特許異議申立
2021-700051
地盤改良材、及び、改良土
- 審判番号
- 2021-700051
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-071989
- 登録番号
- 6734684
- 請求日
- 2021年01月15日
- 審決日
- 2022年04月05日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友大阪セメント株式会社
- 【権利者代理人】藤本 昇
- 【権利者代理人】中谷 寛昭
- 【異議申立人】志方 志乃
- 【異議申立人】浜 俊彦
- 審判長/審判官
- 審判長 蔵野 雅昭
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P1651.121-YAA(C09K) / P1651.536-YAA(C09K) / P1651.537-YAA(C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6734684号発明「地盤改良材、及び、改良土」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6734684号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第6734684号の請求項1-3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6734684号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年3月31日の出願であって、令和2年7月14日にその特許権の設定登録がされ、同年8月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~3に係る特許に対し、令和3年1月15日に特許異議申立人志方志乃(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年2月4日に特許異議申立人浜俊彦(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年4月28日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年7月12日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月28日付けで申立人A及び申立人Bに通知し、それに対して、申立人Aは、その指定期間内である同年9月1日に意見書を提出し、申立人Bは、その指定期間内である同年8月27日に意見書を提出し、当審は、令和3年10月27日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、当審は同年12月5日に特許権者との面接を行い、特許権者は、取消理由(決定の予告)の指定期間内である同年12月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、令和4年1月6日付けで申立人A及び申立人Bに通知し、それに対して、申立人Aは何ら応答せず、申立人Bは、その指定期間内である同年2月10日に意見書を提出した。
なお、令和3年7月12日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「CaO:45.0~57.0質量%」と記載されているのを、「CaO:50.6~57.0質量%」に訂正し、「SiO2:19.0~30.0質量%」と記載されているのを、「SiO2:21.8~25.7質量%」に訂正し、「Al2O3:6.0~12.0質量%」と記載されているのを、「Al2O3:7.7~9.7質量%」と訂正し、「Fe2O3:1.2~2.0質量%」と記載されているのを、「Fe2O3:1.2~1.6質量%」と訂正し、「MgO:1.7~3.2質量%」と記載されているのを、「MgO:2.2~3.2質量%」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2,3も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~3について、請求項2,3はそれぞれ請求項1を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「CaO」の含有量が「45.0~57.0質量%」であることを特定し、「SiO2」の含有量が「19.0~30.0質量%」であることを特定し、「Al2O3」の含有量が「6.0~12.0質量%」であることを特定し、「Fe2O3」の含有量が「1.2~2.0質量%」であることを特定し、「MgO」の含有量が「1.7~3.2質量%」であることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「CaO:50.6~57.0質量%」、「SiO2:21.8~25.7質量%」、「Al2O3:7.7~9.7質量%」、「Fe2O3:1.2~1.6質量%」及び「MgO:2.2~3.2質量%」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「CaO」、「SiO2」、「Al2O3」、「Fe2O3」及び「MgO」の含有量をさらに限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
