特許拒絶査定不服審判
2025-013243
作業管理方法、作業管理システム、及び作業管理プログラム
- 審判番号
- 2025-013243
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-020906
- 請求日
- 2025年08月22日
- 審決日
- 2026年07月07日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】狩野 芳正
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 久慈 渉
- 審判官 梅本 章子
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 20906「作業管理方法、作業管理システム、及び作業管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月25日出願公開、特開2023-118141〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年2月15日の出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。
令和6年12月10日付け:拒絶理由通知
令和7年 2月12日 :意見書、手続補正書 提出
同年 5月16日付け:拒絶査定
同年 8月22日 :審判請求書 提出
第2 本願発明
本願請求項1~10に係る発明は、令和7年2月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される発明であり、請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりの発明である。
「【請求項9】
作業装置により圃場で行われた作業に関する稼働情報に含まれる第1評価情報を表す第1評価図形を決定する図形決定部と、
前記第1評価情報を表す第1表示画像において、前記稼働情報が測定された第1位置に基づき、前記第1評価図形を配置する位置を決定し、前記第1評価図形を配置した前記第1表示画像を表す画像情報を生成する画像情報生成部と、
を備え、
前記第1評価情報は、前記圃場における前記作業を行っているときに前記第1位置で測定された情報である
作業管理システム。」
第3 原査定における拒絶の理由
拒絶査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の請求項1~2、6~7、9~10に係る発明は、下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2018-151770号公報
2.国際公開第2016/147521号
3.特開2014-212749号公報
第4 引用文献
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下同様。)。
「【0011】
図1は、収量情報表示システム1の概略構成を示す。収量情報表示システム1は、管理サーバ20及び携帯端末30を含む。管理サーバ20には、対象となる圃場の位置情報と、その圃場で過去にコンバイン10が収穫した際の単位面積当たりの収量に関するデータとが関連付けられて記憶されている。
【0012】
コンバイン10には、単位面積当たりの収量を計測する計測器11と、計測結果を無線データ通信により送信する通信機12が設けられ、通信機12を介して計測器11による計測結果が管理サーバ20に送信される。ここで、「単位面積当たりの収量」とは、コンバイン10によって刈り取られた穀捍を脱穀・選別して得られた穀粒の収穫量のうち、所定の走行距離に対応する分量を計測した値である。例えば、コンバイン10のグレンタンクの入口に穀粒と衝突するセンサを設け、センサが検出する衝撃から収穫量を計測し、所定の走行距離で割ることで、走行距離当たりの収量を算出することができる。
【0013】
管理サーバ20は、無線データ通信によりデータを送受信する通信装置、受信したデータを記憶する記憶装置等を備えている。管理サーバ20側では、コンバイン10が収穫した単位面積当たりの収量を位置情報に紐付けて記憶する。管理サーバ20には、圃場の地図データを単位面積で区分けしたそれぞれの区画における収量データが、その区画の位置情報とともに保存されている。」
「【0019】
第1圃場から第3圃場において、それぞれのコンバイン10による収穫時の単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報が管理サーバ20に送信され、管理サーバ20によって受信される。管理サーバ20は、受信した区画の位置情報と単位面積当たりの収量データを関連付けて記憶する。
【0020】
携帯端末30から端末の位置情報及び姿勢方位情報が管理サーバ20に送信される。管理サーバ20は、携帯端末30の位置情報と姿勢方位情報から、外部カメラ33による撮影範囲を特定する。この撮影範囲は、例えば記憶装置21に予め記憶している地図データ上で、GNSSレシーバ31によって取得される位置情報を用いて携帯端末30の位置を特定し、ジャイロセンサ32の検出結果から外部カメラ33の撮影方向と携帯端末30の三次元の傾斜を特定することで算出される。次に、管理サーバ20は、特定した撮影範囲に含まれる圃場を特定する。このようにして特定された圃場の単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報が携帯端末30に送信される。
【0021】
携帯端末30は、ディスプレイ34上に表示される映像内に、受信した圃場の単位面積当たり収量を対応する圃場の区画上に重ねて表示する。ここで、「重ねて表示する」とは、ディスプレイ34上に表示される圃場の各区画に対応する位置に単位面積当たりの収量を表示することを意味し、ディスプレイ34に収量情報をオーバーレイで表示することを意味する。単位面積当たりの収量は、例えば図示のように立体の棒グラフで表示する他、周囲の区画との収量の差が大きい箇所を強調して表示することも可能である。」
