特許訂正審判
2018-390184
転動部材
- 審判番号
- 2018-390184
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2006-148497
- 登録番号
- 特許第5372316号(P5372316)
- 請求日
- 2018年11月28日
- 審決日
- 2019年02月18日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本精工 株式会社
- 【請求人代理人】松山 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 板谷 一弘
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 長谷山 健
- 分類
- P141 .841-Y (C22C) / P141 .851-Y (C22C) / P141 .852-Y (C22C) / P141 .853-Y (C22C) / P141 .855-Y (C22C) / P141 .856-Y (C22C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項2号特許法126条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5372316号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5372316号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第5372316号(以下、「本件特許」という。)は、平成18年5月29日(優先権主張 平成18年5月19日)を出願日とする特願2006-148497号の請求項1に係る発明について平成25年9月27日に特許権の設定登録がされたものであり、その後、平成30年11月28日付けで本件訂正審判の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正事項
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は「特許第5372316号の明細書、特許請求の範囲及び図面を、本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
2 訂正事項
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~13のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示すために当審が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「内方部材及び外方部材及び転動体の少なくとも一つの表面層に、浸炭窒化処理又は窒化処理によるSi・Mn系窒化物を有し、当該表面層の窒素濃度が0.2質量%以上2質量%以下であり、且つ前記窒化物面積率が1%以上10%未満であり、且つ0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm2中の個数が102個以上であり、C:0.3質量%以上1.2質量%以下、Si:0.3質量%以上2.2質量%以下、Mn:0.3質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.5質量%以上2.0質量%以下で、且つSi/Mnが5以下であり残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を浸炭窒化焼入れ、焼き戻し処理したことを特徴とする転動部材。」という記載を
「内方部材及び外方部材及び転動体の少なくとも一つの表面層に、浸炭窒化処理又は窒化処理によるSi・Mn系窒化物を有し、当該表面層の窒素濃度が0.2質量%以上0.64質量%以下であり、且つ前記窒化物の面積率が1%以上3.56%以下であり、且つ0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm2中の個数が102個以上であり、C:0.95質量%以上1.10質量%以下、Si:0.4質量%以上0.7質量%以下、Mn:0.9質量%以上1.15質量%以下、Cr:0.9質量%以上1.20質量%以下で、且つSi/Mnが0.51以上5以下であり残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を浸炭窒化焼入れ、焼き戻し処理したことを特徴とする転動部材。」という記載に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の【0005】の「上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る転動部材は、内方部材及び外方部材及び転動体の少なくとも一つの表面層に、浸炭窒化処理又は窒化処理によるSi・Mn系窒化物を有し、当該表面層の窒素濃度が0.2質量%以上2質量%以下であり、且つ前記窒化物面積率が1%以上10%未満であり、且つ0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm2中の個数が102個以上であることを特徴とするものである。」という記載を
「上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る転動部材は、内方部材及び外方部材及び転動体の少なくとも一つの表面層に、浸炭窒化処理又は窒化処理によるSi・Mn系窒化物を有し、当該表面層の窒素濃度が0.2質量%以上0.64質量%以下であり、且つ前記窒化物の面積率が1%以上3.56%以下であり、且つ0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm2中の個数が102個以上であることを特徴とするものである。」という記載に訂正し、
