、いわゆるフレーバー性が良くないということが指摘されている。一方、ポリエステル樹脂はこれらに比べてフレーバー性が良いために、食品容器の最内層シーラント材料として使用することを期待されている。一般に、紙容器用シーラントとしてはフレーバー性、ヒートシール性、耐衝撃性等が要求され、スナック菓子、薬剤等の軟包材用シーラントとしてはフレーバー性、ヒートシール性、ガスバリアー性等が要求される。【0004】これまでに当業界において良く知られているPET-G6763(イーストマンコダック社製)は耐衝撃性には優れるもののフレーバー性、低温シール性が悪い。最近、特開平4-306226号公報、特開平5-305699号公報では脂肪族ジカルボン酸及びシクロヘキサンジメタノールまたはネオペンチルグリコールを必須成分とした共重合ポリエステルが提案されているが、フレーバー性に不安があることが判明した。これらポリエステル樹脂はいずれも食品のチルド流通を意識した低温のフレーバー性はポリオレフィンより良いが、常温流通を意識したより高温でのフレーバー性に問題があった。また、特開昭51-28885号公報ではネオペンチルグリコールを共重合したポリエステルが提案されているが、これは低温でのヒートシール性に問題があった。」
「【0012】本発明における共重合ポリエステル樹脂はヒートシールを必要とする包装材料に使用される。この際、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムのようなプラスチックフィルム、アルミニウム箔のような金属箔、あるいは紙などの材料の上に直接溶融押し出しで積層体とすることもできるし、本発明におけるポリエステル樹脂のフィルムを前もって製膜した後、別の適当な公知の接着剤を用いて積層する事もできる。【0013】本発明における共重合ポリエステル樹脂には酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の添加剤を適宜配合することができる。」
「【0016】シール強度:厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを保護層として用い、厚さ50μmに製膜したポリエステル樹脂のシール材同志の面を合わせた後、100℃1秒、2kgf/cm2の条件で熱接着し、引張り試験機を用いて引張り速度300mm/minのときの剥離接着力を測定した。」
「【0018】落袋試験:厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを保護層として用い、製膜した厚さ50μmのシール材を10cm×10cmの大きさに熱接着して袋を作り、その中に水100mlを入れてサンプルとした。これを所定の高さより落下させて、破袋する高さを測定し、10サンプルの平均値を得た。」
「【0024】 【表2】[図:0001384077000002.jpg]」
(イ)甲2発明
上記「(ア)」の記載事項のうち、特に「比較例1」に着目する。この比較例1について段落【0016】、【0018】に記載されるような試験も行われたことを考慮すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「ジカルボン酸成分のうちの100モル%がテレフタル酸であり、グリコール成分のうちのエチレングリコールが70モル%、シクロヘキサンジメタノールが30モル%であるシーラント用ポリエステル樹脂を使用した厚さ50μmのシール材と厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートの保護層を備えたヒートシール可能な積層体。」
ウ.甲3
(ア)甲3には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲1. l-メントールを含有する医薬品を被包する包装体であって、前記医薬品と接しうる前記包装体の内面にポリエステル系樹脂層を設けることを特徴とするl-メントール含有医薬品の包装体。2. 前記ポリエステル系樹脂層は、ガラス転移温度が40℃以上の非晶性ないし低結晶性の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載のl-メントール含有医薬品の包装体。」(1頁左欄4~14行)
「〔産業上の利用分野〕本発明は、l-メントールを含有する医薬品を被包する包装体に関する。〔従来の技術〕従来、l-メントールは、鎮痛剤、止痒剤等の医薬品に含有されて用いられている。このようにl-メントールを含有する医薬品は、使用の用途に応じて液体、半流動体、固形物等種々の形態にされ、プラスチック包材(容器を含む)またはプラスチック積層アルミニウムなどの個包装に収納され市場に提供されている。〔発明が解決しようとする課題〕しかしながら、従来の一般的なプラスチック包材では、医薬品中のl-メントールの含有率が経時的に減少するという問題が生じており、医薬品中のl-メントールの吸着を極力減少させる包材の開発か要望されるに至っている。このような実情に鑑み、本発明は包材に収納されたまま保存される医薬品中のl-メントールの含有率が経時的に減少するを極力押さえることかできるl-メントール含有医薬品の包装体を提供することにある。」(1頁右下欄2行~2頁左上欄3行)
「このような樹脂層2の上(外方)には、第2図に示されるようにバリア層4が設層される。バリア層4は、主にガスバリヤ性や水蒸気バリア機能を有するアルミニウム箔等が用いられる。厚さは、通常、7~20μm程度とされる。このようなバリア層4の上(外方)には、支持体層6が設層される。支持体層6は、主に、包材の強度を持たせたり、印紙等に供するために用いられ、具体的には、延伸ポリエステル(O-PET)、延伸ポリプロピレン(O-PP)、あるいはセロファン等が挙げられる。」(2頁右下欄19行~3頁左上欄9行)
