2020-700956
ビールテイスト飲料、およびビールテイスト飲料の製造方法
- 審判番号
- 2020-700956
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-130640外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月03日
- 審決日
- 2021年02月12日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C12G) / P1651.537-Y (C12G) / P1651.536-Y (C12G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
特許第6706374号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、令和1年7月12日に特許出願され、令和2年5月19日に特許権の設定登録がされ、同年6月3日にその特許公報が発行され、その後、同年12月3日に、特許異議申立人 中川 賢治(以下「特許異議申立人」という。)により、請求項1~10に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。
第2 特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明10」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が6~97mg/100mL、総ポリフェノール量が3~90質量ppm、リナロールの含有量が20~1200質量ppb、および、原麦汁エキス(O-Ex)濃度が5~18質量%であり、アルコールを含有する発酵ビールテイスト飲料。【請求項2】総ポリフェノール量が5~89質量ppmである、請求項1に記載の発酵ビールテイスト飲料。続きを表示(全21行)【請求項3】原麦汁エキス(O-Ex)濃度が8~15質量%である、請求項1または2に記載の発酵ビールテイスト飲料。【請求項4】全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25である、請求項1~3のいずれかに記載の発酵ビールテイスト飲料。【請求項5】窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、請求項1~4のいずれかに記載の発酵ビールテイスト飲料。【請求項6】請求項1~5のいずれかに記載の発酵ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、麦芽比率が5~55質量%である発酵ビールテイスト飲料の製造方法。【請求項7】ホップを配合する工程を有しない、請求項6に記載の発酵ビールテイスト飲料の製造方法。【請求項8】さらに、酵母が資化可能な原料からなる群から選ばれる1種以上を配合する工程を有する、請求項6又は7に記載の発酵ビールテイスト飲料の製造方法。【請求項9】さらに、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有する、請求項6~8のいずれかに記載の発酵ビールテイスト飲料の製造方法。【請求項10】さらに、コリアンダー、コリアンダーシードまたはこれらの抽出物を添加する工程を有する、請求項6~9のいずれかに記載の発酵ビールテイスト飲料の製造方法。」
第3 特許異議申立理由
1 進歩性
異議申立理由1:請求項1~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の、刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明および甲第2号証~甲第14号証に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 サポート要件
異議申立理由2:請求項1~10に係る発明について、請求項1~10に係る発明の効果を奏することが確認されているのは全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25のうち1.088~1.089のアルコール含有発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法のみであり(この点については、請求項4~10に係る発明について)、また原麦汁エキス(O-Ex)濃度が9.11~13質量%のアルコール含有発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法のみであるが、請求項1~10に係る発明は、この範囲外であるアルコール含有発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法を含むから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないし、アルコールは、それ自体が甘味、苦味、刺激感を有し、飲料の甘味、苦味、コク影響を及ぼす(甲第15号証)にもかかわらず、アルコール濃度が特定されておらず、実施例とは大きく異なるアルコール濃度の発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法を含み、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 実施可能要件
異議申立理由3:請求項1~10に係る発明について、請求項1~10に係る発明の効果を奏することが確認されているのは全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25のうち1.088~1.089のアルコール含有発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法のみであり(この点については、請求項4~10に係る発明について)、また原麦汁エキス(O-Ex)濃度が9.11~13質量%のアルコール含有発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法のみであるが、本件特許発明1~10は、この範囲外であるアルコール含有発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法を含むから、本件明細書には、本件特許発明1~10の全範囲において当業者が実施できるように記載されているとはいえず、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
甲第4号証:R.T.Foster II 外2名,The Contribution of Post-Fermentation Bittering to Beer Composition and Stability,MBAA Technical Quarterly,Vol.37,No.1,2000年,p.89~95<URL:https://www.mbaa.com/publications/tq/tqPastIssues/2000/Abstracts/tq00ab24.htm>を通じて入手
第4 当審の判断
異議申立理由1(進歩性)について
1 甲号証の記載事項
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(1)甲第1号証
本願の出願前頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(1a)「ホップ無しとホップ有りのオールモルト(麦芽100%)ピルスナービールを、プロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)と通常の麦芽(Gatinais)を用いて醸造した。タンニンフリーのホップエキスを使用した。ビールは化学的に分析され、苦味における可能な嗜好性と違いを検出するために、専門家とトレーニングを受けていない味覚パネルの両方に供された。対比較試験は、3%の有意差で、無ホップビールの苦みの評価に違いがあり、プロアントシアニジンを含まないビールの方がより苦みを示す。パネリストは渋味の違いを検出せず、どちらのビールも嗜好性に違いはなかった。ホップビールの場合、対比較試験では、苦味、渋味、嗜好の違いはみられなかった。最後に専門家とトレーニングを受けていないパネルの両方を使用して行った三角グラフの実験において、5%の有意差で、ホップ無しとホップ有りのプロアントシアニジンフリーと通常のビールに差はみつからなかった。」(67頁 要約)
(1b)「ビール醸造-各醸造用の挽いた麦芽(9kg)を45℃30リットルの醸造水ですりつぶした。30分後注入により温度は約20分で63℃まで上昇した。温度を63℃で30分間一定に保ち、その後、約10分で70℃まで上昇させた。45分後使用済み穀物を甘麦汁から分離し、熱水(70℃)を散布した。その増量と散布工程に約90分をかけた。次に、麦汁を0.5M硫酸でpH5.22に酸性化し、酸を添加する前に分析用の甘麦汁サンプルを採取した。甘麦汁の沸騰に90分をかけた。ホップありのビールの場合には、沸騰(煮沸)工程の初めにα酸(100mg/l)を添加する。総量の約10%が沸騰中に蒸発した。
麦汁(約60リットル)を約15分で8℃に冷却した。ホップありの麦汁300mlに懸濁したサッカロミセス カールスバーゲンシス90mgを添加し、麦汁を滅菌された酸素で酸化した。培養器を9℃で5日間維持した。その後、ビールを二酸化炭素圧力下ラガータンクへ移した。第2次発酵を9℃で7日間行った。」(67頁右欄14~34行)
(1c)「Gatinais及びant13-13xRupal麦芽から生産された無ホップ及びホップ有りビールのビール分析
分析 ビール1 ビール2 ビール3 ビール4
総ポリフェノールmg/L 136 52 135 49
アントシアノーゲンmg/L 34.6 5.5 35.1 4.3
苦味価 EBCユニット 2.7 4.1 21.1 21.4
原麦汁エキス% 11.09 10.96 11.25 10.95
・・・
総タンパク質量g/L 4.57 4.58 4.46 4.47
・・・
(2)甲第2号証
本願の出願前頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の記載がある。
(2a)682頁の 「第1表 ビールの全窒素 (mg/l)」と題する表には、
