特許拒絶査定不服審判
2024-013207
高吸水性樹脂フィルムおよびこれを含む吸水性物品
- 審判番号
- 2024-013207
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-573377
- 請求日
- 2024年08月15日
- 審決日
- 2026年04月01日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】渡部 崇
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P18 .121-WZ (A61F) / P18 .537-WZ (A61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-573377「高吸水性樹脂フィルムおよびこれを含む吸水性物品」拒絶査定不服審判事件〔令和4年9月29日国際公開、WO2022/203296、令和5年7月6日国内公表、特表2023-528817〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2022年(令和4年)3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2021年3月26日(以下「最先の優先日」という。)(KR)韓国、2022年3月18日(KR)韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和5年10月13日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月22日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 4月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月15日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月15日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和7年11月26日付け:拒絶理由通知書
令和8年 2月16日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和8年2月16日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
アクリル酸系重合体である高吸水性樹脂フィルムであって、
厚さが10~200μmであり、
KS F 2611標準によって測定された吸湿能が13~90g/m2であり、
含水率が6~15%であり、引張強度が5~35MPaである、高吸水性樹脂フィルム。」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
令和7年11月26日付けで当審において通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下の理由を含むものである。
(サポート要件)特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2004-1461号公報
第5 当審の判断
1 サポート要件について
(1)サポート要件の判断基準について
特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号の要件(以下「サポート要件」という。)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、前記判断基準に基づいて、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるか、検討・判断する。
(2)本願の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明に関連する以下の記載がある(下線は当審において付したものである。以下同じ。)。
「【0002】
本発明は、吸湿能に優れた高吸水性樹脂フィルムおよび前記高吸水性樹脂フィルムを含むことによって外部のじめじめ感が改善されて使用感に優れた吸水性物品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁用パッドなどの吸水性物品は一般に液体不透過性背面シート、吸収体、および着用者の皮膚と接触する液体透過性上部シートを含み、必要によって通気性向上のための通気性防水フィルム、外観イメージ向上のためのデコシート、着用感を向上させ横漏れを防止するための脚弾性体などをさらに含むことができる。
【0004】
このような吸水性物品で、液体透過性上部シートとしては合成高分子不織布など体液が吸収体へ迅速に通過できる素材が使用される。吸収体は高吸水性樹脂、パルプ、ティッシュ、または不織布などからなり、液体透過性上部シートを透過した体液を急速に吸収し、これを保有する機能を果たす。液体不透過性背面シートは吸収体に吸収された体液が外側に漏れ出るのを防止することができるようにするものであって、天然または合成繊維からなる織布または不織布が使用される。
【0005】
前記液体不透過性背面シートはその目的上、基本的に防水性能を有するように設計されるが、防水能が過度に高い場合、水蒸気および空気が透過しなくて着用感が低下する問題がある。よって、通常液体不透過性背面シートは水粒子は透過できず、より大きさが小さい水蒸気粒子は透過可能な大きさの気孔を有する透湿防水性織布または不織布を使用する。しかし、前記背面シートの透湿性によって吸収体から放出される湿気が背面シートの外部まで伝達されて、長時間着用時、吸水性物品の外部でもじめじめ感が感じられて使用感が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題を解決するためのものであって、厚さが薄くて吸湿能に優れた高吸水性樹脂フィルムと、前記高吸水性樹脂フィルムを含んで外部のじめじめ感が改善された吸水性物品を提供することを目的とする。」
「【0018】
本発明の高吸水性樹脂フィルムは厚さが非常に薄いながらも吸湿能に優れて吸湿機能が必要な物品に好適に使用することができる。また、本発明の吸水性物品は吸収体と別途に前記高吸水性樹脂フィルムを含むことによって外部から感じられるじめじめ感が顕著に減少し、これにより着用者の身体によって温められる時発生する皮膚発疹および他の刺激を減少させることができ、優れた使用感を示す。」
「【0023】
以下、本発明の高吸水性樹脂フィルムおよびこれを含む吸水性物品を詳しく説明する。
【0024】
高吸水性樹脂フィルム
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下であり、KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/m2を満足する。
【0025】
前記高吸水性樹脂フィルムは既存の粒子状の高吸水性樹脂と区分される薄膜のフィルム形態のアクリル酸系重合体であって、含水率が15%以下であり、無色透明であり、弾性があり、柔軟性に優れた膜形態を示す。前記高吸水性樹脂フィルムは、取り扱い時飛散されるか吸水性物品から漏出される恐れがなく、パルプなどの補助剤なく使用することができる。
【0026】
また、前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが薄く吸湿能に優れて、物品の体積を増加させるか形態を害せずに多様な物品に吸湿剤として使用することができる。
【0027】
具体的に、前記高吸水性樹脂フィルムの吸湿能は10g/m2以上、13g/m2以上、15g/m2以上、または20g/m2以上であり、100g/m2以下、または90g/m2以下であってもよい。前記吸湿能はKS F 2611標準によって測定することができ、具体的な測定法は実施例で後述する。