「なお、本実施例では、フィルムをヒートシールにより融着させて作製した包装体を例にとって説明したが、包装体の構成はこれに限ることなく、真空成形により所定の形状に成形された包装体等種々のものに適用され得ることは言うまでもない。上述してきた本発明を、以下に示す具体的実施例に基づいてさらに詳細に説明する。実験例支持体層6としての2軸延伸ポリエステルフイルム(15μm)と、バリア層4としてのAl箔(9μm)とをウレタン系接着剤でドライラミネートした積層剤を包装剤用基材(以下、基材aと称す)として用意した。続きを表示(全11行)この基材aのAl箔面に下記に示されるような包装体内面を構成する種々の樹脂層を設け、種々の包装用材サンプル(以下、包材サンプルと称す)を作製した。包材サンプル1(本発明)前記基材aのAl箔面にウレタン系接着剤を塗布した後、該塗布面に対して、ガラス転移温度が71℃の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井デュポンケミカル(株):シーラーPTX207)をポリエステル系樹脂層2として設けた。樹脂層2の厚さは40μmとした。包材サンプル2(本発明)前記包装サンプル1のポリエステル系樹脂層2の材質を、ガラス転移温度81℃の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(イーストマンコダック社:PETG 6763)に変えた。それ以外はサンプル1の場合と同様にした。」(3頁右上欄3行~左下欄13行)
(イ)甲3発明
上記「(ア)」の記載事項、特にその「包材サンプル2」に着目すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「2軸延伸ポリエステルフイルムの支持体層にAl箔のバリア層をドライラミネートした包装剤用基材の前記バリア層にガラス転移温度81℃の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(イーストマンコダック社:PETG 6763)のポリエステル系樹脂層を設けた包材サンプル。」
エ.甲4
甲4には、以下の記載がある。
「【0007】本発明者らが、香気成分を保持する性能が高い非晶性ポリエステル樹脂として当業界においてよく知られているポリエステル樹脂(イーストマンコダック社製PET-G6763)を内層に用いる容器は、該容器に上記のような過酸化水素殺菌処理を施すと、樹脂間のヒートシール性が著しく低下することを見出した。」
「【0064】なお、ポリエステル樹脂は各々下記のように略記する。PT-36:本発明に係るポリエステル樹脂[テレフタル酸/アジピン酸/エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール=90/10/70/30(モル%)]PET-G:イーストマンコダック社製 PET-G6763[テレフタル酸/エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール=100/70/30(モル%)]PET-J125:三井石油化学工業(株)製J-125[テレフタル酸/エチレングリコール=100/100(モル%)]」
「【0086】【表1】[図:0001384077000003.jpg]」
「【0088】【表3】[図:0001384077000004.jpg]」
オ.甲5
甲5には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】ポリエステル樹脂を含む基体層と、該基体層の少なくとも一方の面に設けられたポリエステル樹脂を含む被覆層とを有する多層ポリエステルシートにおいて、前記被覆層のポリエステル樹脂が、1,4-シクロヘキサンジメタノールとイソソルバイドを含有し、イソソルバイドの含有割合が全ジオール成分に対して10モル%以上50モル%以下であるジオール成分とジカルボン酸成分とを反応させて得られるポリエステル樹脂であることを特徴とする多層ポリエステルシート。【請求項2】続きを表示(全11行)請求項1に記載の多層ポリエステルシートにおいて、前記基体層のポリエステル樹脂が、1,4-シクロヘキサンジメタノールとイソソルバイドを含有し、イソソルバイドの含有割合が全ジオール成分に対して1モル%以上、且つ、前記被覆層のポリエステル樹脂のジオール成分中のイソソルバイドの含有割合未満であるジオール成分とジカルボン酸成分とを反応させて得られるポリエステル樹脂であることを特徴とする多層ポリエステルシート。【請求項3】請求項1又は2に記載の多層ポリエステルシートにおいて、少なくとも一方のシート面に、最大突起高さ(Rmax)が0.5~5μmの表面凹凸が付与されていることを特徴とする多層ポリエステルシート。【請求項4】請求項3に記載の多層ポリエステルシートにおいて、前記表面凹凸は、エンボス加工により付与されていることを特徴とする多層ポリエステルシート。【請求項5】請求項3に記載の多層ポリエステルシートにおいて、前記表面凹凸は、該表面凹凸が付与されたシート面の被覆層に含まれる粒子により付与されており、該粒子の平均粒径が2~15μmで、該被覆層中の該粒子の含有量が0.01~5重量%であることを特徴とする多層ポリエステルシート。」
「【技術分野】【0001】本発明は、耐熱性が高く、印刷性や成形性などの2次加工性に優れた多層ポリエステルシートと、この多層ポリエステルシートを成形してなる成形品に関する。本発明の多層ポリエステルシートは、特に、自動販売機周辺の広告表示用プレートやディスプレイケース、ディスプレイ缶などのディスプレイ用品、化粧品や食品などの包装用の折り曲げ加工を行った透明ケースや熱成形加工品などに好適に使用される。」