イ 上記アの記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「収量情報表示システム1は、管理サーバ20及び携帯端末30を含み、
コンバイン10には、単位面積当たりの収量を計測する計測器11と、計測結果を無線データ通信により送信する通信機12が設けられ、通信機12を介して計測器11による計測結果が管理サーバ20に送信され、
管理サーバ20には、圃場の地図データを単位面積で区分けしたそれぞれの区画における収量データが、その区画の位置情報とともに保存されており、
コンバイン10による収穫時の単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報が管理サーバ20に送信され、
管理サーバ20は、受信した区画の位置情報と単位面積当たりの収量データを関連付けて記憶し、
携帯端末30から端末の位置情報及び姿勢方位情報が管理サーバ20に送信され、
管理サーバ20は、圃場を特定し、特定された圃場の単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報が携帯端末30に送信され
携帯端末30は、受信した圃場の単位面積当たり収量を対応する圃場の区画上に重ねて表示し、単位面積当たりの収量は、立体の棒グラフで表示する、
収量情報表示システム1。」
2 引用文献2、3の記載及び周知技術
(1)引用文献2の記載
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0031] [第1実施形態]
以下、図1~11を参照しながら、第1実施形態について説明する。
本発明における第1実施形態としてのコンバインの具体的な構成を説明する前に、図1を用いて、その基本原理を説明する。図1の例では、コンバインが圃場を走行しながら麦や稲の穀稈を刈り取り、脱穀された穀粒がコンバインに搭載された穀粒タンク2に貯蔵される。その際、このコンバインでは、時間経過とともに穀粒タンク2に供給される穀粒の量、つまり収量が測定される。このコンバインには、穀粒収穫を伴わない非収穫作業走行と穀粒収穫を伴う収穫作業走行とを刈取部12などの動作状態に基づいて判定する作業走行判定部53が備えられている。」
「[0033] 収量測定容器30に所定容積の穀粒が貯留されると、所定量の収量が得られたとして、貯留に要した経過時間である貯留時間が算定される。同時にその時点(図1では添え字付きtで示されている)の走行速度(図1では添え字付きVで示されている)も取得される。なお、ここで取得される走行速度(以下、車速と略称する)は貯留時間中の平均車速が好ましい。貯留時間と車速とから走行距離(図1では添え字付きLで示されている)が演算され、単位走行距離当たりの収量(単位走行収量)が算定される。さらに、穀粒が貯留されている間に、作業走行判定部53により非収穫作業走行が判定されていた場合には、当該単位走行収量には、非収穫作業走行を示すタグが付与される。穀粒が貯留されている間に、まったく非収穫作業走行が判定されていない場合には、収穫作業走行が実施されていたとして、当該単位走行収量に対して収穫作業走行を示すタグが付与される。さらに、この単位走行収量は、慣性航法装置やGPSユニット90などから得られる方位情報(収穫位置情報)とも関係づけられる。」
イ コンバインによる収穫は、一定の幅を有する構造により収穫するものであることは技術常識であり、当該技術常識を踏まえると、上記アの記載における「単位走行収量」は、単位走行距離とコンバインの一定の幅の構造による収量であるから、「単位面積当たりの収量」といえる。また、当該単位面積当たりの収量は収穫位置情報と関連付けられたものである。
(2)引用文献3の記載
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0017】
穀粒の収量測定のため、穀粒タンク15には、この記穀粒タンクに供給される穀粒の少なくとも一部を受け入れる収量受け入れ口32aと、受け入れた穀粒を放出する収量放出口32bと、前記収量放出口32bを開閉する収量シャッタ34とを有する収量測定容器32が設けられている。収量測定容器32は、刈取り作業の間に脱穀装置から穀粒タンク15に連続的に送られてくる穀粒の流れに向かい合うように収量受け入れ口32aが配置されている。収量シャッタ34は、収量測定容器32の収量受け入れ口32aに対向する位置(ここでは鉛直方向で上下位置)に形成された収量放出口32bを閉鎖する閉鎖姿勢と開放する姿勢との間で切替可能である。従って、収量シャッタ34の閉鎖姿勢では、収量測定容器32の内部に時間経過とともに穀粒が貯留されていく。収量測定容器32には、収量測定容器32に所定容積の穀粒が貯留されたことを検知し、所定容積穀粒の貯留を示す適量検知信号を出力する収量測定部が備えられている。収量シャッタ34が閉鎖姿勢に切り替えられてから、上記検知信号が出力されるまでの時間が所定容積の穀粒の貯留に要する貯留時間となる。この貯留時間を算定し、その際のコンバイン1の走行速度を取得すれば、この走行速度と貯留時間に基づいて、単位走行当たりの収量である単位走行収量が算定される。コンバイン1の刈り取り走行の間、この単位走行収量の算定を繰り返すことで、コンバイン1の走行位置に対応させて単位走行収量を割り当てることができる。この走行位置に割り当てられた単位走行収量に基づいて、所定走行距離毎の収量、ないしは圃場を所定の大きさに分割して得られた所定区画毎の収量、つまり圃場における収量分布を求めることができる。」
イ コンバインによる収穫は、一定の幅を有する構造により収穫するものであることは技術常識であり、当該技術常識を踏まえると、上記アの記載における「単位走行収量」は、単位走行距離とコンバインの一定の幅の構造による収量であるから、「単位面積当たりの収量」といえる。また、「単位走行収量」は「走行位置」に割り当てられたものである。
(3)周知技術
