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特許異議申立

2020-700944

環状オレフィン系樹脂組成物および成形体

審判番号
2020-700944
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-538486外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6703611
請求日
2020年12月03日
審決日
2022年02月14日
公報発行日
2022年05月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6703611号発明「環状オレフィン系樹脂組成物および成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6703611号の特許請求の範囲を令和3年11月5日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-12]について訂正することを認める。
特許第6703611号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 18項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6703611号(以下「本件特許」という。)は、平成29年9月8日の国際出願日(優先権主張:平成28年9月8日、日本国)にされたものとみなされる特許出願(特願2018-538486号)に対してされたものであって、令和2年5月12日に特許権の設定登録(請求項の数12)されたものである(特許掲載公報の発行日は令和2年6月3日である)。

その後、令和2年12月3日に、特許異議申立人である小松一枝(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

1 特許異議申立以降の経緯

本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。

令和2年12月 3日 :特許異議の申し立て
令和3年 2月25日付け:取消理由通知
令和3年 4月30日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
令和3年 5月17日付け:通知書(申立人宛て)
令和3年 9月 2日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和3年11月 5日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
令和3年11月17日付け:通知書(申立人宛て)

なお、令和3年11月5日付けの訂正請求がされたことにより、令和3年4月30日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。

また、令和3年5月17日付け通知書及び令和3年11月17日付通知書により、申立人に対して、訂正請求があった旨の通知をしたが、いずれの通知書に対しても、申立人からの応答はなかった。

(2)証拠方法

申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証 :特開2011-202085号公報
甲第2号証 :カタログ「TOPAS 環状オレフィン・コポリマー(COC)」、ポリプラスチックス株式会社、2008年
甲第3号証 :「KRATON A1535H Polymer DATA Document」、Kraton Corporation、2020年
甲第4号証 :十時稔、「高分子のDSCとTMA」、熱測定、Vol.31、No.5、2004年
甲第5号証 :九州大学中央分析センターニュース、Vol.31、No.1、第115号、平成24年(2012年)年1月5日発行

第2 訂正の適否についての判断

令和3年11月5日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。

(以下、訂正事項をまとめて「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)

1 訂正の内容

(1)各訂正事項について

ア 訂正事項1

訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「(前略)・・・有機過酸化物を含まない環状オレフィン系樹脂組成物;・・・(以下略)」とあるのを、

「(前略)・・・有機過酸化物を含まず、
前記芳香族ビニル系重合体(B)は、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含むか、または、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む環状オレフィン系樹脂組成物;・・・(以下略)」に訂正する。

イ 訂正事項2

訂正前の特許請求の範囲の請求項1の末尾に、

「ただし、ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物を除く。」との記載を追記する訂正を行う。

(2)一群の請求項

訂正事項1~2に係る訂正前の請求項1~12について、請求項2~12はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1~2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「芳香族ビニル系重合体(B)」について、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」態様と、「芳香族ビニル系重合体(B)」のうちの「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]」以外の成分について「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれか」の態様に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項1による訂正のうち、訂正前の請求項1における「芳香族ビニル系重合体(B)」について、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」とする態様に特定する訂正は、訂正前の請求項2に「請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、前記芳香族ビニル系重合体(B)中の前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の含有量が、前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計量を100質量%としたとき、40質量%以上100質量%以下である環状オレフィン系樹脂組成物」と記載され、「前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の含有量が、前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計量を100質量%としたとき」の「100質量%」の場合と解することができるから、新規事項の追加に該当しない。

また、訂正前の請求項1における「芳香族ビニル系重合体(B)」について、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]」以外の成分について「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれか」の態様に特定する訂正については、本件明細書の下記摘記(本d)の段落【0090】に「芳香族ビニル系重合体(B)において、[B-1]以外に含まれてもよい芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロックとが共重合したブロック共重合体またはその水素添加物としては、具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)およびその水素添加物(SEB)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)およびその水素添加物(SEBS;スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)およびその水素添加物(SEP)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)およびその水素添加物(SEPS;スチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体)等が挙げられる」と記載されているから、新規事項の追加に該当しない。

そして、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「環状オレフィン樹脂組成物」の具体的な態様のうち、「ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物」の態様を除外して、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項2による訂正は、上記「ア 訂正の目的」で述べたとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「環状オレフィン樹脂組成物」の具体的な態様のうち、特定の態様を除外するのみであり、新たな技術事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当しない。

そして、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、訂正事項1~2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載

上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6703611号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12のとおりのものである(以下、請求項1~12に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件の願書に添付した明細書については、訂正の対象ではなく、本件訂正により訂正されていないので、以下においても「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
環状オレフィン系樹脂組成物であって、
下記の[A-1]、[A-2]および[A-3]から選択される少なくとも一種を含み、かつ、軟化点温度(TMA)が120℃以上200℃以下である環状オレフィン系樹脂(A)と、
芳香族ビニル系重合体(B)と、
続きを表示(全53行)
を含み、
前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が50質量部以上89質量部以下であり、前記芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が11質量部以上50質量部以下であり、
前記芳香族ビニル系重合体(B)が、芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含み、
ASTM D542に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の屈折率が1.520以上1.547以下の範囲内であり、
ASTM D2240に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のショアA硬度が85以下であり、
有機過酸化物を含まず、
前記芳香族ビニル系重合体(B)は、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含むか、または、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む環状オレフィン系樹脂組成物;
[A-1]エチレンと下記式[I]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
【化1】
[図:0001384035000001.jpg]
(前記式[I]中、nは0であり、mは0または1であり、R7~R18は、それぞれ独立に、水素原子である。)、
[A-2]前記式[I]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]前記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物。
ただし、ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物を除く。
【請求項2】
請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記芳香族ビニル系重合体(B)中の前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の含有量が、前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計量を100質量%としたとき、40質量%以上100質量%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が65質量部以上85質量部以下であり、前記芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が15質量部以上35質量部以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]中の芳香族ビニルに由来する構造単位の含有量(X)が30質量%以上60質量%以下の範囲にあり、かつ、前記含有量(X)[質量%]と、前記ショアA硬度(A)とが、下記式(1)の関係を満たす環状オレフィン系樹脂組成物。
A≦0.95X+32 (1)
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
ASTM D542に準拠して測定される、当該環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系樹脂の屈折率をnD[A]とし、当該環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記芳香族ビニル系重合体(B)の屈折率をnD[B]としたとき、|nD[B]-nD[A]|が0.015以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記環状オレフィン系樹脂組成物からなる厚さ2mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートが、下記要件(i)および(ii)を満たす環状オレフィン系樹脂組成物。
要件(i):23℃で測定される高速面衝撃試験の最大衝撃点エネルギーが5J以上100J以下である
要件(ii):JIS K7136に準拠して測定されるヘイズが30%以下である
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
ASTM D648に準拠して測定される曲げ応力0.45MPaでの荷重たわみ温度(HDT)が110℃以上180℃以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
容器を形成するために用いられる環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記容器が医療用容器である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物を含む成形体。
【請求項11】
請求項10に記載の成形体において、
医療用容器である成形体。
【請求項12】
請求項10または11に記載の成形体において、
シリンジまたは薬液保存容器である成形体。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要

1 取消理由の概要

当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)令和3年2月25日付け取消理由通知書に記載した取消理由

ア 取消理由A(新規性)

本件訂正前の請求項1~8、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

よって、本件訂正前の請求項1~8、10に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

イ 取消理由B(進歩性)