同様に、訂正後の請求項2,3は、訂正後の請求項1における「CaO:50.6~57.0質量%」、「SiO2:21.8~25.7質量%」、「Al2O3:7.7~9.7質量%」、「Fe2O3:1.2~1.6質量%」及び「MgO:2.2~3.2質量%」との記載を引用することにより、訂正後の請求項2,3に係る発明における「CaO」、「SiO2」、「Al2O3」、「Fe2O3」及び「MgO」の含有量をさらに限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「CaO」、「SiO2」、「Al2O3」、「Fe2O3」及び「MgO」の含有量をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
なお、請求項1を引用する訂正後の請求項2,3についても同様の理由により、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、明細書の段落【0018】及び【表2】の記載を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6734684号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~3に係る発明は、令和3年7月12日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明3」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
セメント、高炉スラグ、及び、石膏を含む地盤改良材であって、
前記セメント、前記高炉スラグ、及び、前記石膏は、合計を100質量%とした際に、CaO、SiO2、Al2O3、SO3、MnO、Fe2O3、MgOそれぞれを下記に示す合計含有量で含有する、地盤改良材。
CaO:50.6~57.0質量%
SiO2:21.8~25.7質量%
Al2O3:7.7~9.7質量%
SO3:4.7~11.0質量%
MnO:0.05~0.08質量%
Fe2O3:1.2~1.6質量%
MgO:2.2~3.2質量%
【請求項2】
改良土を作製するために水及び土とともに混合されて用いられ、
前記土の乾燥質量に対する、前記水及び前記土に含まれる水の合計質量の比が、0.4以上である、請求項1に記載の地盤改良材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地盤改良材、土、及び、水を含有する、改良土。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 登録時の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和3年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(新規性):本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性):本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証の刊行物に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
申立人Aが提示した甲第1号証の刊行物:岸 清、「人工軟岩材料の開発」、土木学会諭文集、1995、No.522/VI-28、pp45-49
理由3(実施可能要件):本件特許の請求項1~3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、上記の請求項に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件明細書には[実施例]の記載があるものの、段落[0032]には「地盤改良材は、セメント、高炉スラグ、及び、石膏を混合することにより作製した。セメント、高炉スラグ、及び、石膏の配合割合を調整することで、地盤改良材の各化学成分の含有割合を調整した。」と記載されているに過ぎず、これら実施例の構成材料の配合割合は不明であるし、使用したセメントの種類及び鉱物組成、高炉スラグの組成、及び石膏の種類なども一切不明である。特に、MnOの含有量を0.05~0.08質量%と微量で、かつ、ごく狭い範囲とするためのセメント、高炉スラグ、及び、石膏の配合割合等の指針等は全く記載されていない。