対象ビールとして、各引用文献に記載された、それぞれ、日本(各社)、日本 全麦芽ビール、アメリカ、カナダ、欧大陸諸国、英・アイルランド ポータ、アメリカ エール、カナダ エール、アイルランド スタウト、日本(各社) スタウト、日本(各社) 黒ビールについて、それぞれ、全窒素が[平均(範囲)]で、[490(400-580)]、[710(630-780)]、[470(420-590)]、[610(500-770)]、[610(370-850)]、[760(750-760)]、[480(450-500)]、[690(560-820)]、[1000(860-1090)]、[920(800-1030)]、[830(720-910)]であることが示されている。
(2b)「近年,ビール蛋白の研究にもゲルろ(決定注:原文ではさんずいに「戸」)過法が導入されて401)~407),ようやく分子量分画的な研究が現れ始めたが,まだ数値的にまとめ得るデータがほとんど無い。一例だけ挙げると,Narziβ ら407)はドイツの12%淡色ビール2点について次の様に報告している。
第5表 “ビール蛋白”の分子量分布
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
mg/l 全窒素×6.25 分子量分布
~2600 ~4600 ~1.2万 ~3万 ~6万
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ビールA 2,390 1,035 410 815 70 65
ビールB 2,530 1,360 660 205 180 120
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(684頁右欄28~32行及び第5表)
(3)甲第3号証
本願出願前頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の記載がある。
(3a)「(1)窒素化合物とその由来
イ 含有量
ビールの全固形分の約5%が窒素化合物である。ビールの種類によって異なるが,その範囲は約250mg/lから1,000mg/lに及ぶ1)。日本の主なビールの全窒素含量は,副原料使用ビールで450~600mg/l,全麦芽ビールでは700~900mg/lの範囲である。第1表に国産市販ビールの全窒素化合物の含量を示す2)。
ロ 由来と生成経路
ビール中の窒素化合物の由来は,原料の麦芽や副原料と発酵過程での生成がほとんどである。特にタンパク質・ペプチド・アミノ酸は,量的にはほとんどすべて大麦のタンパク質に由来する。ホップも粗タンパク13~24%を含み,その大部分は可溶性であるが,もともとホップの使用量は麦芽・副原料の1/100にすぎないから量的には問題とするに足りない3)。」(196頁左欄6~21行)
(3b)「 第1表 国産市販ビールの全窒素化合物含量の分析例2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ビールの種類 Lager Lager Lager Lager Lager All malt All malt All malt
A B C D E F G H
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全窒素(mg/l) 550 540 450 480 500 790 720 820
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
」(196頁第1表)
(4)甲第4号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である甲第4号証には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(4a)「パイロット醸造
クアーズパイロット醸造所は、ライトビールとラガービールの両方を、麦芽と副原料の比率を60:40で醸造した。副原料は、精製されたでんぷん粉と米で構成されていた。ヘリオットワット大学パイロット醸造所は、100%麦芽でラガービールを醸造した。両方のパイロット醸造所でのこれらの試験における無ホップビールは、さまざまな苦味レベルになるように、パッケージされたビールに事前に異性化されたアルファ酸で発酵後にホップ処理された。両方のパイロット醸造所からのビールの一部は、ボトルを必要な時間温水に沈めることによって加熱殺菌された。」
(90頁左欄6~15行)
(4b)「加熱殺菌されていない及び加熱殺菌されたホップ添加ラガービール(60:40、麦芽:副原料)の両方の物理的安定性は、ホップ無添加ビールと比較して、より大きな永続的および寒冷の混濁の発生を示した。無ホップラガーに対する、事前に異性化されたIAAを使用した発酵後のホッピングは、総ポリフェノールレベルを増加させ、おそらくポリフェノール感受性タンパク質相互作用を増加させ、ホップ添加ビールの物理的安定性を低下させた(表3参照)」(91頁右欄1~8行)
(4c)
「 表3ビール ボトル充填 IBU1 IAA2 ポリフェノール永続的な混濁3寒冷混濁4総混濁タイプ ビール処理 mg/L mg/L mg/L・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続きを表示(全14行)ラガー 非加熱殺菌 10.8 9.5 85.6 3.32 1.94 5.26ラガー 非加熱殺菌 1.6 0.5 62.1 2.10 0.34 2.44ラガー 加熱殺菌 10.9 10.3 83.0 1.61 0.76 2.37ラガー 加熱殺菌 1.4 0.5 64.5 1.54 0.27 1.81・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1-IBU=国際苦味価 3-20℃での全シグリスト角度(EBCフォルマジン単位)2-IAA=イソ-α酸 4-0℃での全シグリスト角度(EBCフォルマジン単位)表3異性化ホップエキスを後発酵後添加した加熱殺菌ビールと非加熱殺菌ビールのポリフェノールと物理的安定性の比較」(92頁表3)
(5)甲第5号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の記載がある。
(5a)「【請求項1】
苦味価が5未満、総ポリフェノール量が30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比が0.1超3.0以下である、ビールテイスト飲料。」
(5b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールらしい香味の付与に用いられる原材料として、ホップが通常用いられる。一方、ビールテイスト飲料がホップ由来の苦味成分を含む場合、飲みにくいと感じられる場合があった。
【0005】
本発明は、飲みにくさを解消しつつ、ビールらしいコク及びキレを有するビールテイスト飲料の提供を目的とする。」
(5c)「【0013】
ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンビールテイストアルコール飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料としてのアルコール感を担保する観点から、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であることが好ましい。ビールテイストアルコール飲料は、例えば、蒸留アルコールを添加したものであってもよく、発酵工程を介してアルコールを含むものとなったものであってもよい。なお、アルコール度数とは、ビールテイスト飲料に含まれるエタノールの含有量を意味する。」
(5d)「【0018】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、5未満であればよく、飲みやすさがより改善される観点から、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下又は2.0以下であってよい。ビールテイスト飲料の苦味価は、0.5以上、1.0以上又は1.5以上であってよい。」
(5e)「【0021】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、ビールらしいコク及びキレがより優れたものとなるという観点から、40mg/L以上、60mg/L以上、100mg/L以上、125mg/L以上、150mg/L以上、200mg/L以上、250mg/L以上、300mg/L以上、400mg/L以上、又は500mg/L以上であってよい。総ポリフェノール量は、3000mg/L以下、2600mg/L以下、1000mg/L以下、515mg/L以下、又は260mg/L以下であってもよい。総ポリフェノール量は、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲に適宜設定することができる。また、総ポリフェノール量は、例えば、製造工程の任意の段階におけるカテキン、ヘスペリジン、赤ワインエキス等の添加、ポリビニルポリピロリドン(Polyvinylpolypyrrolidone;PVPP)を用いた処理等により調整することもできる。
【0022】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の全窒素量は50mg/L以上であってよい。全窒素量は、ビールらしいコクがより一層良好になるという観点から、60mg/L以上、100mg/L以上、110mg/L又は、120mg/L以上であってよく、ビールらしいキレがより一層良好になるという観点から、1000mg/L以下、500mg/L以下、又は480mg/L以下であってもよい。」
(5f)「【0024】
総ポリフェノール量(mg/L)(以下、「TPP」ともいう。)に対する全窒素量(mg/L)(以下、「TN」ともいう。)の比(TN/TPP)は、0.1超3.0以下である。TN/TPPは、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下又は0.9以下であってもよく、0.15以上、0.2以上又は0.3以上であってもよい。TN/TPPが上記範囲内であることにより、ビールらしいコク及びキレがより一層優れたものとなる。TN/TPPは、全窒素量及び/又は総ポリフェノール量を、上記記載の方法で調整することで、上記記載の範囲に適宜設定することができる。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。麦原料は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。」
