特許異議申立
2021-700203
青果物結露抑制包装袋、青果物入り包装体および青果物の鮮度保持方法
- 審判番号
- 2021-700203
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-089012
- 登録番号
- 6747470
- 請求日
- 2021年02月25日
- 審決日
- 2021年10月29日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友ベークライト株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】綾本 寛美
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 久保 克彦
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D) / P1651.4 -YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第39条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6747470号発明「青果物結露抑制包装袋、青果物入り包装体および青果物の鮮度保持方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
特許第6747470号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第6747470号の請求項2~14に係る特許を維持する。
特許第6747470号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
第1 手続の経緯
特許第6747470号の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成28年3月31日に出願した特願2016-72045号(優先権主張 平成27年4月1日)の一部を平成30年5月7日に新たな特許出願としたものであって、令和2年8月11日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8年26日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年 2月25日 :特許異議申立人綾本寛美(以下「申立人」という。)による請求項1~14に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 6月 4日付け:取消理由通知書
令和 3年 7月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
第2 訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2に記載された
「前記合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOとし、前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHとした時、TO/THの値が、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下である、請求項1に記載の青果物結露抑制包装袋。」を、
「青果物を内容物として収容するための青果物結露抑制包装袋であって、
当該青果物結露抑制包装袋は合成樹脂フィルムにより構成されており、
当該青果物結露抑制包装袋の外表面における水の接触角をθ1とし、当該青果物結露抑制包装袋の内表面における水の接触角をθ2とした時、θ1/θ2の値が1以上9以下であり、θ1の値が30°以上100°以下であり、θ2の値が3°以上60°以下であり、
前記合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOとし、前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHとした時、TO/THの値が、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下である、青果物結露抑制包装袋。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~14も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3に記載された「請求項1または2に記載の」を、「請求項2に記載の」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~14も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に記載された「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の」を、「請求項2または3に記載の」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~14も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5に記載された「請求項1乃至4のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至4のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~14も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至5のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~14も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項7に記載された「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至6のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~14も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項8に記載された「請求項1乃至7のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至7のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~14も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項9に記載された「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至8のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~14も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