【0028】
前記高吸水性樹脂フィルムの厚さが厚いほど吸湿能は増加できるが、500μmを超過して過度に厚い場合、適用される物品の形態に影響を与えることがある。逆に、高吸水性樹脂フィルムが過度に薄い場合は吸湿効果を十分に得ることができない。
【0029】
また、高吸水性樹脂フィルムの厚さが500μmを超過する場合、通気性が低下することがあるが、500μm以下の薄膜型高吸水性樹脂フィルムは水分吸湿時フィルムの柔軟性が大幅増加し重合体鎖間の空間性(capacity)が増えるので通気性を確保しながら吸湿性能を発揮することができる。したがって、後述の吸水性物品のように吸湿能と通気性を同時に要する物品により好適に使用することができる。
【0030】
このような観点から、前記高吸水性樹脂フィルムの厚さ(h)は、好ましくは5μm以上、10μm以上、または15μm以上でありながら、400μm以下、300μm以下、200μm以下、または150μm以下であってもよい。
【0031】
一方、前記高吸水性樹脂フィルムの含水率は15重量%以下、または12重量%以下、または11重量%以下、または10重量%以下でありながら1重量%以上、または2重量%以上、または4重量%以上、または6重量%以上であってもよい。
【0032】
前記「含水率」は、試料の乾燥前重量に対して試料が含有する水分の量を百分率で表わしたものである。即ち、含水率は、試料の乾燥前重量から試料の乾燥後重量を引いた値を試料の乾燥前重量で割った後、100を掛けて計算することができる。この時、乾燥条件は、常温で約150℃まで温度を上昇させた後、150℃で維持する方式で、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分と設定する。
【0033】
前記高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下を満足し、このような厚さ範囲で可視光線に対する全光線透過率が89.5%で高い透明性を示す。本発明の一実施形態による高吸水性樹脂フィルムの全光線透過率は90%以上、90.3%以上、または91%以上、または91.5%以上、または92%以上であってもよい。全光線透過率は理論的に100%であってもよく、一例として99%以下であってもよい。
【0034】
また、本発明の高吸水性樹脂フィルムは、厚さ1~500μm範囲でASTM D1925規格による黄色度(Yellow Index)が2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、1.9以下、1.5以下、または1.3以下であってもよい。
【0035】
一方、前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1%~15%であり、引張強度が5MPa以上であってもよい。好ましくは、含水率が5~15%である時、高吸水性樹脂フィルムの引張強度は10MPa以上、13MPa以上、14MPa以上、19MPa以上、または22MPa以上でありながら、50MPa以下、47MPa以下、45MPa以下、40MPa以下、または35MPa以下であってもよい。前記引張強度範囲を満足する高吸水性樹脂フィルムは、破損の恐れが少なくて、おむつなどの吸水性物品に適用される場合、着用者の動きにも簡単に破損されず、優れた吸湿能を示すことができる。」
「【0123】
高吸水性樹脂フィルム
本発明の吸水性物品で、液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、および/または通気性防水フィルムと吸収体の間には先に説明したような高吸水性樹脂フィルムが介される。」
【0124】
前記高吸水性樹脂フィルムは、前述のように吸湿能に優れて、吸収体から放出される湿気を吸収して背面シート外部から感じられるじめじめ感を顕著に改善させることができる。また、前記高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下であって薄いので、吸水性物品の厚さを大きく増加させないながらも、前記のような吸湿性能を示して吸水性物品の使用感を顕著に向上させることができる。」
「【実施例】
【0161】
[実施例]
<高吸水性樹脂フィルムの製造>
実施例1-1
アクリル酸55g、水酸化カリウム(KOH)45重量%溶液66.6g、および水55gを混合してアクリル酸の70モル%が中和された中和液を準備した。
【0162】
前記中和液にヒドロキシエチルセルロース(HEC、Ashland社 Natrosol 250HR)、グリセリン、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム、光重合開始剤としてIrgacure 819を添加して、固形分含量(TSC)が54重量%であるモノマー組成物を製造した。
【0163】
この時、HECはモノマー組成物の固形分100重量部に対して0.45重量部、グリセリンはアクリル酸100重量部に対して40重量部で添加し、熱重合開始剤はモノマー組成物総重量に対して1000ppm、光重合開始剤は80ppm添加した。
【0164】
前記製造されたモノマー組成物の25℃での粘度をTOKI社のTV-22粘度計を用いて、spindle # 1、回転速度1rpmで測定し、その結果、モノマー組成物の粘度は201mPa・sと確認された。
【0165】
その次に、前記モノマー組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一面にコーティングして20μm厚さのモノマー組成物フィルム(含水率30%)を形成した。前記コーティングにはコンマコーターを使用し、アプリケーターロールの移動速度は0.5m/minとした。
【0166】
その後、前記モノマー組成物フィルムに370mJ/cm2の紫外線を照射して重合を実施し、含水ゲル重合体フィルムを形成した。この時、モノマー組成物フィルムにMD方向に60N/mの張力を加えて延伸しながら重合反応を行った。製造された含水ゲル重合体フィルムの厚さは20μmであって、モノマー組成物と比較して大きな変化がないことが確認され、含水率は15重量%であった。
【0167】
その次に、前記製造された含水ゲル重合体フィルムを80℃温度で5分間乾燥して、含水率が10重量%であり厚さが17μmである高吸水性樹脂フィルム(SAP film)を製造した。
【0168】
前記含水率は、高吸水性樹脂フィルムの乾燥前重量(a)および乾燥後重量(b)から下記式を通じて計算した。この時、高吸水性樹脂フィルムの乾燥は、常温(25℃)から150℃まで5分にわたって温度を上昇させた後、150℃で15分間維持する方式で行われた。
【0169】
含水率(%)=(a-b)/a×100
【0170】
実施例1-2
モノマー組成物フィルムの厚さを50μmとし、含水ゲル重合体の乾燥温度を80℃、乾燥時間を10分としたことを除いて、実施例1-1と同様な方法で含水率10重量%、厚さ45μmの高吸水性樹脂フィルムを製造した。
【0171】
実施例1-3
モノマー組成物フィルムの厚さを160μmとし、含水ゲル重合体の乾燥温度を90℃、乾燥時間を10分にしたことを除いて、実施例1-1と同様な方法で含水率10重量%、厚さ149μmの高吸水性樹脂フィルムを製造した。
【0172】
実施例1-4
アクリル酸55g、水酸化カリウム(KOH)45重量%溶液66.6g、および水55gを混合してアクリル酸の70モル%が中和された中和液を準備した。
【0173】
前記中和液に内部架橋剤(ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、MW=400、Aldrich社)、発泡剤として膨張した微小球体MFL110CAL(Matsumoto Yushi-Seiyaku、平均粒径90-120μm、発泡温度160-170℃)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、Ashland社 Natrosol 250HR)、グリセリン、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム、光重合開始剤としてIrgacure 819を添加して、固形分含量(TSC)が40重量%であるモノマー組成物を製造した。