(5g)「【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料以外の植物原料を含んでもよい。言い換えれば、当該ビールテイスト飲料は、原料として、植物原料を使用したものであってよい。麦原料以外の植物原料としては、例えば、とうもろこし、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類等が挙げられる。麦原料以外の植物原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてスターチ、グリッツ等の澱粉原料を含んでいてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、大豆、エンドウ及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、原料として、大豆及びエンドウからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、上記植物原料に由来するタンパク質又はその分解物(例えば、エンドウタンパク分解物)を含んでいてよい。」
(6)甲第6号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。
(6a)「・・・この泡の膜を形成するのに重要なのが、麦芽に由来するタンパク質とホップに由来する苦味成分イソフムロン(イソアルファ酸)です。ビールが注がれた時にできた泡の中では、タンパク質の分子同士をイソフムロンが補強するような形で膜が形成され、親水性の部分を液側(外側)に、疎水性の部分をガス側(内側)に配列させた形で化学的に安定化し、それを多糖類の鎖がつなぎ合わせて泡の立体構造が物理的に安定化することにより、泡が消えにくくなっていると考えられています(図5-1)。
試しにホップを入れないでビールを造ってみると、泡は立ちますが、すぐに消えてしまいます。逆に、ホップのイソフムロンだけを水に溶かして泡立ててみても泡は全く立ちません。・・・」(139頁1~14行)
(7)甲第7号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。
(7a)「2-2 泡持ち(head retention)
ビールの泡の安定性は気泡の安定性と直接関係しており,気泡を崩壊させる何らかの物質により泡の安定性が損なわれる。気泡の安定性,すなわちビールの泡の安定性は一般的には蛋白質(正確にはポリペプチド),炭水化物,金属イオンおよびホップ由来のイソフムロンの相互作用によりもたらされていると考えられているが,特に蛋白質はもっとも重要な役割を担っていると考えられている。
ビールの泡が安定しているのは,蛋白質とイソフムロンがイオン的に結合して複合体を形成し,これが泡安定性を高めているからである(第2図)13)。」(302頁左欄下から7行~右欄5行)
(7b)「3-2-1. ポリフェノールと蛋白質の複合体による混濁
一方,非生物学的混濁の原因となる物質はいくつかあるが,もっとも頻繁に問題となるのがポリフェノールと蛋白質の複合体が原因となる混濁である。輸入ビールなどで,長期保存されたビールを低温に冷やすと混濁が発生することがある。これらの混濁の多くがポリフェノールと蛋白質の複合体による混濁である。・・・ポリフェノールのコントロールには原料の麦芽やホップを減らすか,ビール濾過の際にポリビニル-ポリピロリドン(PVPP)を用いてポリフェノールの一部を吸着除去する方法が採られる32)。しかし,ポリフェノールはビールの香味そのものや酸化防止にとっても重要な成分であるので,注意が必要である。蛋白質のコントロールでは,適正な蛋白質含量の麦芽を用いること,十分な麦汁煮沸強度を得ること,さらにビール濾過前で二酸化珪素やタンニン酸を加えて吸着除去することも行われている。」(303頁右欄下から12行~304頁右欄第4図タイトルの下2行)
(8)甲第8号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である甲第8号証には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(8a)「ビール発酵中の泡の形成は、醸造者にとって重大な欠陥である。泡の過形成は、(a)二酸化炭素排出パイプに泡が付着し、その結果、容器の上部にある取り付け具の衛生状態または操作が損なわれる、(b)ビールとホップの苦味の損失、および(c)重要な泡成分の一部の損失による、最終のビール製品の泡特性への起こり得るダメージ、の結果となる。」(368頁左欄2~9行)
(9)甲第9号証
本願の出願前頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の記載がある。
(9a)「
第1表 泡持ちに関するビール成分
プラス要因 マイナス要因
[液膜表面]
蛋白質 低分子窒素化合物
糖蛋白質 脂質
ホップ由来苦味物質 脂肪酸
遷移金属イオン 高分子ポリフェノール
低分子ポリフェノール
[液膜を形成する液体中]
α-グルカン 脂質
β-グルカン 高級アルコール
ペントーザン
[ガス]
窒素,空気」(9頁左欄第1表)
(10)甲第10号証
本願の出願前頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の記載がある。
(10a)「 安定な泡の形成に最も重要な役割を果たしているビール成分は,麦の蛋白とホップに由来する苦味質(αイソ酸)である.蛋白はポリフェノールと結合しない状態では高い表面活性を有するので,泡沫中にビール中よりも濃縮されて存在する.一方イソα酸も表面活性の強い物質であって,同じく泡沫中に濃縮されていることは古くからよく知られている・・・ビールからの蛋白を5%のエタノール水溶液(ビールのエタノール濃度は4~5%)に溶解すると,泡立つが安定な泡を形成するには至らない.また,イソα酸を同じく溶解した場合には蛋白よりも強固な泡をつくるが,グラス壁への付着性をもつほどのものではない.ところが,両者が共存すると堅固な泡沫となり,しかも明瞭な付着性を示すようになる.このモデル実験は,これまで個別にその意義を強調されていた2つの物質群が,それらの共存によって相乗的な効果をあらわし,泡に新しい特性を賦与することを示唆している点で非常に興味深い.」(505頁左欄下から4行~右欄19行)
(11)甲第11号証
本願の出願前頒布された刊行物である甲第11号証には、以下の記載がある。
(11a)「【0004】
一方で、ビールを飲んだときに感じる独特の「ふくみ香」や溜飲した後のアロマ香が近年着目され、その研究が行われている。ホップアロマ香を構成しているのがホップのルプリン粒に含まれるホップ精油である。ホップ精油について具体的な物質例を挙げると、リナロールはホップ精油に含まれる代表的なテルペン化合物であり、フローラル感を付与する物質である。その他にもモノテルペンであるミルセンやα-,β-ピネン、セスキテルペンにα-フムレンやβ-カリオフィレンなど、精油を構成する化合物は現在までに約300種以上が同定されている。
【0005】
このようにホップに由来する多様な香気成分の存在が知られているものの、飲料中の香気と化学成分に関する研究は限定的であった(非特許文献1~5参照)。すなわち、具体的香気と化学成分との対応関係は明確でなく、特に細分化した香気特徴と関連する化学成分はほとんど知られていない。」
(12)甲第12号証
本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である甲第12号証には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(12a)「【0015】
本実施形態においては、麦を発酵させて得られたアルコールに加えて、必要に応じ、さらにアルコールを添加することができる。添加するアルコールは、飲用アルコールであればよく、種類、製法、原料などは限定されない。例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカなどの各種スピリッツ、原料用アルコールなどを1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。なお、麦を発酵させて得られたアルコールの濃度が高い場合は、所望のアルコール度数となるように希釈することもできることはいうまでもない。」
(12b)「【0030】
(リナロール、α-テルピネオール)
リナロールとは、スズラン、ラベンダーの様な芳香を放つ化合物であり、モノテルペンアルコールの一種である。そして、α-テルピネオールとは、ライラックの様な芳香を放つ化合物であり、モノテルペンアルコールの一種である。
リナロール及びα-テルピネオールいずれもが、ビールテイスト飲料のキレを改善する効果、つまりキレを良くする効果を発揮する。ただし、α-テルピネオールの方がリナロールよりも少ない含有量(約1/2の含有量)で効果を発揮する。
【0031】
詳細には、ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量をXppbとし、α-テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすことにより、ビールテイスト飲料のキレを良くするという効果を得ることができる。なお、X=0又はY=0であっても、上記式を満たす限り、キレを良くするという効果を得ることができる。
一方、(X+2Y)が200未満の場合、リナロール及びα-テルピネオールに基づいたビールテイスト飲料のキレを改善する効果を期待できない。
【0032】
そして、ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量をXppbとし、α-テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、X≧200及びY≧100のうちの少なくとも一つを満たすことにより、ビールテイスト飲料のキレを良くするという効果を確実に得ることができる。つまり、X≧200を満たすことにより、リナロールに基づくビールテイスト飲料のキレを改善する効果を確実に得ることができ、Y≧100を満たすことにより、α-テルピネオールに基づくビールテイスト飲料のキレを改善する効果を確実に得ることができる。
