2021-014828
金融資産管理システム
- 審判番号
- 2021-014828
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-210629外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月01日
- 審決日
- 2023年03月15日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社三菱UFJ銀行
- 【請求人代理人】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
- 分類
- P18 .121-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
1 手続の経緯
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本願は、平成28年10月27日に出願された特願2016-210629号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和4年10月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載した事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レートに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部と、預け入れされた金融資産に相当する第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部と、前記第1金融資産が記録されてから第1設定時間が経過したときにおける前記第1金融資産から第2金融資産にシフトするための交換レートが、前記条件を満たしているか否かを判定し、前記条件が満たされていない場合には前記条件が満たされるまで前記第1設定時間が経過する度に前記条件が満たされているか否かを再び判定する判定部と、を含み、前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である、金融資産管理システム。」
3 当審拒絶理由
当審から令和4年8月3日付けで通知した拒絶理由のうち、請求項1についての理由3は、概略以下のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4 引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、複数の口座間において資金移動を実行する方法に係り、特に予め設定された実行条件に従って、銀行などに保有する各種口座間で資金を移動する方法に関する。」
「【0006】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためには、次のようにすれば良い。当該顧客と契約した複数口座(円貨建や外貨建の預金口座、債券口座、投資信託口座等)につき、資金移動に関して顧客毎に条件(予め為替レート、価格、金利、運用利回り、時価総額等の資金移動を実施するためのキーとなる条件、資金移動金額、資金移動有効期限、資金移動優先順位、資金移動制限回数、資金配分割合等を単一、または複数)を設定・管理し、その条件の範囲内において最も適した資金移動のパターンを選択し、選択された口座間で自動的に資金移動を実施する。この条件は顧客あるいは口座を管理する金融機関の要望で種々設定でき、例えば、(1) 資金移動先口座から、さらに資金移動を行うための資金移動先の条件を単一、または複数設定しても良いし、(2)資金移動を実施した後の資金移動前の通貨を基準とした必要利回りを条件設定しても良いし、(3)対象顧客の取引状況や預金残高等の顧客取引情報により、資金移動を実施するためのキーとなる金利、為替レート等を上下させるようにしても良いし、(4)予め条件設定する資金移動金額を、全額、または顧客が希望する金額で指定するようにしても良いし、(5)予め条件設定する資金移動有効期限を、契約において設定する最長期限、または顧客が希望する期限で指定するようにしても良いし、(6)予め条件設定する資金移動優先順位を、同順位または、顧客が希望する順位で指定するようにしても良いし、(7)資金移動元口座の残高が不足する場合、同一人が保有する他の同通貨建資金口座のうち、最も金利の低い資金口座から、資金移動元口座へ自動的に振替え、資金移動を実施するようにしても良いし、(8)資金移動元口座の残高が不足する場合、一定の与信範囲内において不足する口座の通貨建の貸越しを自動的に行い、資金移動を実施するようにしても良い。」
「【0008】【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、口座保有者が有する複数の異種通貨口座間において、円貨建預金口座から米ドル建預金口座、円貨建預金口座の順に資金が移動する場合を例に説明する。【0009】図1は本実施例の全体構成を示す図である。本実施例において資金移動システム20は、日々更新する外国為替相場や金融商品の時価を提供する時価システム22に接続され、為替相場や金融商品の時価の情報を入手し、勘定処理システム21に対して資金移動の指示を出す。勘定処理システム21は、銀行のマルチマネー預金等の資金口座を管理するシステムで、勘定処理システム21は、顧客の円貨建預金口座DB211と外貨建預金口座DB212、債券口座DB213、投資信託口座DB214、顧客情報DB215を有し、顧客の口座を管理している。