2021-015264
液晶表示装置およびその製造方法
- 審判番号
- 2021-015264
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-505222外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月09日
- 審決日
- 2022年12月16日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】渡部 崇
- 分類
- P18 .121-Z (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
1 手続きの経緯
本願は、2018年(平成30年)12月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年(平成30年)1月4日 韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
24日付け応対記録)
4年11月7日付け応対記録)
2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和3年11月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、次のとおりのものである。
また、本願の願書に添付した明細書を、図面を含めて「本願明細書等」という。
「【請求項1】上部偏光子;下部偏光子;および前記上部偏光子と前記下部偏光子との間に備えられる液晶パネルを含み、前記上部偏光子および前記下部偏光子は、吸収軸が互いに平行となるように備えられ、前記上部偏光子と前記液晶パネルとの間に、直線偏光を85度~95度に回転させる波長板を含み、前記液晶パネルは、水平配向液晶モードであり、前記波長板は、2つまたは4つのλ/4波長板(quarter wave plate)を含むものであり、前記波長板が2つのλ/4波長板(quarter wave plate)を含む場合、前記2つのλ/4波長板の光軸と前記上部偏光子の吸収軸とのなす角度は40度~50度、または130度~140度であり、前記波長板が4つのλ/4波長板(quarter wave plate)を含む場合、前記4つのλ/4波長板のいずれか2つのλ/4波長板の光軸と前記上部偏光子の吸収軸とのなす角度は20度~25度であり、他の2つのλ/4波長板の光軸と前記上部偏光子の吸収軸とのなす角度は65度~70度である、液晶表示装置。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
【理由2】(進歩性)
この出願の(令和3年3月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の)請求項1ないし7に係る発明は、下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2008-26797号公報
引用文献2.国際公開第2008/018212号
引用文献3.特開2005-43913号公報
引用文献4.特開2015-226110号公報
4 引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
・引用文献1には以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「【請求項1】液晶セルと、液晶セルの視認面側に設けられた視認側偏光子と、液晶セルの視認面の反対側に設けられた反視認側偏光子と、を有し、視認側偏光子の吸収軸と反視認側偏光子の吸収軸が略平行となるように、視認側偏光子及び反視認側偏光子が設けられており、視認側偏光子と反視認側偏光子との間に、直線偏光を90±5度回転させる偏光回転層が設けられていることを特徴とする液晶パネル。【請求項2】続きを表示(全12行)視認側偏光子の吸収軸と反視認側偏光子の吸収軸の成す角が、0度±5度である請求項1に記載の液晶パネル。【請求項3】液晶セルが、ノーマリブラックモードである請求項1または2に記載の液晶パネル。【請求項4】液晶セルが、VAモードまたはIPSモードである請求項3に記載の液晶パネル。・・・【請求項17】請求項1~16のいずれかに記載の液晶パネルを有する液晶表示装置。」