【0033】
リナロールの含有量(X)の上限値については、特に限定されるものではないが、3000ppbを超えるとグリーンな香り(青臭い香り、ホップ臭)が強くなってしまう。よって、リナロールの含有量は3000ppb以下が好ましい。
また、α-テルピネオールの含有量(Y)の上限値についても、特に限定されるものではないが、5000ppbを超えると前記の効果が飽和してしまう。よって、α-テルピネオールの含有量は5000ppb以下が好ましい。
なお、ここで1ppbとは、詳細には1.0×10-9w/vである。
【0034】
(リナロール、α-テルピネオール:由来)
リナロール及びα-テルピネオールの由来は問わない。つまり、麦由来原料やホップなどの原料に由来して含有したものであると、任意添加材料として添加されたものであるとを問わず、最終製品における含有量が前記の範囲であればよい。
ただし、従来の方法によってビールテイスト飲料を製造した場合、リナロール及びα-テルピネオールの含有量を前記の範囲とするのは困難であるため、例えば、任意添加材料としてコリアンダーシードやオレンジピールを用いるのが好ましい。コリアンダーシードにはリナロールが、オレンジピールにはα-テルピネオールが豊富に含有されているとともに、いずれの香味もビールテイスト飲料に悪影響を及ぼさないからである。
なお、コリアンダーシードとは、コリアンダーの種子(植物学上では果実)である。また、オレンジピールとは、オレンジの果皮又はこの果皮を乾燥させたものである。」
(13)甲第13号証
本願出願前頒布された刊行物である甲第13号証には、以下の記載がある。
(13a)「[0016] 麦芽はビールらしさを付与する重要な原料であるが、本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料においては、特定の16の香気成分の少なくとも1種以上が添加されることによってビールらしさが付与される。当該16の香気成分は、麦芽を原料としなくとも、原料由来の香気成分がほとんど含まれていない場合であっても、単独で添加することによってビールらしさを付与できる。」
(13b)「[0033] 本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料がリナロールを含有する場合、飲料中のリナロール含有量は、0.2~250000ppbが好ましく、32~8000ppbがより好ましく、160~1600ppbがさらに好ましい。」
(13c)「[0066][実施例1]
本発明者らは、ビールに含まれる主要香気成分を分析し、特に匂い強度の強い16成分(3-メチル-1-ブタノール、イソバレリン酸、γ-ノナラクトン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、2-アセチルチアゾール、4-ビニルグアイアコール、2-アセチル-1-ピロリン、2-プロピル-1-ピロリン、ミルセン、リナロール、β-ダマセノン、フェネチルアルコール、シス-3-ヘキセノール、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、メチオノール、及び2-メチル-3-フランチオール)を同定した。
各成分を製造例1で製造したベース液に様々な濃度で添加し、ビールらしさについて官能評価を実施した。官能評価は、2名の専門パネルにより、香気成分無添加のベース液の評価を中心値4とした7段階評価(ビールらしさが感じられない場合を1とし、非常に強く感じられた場合を7とする。)にて行った。また、表3~5には、評価に当たり各パネルが述べたコメントも記載した。」
(13d)「[0068]
[表4]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
linalool 添加
添加量(ppb)16 32 160 800 1600 8000
16000
官能コメントわからないフローラル(160~1600はフローラル、爽快感) ラベンダー、香り強すぎる フローラル
ビールらしさ 4 5 6 6 6 5
評価
3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
」
(14)甲第14号証
本願出願前頒布された刊行物である甲第14号証には、以下の記載がある。
(14a)「【0004】
原材料にホップを用いないビールテイスト飲料では、ホップの抗菌作用を利用できないため、微生物の殺菌が必要となる場合があり、例えば加熱工程が行われる。
そこで、原材料にホップを用いないビールテイスト飲料において、加熱工程による不快な香りがマスキングされた飲料が求められている。また、原材料にホップを用いないが優れた香味を有するビールテイスト飲料が求められている。」
(14b)「【0008】
1 ビールテイスト飲料
本発明のビールテイスト飲料は、リナロール(linalool)、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンおよび2-アセチルピラジン(2-acetyl pyrazine)からなる群から選ばれる1以上を所定量含有し原材料にホップを使用しない飲料である。
【0009】
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程の有無に拘わらず、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。本発明のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、日本の酒税法上の名称における発泡酒、ビール、リキュール類、その他雑酒が含まれ、また、低アルコールの発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の発酵飲料)、スピリッツ類、ノンアルコールのビールテイスト飲料、ビールテイストの清涼飲料なども含まれる。
【0010】
本発明のビールテイスト飲料のアルコール分は特に限定されないが、好ましくは0~40重量%、より好ましくは1~15重量%である。特にビールや、発泡酒といったビールテイスト飲料として消費者に好んで飲用されるアルコールと同程度の濃度、すなわち、1~7重量%の範囲であることが望ましいが、特に限定されるものではない。
【0011】
1.1 原材料
本発明のビールテイスト飲料の原材料は水、穀物、糖類、水溶性食物繊維および各種添加物等であり、ホップは含まれない。」
(14c)「【0017】
1.2 香気成分
本発明のビールテイスト飲料はリナロール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンおよび2-アセチルピラジンから選ばれる1以上の香気成分を含む。これらの香気成分を用いると、加熱工程などで発生する不快臭を効果的にマスキングできる。
【0018】
リナロールは3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールであり、常温(20~25℃)で液体の化合物であり(20℃における密度:0.87g/cm3以下、リナロールの質量を示す場合には20℃における質量を示す)、スズラン様のさわやかな甘い香りを有する成分であり、紅茶や緑茶などに含まれ、ホップの香気成分の1つとしても知られている。
2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンは、甘芳ばしい香りを有する成分であり、イチゴ、パイナップルなどに含まれる。
2-アセチルピラジンは、穀物様の芳ばしい香りを有する成分であり、ピーナッツ、ポップコーン、ゴマなどに含まれる。
【0019】
リナロール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、2-アセチルピラジンは単独で用いられても、併せて用いられてもよい。
【0020】
原飲料に発酵液を用いたビールテイスト発酵飲料におけるリナロールの含有量は0.005質量ppm以上が好ましく、0.005~0.5質量ppmがさらに好ましく、0.01~0.5質量ppmが特に好ましい。原飲料に非発酵液を用いたビールテイスト非発酵飲料におけるリナロールの含有量は0.005質量ppm以上が好ましく、0.005~0.5質量ppmがさらに好ましく、0.01~0.5質量ppmが特に好ましい。」
(15)甲第15号証
サポート要件、実施可能要件に関する異議申立理由2,3について提出された甲第15号証には、図-1.エタノール水溶液の味の強さと題するグラフにおいて苦味、甘味、刺激感の強さとエタノール濃度の関係の結果が示され、エタノールの甘味の増強に関する効果、酸味抑制の効果の記載、図-2.ノンアルコールビールにエタノールを添加したときの味の強さと題するグラフにおいて、苦味、甘味、酸味に関し、エタノール濃度と味の強さの関係の結果が示され、エタノールがビールの「ボディ」に強く寄与することが記載されている。
2 甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証は、オールモルトピルスナービールのホップ有り無し状況下でのプロアントシアニンフリー麦芽と通常麦芽を用いた風味と混濁安定性に関する文献であって、甲第1号証には、ホップ無しとホップ有りのオールモルト(麦芽100%)ピルスナービールを、プロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)と通常の麦芽(Gatinais)を用いて醸造したものが分析され(摘記(1a))、摘記(1c)の表4には、プロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)を用いたホップ無しのビール2の分析結果として、総ポリフェノール52mg/L、アントシアノーゲン5.5mg/L、苦味価EBCユニット 4.1、原麦汁エキス10.96%、総タンパク質量4.58g/Lであることがその他の分析項目とともに示されている。