本件訂正前の請求項10に記載された「請求項1乃至9のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至9のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~14も同様に訂正する)。
(11)訂正事項11
本件訂正前の請求項11に記載された「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至10のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する)。
(12)訂正事項12
本件訂正前の請求項13に記載された「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の」を、「請求項2乃至10のいずれか一項に記載の」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項14も同様に訂正する)。
2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~14は、請求項2~14が、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、本件特許の請求項2に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(4)訂正事項3~12について
訂正事項3は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項3が請求項1を含めた複数項を引用したものであるのを、請求項1を引用しないものとして整合をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
同様に、訂正事項4~12は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項2~14に係る発明(以下「本件発明2」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項2】
青果物を内容物として収容するための青果物結露抑制包装袋であって、
当該青果物結露抑制包装袋は合成樹脂フィルムにより構成されており、
当該青果物結露抑制包装袋の外表面における水の接触角をθ1とし、当該青果物結露抑制包装袋の内表面における水の接触角をθ2とした時、θ1/θ2の値が1以上9以下であり、θ1の値が30°以上100°以下であり、θ2の値が3°以上60°以下であり、
前記合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOとし、前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHとした時、TO/THの値が、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下である、青果物結露抑制包装袋。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムが、厚み方向に2以上の層が積層された多層構造を有する請求項2に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項4】
当該青果物結露抑制包装袋の内表面がエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂内層から形成される、請求項2または3に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項5】
当該青果物結露抑制包装袋の外表面がポリアミド樹脂材料を含む樹脂外層から形成される、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項6】
前記合成樹脂フィルムの厚みが20μm以上40μm以下である、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項7】
前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率が、30g/m2・day以上180g/m2・day以下である、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項8】
前記青果物が、果実類、果菜類、根菜類、菌茸類および花卉類からなる群のいずれかに分類される1種以上である、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項9】
前記合成樹脂フィルムは、微細孔が設けられたものである、請求項2乃至8のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項10】
θ1/θ2の値が1.3以上7以下である、請求項2乃至9のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋。
【請求項11】
請求項2乃至10のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋により青果物を密封してなる青果物入り包装体。
【請求項12】
当該青果物入り包装体に密封されている前記青果物が、