「【0038】偏光回転層は、単一層で形成されていてもよいし、2層以上の複層で形成されていてもよい。また、偏光回転層は、反視認側偏光板と液晶セルの層間に設けてもよいし、視認側偏光板と液晶セルの層間に設けてもよい。なお、偏光回転層が複層で構成されている場合、そのうちの1層以上を反視認側偏光板と液晶セルの間に設け、且つ残る1層以上を視認側偏光板と液晶セルの間に設けてもよい。通常、偏光回転層は、適宜な粘着剤又は接着剤を用いて、偏光板などの液晶パネルの構成部材に貼り付けられる。【0039】直線偏光を約90度(90度±5度)回転させる偏光回転層としては、(a)1/2波長板、(b)コレステリック配向させた液晶材料を有する層などが挙げられる。偏光回転層として用いられる(a)1/2波長板は、入射光に1/2波長の位相差を生じさせる機能を有するものであり、従来から公知のもの(1/2波長板は、位相差板の一種である)を用いることができる。」
「【0042】上記1/2波長板は、単一層でもよいし、複数積層して用いることもできる。偏光回転層5として単一の1/2波長板を用いる場合には、図4に示すように、1/2波長板51の遅相軸S1と反視認側偏光板4の偏光子41の吸収軸A4の成す角θ1が、約45度となるように、1/2波長板51を配置すればよい。なお、この「約45度」とは、45度±5度(好ましくは45度±3度)を含む意味である。また、遅相軸とは、1/2波長板の面内で、屈折率が最大となる軸方向を言う。このような配置で単一層の1/2波長板を積層することにより、反視認側偏光板(または視認側偏光板)を通過した直線偏光は、その偏光面が約90度回転した直線偏光となる。但し、図4に於いて、上記角は、1/2波長板の遅相軸を視認面側から見て反時計回りに傾けた場合を図示しているが、1/2波長板の遅相軸を時計回りに傾けてもよい(図5及び図6も同様)。」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、認定の根拠となる段落を参考までに括弧内に付してある。)。
「液晶セルと、液晶セルの視認面側に設けられた視認側偏光子と、液晶セルの視認面の反対側に設けられた反視認側偏光子と、を有し、前記視認側偏光子の吸収軸と前記反視認側偏光子の吸収軸が0度±5度となるように、視認側偏光子及び反視認側偏光子が設けられており、前記視認側偏光子と前記反視認側偏光子との間に、直線偏光を90±5度回転させる偏光回転層が設けられ、(【請求項1】・【請求項2】)前記偏光回転層は、2層以上の複層で形成されていてもよく、また、前記偏光回転層は、前記視認側偏光板と前記液晶セルの層間に設けてもよく、(【0038】)、直線偏光を約90度(90度±5度)回転させる偏光回転層としては、従来から公知の位相差板の一種である1/2波長板、コレステリック配向させた液晶材料を有する層などを用いることができ、(【0039】)、前記偏光回転層として単一の1/2波長板を用いる場合には、1/2波長板の面内で、屈折率が最大となる軸方向である遅相軸と反視認側偏光板の偏光子の吸収軸の成す角が、45度±5度となるように、1/2波長板を配置すればよく(【0042】)、前記液晶セルが、ノーマリブラックモードであり、(【請求項3】)前記液晶セルが、VAモードまたはIPSモードである(【請求項4】)液晶パネルを有する液晶表示装置。(【請求項17】)」
5 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のことがいえる。
ア 引用発明の「液晶セル」、「視認側偏光子」及び「反視認側偏光子」は、本願発明1の「液晶パネル」、「上部偏光子」及び「下部偏光子」にそれぞれ相当するから、引用発明の「液晶セルと、液晶セルの視認面側に設けられた視認側偏光子と、液晶セルの視認面の反対側に設けられた反視認側偏光子と、を有」することは、本願発明1の「上部偏光子;下部偏光子;および前記上部偏光子と前記下部偏光子との間に備えられる液晶パネルを含」むことに相当する。
イ 引用発明の「視認側偏光子及び反視認側偏光子」は、「前記視認側偏光子の吸収軸と前記反視認側偏光子の吸収軸が0度±5度となるように、視認側偏光子及び反視認側偏光子が設けられて」いて、本願発明1の「平行」を含むから、本願発明1の「前記上部偏光子および前記下部偏光子は、吸収軸が互いに平行となるように備えられ」るとの構成を備える点で一致する。
ウ 引用発明の「前記視認側偏光子と前記反視認側偏光子との間に、直線偏光を90±5度回転させる偏光回転層が設けられ」、「前記偏光回転層は、前記視認側偏光板と前記液晶セルの層間に設けてもよく」、「直線偏光を約90度(90度±5度)回転させる偏光回転層としては、従来から公知の位相差板の一種である1/2波長板、コレステリック配向させた液晶材料を有する層などを用いることができ」ることは、本願発明1の「前記上部偏光子と前記液晶パネルとの間に、直線偏光を85度~95度に回転させる波長板を含」むことに相当する。