勘定処理システム21は資金移動システム20の通信制御機構202から資金移動指示を入力し資金の移動処理を行う。このとき、顧客情報DB215において管理されている情報が参照され、資金移動・配分内容が決定される。顧客情報DB215は、本システムを利用する顧客の顧客番号、口座番号、取引情報、顧客が保有する各口座の残高情報、資産比率情報等を格納している。【0010】資金移動システム20は、制御機構201、通信制御機構202、DB管理機構203を備えている。DB管理機構203は口座登録DB204とマーケットプライスDB205に接続され、マーケットプライスDB205は時価システム22とネットワークを経由して接続されている。【0011】図4は口座登録DB204のデータ構造を示す図であり、図5、6は図4に示す口座登録DB204の具体的な設定値の例を示す。口座登録DB204は顧客毎の資金移動の条件設定を格納するもので、共通DB31とそれに対応する1つ又は複数の資金移動対象口座DB32・33を有する(ここでは、口座登録DB204中のレコード情報に相当するものを、共通DB、資金移動対象口座DB32・33と表現している)。図では、資金移動対象口座の情報が2つある例を示しているが、その数は任意である。【0012】共通DB31は資金移動対象口座DB数311、資金移動対象口座DB名312、資金移動対象口座数313、資金移動対象口座優先順位314の4つの項目を格納する。【0013】資金移動対象口座DB数311は資金移動対象口座(資金の移動先口座の意。以下同じ)の種別毎に設けられるDBの数を管理している。図5の例では312に示すように4種別の口座が登録され、資金移動対象口座DB数311は4つであることが示されている。資金移動対象口座DB名312とは移動対象口座の種別を管理し、図5では円預金口座、米ドル預金口座、ユーロ預金口座、英ポンド預金口座が登録されている。」
「【0016】資金移動対象口座DB32・33は顧客が指定する資金移動対象口座の組合せ毎に設けられ、資金移動先口座名331、資金移動指数選択332、資金移動ターゲットプライス333、資金移動ターゲット金利334、資金移動ターゲット利回り335、資金移動対象金額336、資金移動時為替レート337、資金移動指数有効期日338、資金移動制限回数339、資金移動基準価格340の10の項目を格納する。【0017】資金移動先口座名331は資金移動対象口座を特定するための情報であって例えば口座番号等である。資金移動ターゲットプライス333とは、資金移動を実施する条件として予め顧客が設定する外国為替市場のレートや金融商品の価格等を意味する。資金移動ターゲット金利334とは、資金移動を実施する条件として予め顧客が設定する外貨預金等の預金金利等を意味する。また、資金移動ターゲット利回り335とは、資金移動を実施する条件として予め顧客が設定した運用利回り等を意味する。資金移動指数選択332は各資金移動対象口座についていずれが選択されているかを示し、資金移動指数有効期日338は資金移動対象指数選択の有効期日を示している。資金移動対象金額336は一回の資金移動で振り替えられる金額である。資金移動基準価格340とは各通貨基準の投資信託の基準価格である。【0018】次に、図2及び図3を用いて、本願発明の資金移動システム20の処理動作を説明する。図2及び図3は、図1のシステムにおける処理動作を説明するフローチャートであり、制御機構201によって管理されるもので、たとえばコンピュータのプログラムによって実現される。【0019】顧客から申込みを受けて(ステップ100)、複数の取引用口座を開設し(ステップ101)、その内の資金移動の起点となる資金口座に入金する(ステップ102)。ここでは前述の通り円貨建預金口座に入金がされたものとする。口座への入金は、顧客の既設口座からの振替等によってもよいし、任意である。開設された口座は、その種別に応じてそれぞれ円貨建預金口座DB211、外貨建預金口座DB212、債券口座DB213、投資信託口座DB214のいずれかに登録される。例えば、米ドルとユーロとイギリスポンドの3種類の外貨を資金移動対象とする場合は、外貨建預金口座DB212には3口の口座が登録されることになる。【0020】資金移動システム20は、顧客から資金の自動移動の要求条件の入力を受け、口座登録DB204に登録する(ステップ103)。【0021】資金移動システム20は時価システム22から各資金移動口座名DBに登録された資金移動対象口座に関連する為替レート、金利、市場価格等を入力して、マーケットプライスDB205に登録する(ステップ104)。【0022】本実施例では、共通DB31の資金移動対象口座優先順位314から優先順位が1位である資金移動対象口座DB(円預金口座)32を選択して、該当する資金移動先口座を抽出し(ステップ105)、当該資金口座の資金移動指数選択332の登録内容を抽出する。資金移動を行う指数は、資金移動ターゲットプライス333、資金移動ターゲット金利334、および資金移動ターゲット利回り335の3種類を用意するが、ターゲット利回りについては、資金移動後さらに移動元に資金を戻す場合のみ選択できる。よって、例では円貨建預金口座から新規に米ドル外貨建預金口座へ資金移動するため、指数はターゲットプライスとターゲット金利の2種類の設定が可能である。資金移動指数有効期日338ならびに資金移動制限回数339の範囲内かをチェックする(ステップ106)。有効期日または制限回数を経過した場合は、口座登録DB204の登録情報を無効とし(ステップ107)、顧客に対して登録情報の再設定を依頼し、登録する(ステップ103)。