2021-011448
基板
- 審判番号
- 2021-011448
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-571601外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月27日
- 審決日
- 2022年10月27日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年(平成30年)6月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年)6月30日、韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和3年8月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年8月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「基材層と前記基材層上に存在するスペーサーとして、上部に半球部を有する半球状のスペーサーを含み、前記半球部の断面の軌跡は、少なくとも曲率の中心が、前記断面の軌跡の内側に存在する曲線部位を含み、前記スペーサーの下部には、その断面軌跡が、曲率の中心が断面の外側に形成される曲線の形であるテーパー部が形成され、前記スペーサーの高さが5μmから50μmの範囲内にあり、前記半球部の断面軌跡の最大曲率が150mm-1以下である、基板。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「基材層と前記基材層上に存在するスペーサーとして、上部に半球部を有する半球状のスペーサーを含み、前記半球部の断面の軌跡は、少なくとも曲率の中心が、前記断面の軌跡の内側に存在する曲線部位を含み、前記スペーサーの下部には、その断面軌跡が、曲率の中心が断面の外側に形成される曲線の形であるテーパー部が形成され、前記スペーサーの高さが5μmから50μmの範囲内にあり、前記半球部の断面軌跡の最大曲率が1,000mm-1以下である、基板。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「半球部の断面軌跡の最大曲率」について、「1,000mm-1以下」を「150mm-1以下」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
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ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-240599号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【0007】本発明は、画素電極が形成された絶縁性基板と、該絶縁性基板と対向して配置された対向基板と、両基板のそれぞれ対向する面に塗布された配向膜と、両基板間に所定の間隙を形成すべく、絶縁性基板または対向基板のいずれか一方に配置された柱状スペーサとを備える液晶表示装置であって、前記柱状スペーサは頂部に角のないドーム形状であることを特徴とする。」
「【0012】上記のように、柱状スペーサの頂部を角がないドーム形状とすることで、ラビング時にラビング布にダメージを与えることもなく、正常にラビングを行うことが可能となり、後続のラビングにも悪影響を与えることもない。【0013】図2は、柱状スペーサ9が形成された対向基板6側のみを抜粋したものである。図2においては、柱状スペーサ9の頂部に角がない形状に加えて、柱状スペーサ9と対向基板との接続部分Aも角がない滑らかな形状となっている。通常ラビング毛の直径は10~20μm程度であり、絶縁性基板または対向基板の凹凸は、配線パターンまたは色材(カラーフィルター)の段差レベルで0.4μm以下程度であり、ラビング毛と比較して極端に小さく、ラビング毛はダメージを受けることはない。しかしながら、柱状スペーサを用いた場合、柱状スペーサは基板間の間隙(4μm程度)とほぼ同程度であり、ラビング毛と比較して無視出来ない大きさの突起物となるため、その柱状スペーサと対向基板との接続部分に角があると、その部分で毛先が引っかかり折れ曲がるまたは向きが一様でなくなるなどのダメージを受けることとなってしまうが、図2のように柱状スペーサの頂部に角がない形状に加えて、柱状スペーサと対向基板との接続部分においても角がない滑らかな形状とすることによって、より信頼性の高いラビングを行うことが可能となる。」
「【0017】次に、図3において本実施の形態の実際のラビング時の断面図について説明を行う。ラビングローラー12はその周辺にラビング布13が貼付されており、さらにラビング布13にはラビング毛14が形成されている。該ラビング毛14は、一様な方向を向いており、対向基板6に形成されたドーム形状の柱状スペーサ9が、該ラビング毛と接触した場合も、上述のように該柱状スペーサ9はその頂部において角のない形状であるため、ラビング毛14の毛先が柱状スペーサ9と接触してもどこかに引っかかることなく滑るように動作するため、ラビング毛14にダメージを与えることがない。さらに、図3においては、図2と同様に、柱状スペーサ9と対向基板6との接続部Aについても角がなく滑らかな形状とすることで、さらにラビング時にラビング布にダメージを与えることもなく、ラビングをさらに良好に行うことができ、後続のラビングにも悪影響を与えない。」