本件訂正前の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願前に知られた技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本件訂正前の請求項1~12に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)令和3年9月2日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由

ア 取消理由C(新規性)

令和3年4月30日付けの訂正請求(上記の第1で示したとおり、令和3年11月5日付けの訂正請求により、取り下げられたものとみなされた。)の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

よって、令和3年4月30日付けの訂正請求の請求項1~12に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

イ 取消理由D(進歩性)

令和3年4月30日付けの訂正請求(上記の第1で示したとおり、令和3年11月5日付けの訂正請求により、取り下げられたものとみなされた。)の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願前に知られた技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、令和3年4月30日付けの訂正請求の請求項1~12に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

2 特許異議申立理由の概要

申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

ア 申立理由1(新規性)

本件訂正前の請求項1~8、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

よって、本件訂正前の請求項1~8、10に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

イ 申立理由2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本件訂正前の請求項1~12に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項

1 本件明細書に記載された事項

本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【技術分野】

【0001】

本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物および成形体に関する。

【背景技術】

【0002】

環状オレフィン系樹脂は透明性および耐薬品性等のバランスに優れているため、例えば、医療用容器等の成形体を形成する材料として用いられることが検討されている。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

ここで、例えば、シリンジや薬液保存容器等の容器には、滅菌に耐える耐熱性、内容物を視認できる透明性、および外部からの衝撃に耐える耐衝撃性が求められている。

本発明者らの検討によれば、特許文献1および2に記載されているような環状オレフィン系樹脂組成物を用いた容器は透明性に優れているものの、医療用等の容器において求められる耐熱性および耐衝撃性をバランスよく向上させる点については改善の余地があることが明らかになった。

【0008】

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、例えば医療用容器等に求められる透明性を満足しながら耐熱性および耐衝撃性にも優れた成形体を実現できる環状オレフィン系樹脂組成物を提供するものである。

【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有し、かつ、軟化点温度(TMA)が120℃以上200℃以下である環状オレフィン系樹脂に対し、特定の芳香族ビニル系重合体を特定量組み合わせることにより、環状オレフィン系樹脂が有する良好な透明性を維持しながら、耐熱性および耐衝撃性がさらに向上することを見出し、本発明を完成させた。

・・・

【発明の効果】

【0012】

本発明によれば、例えば医療用容器等に求められる透明性を満足しながら耐熱性および耐衝撃性にも優れた成形体を実現できる環状オレフィン系樹脂組成物を提供することができる。」

(本b)「【0014】

[環状オレフィン系樹脂組成物(P)]

まず、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)について説明する。

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、下記の[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]から選択される少なくとも一種を含み、かつ、軟化点温度(TMA)が120℃以上200℃以下である環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族ビニル系重合体(B)と、を含む。そして、環状オレフィン系樹脂組成物(P)に含まれる環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が50質量部以上89質量部以下、好ましくは60質量部以上87質量部以下、より好ましくは65質量部以上85質量部以下であり、芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が11質量部以上50質量部以下、好ましくは13質量部以上40質量部以下、より好ましくは15質量部以上35質量部以下である。

また、芳香族ビニル系重合体(B)は、芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含み、ASTM D542に準拠して測定されるブロック共重合体の水素添加物[B-1]の屈折率が1.520以上1.547以下の範囲内であり、ASTM D2240に準拠して測定されるブロック共重合体の水素添加物[B-1]のショアA硬度が85以下である。

【0015】

[A-1]エチレンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;

【化3】

・・・

【0017】

[A-2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体

[A-3]上記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物

[A-4]上記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物

【0018】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、環状オレフィン系樹脂(A)およびブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含む芳香族ビニル系重合体(B)を上記の比率で含むことにより、得られる成形体について、例えば医療用容器等に求められる良好な透明性を満足しながら、耐熱性および耐衝撃性を向上させることができる。

また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)によれば、得られる成形体に良好な靭性を付与することができるため、ひび割れがより生じにくくなり、様々な加工への耐久性を要求される医療用途等に好適な成形体を得ることができる。

以上から、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)によれば、例えば医療用容器等に求められる透明性を満足しながら耐熱性および耐衝撃性にも優れた成形体を得ることが可能となる。

また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は特に限定されないが、容器を形成するために好適に用いることができ、医療用容器を形成するために特に好適に用いることができる。

【0019】

以下、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。」

(本c)「【0020】

<環状オレフィン系樹脂(A)>

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)は下記の[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]から選択される少なくとも一種を含む。

[A-1]エチレンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体

[A-2]下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体

[A-3]上記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物

[A-4]上記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物

以下このような環状オレフィン系樹脂[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]を形成する式[I]または[II]で示される環状オレフィンについて説明する。

【0021】

【化5】

・・・

【0032】

上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、

【化9】

[図:0001384035000002.jpg]

(上記式中、1~7の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこのビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、5-メチル、5,6-ジメチル、1-メチル、5-エチル、5-n-ブチル、5-イソブチル、7-メチル、5-フェニル、5-メチル-5-フェニル、5-ベンジル、5-トリル、5-(エチルフェニル)、5-(イソプロピルフェニル)、5-(ビフェニル)、5-(β-ナフチル)、5-(α-ナフチル)、5-(アントラセニル)、5,6-ジフェニル等が挙げられる。

・・・

【0038】

上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンは、例えば、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とをディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。

・・・

【0040】

([A-1]エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体)

[A-1]エチレンと上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体(以下、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]とも呼ぶ。)は、共重合体を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、エチレンから導かれる単位の含有量が、例えば5モル%以上95モル%以下、好ましくは20モル%以上80モル%以下であり、環状オレフィンから導かれる単位の含有量が、例えば5モル%以上95モル%以下、好ましくは20モル%以上80モル%以下である。

なお、エチレン組成および環状オレフィン組成は、13C-NMRによって測定することができる。

【0041】

エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]は、エチレンから導かれる単位と環状オレフィンから導かれる単位とがランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有していることが好ましい。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶解した際に、この溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。例えば極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶解することにより確認することができる。

【0042】

エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]において、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの少なくとも一部は下記式[III]または[IV]で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。

・・・

【0045】

また、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]は、本発明の目的を損なわない範囲であれば必要に応じて他の共重合可能なモノマーから導かれる単位を有していてもよく、具体的には他のモノマーから導かれる単位を、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下の量で含有していてもよい。

・・・

【0051】

([A-2]環状オレフィンの開環重合体または共重合体)

[A-2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体(以下、環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]とも呼ぶ。)において、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンから導かれる単位の少なくとも一部は、下記式[V]または[VI]で示される。

・・・

【0054】

環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]は、上記公報に開示された製造方法により製造することができ、例えば、上記式[I]で示される環状オレフィンを開環重合触媒の存在下に、重合または共重合させることにより製造することができる。

・・・

【0056】

([A-3]環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]の水素化物)

環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]の水素化物(以下、開環(共)重合体の水素化物[A-3]とも呼ぶ。)は、環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]を、従来公知の方法、例えば、特開平7-324108号公報の水素添加触媒の存在下で水素化することにより得ることができる。

【0057】

開環(共)重合体の水素化物[A-3]は、上記式[I]または[II]から導かれる単位の少なくとも一部は、下記式[VII]または[VIII]で示されると考えられる。

・・・

【0066】

本実施形態において、環状オレフィン系樹脂(A)として、上記のようなエチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]、開環(共)重合体の水素化物[A-3]およびグラフト変性物[A-4]のいずれかを単独で用いてもよく、同種を2種以上用いてもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、環状オレフィン系樹脂(A)としては、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]が好ましい。