【0174】
この時、発泡剤はモノマー組成物100重量部に対して1重量部、HECはモノマー組成物の固形分100重量部に対して0.45重量部、グリセリンはアクリル酸100重量部に対して40重量部で添加し、熱重合開始剤はモノマー組成物総重量に対して1000ppm、光重合開始剤は80ppm添加した。
【0175】
前記製造されたモノマー組成物の25℃での粘度を、TOKI社のTV-22粘度計を用いて、spindle # 1、回転速度1rpmで測定し、その結果、モノマー組成物の粘度は211mPa・sと確認された。
【0176】
その次に、前記モノマー組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一面にコーティングして160μm厚さのモノマー組成物フィルム(含水率30%)を形成した。前記コーティングにはコンマコーターを使用し、アプリケーターロールの移動速度は0.5m/minとした。
【0177】
その後、前記モノマー組成物フィルムに370mJ/cm2の紫外線を照射して重合を実施して、含水ゲル状重合体フィルムを形成した。この時、モノマー組成物フィルムにMD方向に60N/mの張力を加えて延伸しながら重合反応を行った。
【0178】
その次に、前記製造された含水ゲル状重合体を90℃温度で10分間乾燥して、含水率が10重量%であり、厚さが153μmである高吸水性樹脂フィルム(SAP film)を製造した。」
「【0206】
【表1】
[図:0001438730000001.jpg]
【0207】
実験の結果、実施例1-1~1-4は優れた吸湿能および引張強度を示すと確認された。また実施例2-1~2-7の吸水性物品は液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、あるいは通気性防水フィルムと吸収体の間に介される高吸水性樹脂フィルムによって比較例1に比べて外部じめじめ感が顕著に改善されながらも、通気度は阻害されないのを確認することができた。」
(3)本願発明が解決しようとする課題について
本願発明が解決しようとする課題は、前記(2)【0005】、【0006】、【0018】、【0124】の記載を総合的にみて、「吸湿能に優れて、吸収体から放出される湿気を吸収して背面シート外部から感じられるじめじめ感を顕著に改善させ、吸水性物品の厚さを大きく増加させないながらも、吸湿性能を示して吸水性物品の使用感を顕著に向上させること」(以下「本願課題」という。)であると認められる。
(4)サポート要件適合性について
本願発明が、本願課題を解決することができるかについて検討する。
ア 本願発明について
本願発明は、本願課題を解決するための手段として、アクリル酸系重合体である高吸水性樹脂フィルムを対象として、
(構成1)厚さが10~200μmであり、
(構成2)KS F 2611標準によって測定された吸湿能(以下単に「吸湿能」という。)が13~90g/m2であり、
(構成3)含水率が6~15%であり、
(構成4)引張強度が5~35MPaである、
という構成を採用したものと理解できるので、各構成について検討する。
イ 構成1について
(ア)厚さが10μm以上である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの厚さを10μm以上とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記高吸水性樹脂フィルムの厚さ(h)は、好ましくは5μm以上、10μm以上、または15μm以上でありながら、400μm以下、300μm以下、200μm以下、または150μm以下であってもよい。」(【0030】)との記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの厚さを10μm以上とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「逆に、高吸水性樹脂フィルムが過度に薄い場合は吸湿効果を十分に得ることができない。」(【0028】)との記載があり、「外部じめじめ感が顕著に改善されながらも、通気度は阻害されない」(【0207】)との効果(以下「本願効果」という。)が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の厚さ(μm)が、17、45、149、153であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に厚さが10μm未満の場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの厚さを10μm以上とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成1のうち高吸水樹脂フィルムの厚さを10μm以上とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
(イ)厚さが200μm以下である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの厚さを200μm以下とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)aの記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの厚さを200μm以下とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「高吸水性樹脂フィルムの厚さが500μmを超過する場合、通気性が低下することがあるが、500μm以下の薄膜型高吸水性樹脂フィルムは水分吸湿時フィルムの柔軟性が大幅増加し重合体鎖間の空間性(capacity)が増えるので通気性を確保しながら吸湿性能を発揮することができる。」との記載(【0029】)があり、「外部じめじめ感が顕著に改善されながらも、通気度は阻害されない」(【0207】)との効果(以下「本願効果」という。)が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の厚さ(μm)が、17、45、149、153であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に厚さが200μmを超える場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの厚さを200μm以下とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成1のうち高吸水樹脂フィルムの厚さを200μm以下とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
ウ 構成2について
