2021-700152
射出成形用情報管理装置、および射出成形機
- 審判番号
- 2021-700152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-509681外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月10日
- 審決日
- 2021年06月04日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友重機械工業株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 分類
- P1652.121-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
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特許第6744911号の請求項1及び5に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)3月31日(優先権主張 平成28年3月31日)を国際出願日とする出願(特願2018ー509681号)であって、令和2年8月4日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年8月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和3年2月10日に特許異議申立人 加藤 浩志(以下「特許異議申立人」という。)が特許異議の申立て(対象請求項1及び5)を行った。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1及び5に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明5」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】可動部と、前記可動部を移動させる駆動部と、前記駆動部の駆動力を検出する駆動力検出部とを有する射出成形機の部品の情報を管理する、射出成形用情報管理装置であって、前記可動部の停止中の前記駆動力検出部の検出値に基づいて、前記射出成形機の部品の劣化を検出する、射出成形用情報管理装置。」
「【請求項5】金型装置の型閉、型締、および型開を行う型締装置と、前記金型装置内に成形材料を充填する射出装置と、請求項1~4のいずれか1項に記載の射出成形用情報管理装置とを含む、射出成形機。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、甲第1号証を提出し、本件特許の請求項1及び請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨主張する。
<証拠方法>
第4 主な証拠の記載
1 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
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(1) 甲第1号証の記載事項
本件特許の優先日前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証には、次の記載がある。(下線は、合議体による。以下同じ。)
ア 「2.特許請求の範囲射出成形機において、射出、保圧時にスクリューに作用する回転トルクを検出するトルク検出手段と、トルク検出手段によって検出された回転トルクが射出及び保圧時に所定の許容範囲を超えると異常発生として検知する異常発生検知手段とを備えたことを特徴とする射出装置の異常検出装置。」 (1頁左下欄4行~10行)
イ 「以下、本発明の一実施例について説明する。サーボモータ駆動式射出成形機の要部を示す第1図において、符号8はスクリュー回転用のサーボモータであり、モータ軸7に固着されたモータプーリ6、ベルト4、駆動プーリ5を介して、シリンダー3内のスクリュー2及び従来同様の構成を有する逆流防止弁1を一体的に回転し、計量を行うよう構成されている。なお、第1図においては、射出成形機のスクリュー回転軸に関するものだけを示しているが、射出軸、クランプ軸、エジェクタ軸等は従来と同様の構成を有する。」(2頁左下欄5行~15行)
ウ 「NC用CPU16には、射出成形機を全体的に制御する管理プログラムを記憶したROM17及び射出軸用,クランプ軸用,スクリュー回転軸用,エジェクタ軸用等の各軸サーボモータを駆動制御するサーボ回路10がサーボインタフェース11を介して接続されている。なお、第1図では、スクリュー回転用のサーボモータ8のみを示しており、該サーボモータ8にはモータの回転を検出するパルスコーダ9が装着され、サーボ回路10に設けられたエラーレジスタに信号入力されるよう接続されている。また、符号12は不揮発性の共有RAMで、射出成形機の各動作を制御するNCプログラム等を記憶するメモリ部と各種設定値,パラメータ,マクロ変数用のメモリ部を有する。」(2頁右下欄4行~18行)
