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特許拒絶査定不服審判

2023-018130

光透過性導電フィルムおよび調光フィルム

審判番号
2023-018130
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-548353外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年10月26日
審決日
2025年04月07日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (G02F) / P18 .121-WZ (G02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条4項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-548353「光透過性導電フィルムおよび調光フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日国際公開、WO2020/031632〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯の概要

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本願は、令和元年7月17日(優先権主張 平成30年8月6日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和5年 4月19日付け:拒絶理由通知書

同年 6月19日 :意見書の提出

同年 8月17日付け:拒絶査定

同年10月26日 :審判請求書・手続補正書の提出
同年12月25日付け:前置報告書
令和6年 2月 8日 :上申書の提出
同年11月29日付け:拒絶理由通知書(以下、同書で通知された拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和7年 1月28日 :意見書・手続補正書(以下、同書による補正を「本件補正」という。)・手続補足書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりのものである。

<本願発明>

「光透過性基材と、光透過性導電層とを備える光透過性導電フィルムであって、
前記光透過性導電層は、結晶質領域および非晶質領域を有し、
前記光透過性導電層における結晶粒の最大長が、200nm以下であり、
前記光透過性導電層の比抵抗は、4.6×10-4Ω・cm以下であり、
前記光透過性導電層を大気雰囲気で80℃、240時間の条件で加熱した際における結晶粒の最大長が、200nm以下である、光透過性導電フィルム。」

第3 当審拒絶理由の概要

本願発明は、本件補正前の請求項1(令和5年10月26日に提出された手続補正書による補正後のもの)に係る発明を補正したものであるところ、当審拒絶理由は、概略、本件補正前の請求項1に係る発明に対する次の各理由を含むものである。

1 理由1(委任省令要件)

本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)で定めるところにより(すなわち、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより)、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(進歩性)

請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>

1.特開2016-157021号公報

第4 当合議体の判断

1 理由1(委任省令要件)について

(1)委任省令要件違反の概要

本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより(すなわち、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより)、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

すなわち、前記経済産業省令で定められる「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」として、発明の詳細な説明には、「発明が解決しようとする課題」として、請求項に係る発明が解決しようとする技術上の課題が少なくとも一つ記載されていること、また、「その解決手段」として、請求項に係る発明によってどのように課題が解決されたかについて記載されていることが、通常、求められるところ、下記(2)で検討するとおり、本願の発明の詳細な説明は、「前記光透過性導電層」が、「結晶質領域」「を有[する]」ことでどのように課題が解決されたのか、その技術上の意義を当業者が理解できる程度に、発明が解決しようとする課題とその解決手段との関係が記載されているとは認められない。

(2)当合議体の判断の詳細な説明

ア 本願発明構成について

本願発明は、「前記光透過性導電層は、結晶質領域および非晶質領域を有し」という構成(以下「本件結晶質及び非晶質構成」という。)を有している。

イ 発明の詳細な説明の記載

発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及びその解決手段に関連する記載として、次の記載がある。下線は特に関連する記載に対して当合議体が付したものである。

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ITOなどの透明導電材料は、その形成過程により、結晶構造または非晶質構造(アモルファス)を有する。例えば、スパッタリングなどの乾式方法により透明導電層(光透過性導電層)を支持基材に形成する場合は、非晶質の透明導電層が形成される。そして、非晶質の透明導電層は、熱によって、結晶質の透明導電層へと転化する。
【0007】
一般的に、結晶質の透明導電層は、非晶質の透明導電層と比較して、液体(特に、水性液体)をはじき易い。そのため、結晶質の透明導電層の表面に調光層を配置すると、透明導電層が、調光層に含まれる液体をはじく。その結果、調光層の厚みが不均一になり、調光機能にばらつきが生じる不具合が生じる。
【0008】
また、調光フィルムは、外気または日光に長期間暴露されるため、熱により、局部的にまたは全面的に、結晶質へと自然転化し、光透過率が変化する。そのため、調光フィルム面内において透明度のムラが生じる不具合が生じる。すなわち、熱安定性に劣る。
【0009】
本発明は、熱安定性が良好であり、調光機能のばらつきを低減することができる光透過性導電フィルムおよび調光フィルムを提供することにある。」
「【0034】
光透過性導電層3は、結晶質領域4および非晶質領域5を有する。すなわち、光透過性導電層3は、半結晶質である。
【0035】
結晶質領域4は、光透過性導電層3を形成する材料(例えば、ITO)が、結晶質となっている平面視領域である。すなわち、結晶質領域4は、結晶粒6を含有している。結晶質領域4では、上下方向の一部に結晶粒6が存在していればよく(図2AのA部)、必ずしも、上下方向全体に亘って結晶粒6が存在する状態(図2AのB部)である必要はない。
【0036】
非晶質領域5は、結晶質領域4以外の領域であって、光透過性導電層3を形成する材料(例えば、ITO)が非晶質(アモルファス)状態である平面視領域である。すなわち、非晶質領域5では、結晶粒6が存在していない。
【0037】
光透過性導電層3は、結晶質領域4および非晶質領域5を併有することによって、結晶質領域4を全く有しない完全非晶質状態から、結晶質領域4が発生する際に生じる不具合(大きな光透過性の変動)を抑制することができる。また、光透過性導電層3は、少なくとも一部(本実施形態では大部分)に、柔軟性のある非晶質領域5を有することによって、製造時や搬送時の衝撃によるクラックを抑制することができる。また、光透過のムラの発生や調光機能の不具合の発生を抑制することができる。
【0038】
光透過性導電層3(加熱前)において、結晶質領域4に存在する結晶粒6の最大長は、200nm以下、好ましくは、170nm以下、より好ましくは、150nm以下、さらに好ましくは、120nm以下、とりわけ好ましくは、80nm以下、特に好ましくは、60nm以下、最も好ましくは、45nm以下である。最大長の下限は、例えば、0.1nm以上、好ましくは、1nm以上である。結晶粒の最大長が上記上限以下であれば、光透過性導電層3の結晶粒6の成長を抑制でき、長期加熱保存後の光透過率の変化を低い範囲で抑制することができ、耐久性に優れる。」
「【0043】
光透過性導電層3を高温処理した際において、すなわち、高温処理済光透過性導電層において、結晶粒6の最大長は、200nm以下、好ましくは、170nm以下、より好ましくは、150nm以下、さらに好ましくは、120nm以下、特に好ましくは、100nm以下、最も好ましくは、80nm以下であり、また、例えば、0.1nm以上、好ましくは、1nm以上である。
【0044】
また、その際において、結晶質領域4の占める面積は、例えば、0.5%以上、好ましくは、1%以上であり、また、例えば、60%以下、好ましくは、50%以下、より好ましくは、40%以下、さらに好ましくは、30%以下、特に好ましくは、20%以下、とりわけ好ましくは、15%以下、最も好ましくは、5%以下である。
【0045】
高温処理した際における結晶粒6の最大長または結晶質領域4の面積が、上記範囲であれば、長期加熱保存後の光透過率の変化を非常に低い範囲で抑制することができ、熱安定性に優れる。」
「【0073】
そして、この光透過性導電フィルム1では、光透過性導電層3が、結晶質領域4および非晶質領域5を有し、光透過性導電層3における結晶粒6の最大長が、200nm以下である。
【0074】
したがって、調光機能層8を光透過性導電層3表面に均一に塗布できたり、調光機能層8内部の透過性導電層表面上の気泡の形成を抑制できる。よって、調光機能層8を均一に配置することができ、調光機能のばらつきを低減することができる。これは、結晶質領域4において、液体をはじき易い結晶粒6が特定以下の大きさになっているため、すなわち、液体をはじく構成単位が細分化されているため、調光機能層8を構成する溶液がはじかれる面積が低減していることによるものと推察される。」