有効期日内および制限回数内の場合は、指数を確認し(ステップ108)、ターゲットプライスが選択されている場合(ステップ109)はターゲットプライスを取り出し、抽出した為替レートと比較し(ステップ110)、ターゲット金利が選択されている場合は(ステップ109)、抽出した米ドル外貨建預金口座の金利と比較する(ステップ111)。選択されている指数を比較した結果が資金移動条件を満たしていれば(ステップ112)、円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動対象金額336に登録されている金額を資金移動する(ステップ121)。この時、資金移動元の円貨建預金口座の残高が不足する場合は(ステップ116)、同一人が保有する他の円貨建資金口座のうち最も金利が低い資金口座を勘定処理システム21で抽出し(ステップ117)、その口座から資金移動元の円貨建預金口座へ振替えを行い(ステップ119)、振替える他の円貨建資金口座がない場合は、予め定められた一定の与信範囲を勘定処理システム21で抽出し(ステップ118)、その範囲内において不足資金を自動的に貸越しを行い(ステップ120)、米ドル外貨建預金口座に資金移動する(ステップ121)。」
「【0027】次に、米ドル外貨建預金口座から円貨建預金口座へ自動で資金移動を行う方法について説明する。まず、円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座への資金移動時に説明した資金移動対象通貨の為替レート、金利の抽出から資金移動指数のチェックまでの前処理を行う(ステップ123)。ここで、指数にターゲット利回りが選択されている場合は(ステップ124)、抽出した現在の為替レート、資金移動時の為替レート、資金移動金額等により現時点での利回りを算出し(ステップ126)、その利回りとターゲット利回りとを比較する(ステップ127)。ターゲットプライスならびにターゲット金利が選択されている場合は(ステップ124)、円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座への資金移動時に説明したターゲットプライス・金利比較処理を行う(ステップ125)。選択されている指数を比較した結果が資金移動条件を満たしていれば(ステップ128)、米ドル外貨建預金口座から円貨建預金口座に資金移動対象金額336に登録されている金額を資金移動する(ステップ139)。」
「【0029】また、条件を満たし資金移動を行った場合でも、資金移動対象口座DB毎に登録されている口座数だけ比較処理を繰返し行う(ステップ140)。【0030】比較した結果が条件を満たさない場合(ステップ128)、もしくは、与信できない場合(ステップ136)は、資金移動対象DBに登録されている口座を確認し(ステップ129)、資金移動対象口座優先順位314に次位のものがあれば、該当の資金移動先口座を選択する(ステップ130)。資金移動指数有効期日338ならびに資金移動制限回数339の範囲内かをチェックする(ステップ131)。有効期日内および制限回数内の場合は、資金移動指数の確認を行い(ステップ132)、再度、処理を行う。有効期日または制限回数を経過した場合は、口座登録DB204の登録情報を無効とし(ステップ133)、顧客に対して登録情報の再設定を依頼し、登録する(ステップ103)。【0031】優先順位が2位以下の他の資金移動対象口座DBの資金移動先口座が登録されていない場合には比較処理を終了する。【0032】優先順位が2位以下の他の資金移動対象口座DBの資金移動先口座が登録されている場合は、再びターゲットプライス、ターゲット金利、またはターゲット利回りでの比較処理を行う。この比較処理は資金移動対象口座DB毎に登録されている資金移動対象口座数313の数だけ繰返し行う。全ての処理が終了すれば、次回の処理まで据置きする(ステップ141)。」
「【0034】【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、同一もしくは異なる通貨の複数の口座間の資金移動において、予め顧客が為替レート、金利、価格、運用利回り等に対して条件を設定する事により、顧客の希望する為替レート、価格、金利、運用利回りや時価総額等にて取引を成立させることができる。この場合、資金移動の有効期限と、制限回数を登録することができるので、無限に移動が繰り返されるのを防止することが可能である。【0035】また、資金移動先の口座を複数指定しておき、全ての口座に対して条件を設定しておくことにより、複数の口座間での自動資金移動も可能である。」
「[図:0001397563000001.jpg]」(図1)
「[図:0001397563000002.jpg]」(図2)
「[図:0001397563000003.jpg]」(図3)
「[図:0001397563000004.jpg]」(図6)
(2)上記1の記載事項からみて、次のことがいえる。
ア 引用文献1には、日々更新する外国為替相場や金融商品の時価を提供する時価システム22に接続され、為替相場や金融商品の時価の情報を入手し、勘定処理システム21に対して資金移動の指示を出す資金移動システム20と、顧客の円貨建預金口座DB211と外貨建預金口座DB212、顧客情報DB215を有し、顧客の口座を管理している勘定処理システム21とを備えるシステム(【0009】、図1)が記載されている。
また、引用文献1の資金移動システム20は、制御機構201、通信制御機構202、DB管理機構203を備え、DB管理機構203は、口座登録DB204に接続され(【0010】)ており、口座登録DB204は、顧客毎の資金移動の条件設定を格納するもので、複数の資金移動対象口座DB32・33を有し(【0011】)ている。