したがって、当該分野に属する当業者が本件特許明細書に基づいて地盤改良材を製浩しようとしても、どのような化学成分を含む構成材料を使用すればよいか不明であるし、構成材料をどのような比率で配合すればよいかも不明であり、本件特許発明1に特定されるそれぞれの成分をそれぞれの範囲で含有するもの、特に、MnOの含有量を0.05~0.08質量%の狭い範囲で含有するものを実施するにあたり、セメント、高炉スラグ、及び、石膏を無数に配合し、それぞれの成分を測定し、本件特許発明1に含まれるか否かを判定することとなる。このため、上記実施例及び段落[0032]の記載から、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができるとはいえない。
そうすると、当該分野に属する当業者であっても本件特許明細書の記載に基づいて本件請求項1、2に係る地盤改良材の実施をすることができない。また、この地盤改良材を含む本件請求項3に係る改良土について当業者が実施をすることができない。
以上述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、地盤改良材の分野に属する当業者が本件特許発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、実施可能要件を満たしていない。
2 令和3年7月12日になされた訂正の請求により訂正された請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和3年10月27日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
理由3(実施可能要件):本件特許の請求項1~3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、上記の請求項に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(1)実施例の記載について
本件明細書には本件発明の地盤改良材の製造方法について、[実施例]の記載(段落[0029]~[0037])があるものの、具体的には「地盤改良材は、セメント、高炉スラグ、及び、石膏を混合することにより作製した。セメント、高炉スラグ、及び、石膏の配合割合を調整することで、地盤改良材の各化学成分の含有割合を調整した。」(段落[0032])と記載されているに過ぎず、これら実施例における具体的な配合割合は不明であるし、使用したセメント、高炉スラグ及び石膏の種類(商品名や入手先)及び鉱物組成なども一切不明である(明らかにされていない)。
したがって、実施例の記載を参考にしてセメント、高炉スラグ、及び、石膏種類を選択・決定するとともにその配合割合を調整する方法を理解することはできないし、実施例自体を再現することもできない。
(2)その他の記載及び技術常識等について
本件発明の地盤改良材の製造方法は、CaO、SiO2、Al2O3、SO3、MnO、Fe2O3、及び、MgOの7つの成分の含有割合をいずれも本件発明1に係る所定の範囲に調整することができるものであることを要するにもかかわらず、配合割合を調整することができるのはわずか3種類の原料(セメント、高炉スラグ、及び、石膏)に限られているから、少なくとも1種類の原料(例えばセメント)については、その配合量を調整することで、上記7つの成分のうちの複数の含有割合を同時に調整することができるものであることを要すると認められる。しかしながら、そのようなことが可能な原料を選定する方法について発明の詳細な説明には何も説明が記載されていないし、そもそもそのようなことが可能な原料が実在するか否かも不明であると認められる。
また、発明の詳細な説明に実施例や一般的な説明が一切記載されていなくても、そのようなことが可能な原料が実在し、かつ、入手可能であると理解できる(実施可能である)といえる技術常識もない。
なお、上述のとおり、実施例はその再現すらできないものであるから、当該原料が実在することの証明にはならない。
そうすると、上記7つの成分の含有割合をいずれも本件発明に係る所定の範囲にすることができる原料(その配合割合も含む)が実在するのか否かすら不明のまま、3種類の原料(セメント、高炉スラグ、及び、石膏)の配合量をやみくもに調整し続けたり、原料の種類をやみくもに変更し続けるしかないから、当業者が過度の試行錯誤を要するものであると認められる。
第5 前記第4における新規性・進歩性についての判断
1 甲号証の記載について
(1)申立人Aが提示した甲第1号証(以下、「甲1」という。)の記載事項
1a「固化材としては,強度,剛性等所要の物性を比較的早期に発現させ,長期にわたって安定していることが要求されることから,粘性土を固化させる地盤改良用固化材に関する既往の研究成果を参考にして,クリンカー,高炉水砕スラグ及び石膏の三者を混合した新しい固化材(表-1)を開発した」(第45ページ右欄第8~13行)
1b
「
[図:0001386101000001.jpg]
」(第46ページ表-1)
2 甲1に記載された発明
甲1の第45ページ右欄(1a)及び第46頁の表-1(1b)には「クリンカー62質量%、高炉水砕スラグ20質量%及び石膏18質量%の三者を混合した固化材であって、
CaO、SiO2、Al2O3、SO3、Fe2O3、MgO、その他それぞれを下記に示す含有量で含有する、地盤改良用固化材。
CaO:53.6質量%
SiO2:20.4質量%
Al2O3:6.4質量%
SO3:9.4質量%
Fe2O3:2.0質量%
MgO:2.0質量%