「図2[図:0001398659000001.jpg]」
「図3[図:0001398659000002.jpg]」
(イ)上記(ア)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「液晶表示装置の基板であって、絶縁性基板と対向して配置された対向基板と、対向基板に配置された柱状スペーサであって、前記柱状スペーサは頂部に角のないドーム形状であり、(【0007】)柱状スペーサ9と対向基板との接続部分Aも角がない滑らかな形状となっており、柱状スペーサは基板間の間隙とほぼ同程度である、(【0013】)対向基板。」
イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-184505号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0002】液晶表示装置においては、互いに向かい合う液晶表示装置用のカラーフィルタと対向基板とのギャップ制御を行うために、カラーフィルタと対向基板との間には複数の微小なスペーサが設けられている。これらのスペーサによって、カラーフィルタと対向基板との間に液晶を充填するための空間が提供され、カラーフィルタと対向基板との間に形成される液晶層の厚みの面内均一性が保持される。スペーサは、通常、熱硬化性樹脂材料や感光性樹脂材料を用いて形成される。」
「【0037】スペーサ1の高さ(透明基板6の厚さ方向における高さ)は、2~10μmであると好ましく、3~7μmであるとより好ましく、3.5~5.5μmであると特に好ましい。なお、スペーサ1の高さは、頂点1tから土台部1bの下面までの距離に相当する。【0038】本実施形態では、頂部1aの頂面1sは球面である。この場合、頂部1aの構造は単純化される。また、貼り合わせ時の押し込み力に対して好ましい抵抗性をスペーサ1が有しており、安定した貼り合わせが可能となる。具体的には、頂部1aの形状は例えば半球である。また、本実施形態において土台部1bの形状は円柱であるが、これに限定されない。例えば、土台部1bの形状は、角柱、円錐台、角錐台等であってもよいし、土台部1bの上面の面積が下面の面積より小さいテーパ状、土台部1bの上面の面積が下面の面積より大きい逆テーパ状であってもよい。」
「図1[図:0001398659000003.jpg]」
(イ)上記(ア)より、引用文献2には、液晶表示装置において、カラーフィルタと対向基板とのギャップを制御する、頂部の形状は半球であるスペーサの高さは2~10μmであることが、記載されるものと認められる。
ウ 引用文献3
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-048052号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0002】従来から、基板間に挟持された液晶層の層厚を規定する液晶表示装置用のスペーサが知られている。このようなスペーサとして、平均粒子径が0.1~10μmで粒子径分布が狭く比較的均一な粒子径を有する高架橋ポリマー粒子(例えば、特許文献1参照)や、シリカ粒子をフッ素化剤および有機溶媒と接触させて過熱した黒色のシリカ粒子(例えば、特許文献2参照)等の球状の構造物が用いられている。」
「【0025】次に、可溶解層41の表面41aの液滴42に紫外線を照射して硬化させ、図4(b)に示すように、スペーサ30として用いる半球状構造物を生成する。ここで、材料液は揮発性溶媒を含まない紫外線硬化樹脂を用いている。また、液滴42はインクジェット法により均一かつ高精度に吐出されている。これにより、液滴42の硬化時に液滴42が収縮することを防止し、基材40上にスペーサ30として用いる半球状構造物を高い寸法精度で均一に形成することができる。【0026】また、このように形成されたスペーサ30は、硬化前の液滴42と同様に、底面30aの直径Dは約10~30μmとなる。また、液滴42の高さHを調整することで、スペーサ30の高さHを調整することができる。また、スペーサ30をこのように形成することで、底面30aを有する半球状のスペーサ30を容易に形成することができる。」
「図4(a)、(b)[図:0001398659000004.jpg]」
(イ)上記(ア)より、半球状のスペーサの高さは、直径Dの半分と解されるので、約5~15μmと理解できる。よって、引用文献3には、液晶表示装置用のスペーサの高さが約5~15μmであることが、記載されるものと認められる。
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明の「基材層と前記基材層上に存在するスペーサーとして、上部に半球部を有する半球状のスペーサーを含み、」との特定事項について