10℃、75%RHにおける前記青果物の蒸気圧をPgとし、10℃、75%RHにおける純水の蒸気圧をPwとしたとき、Pg/Pwで表される前記青果物の水分活性値が、0.800以上0.999以下という条件を満たす青果物である、請求項11に記載の青果物入り包装体。
【請求項13】
請求項2乃至10のいずれか一項に記載の青果物結露抑制包装袋を用いて青果物を包装する青果物の鮮度保持方法。
【請求項14】
前記青果物が、10℃、75%RHにおける前記青果物の蒸気圧をPgとし、10℃、75%RHにおける純水の蒸気圧をPwとしたとき、Pg/Pwで表される前記青果物の水分活性値が、0.800以上0.999以下という条件を満たす青果物である、請求項13に記載の青果物の鮮度保持方法。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~14に係る特許に対して、当審が令和3年6月4日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項2を直接的又は間接的に引用しない請求項3、6、8、9、11、13に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び例えば引用文献2に例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2014-205500号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2000-4780号公報(甲第3号証)
(2)取消理由2(同日出願)
本件特許の請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項2を直接的又は間接的に引用しない請求項3~14に係る発明は、同日出願された下記出願1に係る発明と同一と認められ、かつ、同出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないものであり、特許法第39条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消すべきものである。
出願1:特願2016-72045号(特許第6372510号)
2 当審の判断
(1)取消理由1(進歩性)について
取消理由1の対象とされた、本件訂正前の請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項2を直接的又は間接的に引用しない請求項3、6、8、9、11、13は、訂正事項1により削除された。
(2)取消理由2(同日出願)について
取消理由2の対象とされた、本件訂正前の請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項2を直接的又は間接的に引用しない請求項3~14は、訂正事項1により削除された。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る申立理由について
(1)申立人は、本件特許の請求項1~14に係る発明は、次のア~ウの点で、発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する。
ア 発明の詳細な説明には、【0023】、【0024】及び【0025】の三段階で、それぞれ、好ましい「θ1/θ2」、「θ1」及び「θ2」の数値範囲が記載されている。しかしながら、「θ1/θ2」の範囲が「1以上9以下」、「1以上8以下」又は「1.3以上7以下」のいずれの範囲であっても、「θ1」及び「θ2」がそれぞれの範囲を逸脱した数値を取り得るため、本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載された発明ではない(申立書13ページ末行~14ページ下から2行)。
イ 本件特許発明2は、包装袋内の条件を青果物の保存に適した低酸素、高二酸化炭素条件とし、青果物を包装してからの時間経過に伴って、当該包装袋内の条件がカビの育成に適した条件に変動してしまうことを抑制することを課題としてTO/THの値を特定するものである。本件特許発明2は、合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOと、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHの関係として、TO/THの関係を特定するのみであるが、発明の詳細な説明に記載された酸素透過率TOの範囲と、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率THが範囲について、明細書において特定している範囲を超えた値も含みうるものとなる。したがって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることになる(申立書16ページ1行~17ページ6行)。
ウ 発明の詳細な説明には、【0023】、【0024】及び【0025】の三段階で、それぞれ、好ましい「θ1/θ2」、「θ1」及び「θ2」の数値範囲が記載されている。しかしながら、「θ1/θ2」の範囲が「1.3以上7以下」の範囲について、「θ1」及び「θ2」がそれぞれの範囲を逸脱した数値を取り得るため、本件特許発明10は発明の詳細な説明に記載された発明ではない(申立書18ページ8行~9ページ3行)。
(2)しかし、以下に示すように上記ア~ウの申立人の主張は採用できない。
ア 上記(1)ア及びウについて
本件発明2は、「θ1/θ2の値が1以上9以下であり、θ1の値が30°以上100°以下であり、θ2の値が3°以上60°以下」であることを発明特定事項としている。
すなわち、本件発明2は、「θ1/θ2の値が1以上9以下」であること、「θ1の値が30°以上100°以下」であること、及び「θ2の値が3°以上60°以下」であることの全てを満たしたものであって、「θ1/θ2」、「θ1」及び「θ2」のいずれかが所定の数値範囲を逸脱したものは、本件発明2ではない。
したがって、申立人の主張は、その前提に誤りがある。
本件発明10についても同様である。
イ 上記(1)イについて
(ア)本件発明2が解決しようとする課題は、「包装袋の外表面に対するインキ印刷適性と、包装袋の内表面における結露防止性とを両立し、かつ保存した青果物にカビが発生することを抑制できる青果物カビ増殖抑制包装袋を提供する」(【0010】)ことである。