そうすると、引用文献1には、「複数の資金移動対象口座DBを有し、顧客毎の資金移動の条件設定を格納する口座登録DBに接続されるとともに、為替相場や金融商品の時価の情報を入手し、勘定処理システムに対して資金移動の指示を出す資金移動システムと、顧客の円貨建預金口座DBと外貨建預金口座DB、顧客情報DBを有し、顧客の口座を管理する勘定処理システムとを備えるシステム」が記載されているといえる。
イ 上記アの口座登録DB204が有する資金移動対象口座DB32・33は、顧客が指定する資金移動対象口座の組合せ毎に設けられ、資金移動先口座名331、資金移動指数選択332、資金移動ターゲットプライス333、資金移動ターゲット金利334、資金移動ターゲット利回り335、資金移動対象金額336、資金移動時為替レート337、資金移動指数有効期日338、資金移動制限回数339、資金移動基準価格340の10の項目を格納し(【0016】)、資金移動ターゲットプライス333とは、資金移動を実施する条件として予め顧客が設定する外国為替市場のレートを意味し、資金移動ターゲット金利334とは、資金移動を実施する条件として予め顧客が設定する外貨預金等の預金金利等を意味し、また、資金移動ターゲット利回り335とは、資金移動を実施する条件として予め顧客が設定した運用利回り等を意味し、資金移動指数選択332は各資金移動対象口座についていずれが選択されているかを示す(【0017】)ものである。
また、図2及び図3は、図1のシステムにおける処理動作を説明するフローチャートであり、制御機構201によって管理されるもの(【0018】)、すなわち、資金移動システム20の制御機構201によって実行される処理動作であるところ、そのステップ103において、資金移動システム20は、顧客から資金の自動移動の要求条件の入力を受け、口座登録DB204に登録する(【0020】)。ここで、米ドル外貨建預金口座から円貨預金口座への資金の「自動移動の要求条件」は、図6(2)の「資金移動指数選択」の項に「ターゲットプライス」が登録され、該「ターゲットプライス」に対応する「資金移動ターゲットプライス」の項に登録された「110 円≦1 USD」のことといえる。
以上より、引用文献1には、資金移動システム20についての「米ドル外貨建預金口座から円貨預金口座への資金移動を実施する条件である外国為替市場のレートを意味する資金移動ターゲットプライスとして「110 円≦1 USD」を口座登録DBに登録する機能」が記載されているといえる。
ウ 上記アの顧客情報DB215は、本システムを利用する顧客の顧客番号、口座番号、取引情報、顧客が保有する各口座の残高情報、資産比率情報等を格納(【0009】)するものである。
また、図2のステップ102で、資金移動の起点となる円貨建預金口座に入金され(【0019】)た資金は、ステップ121で、円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動対象金額に登録されている金額が資金移動(【0022】)される。このとき、顧客DBの取引情報及び各口座の残高情報として、資金移動した米ドルの金額及び米ドル外貨建預金口座の金額が記録されることは明らかであり、この点は、引用文献1に記載されているに等しい事項である。
そうすると、引用文献1には、顧客情報DBに接続する勘定処理システム21についての、「円貨建預金口座に入金された資金のうち、資金移動対象金額に登録されている金額が円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動された米ドル金額及び資金移動後の米ドル外貨建預金口座の金額を顧客情報DBに記録する機能」が記載されているといえる。
エ 図2及び図3より、資金移動システム20は、上記ウの資金移動の後、ステップ141で「次回処理まで据置き」して、ステップ123の前処理に移行する。ここで、図3の前処理(ステップ123)及び比較処理(ステップ125)は、図2の前処理(ステップ104~ステップ108)及び比較処理(ステップ109~ステップ111)と同じ処理であるから図2の説明(【0021】、【0022】)を参照すると、資金移動システム20は、時価システム22から各資金移動口座名DBに登録された資金移動対象口座に関連する為替レート、金利、市場価格等を入力して、マーケットプライスDB205に登録し(ステップ104)、有効期日内および制限回数内の場合、資金移動指数選択332の項の指数を確認し(ステップ108)、指数にターゲットプライスが選択されている場合(ステップ109)はターゲットプライスを取り出し、抽出した為替レートと比較し(ステップ110)、資金移動システム20は、その後選択されている指数を比較した結果が資金移動条件を満たしていれば(ステップ128)、米ドル外貨建預金口座から円貨建預金口座に資金移動対象金額336に登録されている金額を資金移動し(ステップ139)(【0027】)、また、比較した結果が条件を満たさない場合(ステップ128)(【0030】)、次回処理まで据置きする(ステップ141)(【0032】)。
ここで、「次回処理まで据置き」(ステップ141)の後の処理は、上述したとおりであり、有効期日内および制限回数内のとき、資金移動条件を満たしているかを再び判定することが明らかである。