「【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明は、耐熱性、印刷性、成形性などの2次加工性などに優れ、特に、自動販売機内のバックライト付き広告表示用プレートや、タバコなどのディスプレイケース、飲料缶などのディスプレイ缶などのディスプレイ用品、或いは、化粧品や食品などの包装用シートとして好適に使用される多層ポリエステルシートと、この多層ポリエステルシートを成形してなる成形品を提供することを課題とする。」
「【0043】[表面凹凸]本発明の多層ポリエステルシートには、滑り性を高める目的で、シートの表面の少なくとも片面に表面凹凸を付与することができる。【0044】続きを表示(全11行)表面凹凸は、エンボス加工のほか、表層を構成する被覆層のポリエステル樹脂に粒子などを添加して凹凸を付与することもできる。【0045】その表面凹凸の程度は、滑り性と外観を両立するために、最大突起高さ(Rmax)で0.5~5μmであることが好ましい。最大突起高さ(Rmax)が0.5μm未満であると、シートの滑り性が低下し、加工性が悪くなり好ましくなく、5μmを超えると透明性など外観が悪くなる傾向となる。【0046】エンボス加工により表面凹凸を付与する方法としては、シート製膜時にエンボスロール上にキャストして付与する方法や、予め採取したシートをアウトラインで加熱してエンボスロールで付与する方法など、周知の方法が挙げられる。【0047】一方、被覆層を構成するポリエステル樹脂に粒子を添加して表面凹凸を付与する場合、ポリエステル樹脂に配合する粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、タルクなどの無機系粒子やスチレン系樹脂の架橋粒子などの有機系粒子を用いることができる。」
カ.甲6
甲6には、以下の記載がある。
「請求の範囲[請求項1]鋼板に接する第1樹脂層を備える鋼板被覆用フィルムであって、前記第1樹脂層において、鋼板に接する面のJISK6768に準拠したぬれ張力が34mN/m以上であり、前記第1樹脂層を構成する樹脂の融点が140~280℃であることを特徴とする鋼板被覆用フィルム。[請求項2]前記第1樹脂層がエチレングリコール、テレフタル酸、及びシクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体と結晶性ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼板被覆用フィルム。[請求項3]前記第1樹脂層はこの第1樹脂層全体に対して、エチレングリコール、テレフタル酸、及びシクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体を1~50重量%、結晶性ポリエステルを50~99重量%含むものである請求項2に記載の鋼板被覆用フィルム。」
「[0001]本発明は、鋼板被覆用フィルムに関する。・・・・・[0002]近年、飲料缶を中心に、鋼板の両面に樹脂フィルムを積層した樹脂フィルム被覆鋼板に絞り加工とストレッチ加工を施して得た缶や、絞り加工後にストレッチ加工としごき加工を同時に行って得た缶など、缶高さが高い樹脂フィルム被覆缶が用いられている。これらの缶においては、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートの共重合体からなる加工性に優れた樹脂フィルムが用いられている。エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートの共重合体のフィルムが内容物のフレーバー保護性にも優れているため、これらの缶は飲料、食品用の缶として広く普及している。しかしながら、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートの共重合体のフィルムを飲料、食品用の缶に用いると、フィルムの内容物に対する耐食性が十分でなく、鋼板が腐食する場合があった。また、飲料、食品缶に適用されているこの樹脂フィルム被覆鋼板は、フィルムの樹脂が無配向で鋼板に被覆していると、樹脂フィルム被覆鋼板を絞り加工した場合、フィルムが樹脂の融点近傍で加熱されて脆い粗大な樹脂の結晶が成長し、樹脂フィルムに亀裂が生じ易いという欠点を有している。」
「[0018]尚、前記第1樹脂層が結晶性ポリエステルを含む場合、前記結晶性ポリエステルとしては、特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が好ましく、ポリブチレンテレフタレートがより好ましい。これにより、エチレングリコール、テレフタル酸、シクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体と結晶性ポリエステルとの相溶性が高まり、フィルムの耐腐食性が向上して鋼板が腐食することを防ぐことができる。」
「[0026]尚、前記第2樹脂層が結晶性ポリエステルを含む場合、前記結晶性ポリエステルとしては、特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が好ましく、ポリブチレンテレフタレートがより好ましい。これにより、エチレングリコール、テレフタル酸、シクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体と結晶性ポリエステルとの相溶性が高まり、フィルムの耐食性が向上して鋼板が腐食することを防ぐことができる。」