エ 「射出、保圧時にはスクリュー回転用サーボモータ8の駆動は停止しており、即ち、NC用CPU16はスクリュー回転用サーボモータ8のサーボ回路10内のエラーレジスタへのパルス分配を行っておらず、スクリュー回転用サーボモータ8の移動指令量は[0]であり、スクリュー2が回転しなければ、サーボ回路10内のエラーレジスタの値、即ちエラー量は[0]である。しかし、逆流防止弁1に摩耗や欠損が生じていた場合には、射出及び保圧時においてスクリュー2によって圧縮された溶融樹脂が、シリンダー3とスクリュー2によって形成されるスパイラル状の溝に沿って逆流するため、スクリュー2には計量時と逆方向の回転トルクが生じ、この回転トルクが駆動プーリ5、ベルト4、モータプーリ6を介してモータ軸7に伝播され、ザーボモータ8に回転変位を生ずるので、パルスコーダ9がこの回転変位を検出しサーボモータ停止位置(即ち、計量終了時における指令位置)に対する現在位置のエラー量がサーボ回路10のエラーレジスタに溜り、このエラー量が共有RAM12に記憶される。そして、このエラー量が許容範囲εの限界を超えると、ステップS2の判別処理によって逆流防止弁1の異常として検知され、PMC用CPU19はBAC18を介してアラームを出力し、CRT/MDI等によって異常表示を行い、逆流防止弁1に異常が発生したことをオペレータに警告し、更に、射出軸用サーボモータの駆動出力を停止して射出動作を停止させる(ステップS5)。」 (3頁左下欄5行~同頁右下欄13行)
オ 「なお、上記実施例ではサーボ回路内のエラーレジスタの値、即ち、エラー量によってスクリューに溶融樹脂からの回転トルクが作用しているか否かを判断したが、スクリュー回転用サーボモータの駆動トルクを検出し、逆流防止弁1が機能しているか否かの判別を行ってもよい。即ち、射出、保圧時にスクリュー2が回転し、サーボ回路10内のエラーレジスタの値(エラー墳)が増大すればこのエラー争をなくするようにサーボモータ8は駆動され、エラー量に応じて駆動電流が流れるから、駆動電流が所定値以上になったときをもって、逆流防止弁1が機能していないことを検知するようにしてもよい。」(4頁左上欄2行~14行)
カ 「」(第1図)
(2) 甲第1号証に記載された発明
通常の射出成形機は、樹脂を計量した後、前記樹脂を金型内に射出するために、「スクリューを軸方向に移動させる手段」を備える。そうすると、甲第1号証に記載の射出成形機も、例えば第1図には図示されていないものの、樹脂を金型内に射出するために、「スクリューを軸方向に移動させる手段」を備えることは自明な事項である。
そうして、上記(1)における摘記事項ア~オ及び上記自明な事項を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「射出成形機において、スクリューと、前記スクリューを軸方向に移動させる手段と、射出、保圧時にスクリューに作用する回転トルクを検出するトルク検出手段と、トルク検出手段によって検出された回転トルクが射出及び保圧時に所定の許容範囲を超えると異常発生として検知する異常発生検知手段とを備えた射出成形機の異常検出装置であって、前記射出成形機は、サーボモータ駆動式であり、前記スクリュー回転用のサーボモータと、当該サーボモータを駆動制御するサーボ回路と、前記射出成形機の各動作を制御するNCプログラム等を記憶するメモリ部並びに各種設定値、パラメータ及びマクロ変数用のメモリ部を有する不揮発性の共有RAMとを備え、前記サーボモータは、モータ軸に固着されたモータプーリ、ベルト及び駆動プーリを介して、シリンダー内の前記スクリュー及びその先端に装着された逆流防止弁を一体的に回転し、計量を行うよう構成され、前記サーボモータにはモータの回転を検出するパルスコーダが装着され、当該パルスコーダは前記サーボ回路に設けられたエラーレジスタに信号入力されるように接続され、射出、保圧時には前記サーボモータの駆動は停止するようにされており、前記逆流防止弁に摩耗や欠損が生じていた場合には、射出、保圧時において前記スクリューによって圧縮された溶融樹脂が、前記シリンダーと前記スクリューによって形成されるスパイラル状の溝に沿って逆流するため、前記スクリューには計量時と逆方向の回転トルクが生じ、この回転トルクが前記駆動プーリ、前記ベルト及び前記モータプーリを介して前記モータ軸に伝播され、前記サーボモータに回転変位を生ずるので、前記パルスコーダがこの回転変位を検出し、サーボモータ停止位置(即ち、計量終了時における指令位置)に対する現在位置のエラー量が前記サーボ回路のエラーレジスタに溜り、このエラー量が前記共有RAMに記憶され、このエラー量が許容範囲の限界を超えると、前記逆流防止弁の異常として検知される、射出成形機の異常検出装置。」
(3) 本件特許発明1と甲1発明との対比
甲1発明における「スクリュー」及び「前記スクリューを軸方向に移動させる手段」は、本件特許発明1における「可動部」及び「前記可動部を移動させる駆動部」に相当する。
また、上記ア及びウの摘記事項から、甲1発明の「射出装置の異常検出装置」は、「逆流防止弁」の「摩耗や欠損」を検知しているから、甲1発明における「逆流防止弁」、「摩耗や欠損」、「射出成形機の異常検出装置」は、それぞれ、本件特許発明1の「射出成形機の部品」、「劣化」、「射出成形用情報管理装置」に相当する。