そうすると、引用文献1には、資金移動システム20の、米ドル外貨建預金口座から円貨預金口座への資金移動において、指数として資金移動ターゲットプライスが選択されている場合、「米ドル外貨建預金口座への資金移動の後で次回処理まで据置きした後に、ターゲットプライス「110 円≦1 USD」と米ドル外貨から円貨への為替レートを比較し、比較した結果が資金移動条件を満たしているか否かを判定し、資金移動条件を満たす場合に資金移動し、資金移動条件を満たさない場合に次回の処理まで据置きし、有効期日内および制限回数内のとき、資金移動条件を満たしているかを再び判定し、資金移動条件を満たす場合に資金移動を行い、資金移動条件を満たさない場合に再び次回の処理まで据置きする機能」が記載されているといえる。
(3)引用発明
上記(2)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。(表記の揺れている「資金移動ターゲットプライス」及び「ターゲットプライス」は、「ターゲットプライス」に記載を統一した。)
(引用発明)
複数の資金移動対象口座DBを有し、顧客毎の資金移動の条件設定を格納する口座登録DBに接続されるとともに、為替相場や金融商品の時価の情報を入手し、勘定処理システムに対して資金移動の指示を出す資金移動システムと、顧客の円貨建預金口座DBと外貨建預金口座DB、顧客情報DBを有し、顧客の口座を管理する勘定処理システムとを備えるシステムにおいて、
米ドル外貨建預金口座から円貨建預金口座への資金移動を実施する条件である外国為替市場のレートを意味するターゲットプライスとして「110 円≦1 USD」を口座登録DBに登録する機能と、
円貨建預金口座に入金された資金のうち、資金移動対象金額に登録されている金額が円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動された米ドル金額及び資金移動後の米ドル外貨建預金口座の金額を顧客情報DBに記録する機能と、
米ドル外貨建預金口座への資金移動の後で次回処理まで据置きした後に、ターゲットプライス「110 円≦1 USD」と米ドル外貨から円貨への為替レートを比較し、比較した結果が資金移動条件を満たしているか否かを判定し、資金移動条件を満たす場合に資金移動し、資金移動条件を満たさない場合に次回の処理まで据置きし、有効期日内および制限回数内のとき、資金移動条件を満たしているかを再び判定し、資金移動条件を満たす場合に資金移動を行い、資金移動条件を満たさない場合に再び次回の処理まで据置きする機能と、
を備える、システム。
(4)引用文献記載事項
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引用文献1には、段落【0006】の記載からみて、次の事項(以下「引用文献記載事項」という。)が記載されている。
「当該顧客と契約した複数口座(円貨建や外貨建の預金口座)につき、資金移動に関して顧客毎に条件(資金移動金額)を設定・管理し、その条件の範囲内において最も適した資金移動のパターンを選択し、選択された口座間で自動的に資金移動を実施し、この条件は顧客あるいは口座を管理する金融機関の要望で種々設定でき、例えば、予め条件設定する資金移動金額を、全額で指定するようにしても良いこと。」
5 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願発明の「預け入れされた金融資産」、「第1金融資産」及び「第2金融資産」について
(ア)本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は当審で付与した。)
「【0021】金融資産管理システム1は、顧客から預け入れられた金融資産を管理および運用する。この例では、円貨で預け入れられた金融資産を外貨として運用する。このとき、運用方針が、通信端末80を介して運用方針が設定される。金融資産管理システム1は、この運用方針によって、外貨資産を一時的に円貨資産にシフトしたり、外貨の種類(USD、EUR等)を変更したりして運用する。管理サーバ10は、このような運用を行うための処理を実行するためのサーバである。」
「【0033】図3に戻って説明を続ける。管理サーバ10は、通信端末80から運用方針の設定を受け付けて顧客データベース50に登録すると、設定に応じて顧客からの資産を預け入れる処理(資産預入処理)を実行する(ステップS103)。管理サーバ10は、受け付けた設定に基づいて、顧客データベース50の資産管理情報に登録する。続いて、管理サーバ10は、預入日から予め設定された時間が経過して中間満期に到達すると、預け入れられた円貨資産を、取引サーバ70を介して、領域D4で指定された種類の外貨資産にシフトする(ステップS105)。例えば、領域D4で指定された外貨の種類がUSDであれば、管理サーバ10は、最初の中間満期時点において、円貨資産からアメリカドルにシフトする。【0034】管理サーバ10は、円貨資産から外貨資産へのシフトをすると、この外貨資産を資産管理情報に記録する処理(資産記録処理)を実行する(ステップS107)。このとき、管理サーバ10は、円貨資産から外貨資産へのシフトをした日(交換日)および交換レートについても、シフト後の資産とともに登録する。以下に説明する処理において、円貨資産から外貨資産へのシフトを行ったとき、および外貨資産から円貨資産へのシフトを行ったときも、この登録方法は同様である。一方、外貨資産から円貨資産へのシフトを行ったときは、必ずしも交換レートについては登録しなくてもよい。【0035】続いて、管理サーバ10は、預入日から設定した時間(第3設定時間)が経過して運用期間(預入期間)が終了するまで、シフト処理を実行し(ステップS200)、運用期間が終了すると、金融資産管理方法に含まれる処理が終了する。シフト処理は、設定された運用方針に従って、円貨資産と外貨資産とのシフトを行う処理である。