(ア)吸湿能が13g/m2以上である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの吸湿能を13g/m2以上とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「具体的に、前記高吸水性樹脂フィルムの吸湿能は10g/m2以上、13g/m2以上、15g/m2以上、または20g/m2以上であり、100g/m2以下、または90g/m2以下であってもよい。」(【0030】)との記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの吸湿能を13g/m2以上とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが薄く吸湿能に優れて、物品の体積を増加させるか形態を害せずに多様な物品に吸湿剤として使用することができる。」(【0026】)との記載があり、本願効果が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の吸湿能(g/m2)が、13.9、25.7、77.3、81.7であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に吸湿能が13g/m2未満の場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの吸湿能を13g/m2以上とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成2のうち高吸水樹脂フィルムの吸湿能を13g/m2以上とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
(イ)吸湿能が90g/m2以下である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの吸湿能を90g/m2以下とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)aの記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの吸湿能を90g/m2以下とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)bの記載があり、本願効果が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の吸湿能(g/m2)が、13.9、25.7、77.3、81.7であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に吸湿能が90g/m2を超える場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの吸湿能を90g/m2以下とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成1のうち高吸水樹脂フィルムの吸湿能を90g/m2以下とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
(ウ)付記
さらに、前記(2)の記載を総合的に検討したとしても、厚さ(μm)が17、45、149、153、及び吸湿能(g/m2)が13.9、25.7、77.3、81.7以外の領域において、本願課題を解決できると認識できる範囲のものとは認められない
エ 構成3について
(ア)含水率が6%以上である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの含水率を6重量%以上とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記高吸水性樹脂フィルムの含水率は15重量%以下、または12重量%以下、または11重量%以下、または10重量%以下でありながら1重量%以上、または2重量%以上、または4重量%以上、または6重量%以上であってもよい。」(【0031】)との記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの含水率を6重量%以上とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記高吸水性樹脂フィルムは既存の粒子状の高吸水性樹脂と区分される薄膜のフィルム形態のアクリル酸系重合体であって、含水率が15%以下であり、無色透明であり、弾性があり、柔軟性に優れた膜形態を示す。」(【0025】)との記載があり、本願効果が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の含水率(重量%)が、10、15(【0166】、【0170】、【0171】、【0178】)であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に含水率が6重量%未満の場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの含水率を6重量%以上とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成3のうち高吸水樹脂フィルムの含水率を6重量%以上とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
(イ)含水率が15%以下である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの含水率を15重量%以下とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)aの記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの含水率を15重量%以下とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)bの記載があり、本願効果が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の含水率(重量%)が、10、15であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に含水率が15重量%を超える場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの含水率を15重量%以下とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成3のうち高吸水樹脂フィルムの含水率を15重量%以下とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
オ 構成4について
(ア)引張強度が5MPa以上である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの引張強度を5MPa以上とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1%~15%であり、引張強度が5MPa以上であってもよい。」(【0035】)との記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの引張強度を5MPa以上とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記引張強度範囲を満足する高吸水性樹脂フィルムは、破損の恐れが少なくて、おむつなどの吸水性物品に適用される場合、着用者の動きにも簡単に破損されず、優れた吸湿能を示すことができる。(【0035】)との記載があり、本願効果が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の引張強度(MPa)が、9.9、22.0、23.8、25.8であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に引張強度が5MPa未満の場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの引張強度を5MPa以上とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成4のうち高吸水樹脂フィルムの引張強度を5MPa以上とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
(イ)引張強度が35MPa以下である構成について