したがって、甲第1号証には、「プロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)を用いたホップ無しの、総ポリフェノール52mg/L、アントシアノーゲン5.5mg/L、苦味価EBCユニット 4.1、原麦汁エキス10.96%、総タンパク質量4.58g/Lであるビール」に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)また、摘記(1b)には、甲第1号証の各ビールの醸造方法の記載として、「ビール醸造-各醸造用の挽いた麦芽(9kg)を45℃30リットルの醸造水ですりつぶした。30分後注入により温度は約20分で63℃まで上昇した。温度を63℃で30分間一定に保ち、その後、約10分で70℃まで上昇させた。45分後使用済み穀物を甘麦汁から分離し、熱水(70℃)を散布した。その増量と散布工程に約90分をかけた。次に、麦汁を0.5M硫酸でpH5.2に酸性化し、酸を添加する前に分析用の甘麦汁サンプルを採取した。甘麦汁の沸騰に90分をかけた。ホップありのビールの場合には、沸騰(煮沸)工程の初めにα酸(100mg/l)を添加する。総量の約10%が沸騰中に蒸発した。
麦汁(約60リットル)を約15分で8℃に冷却した。ホップありの麦汁300mlに懸濁したサッカロミセス カールスバーゲンシス90mgを添加し、麦汁を滅菌された酸素で酸化した。発酵容器を9℃で5日間維持した。その後、ビールを二酸化炭素圧力下ラガータンクへ移した。第2次発酵を9℃で7日間行った。」と記載され、ホップなしのビールの場合には、当然α酸を加えない無ホップの麦汁を使用することになるのであるから、摘記(1a)(1c)も考慮すると、以下の発明も記載されているといえる。
「挽いた麦芽(9kg)を45℃30リットルの醸造水ですりつぶし、30分後注入により温度は約20分で63℃まで上昇し、温度を63℃で30分間一定に保ち、その後、約10分で70℃まで上昇させ、45分後使用済み穀物を甘麦汁から分離し、熱水(70℃)を散布し、その増量と散布工程に約90分をかけ、次に、麦汁を0.5M硫酸でpH5.2に酸性化し、酸を添加する前に分析用の甘麦汁サンプルを採取し、甘麦汁の沸騰に90分をかけ、総量の約10%が沸騰中に蒸発し、麦汁(約60リットル)を約15分で8℃に冷却し、無ホップの麦汁300mlに懸濁したサッカロミセス カールスバーゲンシス90mgを添加し、麦汁を滅菌された酸素で酸化し、発酵容器を9℃で5日間維持し、その後、ビールを二酸化炭素圧力下ラガータンクへ移し、第2次発酵を9℃で7日間行って製造するプロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)を用いたホップ無しの、総ポリフェノール52mg/L、アントシアノーゲン5.5mg/L、苦味価EBCユニット 4.1、原麦汁エキス10.96%、総タンパク質量4.58g/Lであるビールの製造方法」に係る発明(以下「甲1製造方法発明」という。)
3 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 甲1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ホップ無しの」は、本件特許明細書【0011】の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」の技術的意味の記載から、本件特許発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当し、甲1発明の「総ポリフェノール52mg/L」は、本件特許発明1の「総ポリフェノール量が3~90質量ppm」に該当する。
また、甲1発明の「原麦汁エキス10.96%」は、本件特許発明1の「原麦汁エキス(O-Ex)濃度が5~18質量%」に該当する。
さらに、甲1発明の「ビール」は、ピルスナービールであって、摘記(1b)から明らかなように酵母を使用したアルコール発酵ビールであるから、本件特許明細書【0010】の「ビールテイスト飲料」の定義、【0021】のアルコール度数の記載からみて、本件特許発明1の「アルコールを含有する発酵ビールテイスト飲料」に該当する。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明と、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、総ポリフェノール量が3~90質量ppm、原麦汁エキス(O-Ex)濃度が5~18質量%であるアルコールを含有する発酵ビールテイスト飲料」の点で一致し、以下の点で相違する。
(イ)判断
a 相違点1-1について
(a)甲第1号証においては、甲1発明のビール2の分析結果及び他の記載においても、全窒素量は明記がない。
そして、甲第2号証の摘記(2b)には、684頁の第5表に「“ビール蛋白”の分子量分布」と題して2点のビールの分子量分布表示とともに全窒素×6.25の値が示されている。
全窒素×6.25の値が、甲第2号証で述べられているビール中の総蛋白質量を示すのかどうかは明確ではない。
また、甲1発明のプロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)を用いたホップ無しビールの窒素量の計算に甲第2号証の計算式を参照してよいのかどうかも明確ではない(6.25という係数が一定であるのかどうかも明確ではない。)。
したがって、甲1発明の総タンパク質量4.58g/Lから総タンパク質量=ビール中の全窒素量×6.25の計算式を仮定して、全窒素量73.3mg/100mLや全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)1.41という計算が成り立つのかどうか明らかとはいえないし、技術常識であるともいえない。
したがって、上記相違点1-1は、実質的相違点である。
(b)また、甲第2号証摘記(2a)、甲第3号証摘記(3a)、甲第5号証摘記(5e)には、全窒素量の本件特許発明1の範囲に該当するもの、甲第4号証摘記(4c)、甲第5号証摘記(5e)には、総ポリフェノール量の本件特許発明1の範囲に該当するものが、それぞれ示されているものの、オールモルトピルスナービールのホップ有り無し状況下でのプロアントシアニンフリー麦芽と通常麦芽を用いた風味と混濁安定性に関する文献において、ホップ無しのプロアントシアニンフリー麦芽を用いたオールモルト(麦芽100%)ピルスナービールを分析した結果である甲1発明は、発明として完結しており、全窒素量の値に着目して、特定の数値範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1発明において、「全窒素量が6~97mg/100mL」とすることは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
b 相違点2-1について、
(a)甲第1号証においては、甲1発明のビール2の分析結果及び他の記載にも、リナロールを含有することやその含有量が20~1200質量ppmであることの明記がない。
甲第11号証には、リナロールがフローラル感を付与するテルペン化合物で、ホップ自体の香りであって、ビールに自然なホップ香を付与するものでないことが、甲第12号証には、水溶性食物繊維を含有させることを前提に、キレが悪化する課題をリナロール及びαテルピネオールの少なくとも1種の添加で解決しようとするものである。
また、甲第13号証には、プリン体濃度が非常に低いにもかかわらず「ビールらしさ」を保持している非発酵ビール様発泡性飲料に関して、ビールらしさを付与する麦芽を原料としなくてもビールらしさを付与できる16の香気成分の一つとしてリナロールが挙げられ、その場合の含有量範囲が示されている。
さらに、甲第14号証には、加熱工程における不快な香りのマスキングのために、マスキング材料の一つとしてリナロールが記載されている。
(b)甲1発明は、ホップ無しのプロアントシアニンフリー麦芽を用いたオールモルト(麦芽100%)ピルスナービールを分析した結果に基づくものであって、分析結果の発明として完結しており、甲第11~14号証からリナロールが香り付与成分であることは理解でき、たまたま本件特許発明1のリナロールの含有量範囲に該当する例が存在するからといって、何ら示唆のないリナロールに着目して、その含有量を特定の数値範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
そして、甲第11号証のリナロールが自然なホップ香を付与するものでないことに関する記載や甲第12号証の水溶性食物繊維を含有させることを前提としたビールテイスト飲料の文献の記載や甲第13号証の非発酵ビール様発泡性飲料に関する記載や甲第14号証の加熱工程における不快な香りのマスキングにリナロール等を用いている文献の記載から、甲1発明において、リナロールの含有量を特定範囲に設定する根拠とはならないといえる。
(c)したがって、甲1発明において、甲第11~14号証記載の技術的事項を参酌しても、プロアントシアニジンフリーの麦芽(ant 13-13xRupal)を用いたホップ無しのビールの「リナロールの含有量が20~1200質量ppb」とすることを特定するのは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
c 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、前記第2の請求項1に特定したように、アルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料において、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」、「全窒素量が6~97mg/100mL、総ポリフェノール量が3~90質量ppm、」「原麦汁エキス(O-Ex)濃度が5~18質量%」との構成を採用することで、本件明細書【0008】に記載される「発酵工程中の泡の大量発生および大量堆積を抑制でき、また、風味の優れたビールテイスト飲料が提供される」という顕著な効果を奏している。
d 特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、甲第1号証の表4のビール2の全窒素量を甲第2号証の684頁第5表の「“ビール蛋白”」「全窒素×6.25」の表示のみから、「総タンパク質量=ビール中の全窒素量×6.25」の計算式の前提をおいて、計算し、一致点相違点を認定している。
しかしながら、上述のとおり、換算係数や計算式の前提が不明であることから、全窒素量73.3mg/100mLという異議申立人の計算結果に基づく甲第1号証に記載された発明の認定、一致点、相違点の認定を採用することはできない。