シフト処理について、図5を用いて説明する。【0036】図5は、本発明の第1実施形態におけるシフト処理を示すフローチャートである。シフト処理が開始されると、まず、制御部11は、中間満期までの時間を計測するための基準日を規定するために初期化を行う(ステップS201)。制御部11は、上記初期化を行った後から第1設定時間が経過し、または預入期間が終了するまで待機する(ステップS211;No、ステップS213;No)。第1設定時間は、中間満期までの時間であり、この例では、1か月として定められている。この第1設定時間は、上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の条件の1つとして指定できるようにしてもよい。【0037】制御部11は、第1設定時間が経過し中間満期に到達したと判定した場合(ステップS211;Yes)には、外貨資産を円貨資産にシフトするときの交換レートを取引サーバ70から取得して、この交換レートが交換条件を満たしているか否かを判定する(ステップS221)。制御部11は、交換条件を満たすと判定した場合(ステップS221;Yes)には、取引サーバ70を介して外貨資産を円貨資産にシフトし(ステップS223)、資産管理情報に登録する(第1シフト処理)。円貨資産にシフトされる外貨資産は、中間満期までの第1設定時間(1か月)に対応する金利により、増加されている。したがって、外貨資産にシフトしたときの交換レート(TTS)と、円貨資産にシフトするときの交換レート(TTB)とが同一であり為替差益が存在しない場合であっても、外貨の種類に対応する金利により資産が増加する。金利による資産増加は、いずれの期間においても行われる。」
(イ)上記(ア)で摘記した、段落【0021】の「円貨で預け入れられた金融資産を外貨として運用する。」の記載、及び、段落【0033】の「預け入れられた円貨資産を、取引サーバ70を介して、領域D4で指定された種類の外貨資産にシフトする」の記載を参照すると、本願発明の「預け入れされた金融資産」は、発明の詳細な説明の「円貨資産」に対応し、本願発明の「第1金融資産」は、発明の詳細な説明の、運用の対象である「外貨資産」に対応するものであるといえる。
さらに、段落【0037】には、「制御部11は、第1設定時間が経過し中間満期に到達したと判定した場合」には、「外貨資産を円貨資産にシフトするときの交換レートを取引サーバ70から取得して、この交換レートが交換条件を満たしているか否かを判定」し、「交換条件を満たすと判定した場合」には、「取引サーバ70を介して外貨資産を円貨資産にシフト」することが記載されているから、本願発明の「第2金融資産」は、発明の詳細な説明の、外貨資産をシフトした「円貨資産」に対応するものであるといえる。
(ウ)以上を踏まえて対比をすると、引用発明の「円貨建預金口座に入金」された「資金」及び「外貨建預金口座」の「金額」は、それぞれ本願発明の「預け入れされた金融資産」及び「第1金融資産」に相当する。また、引用発明の「外貨建預金口座から円貨建預金口座に資金移動」された金額は、本願発明の「第2金融資産」に相当する。
イ 本願発明の「条件登録部」について
引用発明の「資金移動」は本願発明の「シフト」に相当し、引用発明の「資金移動を実施する条件である外国為替市場のレート」、前記外国為替市場のレートを意味する「「ターゲットプライス」としての「110 円≦1 USD」」及び「口座登録DB」は、それぞれ本願発明の「第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レート」、前記交換レートに関する「条件」及び「条件記憶領域」に相当する。
そうすると、引用発明が備える「米ドル外貨建預金口座から円貨建預金口座への資金移動を実施する条件である外国為替市場のレートを意味するターゲットプライスとして「110 円≦1 USD」を口座登録DBに登録する機能」を実行する手段は、本願発明の「第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レートに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部」に相当する。
ウ 本願発明の「資産記録部」について
上記ア(ウ)のとおり、引用発明の「円貨建預金口座に入金」された「資金」及び「外貨建預金口座」の「金額」は、それぞれ本願発明の「預け入れされた金融資産」及び「第1金融資産」に相当する。
さらに、引用発明の「資金移動後の米ドル外貨建預金口座の金額」が記録される「顧客情報DB」は、本願発明の「資産記憶領域」に相当する。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0033】の「預け入れられた円貨資産を、取引サーバ70を介して、領域D4で指定された種類の外貨資産にシフトする」との記載から、本願発明の「預け入れされた金融資産に相当する第1金融資産」は、発明の詳細な説明の「預け入れされた円貨資産」からシフトされた後の「外貨資産」に対応するものであるといえる。
そうすると、引用発明の「円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動された後の米ドル外貨建預金口座の金額」と、本願発明の「預け入れされた金融資産に相当する第1金融資産」とは、「預け入れされた金融資産から資金移動した第1金融資産」である点で共通する。