【0067】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)のX線回折法によって測定される結晶化度は、例えば0~20%、好ましくは0~2%である。

【0068】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)の軟化点温度(TMA)は、得られる成形体の透明性および耐衝撃性を良好に保ちつつ、耐熱性をより向上させる観点から、120℃~200℃であり、好ましくは120~190℃、さらに好ましくは130℃~180℃である。

【0069】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂[A]の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、例えば0.05~5.0dl/gであり、好ましくは0.2~4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.3~2.0dl/g、特に好ましくは0.4~2.0dl/gである。

【0070】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、環状オレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、得られる成形体の透明性および耐衝撃性のバランスをより向上させる観点から、軟化点温度(TMA)が50℃以上120℃未満である環状オレフィン系樹脂(A’)を、例えば5質量部以上80質量部以下、好ましくは5質量部以上50質量部以下さらに含んでもよい。

【0071】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A’)としては、軟化点温度(TMA)が50℃以上120℃未満である点を除き、上記エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]、開環(共)重合体の水素化物[A-3]またはグラフト変性物[A-4]と同等の重合体を用いることができる。

【0072】

また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A’)は、共重合体を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、エチレンから導かれる単位の含有量が好ましくは45モル%以上85モル%以下であり、環状オレフィンから導かれる単位の含有量が好ましくは15モル%以上55モル%以下である。」

(本d)「【0076】

<芳香族ビニル系重合体(B)>

本実施形態に係る芳香族ビニル系重合体(B)は、芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含む。

芳香族ビニル系重合体(B)は、上記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のほかに、ブロック共重合体の水素添加物[B-1]に該当しない芳香族ビニルを含む重合体またはその水素添加物を含んでいてもよい。

芳香族ビニル系重合体(B)中のブロック共重合体の水素添加物[B-1]の含有量は、芳香族ビニル系重合体(B)の合計量を100質量%としたとき、例えば40質量%以上100質量%以下であり、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。

【0077】

芳香族ビニル系重合体(B)は、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)に含まれる環状オレフィン系樹脂との屈折率の差が特定範囲となるように選択されたものが好ましく、例えば、ASTM D542に準拠して測定される芳香族ビニル系重合体(B)の屈折率をnD[B]とし、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)に含まれる環状オレフィン系樹脂の屈折率nD[A]としたとき、屈折率の差|nD[B]-nD[A]|が好ましくは0.015以下、より好ましくは0.012以下、さらに好ましくは0.010以下である。

ここで、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)に複数の環状オレフィン系樹脂を含む場合、複数の環状オレフィン系樹脂の混合物の屈折率を屈折率nD[A]とする。同様に、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)に複数の芳香族ビニル系重合体(B)を含む場合、複数の芳香族ビニル系重合体(B)の混合物の屈折率をnD[B]とする。

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、このような芳香族ビニル系重合体(B)を含むことによって、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合等においても優れた透明性を保持することができる。

・・・

【0078】

芳香族ビニル系重合体(B)を形成する芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられる。また共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。

【0079】

(芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1])

また、本実施形態に係る芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]において、ASTM D542に準拠して測定される屈折率の下限が1.520以上、好ましくは1.523以上、より好ましくは1.525以上、そして屈折率の上限が1.547以下、好ましくは1.545以下、より好ましくは1.540以下である。

また、本実施形態に係る芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]において、ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度の上限が85以下であり、好ましくは80以下、より好ましくは75以下、さらに好ましくは72以下であり、そしてショアA硬度の下限が好ましくは60以上、より好ましくは65以上である。

【0080】

また、本実施形態に係る芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]において、芳香族ビニルから導かれる単位の含有量(X)は、例えば30質量%以上、好ましくは30質量%以上60質量%以下、より好ましくは45質量%以上60質量%以下である。

なお、芳香族ビニルから導かれる単位の含有量は、赤外線分光法およびNMR分光法等の常法によって測定することができる。

また、芳香族ビニルから導かれる単位の含有量(X)と、上記ショアA硬度(A)とが、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。

A≦0.95X+32 (1)

【0081】

ブロック共重合体の水素添加物[B-1]において、芳香族ビニルブロック(b1)がいわゆるハードセグメントに該当し、芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)がいわゆるソフトセグメントに該当する。芳香族ビニルブロック(b1)だけでなく、ブロック(b2)にも芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有するため、芳香族ビニルに由来する構造単位の含有量(X)に対する硬度が低い特徴を有する。さらに、ショアA硬度と屈折率とが特定範囲にあるブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含有することにより、得られる環状オレフィン系樹脂組成物(P)の衝撃強度と透明性とが格段に優れるという効果が得られる。

【0082】

上記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]は、少なくとも1個、好ましくは2個以上の芳香族ビニルブロック(b1)と、少なくとも1個の芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物である。例えば、b1-b2、b1-b2-b1、b1-b2-b1-b2、及びb1-b2-b1-b2-b1等の構造を有するブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。

【0083】

ここで、芳香族ビニルブロック(b1)とは、当該重合体ブロック中の、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量が、通常90質量%以上、好ましくは95質量%以上であることを意味する。

【0084】

上記芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)は、好ましくは共役ジエン化合物に由来する構造単位を10~97質量%と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を90~3質量%含む。より好ましくは共役ジエン化合物に由来する構造単位を70~95質量%と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を30~5質量%含む。ここで、共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有量と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量との和は100質量%である。

【0085】

上記芳香族ビニル化合物は、重合性の炭素-炭素二重結合と芳香環を有する重合性モノマーである。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、及びp-第3ブチルスチレン等を挙げることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。

【0086】

上記共役ジエンは、2つの炭素-炭素二重結合が1つの炭素-炭素単結合により結合された構造を有する重合性モノマーである。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、及びクロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)等を挙げることができる。これらの中で、耐衝撃性の観点から、1,3-ブタジエンが好ましい。共役ジエンとしては、これらの1種以上を用いることができる。

【0087】

上記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の水素添加率(水素添加前のブロック共重合体中の炭素-炭素二重結合の数に対する、水素添加により炭素-炭素単結合となった結合の数の割合)は、耐熱性の観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは98モル%以上である。

・・・

【0090】

(ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体(B))

芳香族ビニル系重合体(B)において、[B-1]以外に含まれてもよい芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロックとが共重合したブロック共重合体またはその水素添加物としては、具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)およびその水素添加物(SEB)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)およびその水素添加物(SEBS;スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)およびその水素添加物(SEP)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)およびその水素添加物(SEPS;スチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。

【0091】

上記SEBSとしては、例えば、クレイトンジャパン社製の商品名クレイトンG1641H、G1651H、G1657M、旭化成社製の商品名タフテックH1043、H1051、H1041、クラレ社製の商品名セプトン8104等が挙げられる。

上記SEPSとしては、例えば、クラレ社製の商品名セプトン2104等が挙げられる。

・・・

【0095】

本実施形態に係る芳香族ビニル系重合体(B)は、環状オレフィン系樹脂(A)に近い屈折率を有すると、環状オレフィン系樹脂組成物(P)の透明性をより向上させることができる。環状オレフィン系樹脂(A)がエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体である場合、ASTM D542に準拠して測定される環状オレフィン系樹脂(A)の屈折率nD[A]は1.542±0.005が好ましく、環状オレフィン系樹脂(A)がエチレンとビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンとのランダム共重合体である場合、環状オレフィン系樹脂(A)の屈折率nD[A]は1.530±0.005であることが好ましい。