ウ 発明が解決しようとする課題について

本願の発明の詳細な説明の【0009】の記載によれば、本願の発明が解決しようとする課題は、「熱安定性が良好であり、調光機能のばらつきを低減することができる光透過性導電フィルムおよび調光フィルムを提供する」ことであると認められる。

そして、前記「調光機能のばらつきを低減することができる」「光透過性導電フィルムおよび調光フィルムを提供する」こと(以下「本願課題1」という。)について、【0007】には、結晶質の透明導電層は、非晶質の透明導電層と比較して、液体(特に、水性液体)をはじき易いため、結晶質の透明導電層の表面に調光層を配置すると、透明導電層が、調光層に含まれる液体をはじき、調光層の厚みが不均一になり、調光機能にばらつきが生じる不具合が生じると記載されている。

また、前記「熱安定性が良好」である「光透過性導電フィルムおよび調光フィルムを提供する」こと(以下「本願課題2」という。)について、【0008】には、調光フィルムが熱により結晶質へと自然転化し、光透過率が変化するため、調光フィルム面内において透明度のムラが生じる不具合が生じることを「熱安定性に劣る」と記載されている。

エ 発明が解決しようとする課題とその解決手段の関係について

発明が解決しようとする課題と本件結晶質及び非晶質構成との関係について、以下検討する。

まず、本願課題1の解決手段は、光透過性導電層3が非晶質領域5を有し、光透過性導電層3における結晶粒6の最大長を、200nm以下とすること(【0073】・【0074】)であり、これにより、液体をはじきにくい非晶質領域を有するとともに、結晶質領域においても液体をはじく構成単位が細分化されているため、調光機能層8を構成する溶液がはじかれる面積が低減し、本件課題1を解決できると認められる。

次に、本件課題2の解決手段は、光透過性導電層3(加熱前)において、結晶質領域4に存在する結晶粒6の最大長を、200nm以下とすること(【0038】)及び高温処理済光透過性導電層において、結晶粒6の最大長を200nm以下とすること(、【0043】・【0045】)であり、これにより、光透過性導電層3の結晶粒6の成長を抑制でき、長期加熱保存後の光透過率の変化を低い範囲で抑制することができ、本件課題2を解決できると認められる。

これらのことから、本件結晶質及び非晶質構成のうち、非晶質領域を有することの技術上の意義は、非晶質領域は、調光機能層8を構成する溶液がはじかないことから、調光機能のばらつきを低減することであると認められる。

しかしながら、本件結晶質及び非晶質構成のうち、結晶質領域を有することの技術上の意義は、前記イで摘記した記載及びその他の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても不明である。すなわち、透明導電層における結晶質領域は、【0007】によると、調光層に含まれる液体をはじき、調光機能にばらつきが生じる不具合が生じるものであり、また、【0038】によると、結晶粒6は一般には熱により結晶成長するものと認められることから、結晶質領域は少ない方が良く、理想的にはゼロであることが好ましいと考えられる。

これに対して、発明の詳細な説明の【0037】には、「光透過性導電層3は、結晶質領域4および非晶質領域5を併有することによって、結晶質領域4を全く有しない完全非晶質状態から、結晶質領域4が発生する際に生じる不具合(大きな光透過性の変動)を抑制することができる。」と記載されている。

しかしながら、前記【0037】の記載からは、結晶質領域4を全く有しない完全非晶質状態から結晶質領域4が発生する際に生じる「大きな光透過性の変動」がどのようなものなのか、また、このような変動が生じることが、結晶質領域4を有することでなぜ解決されるのか、当業者が理解できるものとは認められない。すなわち、「大きな光透過性の変動」について、結晶質領域4を全く有しない完全非晶質状態から、結晶質領域4が発生する際の当該変動の大きさ(例えば、結晶質領域の割合0%から1%に変化するときの光透過性の変動の大きさ)と、結晶質領域4を有する状態から結晶質領域4が発生する際の当該変動の大きさ(例えば、結晶質領域の割合1%から2%に変化するときの光透過性の変動の大きさ)が異なるのか、異なるのであればなぜ異なるのか、結晶質領域4を有することでどのような機序で「大きな光透過性の変動」を抑制することができるのかについて、発明の詳細な説明に当業者が理解することができる程度の説明が記載されているとは認められない。

また、実施例及び比較例について検討しても、結晶質領域4と非晶質領域5を併用する場合と比較されるべき完全非晶質状態についての比較例がないため、完全非晶質状態に対して結晶質領域を有する状態であることによってどのような効果が生じるものか、実施例において実験的な裏付けもなされていない。

したがって、発明の詳細な説明の【0037】でいう「不具合(大きな光透過性の変動)」がどのようなもので、結晶質領域4と非晶質領域5を併用することでなぜこの不具合(大きな光透過性の変動)を抑制できるのか、出願時の技術常識を踏まえても当業者が把握することができない。

そのため、本願の発明の詳細な説明は、「前記光透過性導電層」が、「結晶質領域」「を有[する]」ことでどのような課題が解決されたのか、その技術上の意義を当業者が理解できる程度に、発明が解決しようとする課題とその解決手段との関係が記載されているとは認められない。