そして、引用発明の「円貨建預金口座に入金された資金のうち、資金移動対象金額に登録されている金額が円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動された米ドル金額及び資金移動後の米ドル外貨建預金口座の金額を顧客情報DBに記録する機能」を実行する手段と、本願発明の「預け入れされた金融資産に相当する第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部」とは、「預け入れされた金融資産から移動した第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部」である点で共通する。
エ 本願発明の「判定部」について
引用発明は、「米ドル外貨建預金口座への資金移動」に伴い、上記ウの「資金移動された米ドル金額及び資金移動後の米ドル外貨建預金口座の金額」、すなわち「第1金融資産」の記録を行うものであるから、引用発明の「米ドル外貨建預金口座への資金移動の後で次回処理まで据置きした後」と、本願発明の「前記第1金融資産が記録されてから第1設定時間が経過したとき」とは、「前記第1金融資産が記録されてからある時間が経過したとき」である点で共通する。
また、引用発明の「米ドル外貨から円貨への為替レート」は、本願発明の「前記第1金融資産から第2金融資産にシフトするための交換レート」に相当し、引用発明の「ターゲットプライス「110 円≦1 USD」」と「米ドル外貨から円貨への為替レート」を比較し、比較した結果が資金移動条件を満たしているか否かを判定」することは、本願発明の「前記条件を満たしているか否かを判定」することに相当する。
また、引用発明の「資金移動条件を満たさない場合に次回の処理まで据置きし、有効期日内および制限回数内のとき、資金移動条件を満たしているかを再び判定し、資金移動条件を満たす場合に資金移動を行い、資金移動条件を満たさない場合に再び次回の処理まで据置きする」ことは、資金移動条件を満たすまで「据置き」と「資金移動条件を満たしているか」の「判定」を繰り返すものであるから、本願発明の「前記条件が満たされていない場合には前記条件が満たされるまで前記第1設定時間が経過する度に前記条件が満たされているか否かを再び判定する」こととは、「前記条件が満たされていない場合には前記条件が満たされるまで前記ある時間が経過する度に前記条件が満たされているか否かを再び判定する」点で共通する。
オ 本願発明の「前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である」について
引用発明では、「前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である」との特定はされていない。
カ 本願発明の「金融資産管理システム」について
引用発明の「複数の資金移動対象口座DBを有し、顧客毎の資金移動の条件設定を格納する口座登録DBに接続されるとともに、為替相場や金融商品の時価の情報を入手し、勘定処理システムに対して資金移動の指示を出す資金移動システムと、顧客の円貨建預金口座DBと外貨建預金口座DB、顧客情報DBを有し、顧客の口座を管理する勘定処理システムとを備えるシステム」は、後述の相違点を除き本願発明と同様の「金融資産管理システム」であるといえる。
キ 一致点、相違点
以上より、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レートに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部と、
預け入れされた金融資産から移動した第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部と、
前記第1金融資産が記録されてからある時間が経過したときにおける前記第1金融資産から第2金融資産にシフトするための交換レートが、前記条件を満たしているか否かを判定し、前記条件が満たされていない場合には前記条件が満たされるまで前記ある時間が経過する度に前記条件が満たされているか否かを再び判定する判定部と、
を含む、金融資産管理システム。
<相違点1>
「預け入れされた金融資産から移動した第1金融資産」は、本願発明では、「預け入れされた金融資産に相当する第1金融資産」であるのに対し、引用発明では、「円貨建預金口座に入金された資金のうち、資金移動対象金額に登録されている金額が円貨建預金口座から米ドル外貨建預金口座に資金移動された米ドル金額及び資金移動後の米ドル外貨建預金口座の金額」である点。
<相違点2>
「ある時間が経過した」の「ある時間」は、本願発明では、「第1設定時間」であり、「前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である」のに対し、引用発明では、「据置き」される期間であって、1日より短い時間単位で設定可能であることが特定されていない点。
(2)判断
ア 相違点1について
引用文献1には、上記4(4)のとおり、顧客あるいは口座を管理する金融機関の要望で、資金移動金額を全額で指定するようにしても良いこと、という引用文献記載事項が記載されており、引用発明において、円建預金口座に入金された資金のうち、全額を米ドル外貨建て預金口座に資金移動すること、すなわち、米ドル外貨建預金口座の資金を「預け入れされた金融資産に相当する第1金融資産」とすることは、顧客あるいは口座を管理する金融機関の要望により、適宜になし得ることである。
イ 相違点2について