明細書の【0006】の「また、C:0.3質量%以上1.2質量%以下、Si:0.3質量%以上2.2質量%以下、Mn:0.3質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.5質量%以上2.0質量%以下で、且つSi/Mnが5以下であり残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を浸炭窒化焼入れ、焼き戻し処理したことを特徴とするものである。」という記載を
「また、C:0.95質量%以上1.10質量%以下、Si:0.4質量%以上0.7質量%以下、Mn:0.9質量%以上1.15質量%以下、Cr:0.9質量%以上1.20質量%以下で、且つSi/Mnが0.51以上5以下であり残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を浸炭窒化焼入れ、焼き戻し処理したことを特徴とするものである。」という記載に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の【0007】の「本発明では、窒化物の面積率を1~10%にして」という記載を「本発明では、窒化物の面積率を1~3.56%にして」という記載に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0019】の「而して、本発明の転動部材によれば、内方部材及び外方部材及び転動体の少なくとも一つの表面層に、浸炭窒化処理又は窒化処理によるSi・Mn系窒化物を有し、当該表面層の窒素濃度が0.2質量%以上2質量%以下であり、且つSi・Mn系窒化物の面積率が1%以上10%未満であり、且つ0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm2中の個数を102個以上としたことにより、より長寿命で、耐摩耗性、耐焼き付き性に優れる。
また、C:0.3質量%以上1.2質量%以下、Si:0.3質量%以上2.2質量%以下、Mn:0.3質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.5質量%以上2.0質量%以下で、且つSi/Mnが5以下であり残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を浸炭窒化焼入れ、焼き戻し処理したことにより、より一層の長寿命、耐摩耗性、耐焼き付き性を得ることができる。」という記載を
「而して、本発明の転動部材によれば、内方部材及び外方部材及び転動体の少なくとも一つの表面層に、浸炭窒化処理又は窒化処理によるSi・Mn系窒化物を有し、当該表面層の窒素濃度が0.2質量%以上0.64質量%以下であり、且つSi・Mn系窒化物の面積率が1%以上3.56%以下であり、且つ0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm2中の個数を102個以上としたことにより、より長寿命で、耐摩耗性、耐焼き付き性に優れる。
また、C:0.95質量%以上1.10質量%以下、Si:0.4質量%以上0.7質量%以下、Mn:0.9質量%以上1.15質量%以下、Cr:0.9質量%以上1.20質量%以下で、且つSi/Mnが0.51以上5以下であり残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を浸炭窒化焼入れ、焼き戻し処理したことにより、より一層の長寿命、耐摩耗性、耐焼き付き性を得ることができる。」という記載に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の【0023】の「各試験辺」という記載を「各試験片」という記載に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の【0024】【表2】の「実施例」「鋼種1」のうち「6~9」を「参考例」に訂正する。
「【表2】
」
(7)訂正事項7
明細書の【0029】の「比較例21(SUJ2相当)」という記載を「比較例11(SUJ2相当)」という記載に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の【0030】【表4】の「実施例12」~「実施例29」を「参考例12」~「参考例29」に訂正する。
「【表4】
」
(9)訂正事項9
明細書の【0031】の「表4から明らかなように、本発明範囲の鋼を用い、窒素濃度0.2質量%以上2.0質量%以下、Si・Mn系窒化物面積率1%以上10%以下、0.05~1μmのSi・Mn系窒化物の個数が102個以上の実施例は、比較例に比べて寿命延長効果が大きい。
また、この表4中のSi/Mn比率とSi・Mn系窒化物面積率との関係を図6に示す。例えば比較例13,14は、本発明範囲の鋼を用い、更に窒素濃度を0.2質量%以上としているが、Si含有量に対してMn含有量が少ないものであり、Si・Mn系窒化物の析出量が面積率で1%以下になっている。図6から明らかなように、Si/Mnの比率を5以下にすることによって、Si・Mn系窒化物の析出を促進することができる。」という記載を
「表4から明らかなように、本発明範囲の鋼を用い、窒素濃度0.35質量%、Si・Mn系窒化物面積率0.51%、0.05~1μmのSi・Mn系窒化物の個数が138個の実施例11は、比較例に比べて寿命延長効果が大きい。
また、この表4中のSi/Mn比率とSi・Mn系窒化物面積率との関係を図6に示す。例えば比較例13,14は、窒素濃度を0.2質量%以上としているが、Si含有量に対してMn含有量が少ないものであり、Si・Mn系窒化物の析出量が面積率で1%以下になっている。図6から明らかなように、Si/Mnの比率を0.51以上5以下にすることによって、Si・Mn系窒化物の析出を促進することができる。」という記載に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の【0033】【図6】の「Si/MN比率」という記載を「Si/Mn比率」という記載に訂正する。