エ 引用発明の「前記偏光回転層は、2層以上の複層で形成されていてもよく」、「直線偏光を約90度(90度±5度)回転させる偏光回転層としては、従来から公知の位相差板の一種である1/2波長板、コレステリック配向させた液晶材料を有する層などを用いることができ」ることは、本願発明1の「前記波長板は、2つまたは4つのλ/4波長板を含むものであ」ることと「前記波長板を含むものであ」ることの点で一致する。
オ 引用発明の「IPSモード」は、本願発明1の「水平配向液晶モード」に相当するから、引用発明の「前記液晶セルが、IPSモードである」ことは、本願発明1の「前記液晶パネルは、水平配向液晶モードであ」ることに相当する。
カ 引用発明の「液晶表示装置」は、本願発明1の「液晶表示装置」に相当する。
キ 以上によれば、本願発明1と引用発明とは、
「上部偏光子;下部偏光子;および前記上部偏光子と前記下部偏光子との間に備えられる液晶パネルを含み、前記上部偏光子および前記下部偏光子は、吸収軸が互いに平行となるように備えられ、前記上部偏光子と前記液晶パネルとの間に、直線偏光を85度~95度に回転させる波長板を含み、前記液晶パネルは、水平配向液晶モードであり、前記波長板を含むものである、液晶表示装置。」
である点で一致するとともに下記点で相違する。
<相違点>
「複数の波長板」が、本願発明1は、「2つまたは4つのλ/4波長板を含むものであり」、「2つのλ/4波長板を含む場合、前記2つのλ/4波長板の光軸と前記上部偏光子の吸収軸とのなす角度は40度~50度、または130度~140度であり、前記波長板が4つのλ/4波長板を含む場合、前記4つのλ/4波長板のいずれか2つのλ/4波長板の光軸と前記上部偏光子の吸収軸とのなす角度は20度~25度であり、他の2つのλ/4波長板の光軸と前記上部偏光子の吸収軸とのなす角度は65度~70度である」のに対して、引用発明は、1/2波長板などを用いることができるとされるものの、このような2つまたは4つのλ/4波長板を含むとは特定されない点。
(2)判断
相違点について
ア 1枚の1/2波長板と、2枚の1/4波長板をその遅相軸が一致するように貼り合わせたものとが、光学的に等価であることは技術常識であり、1/2波長板の代わりに2枚の1/4波長板を用いることは従来周知の技術的事項でもある(例えば、「本液晶表示装置10の視野角制御パネル2においては、図3の設定用位相差板7(λ/2板)の代わりにλ/4板を2枚設けても構わない。すなわち、図7に示すように、表示用液晶パネル1と視野角制御用液晶パネル2との間に、2枚のλ/4板77a’77bを並行に(それぞれの軸が平行となるように配置する)。」(国際公開第2008/018212号[0049])、「本実施例では、青色光路上にあるλ/2位相差板312の代わりに特性の等しい2枚のλ/4位相差板312a、312bにより、第2の偏光変換手段を構成している。」(特開2005-43913号公報【0072】)及び「偏光切替部の構成は上述したものに限らない。例えば、液晶装置及び波長板の配置を変えたり、数を変えたりしてもよい。・・・また、1/2波長板を1つ設ける代わりに1/4波長板を2つ設けて偏光方向を変化させてもよい。要するに、決められた偏光方向を有する光が決められたビームスプリッタに入射するようになっていれば、どのような構成の偏光切替部が用いられてもよい。」(特開2015-226110号公報【0086】)との記載参照。)。
イ そうすると、引用発明において、1枚の1/2波長板を、その遅相軸が一致するように貼り合わせた2枚の1/4波長板で置き換えることは、単なる設計上の事項であるというべきであり、また、そのような置き換えを行えば、2つのλ/4波長板の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、自然に45度±5度となるといえる。
ウ したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。
(3)本願発明1の奏する効果について
ア 波長板を、下部偏光子と液晶パネルとの間に含むことに替えて、上部偏光子と液晶パネルとの間に含むことによる効果について
(ア)波長板を、上部偏光子と液晶パネルとの間に含むか、あるいは、下部偏光子と液晶パネルとの間に含むかによって、光学的には理論上差異は生じないことは技術常識である(これを裏付けるものとして、韓国公開特許第10-2015-0015315号公報には、第1偏光子(210/610)を含む第1偏光板(200/600)、IPSモード液晶の液晶表示パネル(100)、第2偏光子(310/710)を含む第2偏光板(300/700)及び光源部(400)の順に配置されてなる液晶表示装置用モジュール(500/1000)において、第1偏光子(210)の吸収軸(210a)に対して45°の角度であるλ/2位相差板である位相差フィルム(230)の光軸(230a)を第1偏光板(200)と液晶表示パネル(100)の間に含む(波長板を、上部偏光子と液晶パネルとの間に含む)場合(【0026】・【0027】・図1、図2)と、第1偏光子(610)の吸収軸(610a)に対して45°の角度であるλ/2位相差板である位相差フィルム(730)の光軸(730a)を第2偏光板(700)と液晶表示パネル(100)の間に含む(波長板を、下部偏光子と液晶パネルとの間に含む)場合(【0041】・【0042】・図3、図4)とが同じ性能を有するものとして記載されている。)。