(イ)そして、上記課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【0022】
本実施形態において、当該包装袋の外表面における水の接触角をθ1とし、当該包装袋の内表面における水の接触角をθ2とした時、θ1/θ2の値は、1以上9以下であるが、好ましくは、1以上8以下であり、より好ましくは、1.3以上7以下である。本包装袋について上述したθ1/θ2の値が上記数値範囲内となるように制御することで、包装袋の外表面に対するインキ印刷適性と、包装袋の内表面における結露防止性とのバランスを向上させることができる。なお、水の接触角の値は、小さいほど対象物の表面が水に濡れやすいことを示し、高いほど対象物の表面が水をはじきやすいことを示すものである。・・・
【0023】
本包装袋の外表面における水の接触角θ1の値は、包装袋の外表面に対するインキ印刷適性を良好なものとする観点から、好ましくは、30°以上100°以下であり、さらに好ましくは、40°以上90°以下であり、最も好ましくは、50°以上90°以下である。
【0024】
本包装袋の内表面における水の接触角θ2の値は、保存した青果物にカビが発生することを高度に抑制する観点から、好ましくは、3°以上60°以下であり、さらに好ましくは、5°以上55°以下であり、最も好ましくは、10°以上50°以下である。
【0025】
また、本実施形態においては、合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOとし、合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHとした時、TO/THの値が、好ましくは、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下であり、より好ましくは、0.1cc/g・atm以上15000cc/g・atm以下であり、さらに好ましくは、1cc/g・atm以上5000cc/g・atm以下であり、最も好ましくは、15cc/g・atm以上1000cc/g・atm以下である。本包装袋に関し、上述したTO/THの値が上記数値範囲内となるように制御することで、該包装袋内に青果物を収容して保存した場合に、包装袋内の条件を青果物の保存に適した低酸素、高二酸化炭素条件とすることができる。また、上述したTO/THの値が上記数値範囲内となるように制御することで、青果物を包装してからの時間経過に伴って、当該包装袋内の条件がカビの生育に適した条件に変動してしまうことを抑制することもできる。
【0026】
また、合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率TOは、好ましくは、2cc/m2・day・atm以上500000cc/m2・day・atm以下であり、より好ましくは、10cc/m2・day・atm以上100000cc/m2・day・atm以下であり、さらに好ましくは、500cc/m2・day・atm以上50000cc/m2・day・atm以下であり、最も好ましくは、5000cc/m2・day・atm以上50000cc/m2・day・atm以下である。本実施形態において、上述した酸素透過率TOの値が上記数値範囲内となるように制御することで、より長い期間青果物の鮮度を安定的に保持することが可能な包装袋とすることができる。
・・・
【0027】
合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率THは、好ましくは、30g/m2・day以上180g/m2・day以下であり、さらに好ましくは、40g/m2・day以上120g/m2・day以下であり、最も好ましくは、50g/m2・day以上110g/m2・day以下である。こうすることで、より一層内表面の結露防止性を向上させることが可能であるとともに、長い期間青果物の鮮度を安定的に保持することが可能な、青果物カビ増殖抑制包装袋とすることができる。
・・・」
(ウ)申立人が上記(1)イで主張している、酸素透過率TOの範囲と水蒸気透過率THが範囲に関して、上記(イ)の【0026】及び【0027】に示したとおり、「合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率TO」を好ましい数値範囲とすることで、「より長い期間青果物の鮮度を安定的に保持することが可能な包装袋」とし、また、「合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率TH」を好ましい数値範囲とすることで、「より一層内表面の結露防止性を向上させることが可能であるとともに、長い期間青果物の鮮度を安定的に保持することが可能な、青果物カビ増殖抑制包装袋」とするものである。
しかしながら、上記(イ)の【0025】に示したとおり、本件発明2は、発明が解決しようとする課題のうち、「保存した青果物にカビが発生することを抑制できる青果物カビ増殖抑制包装袋を提供する」ことを、「前記合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOとし、前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHとした時、TO/THの値が、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下」とすることによって解決するものであるから、本件発明2は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではない。
2 特許法第36条第6項第2号(明確性)に係る申立理由について
(1)申立人は、本件特許の請求項1~14に係る発明は、次のア~ウの点で、明確でないため、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨主張する。
ア 本件特許発明1において、θ1またはθ2の数値範囲は、θ1/θ2の関係から逸脱する数値を含んでいるため、不明確である(申立書15ページ1~17行)。
イ 本件特許発明2において、TO/THの関係を特定することの技術的意義が理解できず、また、TO/THの関係だけでは、課題を解決するためのTOの範囲と、課題を解決素ためのTHの範囲とが不足していることは明らかである(申立書17ページ8~末行)。