本実施形態に係る芳香族ビニル系重合体(B)は、環状オレフィン系樹脂(A)に近い屈折率を有することが好ましい。前述した屈折率の差|nD[B]-nD[A]|が好ましくは0.015以下であると、環状オレフィン系樹脂組成物(P)の透明性をより向上させることができる。」

(本e)「【0096】

[環状オレフィン系樹脂組成物(P)の製造方法および成形方法]

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族ビニル系重合体(B)を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて溶融混練する方法;環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族ビニル系重合体(B)を共通の溶媒に溶解した後、溶媒を蒸発させる方法;あるいは貧溶媒中に環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族ビニル系重合体(B)の溶液を加えて析出させる等の方法により得ることができる。

【0097】

また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、染料、顔料、安定剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤等の各種添加剤を必要に応じて含有してもよい。

・・・

【0099】

[環状オレフィン系樹脂組成物(P)の物性]

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)において、下記要件(i)~(iii)の少なくとも一つを満たすことが好ましく、下記要件(i)および(ii)をともに満たすことがより好ましく、下記要件(i)~(iii)のすべてを満たすことが特に好ましい。

【0100】

要件(i):

得られる成形体の耐衝撃性をより向上させる観点から、環状オレフィン系樹脂組成物(P)からなる厚さ2mmの射出成形シートを作製したとき、23℃で測定される上記射出成形シートの高速面衝撃試験の最大衝撃点エネルギーが好ましくは5J以上100J以下であり、より好ましくは10J以上90J以下であり、さらに好ましくは15J以上80J以下である。

【0101】

要件(ii):

また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)において、得られる成形体の透明性をより向上させる観点から、環状オレフィン系樹脂組成物(P)からなる厚さ2mmの射出成形シートを作製したとき、JIS K7136に準拠して測定される上記射出成形シートのヘイズが好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。

【0102】

要件(iii):

また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)において、得られる成形体の耐熱性をより向上させる観点から、ASTM D648に準拠して測定される曲げ応力0.45MPaでの荷重たわみ温度(HDT)が好ましくは110℃以上180℃以下であり、より好ましくは115℃以上160℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上150℃以下である。

【0103】

本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)は、耐熱性、透明性、耐薬品性および低吸湿性に優れ、さらに高い面衝撃強度および破断伸びを示し、靭性が良好であり、耐衝撃性にも優れている。このため、例えば、様々な加工への耐久性を要求される医療用容器の用途に好適である。」

(本f)「【0104】

[成形体]

本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物(P)を含む。

本実施形態に係る成形体は環状オレフィン系樹脂組成物(P)を含むため、耐熱性、透明性、耐薬品性および低吸湿性に優れ、さらに高い面衝撃強度および破断伸びを示し、靭性が良好であり、耐衝撃性にも優れている。このため、例えば、様々な加工への耐久性を要求される医療用容器の用途に好適である。

【0105】

本実施形態に係る成形体としては、例えば、注射器の注射筒外筒(以下、シリンジ)および薬液や薬剤を充填してなる注射筒(以下、プレフィルドシリンジとも呼ぶ。)に使用されるシリンジ、薬液や薬剤を充填してなる保存容器に使用される保存容器(以下、薬液保存容器とも呼ぶ。)等が挙げられる。

・・・

なお、本実施形態に係る成形体は、オートクレーブ滅菌、放射線滅菌、電子線滅菌、γ線滅菌、EOG滅菌、紫外線滅菌、マイクロ波、煮沸水、スチーム等の公知の滅菌処理を行ってもよい。本実施形態に係る成形体は特にオートクレーブ滅菌に対して有効である。」

(本g)「【0106】

以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。

また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。

【実施例】

【0107】

以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。

【0108】

<実施例1~9および比較例1~8>

各実施例および比較例において、各種物性は下記の方法によって測定または評価し、得られた結果を表2および3に示した。

【0109】

(環状オレフィン系樹脂組成物の評価)

・・・

【0120】

(芳香族ビニル系重合体(B)の評価)

[組成(スチレン含量)]

芳香族ビニル系重合体(B)の、芳香族ビニルに由来する構造単位の含有量(スチレン含量:単位質量%)を、1H-NMRによって測定した。

より具体的には、日本電子社製「ECA500型」核磁気共鳴装置を用い、下記条件で測定することにより行った。

溶媒:重クロロホルム
サンプル濃度:20~50g/l-solvent
測定モード:シングルパルス
パルス繰り返し時間:7.0秒
積算回数:500~1000回
測定温度:45℃

なお、ブロック共重合体の水素添加物[B-1]を2種類以上含む場合のブロック共重合体の水素添加物[B-1]のスチレン含量については、上記[ペレット化]と同様の条件にて混合物を作製し、そのプレスシートについてスチレン含量を測定した。

・・・

【0126】

[環状オレフィン系樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(A’)]

A-1:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:66mol%、ASTM D542に準拠して測定した屈折率nD:1.543、TMA:155℃、極限粘度[η]:0.60dl/g)
A-2:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:62mol%、ASTM D542に準拠して測定した屈折率nD:1.544、TMA:175℃、極限粘度[η]:0.80dl/g)
A-3:A-1の水素添加物
A-4:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:44mol%、ASTM D542に準拠して測定した屈折率nD:1.530、TMA:135℃、極限粘度[η]:0.60dl/g)
A-5:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:44mol%、ASTM D542に準拠して測定した屈折率nD:1.530、TMA:133℃、極限粘度[η]:0.60dl/g)
A’-1:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:81mol%、ASTM D542に準拠して測定した屈折率nD:1.540、TMA:90℃、極限粘度[η]:0.65dl/g)
A’-2:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:81mol%、ASTM D542に準拠して測定した屈折率nD:1.540、TMA:90℃、極限粘度[η]:0.80dl/g)

ここで、上記の環状オレフィン系樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(A’)は、国際公開第2008/068897号の実施例に記載の合成例に準じた方法によりそれぞれ合成した。ここで、各環状オレフィン系樹脂(A)のコモノマー(環状オレフィンモノマー)の種類並びに含有量および各物性は表1に示した。表1中、TDはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを示し、NBはビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンを示す。

【0127】

[芳香族ビニル系重合体(B)]

B-1:SEBS(旭化成社製タフテック(商標)H1043、屈折率nD:1.548、スチレン含量:67質量%)
B-2:SEBS(旭化成社製タフテック(商標)H1051、屈折率nD:1.522、スチレン含量:42質量%)
B-3:SESS(旭化成社製S.O.E.(商標) S1606、スチレン含量:51質量%)
B-4:SESS(旭化成社製S.O.E.(商標) S1605、スチレン含量:66質量%)

ここで、各芳香族ビニル系重合体(B)のスチレン含量および各物性を表1に示した。

【0128】

【表1】

[図:0001384035000003.jpg]

【0129】

【表2】

[図:0001384035000004.jpg]

【0130】

【表3】

[図:0001384035000005.jpg]