(イ)一方、本願明細書等には、
「また、本出願の一実施態様によれば、上部偏光子と液晶パネルとの間に直線偏光を85度~95度に回転させる波長板を含むことにより、下部偏光子と液晶パネルとの間に波長板を含む場合よりも、側面光の散乱によるブラック(black)輝度を減少して正面CR(contrast ratio)を上昇させることができる。」(【0012】)
「本出願の一実施態様において、前記下部偏光子と液晶パネルとの間に波長板を含む場合よりも、前記上部偏光子と液晶パネルとの間に波長板を含む方がより好ましい。」(【0020】)
「バックライトユニット(BLU)から出光して下部偏光子に入射する光がパネルの下板におけるセル(Cell)の内部散乱によって正面におけるブラック輝度の上昇要素がある。この場合、下板の位相差(retardation)が小さいほど、上板の偏光子によって散乱光が吸収できるので、前記下部偏光子と液晶パネルとの間に波長板を含む場合よりも、前記上部偏光子と液晶パネルとの間に波長板を含む場合に、側面光の散乱によるブラック輝度が減少して正面CRが上昇する。」(【0022】)
と記載され、<実験例1>において、実施例1及び2及び比較例1及び2の光学特性を測定して、「いずれも半波長板を含む偏光板がパネルの下部に位置した時よりも、パネルの上部に位置した場合が、C/Rが約50%以上上昇することが明確に分かる。」(【0058】~【0062】)ことが記載されている。
(ウ)そこで(イ)について検討すると、まず、本願明細書等の【0022】の記載は、液晶セルにおける光の散乱を考慮すれば、波長板を上部偏光子と液晶パネルとの間に含む方が、下部偏光子と液晶パネルとの間に含むよりブラック輝度が減少して正面CRが上昇することを説明するものと解されるが、液晶セルにおける光の散乱を考慮したとしても、光学的には波長板を液晶セルの上下どちらに配置しても、理論上はブラック輝度が変わらないことは本願出願日当時の技術常識である。すなわち、波長板を下部偏光子と液晶パネルとの間に含む場合、下部偏光板、波長板をこの順に通過した光は、液晶パネルによって(一部の)光が散乱されて偏光状態が乱され、偏光状態が乱された光が上部偏光子を通過する(漏れ出す)と認められ、波長板を上部偏光子と液晶パネルとの間に含む場合、下部偏光板を通過した光は、液晶パネルによって(一部の)光が散乱されて偏光状態が乱され、その後波長板で偏光方向が90°回転するものの、偏光状態が乱された光は上部偏光子を通過する(漏れ出す)と認められ、結局のところ、波長板を液晶セルの上下どちらに配置しても、セルによる散乱によって偏光状態が乱された光は漏れ出すことになることに変わりはない。
次に、【0058】~【0062】についていうと、上述のとおり、波長板を、上部偏光子と液晶パネルとの間に含むか、あるいは、下部偏光子と液晶パネルとの間に含むかによって、光学的には理論上差異は生じないと認められるところ、実施例においてどのような部材を用い、どのような評価を行ったのかにつき、その詳細が必ずしも明らかであるとはいえないし、評価の結果、波長板を上部偏光子と液晶パネルとの間に含むか、あるいは、下部偏光子と液晶パネルとの間に含むかによって有意な差が生じるとは考え難い(比較例のBlack輝度100%に対して、実施例では-31%、-37%となっているが、もともとBlack輝度自体非常に小さな値であると考えられるところ、これが、31%、37%減ったとしても、人間がそれを識別できるかどうかも疑わしい。)。仮に、有意な差が生じているとしても、様々な種類の偏光板、位相差板(波長板)、液晶パネルを用いて検討しているわけではなく、一般に液晶パネルの上側に波長板があった方のコントラストがよくなることを示しているとは言い難く、偶々、特定の偏光板、位相差板(波長板)、液晶パネルの組み合わせにおいて、このような結果が生じたと解するのが相当である。
結局、波長板を、上部偏光子と液晶パネルとの間に含むことによる効果は認められない。
イ 波長板を、1枚のλ/2波長板に替えて、2枚のλ/4波長板にすることの効果について
(ア)まず、上記5(2)イで述べたとおり、1/2波長板の代わりに2枚の1/4波長板を用いることは従来周知の技術的事項にすぎず、また、1/2波長板であるか、あるいは、2枚の1/4波長板であるかによって、光学的には理論上差異は生じないことは技術常識である。