ウ 本件特許発明10において、θ1またはθ2の数値範囲は、θ1/θ2の関係から逸脱する数値を含んでいるため、不明確である(申立書19ページ4~21行)。
(2)しかし、以下に示すように上記ア~ウの申立人の主張は採用できない。
ア 上記(1)ア及びウについて
本件発明2は、「θ1/θ2の値が1以上9以下であり、θ1の値が30°以上100°以下であり、θ2の値が3°以上60°以下」であることを発明特定事項とするものである。
本件発明2で特定された「θ1」の全ての数値範囲と「θ2」の全ての数値範囲において、「θ1/θ2」の数値範囲を満たすことを意味するものではない。
したがって、申立人の主張は、その前提に誤りがある。
本件発明10についても同様である。
イ 上記(1)イについて
本件発明2における「TO/TH」、「TOの範囲」及び「THの範囲」の技術的意義については、上記1(2)イで述べたとおりである。
3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る申立理由について
(1)申立人は、発明の詳細な説明の記載が、次のア~ウの点で、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する。
ア 本件特許発明1について、本件特許明細書の【0023】、【0024】には、θ1及びθ2のそれぞれの採り得る範囲が示されているのみであり、θ1/θ2の値が1以上9以下となる範囲となるようにθ1及びθ2の採り得る範囲が制限されるような説明がなく、当業者が実施できるように記載されたものではない(申立書15ページ19~27行)。
イ 本件特許発明2で特定された「TO/THの値が、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下」となる実験例よりも広い範囲で定性的に成立する何らの説明もなく、当業者が実施できるように記載されたものではない(申立書17ページ19~末行)。
ウ 本件特許発明10について、本件特許明細書の【0023】、【0024】には、θ1及びθ2のそれぞれの採り得る範囲が示されているのみであり、θ1/θ2の値が1.3以上7以下となる範囲となるようにθ1及びθ2の採り得る範囲が制限されるような説明がなく、当業者が実施できるように記載されたものではない(申立書19ページ23行~20ページ2行)。
(2)しかし、以下に示すように上記ア~ウの申立人の主張はいずれも採用できない。
ア 上記(1)ア及びウについて
水接触角の測定方法について、本件特許明細書の【0078】に記載されており、「θ1」及び「θ2」の測定が可能である。そして、「θ1/θ2」は、「θ1」と「θ2」とを除算することにより計算できる。そうすると、合成樹脂フィルムとして、「θ1/θ2」が所定の範囲に含まれるものを選択することで、本件発明2及び10を実施することが可能である。
なお、本件発明2において、θ1及びθ2は、θ1/θ2の値が1以上9以下を満たすものであることは明らかである。
本件発明10についても同様である。
イ 上記(1)イについて
酸素透過率及び水蒸気透過率の測定方法について、それぞれ、本件特許明細書の【0079】~【0081】、及び本件特許明細書の【0082】に記載されており、「TO」及び「TH」の測定が可能である。そして、「TO/TH」は、「TO」と「TH」とを除算することにより計算できる。そうすると、合成樹脂フィルムとして、「TO/TH」が所定の範囲含まれるものを選択することで、本件発明2を実施することができる。
4 特許法第29条第1項第3号(新規性)に係る申立理由について
(1)申立人は、本件特許の請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項2を直接的又は間接的に引用しない請求項3~6、8に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない旨主張する。
(2)本申立理由の対象とされた、本件訂正前の請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項2を直接的又は間接的に引用しない請求項3~6、8は、訂正事項1により削除された。
5 特許法第29条第2項(進歩性)に係る申立理由について
(1)申立人は、本件特許の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、7、10、12、14に係る発明、並びに本件特許の請求項2、及び請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~14に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明、及び甲第2、3、5~21号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張する。
以下、甲第1号証等を「甲1」等という。
甲1:特開2014-205500号公報(引用文献1)
甲2:特開2014-172632号公報
甲3:特開2000-4780号公報(引用文献2)
甲5:特開2007-237010号公報
甲6:特開昭57-174250号公報
甲7:特開2006-226614号公報
甲8:特公昭54-34796号公報
甲9:特公昭61-52176号公報
甲10:特開2006-297681号公報
甲11:特開2013-112385号公報
甲12:特開2013-249068号公報
甲13:特開2014-24597号公報
甲14:特開2014-172632号公報
甲15:特開平5-111960号公報
甲16:特開平8-258232号公報
甲17:特開2005-186484号公報
甲18:特開2006-334966号公報
甲19:特開2012-130439号公報
甲20:特開2013-212601号公報
甲21:特開2014-189755号公報
(2)当審の判断