オ 請求人の主張について

請求人は、令和7年1月28日提出の意見書において、本願の優先日前に頒布された参考文献1(特開平9-71857号公報)、参考文献2(内海健太郎、飯草仁志、 “In2O3-SnO2系透明導電膜における電気光学特性のSnO2量依存性” 、TOSOH Research & Technology Review、2003年、Vol.47、p.11-20)、および本願の実施例から、結晶質領域を全く有しない完全非晶質状態よりも、結晶質領域と非晶質領域を併用する方が、加熱後の結晶質割合の変化を小さくできるであろうことが理解でき、したがって、「非晶質状態から、結晶質領域4が発生する際に生じる不具合(大きな光透過性の変動)」と「結晶質領域4と非晶質領域5を併用することでなぜこの不具合が抑制できる」のかについて、当業者であれば十分に理解できる旨主張する。

そこで請求人の主張について検討すると、参考文献1、2から、非晶質膜を加熱処理すると、透過率が変化する(高くなる)ことは、本願の出願時の技術常識であると認められる。また、本願の明細書の【0110】の表1から、実施例1、2及び比較例1において、高温処理前後の結晶質割合の変化が大きくなるほど、加熱前後の透過率の変動が大きくなる(熱安定性が低い)ことが把握できる。

しかしながら、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載並びに前記技術常識(参考文献1、2)を踏まえても、前記エで指摘した事項は依然として不明である。すなわち、本願の表1については、結晶質領域4と非晶質領域5を併用する場合と比較されるべき完全非晶質状態についての比較例がないため、完全非晶質状態に対して結晶質領域を有する状態であることによってどのような効果が生じるものかを裏付けるものではないことは、前記エで検討したとおりである。また、参考文献1、2について、上記技術常識を考慮しても、「大きな光透過性の変動」について、結晶質領域4を全く有しない完全非晶質状態から、結晶質領域4が発生する際の当該変動の大きさ(例えば、結晶質領域の割合0%から1%に変化するときの光透過性の変動の大きさ)と、結晶質領域4を有する状態から結晶質領域4が発生する際の当該変動の大きさ(例えば、結晶質領域の割合1%から2%に変化するときの光透過性の変動の大きさ)が異なるのか、異なるのであればなぜ異なるのか、結晶質領域4を有することでどのような機序で「大きな光透過性の変動」を抑制することができるのかを理解できる記載はない。

したがって、請求人の挙げる本願の表1や参考文献1、2を考慮しても、請求人の主張するように、「結晶質領域を全く有しない完全非晶質状態よりも、結晶質領域と非晶質領域を併用する方が、加熱後の結晶質割合の変化を小さくできるであろうことが理解できる」とは認められないから、請求人の主張は採用することができない。

(3)小括

以上検討のとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

2 理由2(進歩性)について

(1)本願発明の認定

本願発明は前記第2に記載したとおりである。

(2)引用文献1の記載事項及び引用発明の認定

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ア 引用文献1の記載事項

当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された引用文献1(特開2016-157021号公報)には、次の記載がある(下線は当合議体が付した。以下同じ。)。