引用発明には資金移動の有効期日と制限回数が定められていることから、引用発明において、資金移動及びそのための資金移動条件を満たしているかの判定は頻繁に行われるものではなく、むしろある程度の長さの時間をおいて実行されるものと解するのが自然である。また、広辞苑第六版によれば、「据置き」という用語は、「すえおくこと。」及び「貯金・年金・債券などを、一定期間払戻しまたは償還をしないでおくこと。」を意味するから、引用発明において、「次回処理まで据置き」(ステップ141)とは、一定期間資金を移動しないでそのままにしておくことといえる。また、引用発明において、据置きをした後、再び比較処理を行うことについて、「有効期日内および制限回数内」との条件があり、この条件は、外貨取引の常識に基づき設定されるものである。そうすると、引用発明において、「据置き」の期間をある程度の長さの時間として予め設定することで、本願発明の「第1設定時間」とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。その際、どのような時間単位で設定するか、例えば、1か月を、日単位で30日で設定したり、時間単位で720時間で設定したり、1週間を、日単位で設定したり、時間単位で168時間で設定すること、すなわち、「前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である」とすることは、当業者が適宜になし得ることである。
ウ 本願発明の効果について
本願発明の効果は、「顧客は運用方針を設定すればよいため、顧客の運用方針をできるだけ反映した資産運用を容易に行うことができる。」(本願明細書の【0049】)というものであるが、当該効果は、引用文献1の「本発明によれば、同一もしくは異なる通貨の複数の口座間の資金移動において、予め顧客が為替レート、金利、価格、運用利回り等に対して条件を設定する事により、顧客の希望する為替レート、価格、金利、運用利回りや時価総額等にて取引を成立させることができる。」(【0034】)という効果から、当業者が予測し得る範囲内のものである。
(3)審判請求人の意見書における主張について
審判請求人は、令和4年10月6日に提出した意見書(特に、「(3-3)理由3(進歩性)」の「(3-3-1)本願請求項1に係る発明と引用文献1に係る発明Aとの対比」の項)において、以下のように主張している。(当審で適宜ア~ウに分説した。)
ア 「本願発明1における第1設定時間は、繰り返し判定のための時間であって、予め設定されます。一方、引用発明Aでは、据置きの時間が設定されたとしても、判定の都度、所望の時間が改めて設定されることが想定され、繰り返し判定のために用いることはないと思料いたします。」(主張ア)
イ 「仮に予め設定されているものだとしても、「据置き」の時間は、審判官殿が指摘されるように、「資金移動制限回数」が定められていることから頻繁に行われるものではなく、むしろある程度の長さの時間をおいて実行されるものと解されます。引用文献1に開示されている資金移動制限回数の例を考慮すると、ある程度の長さは、数日以上を単位としていると想定するのが自然であって、1日未満の時間単位は全く想定されていないと思料いたします。」(主張イ)
ウ 「本願発明1の「第1設定時間」が「1日より短い時間単位で設定可能」であることは、1日未満の時間(例えば、[0068]に例示される1時間等)を単位とした設定ができることを示しており、引用発明Aにおける「据置き」の時間とは異なることが分かります。他の引用文献2、3の開示を考慮したとしても、上記相違点に関して引用発明Aを本願発明1のように構成しようとすることは、当業者によって容易に想到されるものでもないと思料いたします。」(主張ウ)
上記主張について、以下検討する。
(主張アについて)
引用文献1には、「有効期日内および制限回数内の場合は、指数を確認し(ステップ108)」(【0022】)、「資金移動の有効期限と、制限回数を登録することができるので、無限に移動が繰り返されるのを防止することが可能である。」(【0034】)及び「また、資金移動先の口座を複数指定しておき、全ての口座に対して条件を設定しておくことにより、複数の口座間での自動資金移動も可能である。」(【0035】)と記載されているように、引用文献1では、「複数の口座間での自動移動」を行うことを前提に、無限に移動が繰り返されるのを防止するために資金移動の有効期限と、制限回数を登録するものであるから、据置き時間は予め設定されていると解するのが自然である。
よって、主張アは採用できない。
(主張イ、ウについて)
本願明細書の発明の詳細な説明には、「(5)上述した実施形態において、中間満期までの時間(第1設定時間、第2設定時間)は、1か月を例示した。この時間は、1か月、1日といった単位ではなく、1時間、1分、1秒といったさらに短い時間単位であってもよい。」(【0068】)と記載されているところ、本願発明は「前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である」とするのみで、第1設定時間が1日以上の単位のものを排除するものではない。
このように、本願発明において、「第1設定時間」が「1日より短い時間単位で設定可能」であることは、そもそも「第1設定時間」の「長さ」を特定するものではなく、「第1設定時間」の「長さ」を設定する「時間単位」を「1日より短い時間単位で設定可能」であると解されるから、請求人の主張は、本願発明の構成に基づくものではなく、上記(2)イのとおり、引用発明に基づいて、「前記第1設定時間は、1日より短い時間単位で設定可能である」とすることは、当業者が適宜になし得ることである。
よって、主張イ、ウは採用できない。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014828