a 高吸水樹脂フィルムの引張強度を35MPa以下とすることに関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)aの記載がある。
b しかしながら、高吸水樹脂フィルムの引張強度を35MPa以下とすることにより得られる効果等に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記(ア)bの記載があり、本願効果が得られたとされる実施例1-1~1-4(2-1~2-7)の引張強度(MPa)が、9.9、22.0、23.8、25.8であり、本願効果が得られなかったとされる比較例1には、高吸水性樹脂フィルム自体が含まれていないとの記載(【表1】)があるのみである。
c そうすると、【表1】に引張強度が35MPaを超える場合の実験例が記載されていないことと併せると、これらの記載は、高吸水樹脂フィルムの引張強度を35MPa以下とすることによりなぜ本願課題が解決されるのかについて適切に説明するものとはいえず、したがって、構成4のうち高吸水樹脂フィルムの引張強度を35MPa以下とするとの点については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和8年2月16日に提出した意見書の3.において、以下の主張をしている。
「今回の補正により、補正前の請求項1に記載した高吸水性樹脂フィルムの厚さ、吸湿能、含水率、及び引張強度のそれぞれの数値範囲を限定し、実施例で本願発明の課題を解決することができることを確認したものから拡張ないし一般化可能な範囲としました。本願明細書には各パラメータが限定された範囲を満たす場合に目的とする効果を達成できる旨が記載されており、さらに限定された範囲は4つの実施例の数値から大きく外れていないため、当業者であれば実施例と同等の効果が得られることを認識することができるものです。」
イ しかしながら、前記(4)のとおりであるから、審判請求人の前記アの主張は採用できない。
(6)小括
以上のとおり、構成1~4については、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により最先の優先日当時の当業者が本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、かつ、当該当業者が最先の優先日当時の技術常識に照らし本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
2 進歩性について
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、最先の優先日前に発行された刊行物である特開2004-1461号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0026】
次に、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を用いた本発明の高吸湿性複合材料を説明する。
まず、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液に、前記熱反応性架橋剤を含有して処理液を調製する。前記熱反応性架橋剤は、アクリル酸塩系樹脂の水性液中の樹脂成分等に存在する官能基と反応可能な官能基を、分子内に少なくとも2個以上有するものであって、例えば、ポリオールポリグリシジルエーテル等の水溶性エポキシ化合物類、エチレンジアミン等の水溶性アミン類、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトール等の水溶性多価アルコール類等があげられる。特にポリオールポリグリシジルエーテル等が良好な混合性及び加熱架橋性を有するので好適である。
【0027】
前記熱反応性架橋剤の含有量は、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の官能基の化学当量によっても異なるが、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の固形分(前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂と前記ポリビニルアルコール)に対して0.01~25.0重量%であることが好ましい。前記熱反応性架橋剤の含有量が0.01重量%以上であると、加熱架橋後の高吸湿性樹脂層の強度が充分となるので好ましい。また、前記熱反応性架橋剤の含有量が25.0重量%以下であると、加熱架橋後の高吸湿性樹脂層の吸湿性能の低下を抑制することができるので好ましい。尚、前記処理液には、架橋触媒、防腐剤、消泡剤、潤滑成分、浸透剤、平滑剤等を必要に応じて含有させることができる。
【0028】
次に、この処理液を基材に担持させる。基材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿等の天然繊維等の糸状束、不織布、織物、編物などの繊維布帛、ウェブ、紙、木材、パルプ糸条、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなど、粉体の圧縮・過熱溶融体等を用いることができる。
【0029】
また、これらの基材に担持させる方法としては、塗布や含浸等を採用することができる。塗布方法は特に限定しないが、例えば、基材が不織布、織物のようなシート状のものであれば、シルク印刷、パッド印刷等各種印刷法、ロールコート法、スプレー法、カーテンコート法、パディング法、ラミネート法、ディピング法等の塗布方法が好適に用いられる。これらの方法は、目的や使用する材料、設備により適宜最適な方法を採用すればよい。前記処理液の塗布量は、処理液の濃度、加工方法、要求される性能、コスト等によって適宜調整されるが、5~2000g/m2が好ましい。処理液の塗布量が5g/m2未満の場合は、吸湿性能が不充分となる傾向がある。また、処理液の塗布量が2000g/m2を超える場合は、基材と接していない高吸湿性樹脂層の割合が増し、高吸湿性樹脂層の脱落を招く傾向がある。
【0030】
前記高吸湿性樹脂層の重量は、基材重量に対して3~200重量%、好ましくは5~150重量%、より好ましくは7~100重量%、更に好ましくは7~50重量%、特に好ましくは7~30重量%である。3重量%より低い場合は、得られる複合材料の吸湿性能が不十分となり、製品としての価値が低くなる傾向がある。200重量%を超えると、高吸湿性樹脂層の脱落を招く恐れがあり、また、コスト高となる傾向がある。
【0031】
そして、前記処理液を担持させた基材に加熱処理を施す等により、(メタ)アクリル酸塩系樹脂及びポリビニルアルコールを架橋させることによって、基材の表面に(メタ)アクリル酸塩系樹脂及びポリビニルアルコールからなる高吸湿性樹脂層が形成された本発明の高吸湿性複合材料を製造することができる。加熱方法は特に限定されず一般的な方法でよい。尚、上記加熱処理は、高吸湿性樹脂層の乾燥工程と併せて行なってもよい。
【0032】
本発明の高吸湿性複合材料は、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂を含有して高吸湿性樹脂層を形成するので、(メタ)アクリル酸塩系樹脂のみの高吸湿性樹脂層よりも強度、柔軟性を高くすることができる。また、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂を架橋させることによって、高吸湿性樹脂層の強度、柔軟性をさらに高くして安定させることができる。」
「【0039】
前記構造体(A)を構成する材料としては、前記各種織物、編物、スパンボンド、湿式若しくは乾式不織布等の繊維材料又は多孔体が好ましい。特に、吸湿性・透湿性、吸湿速度、吸水速度及び通水性に優れた材料、レーヨン繊維、表面に凹溝を有する合成繊維、繊維内部に多孔を有する天然繊維、合成繊維をフィラメント、ステープル、又はチョプド繊維として用いることが好ましい。また、本発明の高吸湿性複合材料は、前記のように、相対湿度90%、25℃の雰囲気の下で8重量%以上の吸湿率を有することから、本発明の高吸湿性複合材料を、前記構造体(A)を構成する材料として用いてもよい。」