その他:6.2重量%」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1a、1b参照)。
3 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲1発明の対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「クリンカー」、「高炉水砕スラグ」及び「石膏」、並びに「地盤改良用固化材」の各々は、クリンカーがセメントの原料であって、クリンカーに適量(2~3%)の石膏を加え粉砕してセメントができあがることを参酌するに、本件特許発明1の「セメント」、「高炉スラグ」及び「石膏」、並びに「地盤改良材」の各々に相当する。
甲1発明の「クリンカー、高炉水砕スラグ及び石膏の三者を混合した固化剤であって、CaO、SiO2、Al2O3、SO3、Fe2O3、MgO・・・それぞれを下記に示す含有量で含有する、地盤改良用固化材」は、本件特許発明1の「前記セメント、前記高炉スラグ、及び、前記石膏は、合計を100質量%とした際に、CaO、SiO2、Al2O3、SO3、・・・Fe2O3、MgOそれぞれを下記に示す合計含有量で含有する、地盤改良材。」に相当する。
甲1発明の「CaO:53.6質量%」、「SO3:9.4質量%」は、本件特許発明1の「CaO:50.6~57.0質量%」、「SO3:4.7~11.0質量%」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「セメント、高炉スラグ、及び、石膏を含む地盤改良材であって、
前記セメント、前記高炉スラグ、及び、前記石膏は、合計を100質量%とした際に、CaO、SiO2、Al2O3、SO3、Fe2O3、MgOそれぞれを下記に示す合計含有量で含有する、地盤改良材。
CaO:45.0~57.0質量%
SO3:4.7~11.0質量%」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1はMnO:0.05~0.08質量%含有するのに対し、甲1発明はその他:6.2重量%含有する点。
<相違点2>
本件特許発明1は、SiO2:21.8~25.7質量%、Al2O3:7.7~9.7質量%、Fe2O3:1.2~1.6質量%、MgO:2.2~3.2質量%含有するのに対し、甲1発明は、SiO2:20.4質量%、Al2O3:6.4質量%、Fe2O3:2.0質量%、MgO:2.0質量%含有する点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点2>について検討する。
<相違点2>は実質的な相違点である。
ここで、甲1には、甲1発明をSiO2:21.8~25.7質量%、Al2O3:7.7~9.7質量%、Fe2O3:1.2~1.6質量%、MgO:2.2~3.2質量%含有するものとすることについて示唆もない。
そして、本件特許明細書【表2】~【表4】からみて、本件特許発明1に含まれる地盤改良材2、5、6、8を用いた改良土は、SiO2、Al2O3、Fe2O3、MgOの含有率の点で本件特許発明1の範囲を外れる地盤改良材3、7及び、Fe2O3、MgOの含有率の点で本件特許発明1の範囲を外れる地盤改良材9を用いた改良土と比較して、強度が優れているといえる。
したがって、上記<相違点2>に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は甲1に記載された発明ではなく、また、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)本件特許発明2、3
本件特許発明2、3は、「SiO2:21.8~25.7質量%、Al2O3:7.7~9.7質量%、Fe2O3:1.2~1.6質量%、MgO:2.2~3.2質量%」である点を発明特定事項に備えているところ、これは上記<相違点2>に係る本件特許発明1の発明特定事項と実質的に同等であり、本件特許発明2、3は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
第6 前記第4における実施可能要件についての判断
(1)判断
特許権者は、令和3年12月27日付けの意見書において、本件明細書の実施例に記載された地盤改良材2,5,6,8では、セメントとして、住友大阪セメント社製の早強ポルトランドセメント(商品名)を使用し、高炉スラグとして、デイ・シイ社製のセラメントA(商品名)を使用し、石膏として、タイ産天然無水石膏を使用したことを、明らかにし、使用したセメント、高炉スラグ、及び、石膏の化学組成を下記表Aのように、また、各地盤改良材におけるセメント、高炉スラグ、及び、石膏の配合割合を下記表Bのように示している。
[図:0001386101000002.jpg]
[図:0001386101000003.jpg]
したがって、本件明細書の[実施例]に記載された地盤改良材2,5,6,8は、再現可能なものであることがわかる。