また、特許異議申立人は、甲第11号証に記載されるように、リナロールはホップの香気成分であるから、ホップを使用しない甲1発明において、ビールらしさ付与のためにリナロールを添加増大させることは容易である旨主張しているが、上述のとおり、甲1発明は、4種のビールを分析するために製造されたもので、発明として完結しており、何ら示唆のないリナロールを特定量添加する動機付けもないし、本件特許発明の課題認識がなければ、その範囲を設定する根拠もない。
さらに、特許異議申立人は、本件特許発明1の効果について、ビールテイスト飲料の泡の安定性には、麦芽由来のタンパク質とホップ由来のイソフムロンの両方が揃うことが重要であることは甲第6,7,9,10号証から本願出願時の技術常識であり、甲第8号証から発酵時の泡の過形成は本願出願時の一般的課題であること、リナロールの含有量を増大させることによりホップ様の香りの付与やキレの改善といったビールテイスト飲料の風味を改善できることは甲第11~14号証から広く知られていたこと、甲第5号証にビールテイスト飲料のコクやキレといったビールらしさを改善するために総ポリフェノール量、全窒素量を特定範囲とすることが記載されていること等を指摘して、広く知られていた技術を単に組み合わせることで得られたもので、顕著な効果でない旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、甲第1号証に記載されたビール2に関して、何ら本件特許発明1の効果が記載も示唆もされているわけではなく、ビールテイスト飲料の泡の安定性の原因物質に関する記載と発酵時の泡の過形成の認識の記載が存在するからといって、異なるものを結びつけた上でなお、甲1発明から予測される効果と理解することはできない。
また、本願発明は、上述のとおり、アルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料において、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」、「全窒素量が6~97mg/100mL、総ポリフェノール量が3~90質量ppm、」「原麦汁エキス(O-Ex)濃度が5~18質量%」「リナロールの含有量が20~1200質量ppb」との構成を採用することで構成全体として効果を奏しており、本件特許発明1において特定された数値範囲において、効果を奏するための技術的意義が本件特許明細書の一般的記載や実施例において明らかにされているのであるから、広く知られていた技術を単に組み合わせることで得られたものということはできない。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~14号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(2)本件特許発明2~5について
本件特許発明2~5は、いずれも、本件特許発明1において、さらに技術的限定を加えた発明であって、少なくとも上記(1)で論じたのと同様の相違点を有する(本件特許発明4と甲1発明との対比においては、本件特許発明4においては、相違点1-1に対応する相違点が、「全窒素量が6~97mg/100mL」、「全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25である」と特定されているものの、甲1発明においては、「全窒素量」、「全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)」がともに明らかでない点となる。)。
したがって、上記(1)で論じたことと同様の理由により、本件特許発明2~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~14号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(3)本件特許発明6について
ア 甲1製造方法発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明6と甲1製造方法発明を対比すると、甲1製造方法発明の「ホップ無しの」は、本件特許明細書【0011】の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」の技術的意味の記載から、本件特許発明6の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当し、甲1製造方法発明の「総ポリフェノール52mg/L」は、本件特許発明1の「総ポリフェノール量が3~90質量ppm」に該当する。
また、甲1製造方法発明の「原麦汁エキス10.96%」は、本件特許発明6の「原麦汁エキス(O-Ex)濃度が5~18質量%」に該当する。、
さらに甲1製造方法発明の「ビールの製造方法」は、ピルスナービールであって、摘記(1b)から明らかなように酵母を使用したアルコール発酵ビールであるから、本件特許明細書【0010】の「ビールテイスト飲料」の定義、【0021】のアルコール度数の記載からみて、本件特許発明6の「アルコールを含有する発酵ビールテイスト飲料を製造する方法」に該当する。
そして、甲1製造方法発明の「挽いた麦芽(9kg)を45℃30リットルの醸造水ですりつぶし、30分後注入により温度は約20分で63℃まで上昇し、温度を63℃で30分間一定に保ち、その後、約10分で70℃まで上昇させ、45分後使用済み穀物を甘麦汁から分離し、熱水(70℃)を散布し、その増量と散布工程に約90分をかけ、次に、麦汁を0.5M硫酸でpH5.2に酸性化し、酸を添加する前に分析用の甘麦汁サンプルを採取し、甘麦汁の沸騰に90分をかけ、総量の約10%が沸騰中に蒸発し、麦汁(約60リットル)を約15分で8℃に冷却し、無ホップの麦汁300mlに懸濁したサッカロミセス カールスバーゲンシス90mgを添加し、麦汁を滅菌された酸素で酸化し、発酵容器を9℃で5日間維持し、その後、ビールを二酸化炭素圧力下ラガータンクへ移し、第2次発酵を9℃で7日間行って製造する」ことは、本件特許発明6の「水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する」ことに該当する。
したがって、本件特許発明6は、甲1製造方法発明と、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、総ポリフェノール量が3~90質量ppmであるアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、発酵ビールテイスト飲料の製造方法」の点で一致し、上記(1)のア(ア)で認定した相違点1-1~相違点2-1の点及びさらに、相違点3-6で相違する。
(イ)したがって、相違点3-6を検討するまでもなく、上記(1)の本件特許発明1に関してイ(イ)(ウ)で判断したのと同様に、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~14号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(4)本件特許発明7~10について
本件特許発明7~10は、本件特許発明6において、さらに技術的限定を加えた発明であって、少なくとも上記(1)で論じたのと同様の相違点を有する。
したがって、ビールテイスト飲料の泡の安定性には、麦芽由来のタンパク質とホップ由来のイソフムロンの両方が揃うことが重要であることは甲第6,7,9,10号証から本願出願時の技術常識であり、甲第8号証から発酵時の泡の過形成は本願出願時の一般的課題であること、甲第5号証にビールテイスト飲料のコクやキレといったビールらしさを改善するために総ポリフェノール量、全窒素量を特定範囲とすることが記載されていることを考慮し、本件特許発明8の特定事項である「さらに酵母が資化可能な原料からなる群から選ばれる1種以上を配合する工程を有する」ことに関して、甲第5号証、甲第11号証の記載を考慮し、本件特許発明9の特定事項である「さらに、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有する」ことに関して、甲第11号証の記載を考慮し、本件特許発明10の特定事項である「さらに、コリアンダー、コリアンダーシードまたはこれらの抽出物を添加する工程を有する」ことに関して、甲第12号証の記載を考慮してもなお、上記(1)で論じたことと同様の理由により、本件特許発明7~10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~14号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 特許異議申立理由1の判断のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~10は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証~甲第14号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえないので、異議申立理由1には、理由がない。
異議申立理由2(サポート要件)について
特許異議申立人は、前記第3 2に記載のようにサポート要件について理由を述べている。
1 異議申立理由2の概要
請求項1~10に係る発明について、請求項4に特定されている「全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25である」のうち、実施例により裏付けられている1.088~1.089のアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合や(この点については、請求項4~10に係る発明について)、原麦汁エキス(O-Ex)濃度が9.11~13質量%のアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合、実施例とアルコール含有量が大きく異なる場合については、【0005】の本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できるといえず、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備である。