「【0057】
本発明の吸湿・吸水性構造体の前記構造体(A)、前記構造体(B)、及び前記構造体(C)の構成は、目的、仕様、要求物性等により適宜決定する。例えば、コートのライナーや靴の中敷等のように非常に薄く、且つ軽量のものであれば、前記構造体(A)又は前記構造体(B)は1mm以下の厚さが好ましく、前記構造体(C)は2mm以下の厚さが好ましい。一方、家屋の吸湿・断熱保温材であれば、前記構造体(A)又は前記構造体(B)は1~10mmの厚さが好ましく、前記構造体(C)は1~50mmの厚さが好ましい。」
「【0060】
(1)高吸湿性複合材料について
実施例1
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水189g、2-プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセファイマーZ-200(日本合成化学工業株式会社製の平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌を行い、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温を行い、重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液260gで除々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液Aを得た。アクリル酸塩樹脂溶液Aの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて110重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂溶液A中のカルボキシル基の65%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0061】
このアクリル酸塩樹脂水溶液Aを7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Aの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液を調製した。この処理液をポリエステル不織布(目付量200g/m2)に塗装用拡散スプレーを使用し、塗出圧25kgf/cm2で噴霧した。これを160℃で、7分間熱乾燥及び熱架橋して、高吸湿性樹脂の付着量が65g/m2の高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は32.5重量%であった。
【0062】
実施例2
実施例1のアクリル酸塩樹脂水溶液Aを15重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Aの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液を調製した。この処理液を経糸、緯糸共に150デニール/48フィラメントのポリエステル加工糸の織物80g/m2にロールコーティングし、150℃で8分間熱乾燥及び熱架橋して、高吸湿性樹脂の付着量が15g/m2の高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は19重量%であった。
【0063】
実施例3
実施例1のアクリル酸塩樹脂水溶液Aを20重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸樹脂水溶液Aの樹脂相当分に対して、5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液を調製した。耐水性感光性乳剤にて製版したスクリーン型(70メッシュポリエステル紗)を使用し、ポリエステルスパンボンド不織布(目付量50g/m2)上に、この処理液を水玉状(直径5mm)に印捺した後、温度150℃で5分間熱乾燥及び熱架橋して、高吸湿性樹脂の付着量が5g/m2の高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は10重量%であった。
【0064】
実施例4
実施例1で得たアクリル酸塩水溶液Aを5重量%濃度に調整し、厚み5mm目付50g/m2のウレタン樹脂製スポンジに浸漬後、マングルにて絞り、熱架橋後、高吸湿ウレタン樹脂製品を得た。このウレタン複合材料の高吸湿性樹脂の付着量が8g/m2の高吸湿樹脂付着ウレタン複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は16重量%であった。
【0065】
実施例5
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、アクリル酸108gを仕込み、これと15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液260gを攪拌して冷却下で徐々に中和した。この後、2-プロパノール27g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセファイマーZ-200(日本合成化学工業株式会社製の平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌を行い、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温を行い、重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液Bを得た。アクリル酸塩樹脂水溶液Bの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて105重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂水溶液B中のカルボキシル基の65モル%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0066】
このアクリル酸塩樹脂水溶液Bを7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Bの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Bの処理液を調製した。そして、実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液の代わりに、前記アクリル酸塩樹脂水溶液Bの処理液を使用した以外は、実施例1と同処方、同操作にて処理して、高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。高吸湿性樹脂の付着量は62g/m2であった。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は31重量%であった。
【0067】
実施例6
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水189g、2-プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセノールGH-17(日本合成化学工業株式会社製の平均重合度1700、ケン化度90モル%のPVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌を行い、ついで窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温を行い重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液240gで徐々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液Cを得た。アクリル酸塩樹脂水溶液Cの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて75重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂水溶液C中のカルボキシル基の60モル%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0068】