以上の点をふまえ、本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、それぞれ次のとおりである。
・一致点
「可動部と、前記可動部を移動させる駆動部とを有する射出成形機の部品の情報を管理する、射出成形用情報管理装置であって、前記射出成形機の部品の劣化を検出する、射出成形用情報管理装置。」
・相違点
本件特許発明1は、「駆動部の駆動力を検出する駆動力検出部」を有し、「前記駆動力検出部の検出値に基づいて、前記射出成形機の部品の劣化を検出する」と特定するのに対して、甲1発明は、そのような特定を有しない点。
(4)検討
ア 相違点に関する検討
甲第1号証には、「スクリューを軸方向に移動させる手段」の駆動力を検出する事項について記載されておらず、ましてや、その検出値に基づいて射出成形機の部品の劣化を検出する事項についての記載もない。そして、当該事項が本願優先日前に当業者の技術常識でもない。
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立理由の9頁において、以下の主張をしている。
「ウ 本件特許発明と証拠に記載された発明との対比(ア)本件特許発明1と甲1発明とを対比する。・・・(略)・・・b 甲1発明における「スクリュー」及び「回転」は、本件特許発明1における「可動部」及び「移動」に相当するので、前者におけるスクリュー回転用の「サーボモータ」は、後者における「可動部を移動させる駆動部」に相当する。したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、「射出成形機」が「可動部を移動させる駆動部」を有する点で一致する。c 甲1発明では、射出、保圧時においてスクリューによって圧縮された溶融樹脂がシリンダーと前記スクリューによって形成されるスパイラル状の溝に沿って逆流することによって前記スクリューに生じる計量時と逆方向の回転トルクが、駆動プーリ、ベルト及びモータプーリを介してサーボモータのモータ軸に伝播され前記サーボモータに回転変位を生じ、前記サーボモータに装着されたパルスコーダがこの回転変位を検出する。そうすると、前記パルスコーダは、サーボモータの回転変位を検出することによって、間接的に、射出、保圧時に前記スクリューに生じる計量時と逆方向の回転トルクを検出しているから、甲1発明における「射出、保圧時にスクリューに作用する回転トルクを検出するトルク検出手段」である。したがって、甲1発明における「射出成形機」は「トルク検出手段(検出部)」であるパルスコーダを有するといえる。他方、本件特許発明1における「射出成形機」は「駆動部の駆動力を検出する駆動力検出部」を有するから、本件特許発明1と甲1発明とは、「射出成形機」が「検出部」を有する点で共通する。」
そこで、上記主張について検討する。
本件特許発明1には、「前記可動部を移動させる駆動部」が特定されているところ、その「移動させる」の技術的意味について検討するに、本件特許の明細書には、その技術的意味について特段の定義付けはされておらず、当業者が通常使用する用語の意味として解釈するのが相当である。そこで、辞書を参酌するに、「移動」とは、「存在する位置を変えること」の意味(出典:新明解国語辞典第五版 第86頁,1997年11月3日第一刷発行,発行者 株式会社三省堂)であるから、「前記可動部を移動させる駆動部」とは、「前記可動部を『存在する位置を変え』させる駆動部」と解釈できる。一方、特許異議申立人が、本件特許発明1の「前記可動部を移動させる駆動部」に相当するとした甲1発明の「サーボモータ」は、スクリューを回転させるものである。ここで、「回転」とは、「物体が一つの軸や点を中心にして回ること」を意味する。そして、上記(1)オの摘記事項を鑑みれば、甲1発明に記載のスクリューは、「回転」によってはその位置を変えない。
そうすると、甲1発明のスクリュー回転用の「サーボモータ」は、本件特許発明1の「前記可動部を移動させる駆動部」に相当しない。さらに、甲1発明の「パルスコーダ」も本件特許発明1の「前記駆動部の駆動力を検出する駆動力検出部」に相当しないことも明らかである。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ 本件特許発明1についての小括
本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5) 本件特許発明5について
上記(4)で示したとおり、本件特許発明1が、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明1の特定事項をすべて有する本件特許発明5についても同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6) 特許異議申立理由のまとめ
したがって、本件特許発明1及び5は甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとする申立理由には理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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