2 判断
(1)本願発明に関する特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、【0002】【0003】の【背景技術】の記載、【0005】の【発明が解決しようとする課題】の記載及び明細書全体の記載からみて、麦芽の使用を抑え、ホップも使用しないことを前提に、発酵工程中の泡の大量発生および大量堆積を抑制し、旨味や味わいが豊かで、苦味や香りが付与され、風味の厚みの減少や風味のシマリ感の問題のない風味の優れたアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及び該ビールテイスト飲料を製造する方法を提供することにあるといえる。
(3) 発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書には、【0007】の【課題を解決するための手段】、【0009】の【発明を実施するための形態】に記載された本件特許発明1の構成によって、【0008】の【発明の効果】として、発酵工程中の泡の大量発生および大量堆積を抑制でき、また、風味の優れたビールテイスト飲料が提供されることが記載され、「【0012】
発酵工程中の泡の大量発生を抑制するために、原料の麦芽比率を抑えることなどによって、全窒素量および総ポリフェノール量を一定の範囲内に制御したビールテイスト飲料を提供できるが、このようなビールテイスト飲料は、苦味が目立ちやすくなる。本発明のビールテイスト飲料は、ホップに多く含まれるイソα酸の含有量が0.1質量ppm以下に制限し、かつ、一定量のリナロールを含有するため、風味の優れたビールテイスト飲料となる。・・・」との記載、「【0013】
本発明のビールテイスト飲料の全窒素量は3~120mg/100mLである。本発明における「全窒素量」とは、タンパク質、アミノ酸等の全ての窒素化合物の総量である。
全窒素量は飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する。全窒素量を3mg/100mL以上とすることによって飲み応え、味の厚み、味わいを向上させることができる。これらをさらに向上させる観点から全窒素量は6mg/100mL以上が好ましく、8mg/100mL以上がより好ましく、15mg/100mL以上がさらに好ましく、30mg/100mL以上が特に好ましい。
他方、全窒素量が多いと、発酵工程中に泡が大量に発生し、また飲み口も重くなってしまう。そこで、本発明の飲料の全窒素量は特に限定されないが、115mg/100mL以下が好ましく、100mg/100mL以下がより好ましく、98mg/100mL以下がさらに好ましく、90mg/100mL以下がさらに好ましく、80mg/100mL以下がさらに好ましく、70mg/100mL以下がさらに好ましく、60mg/100mL以下がさらに好ましく、48mg/100mL以下がさらに好ましく、45mg/100mL以下がさらに好ましく、40mg/100mL以下が特に好ましい。
本発明のビールテイスト飲料の全窒素量は、比較的窒素含有量が多く、酵母が資化可能な原材料の使用量を調整することによって制御できる。具体的には、窒素含有量の多い麦芽等の使用量を増やすことにより全窒素量を増加させることができる。窒素含有量の多い原料としては、例えば、麦芽、大豆、酵母エキス、エンドウ、未発芽の穀物などが挙げられる。また未発芽の穀物としては、例えば、未発芽の大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦、大豆、エンドウ等が挙げられる。・・・」との記載、「【0014】
本発明のビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は3~90質量ppmである。
ポリフェノールとは、芳香族炭化水素の2個以上の水素がヒドロキシル基で置換された化合物をいう。ポリフェノールとしては、例えば、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンなどが挙げられる。
本発明における「総ポリフェノール量」とは、ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量である。
【0015】
総ポリフェノール量は飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する。総ポリフェノール量を3質量ppm以上とすることによって飲み応え、味の厚み、味わいを向上させることができる。これらをさらに向上させる観点から総ポリフェノール量は4質量ppm以上が好ましく、5質量ppm以上がより好ましく、7質量ppm以上がさらに好ましく、10質量ppm以上がさらに好ましく、15質量ppm以上がさらに好ましく、30質量ppm以上が特に好ましい。
他方、総ポリフェノール量が多いと、発酵時に発生した泡が堆積しやすくなり、泡が消えにくくなる。また、総ポリフェノールが多い飲料は、混濁安定性が低下し、また飲み口も重くなってしまう。そこで、本発明の飲料の総ポリフェノール量は90質量ppm以下が好ましく、80質量ppm以下がより好ましく、70質量ppm以下がさらに好ましく、60質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以下が特に好ましい。
本発明のビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、例えば、大麦麦芽、麦芽のハスク(穀皮)などのポリフェノール含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。具体的には、ポリフェノール含有量の多い麦芽等の原材料の使用量を増やすことにより総ポリフェノール量を増加させることができる。」との記載、「【0016】
一般的に、ハスク(穀皮)がある麦芽等は窒素およびポリフェノールの含有量が多く、大豆、酵母エキス、小麦、小麦麦芽等は窒素の含有量が多いがポリフェノールの含有量が少ない。そこで、ビールテイスト飲料における全窒素量および総ポリフェノール量は、原料の配合割合を調整することによって、増減させることができる。以下、全窒素量および総ポリフェノール量を増減させる代表的な方法(1)~(4)を挙げる。
(1)ハスクがある麦芽等の使用量を増やすことによって、ビールテイスト飲料の全窒素量および総ポリフェノール量を増やす。
(2)大豆、酵母エキス等の使用量を増減させることによって、総ポリフェノール量を維持しながら、ビールテイスト飲料の全窒素量を増減させる。
(3)ハスクがある麦芽等の使用量を増やし大豆、酵母エキス等の使用量を減らすことによって、全窒素量を維持しながら、総ポリフェノール量を増やす。
(4)ハスクがある麦芽等の使用量を減らし大豆、酵母エキス等の使用量を増やすことによって、全窒素量を維持しながら、総ポリフェノール量を減らす。」との記載、「【0018】
本発明のビールテイスト飲料において、全窒素量が総ポリフェノール量に対して大きすぎると飲み口が重くなり、小さすぎると水っぽくなってしまう。そこで、本発明のビールテイスト飲料における全窒素量と総ポリフェノール量との割合である全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25であることが好ましく、0.06~17.1であることがより好ましく、0.17~6.6であることがさらに好ましく、0.41~2.9であることが特に好ましい。」との記載、「【0019】
本発明のビールテイスト飲料のリナロールの含有量は20~1200質量ppbである。リナロールはモノテルペンアルコールの一種であり、一般的に香料として使用されている。飲料にリナロールをさらに加えることで、味わいを損なうことなくさらにスッキリさを向上させることができる。本発明のビールテイスト飲料のリナロールの含有量は30~1150質量ppbが好ましく、40~1100質量ppbがさらに好ましく、45~1050質量ppbがさらに好ましく、48~1020質量ppbが特に好ましい。
リナロールはビールテイスト飲料の後味に余韻のある味わいを付与し、また、飲みやすさ、ビールらしい味の厚み等を付与することができる。特に、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下のビールテイスト飲料はホップ由来の特有な苦味を感じにくいため、リナロールを一定量含有するとビールらしい味の厚みを効果的に付与できる。そこで、本発明のビールテイスト飲料のリナロールの含有量は60質量ppb以上が好ましく、100質量ppb以上がさらに好ましく、150質量ppb以上がさらに好ましく、200質量ppb以上がさらに好ましく、250質量ppb以上が特に好ましい。
他方、コスメティック様のビールテイスト飲料に適さない風味を抑えるために、本発明の飲料のリナロールの含有量は900質量ppb以下が好ましく、850質量ppb以下がさらに好ましく、800質量ppb以下がさらに好ましく、750質量ppb以下がさらに好ましく、700質量ppb以下が特に好ましい。
本発明のビールテイスト飲料のリナロールの含有量は、例えば、リナロールや、リナロール含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。」との記載、「【0025】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の原麦汁エキス(O-Ex)濃度は、特に限定されないが、ビールテイスト飲料に軽快な飲み口を付与する観点から、アルコールを含むビールテイスト飲料の場合は、好ましくは5~18質量%、より好ましくは8~15質量%、さらに好ましくは9~14質量%、特に好ましくは10~13.5質量%である。
本明細書における「原麦汁エキス濃度」は、アルコール度数が1(v/v)%以上の飲料においては、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15℃の時において原容量100cm3中に含有する不揮発性成分のグラム数をいい、アルコール度数が1(v/v)%未満の飲料においては、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める分析法(BOCJビール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2004年11月1日改訂版))に従い測定したエキス値(質量%)をいう。」との記載があり、各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載や含有量の調整方法が示されているといえる。