「【請求項1】
一対の電極基板間に調光層を備える電界駆動型調光素子の電極基板として用いられる、電界駆動型調光素子用透明導電性フィルムであって、
透明フィルム基材の少なくとも一方の面に、非晶質の透明導電層を備え、
前記透明導電層は、膜厚が30nm~100nmであり、かつ比抵抗が6×10-4Ω・cm以下である、電界駆動型調光素子用透明導電性フィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電界駆動型調光素子の電極基板として用いられる透明導電性フィルムに関する。さらに、本発明は電極基板として当該透明導電性フィルムを用いた電界駆動型調光素子に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、低抵抗化の観点からは、透明導電層は結晶質であることが好ましい。一方で、電界駆動型調光素子では、電極上に液晶材料やエレクトロクロミック材料を含む調光層が形成されるため、電極と調光層との界面での相互作用や、調光層を塗布形成する際の表面の濡れ性の観点から、透明導電層が非晶質材料であることが求められる場合がある。
【0009】
続きを表示(全13行)
また、結晶質の透明導電層は、湾曲加工によるキズやクラック等が生じやすいことからも、透明導電層が非晶質であることが求められる場合がある。特に窓やインテリア等に利用される調光素子は、様々なサイズに加工する必要がある上に、ディスプレイやタッチパネルに比べて大面積であるため、全ての工程を自動化することが困難である。そのため、透明導電層が結晶質であると、透明導電性フィルムのカッティングや貼り合わせ等の加工時の曲げや擦れ等により、透明導電層にキズやクラックが生じやすく、歩留まりの低下を招く傾向がある。
【0010】
上記のように、フィルム基材上に形成される透明導電層は、成膜直後は非晶質である。しかし、金属酸化物は、熱力学的には、非晶質よりも結晶質の方が安定であるため、積極的に加熱を行わなくとも、透明導電層は自然環境温度(例えば40℃程度)で経時的に結晶質に転化する傾向がある。
【0011】
透明導電層が結晶化すると表面抵抗が低下し、電界駆動型調光素子の電圧オン時の光の透過・散乱状態が変化するため、素子の動作が不安定になる。また、低温(環境温度)で結晶化が生じた場合、加熱により積極的に結晶化を行う場合に比べて、結晶化の進行が面内で不均一となる。そのため、透明導電層の面内での抵抗のバラツキが生じ、調光素子による光の透過・散乱が面内で不均一になり、意匠性が低下するという問題がある。
【0012】
非晶質透明導電層は、結晶質透明導電層に比べて比抵抗が大きいため、表面抵抗を低くするためには膜厚を大きくする必要がある。非晶質の透明導電層は膜厚が大きくなると低温でも結晶化し易くなる傾向があり、表面抵抗の低下と非晶質状態の維持とは、相反する関係にある。
【0013】
上記に鑑み、本発明は、表面抵抗が小さく、かつ経時的に非晶質状態を維持可能な非晶質透明導電層を備え、電界駆動型調光素子に適用可能な透明導電性フィルムの提供を目的とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0023】
[透明導電性フィルム]
図1は、透明導電性フィルムの一実施形態を表す模式的断面図である。本発明の電界駆動型調光素子用透明導電性フィルム1は、透明フィルム基材11上に、透明導電層21を備える。」
「【0027】
透明フィルム基材11の単位面積あたりの水分含有量は、15~200μg/cm2が好ましく、30~190μg/cm2がより好ましく、40~170μg/cm2がさらに好ましい。基材の水分量が上記範囲内であれば、結晶化が生じ難くかつ低抵抗の透明導電層が得られ易くなる。基材の水分が過渡に小さいと環境温度での透明導電層の結晶化が生じやすくなる傾向があり、基材の水分量が過度に大きいと透明導電層の比抵抗が高くなる傾向がある。水分含有量(μg/cm2)は、JISK7251-B法(水分気化法)により求めた水分含有量から、単位面積あたりの水の含有量として算出できる。
【0028】
透明フィルム基材11の厚みは特に限定されないが、一般に2~500μm程度であり、20~300μm程度が好ましい。なお、透明フィルム基材の水分含有率は、材料の特性や保存環境(例えば、温度や湿度)に依存し、単位面積あたりの水分含有量は、厚みに概ね比例する。そのため、単位面積あたりの水分含有量が上記範囲内となるように、透明フィルム基材の材料や保存環境および厚みが定められることが好ましい。」
「【0032】
<透明導電層>
フィルム基材11上に透明導電層21を形成することにより、透明導電性フィルムが得られる。透明導電層21は、非晶質の金属酸化物層である。透明導電層21の膜厚は、30~100nmである。透明導電層21の膜厚が上記範囲であれば、高透明性と低表面抵抗を両立できる。透明導電層21の膜厚は、40~90nmが好ましく、45~85nmがより好ましく、50~80nmがさらに好ましい。」
「【0035】
透明導電層21は、比抵抗が6×10-4Ω・cm以下であり、好ましくは5.8×10-4Ω・cm以下である。透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上である。透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好ましく、3.5×10-4Ω・cm以上がより好ましい。透明導電層21の表面抵抗は、170Ω/□以下が好ましく、150Ω/□以下がより好ましく、120Ω/□以下がさらに好ましく、100Ω/□以下が特に好ましく、90Ω/□以下が最も好ましい。透明導電層の表面抵抗が小さければ、電界印加時の面内電位差が小さくなり、調光素子の電圧印加時における光の透過・散乱状態が面内で均一となる。面内電位の均一性を高める観点から、透明導電層の抵抗は小さいほど好ましいが、表面抵抗を小さくするためには、透明導電層の厚みを大きくする必要があり、透明性が損なわれる場合がある。そのため、透明導電層の表面抵抗は、一般には、20Ω/□以上であり、好ましくは30Ω/□以上である。
【0036】
透明導電性フィルム1を80℃で240時間加熱した際に、加熱前後での透明導電層21の抵抗変化率の絶対値は、55%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましく、30%以下が特に好ましく、20%以下が最も好ましい。抵抗変化率は、下記式により求められる。
抵抗変化率(%)={(加熱後の表面抵抗/加熱前の表面抵抗)-1}×100
【0037】
加熱による抵抗変化が小さければ、透明導電層21の抵抗の経時的な変化が小さく、信頼性に優れる調光素子が得られる。前述のように、金属酸化物は、加熱により結晶化が促進される傾向があり、金属酸化物の結晶化に伴って、透明導電層の抵抗率および表面抵抗は大幅に低下する。そのため、透明導電層21は、80℃で240時間加熱後も非晶質状態を維持していることが好ましい。
【0038】
透明導電層が非晶質であるか結晶質であるかは、透明導電性フィルムを酸に浸漬後、端子間抵抗を測定することにより判定できる。酸としては、非晶質の金属酸化物を溶解し、結晶質の金属酸化物を溶解しないものが用いられる。例えば、金属酸化物がITOである場合、濃度5wt%の塩酸に15分間浸漬後、水洗・乾燥し、端子間抵抗を測定すればよい。非晶質のITOは塩酸によりエッチングされて消失するために、塩酸への浸漬により抵抗が増大する。金属酸化物がITOである場合、塩酸への浸漬・水洗・乾燥後に、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超える場合に、透明導電層が非晶質であると判定できる。」
「【0043】
真空排気したスパッタ装置内に、アルゴン等の不活性ガスおよび酸素を導入しながらスパッタ成膜が行われる。スパッタ成膜時の基板温度は-20℃~150℃が好ましく、-10℃~100℃がより好ましく、0℃~70℃がさらに好ましい。基板温度度が高すぎると、基材の熱変形や、熱しわによる外観不良を生じやすい。また、基板温度が高すぎると、金属酸化物が結晶化しやすくなるため、非晶質状態の保持が困難となる場合がある。一方、基材温度が低すぎると、透明導電層の膜質の低下を招く場合がある。
【0044】
不活性ガスに対する酸素の導入量は0.1体積%~10体積%が好ましく、1体積%~6体積%がより好ましい。また、成膜時の圧力は、0.08Pa~1Paが好ましく、0.2Pa~0.8Paがより好ましい。成膜圧力が高すぎると成膜速度が低下する傾向があり、逆に圧力が低すぎると放電が不安定となる傾向がある。
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【0045】
スパッタ成膜時の酸素導入量を調整することにより、光透過率が高く、かつ膜厚が大きくても環境温度での結晶化が生じ難い透明導電層を成膜できる。図2は、ITO透明導電層成膜時の酸素導入量と、成膜直後の透明導電層の比抵抗および波長380nmにおける吸光係数の関係を表すグラフである。
【0046】
酸素導入量が少ない場合(図2Aの領域X)は、金属酸化物中の酸素量が化学量論組成よりも少なく多数の酸素欠損が存在し、相対的に金属的組成に近くなる。酸素導入量を増加させると、比抵抗が極小値をとる領域(図2Aの領域Y:ボトム領域)が存在し、さらに酸素導入量を増加させると比抵抗は再び上昇する(図2Aの領域Z:酸素過剰領域)。
【0047】
一方、図2Bに示すように、透明導電層の吸光係数は、酸素導入量の増加に伴って単調減少する傾向がある。これは、酸素量が少ない領域では金属酸化物が酸素不足の状態で、多数の酸素欠損を有し、金属的な特性を示すのに対して、酸素量の増大に伴って完全酸化物に近付くためである。
【0048】
本発明者らの検討によると、導入酸素量の増大に伴い透明導電層の金属酸化物が結晶化し難く非晶質状態を維持できる傾向があることが確認された。これは、酸素欠損が少なく、非晶質状態の金属酸化物の構造が安定しているために、コンフォメーション変化が生じ難く、金属酸化物が非晶質から結晶質に転化するための活性化エネルギーが大きくなるためであると考えられる。
【0049】
一方、成膜時の酸素導入量が過度に大きい場合(図2Aの領域Z)、金属酸化物中の酸素欠損が少ないために、キャリア密度が小さく、透明導電層の比抵抗が高くなる傾向がある。また、酸素導入量が過剰であると、加熱による抵抗変化率が大きくなる傾向があり、信頼性が低下する傾向がある。
【0050】
そのため、本発明においては、成膜直後の透明導電層の比抵抗が極小値となる付近(ボトム領域)の酸素導入量で、透明導電層の成膜を行うことが好ましい。ボトム領域の酸素導入量は、ターゲットの組成や、装置の特性、成膜温度、成膜圧力等により異なる。そのため、酸素導入量の範囲を一概に特定することは困難であるが、酸素導入量以外の条件を一定として、酸素導入量を変化させて成膜を行い、図2Aに示すように酸素導入量と比抵抗との関係を調べることにより、最適な酸素導入量を見出すことができる。」
「【0076】
[実施例1]
ロールスパッタ装置内に、厚み188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(水分含有量:73μg/cm2)のロールをセットし、スパッタ装置内を水分圧が2.0×10-3Paとなるまで排気した。その後、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、酸化インジウム(90重量%)と酸化スズ(10重量%)の混合焼結ターゲットを用い、基材温度40℃、圧力0.4Paの条件でスパッタ成膜を行い、PETフィルム上に厚み65nmのITO膜を成膜した。なお、スパッタ成膜時の酸素導入量は、透明導電層の表面抵抗が最小となるように調整した(図2のy0参照)。酸素導入量は、アルゴン100体積部に対して3.1体積部であった。
【0077】
[実施例2~4]
成膜時のフィルム基材の搬送速度を変更することにより、透明導電層の成膜厚みを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。」
「【0083】
[評価結果]
上記各実施例および比較例の基材の特性、透明導電性フィルムの成膜条件、成膜直後の透明導電層の特性、加熱試験(80℃240時間加熱)後の特性、および透明導電性フィルムの光学特性を、表1に示す。
【0084】
【表1】
[図:0001423024000001.jpg]
」
「【0090】
なお、実施例1~4および比較例2は、透明導電膜の成膜条件は同一で、膜厚が異なるのみであるが、キャリア密度および比抵抗にわずかな差がみられる。これは、上記実施例および比較例ではフィルム基材の搬送速度により膜厚を調整しているため、基材が受ける熱量(成膜ロールからの熱およびプラズマによる熱)が異なり、基材から放出される水分量等が相違することに関連すると推定される。」
「【図1】
[図:0001423024000002.jpg]
」
「【図2】
[図:0001423024000003.jpg]
」