(イ)また、本願明細書等には、<実験例2>において、実施例3及び4並びに比較例3の光学特性をシミュレーションして、主に、比較例3の「視野角black max」が、実施例3及び4よりも大きいことが[表2](【0067】)において示されており、2つのλ/2波長板より4つのλ/4波長板の方が優れていることを示そうとしていると認められる。
・表2は次のものである。
[図:0001397575000001.jpg]
しかしながら、実験例2はシミュレーションであるにもかかわらず、実施例3及び4と比較する対象としての比較例3が、「下部に光軸が79度のλ/2波長板と光軸が45度のλ/2波長板、そして光軸が11度のλ/2波長板1枚ずつをそれぞれ順に積層した」ものであって、λ/2波長板の1枚が79度、他の1枚が11度と、元来あるべき角度とはかなりずれたものであって、そもそも光漏れが生じることが予想されるものである一方、実施例3及び4は4つのλ/4波長板を、67.5度の2枚と、22.5度の2枚と、あるべき角度に設定している。
したがって、あえて、光漏れが生じることが予想される比較例3と、光漏れが生じないように配置した4つのλ/4波長板の場合である実施例3及び4とを比較しても、λ/2波長板より2つのλ/4波長板の方が優れていること、あるいは、2つのλ/2波長板より4つのλ/4波長板の方が優れていることを示したことにはならないのは当然である。
結局、波長板を、1枚のλ/2波長板に替えて、2枚のλ/4波長板にすることによる効果は認められない。
(4)請求人の主張
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 請求人は、審判請求書【請求の理由】【本願特許が登録されるべき理由】「4.拒絶理由2について」において概略下記のとおり主張する。
(ア)引用文献1の図面を参照しますと、視認側偏光板と液晶セルの層との間に設けることを示す図は存在しません。また、引用文献1には実施例が存在していません。
これに対し、本願発明に規定するとおり上部偏光子と液晶パネルとの間に波長板が存在する場合の方が明暗比が増加したことを実証しています。このように波長板の配置により明暗比が変化することは引用文献1には記載も示唆もされておらず、優先日において当業者が予測できなかった、本願発明の有利な効果です。
(イ)今回の補正により、請求項1に記載した波長板が2つのλ/4波長板を含む場合、2つのλ/4波長板の光軸と上部偏光子の吸収軸とのなす角度を「40度~50度、または130度~140度」に限定しました。引用文献2に記載された発明は引用文献1に記載された発明や本願発明とは偏光子の吸収軸の方向が異なるものであり、引用文献3及び4に記載された発明はそもそも用途が異なるものです。これらの引用文献に記載された発明に基づいて、上部偏光子の吸収軸とのなす角を補正後の本願発明に規定する値とすることも、容易に想到するものではありません。
イ また、請求人は、上申書(令和4年4月15日付け)により、波長板が1つのλ/2波長板である場合の結果を追加の比較例として比較実験を行い、追加の比較例の結果を、本願明細書の実施例3及び4、並びに比較例3と比較し、λ/4波長板を用いることの優位性を主張する。
ウ さらに、請求人は、追加の説明(令和4年10月27日付けのメールに添付)において、「緑色領域においてλ/4位相差を実現しても、波長板の波長分散性のため、青色と赤色では正確なλ/4位相遅延が実現されません。例えば、緑色は90度の線偏光が0度の線偏光に変わりますが、赤色と青色の領域は楕円偏光に変わり、上板の0度吸収軸を有する偏光板にいずれも吸収されず、赤色と青色の領域の光が漏れて紫色の光漏れが発生します。・・・光軸を調節してλ/4波長板を2つから4つに増やす場合、光の経路が長くなることによって、λ/4波長板の波長分散性を補完して光漏れを最小化するための光学設計であります。」と主張する。
ウ 上記請求人の主張について検討する。
(ア)上記ア(ア)について
上記(3)アにおいて説示したとおり、本願発明が、有利な効果を奏するとは到底いえない。
(イ)上記ア(イ)について
上記(2)において説示したとおりであり、審判請求人の主張は採用できない。
(ウ)上記イについて
上記(3)イにおいて説示したとおり、本願発明が、有利な効果を奏するとは到底いえない。
(エ)上記ウについて
審判請求人の主張は、λ/4波長板を2つ用いるよりも4つ用いる方が有利であるというものであり、本願発明の引用発明に対する優位性の主張とは認められないから採用し得ない。
6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-015264