(11)訂正事項11
図面の【図3】の「本発明範囲」が示す「窒素濃度 %」の範囲を0.2質量%以上2質量%以下から0.2質量%以上0.64質量%以下に訂正する。
「【図3】
」
(12)訂正事項12
図面の【図4】の「本発明範囲」が示す「Si・Mn窒化物面積率 %」の範囲を1%以上10%未満から1%以上3.56%以下に訂正する。
「【図4】
」
(13)訂正事項13
図面の【図6】の「本発明範囲」が示す「Si/Mn」の範囲を5以下から0.51以上5以下に訂正する。
「【図6】
」
第3 当審の判断
1 訂正の目的の適否,新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1に係る本件訂正のうち、
(1a)「表面層の窒素濃度」の上限を「2質量%以下」から「0.64質量%以下」にする訂正、
(1b)「窒化物面積率」の上限を「10%未満」から「3.56%以下」にする訂正、
(1c)「C」(炭素)の含有量を「0.3質量%以上1.2質量%以下」から「0.95質量%以上1.10質量%以下」にする訂正、
(1d)「Si」(ケイ素)の含有量を「0.3質量%以上2.2質量%以下」から「0.4質量%以上0.7質量%以下」にする訂正、
(1e)「Mn」(マンガン)の含有量を「0.3質量%以上2.0質量%以下」から「0.9質量%以上1.15質量%以下」にする訂正、
(1f)「Cr」(クロム)の含有量を「0.5質量%以上2.0質量%以下」から「0.9質量%以上1.20質量%以下」にする訂正、及び
(1g)「Si/Mn」の範囲を「5以下」から「0.51以上5以下」にする訂正は、いずれも、本件訂正前の数値範囲をその範囲内でさらに狭い範囲に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)訂正事項1に係る本件訂正のうち、「前記窒化物面積率」という記載を「前記窒化物の面積率」という記載にする訂正は、「窒化物面積率」という記載が「前記」されていないことによる不明瞭さを解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)には、「JIS SUJ3」に該当し、成分元素の含有量は質量%で「C:1.01,Si:0.56,Mn:1.10,Cr:1.10」である「鋼種1」(【0020】【0021】【表1】)に対し、「直径65mm厚さ6mmの円板に旋削加工し、820~900℃で2~10時間、Rxガス、プロパンガス、及びアンモニアガスの混合ガス中で浸炭窒化処理後、油焼入れを施し、その後、160~270℃で2時間、焼戻し処理を施し」、その際に「処理温度、処理時間、アンモニアガス流量を変化させて、種々の窒素濃度の試験片を作成し」、「熱処理後、表面を研磨・ラッピングして鏡面仕上げした」(【0020】)ところ、「Si・Mn系窒化物の面積率、即ち析出量は、窒素濃度に比例して増大」(【0025】)し、このうち「実施例5」では、「窒素濃度:0.64質量%,Si・Mn系窒化物の面積率:3.56%」であったこと(【0024】【表2】)が記載されている。
(イ)また、本件明細書等には、「種々の鋼に対し、820~870℃で2~10時間、Rxガス、プロパンガス、及びアンモニアガスの混合ガス中で浸炭窒化処理後、油焼入れを施し、その後、160~270℃で2時間、焼戻し処理を施し」、「その際、熱処理時間、熱処理温度、アンモニアガス流量を変化させて鋼種11~27の鋼を作製し、その鋼で、JIS6206深溝玉軸受の転動体を作製し、合わせてSUJ2で軌道輪を作製し、以下の寿命試験を行った」(【0028】)ところ、成分元素の含有量(質量%)が「SUJ3中央値」の「C:1.01,Si:0.56,Mn:1.10,Cr:1.10」である「鋼種11」を用いた「実施例11」では、「Si/Mn比率」が「0.51」であったこと(【0030】【表4】)が記載されている。
(ウ)一方、本件明細書等には、「JIS SUJ3」という記載はあるが、その成分元素の含有量について明示的な記載はない。
しかし、「JIS G 4805:2008」(高炭素クロム軸受鋼鋼材)の内容が記載された下記の甲第1号証には、上記成分元素の含有量について、質量%で「C:0.95-1.10,Si:0.40-0.70,Mn:0.90-1.15,P:0.025以下,S:0.025以下,Cr:0.90-1.20,Mo:-」であること記載されており、「JIS G 4805(1990)」の内容が記載された下記の甲第2号証にも同一の記載がされている。
さらに、「JIS G 4805」は「JIS G 4805(1990)」と「JIS G 4805:2008」との間に「JIS G 4805:1999」として一度改正されているところ、この「JIS G 4805:1999」においても、「JIS SUJ3」の成分元素の含有量について、甲第1号証及び甲第2号証と同一の記載がされていることを確認できる。
したがって、本件特許の優先日(平成18年5月19日)の時点において既に「JIS SUJ3」の成分元素の含有量が、質量%で「C:0.95-1.10,Si:0.40-0.70,Mn:0.90-1.15,P:0.025以下,S:0.025以下,Cr:0.90-1.20,Mo:-」であることは、当業者の技術常識であったものと認められる。
[証拠方法]
甲第1号証:「日本工業規格 JIS G 4805:2008 高炭素クロム軸受鋼鋼材 High carbon chromium bearing steels」
(http://kikakurui.com/g4/G4805-2008-01.html)