イ 引用発明の認定

前記アから、引用文献1には、【0023】~【0056】及び【図1】に記載の電界駆動型調光素子用透明導電性フィルムにについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。

<引用発明>

「一対の電極基板間に調光層を備える電界駆動型調光素子の電極基板として用いられる、電界駆動型調光素子用透明導電性フィルムであって、
透明フィルム基材の少なくとも一方の面に、非晶質の透明導電層を備え、
前記透明導電層は、膜厚が30nm~100nmであり、かつ比抵抗が6×10-4Ω・cm以下である、電界駆動型調光素子用透明導電性フィルムであり、(【請求項1】)
電界駆動型調光素子用透明導電性フィルム1は、透明フィルム基材11上に、透明導電層21を備え、(【0023】)
フィルム基材11上に透明導電層21を形成することにより、透明導電性フィルムが得られ、透明導電層21は、非晶質の金属酸化物層であり、(【0032】)
透明導電層21は、比抵抗が5.8×10-4Ω・cm以下であり、透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上であり、透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好ましく、(【0035】)
透明導電性フィルム1を80℃で240時間加熱した際に、加熱前後での透明導電層21の抵抗変化率の絶対値は、55%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましく、30%以下が特に好ましく、20%以下が最も好ましく、(【0036】)
加熱による抵抗変化が小さければ、透明導電層21の抵抗の経時的な変化が小さく、信頼性に優れる調光素子が得られ、金属酸化物は、加熱により結晶化が促進される傾向があり、金属酸化物の結晶化に伴って、透明導電層の抵抗率および表面抵抗は大幅に低下するため、透明導電層21は、80℃で240時間加熱後も非晶質状態を維持していることが好ましく、(【0037】)
透明導電層が非晶質であるか結晶質であるかは、透明導電性フィルムを酸に浸漬後、端子間抵抗を測定することにより判定でき、酸としては、非晶質の金属酸化物を溶解し、結晶質の金属酸化物を溶解しないものが用いられ、例えば、金属酸化物がITOである場合、濃度5wt%の塩酸に15分間浸漬後、水洗・乾燥し、端子間抵抗を測定すればよく、非晶質のITOは塩酸によりエッチングされて消失するために、塩酸への浸漬により抵抗が増大し、金属酸化物がITOである場合、塩酸への浸漬・水洗・乾燥後に、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超える場合に、透明導電層が非晶質であると判定できる、(【0038】)
電界駆動型調光素子用透明導電性フィルム」

(3)対比

ア 本願発明の「光透過性基材と、光透過性導電層とを備える光透過性導電フィルムであって、」及び「光透過性導電フィルム」との特定事項について

(ア)引用発明の「透明フィルム基材11」、「透明導電層21」及び「電界駆動型調光素子用透明導電性フィルム1」は、それぞれ、本願発明の「光透過性基材」、「光透過性導電層」及び「光透過性導電フィルム」に相当する。

(イ)引用発明の「電界駆動型調光素子用透明導電性フィルム1」は、「透明フィルム基材11上に、透明導電層21を備え」るものであるから、本願発明でいう「光透過性基材と、光透過性導電層とを備える」ものといえる。