【0131】

以上のように、実施例1~9で得られた環状オレフィン系樹脂組成物は、耐衝撃性に優れるとともに、耐熱性および透明性にも優れていた。一方、比較例1~8で得られた環状オレフィン系樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱性および透明性の性能バランスに劣っていた。」

2 各甲号証に記載された事項

(1)甲第1号証に記載された事項

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【特許請求の範囲】

【請求項1】

(A)シクロオレフィン系共重合体100重量部と、(B)芳香族ビニル-イソブチレン系共重合体1~50重量部と、(C)芳香族ビニルセグメントを50~70重量%含有する芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体の水素添加物1~50重量部よりなり、(A)成分と(B)成分および(A)成分と(C)成分との23℃における屈折率(nD)の差が0.015以下である透明なシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物。

【請求項2】

さらに(D)コア-シェル構造の重合体を(A)成分100重量部に対して1~50重量部含有してなり、(A)成分と(D)成分との23℃における屈折率(nD)の差が0.015以下である請求項1記載の樹脂組成物。

【請求項3】

(A)シクロオレフィン系共重合体が、1~99重量%の少なくとも1種の環状オレフィンからなる構造単位と、99~1重量%の非環状オレフィンからなる構造単位、および0~20重量%の二重結合を少なくとも1個含むビニル構造単位を有する請求項1または2に記載の樹脂組成物。

【請求項4】

(A)シクロオレフィン系共重合体が、40~90重量%の少なくとも1種の環状オレフィンからなる構造単位と、60~10重量%の非環状オレフィンからなる構造単位を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。

【請求項5】

(B)成分の芳香族ビニル-イソブチレン系共重合体が芳香族ビニルセグメントを15重量%以上含むスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体である請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。

【請求項6】

厚みが2mmのシートのノッチ入りシャルピー衝撃強度が5N/m2以上、ヘイズ値が20以下、かつ引張破断伸びが10%以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。」

(甲1b)「【技術分野】

【0001】

本発明は透明性と耐衝撃性と引張破断伸びのバランスに優れたシクロオレフィン系共重合体組成物に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、シクロオレフィン系共重合体は、成形性、寸法安定性、透明性、防湿性に優れるが、耐衝撃強度については充分でないことから耐衝撃性を改良する検討がなされている。即ち、シクロオレフィン系共重合体の優れた透明性を保持しつつ、さらに耐衝撃性を向上させることが求められている。一般的に、透明で脆性的な熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良する方法として、非相溶のゴム成分をアロイ化することは公知である。この方法はシクロオレフィン系共重合体に対しても有効であり、例えば特許文献1、2では、シクロオレフィン系共重合体にゴム成分として、商業上入手可能なブロック共重合体(SBS、SEBS、およびSIS)をアロイ化することでシクロオレフィン系共重合体の耐衝撃性、靭性を改良する方法が開示されている。また、特許文献3ではシクロオレフィン系共重合体にゴム成分として芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体をアロイ化することでシクロオレフィン系共重合体の耐衝撃性を改良する方法が開示されている。また、特許文献4ではシクロオレフィン系共重合体にゴム成分として芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、および芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体にさらにコア-シェル構造の重合体を用いたシクロオレフィン系共重合体の耐衝撃性を改良する方法が開示されている。ただし、それらの方法は透明性と衝撃性と引張破断伸びのバランスでは不十分なところがあった。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

本発明の目的は、耐衝撃性と透明性と引張破断伸びのバランスに優れたシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物を提供することにある。

・・・

【発明の効果】

【0011】

本発明は、シクロオレフィン系共重合体が本来有する優れた透明性を損なうことなく、その耐衝撃性、引張破断伸びを改良したシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物を提供することができる。」

(甲1c)「【0012】

本発明の(A)シクロオレフィン系共重合体(以下COC)とは、環状オレフィン構造を有する非晶性の重合体であり、好ましくは50~250℃、より好ましくは80~200℃、特に好ましくは80~160℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度が50℃未満では剛性が低くて剛性と耐衝撃性のバランスが悪く250℃を越えると加工が容易でなくなるので好ましくない。・・・

・・・

【0014】

好ましいCOCは、ノルボルネン基礎構造を有する環状オレフィン、特に好ましくはノルボルネンまたはテトラシクロドデセン又はこれらから誘導される構造を有する環状オレフィンと、末端二重結合を有する非環状オレフィン、例えばα-オレフィン、特に好ましくはエチレンまたはプロピレンとからなる。これらの中でも、ノルボルネン/エチレン、ノルボルネン/プロピレン、テトラシクロドデセン/エチレン、及びテトラシクロドデセン/プロピレンのコポリマーが特に好ましい。本発明の目的に適したCOCは、好ましくは25~200ml/g、より好ましくは40~80ml/gの粘度数(デカリン中135℃で測定)を有する。粘度数が25ml/g未満では成形体の剛性が不充分で、200ml/gを越えると成形加工性が悪くなる傾向があるため好ましくない。本発明に用いるCOCには、ポリプラスチックス株式会社製の"Topas"や、三井化学株式会社製の"APEL"といった市販品を用いることもできる。」

(甲1d)「【0015】

本発明における(B)芳香族ビニル-イソブチレン系共重合体とは芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックおよびイソブチレンを主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体である。芳香族ビニル系化合物としては、・・・等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手性やガラス転移温度の点から、スチレン、α-メチルスチレン、および、これらの混合物が好ましく、特にスチレンが好ましい。

【0016】

イソブチレンを主成分とする重合体ブロックは、イソブチレンに由来するユニットが60重量%以上、好ましくは80重量%以上から構成される重合体ブロックである。

・・・

【0034】

(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して1~50重量部が好ましく、3~25重量部がさらに好ましい。1重量部未満では、耐衝撃性が不充分となり、50重量部を越えると、剛性と耐衝撃性のバランスが悪くなる。」

(甲1e)「【0035】

(C)芳香族ビニルセグメントを50~70重量%含有する芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体の水素添加物としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)が例示される。水素添加される前の前駆体である、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)はブタジエン、イソプレンブロックの屈折率がエチレン-ブチレン、エチレン-プロピレンブロックよりも屈折率が高いため、低いスチレン含量でCOCと屈折率差を0.015以下に収めることができ、ゴム弾性の点で有利ではあるが、不飽和結合が主鎖に残存するため耐熱、耐候性に劣る欠点があるため高温で成形や使用が想定されるCOCへの配合材料にはSEBSやSEPSの方が適している。

【0036】

スチレン含量としては(A)成分との屈折率の差の観点から50~70重量%が好ましく、55~65重量%がさらに好ましい。ゴム弾性の観点から、一部のスチレンがエチレン-ブチレンブロック、およびエチレン-プロピレンにランダム共重合されているのが好ましい。このような芳香族ビニル系炭化水素-共役ジエン系共重合体のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、溶媒オルトジクロロベンゼン、温度140℃)で分析した数平均分子量Mnは、ゴム弾性の点で10,000~300,000であることが好ましい。

(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して1~50重量部が好ましく、3~25重量部がさらに好ましい。1重量部未満では、耐衝撃性が不充分となり、50重量部を越えると、剛性と耐衝撃性のバランスが悪くなる。」

(甲1f)「【0037】

本発明のシクロオレフィン系共重合体組成物は、COCが本来有する高い透明性を保持しつつ、耐衝撃性、引張破断伸びを高める目的で、更に(D)コア-シェル構造の重合体を含むこともできる。・・・