「[0037](実施例3)第1樹脂層として、エチレングリコール、テレフタル酸、シクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体(イーストマンケミカルジャパン株式会社製、品番:イースターGN071)、ポリエチレンテレフタレート(三菱化学株式会社製、品番:ノバペックス GM700Z)を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:300℃)に投入した。上記共重合体は、共重合体全体のアルコールユニットに対して、33モル%のシクロヘキサンジメタノールを構成モノマー成分として有する。また、第2樹脂層として、エチレングリコール、テレフタル酸、シクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体(イーストマンケミカルジャパン株式会社製、品番:イースターGN071)、ポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアプラスチックス株式会社製、品番:ノバデュラン5020)を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:250℃)に投入した。上記共重合体は、共重合体全体のアルコールユニットに対して、33モル%のシクロヘキサンジメタノールを構成モノマー成分として有する。第1樹脂層と第2樹脂層は、Tダイ(ダイ温度:300℃)で共押出した後、冷却ロール(温度:25℃)で冷却、固化してフィルムを得た。[0038](実施例4)第1樹脂層として、エチレングリコール、テレフタル酸、シクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体(イーストマンケミカルジャパン株式会社製、品番:イースターGN071)、ポリエチレンテレフタレート(三菱化学株式会社製、品番:ノバペックス GM700Z)を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:300℃)に投入した。上記共重合体は、共重合体全体のアルコールユニットに対して、33モル%のシクロヘキサンジメタノールを構成モノマー成分として有する。また、第2樹脂層として、エチレングリコール、テレフタル酸、シクロヘキサンジメタノールを共重合して得られる共重合体(イーストマンケミカルジャパン株式会社製、品番:イースターGN071)、ポリエチレンテレフタレート(三菱化学株式会社製、品番:ノバペックス GM700Z)を表1に示す配合処方に従って混合した後、押出機(シリンダー温度:300℃)に投入した。上記共重合体は、共重合体全体のアルコールユニットに対して、33モル%のシクロヘキサンジメタノールを構成モノマー成分として有する。第1樹脂層と第2樹脂層は、Tダイ(ダイ温度:300℃)で共押出した後、冷却ロール(温度:25℃)で冷却、固化してフィルムを得た。」
「[0046]<絞り成形評価>250μm厚みのクロムメッキ鋼板と総厚さ30μmの鋼板被覆用フィルムをT℃(Tは、第1樹脂層を構成する樹脂が結晶性である場合は、その融点+20℃の温度、第1樹脂層を構成する樹脂が非晶性である場合は240℃)の温度で貼り合せた後、25℃で水冷してラミネート鋼板を作成した。このラミネート鋼板を100℃で絞り成形した。ラミネート鋼板の深さ/直径を絞り比として、次のような評価基準に基づいて成形性評価を行った。◎:2.0以上でもラミネート鋼板の破胴なし○:1.0以上、2.0未満の範囲内でラミネート鋼板の破胴なし△:0.5以上、1.0未満の範囲内でラミネート鋼板の破胴なし」
「[0049][表1][図:0001384077000005.jpg]」
(2)甲1発明に基づく新規性・進歩性
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ホモポリエチレンテレフタレートからなる」「ベース樹脂層」と、本件特許発明1の「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」として「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」を含む「第1のフィルム」とは、「ポリエチレンテレフタレート樹脂」を含む「フィルム」である限りで一致する。
甲1発明の「Eastar PETG(EASTMAN CHEMICAL(株)製)」は、本件特許発明1の「グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂」に相当するものであるから、甲1発明の「Eastar PETG(EASTMAN CHEMICAL(株)製)等のガラス転移点が70~90℃である非晶性の共重合ポリエステルからなる」「シール層」は、本件特許発明1の「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」として「グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂」を含む「第2のフィルム」に相当する。
甲1発明の「非吸着性シーラントフィルム」は、本件特許発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
甲1発明の「シール層」は、「非吸着性シーラントフィルム」の最表層に位置するといえる。
そうすると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
樹脂を一種類以上含むシーラントフィルムであって、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1のフィルムと、前記樹脂がグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第2のフィルムと、が積層されており、