ア 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、食品包装用に好適に用いられる包装用フィルムに関するものであり、特に塩素やポリ塩化ビニル用可塑剤を含まず、さらにトレーを使用することなく、フィルムの上に食品を乗せ、エッジ部分をシールしてなる包装体を形成するのに最適な食品包装用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品や惣菜等のプリパッケージ包装としては、軽量ポリスチレンペーパー(PSP)トレー等に入れた食品をストレッチフィルムでオーバーラップ包装した包装形態(ストレッチ包装)が最も普及している。しかしながら、近年は包装材料費の削減が積極的に行われており、特に上記トレーのコスト削減が大きな問題として挙げられている。
【0003】
さらに、容器の廃棄処理や冷蔵庫等の保管の際にかさばるような包装形態は、重量も大きくなりがちであり、処理の際にもコストがかかることも環境問題を考える上で重要である。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、ヒートシール性・コシ感が良好で、さらに防曇性や経済性にも優れた食品包装用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、ヒートシール性を有する表面層と基材層の少なくとも2層からなり、当該表面層面同士を130℃でヒートシールしたときの剥離荷重が0.7kgf/20mm巾以上であり、当該表面層面の接触角が60°以下であり、押込み荷重が1.2kgf以上であることを特徴とする食品包装用フィルム、および当該食品包装用フィルムからなる包装体に存する。」
「【0020】
また、ヒートシール性を有する表面層は、同時に食品接触層でもあるため、包装形態の特徴上、防曇性も要求される。本発明のフィルムとして要求される防曇性を確保するには、当該表面層における表面の接触角が60°以下である必要がある。ここで、接触角は樹脂組成物(A)からなる層の親水性に依存する。一般的に、接触角が小さいほど親水的であり、フィルム表面に水膜を形成しやすく、防曇性に優れると言える。接触角が60°以下であれば本フィルムとして要求される防曇性を確保することができる。」
「【0040】
(3)接触角
本発明における接触角の測定方法について説明する。接触角計(協和界面化学社製DM-500型)にて、ヒートシール層表面の水の接触角を評価する。接触角測定の際における1回の水の滴下量は約3μlとし、滴下後1秒間保持した後にフィルム表面と水滴のなす角度を読み取る。接触角の読み取りにはθ/2法を用い、1試料につき10箇所の接触角測定を行い、その平均値をその試料の接触角とする。」
「【0045】
実施例1:
表面層の樹脂組成物(A)として、エチレン-ブテン-1共重合体(融解熱量115J/g、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2g/10分)95.8重量%と、防曇剤としてジグリセリンオレート3.7重量%、ポリグリセリンポリリシノレート0.5重量%を溶融混練した。一方、基材層を構成する樹脂組成物(B)としてはプロピレン単独重合体(メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)4g/10分)100重量%と溶融混練し、Tダイ温度230℃で共押出キャスト成形により積層し、ロール延伸法にて108℃で縦一軸に3倍延伸し、総厚み30μm(5μm/25μm)の2層フィルム(サンプル)を得た。」
「【0049】
実施例5:
外層(基材層を挟んで表層の反対側)に実施例1で用いた樹脂組成物(A)を積層し、基材層の厚みを30μm、延伸倍率を2.5倍とした以外は実施例1と同様にして、総厚み40μm(5μm/30μm/5μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。」
「【0053】
【表1】
[図:0001382377000001.jpg]
」
「【0055】
本発明のフィルムは、例えば、トレーを使用することなく、フィルムの上に食品を乗せ、エッジ部分をシールしてなる新規の包装形態の食品包装用フィルムとして好適に利用することができる。」
(イ)上記(ア)から、実施例5に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「内容物である生鮮食品を包装するための食品包装用フィルムであって、
食品包装用フィルムは表面層の樹脂組成物(A)と基材層を構成する樹脂組成物(B)を積層し、基材層の両面のうち、表面層を積層した面とは反対側の面に樹脂組成物(A)を積層して外層とし、全体の層厚みを40μmの3層フィルムとし、
表面層の表面の接触角が52.4°である、食品包装用フィルム。」
(ウ)特開2014-172632号公報(甲第2号証。以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0003】
従来の青果物の包装では、防曇加工を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が多く用いられている。これは、OPPフィルムが安価で透明性やヒートシール性に優れているため使いやすく青果物を包装した際の見栄えが良いといった特徴によるものである。しかし、包装袋内に青果物が密封されていると、青果物は含水率がおよそ80%以上であるため、包装袋内に青果物から出た水分がこもってしまい、防曇加工を施してもフィルム表面や青果物の表面に水滴が付着してしまい、徐々に袋内に水が溜まってしまうという欠点があった。このような状態だと見栄えが悪くて市場、量販店或いは消費者に敬遠されたり、青果物表面がぬめりやすくなったりするという欠点があった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、且つ、結露が生じず、青果物がしおれることなく、しわの発生がなく、かつ透明性が良く、青果物を包装して水分に触れて吸湿してもフィルムのコシが保たれることで見栄えが良い青果物用包装袋及び青果物包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1)青果物を包装するために用いられ、合成樹脂フィルムで構成される青果物用包装袋であって、前記合成樹脂フィルムは、前記青果物を包装した際に前記青果物側となる面に、厚さ0.5μm以上、10μm以下のヒートシール層を有し、水蒸気透過度が35g/m2・day(40℃・90%RH)以上、120g/m2・day(40℃・90%RH)以下であり、かつ、前記青果物を包装した際に前記青果物側となる面における水の接触角が0°超、60°以下であることを特徴とする青果物用包装袋。