・・・

【0045】

(D)成分の配合量は(A)成分100重量部に対して1~50重量部が好ましく3~25重量部がさらに好ましい。1重量部未満では(D)成分の添加効果が不充分で、また50重量部を越えると剛性と耐衝撃性のバランスがとれず好ましくない。」

(甲1g)「【0046】

このシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物は単独で使用しても、他のシクロオレフィン系共重合体にブレンドして用いるといった、マスターバッチとしての使用も可能である。本発明のシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物は、周知の方法により成形加工することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、二軸コニカル押出機、ブラベンダー、射出成形機などを用いることができ、例えば、プレス成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形などで成形体や板、フィルムなどに加工され得る。

【0047】

本発明のシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物は、慣用の範囲内の量で添加剤、例えば可塑剤、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤などの1種または2種以上を含み得る。

【0048】

本発明のシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物は、例えば、ボトル、カップ、医療用途(例えばブリスタパック、薬剤包装用フィルム)、押出フィルム(例えば梱包用のもの)、食品包装用フィルムなどに特に好適である。」

(甲1h)「【実施例】

【0049】

ここから記載以下に本発明の実施例を示すが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の記載において、%および部は特に断らない限り、それぞれ重量%、重量部を表す。

【0050】

<組成物の調製法と試験法>

所定量の原料をドライブレンドした後、該混合物を二軸押し出し機(日本製鋼製 TEX-30HSS)により溶融混練し、ペレット化した。さらに該ペレットを射出成形して(東芝機械株式会社製IS80EPNと所定の金型を用いた)試験片を作成した。成型時のノズル温度は250℃、射出圧力は1次/2次=1000/800kg/cm2であった。

【0051】

組成物の物性の測定、評価は下記の方法で行った。

【0052】

(1) シャルピー衝撃強度

・・・

【0053】

(2) 透明性(全光線透過率およびヘイズ)

射出成形により作成した3mm厚の平板を使用(プレス成形は200℃で行った。)し、JIS-7105に従い、温度23℃で、日本電色(株)製NDH-Σ80を用いて、全光線透過率(Tt%)およびヘイズ(雲価)を測定した。

【0054】

(3) 屈折率

株式会社アタゴ製のアッベ屈折率計3T(D線、589mm)により、シート状態での23℃の屈折率を測定した。

【0055】

(4)引張破壊伸び

射出成形により作成したJIS1A号ダンベルを使用。JISK7162に従って、歪み速度10mm/minで評価した。

【0056】

<実施例および比較例で用いた原料>

(A)成分のCOCには、ポリプラスチックス社製のTopas 6013(登録商標)を用いた。ポリプラスチックス社の測定によると、このCOCのガラス転移温度(Tg)は135℃である。2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定したところ、1.535であった(カタログ値1.535)。

【0057】

(B)成分の芳香族ビニル-イソブチレン系共重合体にはカネカ社製スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体、SIBSTAR103Tを用いた。2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定したところ、1.535であった。

【0058】

(C)成分の芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体の水素添加物には以下のものを用いた。

SEPTON 2104:クラレ社製 スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体 スチレン含量65重量% 屈折率1.541

KRATON A1535H:スチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体 スチレン含量58重量% 屈折率1.541

【0059】

(D)成分のコア-シェル構造の重合体にはカネカ社製メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体のカネエースB622を用いた。2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定したところ、1.540であった。

【0060】

芳香族ビニルセグメントを31重量%含有する芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体の水素添加物としてKRATON G1651を用いた。屈折率1.511

【0061】

[実施例1~10]

成分(A)、(B)、(C)と(D)を表1に示す配合割合でドライブレンドして、二軸押出機にて溶融混練したものをペレット化して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形機にてシート化しこれらの特性値を測定した。配合組成及び各特性値の測定結果を表1に示す。

【0062】

[比較例1~8]

成分(A)、(B)、(C)と(D)、あるいはKRATON G1651を表2示す配合割合でドライブレンドして、二軸押出機にて溶融混練したものをペレット化して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形機にてシート化しこれらの特性値を測定した。配合組成及び各特性値の測定結果を表2に示す。

【0063】

比較例1~4は成分(B)、(C)、(D)をそれぞれ1成分のみ添加したものであるが、透明性、衝撃強度、引張破断伸び全てが優れているものは無い。比較例7~8は成分(B)あるいは(C)成分が配合されていないものであり透明性、衝撃強度、引張破断伸び全てが優れているものは無い。比較例5、6はスチレン含量が31重量%のSEBSを用いているが屈折率がCOCと0.024異なるため透明性に劣る。

【0064】

以上から本発明の実施例では本発明の目的である透明性と耐衝撃性と引張破断伸びのバランスに優れたシクロオレフィン系共重合体が得られている。

【0065】

【表1】

[図:0001384035000006.jpg]

【0066】

【表2】

[図:0001384035000007.jpg]

」

(2)甲第2号証に記載された事項

甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「

[図:0001384035000008.jpg]

」(第2頁を参照)

(甲2b)「

[図:0001384035000009.jpg]

」(第4頁を参照)

(3)甲第3号証に記載された事項

甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「

[図:0001384035000010.jpg]

」(第1頁)

(4)甲第4号証に記載された事項

甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「軟化温度は融解温度(Tm以下簡略のため融点を使う)とガラス転移温度(Tg)で決まり、これらの測定はDSCやTMAで行われる(・・・)。」(第241頁右欄第2~6行)

(甲4b)「Fig4(b)の針入モードではプローブの先端を細くして(・・・)、加熱された試料が軟化するにつれてプローブが試料内に針入(侵入)する様子を測定し、軟化温度を読み取る。・・・軟化による侵入が2段階で生じている。低温側の軟化はTgに、高温側のそれはTmに対応している」(第244頁右欄第13~22行)

(5)甲第5号証に記載された事項

甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「・・・針入モードでの測定においてプローブは、サンプルのガラス転移により軟化した所で大きくサンプルに針入し、その後、冷結晶化の領域では固くなっているためほとんど針入せず、融解する温度でまた僅かに針入する経過をたどります。」(甲第5号証の第4頁左欄第8~12行)

第6 当審の判断

当審は、当審が通知した取消理由A~D及び申立人がした申立理由1~2によっては、いずれも、本件発明1~12に係る特許を取り消すことはできないと判断する。

その理由は以下のとおりである。

取消理由A~D及び申立理由1~2は、いずれも甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性に関する理由であるから、併せて検討する。

1 甲第1号証に記載された発明

甲第1号証の段落【0061】及び【0065】の【表1】の記載、 特に、実施例2に着目すると、

「ガラス転移温度(Tg)は135℃であり、2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定した値が1.535の(A)シクロオレフィン系共重合体である「TOPAS 6013」 100重量部
2mm厚板での屈折率(nD)の実測値が1.535であり、スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体である「SIBSTAR 103T」 12.5重量部
屈折率1.541であり、スチレン含量58重量%のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体である「KRATON A1535H」 12.5重量部
を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物」

の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

同様に、比較例3に着目すると、

「ガラス転移温度(Tg)は135℃であり、2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定した値が1.535の(A)シクロオレフィン系共重合体である「TOPAS 6013」 100重量部
屈折率1.541であり、スチレン含量58重量%のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体である「KRATON A1535H」 25重量部
を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物」