最表層が前記第1のフィルムであるシーラントフィルム。
<相違点1>
第1のフィルムに含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂について、本件特許発明1では「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である」「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」とされているのに対して、甲1発明では、「ホモポリエチレンテレフタレート」である点。
(イ)相違点1についての検討
a.甲1発明における「ホモポリエチレンテレフタレート」は、あくまで“結晶性”のものとして把握されるものである(甲1の段落【0020】参照)。
そうすると、相違点1は、実質的なものというべきであるから、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
そして、甲1発明における「ホモポリエチレンテレフタレート」を「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」たる「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」に変更すること、あるいは、甲1発明の第1のフィルムに「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」たる「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」を加えることが、当業者に対して容易に動機付けられるものではない。
そうすると、甲1発明において相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
他の証拠方法を考慮しても、甲1発明において相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件特許発明2~7について
本件特許発明2~7は、いずれも、本件特許発明1の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものである。
そうすると、本件特許発明2~7を甲1発明と対比すると、両者の間には、少なくとも、本件特許発明1と甲1発明を対比した際の相違点1が存在することになり、そして、その相違点1についての判断は、既に述べたとおりである。
したがって、本件特許発明2~7は、いずれも、甲1発明ではないし、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものでもない。
(3)甲2発明に基づく新規性・進歩性
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ポリエチレンテレフタレートの保護層」と本件特許発明1の「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1のフィルム」とは、「ポリエチレンテレフタレート樹脂」を含む「フィルム」である限りで一致する。
甲2発明の「ジカルボン酸成分のうちの100モル%がテレフタル酸であり、グリコール成分のうちのエチレングリコールが70モル%、シクロヘキサンジメタノールが30モル%であるシーラント用ポリエステル樹脂」は、本件特許発明1の「グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂」に相当し、甲2発明の「シール材」は、本件特許発明1の「第2のフィルム」に相当する。
甲2発明の「積層体」は、本件特許発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
甲2発明の「保護層」は、「積層体」の最表層に位置するといえる。
そうすると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1のフィルムと、前記樹脂がグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第2のフィルムと、が積層されており、
最表層が前記第1のフィルムであるシーラントフィルム。
<相違点2>
第1のフィルムに含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂について、本件特許発明1では「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である」「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」とされているのに対して、甲2発明では、「ポリエチレンテレフタレート樹脂」である点。
(イ)相違点2についての検討
「ポリエチレンフタレ-ト樹脂」は、厳密には結晶性のものも非晶性のものも存在するのであるが、一般的には、“結晶性”のものと認識されるものである。
そうすると、相違点2は、実質的なものというべきであるから、本件特許発明1は、甲1発明と同一ではない。
そして、甲2発明における「ポリエチレンテレフタレート樹脂」として「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」たる「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」を採用すること、あるいは、甲1発明の第1のフィルムに「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」たる「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」を加えることが、当業者に対して容易に動機付けられるものではない。