甲第2号証:「高炭素クロム軸受鋼鋼材 - High carbon chromium bearing steels - JIS G 4805(1990)」
(http://www.forming.co.jp/database/pdf/hccbs-1.pdf)
(エ)以上によれば、訂正事項1に係る本件訂正のうち、前記(1a)及び(1b)の訂正(前記(ア))は、「JIS SUS3」に該当する「鋼種1」を用いた「実施例5」において「窒素濃度:0.64質量%,Si・Mn系窒化物の面積率:3.56%」であったことに基づくものであり、
前記(1c)~(1f)の訂正(前記(ア))は、「実施例5」の「鋼種1」及び「実施例11」の「鋼種11」が、いずれも「JIS SUS3」に該当する鋼材であること、及び「JIS SUS3」の成分元素の含有量についての前記(ウ)の技術常識に基づくものであり、
前記(1g)の訂正(前記(ア))は、「JIS SUS3」に該当する「鋼種11」を用いた「実施例11」において「Si/Mn比率」が「0.51」であったことに基づくものである。
したがって、訂正事項1に係る本件訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る本件訂正は、前記アのとおり、各発明特定事項の数値範囲をその範囲内でさらに狭い範囲に限定するとともに、記載の不明瞭さを解消するものであって、前記イのとおり、新規事項を追加するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2,3,4,11,12,13について
訂正事項2,3,4,11,12,13に係る本件訂正は、訂正事項1に係る本件訂正によって請求項1の記載が訂正されたことに伴って、本件訂正後の請求項1の記載と整合させるために、明細書の【0005】及び【0006】(訂正事項2),【0007】(訂正事項3),【0019】(訂正事項4),【図3】(訂正事項11),【図4】(訂正事項12),【図6】(訂正事項12)の記載をそれぞれ訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、訂正事項1に係る本件訂正と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定にも適合する。
(3)訂正事項5,7,10について
訂正事項5に係る本件訂正は、本件訂正前の明細書の【0023】における明らかな誤記である「各試験辺」という記載を「各試験片」という記載に訂正するものであり、訂正事項10に係る本件訂正は、本件訂正前の明細書の【0033】【図6】における明らかな誤記である「Si/MN比率」という記載を「Si/Mn比率」という記載に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また、訂正事項7に係る本件訂正は、本件訂正前の明細書の【0029】の「比較例21(SUJ2相当)」という記載を「比較例11(SUJ2相当)」という記載に訂正するものであるところ、本件訂正前の明細書には「比較例11」~「比較例15」が記載されているのみで「比較例21」は記載されておらず、上記「比較例21(SUJ2相当)」という記載は、「比較例11(SUJ2相当)」の誤記であることは明らかであるから、訂正事項7に係る本件訂正についても、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
そして、訂正事項5,7,10に係る本件訂正は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるから、特許法第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定にも適合する。
(4)訂正事項9について
訂正事項9に係る本件訂正は、訂正事項1に係る本件訂正によって請求項1の記載が訂正されたことに伴って、本件訂正前の明細書の【0031】に記載された「実施例」が「実施例11」のみとなり、「比較例13,14」の鋼が「本発明範囲の鋼」ではなくなったところ、これと整合するように上記【0031】の記載を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、訂正事項1に係る本件訂正と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定にも適合する。
(5)訂正事項6,8について
訂正事項6に係る本件訂正は、訂正事項1に係る本件訂正によって請求項1の記載が訂正されたことに伴って、本件訂正前の明細書の【0024】の【表2】に記載された「実施例1~9」のうち「実施例6~9」が「実施例」に該当しないものとなっため、これを「参考例6~9」に訂正するものであり、同様に、訂正事項6に係る本件訂正は、本件訂正前の明細書の【0030】の【表4】に記載された「実施例11~29」のうち「実施例」に該当しないものとなった「実施例12~29」を「参考例12~29」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、訂正事項1に係る本件訂正と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定にも適合する。
2 独立特許要件
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである理由は見いだせないから、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号,第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第5~7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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