・・・
(4)前記合成樹脂フィルムは、その酸素透過速度が80cc/m2・day・atm以上、500,000cc/m2・day・atm以下である上記(1)ないし(3)に記載の青果物用包装袋。
・・・
(8)オクラ、エダマメ、ブロッコリー、ナス、ピーマン、パプリカ、シイタケ、エリンギ、マイタケ、シメジ、マツタケ、栗、イチゴ、ライチ、バナナ、マンゴー、メロン、ブドウ、ブルーベリー、リンゴ、柿、ビワ、イチジク、西洋梨、温州ミカン、中晩柑、レモン、カボス、タマネギ、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモのうちのいずれかを前記青果物として包装する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の青果物用包装袋。」
「【0026】
また、前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度は、35g/m2・day(40℃・90%RH)以上、120g/m2・day(40℃・90%RH)以下である。
これにより、青果物包装体内の結露が防止できるので、青果物が見えにくくなったり、青果物が水に接触し続けることで傷みやすくなったりすることが無く、かつ青果物がしおれにくくなる。
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度は、35g/m2・day(40℃・90%RH)以上、120g/m2・day(40℃・90%RH)以下であれば特に限定されないが、40g/m2・day(40℃・90%RH)以上、110g/m2・day(40℃・90%RH)以下であるのが好ましく、45g/m2・day(40℃・90%RH)以上、100g/m2・day(40℃・90%RH)以下であるのがより好ましい。合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が前記範囲内であることにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
なお、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則って測定することができる。
【0027】
また前記合成樹脂フィルムの酸素透過速度は、80cc/m2・day・atm以上、500,000cc/m2・day・atm以下であることが好ましい。青果物は、収穫後も呼吸し続けており、呼吸するほど劣化してしまう特性がある。青果物の呼吸は、大気中よりも程よい低酸素濃度、高二酸化炭素濃度環境下で抑制されるので、鮮度保持が可能となる。
【0028】
また、前記合成樹脂フィルムの酸素透過速度は、1,000cc/m2・day・atm以上、400,000cc/m2・day・atm以下であることがより好ましく、1,500cc/m2・day・atm以上、300,000cc/m2・day・atm以下であることがより一層好ましい。
前記合成樹脂フィルムの酸素透過速度を前記範囲内のものとすることにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
なお、酸素透過速度の測定方法は、密閉可能な容器に穴をあけて、この部分にフィルムを張り付け、容器内を窒素置換して23℃で保管して、この容器内の酸素濃度変化をガスクロマトグラフィーで測定し、時間あたりの酸素容器への流入量(cc)を求め、これをフィルム1m2、2日あたりの値に換算した。なお、酸素濃度は経過時間と反比例の関係を有する範囲の数値を使用する。」
「【0031】
なお、前記合成樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されないが、
例えば、ベースとなる基材フィルムにヒートシール層を構成する樹脂および防曇剤等を溶液に溶解又は分散させたもの(コート剤)をコートするウェットコーティング法、基材フィルムに溶融した樹脂を積層する押出ラミネート法或いはフィルム同士を接着剤で張り付けるドライラミネート法等が挙げられる。これらのうち、水蒸気透過度や水接触角の調節しやすさ、製造しやすさに優れるウェットコーティング法が最も好ましい。ウェットコーティングの方式としては、正回転ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ブレードコート、ロッドコート、エアドクターコート、カーテンコート、キスコート等を用いることができる。」
「【0033】
前記基材フィルムを構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン(PS)、ナイロン(NY)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、セロハン(PT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート等が挙げられるが、中でも、ナイロン、ポリ乳酸、EVOH、またはポリスチレンのいずれか1つ以上を含むものであるのが好ましい。これにより、水蒸気透過度および水の接触角を比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
また、基材フィルムを構成する樹脂は、上記の樹脂の単独重合体や共重合体、または官能基を導入して変性したものでも良い。
さらに、前記基材フィルムは、一軸又は二軸延伸してあることが好ましく、単層であっても多層であってもよい。また、コロナ処理、プラズマ処理或いは火炎処理等を施してあっても構わない。
【0034】
なお、青果物用包装袋の製造方法は、特に限定されないが、例えば、2枚の合成樹脂フィルムを重ね合わせた状態、または1枚の合成樹脂フィルムを折り重ねた状態で、3辺若しくは2辺を熱シールにより融着させて袋を形成し、1辺において開口する開口部を設ける構成とすることで袋体としての形状が形成される。このような青果物用包装袋において、開口部を介して青果物が袋内に配置され、開口部をテープで縛るまたは熱圧着等により密閉することで、青果物用包装袋により青果物が包装される。或いは、自動包装機を使用して包装することも可能である。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0036】