(ウ)前記(ア)及び(イ)から、引用発明は前記特定事項を備える。

イ 本願発明の「前記光透過性導電層は、結晶質領域および非晶質領域を有し、」との特定事項について

(ア)引用発明の「透明導電層21は、非晶質の金属酸化物層であ」ることから、引用発明の「透明導電層21」は、少なくとも本願発明の「非晶質領域」を有するといえる。

また、引用発明において、「透明導電層が非晶質であるか結晶質であるかは、透明導電性フィルムを酸に浸漬後、端子間抵抗を測定することにより判定でき、酸としては、非晶質の金属酸化物を溶解し、結晶質の金属酸化物を溶解しないものが用いられ、例えば、金属酸化物がITOである場合、濃度5wt%の塩酸に15分間浸漬後、水洗・乾燥し、端子間抵抗を測定すればよく、非晶質のITOは塩酸によりエッチングされて消失するために、塩酸への浸漬により抵抗が増大し、金属酸化物がITOである場合、塩酸への浸漬・水洗・乾燥後に、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超える場合に、透明導電層が非晶質であると判定できる」ものであって、引用発明の透明導電層を直接観察したものではないことから、前記透明導電層が非晶質であるとしても、結晶質領域を有するのかどうかは不明である。

(イ)前記(ア)から、本願発明と引用発明は「前記光透過性導電層は、」「非晶質領域を有」する点で共通するが、本願発明が「結晶質領域」を有しているのに対して、引用発明は透明導電性フィルムを酸に浸漬後、端子間抵抗を測定して、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超えるものであるために非晶質であると判定できるものであるが、結晶質領域を有するのかどうかは不明である。

ウ 本願発明の「前記光透過性導電層における結晶粒の最大長が、200nm以下であり、」との特定事項について

前記イから、引用発明は結晶質領域を有しているか不明であるため、結晶粒の最大長は不明である。

エ 本願発明の「前記光透過性導電層の比抵抗は、4.6×10-4Ω・cm以下であり、」との特定事項について

(ア)引用発明は「透明導電層21は、比抵抗が5.8×10-4Ω・cm以下であり、透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上であり、透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好まし」いものである。

(イ)前記(ア)から、本願発明と引用発明は「前記光透過性導電層の比抵抗は、」所定の値「以下であ」る点で共通するが、所定の値について、本願発明が「4.6×10-4Ω・cm」であるのに対して、引用発明は「5.8×10-4Ω・cm」であり、「透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上であり、透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好まし」いものである。

オ 本願発明の「前記光透過性導電層を大気雰囲気で80℃、240時間の条件で加熱した際における結晶粒の最大長が、200nm以下である、」との特定事項について

(ア)前記ウのとおり、引用発明の結晶粒の最大長は不明である。また、引用発明は「透明導電層21は、80℃で240時間加熱後も非晶質状態を維持していることが好まし」いものであるが、当該「80℃で240時間加熱」することが大気雰囲気であるのか不明である。

(イ)前記(ア)から、本願発明と引用発明は「前記光透過性導電層を」「80℃、240時間の条件で加熱した際に」前記光透過性導電層が所定の結晶状態である点で共通するが、80℃、240時間の加熱について、本願発明が「大気雰囲気で」あるのに対して、引用発明は「80℃で240時間加熱」することが大気雰囲気であるのか不明であり、また、所定の結晶状態について、本願発明が「結晶粒の最大長が、200nm以下である」のに対して、引用発明は「非晶質状態を維持していることが好まし」いものである。

カ 前記ア~オによれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>

「光透過性基材と、光透過性導電層とを備える光透過性導電フィルムであって、
前記光透過性導電層は、非晶質領域を有し、
前記光透過性導電層の比抵抗は、所定の値以下であり、
前記光透過性導電層を80℃、240時間の条件で加熱した際に前記光透過性導電層が所定の結晶状態である、光透過性導電フィルム」である点。

<相違点1>

光透過性導電層について、本願発明が「結晶領域」を有し、「前記光透過性導電層における結晶粒の最大長が、200nm以下であ」るのに対して、引用発明は透明導電性フィルムを酸に浸漬後、端子間抵抗を測定して、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超えるものであるために非晶質であると判定できるものであるが、結晶質領域を有するのかどうかは不明であり、また、そのため結晶粒の最大長も不明である点。

<相違点2>

本願発明は、前記光透過性導電層を「大気雰囲気で」80℃、240時間の条件で加熱した際における「結晶粒の最大長が、200nm以下である」のに対して、引用発明は、透明導電層21を「80℃で240時間加熱」することが大気雰囲気であるのか不明であり、また、当該加熱後の所定の結晶状態について、「非晶質状態を維持していることが好まし」いものである点。

<相違点3>

所定の値について、本願発明が「4.6×10-4Ω・cm」であるのに対して、引用発明は「5.8×10-4Ω・cm」であり、「透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上であり、透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好まし」いものである点。

(4)判断

ア 相違点1について

引用発明の「透明導電層21は、非晶質の金属酸化物層であ」るところ、引用発明における非晶質の判定方法は、「透明導電性フィルムを酸に浸漬後、端子間抵抗を測定して、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超えるもの」かどうかで判断するものであり、当該判定方法においては透明導電性フィルムの微細な領域を観察するものではなく、また、当該微細な領域が結晶質であったとしてもその領域が小さければ非晶質と判断されるものと認められるから、引用発明において「透明導電層の非晶質状態を維持する」ことが好ましいとしても、完全な非晶質状態のみならず、前記判定方法によって非晶質と見なせる程度の結晶質領域を有することは妨げるものではないといえる。引用文献1にはさらに、非晶質透明導電層は、結晶質透明導電層に比べて比抵抗が大きいこと、及び非晶質の透明導電層は膜厚が大きくなると低温でも結晶化し易くなる傾向があり、表面抵抗の低下と非晶質状態の維持とは、相反する関係にあること(【0012】)が記載されており、引用発明において、非晶質の判定方法において非晶質と判定される程度の結晶質領域を備えることは、非晶質性の維持と達成すべき比抵抗の値のトレードオフから当業者が適宜選択し得る事項であるともいえる。また、引用発明は、「金属酸化物の結晶化に伴って、透明導電層の抵抗率および表面抵抗は大幅に低下するため、透明導電層21は、80℃で240時間加熱後も非晶質状態を維持していることが好まし」いものであるため、その製造時時点において結晶質領域を有するとしてもその領域は可能な限り小さく、結晶成長を抑制するために当該結晶質領域における結晶粒は可能な限り小さい方が好ましいとの技術思想を当業者は把握することができる。以上のことと、前記1で説示したとおり、本願発明において、「前記光透過性導電層」が、「結晶質領域」「を有[する]」ことの技術上の意義が不明であり、さらに、本願発明においては結晶質領域の面積割合の下限及び結晶粒の最大長の下限がいずれも特定されておらず、ごく微小な領域にごく微小な結晶粒を有するような、引用発明において実質的に非晶質領域と判断されるような形態をも包含していることを総合的に勘案すれば、引用発明において上述した程度の結晶質領域を有するようにすることは当業者が適宜なし得る設計的事項と言わざるを得ない。