このアクリル酸塩樹脂水溶液Cを7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Cの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Cの処理液を調製した。そして、実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液の代わりに、前記アクリル酸塩樹脂水溶液Cの処理液を使用した以外は、実施例1と同処方、同操作にて処理して、高吸湿シートを得た。高吸湿性樹脂の付着量は55g/m2であった。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は27.5重量%であった。
【0069】
比較例1
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水229.5g、2-プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045gを仕込み撹拌を行い、ついで窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。そののち、昇温を行い、重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液260gで除々に中和した。これを冷却し、アクリル樹脂水溶液Dを得た。アクリル酸塩樹脂水溶液Dの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて65重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂水溶液D中のカルボキシル基の65モル%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0070】
実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの代わりに、アクリル樹脂水溶液Dを使用した以外は、実施例1と同処方、同操作にて処理して、高吸湿シートを得た。しかし、シート巻き取り時に巻き取りロールとの摩擦により樹脂が脱落し、高吸湿性樹脂の付着量は50g/m2にまで減少した。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は25重量%であった。
【0071】
比較例2
実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの濃度を1.0重量%濃度に調整した以外は、実施例1と同様にして高吸湿シートを得た。高吸湿性樹脂の付着量は2g/m2であった。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は1重量%であった。
【0072】
また、前記実施例1~6及び比較例1~2について、高吸湿性樹脂層の基材への固定化の程度を評価するために、湿度97%の雰囲気下にて、充分に吸湿させた。その後、高吸湿性複合材料を乾燥精秤を行い、摩擦剥離をJIS-L-1096法 B法による試験方法を用いて、下記式により吸湿時の樹脂脱落率を算出した。
樹脂脱落(樹脂溶出)率(%)=〔吸湿前重量(g)-吸湿乾燥後重量(g)〕/〔高吸湿性樹脂層の重量(g)〕
【0073】
更に、実施例1~6及び比較例1~2について、吸湿後の表面状態を手触にて測定し、下記の三段階評価を行なった。
○:べとつきがなく、ドライ感であった。
△:ほとんどべとつきがなかった。
×:べとつきが強くゲル状があった。
【0074】
更に、実施例1~6及び比較例1~2について、吸湿能を測定した。吸湿率の測定方法は、高吸湿性複合材料1m2を、相対湿度40%の環境下で24時間放置し、精秤する(吸湿前重量)。次に、前記高吸湿性複合材料1m2を、相対湿度90%の環境下に移し24時間放置した後、精秤する(吸湿後重量)ことにより行った。そして、下記式により、高吸湿性複合材料1m2当たりの吸湿量、吸湿率を算出した。
高吸湿性複合材料1m2当たりの吸湿量(g)=B-A
吸湿率(%)=(B-A)×100/A
A;吸湿前重量(g) B;吸湿後重量(g)
【0075】
また、前記高吸湿性複合材料を相対湿度90%から相対湿度40%の環境下に移したときに、吸湿率が相対湿度40%における当該複合材料の飽和吸湿率になる時間を測定した。更に、前期高吸湿性複合材料を相対湿度90%における吸湿及び相対湿度40%における放湿を100回繰り返した後、初期の相対湿度90%における吸湿率(a%)、100回後の相対湿度90%における吸湿率(b%)を測定した。
【0076】
表1に上記各試験結果を示す。
【0077】
【表1】
[図:0001438730000002.jpg]
【0078】
表1から明らかなように、実施例1~6は比較例1よりも樹脂脱落率が低く、基材の表面に高吸湿性樹脂層が強固に形成されていた。また、表1から明らかなように、実施例1~6は比較例1~2に比べて吸湿率が高く、吸湿性能に優れていることがわかった。」
イ 前記ア【0060】~【0068】の記載から、アクリル酸塩樹脂水溶液A、アクリル酸塩樹脂水溶液B、アクリル酸塩樹脂水溶液Cはいずれも、アクリル酸を重合して塩にした樹脂の水溶液であるといえるから、実施例1~6の高吸湿性樹脂層は、アクリル酸を重合して塩にしたアクリル酸塩樹脂を熱架橋したものであるといえる。
ウ 前記ア【0060】~【0068】の記載から、実施例1~6は、基材に高吸湿性樹脂層が形成された高吸湿性複合材料であるといえる。
エ 前記ア【0077】の【表1】から、実施例1~6の高吸湿性複合材料1m2当たりの吸湿量(g)は、それぞれ72、17、5.7、10、65、42であると読み取れる。
オ 前記ア【0039】の「本発明の高吸湿性複合材料を、前記構造体(A)を構成する材料として用いてもよい。」との記載、前記ア【0057】の「本発明の吸湿・吸水性構造体の前記構造体(A)、前記構造体(B)、及び前記構造体(C)の構成は、目的、仕様、要求物性等により適宜決定する。例えば、コートのライナーや靴の中敷等のように非常に薄く、且つ軽量のものであれば、前記構造体(A)又は前記構造体(B)は1mm以下の厚さが好ましく、前記構造体(C)は2mm以下の厚さが好ましい。」との記載、及び前記イ、ウから、基材に高吸湿性樹脂層が形成された高吸湿性複合材料の厚さが1mm以下であって、1m2当たりの吸湿量(g)が72、17、5.7、10、65、42であるといえる。
カ 前記ア~オから、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「基材に高吸湿性樹脂層が形成された高吸湿性複合材料であって(ウ)、
高吸収性樹脂層は、アクリル酸を重合して塩にしたアクリル酸塩樹脂を熱架橋したものであり(イ)、基材重量に対して3~200重量%であり(【0030】)、
厚さが1mm以下であって、1m2当たりの吸湿量(g)が72、17、5.7、10、65、42であり(オ)、
基材としては、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿等の天然繊維等の糸状束、不織布、織物、編物などの繊維布帛、ウェブ、紙、木材、パルプ糸条、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなど、粉体の圧縮・過熱溶融体等を用いることができる(【0028】)、