の発明(以下「甲1発明C」という。)が記載されているといえる。

2 本件発明1について

(1)甲1発明Aを引用発明とする検討

ア 対比

本件発明1と甲1発明Aとを対比する。

甲1発明Aの「樹脂組成物」は、「 ガラス転移温度(Tg)は135℃であり、2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定した値が1.535の(A)シクロオレフィン系共重合体である「TOPAS 6013」」(以下「TOPAS 6013」という。)、すなわち、「環状オレフィン系樹脂」を主要成分として含むものであるから、本件発明1の「環状オレフィン系樹脂組成物」であるといえる。

甲1発明Aの「ガラス転移温度(Tg)は135℃であり、2mm厚板での屈折率(nD)を実際に測定した値が1.535の(A)シクロオレフィン系共重合体である「TOPAS 6013」」は、甲第2号証の第2頁の「TOPAS●(当審注:●は「R」を丸囲みしたものの上付き文字。以下同じ) COCは、ジシクロペンタジエンとエチレンから合成されたノルボルネンとエチレンを、メタロセン触媒を用いて共重合したポリマーです」との記載及び第4頁の化学構造式からみて、本件発明1の

「[A-1]エチレンと下記式[I]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
【化1】
[図:0001384035000011.jpg]
(前記式[I]中、nは0であり、mは0または1であり、R7~R18は、それぞれ独立に、水素原子である。)」のうち、「n」が0、「m」が0の場合に相当するといえる。

甲1発明Aの「2mm厚板での屈折率(nD)の実測値が1.535であり、スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体である「SIBSTAR 103T」」(以下「SIBSTAR 103T」という。)及び「屈折率1.541であり、スチレン含量58重量%のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体である「KRATON A1535H」」(以下「KRATON A1535H」という。)は、両者とも「芳香族ビニル」である「スチレン」を共重合体のモノマーとして含むものであるから、本件発明1の「芳香族ビニル系共重合体」であるといえる。

甲1発明Aの「樹脂組成物」は、「環状オレフィン系樹脂」である「TOPAS 6013」を「100重量部」、「芳香族ビニル系共重合体」である「SIBSTAR 103T」及び「KRATON A1535H」をそれぞれ「12.5重量部」含み、「環状オレフィン系樹脂組成物」と「芳香族ビニル系共重合体」の合計で125重量部(100重量部+12.5重量部+12.5重量部)を含み、「環状オレフィン系樹脂(A)」および「芳香族ビニル系重合体(B)」の合計を100質量部としたとき

「環状オレフィン系樹脂(A)」を、100重量部/125重量部×100質量部=80質量部

「芳香族ビニル系重合体(B)」を、25重量部/125重量部×100質量部=20質量部

含むといえるから、本件発明1と同様に、「前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が50質量部以上89質量部以下であり、前記芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が11質量部以上50質量部以下」であるといえる。

甲1発明Aの「芳香族ビニル系共重合体」の1つである「KRATON A1535H」は、「屈折率1.541であり、スチレン含量58重量%のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体」であり、(甲1e)の段落【0035】の「(C)・・・芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体の水素添加物としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、・・・が例示される」との記載からみて、本件発明1の「芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]」であるといえる。

また、甲1発明Aの「KRATON A1535H」は、(甲1h)の段落【0054】の「アッベ屈折率計」による測定値が「屈折率1.541」であり、「ASTM D542に準拠して測定される」測定値と同等のものであるから、本件発明1と同様に「ASTM D542に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の屈折率が1.520以上1.547以下の範囲内」であるといえる。

さらに、甲1発明Aの「KRATON A1535H」は、甲第3号証の(甲3a)の記載からみて、「ASTM D2240に準拠して測定される・・・ショアA硬度」が「83」であるから、本件発明1と同様に「ASTM D2240に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のショアA硬度が85以下」であるといえる。

甲1発明Aの「SIBSTAR 103T」は、「スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体」であり、本件発明の「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれか」とは、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体」である限りにおいて一致する。

甲1発明Aの「樹脂組成物」は、その組成からみて、本件発明1と同様に「有機過酸化物」を含まないものである。

また、甲1発明Aの「樹脂組成物」は、「SIBSTAR 103T」を含むものであるから、「ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物」でないことは明らかである。

そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、

「環状オレフィン系樹脂組成物であって、
下記の[A-1]、[A-2]および[A-3]から選択される少なくとも一種を含む、環状オレフィン系樹脂(A)と、
芳香族ビニル系重合体(B)と、
を含み、
続きを表示(全18行)
前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が50質量部以上89質量部以下であり、前記芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が11質量部以上50質量部以下であり、
前記芳香族ビニル系重合体(B)が、芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含み、
ASTM D542に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の屈折率が1.520以上1.547以下の範囲内であり、
ASTM D2240に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のショアA硬度が85以下であり、
有機過酸化物を含まず、
前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体を含む、
環状オレフィン系樹脂組成物;
[A-1]エチレンと下記式[I]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
【化1】
[図:0001384035000012.jpg]
(前記式[I]中、nは0であり、mは0または1であり、R7~R18は、それぞれ独立に、水素原子である。)、
[A-2]前記式[I]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]前記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物。
ただし、ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物を除く。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「環状オレフィン系樹脂(A)について、本件発明1では、「軟化点温度(TMA)が120℃以上200℃以下である」のに対し、甲1発明Aでは、「ガラス転移温度(Tg)」は「135℃」であるものの、「軟化点温度」は明らかでない点。

相違点2:「環状オレフィン系樹脂組成物」の「芳香族ビニル系重合体(B)」について、本件発明1では、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含むか、または、ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む」ものであるのに対し、甲1発明Aでは、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]」に相当する「スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体」である「SIBSTAR 103T」を含む点。

イ 判断

以下、相違点2について検討する。

甲1発明Aは、本件発明1の「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]」に相当する「KRATON A1535H」に、「スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体」である「SIBSTAR 103T」を含んでいるものの、これは、本件発明1の「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物」のいずれでもないから、相違点2は、実質的な相違点である。

そこで、相違点2について、甲1発明A及び甲第1号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。

まず、本件発明1の「芳香族ビニル系重合体(B)」が、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」場合について検討する。

甲第1号証に記載された発明は、(甲1b)の段落【0004】の記載からみて、「耐衝撃性と透明性と引張破断伸びのバランスに優れたシクロオレフィン系共重合体樹脂組成物を提供すること」を課題とし、甲1発明Aの「スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体」である「SIBSTAR 103T」は、(甲1a)の請求項1の「(B)芳香族ビニル-イソブチレン系共重合体」の具体例に相当するものであって、(甲1d)の段落【0034】の「(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して1~50重量部が好ましく、3~25重量部がさらに好ましい。1重量部未満では、耐衝撃性が不充分となり、50重量部を越えると、剛性と耐衝撃性のバランスが悪くなる」との記載からみて、甲第1号証の記載された発明の上記課題の解決に必要な成分であり、(甲1h)の実施例1~10のいずれにも配合されている成分である。

そうすると、甲1発明Aにおいて、「スチレン含量30重量%のスチレンーイソブチレン-スチレンブロック共重合体」である「SIBSTAR 103T」を添加しないものとし、本件発明1と同様に「前記芳香族ビニル系重合体(B)」が、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]」のみを含むとすることを動機付けることはできない。

次に、本件発明1の「芳香族ビニル系重合体(B)」が、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む」場合について検討する。