したがって、引用発明において、非晶質の判定方法において非晶質と判定される程度の結晶質領域を備えることとし、その領域を可能な限り小さくすること、及び前記結晶質領域に含まれる結晶粒を可能な限り小さくし、その具体的な結晶粒の大きさとして200nm以下とすることにより、相違点1に係る本願発明と構成とすることは、引用発明から出発した当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

引用発明における、「透明導電層21は、80℃で240時間加熱後も非晶質状態を維持していることが好まし」いことについて、その加熱が大気雰囲気であるのか不明であるが、引用文献1の【0010】には「金属酸化物は、熱力学的には、非晶質よりも結晶質の方が安定であるため、積極的に加熱を行わなくとも、透明導電層は自然環境温度(例えば40℃程度)で経時的に結晶質に転化する傾向がある」と記載され、【0013】に「上記に鑑み、本発明は、表面抵抗が小さく、かつ経時的に非晶質状態を維持可能な非晶質透明導電層を備え、電界駆動型調光素子に適用可能な透明導電性フィルムの提供を目的とする。」と記載されていることからすれば、前記「加熱」は、透明導電層21の金属酸化物が、自然環境温度で経時的に非晶質から結晶質に転化する傾向があることから、経時的に非晶質状態を維持可能な非晶質透明導電層であるかの指標を得るための「加熱」であると把握でき、そうすると、引用発明でいう「加熱」は、自然環境と同様の大気雰囲気であると考えるのが自然であるから、引用発明の加熱は大気雰囲気であると認められ、仮に引用発明の加熱が大気雰囲気ではないとしても、上述した引用文献1の記載から、引用発明の加熱を大気雰囲気とすることは、当業者が適宜なし得る事項である。

また、前記アのとおり、引用発明から出発した当業者は、結晶質領域の結晶粒が可能な限り小さい方が好ましいことを把握できるのであって、「80℃で240時間加熱後」も上記結晶粒が小さい方が、その後も非晶質状態を維持できるため、経時的に非晶質状態を維持可能であると把握することができる。

そうすると、引用発明において前記加熱後にも前記結晶粒の大きさを200nm以下であるようにすることは、非晶質状態の維持を目的として当業者が適宜設計し得る事項である。

ウ 相違点3について

(ア)「光透過性導電層の比抵抗」を特定することの技術上の意義

本願発明において、「前記光透過性導電層3の比抵抗は、4.6×10-4Ω・cm以下であ[る]」ことの技術上の意義について明細書の記載を参酌すると、「大型の調光装置として用いた場合でも、良好な電気駆動を実現できる」(【0050】)ことである。

ところで、本願発明では、「前記光透過性導電層3の比抵抗は、4.6×10-4Ω・cm以下であ[る]」こととともに、「前記光透過性導電層は、結晶質領域および非晶質領域を有[する]」ことが特定されているところ、非晶質透明導電層は一般に、結晶質透明導電層に比べて比抵抗が大きいことが知られているが(引用文献1の【0012】参照。)、本願の明細書の【0110】の表1からは、結晶質割合の大きな実施例2(結晶質割合12%、比抵抗4.5×10-4Ω・cm)の方が、結晶質割合の小さな実施例1(結晶質割合1%、比抵抗4.4×10-4Ω・cm)よりも比抵抗が大きくなっているため、本願発明においては、「前記光透過性導電層は、結晶質領域および非晶質領域を有[する]」ことが、「前記光透過性導電層3の比抵抗は、4.6×10-4Ω・cm以下であ[る]」を実現するための手段であるとは認めがたい。

してみると、本願発明における「前記光透過性導電層3の比抵抗は、4.6×10-4Ω・cm以下であ[る]」との特定は、達成すべき結果(「大型の調光装置として用いた場合でも、良好な電気駆動を実現するために、比抵抗を小さくする」という課題そのもの)を特定しているにすぎない、いわゆる願望クレーム(達成すべき結果で構成を特定するもの)であるといえる。

(イ)a 願望クレーム(達成すべき結果で構成を特定するもの)の発明の進歩性の判断

(a)相違点3に係る本願発明の構成は、前記(ア)で検討したとおり、「大型の調光装置として用いた場合でも、良好な電気駆動を実現するために、比抵抗を小さくする」という、達成すべき結果を特定しているにすぎないから、当該構成は、いわゆる「願望クレーム」の発明と称される域を越えるものではない。

(b)このような願望クレームの進歩性を判断するにあたっては、達成すべき結果(課題自体)に想到することが当業者にとって困難性があるというべきか否かという観点から検討すべきである。

このような進歩性要件の判断手法を示す参考裁判例を挙げると、東京高等裁判所平成15年11月27日判決(平成12年(行ケ)第429号)は、次のように判示している。

「(1)
(中略)
すなわち、本件第1発明は、特定の種類の材料が少なくとも部分的に用いられており、全体が製造された状態において、上記部分が一定の物性を持つめがねフ レーム、の発明である。その製造方法でも、ましてや上記材料自体ないしその製造方法でもない。本件で考案の対象とされる本件第1発明は、上記のようなめがねフレームそのものであって、上記製造方法、材料自体ないしその製造方法の容易想到性や、実現の困難性は,基本的に本件において問題になるものではない。
本件第1発明の進歩性を、上記の構成のめがねフレーム自体の容易想到性の有無の観点から判断することが許されることは、当然である。
(2) めがねフレームとして、○1剛性や弾性が大きすぎないこと(かけ心地を軟らかくするためである。)、並びに、○2少なくとも部分的に(例えばつる、テンプル等において)ある程度の弾性を持つこと(かけたとき容易にずれたり外れたりしないようにするためである。)、の二つの性質は、好ましいというより、むしろ当然備えるべきものであり、そのことは、当業者のみならず、単なる消費者であっても容易に思い付く、一般常識といってもよいことである。
(中略)
本件第1発明は、前記のとおりのものであり、要するに、ニッケル-チタニウムベースの形状記憶合金を用いて、これに加工硬化と熱処理を加え、めがねのフレームとして具えていることが好ましい特性を、実用性の面からみて好ましい温度幅の全体にわたって維持するようにしてあるめがねフレーム、というものであり,それ以上のものではない。ニッケル-チタニウムベースの形状記憶合金及びそれに対する加工硬化と熱処理という周知技術の下で、これをみれば、つまるところ,これらの技術を用いて達成すべき課題をそのまま構成要件としただけのものであり、それ以上に具体的な要素は何ら有するものではない(このような課題を実現する具体的手段に想到することは困難であり得ても、このような課題に想到することには何らの困難もない。両者の区別は明確に認識されなければならない。)。」(なお、「,」を「、」に改めた(次の参考裁判例も同じ。)。また、丸数字(○の中に数字)を「○1」などと表記を改めた。)