本件補正発明の「基材層」は、本願の「前記基材層には、特別な制限なしに、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)のような公知の光学デバイスの構成で基板に使用される任意の基材層が適用され得る」(【0008】)との記載を参酌すると、「基板に使用される」ものを含むと解される。よって、引用発明の「対抗基板」は、本件補正発明の「基材層」に相当するといえる。
また、引用発明の「柱状スペーサ」は、本件補正発明の「スペーサー」に相当し、「対向基板に配置され」ているので、本件補正発明の「前記基材層上に存在する」との構成を備えるといえる。
他方、引用発明の「柱状スペーサ」は「頂部に角のないドーム形状」であるから、本件補正発明の「上部に半球部を有する半球状のスペーサー」と、「上部に上に凸の曲面形状を有するスペーサー」である点で一致するとしても、引用発明の「ドーム形状」が「半球状」といえるかは不明である。
イ 本件補正発明の「前記半球部の断面の軌跡は、少なくとも曲率の中心が、前記断面の軌跡の内側に存在する曲線部位を含み、」との特定事項について
引用発明の「柱状スペーサ」は「頂部に角のないドーム形状」であり、その形状は、対向基板に対して「上に凸の曲面形状」と理解できるから、本件補正発明の「断面の軌跡は、少なくとも曲率の中心が、前記断面の軌跡の内側に存在する曲線部位を含み」との構成を満たしているといえる。
ウ 本件補正発明の「前記スペーサーの下部には、その断面軌跡が、曲率の中心が断面の外側に形成される曲線の形であるテーパー部が形成され、」との特定事項について
引用発明の「柱状スペーサ9と対向基板との接続部分A」は、「柱状スペーサ9」の下部に位置するから、本件補正発明の「テーパー部」に相当するといえる。
他方、「接続部分A」の形状は「角がない滑らかな形状」であるが、「その断面軌跡が、曲率の中心が断面の外側に形成される曲線の形」であるかは不明である。
エ 本件補正発明の「前記スペーサーの高さが5μmから50μmの範囲内にあり、」との特定事項について
引用発明の「柱状スペーサ」は、「基板間の間隙とほぼ同程度」の高さと解されるが、上記特定事項を満たしているかは不明である。
オ 本件補正発明の「前記半球部の断面軌跡の最大曲率が150mm-1以下である、」との特定事項について
引用発明の「柱状スペーサ」は、「頂部に角のないドーム形状」を備えているが、上記特定事項を満たしているかは不明である。
カ 引用発明の「対向基板と、対向基板に配置された柱状スペーサ」は、本件補正発明の「基板」に相当する。
キ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材層と前記基材層上に存在するスペーサーとして、上部に上に凸の曲面形状を有するスペーサーを含み、前記上に凸の曲面形状の断面の軌跡は、少なくとも曲率の中心が、前記断面の軌跡の内側に存在する曲線部位を含み、前記スペーサーの下部には、テーパー部が形成される、基板。」
<相違点1>
「上に凸の曲面形状」について、本件補正発明は「半球部を有する半球状」であるのに対し、引用発明は「ドーム形状」である点。
<相違点2>
「テーパー部」について、本件補正発明は「その断面軌跡が、曲率の中心が断面の外側に形成される曲線の形」と特定されるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件補正発明は「前記スペーサーの高さが5μmから50μmの範囲内にあり」と特定されるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点4>
本件補正発明は「前記半球部の断面軌跡の最大曲率が150mm-1以下である」と特定されるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
(4)判断
以下、各相違点について検討する。
ア 相違点1について
本願の【0022】~【0040】及び図5~図10を参酌すると、本件補正発明の「半球状」には、「完全な半球状」及び「おおよそ半球状」が含まれるものと理解できる。そして、引用発明の「ドーム形状」は「おおよそ半球状」といえるから、「半球部を有する半球状」ということができる。
よって、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、「ドーム形状」には「半球状」の形状が含まれており、スペーサの上部を半球状とすることは、上記(2)イ(イ)及びウ(イ)のとおり、引用文献2及び引用文献3に記載されているから、引用発明の「柱状スペーサ」の頂部を「半球部を有する半球状」として構成することは、当業者が容易になし得たことといえる。
イ 相違点2について
引用発明において、柱状スペーサと対向基板との「接続部分A」は、「角がない滑らかな形状」である。
ここで、「角がない」との特定は、対抗基板と「接続部分A」とが接触する場所の形状の特定と解されるところ、「滑らかな」との特定や、引用文献1の図2、図3及び【0017】の「さらにラビング時にラビング布にダメージを与えることもなく、ラビングをさらに良好に行うことができ、後続のラビングにも悪影響を与えない」との記載も踏まえると、引用発明の「接続部分A」の形状は、対抗基板の表面から漸近的に立ち上がり、対抗基板に対して「下に凸の曲面形状」であると解することが自然である。