なお、本件明細書には、実施例に係る地盤改良材2,5,6,8で用いたセメントの商品名とその配合割合、高炉スラグの商品名とその配合割合、及び、石膏の商品名とその配合割合について何も記載されていなかったが、これらを適当に選択した場合には、CaO、SiO2、Al2O3、SO3、MnO、Fe2O3、MgOの7つの成分の含有割合が、4つの具体的な態様(地盤改良材2,5,6,8)のいずれにおいても完全に一致するようなことは通常は起こりえない(起こる確率が非常に低い)と認められる。そうすると、実施例に係る地盤改良材2,5,6,8で用いたセメントの商品名とその配合割合は、上記のとおりであったと推定できる。また、上記意見書の釈明は、段落【0032】の記載とも整合するものであり、したがって、本件明細書に記載されていた事項の範囲内のものであると認められる。
次に、上記意見書によれば、セメント、高炉スラグ、及び、石膏の配合割合については、まず、セメント及び高炉スラグの配合割合について、従来、セメントからの六価クロム溶出を抑制し、かつ、強度を確保する観点から、高炉スラグが配合された高炉セメントB種(JIS R 5211:2009、高炉スラグの配合割合:30超~50質量%)が広く用いられており、通常、当業者は、この高炉セメントB種の配合比を基準に、セメント及び高炉スラグの配合比を決定している。
また、上記意見書によれば、石膏の配合割合について、改良土に含まれる水は、エトリンガイト水和物(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)に固定化されるため、従来、エトリンガイト水和物の生成量が多くなるよう、石膏を含有させている。しかしながら、エトリンガイト水和物は膨張性を有し、過剰に生成すると改良体の膨張を引き起こすため、一般的に、石膏は、15%以下となるように配合される。
このように、3種類の原料(セメント、高炉スラグ、及び、石膏)の配合割合については、当業者の技術常識として概ね知られた範囲があって、その範囲内で調整することとなるため、本件特許発明1を得るために、3種類の原料の配合割合をやみくもに調整する必要はない(調整することはできない)といえる。
さらに、上記意見書において、セメントの化学組成・配合割合については、本件明細書の実施例に記載された地盤改良材2,5,6,8では、セメントの一例として、早強ポルトランドセメントを使用しおり、各社の早強ポルトランドセメントについて、JIS R5204(センメトの蛍光X線分析)に従って、7種の化学組成を分析した結果を下記表Cに示している。
[図:0001386101000004.jpg]
表Cから明らかなように、早強ポルトランドセメントの化学組成は、当業者の技術常識として概ね近い値になることが知られており、また、表Cに示す住友大阪セメント社製(2018年,2021年)の「早強ポルトランドセメント」の化学組成は、表Aに示す出願時の「早強ポルトランドセメント」の化学組成と概ね近い値になることから、同じ「早強ポルトランドセメント」であれば化学組成が経時変化することなく、概ね近い化学組成を有するといえる。
したがって、セメントとして、住友大阪セメント社製の早強ポルトランドセメント(商品名)とは異なる商品を使用した場合においても、概ね、住友大阪セメント社製の早強ポルトランドセメント(商品名)と同様の配合割合とすることで、所定の化学組成となると推定できるから、本件特許発明1を得るために、セメントの種類をやみくもに変更する必要はないといえる。
そして、令和3年7月12日付の意見書で述べたように、「Fe2O3」の大半がセメント由来となるため、「Fe2O3:1.2~1.6質量%」となるように、セメントの配合割合を決定すればよいことがわかる。
同様に、石膏の化学組成・配合割合については、本件明細書の実施例に記載された地盤改良材2,5,6,8では、石膏の一例として、無水石膏を使用しています。無水石膏の化学組成については、例えば、乙第2号証(Cement Science and Concrete Technology, 2011, No.65, p.168-175)のTable 1中の「AH」
[図:0001386101000005.jpg]
乙第5号証(「高炉スラグ高含有セメントの水和反応解析」(セメント・コンクリート諭文集、63巻(2009)、1号、p.22-27)のTable 1中の「CS」
[図:0001386101000006.jpg]
乙第6号証(「フライアッシュ混合セメントの耐硫酸塩性に及ぼすフライアッシュの特性とSO3量および石灰石微粉末の効果」(セメント・コンクリート論文集、66巻(2012)、1号、p.414-421)のTable 1中の「Anhydrite」
[図:0001386101000007.jpg]
から明らかなように、当業者の技術常識として概ね近い値になることが知られている。
したがって、石膏として、タイ産天然無水石膏とは異なる商品を使用した場合においても、概ね、タイ産天然無水石膏と同様の配合割合とすることで、所定の化学組成となると推定できるから、石膏の種類についても、本件特許発明1を得るために、やみくもに変更する必要はないといえる。
そして、令和3年7月12日付の意見書で述べたように、「SO3」の大半が石膏由来となるため、「SO3:4.7~11.0質量%」となるように、石膏の配合割合を決定すればよいこともわかる。