高吸湿性複合材料」
(2)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
ア 後者の「高吸湿性樹脂層」は、「基材」に「形成された」ものであって、「アクリル酸を重合して塩にしたアクリル酸塩樹脂を熱架橋した」層(フィルム)であるから、アクリル酸系重合体フィルムであるといえる。
また、後者の「高吸湿性樹脂層」は吸湿性を有するものであるから、吸水性を有するともいえる。
そうすると、前者の「高吸水性樹脂フィルム」と後者の「高吸湿性樹脂層」は、「アクリル酸系重合体である高吸水性樹脂フィルム」である点で一致する。
イ 後者の「1m2当たりの吸湿量(g)」は、前者の「吸湿能」に相当する。
ウ 後者の「高吸湿性樹脂層」は、「基材」に形成されて「高吸湿性複合材料」となるものであるから、何らかの「1m2当たりの吸湿量(g)」、厚み、含水率、引張強度の値を有することは明らかである。
そうすると、前者の高吸水性樹脂フィルム」と後者の「高吸湿性樹脂層」は、「厚さ、KS F 2611標準によって測定された吸湿能、含水率、引張強度の値を有する」ものである点で一致する。
エ したがって、本願発明と引用発明1は、
「アクリル酸系重合体である高吸水性樹脂フィルムであって、
厚さ(μm)、
KS F 2611標準によって測定された吸湿能(g/m2)、
含水率(%)、引張強度(MPa)、
の値を有する、
高吸水性樹脂フィルム。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
「厚さ」に関し、本願発明の「高吸水性樹脂フィルム」は「10~200μm」であるのに対して、引用発明1の「高吸湿性樹脂層」は、「基材」と併せて1mm以下である点。
[相違点2]
「KS F 2611標準によって測定された吸湿能」に関し、本願発明の「高吸水性樹脂フィルム」は「13~90g/m2」であるのに対して、引用発明1の「高吸湿性樹脂層」は、「基材」と併せて72、17、5.7、10、65、42g/m2である点。
[相違点3]
「含水率」に関し、本願発明の「高吸水性樹脂フィルム」は「6~15%」であるのに対して、引用発明1の「高吸湿性樹脂層」は不明である点。
[相違点4]
「引張強度」に関し、本願発明の「高吸水性樹脂フィルム」は「5~35MPa」であるのに対して、引用発明1の「高吸湿性樹脂層」は不明である点。
(3)判断
ア 前記相違点1について検討する。
(ア)引用発明1の「高吸湿性樹脂層」の「厚さ」は、「基材」と併せて1mm以下であるところ、これを「10~200μm」とすることは、用途に応じて適宜調節することができる、高吸湿性樹脂層の数値範囲の好適化であって、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易に想到することができたと認められる。
(イ)そして、前記1で示したとおり、「厚さが10~200μm」との数値が、本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、臨界的意義を有するものとも認められない。
イ 前記相違点2について検討する。
(ア)引用発明1の「高吸湿性樹脂層」の「1m2当たりの吸湿量(g)」は、「基材」と併せて72、17、5.7、10、65、42g/m2であるところ、「基材重量に対して3~200重量%」であって、基材としては、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿等の天然繊維等の糸状束、不織布、織物、編物などの繊維布帛、ウェブ、紙、木材、パルプ糸条、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなど、粉体の圧縮・過熱溶融体等を用いることができることから、KS F 2611標準によって測定した場合に、13~90g/m2である蓋然性が高いので、実質的な相違点とはいえない。
(イ)仮にこの点が実質的な相違点となるとしても、引用発明1の「高吸湿性樹脂層」の「1m2当たりの吸湿量(g)」を、KS F 2611標準によって測定した場合に「13~90g/m2」とすることは、用途に応じて適宜調節することができる、高吸湿性樹脂層の数値範囲の好適化であって、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易に想到することができたと認められる。
(ウ)そして、前記1で示したとおり、「KS F 2611標準によって測定された吸湿能が13~90g/m2」との数値が、本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、臨界的意義を有するものとも認められない。
ウ 前記相違点3について検討する。
(ア)引用発明1の「高吸湿性樹脂層」の「含水率」は不明であるところ、これを「6~15%」とすることは、用途に応じて適宜調節することができる、高吸湿性樹脂層の数値範囲の好適化であって、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易に想到することができたと認められる。
(イ)そして、前記1で示したとおり、「含水率が6~15%」との数値が、本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、臨界的意義を有するものとも認められない。
エ 前記相違点4について検討する。
(ア)引用発明1の「高吸湿性樹脂層」の「引張強度」は不明であるところ、これを「5~35MPa」とすることは、用途に応じて適宜調節することができる、高吸湿性樹脂層の数値範囲の好適化であって、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易に想到することができたと認められる。
(イ)そして、前記1で示したとおり、「引張強度が5~35MPa」との数値が、本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、臨界的意義を有するものとも認められない。
オ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書の4.において、概略次の主張をしている。
「引用文献1の実施例には、5.7~72g/m2の吸湿量を有する高吸湿性複合材料が記載されています。
ここで、引用文献1に記載された高吸湿性複合材料は、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の(メタ)アクリル酸塩系樹脂を、熱反応性架橋剤で架橋することにより、基材の表面に高吸湿性樹脂層を形成してなるものです(引用文献1の請求項1)。引用文献1の実施例では、アクリル酸塩樹脂水溶液と架橋剤の処理液を基材(ポリエステル不織布)に噴霧して高吸湿性複合材料を製造しています(引用文献1の段落[0061]等)。
これに対して、本願発明の高吸水性樹脂フィルムは、支持体(基材)を含むものではなく、アクリル酸系重合体そのものです。」
(イ)審判請求人の主張についての見解
前記(2)で示したとおりであって、審判請求人の主張する点は、本願発明と引用発明1の相違点とはならないから、前記(3)の判断を左右するものでなく採用できない。
なお、アクリル酸系重合体をフィルム状又はシート状にした成形物は、例えば、特開平4-236203号公報(特に【0040】、【0049】を参照。)に記載されているように周知の技術にすぎず、引用発明1の「高吸湿性樹脂層」を、単体の「アクリル酸系重合体である高吸水性樹脂フィルム」とすることも格別の困難性を要するものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
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2024-013207