(実施例1~8、比較例1~3)
表1に示す構成の基材フィルム(実施例7および比較例1は、表1に示す樹脂をグラビアコートで積層し、厚さ25μmの第1樹脂層、厚さ0.5μmの第2樹脂層からなる2層構成の基材フィルムとした。)にヒートシール層を所定の厚みとなるようにコートして110℃で1分間乾燥してフィルムを得た。
作成したフィルムの水蒸気透過度、酸素透過度およびヒートシール面の水接触角を上述した測定方法にて測定した。」
「【0041】
【表1】
[図:0001382377000002.jpg]
」
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と引用発明とを対比する。
引用発明の「生鮮食品」が「内容物」であることと、本件発明2の「青果物を内容物と」することとは、「生鮮食品を内容物と」する限りで一致し、引用発明の「食品包装用フィルム」と本件発明2の「青果物結露抑制包装袋」とは、「生鮮食品用包装材」の限りで一致する。
引用発明の「包装する」ことは、本件発明2の「収容する」ことに相当する。
引用発明の「表面層の樹脂組成物(A)と基材層を構成する樹脂組成物(B)を積層し」たことは、本件発明2の「合成樹脂フィルムにより構成されて」いることに相当する。
以上を踏まえると、本件発明2と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「生鮮食品を内容物として収容するための生鮮食品用包装材であって、
当該生鮮食品用包装材は合成樹脂フィルムにより構成されている、生鮮食品用包装材。」
[相違点1]
「生鮮食品を内容物と」した「生鮮食品用包装材」に関し、本件発明2は、「青果物を内容物と」した「青果物結露抑制包装袋」であるのに対して、引用発明は、「生鮮食品」が「内容物」である「食品包装用フィルム」である点。
[相違点2]
本件発明2は「当該青果物結露抑制包装袋の外表面における水の接触角をθ1とし、当該青果物結露抑制包装袋の内表面における水の接触角をθ2とした時、θ1/θ2の値が1以上9以下であり、θ1の値が30°以上100°以下であ」るのに対して、引用発明は、その点が不明である点。
[相違点3]
本件発明2は、「前記合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率をTOとし、前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率をTHとした時、TO/THの値が、0.001cc/g・atm以上17000cc/g・atm以下である」のに対して、引用発明は、その点が不明である点。
(イ)判断
まず、相違点3について検討する。
甲2の【0012】、【0013】、【0031】、【0034】を参照すると、甲2に記載の事項は、結露が生じず、青果物がしおれることなく、しわの発生がなく、かつ透明性が良く、青果物を包装して水分に触れて吸湿してもフィルムのコシが保たれることで見栄えが良いものとすることを課題として、基材フィルムにヒートシール層を積層した合成樹脂フィルムから形成した青果物用包装袋において、ヒートシール層の厚さを0.5μm以上、10μm以下とし、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度を35g/m2・day(40℃・90%RH)以上、120g/m2・day(40℃・90%RH)以下とし、青果物を包装した際に青果物側となる面における水の接触角が0°超、60°以下とし、合成樹脂フィルムの酸素透過速度が80cc/m2・day・atm以上、500,000cc/m2・day・atm以下とすること(以下「甲2記載事項」という。)であり、甲2の【0035】~【0037】、及び【0041】【表1】の実施例には、酸素透過速度/水蒸気等加速度を計算すると、0.6552(実施例6)~6297(実施例5)の範囲のものが記載されている。
引用発明は、ヒートシール性・コシ感が良好で、さらに防曇性や経済性にも優れた食品包装用フィルムを提供することを課題とするものであり(甲1の【0008】)、「食品包装用フィルム」が、「表面層の樹脂組成物(A)と基材層を構成する樹脂組成物(B)を積層し、基材層の両面のうち、表面層を積層した面とは反対側の面に樹脂組成物(A)を積層して外層と」した「3層フィルム」である。
他方で、甲2の青果物用包装袋は、結露が生じず、青果物がしおれることなく、しわの発生がなく、かつ透明性が良く、青果物を包装して水分に触れて吸湿してもフィルムのコシが保たれることで見栄えが良いものとすることを課題とするものであり(甲2の【0012】)、基材フィルムにヒートシール層を積層した合成樹脂フィルムから形成したものであって、引用発明と層構成が異なるものであり、また、青果物がしおれなくするということを課題とし、当該課題の解決手段として、上記の酸素透過速度を規定するものである。
そうすると、2層の合成樹脂フィルムでの酸素透過率及び水蒸気透過率が記載される甲2記載事項を、3層からなる引用発明に適用することに動機付けがあるとはいえない。
したがって、引用発明において、「合成樹脂フィルムの20℃、80%RHにおける酸素透過率」「TO」と、「記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率」「TH」を、上記相違点3に係る本件発明3の構成とすることの動機付けはない。
よって、相違点1及び2を検討するまでもなく、本件発明2は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~14について
本件発明3~14は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項2~14に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項2~14に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項1に係る特許は、本件訂正により削除されたため、申立人による請求項1に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700203