更に、令和3年12月27日付の意見書によれば、高炉スラグの化学組成・配合割合については、当業者であれば、各社の高炉スラグの化学組成を測定していて、その化学組成を予め把握しており、これらの高炉スラグの中から、例えば、乙第7号証(「人工軽量骨材による高炉セメントコンクリートの線膨張係数制御の検討」(セメント・コンクリート論文集、63巻(2009)、第1号、p.107-112)のTable 2中の「BFS」、
[図:0001386101000008.jpg]
乙第8号証(「高炉スラグ微粉末を用いたセメント硬化体の水和圧曲線」(セメント・コンク リート論文集、64巻(2010) 1号、p.107-112)のTable 2中の「BB」
[図:0001386101000009.jpg]
乙第9号証(「高炉スラグ高含有セメントの 水和と強度に及ぼす高炉スラグ の化学組成の影 響」(セメント・コンクリート論文集、74巻(2020) 1号、p.15-20)のTable 2中の「(1)-1」、「(1)-2」、「(1)-3」、「(3)-2」、「(4)-1」、「(4)-2」、「(4)-3」(当審注:(数字)には○の中に数字を示す。)
[図:0001386101000010.jpg]
に示される「MnO」が0.12~0.18質量%程度の比較的少ない高炉スラグを用いて、化学組成が本件特許発明1の範囲を満たすように、高炉スラグの配合割合を決定することがわかる。
したがって、高炉スラグとして、デイ・シイ社製のセラメントA(商品名)とは異なる商品を使用した場合においても、概ね、デイ・シイ社製のセラメントA(商品名)と同様の配合割合とすることで、所定の化学組成となると推定できるから、高炉スラグの種類についても、本件特許発明1を得るために、やみくもに変更する必要はないといえる。
以上より、本件特許発明1を得るために、3種類の原料(セメント、高炉スラグ、及び、石膏)の種類をやみくもに変更する必要はなく、これら3種類の原料の配合割合についても、当業者の技術常識として概ね知られた範囲があるため、やみくもに調整する必要はないといえる。
また、3種類の原料の種類及び配合割合を上述の方法で決定することにより、7つの成分の含有量をいずれも本件特許発明1で規定する所定の範囲に調整することができるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1~3について、明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が実施し得る程度に記載されたものであるといえる。
(2)申立人Bの主張について
申立人Bは、令和4年2月1日付けの上記申立人Bによる意見書において、概ね、以下のとおり主張する。
本件明細書の[実施例]の記載を参考にしても、実施例に係る地盤改良材の各成分の配合割合の調整方法を当業者であっても理解できないし、実施例自体を再現することもできない。
また、本件明細書の[発明を実施するための形態]の開示を参考にしても、段落 [0018]に各化学成分(MnO等)の含有量の数値範囲が記載されているに過ぎず、セメント、高炉スラグ及び石膏の配合割合等の指針は全く記載されていない。また、段落[0020]、[0021]にセメント、高炉スラグ、及び、石膏の種類が列挙されているに過ぎず、これらの鉱物組成についても全く記載されていない。したがって、本件明細書の[発明を実施するための形態]の開示を参考にしても、本件特許発明を実施することができない。
特許権者は、令和3年12月27日付け意見書第2頁から第3頁にかけて、本件明細書の[実施例]に記載の「地盤改良材2,5,6,8」の原料及び配合割合について、この時点で初めて開示している。
本件明細書に記載の発明の実施についての説明には以下の事項は一切記載されておらず、本件の出願時の技術常識を考慮しても、これらの事項について把握することは当業者であっても明らかに不可能である。
・「[実施例]に記載された地盤改良材2,5,6,8では、セメントとして、住友化学セメント社製の早強ポルトランドセメント(商品名)を使用し、高炉スラグとして、デイ・シイ 社製のセラメントA( 商品名)を使用し、石膏として、タイ産天然無水石膏を使用したこと」
・[表A]に記載の各材料の化学組成
・[表B]に記載の各材料の配合割合
なお、特許権者は早強ポルトランドセメントの化学組成を[表C」に示し、早強ポルトランドセメントであれば化学組成が概ね近い値であることを説明している。しかし、本件明細書の段落[0020]には「前記セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメント、該ポルトランドセメントに、フライアッシュ、シリカ等を混合してなる混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントなどが挙げられる」と記載されており、この記載から[実施例]においてセメントとして「早強ポルトランドセメント」を使用したことを読み取ることもできない。
また、セメントの化学組成が概ね近い値であるとは言えない。すなわち、今回提出した甲第5号証(大塚ら、「高炉スラグおよび鉄鋼スラグを原料に用いたクリンカーの鉱物組成に関する検討」、第66回セメント技術大会講演要旨、般社団法人セメント協会、2012年4月30日、p.154-155)の表1