そうすると、甲2発明において相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
他の証拠方法を考慮しても、甲2発明において相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
イ.本件特許発明2~7について
本件特許発明2~7は、いずれも、本件特許発明1の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものであり、本件特許発明2~7を甲2発明と対比すると、両者の間には、少なくとも、本件特許発明1と甲2発明を対比した際の相違点2が存在することになり、そして、その相違点2についての判断は、既に述べたとおりである。
したがって、本件特許発明2~7は、いずれも、甲2発明ではないし、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものでもない。
(4)甲3発明に基づく新規性・進歩性について
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「2軸延伸ポリエステルフイルムの支持体層」と本件特許発明1の「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1のフィルム」とは、「ポリエステル樹脂」を含む「フィルム」である限りで一致する。
甲3発明の「ガラス転移温度81℃の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(イーストマンコダック社:PETG 6763)」は、本件特許発明1の「ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」である「グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂」に相当し、甲3発明の「ポリエステル系樹脂層」は、本件特許発明1の「第2のフィルム」に相当する。
甲3発明の「包材サンプル」は、本件特許発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
また、甲3発明の「支持体層」は、「包材サンプル」の最表層に位置するといえる。
そうすると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂を一種類以上含むシーラントフィルムであって、
ポリエステル樹脂を含む第1のフィルムと、前記樹脂がグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第2のフィルムと、が積層されており、
最表層が前記第1のフィルムであるシーラントフィルム。
<相違点3>
第1のフィルムに含まれるポリエステル樹脂について、本件特許発明1では「溶解度パラメータ(SP値)が9以上」であって、「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」とされているのに対して、甲3発明では、「2軸延伸ポリエステル」である点。
(イ)相違点3についての検討
甲1発明における「2軸延伸ポリエステル」を「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」と同一視することはできない。
そうすると、相違点3は、実質的なものというべきであるから、本件特許発明1は、甲3発明と同一ではない。
そして、甲3発明における「2軸延伸ポリエステル」を「溶解度パラメータ(SP値)が9以上であって、ガラス転移温度が40℃以上110℃以下である樹脂」たる「非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂」に変更することが当業者に対して容易に動機付けられるものではない。
そうすると、甲3発明において相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
他の証拠方法を考慮しても、甲3発明において相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
イ.本件特許発明2~7について
本件特許発明2~7は、いずれも、本件特許発明1の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものであり、本件特許発明2~7を甲3発明と対比すると、両者の間には、少なくとも、本件特許発明1と甲3発明を対比した際の相違点3が存在することになる。そして、その相違点3についての判断は、既に述べたとおりである。
したがって、本件特許発明2~7は、いずれも、甲3発明と同一ではないし、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものでもない。
(5)以上のとおりであるから、本件特許発明1~7は、いずれも、特許法第29条第1項第3号に規定された発明には該当しないし、また、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
したがって、本件特許発明1~7に係る特許は、いずれも、特許法第113条第2号に該当しない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許権者に通知した取消理由によって取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700208