その他の裁判例としては、東京高等裁判所昭和37年6月26日判決(昭和34年(行ナ)第6号、審決取決訴訟判決集昭和36・37年269頁)もある。

「本件特許請求の範囲における数的限定は、従来知られたものを除外した範囲の、高い酸化鉄濃度と高い残留磁化とである、というにとどまるといわなければならないが、酸化鉄濃度と残留磁化(保磁力)との高いことが従来から要求されているととろであることは、前記のとおりである。原告が本件特許出願において特許を請求している事項は、上記の傾向に基き従来品を包含しない特性の優れた範囲に限定したものに相当し、当業技術者がそのように限定することに格別の工夫を必要とするものとは、とうてい考えることができない。
(中略)
本件特許出願明細書中発明の詳細なる説明の前記記載によれば、本願の発明者が発明した新しい技術として上記明細書に開示されているところのものは、むしろ、従来にない優秀な磁気記録材料の製造方法であって、製造されたその材料そのものではないといわなくてはならない。
(中略)
本願明細書に記載された製造方法が新規有用なものであって方法として特許さるべきであるかどうかは別論として、従前のものよりも優れた物というに異ならない本願の特許請求事項は、当業者の希望するところであっても、そのような希望を述べることに格別の発明能力を要するものとは考えられない。」

b 引用発明は、「透明導電層21は、比抵抗が5.8×10-4Ω・cm以下であり、透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上であり、透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好まし」いものである。

そうすると、引用発明から出発した当業者が、透明導電層21の非晶質状態を維持した上で、可能な限り小さな比抵抗とするという、達成すべき結果(課題自体)を想到することは容易になし得たといえる。

したがって、前記aを踏まえれば、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明から当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ)また、前記(イ)の願望クレームにおける容易想到性の議論を措くとしても、以下のとおり、引用発明から出発した当業者は、相違点3に係る本願発明の構成に容易に至るといえる。

a 引用文献1の表1における実施例1~4から、ITO膜の厚みが薄くなると比抵抗が小さくなることを当業者は把握することができる。

このことと、引用文献1の【0090】に、基材から放出される水分量等が相違することが比抵抗に差が生じる要因であると推定されることが記載されていることから、当業者は、引用発明のITO膜の製膜条件において水分量を変化させることで比抵抗を小さくすることが可能であることを把握することができる。

b そして、引用発明は、「透明導電層21は、比抵抗が5.8×10-4Ω・cm以下であり、透明導電層を低抵抗化する観点において、比抵抗は低いほど好ましいが、非晶質の透明導電層の比抵抗は、一般に2.8×10-4Ω・cm以上であり、透明導電層の非晶質状態を維持するためには、透明導電層の比抵抗は、3.0×10-4Ω・cm以上が好まし」いものであることから、引用発明は透明導電層の比抵抗を3.0×10-4Ω・cmから5.8×10-4Ω・cmの間とするものであって、相違点3に係る本願発明の「4.6×10-4Ω・cm」なる値は、引用発明で好ましいとされている比抵抗の範囲内の値にすぎないものである。そして、前記aの比抵抗と膜厚、製膜条件における水分量等を考慮して、透明導電層の比抵抗として、3.0×10-4Ω・cm以上であって可能な限り低い比抵抗として、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、引用発明から出発した当業者が容易に想到し得たことである。

エ 総合検討

相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基づいて、当業者にとって予測することができない顕著な効果であるとはいえない。

オ 請求人の主張について

(ア)請求人は、(i)引用文献1に「結晶質領域」または「結晶粒」が存在することは一切示されておらず、加熱前および加熱後の結晶粒の最大長が200nm以下であることは実施例にも明細書本文にも記載も示唆もされていないこと、(ii)引用文献1の実施例に比抵抗が5.0~6.0-4Ω・cmの透明導電層が得られたことが示されているが、比抵抗「4.6×10-4Ω・cm以下」を有する透明導電層は具体的に開示されていなく、また、本願発明に相当する比抵抗を得るための手段についても記載も示唆もされていないこと、(iii)本願明細書の段落【0050】には非晶質性の維持のために比抵抗の値が関係あることが記載されていることから、引用発明と本願発明は上記のとおり異なる比抵抗を有するため、引用発明は、本願発明と同等の「光透過性導電層の非晶質性」、すなわち「非晶質領域」と「結晶質領域」を有し、加熱前および加熱後の「結晶粒の最大長200nm以下」を備えないこと、を主張する。

(イ)そこで、請求人の主張について検討する。

(i)について、前記アで説示したとおり、引用発明から出発した当業者が相違点1に係る本願発明の構成を想到することは容易になし得たことである。

(ii)について、前記ウで説示したとおり、引用発明から出発した当業者が相違点3に係る本願発明の構成を想到することは容易になし得たことである。また、引用発明において相違点3に係る本願発明の比抵抗を得るための手段について検討すると、前記ウ(ウ)aで説示したとおり、引用文献1の記載から、当業者は、引用発明のITO膜の製膜条件において水分量を変化させることで比抵抗を小さくすることが可能であることを把握することができる。

(iii)について、前記ウ(ア)や前記ウ(ウ)aで説示したとおり、比抵抗を決定する要因は非晶質性のみではないことが理解できるから、本願発明と引用発明の比抵抗が異なることが、引用発明が本願発明と同等の「光透過性導電層の非晶質性」、すなわち「非晶質領域」と「結晶質領域」を有し、加熱前および加熱後の「結晶粒の最大長200nm以下」を備えないことをただちに意味するものではないが、仮に請求人主張のように解するのであれば、引用発明において相違点3に係る本願発明の比抵抗とすることが当業者が容易になし得たことであることは前記ウで説示したとおりであるから、この結果得られる構成は、本願発明と同等の「光透過性導電層の非晶質性」、すなわち「非晶質領域」と「結晶質領域」を有し、加熱前および加熱後の「結晶粒の最大長200nm以下」を備えることとなる。

(ウ)したがって、前記請求人の主張は採用することができない。

(5)小括

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-018130

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