[図:0001386101000011.jpg]
に記載されているように、クリンカーの化学成分の量は変動する(ばらつきを有する)ものである。特に、クリンカーに含まれる微量成分(例えば、MnO及びMgO)の量はクリンカーの原料や製造プロセスによって大きく変動する。甲第5号証の表1にはMnO量の範囲が「0.07~0.21%」であることが記載され、MgO量の範囲が「0.94~2.06%」であることが記載されている。クリンカーに含まれるこれらの化学成分の量が変動すれば、クリンカーに石膏を添加して製造されるセメントの化学成分の量も変動する。したがって、本件特許発明を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要するものである。
特許権者は実施例において「石膏として、タイ産天然無水石膏を使用」したこと、その組成がCaO:40.46%、SO3:57.39%であったこと([表A]参照)を同意見書で開示しているものの、[表A]では「CaO」及び「SO3」以外の化学成分の量は「-」で表記されており、これらの化学成分を含まないのか、未測定であるのか不明である。
一方、特許権者が提出した乙号証に記載の無水石膏の化学組成は以下のとおりであり、「CaO」及び「SO3」以外の成分も含有している。
・乙第2号証のTable 1の「AH」
[図:0001386101000012.jpg]
・乙第5号証のTable 1の「CS」
[図:0001386101000013.jpg]
・乙第6号証のTable 1の「Anhydrite」
[図:0001386101000014.jpg]
以上のことからすると、実施例において使用した石膏が「タイ産天然無水石膏」であったとしても、例えば、タイの産地によって化学組成は変わる可能性が十分に高く、Al2O3やFe2O3、MgO等も含み得ることから、本件特許発明を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要するものであることに何ら変わりはない。
(3)申立人Bの主張についての検討
確かに、本件明細書の[実施例]及び[発明を実施するための形態]の開示のみからは、本件特許発明を実施することができないかもしれない。
しかし、上記の判断のとおり、早強ポルトランドセメントの化学組成は、当業者の技術常識として概ね近い値になることが知られており、石膏の化学組成は、当業者の技術常識として概ね近い値になることが知られており、「MnO」が0.12~0.18質量%程度の比較的少ない高炉スラグも知られているから、本件特許発明1を得るために、3種類の原料(セメント、高炉スラグ、及び、石膏)の種類をやみくもに変更する必要はなく、これら3種類の原料の配合割合についても、当業者の技術常識として概ね知られた範囲があるため、本件特許発明を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要するものとはいえない。
また、確かに、本件明細書の段落[0020]には「前記セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメント、該ポルトランドセメントに、フライアッシュ、シリカ等を混合してなる混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントなどが挙げられる」と記載されているものの、この記載及び上記早強ポルトランドセメントの化学組成に関する技術常識から、[実施例]においてセメントとして「早強ポルトランドセメント」を使用した可能性は読み取ることができるといえる。
また、確かに、クリンカーの化学成分の量は変動する(ばらつきを有する)ものであり、特に、クリンカーに含まれる微量成分(例えば、MnO及びMgO)の量はクリンカーの原料や製造プロセスによって変動し、甲第5号証の表1にはMnO量の範囲が「0.07~0.21%」であることが記載され、MgO量の範囲が「0.94~2.06%」であることが記載されているが、本件特許発明1のようなMnOの含有量が少ない地盤改良材の原料として、クリンカーを用いるのではなく、MnOの含有量がセメントを直接使用すればよく、そのようなセメントとして、上記(1)のとおり、令和3年12月27日付けの特許権者による意見書の[表C]のものが知られており、そのMgOの含有量も当業者の技術常識として概ね近い値になることが知られているから、本件特許発明を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要するものであるとはいえない。
そして、確かに、特許権者が提出した乙号証に記載の無水石膏の化学組成は以下のとおりであり、「CaO」及び「SO3」以外の成分も含有しており、タイの産地によって化学組成は変わる可能性が十分に高く、Al2O3やFe2O3、MgO等も含み得るかもしれないが、特許権者による令和3年12月27日付けの意見書の[表A]のタイ産天然無水石膏は、乙第2号証のTable 1の「AH」、乙第5号証のTable 1の「CS」及び乙第6号証のTable 1の「Anhydrite」と同様に含まれるAl2O3やFe2O3、MgO等が微量であるから、石膏のAl2O3やFe2O3、MgOが、3種類の原料(セメント、高炉スラグ、及び、石膏)を用いた地盤改良材のAl2O3やFe2O3、MgOの含有量に影響を与えるとはいえず、本件特許発明を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要するものであるとはいえない。