そうすると、引用発明の「角がない滑らかな形状」である「接続部分A」は、対抗基板に対して「下に凸の曲面形状」であるから、上記相違点2に係る本件補正発明の構成を満たすということができる。
よって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成は、実質的な相違点ではない。
仮に、そこまではいえないとしても、引用発明の「接続部分A」の形状は「角がない滑らかな形状」であるから、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。
ウ 相違点3について
引用発明の「柱状スペーサ」は、液晶表示装置の「絶縁性基板」と「対向基板」との間隔を規制する「基板間の間隙とほぼ同程度」の高さを有するものであって、その高さは、液晶表示装置の種類等(例えば、TN型やVA型など)に応じて設計されるものであり、相違点3に係る「5μmから50μmの範囲」は、液晶表示装置の基板間の間隙として通常の範囲であって、格別の範囲とはいえない(上記(2)イ(イ)、ウ(イ)参照。)。
したがって、引用発明の「柱状スペーサ」の高さを、相違点3に係る本件補正発明の「5μmから50μmの範囲内」として構成することは、当業者が容易になし得たことといえる。
エ 相違点4について
相違点4に係る「前記半球部の断面軌跡の最大曲率が150mm-1以下である」との特定は、半球部の断面軌跡の最も小さい、曲率半径が6.7μm(1/150mm)以上であることを特定するものと解され、当該特定が意味するところは、過度に大きな曲率の曲面を有しないことを特定するものと理解できる。
他方、引用発明は「頂部に角のないドーム形状」を備えているところ、引用文献1の「柱状スペーサの頂部を角がないドーム形状とすることで、ラビング時にラビング布にダメージを与えることもなく、正常にラビングを行うことが可能となり、後続のラビングにも悪影響を与えることもない」(【0012】)との記載、及びスペーサはラビングにおける障害物であるとの技術常識を踏まえると、スペーサが「頂部に角のないドーム形状」を備えていても、頂部が尖っていると、頂部がなだらかな形状であるより、ラビング布へダメージを与えるものと考えられるから、引用発明の「頂部に角のないドーム形状」を、よりなだらかな曲面を有するもの、すなわち「断面軌跡の最大曲率が150mm-1以下」のドーム形状、として構成することは、当業者であれば容易になし得たことといえる。
オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
カ 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和4年3月11日提出の上申書にて、以下のことを主張している。
(ア)引用文献1に記載された柱状スペーサの高さは4μm程度であること。(第6頁第3行~第29行)
(イ)引用文献1に記載された発明に、引用文献2及び引用文献3に記載された事項を適用する動機がなく、阻害要因があり、2段階の論理付けとなっていること。(第6頁第31行~第7頁第41行)
しかしながら、下記のとおりであるから、審判請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。
上記(ア)に対して、引用文献1の【0013】に「柱状スペーサは基板間の間隙(4μm程度)とほぼ同程度であり」と記載されているとしても、例示にすぎないものであり、上記第2の2(4)ウに説示のとおりである。
上記(イ)に対して、上記第2の2(4)ア及びウに説示のとおりである。
キ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年8月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
1 特開2007-240599号公報
2 特開2006-184505号公報
3 特開2009-048052号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「半球部の断面軌跡の最大曲率が150mm-1以下」との特定が、「半球部の断面軌跡の最大曲率が1,000mm-1以下」となり、本件補正発明に対して、「半球部の断面軌跡の最大曲率」の範囲が広いものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その数値範囲を狭くしたものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明並びに引用文献2及び引用発明3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明並びに引用文献2及び引用発明3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-011448