ア 引用文献3の「走行位置」は、穀粒収量を算出した位置であるから、引用文献2の「収穫位置情報」と同義の情報と認められる。してみれば、上記(1)、(2)より、以下の技術は周知技術であると認められる。
「コンバインにおいて、単位面積当たりの収穫量を、収穫中に収穫量が測定された位置と関連付けて算定すること」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「コンバイン10」は本願発明の「作業装置」に相当し、引用発明の「単位面積当たりの収量」は、圃場での収量のデータであるから、後述する相違点1を除いて、本願発明の「圃場で行われた作業に関する稼働情報に含まれる第1評価情報」に対応する。そして、引用発明の「棒グラフ」に表示される各棒は、「単位面積当たりの収量」を表す図形であるから、後述する相違点1を除いて、本願発明の「第1評価情報を表す第1評価図形」に対応する。また、引用発明において、各棒は「単位面積当たりの収量」を表すものであるから、表示のためにその長さ等は決定されていることは明らかであり、当該構成は、後述する相違点1を除いて、本願発明の「図形決定部」に対応する。
(2)引用発明において、「コンバイン10による収穫時の単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報が管理サーバ20に送信され」ているから、「区画の位置情報」は、本願発明の「稼働情報が測定された第1位置」に相当し、引用発明の「単位面積当たり収量」を「対応する圃場の区画上に重ねて表示」した情報は、「単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報」に基づいて表示されているから、本願発明の「稼働情報が測定された第1位置に基づき、第1評価図形を配置する位置を決定し、前記第1評価図形を配置した前記第1表示画像を表す画像情報」に相当する。そして、引用発明においてその情報を表示のために生成していることは明らかであり、当該構成は後述する相違点1を除いて、本願発明の「画像情報生成部」に対応する。
(3)引用発明の「収量情報表示システム1」は、上記(1)、(2)より、本願発明の「図形決定部」、「画像情報生成部」に対応する構成を有するから、後述する相違点1を除いて、本願発明の「作業管理システム」に対応する。
2 一致点及び相違点
上記1から、本願発明と引用発明は、次の(1)の点で一致し、次の(2)の点で相違する。
(1)一致点
「作業装置により圃場で行われた作業に関する稼働情報に含まれる第1評価情報を表す第1評価図形を決定する図形決定部と、
前記第1評価情報を表す第1表示画像において、前記稼働情報が測定された第1位置に基づき、前記第1評価図形を配置する位置を決定し、前記第1評価図形を配置した前記第1表示画像を表す画像情報を生成する画像情報生成部と、
を備える
作業管理システム。」
(2)相違点
(相違点1)
本願発明では、「第1評価情報は、前記圃場における前記作業を行っているときに前記第1位置で測定された情報」であるのに対し、引用発明では、「コンバイン10による収穫時の単位面積当たりの収量データ及び区画の位置情報が管理サーバ20に送信され」るものであるものの、単位面積当たりの収量が圃場における収穫を行っているときの位置で測定される情報であることは特定されていない点。
第6 判断
1 (相違点1)について
上記第4の2より、「コンバインにおいて、単位面積当たりの収穫量を、収穫中に収穫量が測定された位置と関連付けて算定すること」は周知技術であるから、収穫中に収穫量を測定するコンバインを含む引用発明において当該周知技術を採用し、本願発明に係る「前記第1評価情報を前記圃場における前記作業を行っているときに前記第1位置で測定された情報である」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 小括
以上により、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 請求人の主張について
令和7年8月22日提出の審判請求書における主張について、以下検討する。
(1)「本願請求項1、9、10に係る発明は、第1表示画像において、稼働情報が測定された第1位置に基づき、第1評価情報を表す第1評価図形を配置する位置を決定することを含み、この第1評価情報は、第1位置で測定された情報であることを構成に含みます。第1評価情報が測定された位置から、第1評価情報を表す第1評価図形を配置する位置を決定するため、第1評価図形を配置する位置に関する設定操作を低減することができます。
・・・
以上のように、引用文献2-3を参照したとしても、当業者は、引用文献1において、測定された位置から、測定された収量情報を表示する位置として区画の位置に決定することを容易に想到することはできません。よって、本願請求項1、8、9に係る発明に係る発明は、特許法第29条第2項に係る拒絶理由を有しないものと思料いたします。」
請求人は要するに、本願発明の構成により、「第1評価情報が測定された位置から、第1評価情報を表す第1評価図形を配置する位置を決定するため、第1評価図形を配置する位置に関する設定操作を低減することができ」、引用文献1~3ではその構成に想到し得ない旨主張しているものと解される。
しかしながら、本願請求項9の記載は、当該構成に関連して、「稼働情報が測定された第1位置に基づき、前記第1評価図形を配置する位置を決定」するという記載でしかなく、測定された位置に基づいて図形を配置する位置を決定することは、上記第5の1(2)で検討したとおり、引用発明も備える構成である。してみると、当該記載によって、「第1評価図形を配置する位置に関する設定操作を低減することができ」、引用文献1~3ではその構成に想到し得ないという、請求人の主張は、請求項の記載に基づいたものでなく、採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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