したがって、申立人Bの主張はいずれも採用できない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人A及び申立人Bが申立てた取消理由のうち令和3年4月28日付けの取消理由通知及び同年10月27日付けの取消理由通知(決定の予告)のいずれにおいても採用しなかった特許異議申立理由は申立人Bが申立てた取消理由のうち特許異議申立理由ア(特許法第36条第6甲第1号)である下記の1である。
申立人Aが申立てた特許異議申立理由(特許法第29条2項)は、令和3年4月28日付けの取消理由において採用されており、申立人Bが申立てた特許異議申立理由のうち特許異議申立理由イ(特許法第36条第4項第1号)は令和3年4月28日付けの取消理由通知及び同年10月27日付けの取消理由通知(決定の予告)において採用されている。
1 申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立理由
理由:(サポート要件)本件特許の請求項1~3に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
申立人Bにより提出された甲第1号証(セメント系固化材による地盤改良マニュアル[第4版]、社団法人セメント協会、2012年10月10日、p.28-28,36-37)の第36ページ図-2.8(b)、第27ページ図-2.1、図-2.2及び図-2.3、第28ページ図-2.4、第26ページ表-2.3、申立人Bが提出した甲第2号証(改訂2版 セメントの材料化学、大日本図書株式会社、1991年9月25日、p.114-115)の第115ページ表3/17から、セメントに含まれるCaOとSiO2の存在形態だけでも、地盤改良材はその強度発現性に異なる影響を受けることが当業界における技術常識であり、かかる技術常識からすると、地盤改良材において各化学成分がどのような形態で存在しているかが一切示されていない地盤改良材の「改良土の初期強度」の良否について、当業者であっても把握することは到底できず、申立人Bが提出した甲第1号証の第36ページ図2-2.8(b)、第26ページ表-2.3、第27ページ図-2.1、申立人Bが提出した甲第3号証(新セメント・コンクリート用混和材料、技術書院、平成19年1月15日、p.32)の第32ページ、申立人Bが提出した甲第4号証(C3クリップボード[セメント化学編]、社団法人セメント協会、2008年1月、p.115-116)の第115ページ左欄から、セメントと高炉スラグはいずれも、化学成分としてCaO、SiO2、Al2O3含むにも拘わらず、両者の作用効果は互いに異なるものであり、このように、地盤改良材の構成材料はこれらが含む化学成分が共通していても、構成材料が強度発現性に異なる影署を与えることが当業界における技術常識であり、かかる技術常識からすると、どの構成材料がどの化学成分を含有しているのか、また、それらがどの程度の比率で存在しているのかが一切示されていない地盤改良材の「改良土の初期強度」の良否について、当業者であっても把握することは到底できず、これに加え、各化学成分がどの構成材料から、どのような態様で地盤改良材に持ち込まれたのか本件請求項1~3には一切示されていないし、当業界の技術常識に照らしても推測することすらできないから、本件特許発明1~3は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものではないから、サポート要件を満たしていない。
2 取消理由通知において採用しなかった申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立理由についての判断
本件特許発明1~3の課題は、本件特許明細書の【0007】の記載からみて、改良土の初期強度を高くすることができる地盤改良材、及び、該地盤改良材を備える改良土を提供することにあると認められる。
そして、本件特許明細書の【表2】~【表4】からみて、本件特許発明1~3に含まれる地盤改良材2、5、6、8は、改良土の初期強度を高くすることができる地盤改良材であり、該地盤改良材を備える改良土を提供できることは明らかである。
そうすると、本件特許発明1~3は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要件を満たしていないとはいえない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、令和3年4月28日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和3年10月27日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700051