さらに、発酵工程における泡の量に関し、試験例1~4の比較によって麦芽比率を抑えるとともにホップを使用しないことで、発酵工程の泡の発生量及び堆積量が減少したことが示され(【0057】~【0062】)、ビールテイスト飲料の官能評価に関し、実施例1~9と比較例1~6との比較によって、麦芽比率55%、25%、5%の場合いずれの場合においても、ホップを使用しない(イソα酸0.1ppm)前提で、リナロール50、400、1000ppbの場合において、ビールテイスト飲料らしい味の厚みがあり、ビールテイスト飲料として不適なコスメティック様の香りが抑制でき、本件特許発明の課題の改善が確認できたことが示されている(【0063】~【0075】)。
(4)判断
上記(3)のとおり、本件特許発明1の各構成であるパラメータに対応して、本件特許明細書には、各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載が存在し、各パラメータ間の技術的意議の相関記載に技術的矛盾はなく、各成分の増減手法や製造方法の記載が存在し、異なる麦芽比率に基づく、異なる全窒素量や総ポリフェノール量の範囲での本件特許発明の効果を奏した具体的検証結果の記載も存在するのであるから、本件特許発明1の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明1の課題を解決できることを認識できるといえる。
また、本件特許発明2~10に関しても、【0028】~【0032】の原材料に関する記載、【0044】~【0053】のビールテイスト飲料の製造方法に関する記載、【0022】の穀物に由来するスピリッツに関する記載、【0033】のリナロールの原材料であるコリアンダー等の記載についても併せて考慮すれば、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2~10の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
特許異議申立人は、「全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25である」のうち、実施例により裏付けられている1.088~1.089のビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合や、原麦汁エキス(O-Ex)濃度が9.11~13質量%のビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合、実施例とは大きく異なるアルコール濃度の場合については、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できない旨の主張をしている。
しかしながら、上述したような、各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載、各パラメータ間の技術的意議の相関記載や異なる麦芽比率に基づく、異なる全窒素量や総ポリフェノール量の範囲での具体的検証結果の記載を参考にした上で、さらに、全窒素量と総ポリフェノール量の比に関しては、一方のみを増減させる手法が具体的に記載されていること、全窒素量と総ポリフェノール量が飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する同様の作用をすることが記載されていること、上記比自体の数値範囲の上下限の技術的意義の記載があることも考慮すると、実施例で示された範囲以外の上記比の範囲においても、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できるといえる。
また、原麦汁エキス(O-Ex)濃度に関する実施例で示された範囲以外の範囲についても、上述の技術的意議に関する記載等を考慮することで、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できるといえる。
さらに、本件特許発明は、アルコール含有量を技術思想として特定することを前提とする発明ではなく、アルコールであるエタノールの味に対して影響が一定程度存在するとしても、【0021】のアルコール度数の記載や甲第15号証をはじめとした、味への影響に関する技術常識も考慮すれば、当業者であれば、一定程度本件特許発明の課題が解決できると認識できるといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
3 異議申立理由2の判断のまとめ
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載について、請求項1~10に係る発明は、発明の詳細な説明の記載に記載されているといえるので、異議申立理由2には、理由がない。
異議申立理由3(実施可能要件)について
特許異議申立人は、第3 3に記載のように実施可能要件について理由を述べている。
1 異議申立理由3の概要
請求項1~10に係る発明について、請求項4に特定されている「全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25である」のうち、実施例により裏付けられている1.088~1.089のアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合や(この点については、請求項4~10に係る発明について)、原麦汁エキス(O-Ex)濃度が9.11~13質量%のアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合、実施例とアルコール含有量が大きく異なる場合を含むから、本件明細書には、本件特許発明1~10の全範囲において当業者が実施できるように記載されているとはいえず、発明の詳細な説明の記載が不備である。
2 判断
異議申立理由2で述べたのと同様に、前記2(3)のとおり、本件特許発明1の各構成であるパラメータに対応して、本件特許明細書には、各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載が存在し、各パラメータ間の技術的意議の相関記載に技術的矛盾はなく、各成分の増減手法や製造方法の記載がステップ毎に存在し、異なる麦芽比率に基づく、異なる全窒素量や総ポリフェノール量の範囲での本件特許発明の効果を奏した具体的検証結果の記載(具体的製造方法の記載もある)も存在するのであるから、本件特許発明1の構成に対応した範囲で、当業者であれば過度な試行錯誤なく実施できるように記載されているといえる。
また、本件特許発明2~10の構成に対応した場合に関しても、【0028】~【0032】の原材料に関する記載、【0044】~【0053】のビールテイスト飲料の製造方法に関する各ステップ毎の記載、【0022】の穀物に由来するスピリッツに関する記載、【0033】のリナロールの原材料であるコリアンダー等の記載についても併せて考慮すれば、本件特許発明1に関する場合と同様に、本件特許発明2~10の構成に対応した場合においても、当業者であれば過度な試行錯誤なく実施できるように記載されているといえる。
特許異議申立人は、特許異議申立理由3においても、上記1のとおり「全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04~25である」のうち、実施例により裏付けられている1.088~1.089のアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合や、原麦汁エキス(O-Ex)濃度が9.11~13質量%のアルコールを含有する、発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法以外の特許請求の範囲に含まれる場合、実施例とアルコール濃度が大きく相違する場合については、本件特許発明を当業者が実施できず、全範囲において実施できるように記載されているとはいえない旨主張をしている。
しかしながら、上述したような、各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載、各パラメータ間の技術的意議の相関記載、各ステップ毎の製造方法の記載や異なる麦芽比率に基づく、異なる全窒素量や総ポリフェノール量の範囲での製造方法を伴った具体的検証結果の記載を参考にした上で、さらに、全窒素量と総ポリフェノール量の比に関しては、一方のみを増減させる手法が具体的に記載されていること、全窒素量と総ポリフェノール量が飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する同様の作用をすることが記載されていること、上記比自体の数値範囲の上下限の技術的意義の記載があることも考慮すると、実施例で示された範囲以外の上記比の全範囲においても、当業者が過度な試行錯誤なく実施できるように記載されているといえる。
また、原麦汁エキス(O-Ex)濃度に関する実施例で示された範囲以外の範囲についても、上述の技術的意議に関する記載等を考慮することで、当業者が過度な試行錯誤なく実施できるように記載されているといえる。
さらに、本件特許発明は、アルコール含有量を技術思想として特定することを前提とする発明ではなく、アルコールであるエタノールの味に対して影響が一定程度存在するとしても、【0021】のアルコール度数の記載や甲第15号証をはじめとした、味への影響に関する技術常識も考慮すれば、当業者であれば、一定程度本件特許発明の課題が解決できると認識できるといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
3 異議申立理由3の判断のまとめ
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載が、請求項1~10に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、異議申立理由3には、理由がない。
第5 むすび
したがって、請求項1~10に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700956