甲第1号証の(甲1e)の段落【0035】には、「樹脂組成物」に添加できる「芳香族ビニル-共役ジエン系共重合体の水素添加物」について、「・・・水素添加される前の前駆体である、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)はブタジエン、イソプレンブロックの屈折率がエチレン-ブチレン、エチレン-プロピレンブロックよりも屈折率が高いため、低いスチレン含量でCOCと屈折率差を0.015以下に収めることができ、ゴム弾性の点で有利ではあるが、不飽和結合が主鎖に残存するため耐熱、耐候性に劣る欠点があるため高温で成形や使用が想定されるCOCへの配合材料にはSEBSやSEPSの方が適している」と記載されており、本件発明1と同じ「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)」について記載されているものの、「不飽和結合が主鎖に残存するため耐熱、耐候性に劣る欠点がある」とされている。

そうすると、甲1発明Aの「組成物」において、「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物」を添加することを積極的に動機付けることもできない。

したがって、相違点2について、甲1発明A及び甲第1号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、甲第2~4号証の記載をみても、甲1発明Aの「組成物」において、「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物」を添加することを積極的に動機付ける記載はない。

ウ 小括

以上のとおり、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Aではなく、また、甲1発明A及び甲第1~4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)甲1発明Cを引用発明とする検討

ア 対比

本件発明1と甲1発明Cとを、上記「(1)甲1発明Aを引用発明とする検討」「ア 対比」での検討を踏まえて、対比する。

甲1発明Cの「樹脂組成物」は、「環状オレフィン系樹脂」である「TOPAS 6013」を「100重量部」、「芳香族ビニル系共重合体」「KRATON A1535H」を「25重量部」含み、「環状オレフィン系樹脂組成物」と「芳香族ビニル系共重合体」の合計で125重量部(100重量部+25重量部)を含み、「環状オレフィン系樹脂(A)」および「芳香族ビニル系重合体(B)」の合計を100質量部としたとき、

「環状オレフィン系樹脂(A)」を、100重量部/125重量部×100質量部=80質量部

「芳香族ビニル系重合体(B)」を、25重量部/125重量部×100質量部=20質量部

含むといえるから、本件発明1と同様に、「前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が50質量部以上89質量部以下であり、前記芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が11質量部以上50質量部以下」であるといえる。

甲1発明Cの「環状オレフィン系樹脂組成物」には、「芳香族ビニル系共重合体」として「KRATON A1535H」のみを含んでいるから、本件発明1の「前記芳香族ビニル系重合体(B)は、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」態様に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明Cとは、

「環状オレフィン系樹脂組成物であって、
下記の[A-1]、[A-2]および[A-3]から選択される少なくとも一種を含む、環状オレフィン系樹脂(A)と、
芳香族ビニル系重合体(B)と、
を含み、
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前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族ビニル系重合体(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が50質量部以上89質量部以下であり、前記芳香族ビニル系重合体(B)の含有量が11質量部以上50質量部以下であり、
前記芳香族ビニル系重合体(B)が、芳香族ビニルブロック(b1)と芳香族ビニルが共役ジエンと共重合したブロック(b2)とを有するブロック共重合体の水素添加物[B-1]を含み、
ASTM D542に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]の屈折率が1.520以上1.547以下の範囲内であり、
ASTM D2240に準拠して測定される前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のショアA硬度が85以下であり、
有機過酸化物を含まず、
前記芳香族ビニル系重合体(B)は、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む、
環状オレフィン系樹脂組成物;
[A-1]エチレンと下記式[I]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
【化1】
[図:0001384035000013.jpg]
(前記式[I]中、nは0であり、mは0または1であり、R7~R18は、それぞれ独立に、水素原子である。)、
[A-2]前記式[I]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]前記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物。」

である点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点3:「環状オレフィン系樹脂(A)」について、本件発明1では、「軟化点温度(TMA)が120℃以上200℃以下である」のに対し、甲1発明Cでは、「ガラス転移温度(Tg)」は「135℃」であるものの、「軟化点温度」は明らかでない点。

相違点4:「環状オレフィン系樹脂組成物」の「芳香族ビニル系重合体(B)」について、本件発明1は、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含むか、または、ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む」ものであり、かつ、「環状オレフィン系樹脂組成物」について「ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物」の態様を除くものであるのに対して、甲1発明Cは、本件発明1の「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」場合であるものの、「環状オレフィン系樹脂組成物」について当該「除く」態様である点。

イ 判断

以下、相違点4について検討する。

甲1発明Cは、上記「ア 対比」で検討したとおり、本件発明1から「除く」対象とされる「ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)100重量部と、Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は登録)25重量部と、を配合し、ドライブレンドした樹脂組成物」そのものであるから、相違点4は実質的な相違点である。

まず、本件発明1の「芳香族ビニル系重合体(B)」が「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」場合について検討すると、甲1発明Cは、上記「ア 対比」で検討したとおり、本件発明1の「前記芳香族ビニル系重合体(B)は、前記ブロック共重合体の水素添加物[B-1]のみを含む」態様に相当するといえるものの、甲第1号証に記載された具体的な比較例であるため、甲第1号証の他の記載や甲第2~4号証の記載を参酌しても、「ポリプラスチックス社製のシクロオレフィン系共重合体であるTOPAS 6013(「TOPAS」は登録商標)」や「Kraton Corporation製のスチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン)-スチレンブロック共重合体であるKRATON A1535H(「KRATON」は商標)」とは異なる製品を用いる、配合量を変更する等の改変を行う積極的な動機付けを見いだすことができない。

次に、本件発明1の「芳香族ビニル系重合体(B)」が、「ブロック共重合体の水素添加物[B-1]以外の芳香族ビニル系重合体として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む」場合について検討すると、甲1発明Cは、甲第1号証に記載された具体的な比較例であるため、甲1発明Cにおいても、「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群より選ばれる少なくともいずれか」を含むとすることも積極的に動機付けることはできない。

そうすると、相違点4についても、甲1発明C及び甲第1~4号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括

したがって、上記相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Cではなく、また、甲1発明C及び甲第1~4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)特許異議申立書における申立人の主張

特許異議申立書の「イ 引用発明の説明」「(ア)甲第1号証」及び「ウ 本件特許発明と証拠に記載された発明との対比」「(i)特許発明1について」において、申立人は、甲第1号証に記載された発明として、甲1発明Aである実施例2、甲1発明Cである比較例3以外にも、実施例6、7、9についても引用発明として言及している。

しかしながら、甲第1号証の実施例6、7、9の「組成物」は、甲1発明Aである実施例2と同じ成分の他、「(D)成分」として「コア-シェル構造の重合体」である「カネカ社製メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体のカネエースB622」を含むものであるが、「芳香族ビニル系共重合体」としては、甲1発明Aと同じ「SIBSTAR 103T」及び「KRATON A1535H」しか含んでいない。

そして、上記「(1)甲1発明Aを引用発明とする検討」「イ 対比」で検討したとおり、本件発明の「スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物」を添加することを積極的に動機付ける記載はないから、甲第1号証の実施例6、7、9を引用発明としても、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~4号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)まとめ

以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3 本件発明2~12について

本件発明2~12は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記2(1)イ及び2(2)イで示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 取消理由A~D及び申立理由1~2についてのまとめ

以上のとおり、取消理由A~D及び申立理由1~2は、理由がない。

第7 むすび

特許第6703611号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-12]について訂正することを認める。

当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明1-12に係る特許を取り消すことはできない。

また、ほかに本件発明1-12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700944

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